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ヒマラヤスギ属

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヒマラヤスギ属
フランス式の庭に植えられるヒマラヤスギ
分類新エングラー体系
: 植物界 Plantae
: 裸子植物門 Pinophyta
: マツ綱 Pinopsida
: マツ目 Pinales
: マツ科 Pinaceae
: ヒマラヤスギ属 Cedrus
学名
Cedrus Trew
和名
ヒマラヤスギ属
英名
Cedar
  • 本文参照

ヒマラヤスギ属(ヒマラヤスギぞく、学名Cedrus)は、マツ目マツ科の1つ。よく似た円錐形の形態をとるモミ属の近縁種である。ヒマラヤ山脈西部や地中海地方に分布し、ヒマラヤでは標高1,500から3,200m、地中海では1,000から2,200mに自生している。

形態

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樹形

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クリスマスツリー状の形になるものもあるが、モミ属トウヒ属が綺麗な円錐状になるのと比べて、マツ属のように荒れて崩れた印象を与えるものが多い。樹高は30-40mで、まれに60m近くに達するものもあるという。ヒマラヤスギ属の枝には2種類あり、旺盛に伸びて私たちが「枝」と認識する長枝の他に、葉の付け根にあるごく短い枝である短枝がある。これはマツ科のマツ属やカラマツ属と同じである。

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葉は原則として短枝の先に束になって生えるだけで長枝には生えないが、枝先の若い長枝に限り葉をつける。これはカラマツ属も同じである。

花・球果

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球果はマツ科共通で鱗片の集まった形状をしている。ヒマラヤスギ属のそれは全体的な形はモミ属のものと似ているが、よりずんぐりとしている。球果は樹上で分解しながら種子を散布する。種子には翼がある。

生態

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他のマツ科と同じくヒマラヤスギ属樹木の菌類共生菌根を形成する。樹木にとっては菌根を形成することで、土壌中の栄養分の吸収促進や菌類が作り出す抗生物質等による病原微生物の駆除等の利点があり、菌類にとっては樹木から光合成産物の一部を分けてもらうことができる。土壌中には菌根から菌糸を介し同種他個体や他種植物に繋がる広大なネットワークが存在すると考えられている[1][2][3][4][5][6]。共生する菌類の子実体は人間がキノコとして認識できる大きさに育つものが多く、中には食用にできるものもある。

人間とのかかわり

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ヒマラヤスギ属の樹木は、冬季の気温が-25℃を下回らない温帯で園芸用の飾り木として人気がある。またその耐久性にも注目され、紀元前1,000年に作られたイスラエルソロモン王の神殿に使われていたのが有名である。またこの木は屋根材として防寒の目的にも用いられている。さらにヒマラヤスギおよびこれから得られる精油は天然の虫除け剤として使われ、結婚の際に持参するホープチェストはヒマラヤスギから作られることが多い。トルコを中心とした地中海地方ではヒマラヤスギの大規模な植林が行われており、毎年5,000万本以上の苗が植えられている。

下位分類

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ヒマラヤスギ属は4種に分類される[7]

  • Cedrus atlantica
北アフリカのアトラス山脈に分布
  • C. brevifolia
キプロス島固有種。
ヒマラヤ西部に分布。ヒマラヤスギ属の最大種で樹高は60mに達することもある。25-60mmである。球果にはわずかに畝がある。
トルコレバノンからモロッコにかけての地中海地方の山に自生する。葉は深緑から青緑色で、8-25mmである。球果はなめらかである。

語源

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ラテン語名の cedrus と属の学名の Cedrus はともにギリシア語の kedros に由来する。ギリシア語とラテン語で kedros と cedrus は、現在ヒマラヤスギ属とビャクシン属に含まれる植物を表す言葉であった。ビャクシン属はギリシアに自生していたが、ヒマラヤスギ属は自生していなかった。そして kedros という言葉は中東に由来するものではなく、ギリシア内でビャクシン属を表す言葉として発生し、後に同じように強い香りを発するヒマラヤスギについても表すようになっていったと考えられている。cedar という言葉はヒノキ科センダン科ギョリュウ科など強い香りを発する他の種の樹木の名前の一部にも使われている。

脚注

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  1. ^ 谷口武士 (2011) 菌根菌との相互作用が作り出す森林の種多様性(<特集>菌類・植食者との相互作用が作り出す森林の種多様性). 日本生態学会誌61(3), p311-318. doi:10.18960/seitai.61.3_311
  2. ^ 深澤遊・九石太樹・清和研二 (2013) 境界の地下はどうなっているのか : 菌根菌群集と実生更新との関係(<特集>森林の"境目"の生態的プロセスを探る). 日本生態学会誌63(2), p239-249. doi:10.18960/seitai.63.2_239
  3. ^ 岡部宏秋,(1994) 外生菌根菌の生活様式(共生土壌菌類と植物の生育). 土と微生物24, p15-24.doi:10.18946/jssm.44.0_15
  4. ^ 菊地淳一 (1999) 森林生態系における外生菌根の生態と応用 (<特集>生態系における菌根共生). 日本生態学会誌49(2), p133-138. doi:10.18960/seitai.49.2_133
  5. ^ 宝月岱造 (2010)外生菌根菌ネットワークの構造と機能(特別講演). 土と微生物64(2), p57-63. doi:10.18946/jssm.64.2_57
  6. ^ 東樹宏和. (2015) 土壌真菌群集と植物のネットワーク解析 : 土壌管理への展望. 土と微生物69(1), p7-9. doi:10.18946/jssm.69.1_7
  7. ^ 清水建美 (1997) ヒマヤラスギ 『朝日百科 植物の世界 第11巻』 258 - 259, 朝日新聞社.

外部リンク

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