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eVTOL(電動垂直離着陸機)は、電動の垂直離着陸機(VTOL)。eVTOLは電動技術の発展(モーター、バッテリー、電気速度制御)により開発が可能になり都市型航空交通(UAM)に必要な新たな乗り物として注目が集まっている。ボーイング[1]、NASA、エアバスなどがeVTOLの開発を進めている。
歴史
[編集]eVTOLの歴史はフランスの企業パロット(Parrot)が2010年にホビー用のマルチコプター型ドローンAR.DRONEを発売したことに始まる[2]。このドローンは電動で垂直離着陸ができ、人々に広く普及した[2]。eVTOL航空機という概念は2011年にAgustaWestland Project Zero(アメリカ合衆国)、Volocopter VC1(ドイツ)、Opener BlackFly (アメリカ合衆国)などを通して現れた[3]。2014年にアメリカのバージニア州で開催されたワークショップでAHSインターナショナルとアメリカ航空宇宙学会(AIAA)によって紹介された[4]。
ドローン型のeVTOLが普及するに従ってこの種の航空機が持つメリットに人々が気付き初めた[2]。eVTOLは電動化で内燃機関が持つ複雑さから解放され、ローターが複数あることにより1つのローターが停止しただけでは墜落しないという高い冗長性が目を惹き、各社が人を乗せられるeVTOLの開発に乗り出していくことになる[2]。
後年、航空機メーカーの間ではeVTOL開発の流行が発生し、ボーイング、エアバス、ベルなどの企業が市場を独占している[5]。
- Airbus Vahanaは2017年のパリ航空ショーで公開され[6]、2018年1月に初飛行を行った
- Boeing - Aurora Flight Sciences PAVは2017年に開発が開始され、2019年に初飛行を行った。
- Bell Nexus 6HXはCES 2019で初公開された。
しかし、既存の大手航空機メーカーに加えてスタートアップ企業がこれらエアモビリティの開発に重要な役割を担っており、時には技術力の向上に関するリーダー的存在である[7]。
2019年現在、eVTOL機開発の参入障壁は比較的低いため国内外を問わず多くの企業が有人のeVTOL機、所謂『空飛ぶクルマ』の実現に向けて様々な取り組みを行っている[8]。そのため有人eVTOLは空飛ぶクルマの代名詞として扱われることが多い[9]。
利用
[編集]民間利用
[編集]民間によるeVTOL機開発の多くはUAMを目的としている。
空飛ぶタクシー
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多くのeVTOLは空飛ぶタクシーとして運用される予定である。
例えば、Uber Elevateのパートナーであるピピストレルは5人乗りの空飛ぶタクシーPipistrel 801を開発している[10]。
ボロコプターはVolocopter 2Xを基にしたVoloCityと呼ばれる空飛ぶタクシーのサービスを開発している[11]。
2020年、JumpAeroは事故発生時に迅速に救急サービスを提供できるように1人乗りのeVTOL機の開発を行っていると発表した。この種類の乗り物は既存の車両やヘリコプターを置き換えるものではなく、電動であるためにより早く移動できる新たなモビリティである[12]。
2020年、カナダのエアモビリティ・コンソーシアムではeVTOLを使用して患者、臓器、薬を病院から病院へ輸送した場合の利点を研究した[13]。
個人による利用
[編集]個人用のeVTOL機は娯楽用の飛行機の世界に電動飛行を導入するために作られた。
無人マルチコプターは、eVTOLのカテゴリーに初めて登場した飛行機である。当初は研究開発の目的で使用されていたが、現在では本格的な航空機と見なされている[3]。
配送
[編集]2020年よりAlphabet傘下のGoogleは、eVTOL UAVの配送サービスを提供している。Googleのドローンは100kmを飛行でき、重さ1.5kgまでの物を運ぶことができる[14]。Amazon Prime Airとユナイテッド・パーセル・サービスはドローン配送を行っているGoogle以外の会社である[15]。2018年、ドイツの航空宇宙メーカーウィングコプターはユニセフと共同でバヌアツでワクチンの輸送を行った[16]。2020年にはウイングコプター社のeVTOLドローンがCOVID-19の検査キットをマル島に届けるために使用された[17]。
軍事利用
[編集]2020年4月、アメリカ空軍は2021年に開発に着手するeVTOLプロジェクトに2500万ドルの資金を提供すると発表した[18][19]。2020年8月20日、アメリカ空軍はテキサス州オースティンのキャンプ・マブリーでeVTOL機のデモフライトを行った。有人のeVTOL機がアメリカ空軍によるAgility Prime計画の下で飛行したのはこれが初めてである[18]。
認証
[編集]ヨーロッパ
[編集]2018年から欧州航空安全機関(EASA)はこの種の航空機の認証に取り組んでいる[20]。2019年7月、EASAはSC-VTOL-01 : Special Condition for VTOL aircraft.を公開した。この文書は、VTOL機の安全性と設計目標について規定したものである。この中には、eVTOLについて書かれた特別なセクションがある。
アメリカ
[編集]小型の航空機の認証(Part 23 - FAA certification)が発効されている。特にPart 23-Amendment 64にはeVTOLに関する記述が盛り込まれている[21]。
関連項目
[編集]出典
[編集]- ^ “Boeing: Autonomous Flying Taxi: EVTOL Unmanned Solar Aircraft System”. www.boeing.com. 2020年8月27日閲覧。
- ^ a b c d 『空飛ぶクルマのしくみ』日刊工業新聞社、2019年12月21日、17-18頁。ISBN 978-4-526-08024-1。
- ^ a b “eVTOL Timeline” (英語). evtol.news. 2020年9月23日閲覧。
- ^ “AHS International Leads Transformative Vertical Flight Initiative” (英語). evtol.news. 2020年9月23日閲覧。
- ^ “The eVTOL Industry in Transition” (英語). evtol.news. 2020年9月23日閲覧。
- ^ “Paris Air Show: the race for cleaner skies” (英語). RFI (2019年6月21日). 2020年9月23日閲覧。
- ^ O'Connor, Kate (12 July 2018). “Opener Reveals Ultralight eVTOL”. AVweb. 13 July 2018閲覧。
- ^ 『空飛ぶクルマのしくみ』日刊工業新聞社、2019年12月21日、14頁。ISBN 978-4-526-08024-1。
- ^ 『空飛ぶクルマのしくみ』日刊工業新聞社、2019年12月21日、14頁。ISBN 978-4-526-08024-1。
- ^ “Pipistrel Unveils eVTOL Concept | Flying Magazine”. web.archive.org (2018年5月13日). 2020年9月23日閲覧。
- ^ “Volocopter kicks off pre-sales for its first air taxi flights — with a wait time of 2-3 years” (英語). TechCrunch. 2020年9月23日閲覧。
- ^ “Jump Aero” (英語). evtol.news. 2020年9月23日閲覧。
- ^ “Searching for Early Use Cases for eVTOL Aircraft” (英語). Aviation Today (2020年8月1日). 2020年9月23日閲覧。
- ^ “Drone delivery lands in Queensland's south-east”. www.9news.com.au. 2020年9月23日閲覧。
- ^ “After Alphabet's 'Wing', Amazon's 'Prime Air' gets US approval to deliver items through drones”. The Economic Times 2020年9月23日閲覧。
- ^ “Vanuatu awards international drone companies with commercial contracts for vaccine delivery” (英語). www.unicef.org. 2020年9月28日閲覧。
- ^ “Wingcopter drone delivering COVID-19 test kits to Isle of Mull” (英語). Wings Magazine (2020年5月27日). 2020年9月28日閲覧。
- ^ a b Reim, Garrett (2020年8月24日). “US Air Force leaders watch first Agility Prime eVTOL demonstration” (英語). FlightGlobal. 2020年8月27日閲覧。
- ^ Garrett-Glaser, Brian (2020年8月25日). “U.S. Air Force Leaders Witness Manned eVTOL Demonstration by LIFT Aircraft’s HEXA” (英語). Aviation Today. 2020年8月27日閲覧。
- ^ “EASA SC-VTOL” (英語). evtol.news. 2020年9月23日閲覧。
- ^ “EASA Releases Next Piece of Regulatory Guidance for Electric Air Taxis” (英語). Aviation Today (2020年5月26日). 2020年9月23日閲覧。