エディントンのイプシロンは、数学で用いられる記号。交代記号、順列記号、レヴィ=チヴィタ記号(英語: Levi-Civita symbol)、レヴィ=チヴィタの記号、レヴィ=チヴィタの完全反対称テンソルなど様々な呼び名がある。
添字を使わないテンソル表記法においてはホッジ双対の概念に置き換えられる。名前はアーサー・エディントンとトゥーリオ・レヴィ=チヴィタにちなむ。
2階のエディントンのイプシロンは次のように定義される。
- .
また、
これらの値は次の 2×2 反対称行列として表される。
- .
この2階のエディントンのイプシロンはあまり一般的ではないが、超対称性理論[1]やツイスター理論[2]の分野においては2成分スピノルの文脈でしばしば現れる。
i, j, k はそれぞれ 1, 2, 3 のいずれかであるとする。このとき、
つまり、添字が (1, 2, 3) の置換の場合はその符号を、添字に重複する数字を持つ場合は 0 を値に持つテンソルである。
符号関数 sgn を用いると
は基本的な性質である。
また、
が成り立つ。ここで δij はクロネッカーのデルタである。
第1の公式より、
が導かれる。
3×3行列式は
と表される。
ベクトル のベクトル積は
として表される。
スカラー三重積は
となる。
ベクトル三重積の公式
は以下のように証明できる。
エディントンのイプシロンはn次元へ拡張することができる(一般化されたエディントンのイプシロン)[3]:
ただし、i1,i2,…,in が1,2,…,n の偶置換の場合は (even) に、奇置換の場合は (odd) に、それ以外は (otherwise) に対応する。
実際に 4 階に拡張したものは、相対論的にマクスウェル方程式を記述するのに用いられる。
一般化されたエディントンのイプシロンの性質
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n 次元とし、すべての添字 i1 ,…, in , j1 ,…, jn は 1, 2,…, n の範囲の値を取るとする。
δj1j2…jm
i1i2…imを階数m の一般化されたクロネッカーのデルタ
とすると、
が成り立つ。
また、以下のn + 1個の公式
は#性質の節で述べた式の一般化である。
任意の曲線座標系(英語版)において、多様体の計量テンソルが
定義されていない場合でも上で定義したエディントンのイプシロンはテンソル密度(tensor density)であるとの異なる2つの解釈がある。
weight +1 の反変(contravariant) テンソル密度として
解釈可能であるし、
weight −1の共変(covariant) テンソル密度とも解釈可能である。
4次元では階数4の一般化されたクロネッカーのデルタを使って
と表せる。数値は同じであり、特に符号も等しいことに注意する。
計量テンソル場があり、その計量を用いて接ベクトル空間の正規直交基底が得られれば、エディントンのイプシロンに一致する通常の反変テンソル場および共変テンソル場を定義できる。これら2つを混同していけないし、上述のテンソル密度場と混同してもいけない。計量テンソルによる添字の上げ下げによって一方のテンソル場から他方のテンソル場に変換することは、計量テンソルに由来する符号を除いて、通常通り行える。
例えばミンコフスキー空間 (特殊相対論における4次元時空) では
となる。(符号に注意)
これより、
および
が導かれる。
- ^ Labelle, P. (2010). Supersymmetry. Demystified. McGraw-Hill. pp. 57–58. ISBN 978-0-07-163641-4
- ^ Hadrovich, F.. “Twistor Primer”. 2013年9月3日閲覧。
- ^ D.C. Kay (1988). Tensor Calculus. Schaum’s Outlines, McGraw Hill (USA). ISBN 0-07-033484-6