ヴァレンティーナ・リシッツァ
ヴァレンティーナ・リシッツァ | |
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2010年 | |
基本情報 | |
出生名 | Valentina Lisitsa |
生誕 | 1973年12月11日(50歳) |
出身地 | ウクライナ・キエフ |
職業 | ピアニスト |
担当楽器 | ピアノ |
活動期間 | 1991年 - |
レーベル | DECCA |
公式サイト | Valentinalisitsa.com |
ヴァレンティーナ・リシッツァ(ロシア語:Валентина Лисица、ウクライナ語:Валентина Лисиця、ラテン転写 :Valentyna Lysytsya、英字表記:Valentina Lisitsa、1973年12月11日 - )は、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国(現:ウクライナ)生まれのピアニスト。
ベーゼンドルファー社製のピアノを愛用。夫のアレクセイ・クズネツォフもピアニストで、リシッツァとピアノ・デュオを演奏していた。
来歴
[編集]ヴァレンティーナ・リシッツァは、3歳でピアノを始め、1年後には最初のソロ・コンサートを催す。若くして音楽への才能を現したが、当時の夢はプロのチェス・プレーヤーになることであった。
ルイセンコ記念キエフ特別中等音楽学校を卒業後、キエフ音楽院へ進学。数々のインタヴューの中で「私は前途有望な学生として教育を受けたが常に正反対のことばかりしていた。教える側にとって難しかったはずだ」と話している。同音楽院で後に夫となるアレクセイ・クズネツォフと出会う。1991年、2台ピアノのコンクールで最高峰と言われるマレイ・ドラノフ国際2台ピアノコンクールで優勝。1992年に渡米。同年クズネツォフと結婚。
特定の時代や作曲家を超えて、幅広いレパートリーを持つピアニストである。
主な演目は Beethoven, Rachmaninov, Liszt, Schubert, Schumann, Chopin, Brahms, Prokofiev, Shostakovich, Tchaikovsky, Scriabin, Modest Musorgski, J.S. Bach, Philip Glassなど。
多くのピアノ独奏曲を録音した後、1995/1996シーズンはニューヨーク市リンカーン・センターでのモストリー・モーツァルト・フェスティバル(Mostly Mozart Festival)に出演。 1996/1997シーズンはフランス国立管弦楽団(シャルル・デュトワ指揮)のアメリカ・ツアーにクズネツォフと共に参加。 また、カーネギー・ホール、エイヴリー・フィッシャー・ホール、ウィーン楽友協会など世界を代表するコンサートホールで演奏した。
2006年、クズネツォフが制作してアマゾンで売り出したDVD『Valentina Lisitsa Chopin Etudes』は、彼らによるYouTube投稿を機にアマゾンでの売上が急増。リシッツァは、インターネットを通してついに世界的な名声を得るに至った。2020年6月時点でYoutubeチャンネル「ValentinaLisitsa」の登録者は60万人を超える。
2012年5月にロンドンのデッカ・レコード(Decca Records)[1]と契約。同年6月、ロイヤル・アルバート・ホールで初リサイタルを行い、そのライヴは録音録画されCD/DVD発売されている。
2013年発売の「Valentina Lisitsa plays Listz」(リシッツァ・プレイズ・リスト)については、公式サイト上でのリシッツァの話によると、フランツ・リストは子供時代からよく弾いていたが、その名曲を収録した一般的なベスト盤を作ることを趣旨としたのではないとのこと。
2009年ヒラリー・ハーンの伴奏者として初来日し、1月7日~18日まで日本全国公演の後、1月19日トッパンホールにて初来日ソロ・リサイタル公演で演奏。
2013年2月のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の本拠地での初演奏を皮切りにヨーロッパ全土、ワシントン、ブリスベン(オーストラリア)、ソウルでリサイタルを開催。2014年はロサンゼルス、パリ(サル・プレイエル他)、ミラノ、ウィーン、ドレスデン、ライプツィヒ、イスタンブール、サンパウロで演奏。同年、ベルリン交響楽団のソリストとして来日し、6月24~7月6日まで日本全国公演。その際、7月4日に東京渋谷のタワーレコードでミニ・ライブとサイン会が開催された。2015年は数々の交響楽団(シンシナティ交響楽団、ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団、プラハ交響楽団ほか)のソリストとして演奏。
2019年3月、「Valentina Lisitsa - Tchaikovsky Complete Solo Piano Works」 (Box edition of 10 CD) がDECCAから発売となった。
ウクライナ情勢についての政治的言動
[編集]ウクライナ出身ではあるが、2015年頃からウクライナ政府のNATO加盟の動きを「欧米による扇動」と否定的な見解を表明し、ロシアによるウクライナ併合を歓迎する旨の発言をしている。2021年9月にはドネツク人民共和国(ウクライナからの独立を一方的に宣言した親ロシア派勢力)の市民権を得た[2]。2022年5月には、マリウポリでドネツク人民共和国の主催した「マリウポリ解放」を祝う式典や野外コンサートに出演した[3][4]。
こうした親ロシア[5][6]・親プーチン[4][7]的な言動のため、演奏会や録音をキャンセルされるようになった。2015年4月にはトロント交響楽団の演奏会でラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏する予定だったが、楽団側から出演をキャンセルされた[5]。2022年1月には音楽事務所IMG Artistsが、リシッツァとNaïveレーベルが3年間の録音契約を結んだことを発表していたが[8]、2022年5月時点でIMG Artistsはリシッツァのマネジメントから手を引いており[8]、Naïveレーベルのウェブサイトからもリシッツァの名前が消えた[8]。2022年6月にはブダペストでグリーグのピアノ協奏曲をハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団と演奏する予定となっていたが、5月にキャンセルされた[6]。2023年4月に予定されていたヴェネツィア・フェニーチェ劇場での演奏会も2022年12月に中止が決まった[9][7]。
かつてはアメリカを拠点に世界中で演奏活動を行っていたが、2023年1月時点のインタビューでは、夫と別居してモスクワに住み、ロシア国内で演奏活動をしていると語っている[10]。
DISCOGRAPHY - CD/DVD
[編集]発表 | レーベル 型番 |
タイトル 収録年月日 |
備考 |
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1996 | Audiofon | Valentina Lisitsa - Virtuosa Valentina, Volume 1 Paraphrase on Figaro's Aria from "Barber of Seville," LISZT - Hungarian Rhapsody No. 2, SCHUBERT-LISZT - Die Stadt, Gute Nacht, Erstarrung, Erlknig, LISZT - Paganini Etude No. 3 (La Campanella), LISZT - Ballade No. 2 in B minor, Spanish Rhapsody, STRAUSS-GODOWSKY - Symphonic Metamorphosis on Themes from "Die Fledermaus"| |
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1996 | Audiofon | Valentina Lisitsa - "Valentina" Mozart - Piano Sonata No. 12 in F, K. 332, Beethoven - 3 Contradances, Chopin - Berceuse, Opus 57, Weber - Rondo Brillante, Rachmaninoff - 3 Preludes, Prokofiev - Piano Sonata No. 7 in B-flat, Opus 83 |
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1997 | Audiofon | Virtuosa Valentina-Volume 2 Rachmaninov - Moments Musicaux, Op. 16 Etude Tableaux, Opus 39, No. 6, Liszt - Hungarian Rhapsody, No. 12 Sonata in B minor, Transcendental Etude No. 12, Schubert-Liszt - Dopperganger, Aufenthalt |
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2010 | Naxos
Universal Music Japan |
Beethoven, Schumann, Thalberg, Listz - Valentina Lisita, Piano ヴァレンティナ・リシッツァ: ピアノ・リサイタル |
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2011 | Deutsche Grammophon
Universal Music Japan |
Charles Ives Foour Sonatas - Hilary Hahn (violin), Valentina Lisitsa (piano) アイヴズ:ソナタ集 - ヒラリー・ハーン(バイオリン)、ヴァレンティーナ・リシッツァ(ピアノ) |
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2012 | DECCA | Valentina Lisitsa Live at the Royal Albert Hall 収録:2012年6月 ロイヤル・アルバート・ホール (ロンドン) |
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2012 | DECCA | Valentina Lisitsa Live at the Royal Albert Hall 収録: 2012年6月 ロイヤル・アルバート・ホール (ロンドン) |
◎DVD |
2012 | DECCA
Universal Music Japan |
Sergei Rachmaninov Piano Conceto – Valentina lisitsa, Piano ラフマニノフ:ピアノ協奏曲全集 |
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2013 | DECCA | Sergei Rachmaninov Rhapsody on a Theme of Paganini Valentina Lisitsa, Piano, with London Symphony Orchestra/Michael Francis |
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2013 | DECCA | Sergei Rachmaninov Piano Concerto No.1 Valentina Lisitsa, Piano, with London Symphony Orchestra/Michael Francis |
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2013 | DECCA
Universal Music Japan |
Valentina Lisitsa plays Listz リシッツァ・プレイズ・リスト |
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2014 |
DECCA Universal Music Japan |
Valentina Lisitsa Chasing Pianos – The Piano Music of Michael Nyman ピアノ・レッスン~リシッツァ・プレイズ・マイケル・ナイマン |
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2014 | DECCA
Universal Music Japan |
Valentina Lisitsa Etudes –Frederic Chopin, Robert Schumann ショパン:24の練習曲、シューマン:交響的練習曲 |
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2014 | DECCA | Valentina Lisitsa plays Philip Glass リシッツァ・プレイズ・フィリップ・グラス |
2 CD |
2015 | DECCA | Alexander Scriabin: Nuances - Valentina Lisita, Piano アレクサンドル・スクリャービン - ヴァレンティーナ・リシッツァ |
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2016 | DECCA | Love Story – Piano Themes from Cinema’s Golden Age - Valentina Lisita, Piano ラヴ・ストーリー ~ シネマ黄金時代のピアノ・テーマ - リシッツァによるピアノ協奏曲風映画音楽集 |
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2019 | DECCA | Valentina Lisitsa - Tchaikovsky Complete Works for Solo Piano (Box of 10CD) リシッツァによるチャイコフスキー (CD 10枚組 Boxセット) CD1 (77.52): Early Works, CD2 (63.17): Songs & Dedications. CD3 (59.56): The Sonatas, CD4 (48.01): Seasons, CD5 (64.08): Chilren's Album - 6 Morceaux op.51, CD6 (64.47): 12 Morceaux op.40 - Dumka, CD7 (70.40): Late Works, CD8 (76.37): Works Without Opus Numbers (with Alexei Kuznetsoff piano), CD9 (86.06): The Nutcracker, CD10 (54.46): Orchestral Works |
10 CD |
脚注
[編集]- ^ http://www.deccaclassics.com/us/artist/lisitsa/biography
- ^ “Well-known US pianist becomes DPR citizen” (英語). ドネツク通信社 (dan-news.ru) (2021年9月30日). 2023年3月10日閲覧。
- ^ Norman Lebrecht (2022年5月11日). “Lisitsa played in 'liberated' Mariupol” (英語). Slipped Disc. 2023年3月10日閲覧。
- ^ a b Simon Cherner (2022年5月16日). “La pianiste Valentina Lisitsa joue dans les ruines de Marioupol, «libérée» par les Russes” (フランス語). フィガロ. 2023年3月10日閲覧。
- ^ a b “Ukraine-born pianist's Toronto concert cancelled over pro-Russia remarks” (英語). ガーディアン (2015年4月10日). 2023年3月6日閲覧。
- ^ a b “Budapest Margaret Island Theater Cancels Performance of Pro-Russian Ukrainian Pianist” (英語). Hungary Today (2022年5月21日). 2023年3月17日閲覧。
- ^ a b Norman Lebrecht (2022年12月28日). “Pro-Putin soloist is shut out of Venice” (英語). Slipped Disc. 2023年3月6日閲覧。
- ^ a b c Christophe Huss (2022年5月17日). “Le turbulent retour musical et politique de Valentina Lisitsa” (フランス語). Le Devoir. 2023年3月16日閲覧。
- ^ Alice D’Este (2022年12月28日). “Venezia, la pianista filo-Putin suona alla Fenice: concerto annullato dopo le polemiche” (イタリア語). コリエーレ・デラ・セラ. 2023年3月6日閲覧。
- ^ Norman Lebrecht (2023年1月25日). “Valentina Lisitsa: My husband’s now driving a taxi” (英語). Slipped Disc. 2023年3月10日閲覧。