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ロン・J・ジョンストン

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ロン・J・ジョンストン

ロン・J・ジョンストン (Ron J. Johnston)[1]R・J・ジョンストン (R. J. Johnston)[2][3]などとして知られる、ロナルド・ジョン・ジョンストン(Ronald John Johnston, OBE, FAcSS, FBA1941年3月30日[4] - 2020年5月29日[5][6])は、イングランドスウィンドン生まれ[7]イギリス人文地理学者で、特に学史や本質論などの地理学の基礎論に取り組んだほか、都市社会地理学選挙地理学英語版の分野に貢献した。彼の関心領域の広さは、一方で計量的手法を広範囲に用いながら、社会的、政治的な主題について批判地理学的に扱うこともしていたという事実からも明らかである[7]。ジョンストンはまた、非常に生産的な著作家であり、2009年12月の時点で、共著を含めると50冊以上の著書と、800本以上の論文を発表しており、さらに翻訳や改訂版を別々に数えると、編者となっていた論文集は共著者となったものを含めて40冊以上になっていた[8][9]。編者となった書籍の中には、『The Dictionary of Human Geography』もあり、この辞典の初版から4版まで、ジョンストンは編者代表であった。

経歴

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1962年に学士、1964年に修士をマンチェスター大学から取得した後、ジョンストンはオーストラリアに渡り、メルボルンモナシュ大学に学んだ。そこでPnDを取り、勃興しつつあった計量革命に関わるようになった[7]。最初の論文は、都市社会地理学分野においてこの時期に書かれた。1967年から1974年まで、ニュージーランドクライストチャーチにあるカンタベリー大学で教職に就き、選挙地理学への関心を発展させ始めた。次いで、シェフィールド大学の教授職に任じられた。1979年に最初に刊行した『Geography and Geographers』は、その後、数年おきに改訂が加えられて版を重ね、その様々な版に基づいて4ヶ国語の翻訳書が出版された[9]。同年、ジョンストンは2つの学術誌『Progress in Human Geography』と『Environment and Planning A』の編集委員になった。1981年、ジョンストンが何百もの項目を執筆した『The Dictionary of Human Geography』の初版が刊行された[9]。以降、この分野における権威ある用語辞書としての地位を保っている[10]。シェフィールド大学で学術担当副学長代理 (pro-vice-chancellor for academic affairs) を務めた後、1992年にジョンストンはエセックス大学の副学長となった[11]1995年、ジョンストンはブリストル大学の教授となった。2006年には『Progress in Human Geography』と『Environment and Planning A』の編集委員をいずれも辞任した。

2020年5月29日夜、心臓発作のため死去[5]。79歳没[12][13]

評価

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ジョンストンは、何十年にもわたって最も頻繁に引用される地理学者のひとりであった[note 1]。ジョンストンが受賞した権威ある賞の中には、いずれも王立地理学会が授与したマーチソン賞英語版1985年)、ヴィクトリア・メダル1990年)、1999年国際地理学フェスティバルフランス語版において授与されたヴォートラン・ルッド国際地理学賞アメリカ地理学会からの生涯功労賞(2009年)などが含まれている[8]。さらに、名誉学位はエセックス大学(D.Univ. 1996年[11]、モナシュ大学(LL.D. 1999年[14]、シェフィールド大学(Litt.D. 2002年[15]バース大学(Litt.D. 2005年から授与されている[16]。ジョンストンは、1999年に創設された英国社会科学院英語版 (FAcSS) の創設メンバー(後のフェロー)のひとりに選ばれた[4]2011年女王誕生記念叙勲英語版において、ジョンストンは学術への貢献により大英帝国勲章 (OBE) を授与された[17]

おもな著書

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モノグラフ

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  • Johnston, R. J. (1971): Urban Residential Patterns: An Introductory Review. London (G . Bell & Sons). ISBN 0-7135-1675-5
  • Johnston, R. J. (1976): The world trade system: some enquiries into its spatial structure. London (G . Bell & Sons).
  • Johnston, R. J. (1978): Multivariate Statistical Analysis in Geography: A Primer on the General Linear Model. London (Longman). ISBN 0-582-48677-7
  • Taylor, P. J. and R. J. Johnston (1979): Geography of Elections. Harmondsworth (Penguin). ISBN 0-7099-0056-2
  • Johnston, R. J. (1979): Geography and Geographers: Anglo-American Human Geography since 1945. London (Edward Arnold). ISBN 0-7131-6239-2 (7th edition announced for publication in 2010)
    • 第4版に基づく日本語訳:(立岡裕士 訳)現代地理学の潮流 : 戦後の米・英人文地理学説史 上・下、地人書房、1997年/1999年[2]
  • Johnston, R. J. (1991): A Question of Place: Exploring the Practice of Human Geography. Blackwell (Oxford). ISBN 0-631-15603-8

編著書

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  • Johnston, R .J. et al. (eds.) (1981): The Dictionary of Human Geography. Oxford (Blackwell). ISBN 0-631-10721-5 (5th edition published in 2009)
  • Johnston, R. J., P. J. Taylor and Michael Watts (eds.) (1995): Geographies of Global Change: Remapping the World in the Late Twentieth Century. London (Blackwell). ISBN 0-631-19327-8

注釈

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  1. ^ SSCISCIによる引用記録に基づく分析によると、ジョンストンは1981年から1985年の期間において2番目に頻繁に引用された地理学者であり、1986年から1990年の期間においては3番目に頻繁に引用された地理学者であった (Bodman, A. (1992): Holes in the Fabric. More on the Master Weavers in Human Geography. Transactions of the Institute of British Geographers 17 (1): 108–109)。これとは別に、SSCI と A&HCI に基づいて、1981年から2002年10月までの20年以上にわたる引用数の分析によると、ジョンストンは1000回以上引用された12人の地理学者のひとりとされた (Yeung, H. W. (2002): Deciphering citations. Environment and Planning A 34 (12): 2093–2102)。

脚注

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  1. ^ a b 場所をめぐる問題 : 人文地理学の再構築のために (大学の地理学)”. 国立国会図書館. 2019年4月29日閲覧。
  2. ^ a b 現代地理学の潮流 : 戦後の米・英人文地理学説史 上”. 国立国会図書館. 2019年4月29日閲覧。現代地理学の潮流 : 戦後の米・英人文地理学説史 下”. 国立国会図書館. 2019年4月29日閲覧。
  3. ^ a b 世界貿易の空間システム”. 国立国会図書館. 2019年4月29日閲覧。
  4. ^ a b British Academy Fellows Archive
  5. ^ a b Derek Gregory (2020年5月30日). “Big Ron | geographical imaginations”. 2020年5月31日閲覧。
  6. ^ Michiel van Meeteren on Twitter 2020年5月31日閲覧
  7. ^ a b c Sidaway, J. (2009): Johnston, R. J. In: International Encyclopedia of Human Geography: 11–13. Elsevier (Amsterdam).
  8. ^ a b Professor Johnston receives a lifetime achievement award Archived 2014-11-29 at the Wayback Machine. Announcement by the University of Bristol. Published 3 December 2009, retrieved 3 February 2010
  9. ^ a b c List of publications, as of 2009
  10. ^ Setten, G. (2008): Encyclopaedic Vision: Speculating on The Dictionary of Human Geography. Geoforum 39 (3): 1097–1104.
  11. ^ a b University of Essex Calendar Archived 2012−10−07, at the Wayback Machine.
  12. ^ “Former Essex Vice-Chancellor and outstanding geographer dies aged 79” (英語). University of Essex. (2020年6月2日). https://www.essex.ac.uk/news/2020/06/02/former-essex-vice-chancellor-and-outstanding-geographer-dies-aged-79 2020年6月6日閲覧。 
  13. ^ “Professor Ronald John Johnston OBE, FAcSS, FBA (1941-2020)” (英語). University of Bristol. (2020年6月5日). http://bristol.ac.uk/news/2020/june/professor-ronald-johnston.html 2020年6月6日閲覧。 
  14. ^ Roll of Honorary Graduates at Monash University (1990–1999), retrieved on 22 February 2010
  15. ^ University of Sheffield Honorary Degree Recipients 2002, retrieved on 22 February 2010
  16. ^ University of Bath Honorary Graduates 2005
  17. ^ "No. 59808". The London Gazette (Supplement) (英語). 11 June 2011. p. 11.