コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ヒュウガトウキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヒュウガトウキ
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク上群 superasterids
階級なし : キク類 asterids
階級なし : asterids II
: セリ目 Apianales
: セリ科 Apiaceae
亜科 : セリ亜科 Apioideae
: シシウド連 Selineae
: シシウド属 Angelica
: カワゼンゴ A. tenuisecta
変種 : ヒュウガトウキ A. tenuisecta var. furcijuga
学名
Angelica tenuisecta (Makino) Makino furcijuga (Kitag.) H.Ohba
シノニム

Angelica furcijuga Kitag.

和名
ヒュウガトウキ

ヒュウガトウキ学名: Angelica tenuisecta var. furcijuga)は、セリ科シシウド属草本の一種である。日本宮崎県で発見され[1]山人参の名で民間薬として利用される[2]

特徴

[編集]

生態

[編集]

ヒュウガトウキは3年以上は育たない。親株は3年目に開花、結実し枯れていく。その間、同じ場所で子株の1-2年ものが随時成長し、この子株もまた3年目に開花結実し枯れていく。草丈は2メートル近くまで生長する。

ヒュウガトウキとイヌトウキ

[編集]

ヒュウガトウキはかつてはイヌトウキAngelica shikokiana Makino ex Y.Yabe)と誤認され、生薬系の学会や健康雑誌にもイヌトウキとして紹介されてきた。これは日本植物分類学の父である牧野富太郎が、江戸時代にウヅと呼ばれていた日本山人参をイヌトウキと定義づけしたのが始まりであったためである。しかし1971年、植物学者北川政夫は宮崎県産のシシウド属にイヌトウキとは異なる新種が存在するとし、これを Angelica furcijuga として発表し、その和名をヒュウガトウキと命名した[3]。ヒュウガトウキのホロタイプは元々宮崎県尾鈴山に生育していた個体が植物園での栽培下に置かれ、長沢光男によりもたらされたものであり、茨城県つくば市国立科学博物館植物標本室(筑波実験植物園)に収蔵されている[4]。なお北川が行ったのはあくまでもヒュウガトウキの新種としての記載であるが、これは1999年に大場秀章による分類見直しの結果カワゼンゴAngelica tenuisecta (Makino) Makino)という種の亜種にあたると判断された[5]

日本薬学界においては日本山人参がどの種にあたるかに関して混乱が見られた。1985年 (昭和60年)、セリ科植物の分類を専門としていた廣江美之助理学博士の協力で行われた調査では、日本山人参はイヌトウキであると報告された[6]。しかし1993年 (平成5年)、宮崎大学農学部教授であった志田庄二郎らは調査の結果、日本山人参はヒュウガトウキに由来するものであると訂正発表を行った[6]。さらに1995年 (平成7年)、先述の通り馬場も学会発表において日本山人参をヒュウガトウキであるとした[6]。2004年3月 (平成16年)「医薬品の範囲に関する基準の一部改正(薬食発第0331009号)」[7]の中で、ヒュウガトウキの種が特定され、学名が明らかにされた[6]。これにより「イヌトウキ」との学名論争に終止符が打たれることとなった[6][注 1]

呼称の由来

[編集]

属名 Angelica の由来に関してはシシウド属を参照。この属の植物は強心剤として著効のあるものがあり、死者をも蘇らせるとたとえられることから日本山人参という地方名が名付けられた[8]

利用

[編集]

根は医薬品として利用される。

本草学者賀来飛霞が著した『高千穂採薬記』によると、1845年、延岡内藤藩(現在の宮崎県)での薬草調査の折に「発見」、薬草園に植え付けたという[9]

2002年11月 (平成14年)「医薬品の範囲に関する基準の一部改正(医薬発第1115003号)」[10]の中で、「ヒュウガトウキ(根)」が「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)」リストに追加され、健康食品としての使用は不可能となった[6]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 日本薬学会発表 1995年3月29日 第115年会 学名解明者:高﨑久男

出典

[編集]
  1. ^ #ヒュウガトウキとイヌトウキ#利用を参照。
  2. ^ 猪居, 武 (2009). 美容食品の効用と展望. シーエムシー出版. p. 191. ISBN 9784781301259. https://www.google.co.jp/books/edition/美容食品の効用と展望/ExjbKlrzeh4C?hl=ja&gbpv=1&dq=furcijuga&pg=PA191 
  3. ^ 北川, 政夫 (1971). “東亜植物断想録 (27)”. 植物研究雑誌 46 (9): 286–288. http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_046_283_288.pdf. 
  4. ^ TNS-174892 および TNS-174893 の2枚(2023年2月17日閲覧。)。
  5. ^ 岩槻, 邦男; Boufford, D.E.; 大場, 秀章, eds (1999). Flora of Japan. 2c. 講談社. p. 295. ISBN 978-4-06-154606-6 
  6. ^ a b c d e f 一般社団法人 高千穂郷日向当帰研究会 | 公式ホームページ. 2023年2月17日閲覧。
  7. ^ 厚生労働省医薬食品局長 (2004-03-31), 医薬品の範囲に関する基準の一部改正について (薬食発第0331009号), 厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/16_2.pdf 2023年5月7日閲覧。 
  8. ^ 『牧野新日本植物図鑑』
  9. ^ 日本山人蔘とは?”. ヒュウガトウキ・日本山人参販売カンパニー. 2023年5月5日閲覧。
  10. ^ 厚生労働省医薬局長 (2002-11-15), 医薬品の範囲に関する基準の一部改正について (医薬発第1115003号), 厚生労働省, https://www.japal.org/wp-content/uploads/mt/20021115_1115003.pdf 2023年5月7日閲覧。 

関連文献

[編集]

外部リンク

[編集]