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ホバート級駆逐艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ホバート級駆逐艦
基本情報
艦種 ミサイル駆逐艦
命名基準 オーストラリアの都市名
運用者  オーストラリア海軍
建造期間 2012年 - 2020年[1]
就役期間 2017年 - 就役中
建造数 3隻
原型艦 スペインアルバロ・デ・バサン級フリゲート
前級 パース級駆逐艦
要目
満載排水量 6,350 t
全長 146.7 m[1]
最大幅 18.6 m
吃水 7.2 m
機関方式 CODOG方式 [1]
主機
推進器 スクリュープロペラ×2軸
最大速力 28ノット (52 km/h)[1]
航続距離 5,000海里(18kt巡航時)
乗員 205名[1]
兵装
搭載機 LAMPSヘリコプター×1機[1]
C4ISTAR
FCS
  • Mk.99 ミサイルFCS×2基
  • SWG-1 HSCLCS×1基
  • Mk.160 砲FCS×1基
  • レーダー
  • AN/SPY-1D(V) 多機能型×1基
  • AN/SPQ-9B 低空警戒/対水上×1基
  • ソナー
  • 2150型 船底装備式×1基
  • 可変深度式×1基
  • 電子戦
    対抗手段
  • ITT ES-3701 電波探知装置
  • NULKAデコイ装置
  • Mk.137 6連装デコイ発射機
  • テンプレートを表示

    ホバート級駆逐艦(ホバートきゅうくちくかん、英語: Hobart-class destroyer)は、オーストラリア海軍ミサイル駆逐艦の艦級[注 1]イージス艦であり、スペイン海軍アルバロ・デ・バサン級を元に設計を修正した派生型である。

    来歴

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    オーストラリア海軍では、もともとは軍事技術はイギリス海軍に頼っていたが、1960年代に入って世界的に駆逐艦のミサイル艦化が進むと、諸外国の趨勢にあわせてアメリカ合衆国製のターター・システムの導入を図り、1962年・1963年にパース級3隻を発注した[3]。同級はチャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦の設計を修正したもので、海上自衛隊では「あまつかぜ」とほぼ同世代にあたり、オーストラリア海軍の主力として長く運用されたものの、老朽化・陳腐化に伴って2000年までに運用を終了した[4]

    オーストラリア海軍には、パース級以外の艦隊防空ミサイル搭載艦として、アメリカ海軍のオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートライセンス生産したアデレード級フリゲートがあったものの、同級は3次元レーダーを備えていなかったことから、パース級の退役により、同海軍の艦隊防空能力に深刻な問題が生じることになった[5]。このため、SEA1400計画として、新防空艦の建造が模索されるようになった(後にSEA4000と改称)。計画そのものは1990年代より開始されていたものの、財政・政治的な問題から遅れを生じた[6]。この間、キッド級ミサイル駆逐艦の購入も検討されたものの、費用対効果の問題などから断念されている[5]

    その後、パース級の運用終了後になって具体的な検討が進められるようになった。アメリカ合衆国ギブス&コックス英語版社はアーレイ・バーク級派生型[注 2]スペインナバンティア社はアルバロ・デ・バサン級派生型、ドイツブローム・ウント・フォス社はザクセン級派生型、イギリスBAE社は45型派生型を提示しており、2005年8月にはギブス&コックス社案の採択が報道されたこともあったものの、2007年6月、ナバンティア社案の採択が決定され、10月に建造契約が締結された。これによって建造されたのが本級である[6]

    設計

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    上記の経緯より、基本設計はスペイン海軍アルバロ・デ・バサン級フリゲートを元に、その5番艦である「クリストーバル・コロン」(F-105)に準じた修正を加えるとともに、オーストラリア海軍の要求に基づいて変更したものとなっている[2]。船体設計の面では、全長にして30センチ、幅にして7センチ拡大し、排水量にして400トン大型化しただけで、艦橋のうえに多機能レーダーのアンテナを貼り付けた塔状構造物を配するという全般配置や、その装備高を確保するための傾斜船型は踏襲されており、外見的には大きな変化はない。ただし艦橋周囲の配置や艦橋後部・前部煙突の形状変更、後部イルミネーターが設置された台の形状など、細かい差異が生じている[6]

    機関はバサン級と同様で、キャタピラー社製ディーゼルエンジンゼネラル・エレクトリック LM2500ガスタービンエンジンによるCODOG方式が採用された。ただしF-105に準じた修正としてバウスラスターが導入されている[2]。また航続距離も延伸されており、上記の排水量増大の一環として、燃料タンクも拡張されたものとみられている[6]

    装備

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    C4ISTAR

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    本級の中核的な装備となるのがイージス武器システム(AWS)であり、その主センサーとなるAN/SPY-1D(V)のアンテナは、艦橋構造物の四方に固定配置されている。搭載するバージョンはベースライン7.1であり、戦術データ・リンクとしてリンク 11および16に対応するほか、共同交戦能力(CEC)に対応するため、AN/USG-2A CETPSも搭載される[6]

    なおイージスシステムを選定するにあたり、アメリカ製の複雑なイージスシステムを国内建造の艦にマッチングしうるかが不安視されたことから、既にイージス艦の運用経験を積んでいた海上自衛隊からの助言を受けている[7]

    武器システム

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    艦対空ミサイルの発射装置として、艦首甲板に48セルのMk.41 VLSを備えている。ミサイルとしては、SM-2ブロックIIIBを32発、ESSMを64発搭載予定とされており、いずれも原型艦と同様の構成となっている。ただし2022年以降、SM-2ブロックIIIBは、より長射程でアクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)に対応したSM-6により更新される予定である。また下記のトマホークの運用が開始された場合、ミサイルの搭載数にも変動が予想される[8]

    艦対艦ミサイルとしてはハープーンの4連装発射筒を2基搭載する設計だったが[6]、3番艦ではNSMに変更された[9]。また本級では、対地火力投射用として、トマホーク巡航ミサイルの運用にも対応予定とされている[8]

    艦砲としては、原型艦と同系列だがより長砲身の62口径127mm単装砲(Mk.45 mod.4 5インチ砲)を1基備える。またCIWSについては、原型艦ではメロカを後日装備予定とされつつ実現していないのに対し、本級では、従来よりオーストラリア海軍が採用してきたファランクスが搭載されている[6][4]

    搭載機

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    船楼後端には中型ヘリコプター1機を収容できる格納庫が設置されており、船尾甲板には26.4×17メートルのヘリコプター甲板が設置されている[4]。搭載機としてはMH-60R LAMPSヘリコプター[1]や、無人航空機(UAV)の運用能力も付与される[8]

    比較表

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    イージス艦の比較
    日本 まや型 オーストラリア ホバート級 大韓民国 世宗大王級
    バッチ1
    アメリカ合衆国 タイコンデロガ級
    AMOD改修艦
    アメリカ合衆国 アーレイ・バーク級
    フライトIIA
    船体 満載排水量 10,250 t 7,000 t 10,290 t 9,763 t - 10,010 t 9,648 t
    全長 170 m 146.7 m 165 m 172.46 m 155.3 m
    全幅 21.0 m 18.6 m 21.4 m 16.76 m 20.1 m
    主機 方式 COGLAG CODOG COGAG
    出力 69,000 ps 47,000 hp 105,000 hp 86,000 hp 100,000 hp
    速力 30 kt 28 kt以上 30 kt以上
    兵装 砲熕 62口径5インチ単装砲×1基 62口径5インチ単装砲×2基 62口径5インチ単装砲×1基[注 3]
    20mmCIWS×2基 20mmCIWS×1基 30mmCIWS×1基 20mmCIWS×2基 20mmCIWS×2基[注 4]
    25mm単装機関砲×2基
    12.7mm単装機銃×4基
    ミサイル Mk.41 VLS×96セル
    (SM-2MR, SM-3, 07式)
    Mk.41 VLS×48セル
    (SM-2, SM-6, ESSM)
    Mk.41 VLS×80セル
    (SM-2)
    Mk.41 VLS×122セル
    (SM-2, VLA, TLAM)
    Mk.41 VLS×96セル
    (SM-2, ESSM, VLA, TLAM)
    K-VLS×48セル
    (天竜, 紅鮫)
    RAM 21連装発射機×1基
    SSM[注 5] 4連装発射筒×2基 ハープーン 4連装発射筒×2基 海星 4連装発射筒×4基 ハープーン 4連装発射筒×2基 [注 6]
    水雷 324mm3連装短魚雷発射管×2基
    艦載機 SH-60K×1機[注 7] MH-60R×1機 スーパーリンクスMk.99×2機 MH-60R×2機
    同型艦数 2隻 3隻 3隻 11隻(1隻退役) 47隻予定

    同型艦

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    艦番号 艦名 起工 進水 就役
    DDG 39 ホバート
    HMAS Hobart
    2012年
    9月6日
    2015年
    5月23日
    2017年
    9月23日
    DDG 41 ブリスベン
    HMAS Brisbane
    2014年
    2月3日
    2016年
    12月15日
    2018年
    10月27日
    DDG 42 シドニー
    HMAS Sydney
    2015年
    11月19日
    2018年
    5月19日
    2020年
    5月18日

    脚注

    [編集]

    注釈

    [編集]
    1. ^ 公式の艦種呼称は「防空駆逐艦」(Air Warfare Destroyer, AWD)とされている[2]
    2. ^ ギブス&コックス社の案では、基準排水量にして5,900トンに艦型を縮小し、多機能レーダーもAN/SPY-1Fにダウングレードするものとされていた[6]
    3. ^ DDG-79DDG-80は54口径。DDG-81から62口径
    4. ^ DDG-85から後部の1基のみ
    5. ^ 1番艦90式2番艦17式
    6. ^ フライトIIまではハープーン4連装発射筒が2基搭載されていたが、フライトIIA以降から搭載されなくなった。しかし、必要時には搭載できるようにスペースは確保されている。
    7. ^ 通常は搭載されていない。

    出典

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    参考文献

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    • AWD Alliance (2017) (英語), The Hobart Class - Differences from the F100 Class, http://www.ausawd.com/content.aspx?p=97 2018年1月6日閲覧。 
    • 海人社 編「世界の新型水上戦闘艦 ラインナップ (特集 世界の水上戦闘艦 その最新動向)」『世界の艦船』第832号、海人社、78-89頁、2016年3月。 NAID 40020720329 
    • 海人社 編「異例の洋上式典 豪イージス駆逐艦「シドニー」就役!」『世界の艦船』第929号、海人社、69-73頁、2020年8月。 NAID 40022294390 
    • 大塚好古「ホバート級DDG (世界の新型水上戦闘艦ラインナップ)」『世界の艦船』第782号、海人社、82-83頁、2013年8月。 NAID 40019721131 
    • 大塚好古「世界のイージス艦総覧 (特集・世界のイージス艦)」『世界の艦船』第844号、海人社、78-87頁、2016年9月。 NAID 40020917927 
    • 岡部いさく「注目のANZAC海軍艦艇」『世界の艦船』第575号、海人社、94-99頁、2000年11月。 NAID 40002155931 
    • 香田洋二「現代水上戦闘艦の新傾向を読む (特集 世界の水上戦闘艦 その最新動向)」『世界の艦船』第832号、海人社、70-77頁、2016年3月。 NAID 40020720323 
    • 高須廣一「ANZAC海軍 その過去・現在・未来」『世界の艦船』第575号、海人社、82-87頁、2000年11月。 NAID 40002155929 

    関連項目

    [編集]
    • ハンター級フリゲート - 本級に続いてオーストラリア海軍が建造しているイージス艦。こちらは汎用艦と位置付けられている。