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古代ペルシア語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
古代ペルシア語
話される国 ペルシア帝国アケメネス朝
話者数
言語系統
表記体系 古代ペルシア楔形文字
言語コード
ISO 639-2 peo
ISO 639-3 peo
Linguist List peo
Glottolog oldp1254[1]
 
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古代ペルシア語(こだいペルシアご)は、イラン語派に属する言語のひとつである。古代ペルシア帝国アケメネス朝)の公用語の一つで、古代ペルシア楔形文字を用いて書かれた紀元前6世紀から紀元前4世紀までの碑文が残る。

アヴェスター語とともに古代イラン語に含まれる。中世ペルシア語(パフラヴィー語)や現代ペルシア語(ペルシア語ダリー語タジク語)の祖先にあたる。

概要

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古代ペルシア語はダレイオス1世以降の王の言葉を伝える碑文によって知られる。実務的な文章はこの言語では書かれず、アケメネス朝以前から使われていたエラム語や、アラム語が使われた。

古代ペルシア語はアヴェスター語に似ているが、イラン語派のうち南西部の言語であり、アヴェスター語とは異なる音韻変化を見せることがある。またアヴェスター語に比べると新しい要素が多い。

ダレイオス1世クセルクセス1世の碑文はまだ古形を保っているが、それ以降の碑文はすでに中期ペルシア語に近づいている[2]

音声

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古代ペルシア楔形文字の制約により、正確な音韻には不明な点も多いが、母音は a ā i ī u ū ai āi au āu があったと考えられている。ただし後期には ai auē ō に変化していた[3]。音節形成的な r () もあったと思われるが、つづりの上では単に ar と書かれている。

子音は、つづりの上で以下の22種類を区別する[4]

両唇音 歯音 歯茎音 後部歯茎音
硬口蓋音
軟口蓋音 声門音
破裂音破擦音 p b t d c /tʃ/ j /dʒ/ k g
摩擦音 f θ s z š /ʃ/ x h
鼻音 m n
接近音 v /w/ y /j/
ふるえ音 r
側面音 (l)

ほかに ç と翻字される音がある。この音はアヴェスター語θr に対応し、s に近い音だったと考えられるが、正確な音価はわかっていない[5]。例:puça「息子」(アヴェスター語: puθra‎, サンスクリット: putra)。

側面音 l は外来語にのみ現れる。例:Lab(a)nāna「レバノン」[6]

形態論

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名詞は性・数・格で変化する。は男性・女性・中性がある。は単数・双数・複数があるが、双数の用例はごく限られている[7]。アヴェスター語で8種類あったのうち、古代ペルシア語では属格与格具格奪格の区別がなくなり、6格になっている。人称代名詞には独立形のほかに後倚辞形が発達している。

動詞は人称・数で語尾変化する。時制には現在・不完了過去・完了がある。アオリスト形もまれに見られるが、意味は不完了過去と変わらない[8]完了は受動完了分詞とコピュラを組みあわせた迂言法を使用し、本来の完了形は滅んだ。古代ペルシア語は分裂能格言語である。

動詞のには能動と中動があり、には直説法命令法接続法希求法指令法がある。

語順

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古代ペルシア語の語順はかなり自由であるが、基本的には SOV で、形容詞は修飾する名詞に後置される。否定辞は動詞の前に置かれる。

例文

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ベヒストゥン碑文より。

ラテン文字翻字: Θātiy Dārayavauš xšāyaθiya: Pasāva hadā kārā adam ašiyavam abiy Sakām, pasā Sakā tayaiy xaudām tigrām baratiy.

逐語訳: 王(xšāyaθiya)ダレイオスは(Dārayavauš)言う(θātiy三人称単数現在): その後(pasāva)軍隊(kārā、単数具格)とともに(hadā)私は(adam)サカ(Sakām、単数対格)へ(abiy)、行った(ašiyavamšiyav-「行く」の一人称単数過去)、[関係代名詞](tayaiy、複数男性主格)とがった(tigrām、単数女性対格)帽子を(xaudām、単数女性対格)持つ(baratiy、三人称複数現在)サカ族(Sakā、複数対格)の後を(pasā)。

脚注

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  1. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Old Persian”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/oldp1254 
  2. ^ 高津 (1954) p.14
  3. ^ Skjærvø (2005) p.49
  4. ^ Skjærvø (2005) p.69
  5. ^ Skjærvø (2005) p.18
  6. ^ Rüdiger Schmitt (1993). “CUNEIFORM SCRIPT”. イラン百科事典. VI, Fasc. 5. pp. 456-462. http://www.iranicaonline.org/articles/cuneiform-script 
  7. ^ Skjærvø (2005) pp.77-78
  8. ^ Skjærvø (2005) p.78

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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