チョッパリ
チョッパリ(朝鮮語: 쪽발이/쪽바리)とは、韓国および北朝鮮における日本人に対する差別用語[1]。韓国においては国会、主要メディアの場での使用は控えられている(歴史ドラマを除く)[注 1]。一方、北朝鮮においては要人やメディア[2]、特に同国国外向け放送において多くみられる。
語源
[編集]元々「双蹄」などの意味で使われていた朝鮮語が転じたものであり[3]、「豚足」を語源とするのは誤りである[注 3]。
国立国語院標準国語大辞典には「日本人が足の親指と残りの指を分ける下駄を履くことから来た言葉」とある。
慶尚北道方言では口蓋裂[4]、江原道方言ではヒトデを意味する[5]。
1880年にパリ外国宣教会が横浜で出版した韓仏辞典『Dictionnaire coréen-français』に「ᄶᅩᆨ발. Pied à corne divisée en deux.」との記載がある。同じく横浜で出版されたカナダ人宣教師ジェームス・ゲイル著の韓英辞典『Korean English dictionary』(1897年)にも「ᄶᅩᆨ발이 A cloven foot.」とあることから、日韓併合条約以前からチョッパリという単語が存在していたことが確認できる。
補足
[編集]ハングル表記は「쪽발이」が正式な綴りだが、実際の発音に近い「쪽바리」や「쪽빠리」と表記されることも多い[6][注 4]。
類似の侮蔑語に、「パンチョッパリ(반쪽발이)」があるが、半分日本人を意味する言葉で、日本贔屓や日本人のような行動をする人に対しても使われるが、在日韓国・朝鮮人や日本人と結婚した同胞及びその子、子孫を揶揄する場合に用いられる事が多い[7]。差別用語ではないが類義語に「キョッポ(교포/僑胞)」がある。
文芸作品
[編集]- 小林勝『蹄の割れたもの』(1969年) - 朝鮮で生まれ育った日本人が敗戦を境に「部外者」であることを強く認識して「チョッパリ」という精神的な刑を自らに与えたという内容の短編小説。『チョッパリ-小林勝小説集』(1970年)に収録。
- 李恢成『半チョッパリ』(1971年) - 帰化問題に葛藤する在日青年を主人公にした短編小説。『砧を打つ女』(1972年)に収録。
- 西部邁『友情-ある半チョッパリとの四十五年』(2005年) - 著者と在日ヤクザ海野治夫の交友を振り返った自伝的長編評論。
チョッパリ以外の日本人への蔑称
[編集]- 履物に由来するもの
- ケダジャク(下駄 - 、게다짝)[8][注 5][9][10]、チャゲパル(짜개발)[8][注 6]、タルカッパリ(딸깍발이)[8][注 7]
- 島に由来するもの
- トイ(島夷 도이)[8][注 8]
- ソムオランケ(島 - 、섬오랑캐)[8][注 9]
- 「倭」に由来するもの
- ウェノ(倭奴 왜노)、ウェノム(倭놈 왜놈)[8] 「倭の奴」という意味で、特に日本人男性をかなり蔑んで呼ぶ表現
- ウェニョ(倭女 왜녀) 日本人女性を指す侮辱語
- ウェイン(倭人 왜인) 「矮人」即ち「背が極端に低い人、小人」と発音が同じだが「ウェノム」に比べれば侮蔑的な意味合いが薄い
- ウェジョク(倭敵・倭賊 왜적) 「敵たる日本人」だとか、所謂「倭寇」の如く盗みを働いたりする日本人に対する蔑称
- ウェチ(倭치 왜치)[注 10]
- ウェグァンデ(倭광대 왜광대)[注 11]
- ウェグ (倭寇 왜구)
- その他
- イルボンノム(日本 - 、일본놈)[注 12]
- ジェブス(잽스)[注 13]
関連項目
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 最高瞬間視聴率57.1%、平均視聴率37%(第1部)を記録した2002年~2003年の大河ドラマ「野人時代」では頻繁に用いられた。その影響で大衆にチョッパリの使用頻度が急激に増加したとされる。
- ^ a b 漢字で「片足」との表記があるが、これは熟語の「片足(かたあし)」ではなく、固有語の「쪽(쪼개の略=割れる、分ける、裂ける)」と「발(足首から先の部分)」の意味をそれぞれ漢字に直したものである。
- ^ 似た発音の「족발(足-/チョッパル)」という単語が、豚足料理の名称としてのみ用いられるようになったのは、北朝鮮出身者たちによる豚足料理店の開業が相次いだ1960年代後半以降である。また、北朝鮮での豚足料理の名称は발쪽(パルチョク)である。
- ^ 「쪽바리」は辞書や報道記事での使用が確認できる[1]。「쪽빠리」はインターネットの掲示板やコメント欄、SNSなどで見られる誤用。
- ^ 「一対の下駄」が語源で、本来は下駄そのものを蔑む用語
- ^ チャゲは裂く、割るなどを意味し、パルは足を意味する。
- ^ 義烈団の依頼で申采浩が起草した『朝鮮革命宣言』(1923年)に日本人の意味で用いられている。 (朝鮮語) 조선혁명선언, ウィキソースより閲覧, "일본 이민의 수입이 해마다 높은 비율로 증가하여 딸각발이 등쌀에 우리 민족은 발 디딜 땅이 없어(日本移民の輸入が毎年高い割合で増加し、タルカッパリに煩わされ、わが民族は足を踏む地もなく)"
元来は李氏朝鮮時代の南村(現在の明洞)に住む儒者たちの俗称。(貧しさゆえに、晴天の日でも雨具である木靴を履いて、タッカタッカと音を立てる様子から付けられた。国語学者の李熙昇(イ・ヒスン)が随筆『딸깍발이』(随筆集『벙어리 냉가슴』1956年刊に収録 )で再定義し、教科書にも掲載され広く普及したことにより、近年では清貧な人物の意味で用いられることが多い) - ^ 「島に住む化外の異民族、島の野蛮人」というのが原義で、文禄・慶長の役の別称であるトイジラン(島夷之亂 도이지란)の中では日本人を指す[11]
- ^ 島の野蛮人を意味する。オランケはウリャンカイ(モンゴルの民族集団のひとつ)が語源で、女真(満州民族)に対し用いられた。
- ^ 「치」は、人を表す依存名詞「이」の卑語。
- ^ 日本人の役者に対し用いられた。グァンデは芸人、役者などを意味する。
- ^ 「〜奴、〜野郎」を意味する「〜ノム」が付いた語だが、現代でも蔑称でしか使われてない「ウェノム」(왜노/왜놈)とは違い、主に男性の間で用いられ、「好ましい日本人」、「親しい日本人」などに、蔑称ではない意味合いで使用されることもある。[2][3]
- ^ 英語圏における日本人および日系人を指す略称、蔑称である「Jap」のハングル表記。
出典
[編集]- ^ “チョッパリの意味”. goo国語辞書. 2019年12月7日閲覧。
- ^ 조선아시아태평양평화위 미국은 천만군민의 보복일념 알아야 한다朝鮮通信 2017年9月13日
- ^ Dictionnaire coréen-français(1880年)パリ外国宣教会著
- ^ daum国語辞典
- ^ 「협동학습에서 역할분담을 통한 인성계발과 창의력 신장(최종 보고서)」2013학년도 혜성(惠聖)여고 학생창의인성연구회
- ^ 우리말샘
- ^ 豊 璋 (2022年8月11日). “「在日3世」の私が、韓国で「差別」されて直面した“祖国・韓国”への「強烈すぎる違和感」”. マネー現代. 2022年10月7日閲覧。
- ^ a b c d e f 国立国語院標準国語大辞典
- ^ 北朝鮮の漫画「ケダジャクが泣く」(1987年)の紹介記事朝鮮の今日 2017-06-01
- ^ 「ケダジャクが泣く」金星青年出版社2007年版の画像わが民族同士
- ^ https://ko.dict.naver.com/#/entry/koko/d71a9e139d2e41cfbfdc06d976a83ec6