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ヴェロキラプトル亜科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヴェロキラプトル亜科
ヴェロキラプトル・モンゴリエンシスの頭骨
地質時代
前期 - 後期白亜紀
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
下目 : テタヌラ下目 Tetanurae
階級なし : デイノニコサウルス類 Deinonychosauria
: ドロマエオサウルス科
Dromaeosauridae
階級なし : 真ドロマエオサウルス類
Eudromaeosauria
亜科 : ヴェロキラプトル亜科
VelociraptorinaeBarsbold, 1983
学名
Velociraptorinae
Barsbold, 1983
和名
ヴェロキラプトル亜科
下位分類群(

ヴェロキラプトル亜科(ヴェロキラプトルあか、Velociraptorinae)は、ドロマエオサウルス科に属する獣脚類恐竜の亜科。最初期の属はイギリスから産出したヌテテスであるが、ドイツゴスラー付近で後期ジュラ紀キンメリッジアン期の地層からも未同定のヴェロキラプトル亜科恐竜が複数発見されている[2]

特徴

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ヴェロキラプトル亜科の頭蓋骨の比較

大半のヴェロキラプトル亜科恐竜は小型動物であったが、ドロマエオサウルス亜科に匹敵する大型の種もいた。この大型種はイギリスワイト島から単離した歯が産出しており、大きさはユタラプトルの歯に相当するが、歯やその鋸歯状構造から判断するにヴェロキラプトル亜科のものであるとされる[3]

2007年、ヴェロキラプトルの前肢の骨の表面に小さなコブが学研された。同様の特徴は現生鳥類の骨にも見られ、次列風切の存在を示している。このことにより、ヴェロキラプトル亜科や他のマニラルプトル類にも羽毛が存在した直接的証拠が初めてもたらされた[4]

区別する解剖学的特徴

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ヴェロキラプトル亜科は以下の特徴によって識別できる。

Currie (1995)[5]
  • ドロマエオサウルス科のうち、上顎骨歯と歯骨歯において前方カリナの方が後方カリナよりも鋸歯状構造が小さいもの。かつ第二前上顎骨歯が第三および第四前上顎骨歯よりも大幅に大きいもの。
  • ドロマエオサウルス科のうち、横から見た際に鼻骨が窪んでいるもの。
Turner et al. (2012) [6]
  • 基蝶形骨の凹部の後方の開口部が小さな円形の2つの孔に分かれている。 孔は薄い骨の弓により分けられている。
  • 背側の中耳の凹部が深く、後外側方に向いて窪んでいる。
  • 全ての脊椎に側腔(pleurocoels)が存在する。

分類

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ヴェロキラプトル亜科の骨格図

ヴェロキラプトル亜科はBarsboldにより1983年に設立された際、ヴェロキラプトルとその近縁属種を含むグループとされていた[7]。時が経って1998年、ポール・セレノがヴェロキラプトル亜科を系統群として定義し、ドロマエオサウルスよりもヴェロキラプトルに近縁な全てのドロマエオサウルス科を含むグループと定義された[8]。ドロマエオサウルス科がヴェロキラプトルに近縁であると判明してからは、どの属がドロマエオサウルスに近縁であるか、基盤的であるか、あるいはヴェロキラプトル亜科に属するかは見解が大きく割れている。

Novas and Pol (2005) ではヴェロキラプトル亜科は従来の見解に近い系統群像が採用され、ヴェロキラプトルとデイノニクスおよび後に命名されたツァーガンが内包された。Turner et al. (2012) の系統解析でも従来の単系統のヴェロキラプトル亜科が支持された[6]。一方でLongrich and Currie (2009)ではデイノニクスはヴェロキラプトル亜科ともドロマエオサウルス亜科とも異なる真ドロマエオサウルス類とされ、サウロルニトレステスもより基盤的なサウロルニトレステス亜科というグループに分類された[9]。2013年に行われた大規模な系統解析では、従来のヴェロキラプトル亜科をヴェロキラプトルよりも基盤的とする結果もあれば、よりドロマエオサウルスに近縁でドロマエオサウルス亜科をなす結果も得られた。また、それまで多くの系統解析でヴェロキラプトル亜科とされていたバラウルは本研究で鳥群であることが判明した[10]

23分類群に114の特徴を使用した、ニコラス・ロングリッチとフィリップ・J・カリーによる2009年の系統解析に基づくクラドグラム[9]

真ドロマエオサウルス類
サウロルニトレステス亜科

アトロキラプトル

バンビラプトル

サウロルニトレステス

デイノニクス

ヴェロキラプトル亜科
未命名

ヴェロキラプトル

イテミルス

unnamed

アダサウルス

ツァーガン

リンヘラプトル

ドロマエオサウルス亜科

ドロマエオサウルス

アキロバトル

ユタラプトル

111分類群に474の特徴を使用した、ターナーらによる2012年の系統解析に基づくクラドグラム[6]

真ドロマエオサウルス類

ドロマエオサウルス亜科

ヴェロキラプトル亜科

バンビラプトル

ツァーガン

サウロルニトレステス

アダサウルス

デイノニクス

ヴェロキラプトル

バラウル

ディネオベラトルの記載の際にJasinski et al. 2020 で行われた系統解析に基づくクラドグラム[11]

真ドロマエオサウルス類

サウロルニトレステス亜科

ドロマエオサウルス亜科

デイノニクス

アダサウルス

ユタラプトル

アキロバトル

ヴェロキラプトル亜科

アケロラプトル英語版

ヴェロキラプトル・モンゴリエンシス

ヴェロキラプトル・オスモルスカエ

ディネオベラトル

ツァーガン

リンヘラプトル

脚注

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  1. ^ Hartman, S.; Mortimer, M.; Wahl, W. R.; Lomax, D. R.; Lippincott, J.; Lovelace, D. M. (2019). “A new paravian dinosaur from the Late Jurassic of North America supports a late acquisition of avian flight”. PeerJ 7: e7247. doi:10.7717/peerj.7247. PMC 6626525. PMID 31333906. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6626525/. 
  2. ^ van der Lubbe, T., Richter, U. and Knotschke, N. (2009). "Velociraptorine dromaeosaurid teeth from the Kimmeridgian (Late Jurassic) of Germany." Acta Palaeontologica Polonica, 54(3): 401-408.
  3. ^ Naish, D. Hutt, and Martill, D.M. (2001). "Saurischian dinosaurs: theropods." in Martill, D.M. and Naish, D. (eds). Dinosaurs of the Isle of Wight. The Palaeontological Association, Field Guides to Fossils. 10, 242–309.
  4. ^ Turner, A.H.; Makovicky, P.J.; Norell, M.A. (2007). “Feather quill knobs in the dinosaur Velociraptor”. Science 317 (5845): 1721. Bibcode2007Sci...317.1721T. doi:10.1126/science.1145076. PMID 17885130. 
  5. ^ Currie, P.J. 1995. New information on the anatomy and relationships of Dromaeosaurus albertensis (Dinosauria: Theropoda). Journal of Vertebrate Paleontology 15: 576–591.
  6. ^ a b c Turner, A. H.; Makovicky, P. J.; Norell, M. A. (2012). “A Review of Dromaeosaurid Systematics and Paravian Phylogeny”. Bulletin of the American Museum of Natural History 371: 1–206. doi:10.1206/748.1. hdl:2246/6352. 
  7. ^ Barsbold, R. (1983). “Хищные динозавры мела Монголии [Carnivorous dinosaurs from the Cretaceous of Mongolia]” (ロシア語). Transactions of the Joint Soviet-Mongolian Paleontological Expedition 19: 89. http://www.geokniga.org/bookfiles/geokniga-hishchnye-dinozavry-mela-mongolii.pdf.  Translated paper
  8. ^ Sereno, P. C. (1998). “A rationale for phylogenetic definitions, with application to the higher-level taxonomy of Dinosauria”. Neues Jahrbuch für Geologie und Paläontologie - Abhandlungen 210 (1): 41–83. doi:10.1127/njgpa/210/1998/41. 
  9. ^ a b Longrich, N. R.; Currie, P. J. (2009). “A microraptorine (Dinosauria–Dromaeosauridae) from the Late Cretaceous of North America”. Proceedings of the National Academy of Sciences 106 (13): 5002−5007. doi:10.1073/pnas.0811664106. 
  10. ^ Godefroit, Pascal; Cau, Andrea; Hu, Dong-Yu; Escuillié, François; Wu, Wenhao; Dyke, Gareth (2013). “A Jurassic avialan dinosaur from China resolves the early phylogenetic history of birds”. Nature 498 (7454): 359–362. Bibcode2013Natur.498..359G. doi:10.1038/nature12168. PMID 23719374. 
  11. ^ Jasinski, S. E.; Sullivan, R. M.; Dodson, P. (2020). “New Dromaeosaurid Dinosaur (Theropoda, Dromaeosauridae) from New Mexico and Biodiversity of Dromaeosaurids at the end of the Cretaceous”. Scientific Reports 10 (1). doi:10.1038/s41598-020-61480-7. ISSN 2045-2322.