ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ
「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」 | |
---|---|
楽曲 | |
英語名 | You'd be so nice to come home to |
ジャンル | ジャズ |
作詞者 | コール・ポーター |
作曲者 | コール・ポーター |
「帰ってくれたら嬉しいわ」 | |
---|---|
ダイナ・ショア の シングル | |
B面 | マンハッタン・セレナーデ |
リリース | |
録音 | 1942年7月30日[2] |
時間 | |
レーベル | ビクター |
作詞・作曲 | コール・ポーター |
「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」(英語: You'd be so nice to come home to)は、ジャズのスタンダード曲。邦題は「帰ってくれたらうれしいわ」、「帰ってくればいいのに」など[3]があった(#邦題について参照)。
解説
[編集]コール・ポーター作曲で、1942年に発表された映画『サムシング・トゥ・シャウト・アバウト』の挿入歌で、劇中ではジャネット・ブレアとドン・アメチーが歌った[3][4]。この映画自体はヒットしなかったが、第二次世界大戦中ということもあり、洗練されたメロディと「あなたが待ってくれている家に帰れたなら、なんと素敵なことだろう」と歌い上げる歌詞が、戦時中のアメリカ人の心に強くアピールすることになった[4][5]。受賞は逃したものの第16回アカデミー賞の歌曲賞にノミネートされたほか、同年に発売されたダイナ・ショアによるシングル盤は大ヒットとなった[6]。
1950年代前半までにコール・ポーターの楽曲の多くはジャズのスタンダード化しておりアルバムも多数リリースされているが、本曲はそういったコール・ポーターの人気作品群からすれば人気の無い曲であった[6]。
1955年にヘレン・メリルとクリフォード・ブラウンが共演したアルバム『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』がリリースされる。収録曲は有名スタンダード曲ばかりで、その中に含まれる本曲は当時とすれば無名に近い曲であったが、今日ではこのアルバムで最も人気の高いトラックとなっている[6]。メリルの歌声もさることながら、ブラウンの歌うようなメロディと構成力による通好みのアドリブ・ソロが、同時のジャズ・ミュージシャンたちに注目されたのである[6]。なお、このアルバムにおける本曲のアレンジは当時、新進気鋭であったクインシー・ジョーンズである[6]。本曲がジャズのスタンダードになるのは、これ以降のことになる。
邦題について
[編集]原題は、コール・ポーターらしいとも言えるが、英語文法的にはかなりまわりくどい表現となっている[6]。
日本語訳する際に問題となりやすいのは最後の「come home to」の「to」である。これはTough構文と呼ばれるもので、文頭の「You」が「come home」の目的語になっている表現であり、原題を言い換えるならば「It would be so nice to come home to you.[7](あなたのいる家に帰って行けたらなんと素敵なことだろう[6])」となり、家に帰るのは「あなた」ではなく「私」である。
忠実に日本語訳しようとすると上記のようになるのだが、邦題の「帰ってくれたらうれしいわ」は「歴史的な誤訳」とも評される[4]。この邦題の場合、家に帰るのは「私」ではなく「あなた」ということになり、意味が逆になっている。この邦題は、大橋巨泉がつけたものだが、後に大橋は、間違った愚かな奴がいると、翻訳の誤りを何度も語っている[8][9]。
今日では、かなり長くなるが原題カタカナ表記の『ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ』が邦題として使用されている[4][5][6]。
カバー
[編集]さまざまな歌唱のカバーバージョンがあるほか、インストゥルメンタルとしてもカバーされている。上述のようにヘレン・メリルとクリフォード・ブラウンの共演は代表的な名演として有名である[4]。映画ではほかに『ラジオ・デイズ』(ウディ・アレン監督)でダイアン・キートンが歌っている。
カヴァーした歌手やミュージシャンの一部である。
- アメリカ合衆国
-
- ヘレン・メリル『ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン』(1955年)[3][4][5][6]
- セシル・テイラー『ジャズ・アドヴァンス』(1956年)[5]
- アート・ペッパー『アート・ペッパー・ミーツ・ザ・リズム・セクション』(1957年)[5][6]
- アンドレ・プレヴィン『キング・サイズ』(1958年)[5]
- チェット・ベイカー『チェット』(1959年)[6]
- ジョー・スタッフォード『Jo + Jazz』(1960年)[4]
- ニーナ・シモン『アット・ニューポート』(1960年)[4]
- ジュリー・ロンドン『ジュリー・アット・ホーム』(1960年)[6]
- ケニー・クラーク&フランシー・ボラン『ザ・ゴールデン・エイト』(1961年)[5]
- ローズマリー・クルーニー『For the Duration』(1991年)[4]
- ジャッキー・テラソン『Push』(2010年)[6]
CM使用
[編集]日本では、テレビコマーシャルの楽曲としても使用されている。
出典
[編集]- ^ “The Week's Records”. Biilbaord (Nielsen Business Media) 54 (47): 25. (November 20, 1942). ISSN 0006-2510.
- ^ Rust, Brian; Debus, Allen G. (1973). The Complete Entertainment Discography: from the mid-1890s to 1942. New Rochelle, N. Y.: Arlington House. p. 584. ISBN 978-0-870-00150-5
- ^ a b c 『ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ』 - コトバンク、
『帰ってくれたらうれしいわ』 - コトバンク - ^ a b c d e f g h i j 「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ/帰ってくれたら嬉しいわ」『スタンダード・ヴォーカル名曲徹底ガイド』 下、音楽出版社、2006年、203頁。ISBN 978-4861710148。
- ^ a b c d e f g 「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」『ジャズ・スタンダード名曲徹底ガイド』 上、音楽出版社、2004年、219頁。ISBN 978-4900340930。
- ^ a b c d e f g h i j k l m 池上信次 (2019年5月14日). “クインシー・ジョーンズが掘りおこした名曲「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」|【ジャズを聴く技術 〜ジャズ「プロ・リスナー」への道6】”. サライ.jp. 2023年8月29日閲覧。
- ^ 越前敏弥「D-06 You'd be so nice to come home to」『越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文』(決定版)ディスカヴァー・トゥエンティワン、2019年。ISBN 978-4799325469。
- ^ You'd be so nice to come home to 大橋巨泉さん 2022年9月29日閲覧[リンク切れ]
- ^ 大橋美加『唇にジャズ・ソング: 恋の魔法を手に入れる方法』ヤマハミュージックメディア、1998年、[要ページ番号]頁。ISBN 978-4636720082。
- ^ a b 『ラヴァース・コンチェルト~最新ジャズ・オン・TV・コマ―シャル~』(1989年、マーキュリー・ミュージックエンタテインメント、JAN 4988011317361)