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久保事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
最高裁判所判例
事件名 無効確認等請求事件
事件番号 平成18(受)347
平成19年7月13日
判例集 集民第225号117頁
裁判要旨

 1 学校法人が,その設置,運営する大学に勤務する教授に対し,同教授の地元新聞紙上における発言等を理由として戒告処分をした場合において,上記発言が新聞紙上に掲載されても上記学校法人の社会的評価の低下毀損を生じさせるとは認め難いなど判示の事情の下では,上記戒告処分は懲戒権を濫用するものとして無効である。
2 学校法人が,その設置,運営する大学に勤務する教授に対し,教授会の決議を受けて,教授会への出席その他の教育諸活動をやめるよう求める要請をした場合において,上記学校法人の規程上,業務命令権の行使が教授会等の機関に専権的に委任されているとは認められないなど判示の事情の下では,上記要請は上記学校法人が使用者としての立場から上記教授に発した業務命令に当たり,その無効確認を求める訴えは適法である。

3 学校法人が,その設置,運営する大学に勤務する教授に対し,業務命令として,教授会への出席その他の教育諸活動をやめるよう求める要請をした場合において,それが制裁的意図に基づく差別的取扱いとみられてもやむを得ない行為であるなど判示の事情の下では,上記要請は,業務上の必要性を欠き,社会通念上著しく合理性を欠くものであって,業務命令権を濫用するものとして無効である。
第二小法廷  
裁判長 中川了滋
陪席裁判官 津野修 今井功 古田佑紀
意見
多数意見 全員一致
意見 なし
反対意見 なし
参照法条
労働基準法89条、民法623条、労働基準法第2章 労働契約、民訴法134条
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久保事件(くぼじけん)とは、2000年鈴鹿国際大学教授久保憲一部落解放同盟の肝煎りによる三重県人権センターへの批判的発言を理由に教授職を解任された事件。

経緯

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1999年11月5日、久保が『三重タイムズ』紙上でインタビューを受け、「三重県人権センターを調査されたようですが、どのような問題点がありましたか」との質問に対して

「想像以上にひどいものでした。人権センターといってもほとんどが部落問題で占められている。あとの二割ほどが反日、自虐史ですね。どういう子どもや日本人を育てようとしているのかと疑問に感じるような施設です。このセンターで真面目に勉強する子どもがいたら、将来が本当に心配になります。このような施設を公費で建設したこと自体疑問ですね」
「人権センター問題はこれから監査請求とか情報公開などで実態を明らかにしていきたいと思います」

等と返答[1]。これに対し、部落解放同盟三重県連合会が三重県教組を通じ、鈴鹿国際大学の経営母体である学校法人享栄学園に「久保を切れ、さもないと今後生徒に鈴鹿国際大学を受けさせない」[2]と圧力を行使。このため、同大学学長の勝田吉太郎は、同年11月29日、久保を学長室に呼びつけ「大変なことをしてくれたね。問題になっているんだよ。君、部落問題は本当に怖いんだよ。彼らが大学に押しかけてきたらどうするのかね。その時は君に責任をとってもらうしかない。もし君が助けを求めるなら、共産党に助けを求めなければならない」などと難詰[3]。結局、享栄学園は、前述の久保発言を「公的機関である三重県人権センターに対する誹謗ともとられかねない発言などが、学園の名誉と品位を害し、生徒・学生の募集に悪影響を及ぼし、関係諸機関との信頼関係を著しく失墜させるもの」と非難し、2000年1月17日付で久保を教授職から解任すると共に学園本部付事務職員とした。

これに対し、久保は同年2月16日津地方裁判所民事訴訟を提起し、地位保全仮処分の申立を行うと共に500万円の損害賠償を求めた。2004年9月16日、津地裁は久保の勝訴としたが、2005年11月、2審の名古屋高裁判決は1審判決を覆し、久保の請求を棄却。しかし最終的に、2007年7月13日最高裁第2小法廷(中川了滋裁判長)は「大学側の処分に合理的理由はなく、懲戒権や業務命令権の乱用」と述べ、大学側に200万円の支払いを命じた[4]

その後、2009年10月27日、津地方裁判所で学園と和解が成立した。和解内容は久保の訴えを認めるもので、学園側は休職命令と解雇を撤回した。また、その期間中の未払い賃金も支払う事になった。和解後、久保は任意の辞職届を提出し、2009年10月31日付けでもって享栄学園を退職した。

脚注

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  1. ^ ご支援、ご激励に心から感謝
  2. ^ 増木重夫 (2002年). “『久保教授事件・・・三重行き』”. MASUKI情報デスク(M情報). 2024年6月19日閲覧。
  3. ^ 「三重タイムズ」2000年2月25日
  4. ^ 最高裁判所判例(事件番号  平成18(受)347)”. 最高裁判所. 2024年6月19日閲覧。

外部リンク

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