千里浜なぎさドライブウェイ
観光道路 | |
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千里浜なぎさドライブウェイ Chirihama Beach Driveway | |
路線延長 | 8 km |
起点 | 石川県羽咋郡宝達志水町 |
終点 | 石川県羽咋市 |
接続する 主な道路 (記法) |
E86 のと里山海道 |
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千里浜なぎさドライブウェイ(ちりはまなぎさドライブウェイ)は、石川県羽咋郡宝達志水町今浜から同県羽咋市千里浜町に至る砂浜の延長約8キロメートルの観光道路であり、千里浜と今浜の一部と出浜の各海水浴場も兼ねている。
日本で唯一、一般の自動車やバスでも海岸線の砂浜の波打ち際を走ることができる道路である[1][2][3][4][注釈 1]。
概要
[編集]のと里山海道の千里浜ICと今浜ICとの間に8 kmにわたってある千里浜海岸の砂浜の道路で[1][5]、観光道路の目的で開放している[4][6]。千里浜は一般の自動車や大型バスでも砂浜の波打ち際を走ることができるように整備されていて[7]、悪天候ではない限りは年中走行可能[3][8]。また、1966年[9]からレジャーシーズンとなる夏季の1か月間は道路交通法を適用する公道[5]として車線を区分けするロープが張られ、その脇に速度制限と駐車禁止の道路標識を設置している[1][6][10][11][12]。
起源は1955年前後、千里浜なぎさドライブウェイを最初に走ったのは観光バスの運転手とされ[1]、その後快適さが人気を呼び観光名所となった。一般の自動車やバイクをはじめ、観光バスなどの大型車が走行できる理由は、この海岸の砂粒が一般的な砂の半分程度ときめ細かく[13]、海水を吸って舗装道路のように固くなるため[5]、普通の砂浜のように沈まないからである[6][7][14]。ただし、波打ち際や[3][8]、路肩に相当する道路の端部などは砂が締まっておらず、まれにスタックする可能性がある[12]。
砂浜が締まっている理由は、千里浜より約40キロメートル (km)南西に位置する手取川、千里浜周辺の大海川や宝達川が運搬した土砂が沿岸流(対馬海流)や北西の季節風によって運ばれ、なおかつ羽咋市の北にある滝崎が土砂をUターンさせ千里浜に堆積したためである[1][5][注釈 2]。
道路の管理は、石川県中能登土木総合事務所と羽咋土木総合事務所の所管に属し、天候が悪く海がしけたり強風時は閉鎖されることがある。また2020年4月29日から、新型コロナウイルス (COVID19)の感染拡大防止のため、気象理由以外による通行止が33日間実施された[2][15]。
近年、手取川ダムをはじめとするダム建設による土砂供給の減少とともに、風によって生じる波の侵食などにより、度々閉鎖される頻度が増加しており、2012年から2019年にかけて金沢港付近の砂を沖合いに投入するなどの対策が行われ一時は回復の兆しが見られていたが、2019年に金沢港付近の砂が枯渇していることが判明し、別の場所に当道路に合う砂がないかについての調査が進められている[16]。2020年12月13日から高波による侵食に伴い、全線で通行止めとなった[17]。そのため、県が2021年3月19日から階段の復旧工事を[18]、同年3月25日から土砂約6千立方メートル (m3)を投入して緊急養浜を進め、大型バス同士がすれ違える程度にまで車線を確保する工事を行った後[19]、2021年4月16日に全線開通した[20]。
2023年12月31日17:00から当面の間、波浪を理由に全線で全車両通行止となった[21]。この通行止の期間中の2024年1月1日には、令和6年能登半島地震が発生している。
アクセス
[編集]千里浜なぎさドライブウェイに乗り入れするには、ほぼ並行して走るのと里山海道[注釈 3]の千里浜ICや、今浜ICからアクセスでき、金沢市内から約40分ほどの距離にある。
ギャラリー
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千里浜なぎさドライブウェイを走行する北鉄金沢バスの観光バス。
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夏季には入口に道路交通法が適用される警告看板が設置される。
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夏季に設置される速度規制標識。
千里浜海岸
[編集]千里浜海岸(ちりはま かいがん)は、能登半島国定公園に属し、日本海に面する石川県羽咋市南部から宝達志水町今浜にかけてのおよそ8キロメートル (km)の砂浜海岸である[22]。一般的なほかの海岸の砂の粒径は0.5 - 1ミリメートル (mm)ほどだが、千里浜の砂は細粒で4分の1ミリメートル (250 μm)ほどしかなく一様であるという特徴をもつ[22]。春から秋にかけて浜焼きなどを売る茶店が並び[12]、夏場はマリンスポーツや海水浴客などでにぎわう[7]。また、渚(なぎさ)から日本海に沈む夕日を見る絶景ポイントとして知られる[4][6][23]。砂浜には、ハマナスやハマヒルガオなどの海浜植物も見られる。砂丘のクロマツ林は、飛砂防止のために江戸時代に植林されたものである[22]。
遠浅の砂浜海岸は、アサリやハマグリなどの潮干狩りでも知られ、かつてハマグリの産地だった。近年[いつ?]はほかの砂浜と同様に周辺の河川のダム建設や護岸などにより堆積する土砂の量が減少し、砂浜の浸食が深刻な問題となっている[10][5][24]。1986年から2009年にかけて海岸線が年間平均1 m減少しており[2][5]、宝達志水町の「千里浜レストハウス」(当時[いつ?])付近では、1994年から2011年の間に約15 m[5]、場所によっては約20 m浸食されている[2]。2010年6月17日には浸食対策として、宝達志水町の今浜沖で人工リーフの設置工事が開始されている[25]。また、2012年からは金沢港に堆積した土砂を沖合に投下する対策も実施。両方の対策により2010年からの10年間で海岸線は約2m回復したが[2]、金沢港の土砂が枯渇したことにより新たな対策が必要となっている。
2016年にトリップアドバイザーが発表した「トラベラーズチョイス世界のベストビーチ2016」の日本国内のランキングで1位となった[26]。
題材とした作品
[編集]- 映像作品
- 水曜どうでしょう(HTB北海道テレビ、2000年3月1日) - 番組の企画「試験に出るどうでしょう 石川県・富山県」で、千里浜を取り上げた。
- Top Gear(イギリス・BBC) - 番組の企画で、千里浜がレース「GT-R vs 新幹線」のスタート地点。
- ドキュメント72時間(NHK総合、2020年9月4日)[27] - NHK金沢放送局が制作を担当。石川県では初めての取材地となった[28]。
- 文学作品
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ このような道路は世界的にも珍しく、アメリカ合衆国のデイトナビーチ、ニュージーランドのワイタレレビーチ、90マイルビーチ、ベイリースビーチで自動車やオートバイ、観光バスが走行可能な砂浜の道路がみられる。
- ^ 北海道テレビ放送 (HTB)『水曜どうでしょう』の「試験に出る石川県・富山県」(水曜どうでしょうの企画を参照)では詳しく説明されている。
- ^ 2013年3月末日までは能登有料道路と呼ばれていたが無料化に伴い名前を変更。
出典
[編集]- ^ a b c d e “千里浜なぎさドライブウェイ(石川県能登半島) 車でバイクで砂浜快走”. 日本経済新聞. (2019年7月12日) 2021年2月16日閲覧。
- ^ a b c d e “車走れる砂浜、浸食で存続危機 石川・能登半島”. 日本経済新聞. (2021年2月2日) 2021年2月16日閲覧。
- ^ a b c 小川、栗栖、田宮 2016, p. 85.
- ^ a b c 中村淳一編 2018, pp. 80–81.
- ^ a b c d e f g “九十九里浜も鳥取砂丘も、車で走れる砂浜も…狭まる海岸”. 朝日新聞デジタル. (2020年10月16日). オリジナルの2020年11月19日時点におけるアーカイブ。 2021年2月16日閲覧。
- ^ a b c d 佐々木・石野・伊藤 2015, p. 84.
- ^ a b c ロム・インターナショナル 2005, p. 14-15.
- ^ a b 中村純一編 2017, p. 85.
- ^ “【事例】 海岸利用者の安全 海岸利用者の安全を確保するための道路交通法の臨時適用” (PDF). 国土交通省総合政策局. 2019年7月20日閲覧。
- ^ a b “「スポーツカーで走れる砂浜」に黄信号 進む浸食”. 日本経済新聞. (2014年8月23日) 2019年7月20日閲覧。
- ^ “第8回内灘海岸魅力づくり委員会概要” (PDF). 内灘町産業振興課. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年4月18日閲覧。
- ^ a b c “日本で唯一! クルマで走れる砂浜の公道「千里浜なぎさドライブウェイ」を走ってみた”. ねとらぼ (2019年8月7日). 2021年2月16日閲覧。
- ^ “日本唯一、砂浜をゆく高速バス 「北陸道グラン昼特急」和倉温泉行き特別便がスゴイ!”. 乗りものニュース. (2019年7月5日) 2019年7月20日閲覧。
- ^ 須藤英一 2013, p. 114.
- ^ “千里浜なぎさドライブウェイを閉鎖 大型連休中の来訪自粛対策で”. 毎日新聞 (2020年4月30日). 2020年4月29日閲覧。
- ^ “車走れる砂浜、浸食で存続危機 石川・能登半島”. 日本経済新聞 (2021年2月2日). 2021年2月22日閲覧。
- ^ “千里浜で緊急養浜 なぎさドライブウェイ浸食 中旬以降に 沖合に砂投入、人工リーフ検討”. 北國新聞. (2021年3月3日). オリジナルの2021年4月14日時点におけるアーカイブ。 2021年4月14日閲覧。
- ^ “千里浜の浸食、復旧工事開始 荒波収まり次第緊急養浜”. 北國新聞. (2021年3月20日). オリジナルの2021年4月14日時点におけるアーカイブ。 2021年4月14日閲覧。
- ^ “聖火走れる砂浜に 千里浜で緊急養浜開始 土砂運び海岸に投入”. 北國新聞. (2021年3月25日). オリジナルの2021年3月26日時点におけるアーカイブ。 2021年4月14日閲覧。
- ^ “ドライブウェイ 125日ぶりに全線開通”. 北國新聞. (2021年4月17日) 2023年5月22日閲覧。
- ^ “通行規制一覧”. 石川みち情報ネット (2023年12月31日). 2024年1月16日閲覧。
- ^ a b c 石川県環境部 (2010年8月9日). “千里浜海岸”. 石川県ホームページ. 石川県. 2015年11月7日閲覧。
- ^ 須藤英一 2013, pp. 114–115.
- ^ “水の列島 車で走れる砂浜の秘密”. 産経ニュース. (2017年5月15日) 2019年7月20日閲覧。
- ^ “人工リーフ設置始動 千里浜の浸食防止対策 宝達志水で測量始まる”. 北國新聞 (2010年6月18日). 2010年8月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年9月14日閲覧。
- ^ “トリップアドバイザー、「トラベラーズチョイス世界のベストビーチ2016」を発表 日本のビーチナンバーワンは「千里浜なぎさドライブウェイ」”. トラベルWatch. (2016年2月19日) 2019年7月20日閲覧。
- ^ ドキュメント72時間 「石川 なぎさドライブウェイ 思い出の砂浜で」
- ^ “なぎさドライブウェイに密着 NHK「72時間」4日放送”. 中日新聞Web. (2020年9月2日) 2021年2月16日閲覧。
- ^ “やっぱり懐かしい!? 松本清張が描いた昭和の北陸”. AERA dot. (2015年5月8日). 2019年7月20日閲覧。
参考文献
[編集]- 小川秀夫、栗栖国安、田宮徹 著「千里浜なぎさドライブウェイ」、中村純一 編 編『ニッポン絶景ロード100』枻出版社〈エイムック〉、2016年4月10日、84-85頁。ISBN 978-4-7779-3980-0。
- 佐々木節、石野哲也、伊藤もずく 著、松井謙介編 編『絶景ドライブ100選[新装版]』学研パブリッシング〈GAKKEN MOOK〉、2015年9月30日。ISBN 978-4-05-610907-8。
- 須藤英一『新・日本百名道』大泉書店、2013年、114-115頁。ISBN 978-4-278-04113-2。
- 中村純一編 編「千里浜なぎさドライブウェイ」『日本の絶景道100選』枻出版社〈エイムック〉、2017年4月10日、84-85頁。ISBN 978-4-7779-4572-6。
- 中村淳一編 編『日本の絶景ロード100』枻出版社、2018年4月20日。ISBN 978-4-7779-5088-1。
- 『道路地図 びっくり!博学知識』河出書房新社〈KAWADE夢文庫〉、2005年2月1日、14-15頁。ISBN 4-309-49566-4。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 千里浜なぎさドライブウェイ - 羽咋市
座標: 北緯36度53分20.3秒 東経136度45分51.8秒 / 北緯36.888972度 東経136.764389度