レッド・スペシャル
レッド・スペシャル Red Special | |
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メーカー/ブランド | ブライアン・メイと彼の父親によるオール・ハンドメイド |
製造時期 | 1963年 - 1964年 |
構造 | |
ボディタイプ | セミソリッド |
ペグヘッド角度 | 4° |
スケール長 | 24インチ |
フレット数 | 24 |
ネックジョイント | ボルト・オン |
材質 | |
ボディ |
オーク ランバーコア材 マホガニーベニヤ |
ネック | マホガニー |
フィンガーボード | オーク |
ナット | 樹脂 |
ハードウェア | |
ペグ | シャーラー |
ブリッジ | アルミ製ローラーブリッジ |
テールピース | トレモロ(オリジナル) |
コントロールノブ | アルミ製 (本人自作) |
電気系統 | |
ピックアップ | バーンズ トライ・ソニックの本人改造×3 |
コントロール | ピックアップセレクター、位相切り替えスイッチ |
カラーバリエーション | |
レッド | |
その他 | |
オリジナル設計・自作のため商用モデルではない。 | |
テンプレート | カテゴリ |
レッド・スペシャル (Red Special) は、イギリス人ロック・ギタリスト、ブライアン・メイが1960年代初期に父親のハロルド・メイと共同製作したエレクトリック・ギターである[1][2]。
ブライアンがデビュー時から使用している主力機器であり、ピックアップの直列接続や位相切り替えスイッチなど、一般的なエレクトリック・ギターとは大きく異なる仕様を持つ。七色の音が出せる唯一無二のギターとして知名度も高く、コピーモデルも製造されている。
概要
[編集]このギターの製作に費やされた期間は約2年間である。作業を始めた1963年8月、ブライアンと父ハロルドは、週末などの閑暇を製作に充てた。
ボディにはランバーコア(ブロックボード)と、家具として使用していたホワイトオークの机を用い、ネックにはブライアンの友人宅で廃棄予定だった、100年以上昔の暖炉に使われていたマホガニー[2]などの古材が使われている[3]。
作業のために新たに購入したものはペグくらいで、ピックアップも完全なオリジナル製の個体を搭載した(現在はバーンズ・トライソニック製。当時の写真や設計資料が現存する)。
ピックアップについては、本人が巻き直したとする記述もあるが、実際はハウリング防止のために、内部をアラルダイトで充填したのみで、コイルは巻き直していない。
ブライアンは、今日においても、必要に応じてレッド・スペシャルに様々な改良やメンテナンスを施している。
音色
[編集]ジョン・ディーコンが製作した「ディーキーアンプ」と組み合わせることで、ヴァイオリンなど、数種の楽器に似た音色が出せる。意図するハーモニーを多重録音することで、シンセサイザーのような音を出せるため、初期のクイーンのアルバムには「No Synthesizers」という注意書きが記載されていた。
ボディの色はワインレッドだが、『ウィ・ウィル・ロック・ユー』のミュージック・ビデオでは色が着いていないナチュラル・カラーのレプリカを使用している(ジョン・バーチの製品。後述)。
一見ソリッドギターのようだが、ボディの左右に大きな
このセミ・ホロー・ボディ構造と超ディープ・ジョイント(ネック部分がブリッジ・ピックアップとミドル・ピックアップの間に接続されている)された極太のネック、約150年程昔の古材などのコンビネーションが醸し出す音色は非常にユニークな響きを持つ。
さらに、ピックとしてイギリスの6ペンス硬貨を用いることで[3]、唯一無二のサウンドが得られる。なお、ネックが極太タイプになっているのは、ネック成形の際に、約6㎜の指板の厚みを計算に入れ忘れてしまったためである。
完成時はファズ回路を装備していたが、のちに取り外された。スイッチ用の穴をふさぐために、ピックガードに70年代頃まで赤いシールを、後年は黒いテープを貼っていたが、現在は貝殻のインレイで埋められている。
3個あるピックアップには、それぞれにオン・オフ・スイッチと、プラスとマイナスを入れ換える位相(フェイズ)スイッチがあり、3個ともシリーズ配線がされている(通常はパラレル配線)。その理由について、ブライアンは「当時一般的なギターがパラレル配線とは知らず、様々なピックアップの接続法を試した結果、シリーズ配線の方が音が良かったから」と語っている。
現在搭載しているバーンズ・トライソニックのピックアップについて「シングルコイルとハムバッキングの中間のパワーを持つ」と書かれる事が多いが、実際このピックアップのインピーダンスは7Ω程度と通常のシングルコイルと同程度である。しかし、ブライアンは「リアとセンターピックアップの正相直列接続」を基本セッティングとして、頻繁に(本人曰く全体の85パーセント程)使用しており、擬似的なハムバッキング状態のため、シングルコイルにもかかわらず、ハムバッキングの様なパワーと周波数特性を持つ事になった。
制作当時はまだ珍しかった24フレットのネックに24インチのショートスケール、アーミングによるチューニングの狂いを少なくするためのローラーブリッジと0フレットを採用している点も、ブライアンのセンスと演奏の利便性を追求した結果である。
コピーモデル
[編集]クイーンの活動でブライアンが有名になるにつれて、世界各地でコピーモデルの生産も行われるようになった。
非公認モデルとして、グレコ、Kid'sギター、RS Guitarsなどが多数のコピーモデルを製造した。そのうち、1976年に発売されたグレコの「BM-900」はブライアンに贈られ[4]、『懐かしのラヴァー・ボーイ』のミュージック・ビデオで使用された[5]。
ブライアンは、1980年代初頭までジョン・バーチが製作したナチュラル・フィニッシュのコピーモデルをサブとして使用していたが、本人監修での製造は1983年から3年間ほどで打ち切られた。
公認モデルでは、イギリスの楽器メーカー、バーンズが2001年から製造していた本人公認のコピー・モデルがあり、2006年から『Brian May Guitars』という自身の名前を冠したブランドがバーンズの生産を契約ごとに引き継ぎ、現在も廉価モデルとして販売継続している(本人仕様に近い高額モデルもある)。
レアな非公認レプリカとしては、THE ALFEE(彼らもQueenの影響を少なからず受けたグループである)の高見沢俊彦が、バーンズ製の他に、ESP製コピーモデル(ただしボディカラーはオフホワイトに、ブリッジはフロイド・ローズ)を所有し、クイーンの曲を演奏する際などに使用している。
神奈川県逗子市にあるギター工房・ケイズ・ギターワークス代表の伊集院香崇尊も公認モデルを数種類販売している[6]。伊集院はレッド・スペシャルを世界で初めて修復したグレッグ・フライヤーを通してブライアンの認可を得ており、レッド・スペシャルを作ることを目的として、2001年にギター工房を立ち上げ、2005年にグレッグ・フライヤーと最初の本人公認モデルの共同開発を行った。
脚注
[編集]- ^ “The Red Special Story”. "Brian May Guitars – The Official web site". 2010年2月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年2月5日閲覧。
- ^ a b Huntman, Ruth (2014年10月18日). “Brian May: Me, my dad and ‘the old lady’”. The Guardian 2020年2月5日閲覧。
- ^ a b “QUEENのブライアン・メイとコラボしたセイコー5登場!”. ニフティニュース (ニフティ). (2020年1月26日) 2020年2月5日閲覧。
- ^ Obrecht, Jas (January 1983). “Brian May Interview”. Guitar Player Magazine (Future US) .
- ^ Queen - Good Old Fashioned Lover Boy (Top Of The Pops, 1977) - YouTube
- ^ ASCII. “QUEENブライアン・メイのギターを日本人製作家が作るまで (1/5)”. ASCII.jp. 2020年2月1日閲覧。
参考文献
[編集]- 「レッド・スペシャル・メカニズム クイーンと世界をロックさせた手作りギターの物語」著者 ブライアン・メイ+サイモン・ブラッドリー 発売元 DU BOOKS(2015年12月) ISBN 978-4-907583-38-5