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利用者:咲宮薫/sandbox

日本語の敬語[編集]

敬語とは、話題の人物や聞き手に対する敬意・丁寧さや[1][2][3][4]、話し手が改まった態度で話していること[2]を表す、そのための専用の表現である[1][5][2]待遇表現の一種であり[2][3]、広義には、待遇表現全般を敬語ということもある[3]。本項では、日本語の狭義の敬語を、現代の標準語を中心として扱う。

日本語の敬語は、言語体系・言語行動の広範な領域にわたって、高度に発達しているという特徴がある[6]。このような体系的な敬語の発達は、朝鮮語チベット語ジャワ語タイ語といった、東アジアの少数の言語にしか見られないものである[5][6]。ただし、日本語の敬語の発達の程度には方言差があり、一般に、東日本の方言よりも西日本の方言のほうが豊富な敬語形式を持つ[3]

敬語の分類[編集]

日本語の敬語にはいくつかの分類方法があるが、一般によく知られているのは尊敬語謙譲語丁寧語の3つに分類するものである[2][7][8]。この分類は、便宜的な分類としては利用可能であり[8][9]、敬語の仕組みを理解するのに役立つものである[10]。しかし、学問的に問題があるためこれに代わる分類が多く提案されており[9]、実際には研究者には支持されていない[8]

より新しい分類としては、尊敬語謙譲語I謙譲語II(丁重語)・丁寧語美化語の五分類がある[2][3][10]。これは、2007年に文化庁の文化審議会が示した「敬語の指針」において、敬語をより深く理解するための詳細な分類として提案されたものである[10]。各類の主要な機能は以下のとおり。

  • 尊敬語:聞き手側・第三者の、行為・物事・状態などについて、その人物を高く位置づけて述べる[3][10]
  • 謙譲語I:話し手側から、聞き手側・第三者に向かう行為・物事などについて、向かう先の人物を高く位置づけて述べる[3][10]
  • 謙譲語II(丁重語):話し手側の行為・物事について、聞き手に対して丁重に、改まった述べ方で、述べる[3][10]
  • 丁寧語:聞き手に対して丁寧に述べる[3][10]
  • 美化語:物事を美化して述べる[3][10]

三分類の謙譲語が、謙譲語Iと謙譲語IIに、三分類の丁寧語が、丁寧語と美化語に、それぞれ区分される[2]。三分類と五分類の対応関係は下表のとおりである[10][11]

三分類 五分類 敬意の対象[11]
尊敬語 尊敬語 主語・所有者 いらっしゃる[10]、おっしゃる[10]、られる[11]、お〜になる[11]、なさる[11]
謙譲語 謙譲語I 動きの相手(主語以外) 伺う[10]、申し上げる[10]、お〜する[11]、お〜申し上げる[11]、頂く[11]
謙譲語II 聞き手 参る[10]、申す[10]、致す[11]、おる[11]
丁寧語 丁寧語 聞き手 です[10][11]、ます[10][11]、ございます[11]
美化語 特になし お酒[10]、お料理[10]、お金[11]、お茶[11]

さらに、三分類・五分類より基本的な区別として、素材敬語対者敬語に大別することができる[2][4][12]。素材敬語は、話題となっている人物への敬語、対者敬語は、聞き手への敬語である[2][4]。五分類のうち、尊敬語と謙譲語Iは素材敬語に当たり、丁寧語は対者敬語に当たる[2][4][13]。謙譲語IIは素材敬語と対者敬語の両方の性質を持つとする立場と[13]、対者敬語に当たるとする立場がある[2][4]。美化語は、狭義の敬語ではないが対者敬語の性質を持って使われることがあるとする立場と[13]、対者敬語に当たるとする立場がある[2]

尊敬語[編集]

尊敬語とは、話し手が主語を高く位置づける敬語表現である[2][14]主語尊敬語[15]主体尊敬表現[16]為手尊敬(してそんけい)[17]とも言う。多くの動詞について使える形(一般形)として、「〜られる・お〜になる・お〜だ・〜なさる・お〜くださる」などが[18]、特定の動詞に対応する形(特定形)として「なさる・いらっしゃる・くださる・おっしゃる・召し上がる」などがある[18]。この他、助動詞(→#)、形容詞(→#)、名詞(→#)に対応する尊敬語がある。

尊敬語は、聞き手および聞き手の身内(II人称者)を高めるのに用いられることが最も多いが[19]、純粋な第三者(III人称者)であっても然るべき立場の人には用いられることがある[19]。しかし、話し手および話し手の身内(I人称者)に対して使うことはできない[19]。(→#敬語の適用

尊敬語によって高く位置づけられる主語には、「が」が付くもの以外にも、次の例の下線部のように「に」が付くものも含まれる。

  (a)  先生には、ロシア語がおわかりになる。[20]
  (b)  先生には、助手が必要でいらっしゃる。[21]
  (c)  社長には、どうもあの一件がご心配なようだ。[22]
  (d)  あの方には、外車が3台もおありになる。

〜られる[編集]

よく使われる尊敬語として、「先生が書かれる」「社長が出席される」「奥様が来られる」のように、動詞に尊敬の助動詞「れる・られる」を付けたものがある[23][* 1]。この形の尊敬語はレル敬語と呼ばれることがある[23]。レル敬語は、人間を主語とするほとんどすべての動詞について作ることができる[23]。ただし、「いたす」などの一部の謙譲語、「いる」[* 2]、「くれる」[* 3]についてはレル敬語が作れない[23]。レル敬語は、後述の「お〜になる」より敬度が低い[23]

お〜になる[編集]

「お書きになる」「ご出席になる」といった、「お〜になる」および「ご〜になる」という形もよく使われる尊敬語のひとつである[24]。これらの形の尊敬語はナル敬語と呼ばれることがある[24]。ナル敬語は、相当数の動詞について作ることができるが、レル敬語に比べて制約も多い[24]。また、ナル敬語はレル敬語より敬度が高い[24]

ナル敬語において、「お」の後ろには和語動詞の連用形が、「ご」の後ろには「する」を付けると動詞になる漢語系の熟語が入る[25]。「お〜になる・ご〜になる」の語形の使い分けは、「お」は和語と、「ご」は漢語と結びつくという、「お・ご」の原則的な使い分けの規則に従っている[26]

ナル敬語はレル敬語に比べて語形の制約が多く、「お〜になる・ご〜になる」という形が使えない場合がしばしばある[27]

  • 「〜」部分が1拍(仮名1字分の長さ)の場合、ナル敬語は作れない。たとえば「する」を「*おしになる」とすることはできない(「なさる」と言う)[27]
  • 特定の言い換え形がある場合には、ナル敬語が作れないことがある。たとえば「くれる」には対応する尊敬語として「くださる」があり、「*おくれになる」とは言わない[28]
  • 外来語擬態語についてはナル敬語は作れない。たとえば「*{お/ご}スケッチになる・*{お/ご}ハラハラになる」とは言わない(「スケッチなさる・ハラハラなさる」と言う)[29]
  • 謙譲語については、一般にナル敬語は作れない。たとえば「*お申しになる」とは言わない[29]
  • 意味的に良くない内容の動詞は、ナル敬語は作れないことが多い。たとえば「おはげになる・ご倒産になる」は、皮肉や茶化した表現としてしか使わない[30]
  • 複合動詞には、ナル敬語が作れないものが少なくない。たとえば「?お探し出しになる・?お投げ捨てになる」はかなり不自然である[31]
  • その他、慣習的にナル敬語が作れない動詞がある。たとえば「*おかじりになる・*ご運転になる」とは言わない[32]
  • 「〜始める」などの複合動詞は「お〜始めになる」ではなく「お〜になり始める」となる。たとえば「?お読み始めになる」はあまり自然ではない[33]
  • 可能動詞は「お + 可能形 + になる」ではなく「お〜になれる」となる。たとえば「?お書けになる」は不自然である[34]

なさる[編集]

「今度の週末にはどんなことをなさいますか」の「なさる」は「する」に対応する尊敬語(特定形)である[35]。「なさる」は、「ご出席なさる」「卒業なさる」のように、「ご〜なさる」または「〜なさる」という形で多くの動詞について使うことができる[35]

「ご」のつかない「〜なさる」の形は、サ変動詞にのみ用いられる[35]。サ変動詞以外の動詞の場合は、「読みなさい」のような命令形は標準的だが、その他の「読みなさる」のような形は標準的とは言えない[35]

「ご〜なさる」の形は、サ変動詞のうち、外来語や擬態語を除いた一部にのみ用いられる[36]。その他、「ご倒産なさる・ご留年なさる・ご運転なさる・ご優勝なさる」など、漢語系の熟語であってもおかしくなるものが少なくない[36]

「お読みなさる・お引き止めなさる」のように「お〜なさる」の形も可能であるが[37]、やや古めかしく、「ご〜なさる」に比べてあまり使わない[38]

お〜だ[編集]

補助動詞「〜ている」に対応する尊敬語は、「〜て」と「いる」のどちらを尊敬語にするかによって、3つの形が可能である[39][40]。たとえば「読んでいる」であれば、

  • お読みになって いらっしゃる
  • お読みになって いる
  • 読んで いらっしゃる

となる(「いらっしゃる」は「いる」に対応する尊敬語)[39][40]。この中では、「読んでいらっしゃる」に当たる形が最も多く使われる[41]

これに加えて「{お/ご}〜だ」という形が「〜ている」に対応する[42][43]。「{お/ご}〜になる」の「になる」を「だ」に変えた形である[43]。たとえば「読んでいる」は「お読みだ」になる[43]

「お〜だ」の形は「〜ている」以外の意味になることもあり[43]、単に「〜する」あるいは「〜した」の意味でも用いられる[44]。「今日はまっすぐお帰りですか」と言えば「(これから)帰るのですか」の意味になり、「今お帰りですか」は「今帰ったのですか」の意味である[44][43]。「おいでだ」「おありだ」はそれぞれ「おいでになる」「おありになる」と同義になる[43]

くださる[編集]

「くださる」は「くれる」に対応する尊敬語である[45][46]。補助動詞「〜てくれる」に対応する尊敬語としては、「〜て」と「くれる」の両方を尊敬語にした形と、「くれる」だけを尊敬語にした「〜てくださる」という形がある[47][46]。たとえば「書いてくれる」であれば、

  • お書きになってくださる
  • 書いてくださる

となる(「お書きになってくれる」は不自然)[46]

これに加えて、「お書きくださる」「ご出席くださる」のような、「{お/ご}〜くださる」という形がある[48]。「{お/ご}〜になる」の「になる」を「くださる」に変えた形である[48]

「くださる」は、他の尊敬語と異なり、主語を高く位置づけるだけでなく、受領者(または受益者)を主語よりも低く位置づける[49]。たとえば、「Aさんが私に本をくださった」であれば、主語である「Aさん」を高く位置づけるだけでなく、本を受領する「私」を「Aさん」よりも低く位置づけることになる[49]。そのため、「くださる」を使用する際には、受領者または受益者が主語に比べて低めてもよい人物である必要がある[49]

たとえば、次の会話 (a) の知人の応答の下線部が不適切なのは、主語の「教え子」を受益者である「先生」より高く位置づけることになってしまうからである[50]。いっぽう、(b) のように通常の尊敬語「お誘いになる」を用いるのは、「教え子の方」を高めるだけなので、「先生」に対して失礼にはならない[50]

  (a)  教師 実は、昔の教え子が私を外国旅行に誘ってくれましてね。
知人 結構ですね。教え子の方が先生を#誘ってくださる(お誘いくださる)なんて、慕われていらっしゃるんですね。[51]
  (b)  知人 結構ですね。教え子の方が先生をお誘いになるなんて、慕われていらっしゃるんですね。[52]

補助動詞の尊敬語[編集]

「〜だ」の尊敬語[編集]

謙譲語Iと謙譲語II[編集]

謙譲語Iは、話し手が補語を高く位置づける敬語表現である[2]。現代語では、主語は補語よりも相対的に低く位置づけられ、また、主語が補語を高く位置づける意図を持っていると想定できなければ用いられない。謙譲語A[53]補語尊敬語[54]受け手尊敬表現[55]受手尊敬[56]とも言う。

補語とは、下の (a)–(d) の下線部のような、主語以外のある種の文成分を言う。「動作の関係する方面」や「動作の受手」とも言うが、(c) のように受手とはやや言いにくい場合もある。

  (a)  私が皆さんをお招きしましょう。[57]
  (b)  先日父がお父様にご報告したかと思いますが……[58]
  (c)  これは、私が先生からいただいたものです。[59]
  (d)  私は駅で先生とお別れしました。

謙譲語Iで、主語が補語よりも相対的に低く位置づけられるのは、下のような例からわかる。同じ会社の部長と社長について、(a) と言うのが適切な場合はあるが、(b) はおかしい。

  (a)  部長が社長をご自分の別荘へご招待したそうです。[60]
  (b)  ?社長が部長をご自分の別荘にご招待したそうです。[61]

また、主語が補語を高く位置づける意図を持っていると想定できなければならないのは、下のような例からわかる。(a) が自然なのに対して、(b) と言わないのは、犯人から先生に対する、上位に位置づける意図が想定できないからである。

  (a)  太郎は先生に手紙をお送りした。[62]
  (b)  ?犯人は先生に脅迫状をお送りした。[63]

謙譲語IIは、典型的には、話し手が、主語である自分・身内を低く位置づけ、聞き手に対して丁重に(改まった態度でかつ丁寧に)述べる際に用いられる。謙譲語B自卑敬語謙遜表現[64]とも言う。丁重語と呼ばれることもあるが[65]、丁重語という用語は、後述の丁重語用法のみを指して使われることもある。

対応する謙譲語IIがある動詞は一部に限られ、いずれも特殊な形式で表される[64]

  • いたす(する)
  • おる(いる)
  • 参る(行く・来る)
  • 申す(言う)
  • 存じる(思う・知る)

などがある(かっこ内は対応する通常表現)[64]

謙譲語IIは、主語を低く位置づけることはせず、単に聞き手に対する丁重さを表すためにだけ用いられることがある。このような用法は、謙譲語IIの丁重語用法と呼ばれる[* 4]

  (a)  この大会には全国から300人の選手が参加いたします(スポーツの放送)[66]
  (b)  まもなく電車がまいります(駅のアナウンス)[67]
  (c)  プラトンが申しますには……(学者の講義)[68]

お〜する[編集]

お〜申し上げる[編集]

いたす[編集]

お〜いたす[編集]

丁寧語と美化語[編集]

丁寧表現は、聞き手に対する敬意を表す丁寧な表現である[4]。丁寧体と普通体の区別がある[4]。特に述語の形で区別される[4]。普通体には基本的な形が、丁寧体には特別な形が用いられる[69]

動詞 連用形+接尾辞「ます」[69]

接尾辞「ます」のおもな形式を、益岡・田窪 (1992: 217) は以下のように整理している。

基本形 意志形 タ形 タ系条件形 テ形 タリ形
ます ましょう ました ましたら まして ましたり

否定 連用形+「ません」、否定のタ形 連用形+「ません」+助動詞「でした」[69]

形容詞(イ形容詞)基本形+助動詞「です」 タ形+「です」[69]

否定 語幹+「く+ないです」「くありません」「くなかったです」「くありませんでした」[69]

形容動詞(ナ形容詞)、助動詞「だ」(判定詞)[69]

基本形 タ形 タ系条件形 テ形 タリ形
です でした でしたら でして でしたり

ではありません ではありませんでした[69]

でございます もある[69]

敬語の適用[編集]

敬語の歴史[編集]

古典語の敬語[編集]

尊敬語[編集]

学校文法で尊敬語と呼ばれるものは、主語尊敬語とも言い、話し手から主語への敬意を表す。次の例の下線部の補助動詞「給ふ」は、他の動詞に対して敬語の意味を付け加えるものである[70]

    かぐや姫、いといたく泣き給ふ
「かぐや姫が、とてもひどくお泣きになる」 竹取物語[71]

この他、実質的意味と敬語的意味を兼ね備えた敬語動詞がある[70]。次の (a)–(c) は敬語動詞の例である。

  a.  親王(みこ)大殿籠らで明かし給うてけり。
「親王は、お休みにならずに(夜を)明かしておしまいになった」 伊勢物語・第83段)[72]
  b.  [源氏ハ]「さらば暁に」とのたまふ
「『それでは明け方に』とおっしゃる」 源氏物語若紫引用エラー: 無効な <ref> タグです。名前に単なる整数は使用できません。説明的なものにしてください
  c.  またの日、[源氏ガ]小君召したれば、参るとて
「翌日、(源氏が)小君をお呼びになったので、参上するということで」 (源氏物語・帚木引用エラー: 無効な <ref> タグです。名前に単なる整数は使用できません。説明的なものにしてください

謙譲語[編集]

学校文法で謙譲語と呼ばれる古典語の敬語には、現代語の謙譲語Iに当たる補語尊敬語と、謙譲語IIに当たる自卑敬語がある[73]

補語尊敬語は、話し手から補語への敬意を表す。補語尊敬語を作る補助動詞として「奉る・聞こゆ・申す」があり、中古末以降は「参らす」も多く使われるようになった。

  a.  かぐや姫を養ひ奉ること、二十余年になりぬ。(竹取物語[74]
  b.  竹の中より見つけ聞こえたりしかど(竹取物語[75]
  c. 

以下のような例において、蜂 (a) や帝 (b) を低めるというのは奇妙であり、(c) のように低めるべき主語がない場合があることから、「補語尊敬語は主語を低めることによって結果的に補語を高める」という説明は成り立たないとされる[76]

  a.  [蜂ガ太政大臣宗輔ヲ]刺し奉ることせざりけり。今鏡引用エラー: 無効な <ref> タグです。名前に単なる整数は使用できません。説明的なものにしてください
  b.  [帝ハ]一の宮を見奉らせ給ふにも(源氏物語桐壷引用エラー: 無効な <ref> タグです。名前に単なる整数は使用できません。説明的なものにしてください
  c.  神武天皇をはじめ奉りて、当代まで六十八代にぞならせ給にける。(大鏡引用エラー: 無効な <ref> タグです。名前に単なる整数は使用できません。説明的なものにしてください

古典語の補語尊敬語は、下例 (a) のように、敬意に反する行為についても用いることができる。現代語の謙譲語Iが、(b)–(c) のように、敬意に反する行為については用いられないのと対照的である。

最高敬語[編集]

尊敬の補助動詞「給ふ」に助動詞「す」をつけて「せ給ふ」にしたものを最高敬語と言い、ほとんど皇族専用に用いられた。

補語尊敬語(謙譲語)の「奉らす」「聞こえさす」も最高敬語であり、補語に対する尊敬の度合いが高い。

方言の敬語[編集]

基本的には同じ意味のことを述べるのに、話題の人物/聞手/場面などを顧慮し、それに応じて複数の表現を使い分けるとき、それらの表現を待遇表現という 菊地 (1997: 33)

敬語とは、同じ事柄を述べるのに、述べ方を変えることによって敬意あるいは丁寧さを表す、そのための専用の表現である。 菊地 (1997: 91)

話題の人物や聞き手を目上・上位として位置づけたり、話し手があらたまった態度で話していることを示したりする、そのための専用の表現 森 (2020)。

話題の人物や聞き手に対する敬意を表す専用の表現 Shibatani (2006)

話題の人物や聞き手との関係についてどのように把握しているか、どのように配慮しているかを表すことば 重野 (2019)

目上の人に対する敬意・配慮・気遣いをことばに反映させたもの 重野 (2019)

尊敬語・謙譲語・丁寧語

敬語の適用

注釈[編集]

  1. ^ この語形を、動詞語幹に接尾辞 -(r)areru が付いたものとする分析もある(益岡・田窪 1982: 219)。
  2. ^ 「いられる」とはふつう言わず、「いらっしゃる」が無難とされる。
  3. ^ 「くれられる」とは言わず、「くださる」と言う。
  4. ^ 益岡・田窪 (1992: 218) は、「雨が降って<u>おります</u>」「雨が降って<u>まいりました</u>」「このあたりを六甲と<u>申します</u>」などの下線部を、「特殊な丁寧表現」として、丁寧語と一緒に扱っている。

出典[編集]

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参考文献[編集]

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  • 菊地康人『敬語再入門』講談社講談社学術文庫〉、2010年。 
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  • 辻村敏樹 (1977)「日本語の敬語の構造と特色」大野晋柴田武(編)『敬語』〈岩波講座日本語 第4巻〉 45–94. 岩波書店.
  • 西田直敏 (2018)「敬語史と現代敬語:付 敬語研究小史」菊地康人(編)『敬語 新装版』1–30. 朝倉書店.
  • 森山由紀子 (2018)「謙譲語から見た敬語史、丁寧語から見た敬語史:「尊者定位」から「自己定位」へ」菊地康人(編)『敬語 新装版』1–30. 朝倉書店.
  • 渡辺実 (1974)『国語文法論』笠間書院.