プラット・アンド・ホイットニー JT3D
JT3Dは、プラット・アンド・ホイットニーが開発したターボファンエンジン。ターボファンエンジン としては初期のものであり、1958年にJT3C(J57) ターボジェットエンジンを改良してできたものである。1959年から1985年の間に8,000基以上が生産された。アメリカ空軍の制式記号TF33としても知られ、軍用機にも用いられている。
概要
[編集]1959年、ボーイング707と720向けに発注が開始された。アメリカン航空はJT3Dを搭載したB707、KLMオランダ航空はJT3Dを搭載したDC-8をそれぞれ注文した。初期のB707はJT3C ターボジェットエンジンを搭載していたが、騒音が大きく、燃費も悪かった。そのため、経済性を要するエアラインでは高性能なターボファンエンジンの登場が望まれていた。JT3Dを搭載したB707-123とB720-023は、1961年3月12日にアメリカン航空で運航を開始した。次に開発されたB707-300シリーズは、JT3D ターボファンのみの注文だった[1]。
KC-135Aは、J57(JT3C)ターボジェットエンジンを搭載しており、数機が試験的にTF33に換装している。その後1980年代の近代化計画により160機がJT3D(アメリカ軍名称:TF33-PW-102)に換装し、型式名がKC-135Eに変更され、空軍州兵などに配備された[1]。
JT3D(TF33)を搭載する機体にB-52H爆撃機がある。 B-52Hは、TF33を8基(2基1組で4つのパイロンで翼下に装着)使用している。数度の運用期間延長を経て老朽化した事に加え、メーカー側が2030年以降サポートを行わない方針を示したことから、2021年9月24日、換装用のエンジンとしてロールス・ロイス「F130」の採用が発表された[2][3]。なお、後継となるF130も2基1組で8基で搭載される[4]。
搭載機
[編集]- ボーイング B-52H(TF33)
- ボーイング 707(JT3D)、軍用型(TF33)
- ボーイング KC-135E(元々は民間航空会社で余剰となったB707のJT3Dを再生装着。装着後TF33と命名)
- ダグラス DC-8(JT3D)
- ロッキード C-141(TF33)
- イングリッシュ・エレクトリック / マーチン RB-57F(TF33)
- シャンハイ Y-10(JT3D)
仕様 (TF33-PW-7)
[編集]一般的特性
- 形式: ターボファン
- 全長: 6200mm
- 直径: 1000mm
- 乾燥重量:
構成要素
- 圧縮機: 軸流式、低圧7段
性能
バリエーション
[編集]- JT3D-3
- 出力18,000lb(80.1kN)。民間用。
- TF33-P-3
- 出力17,000lb(75.6kN)。B-52H用。
- TF33-P-5
- 出力18,000lb(80.1kN)。KC-135E用。
- TF33-P-7
- 出力21,000lb(93.4kN)。C-141用。
- TF33-P-11
- 出力16,000lb(71.2kN)。WB-57F用。
脚注
[編集]- ^ a b Tony Pither, The Boeing 707 720 and C-135, Air-Britain (Historians), 1998, ISBN 0 85130 236 X
- ^ “「成層圏の要塞」の異名持つ米B-52戦略爆撃機 2050年以降も飛ぶため新型エンジンへ”. 乗りものニュース. (2021年9月26日) 2021年9月26日閲覧。
- ^ 米空軍、B-52新エンジンにF130選定 ロールス・ロイスが受注 - Aviation Wire・2021年9月28日
- ^ ロールス・ロイス、B-52爆撃機の新エンジン試験開始 寿命30年延長 - Aviation Wire・2023年3月3日