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台北捷運環状線電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
台北捷運EMU101形電車から転送)
台北捷運環状線電車
景安駅の列車(2020年)
基本情報
運用者 台北捷運公司
製造所 イタリアの旗 日立レールS.p.A.(納入時は日立レールイタリア)
レッジョ・ディ・カラブリア工場[1])、
中華民国の旗 台湾車輌
(新竹県・本社工場)[1]
製造年 2016-2018年
製造数 [2]17編成68両
運用開始 2020年1月31日
投入先 環状線
主要諸元
編成 4M
軌間 1,435 mm
最高運転速度 [3]80 km/h
起動加速度 [注釈 1]4.32 km/h/s
減速度(常用) [注釈 2]3.6 km/h/s
減速度(非常) [注釈 3]4.68 km/h/s
編成定員 [3]650人
編成重量 [3]117t
編成長 [3]68.43 m
全幅 [3]2,650 mm
車体高 [3]3,600 mm
床面高さ [4](p5)0.96 m
車体 [3]アルミニウム合金
台車 [5](p13)アンサルド・ブレーダ J100型ボルスタ台車
車輪径 [注釈 4]710 mm
固定軸距 [4](p5)2.0m
台車中心間距離 [4](p5)10.85m
軸重 [9]12.5t
主電動機出力 [注釈 5]128.8kW
制御方式 VVVFインバータ制御
[6]IGBT
制動装置 クノールブレムゼハイドロリック・ブレーキ英語版[8](p27)
保安装置 ATPATOATS([7]アンサルドSTS CBTCによる無人自動運転)
備考 所有は台北市政府捷運工程局
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台北捷運環状線電車(タイペイしょううん かんじょうせんでんしゃ)は台湾で2020年1月31日の開業とともに[10]台北捷運(北捷、台北MRT、台北メトロ)環状線で運行される通勤型電車。型式名は2019年現在で付与されていない[注釈 6]

概要

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新竹県の台湾車輌本社工場で製造中の列車(2017年3月)

台北捷運では文湖線に次ぐ中運量規格(中量軌道輸送システム)の列車となる。 台北市政府捷運工程局2009年に行った環状線第1段階の機電工程入札でイタリアアンサルド・ブレーダ(AnsaldoBreda S.p.A.)がボンバルディア・トランスポーテーションを破って受注[11][7][12]。ブレーダの後身となる日立レールイタリア(HRI:Hitachi Rail Italy S.p.A.)が契約を継承し、全17編成のうち15編成は台湾車輌による国内生産となった[13]。 ブレーダおよびHRIの汎用型モデルで無人運転に対応した「ドライバーレス・メトロ」が採用されている。台湾では台湾鉄路管理局EMU300型に次いでイタリア製としては2例目、日立ブランドとしては国内捷運系列車で初の採用例となる[注釈 7]

2016年8月にカラブリア州にあるHRIレッジョ・ディ・カラブリア工場で第1編成が落成し出場式典が行われ同月末に台湾に向けて航送された[12][14](p72)[15]。同年11月に新北市新店区南機廠中国語版に搬入され[16]、12月に車両公開と各種の構内試運転を[14](p74)[17]2017年に本線上での試運転を開始した[18]

2018年8月1日には全17編成が納入された[13]

仕様

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日立レールイタリアの工場で落成した車両(2016年)
 
公共芸術塗装版(手前)

台北捷運のVAL256370型といった、ゴムタイヤ式を採用し車両間の通り抜けもできない従来の中運量タイプとは多くの点で設計仕様の見直しが図られ、貫通式連結路や鉄輪式など他路線の高運量タイプと同じコンセプトとなっている[19]。乗車定員は同じ中運量タイプながら輸送力の小ささで混雑が深刻な文湖線の456人より増えた650人[20]

台車は環状線の急曲線に対応するためコペンハーゲン地下鉄で導入された同じシリーズより軽量化が図られ最小曲線半径35メートルに対応した[9]。急曲線区間通過時の騒音を抑制するため車輪にゴム素材を挟んだ弾性車輪が採用されている。

中間車を除いた2両編成の同形式が新北捷運三鶯線でも導入される。

外観

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先頭車はイルカを参考にした20度の傾斜をもつ流線型状で[21][22]、最前部も無人運転のため運転室はなく、前面展望が可能な大型窓の客室となっている。前面窓の下部左右両側にLED式の前照灯と尾灯があるが、車外には行先表示装置は設置されていない。前照灯の下部にはアンチクライマーが突き出している[23][9](p38)。投入される環状線では全駅でホームドアが採用されるため、連結部における転落防止幌は省略された[23]

塗装はドライバーレス・メトロの標準的な白を主体に、前面窓まわりは黒、側面はラインカラーのイエローが上下2本の帯状に採用されているが[19]、5編成は「公共芸術塗装」版が別途採用され先頭部分の大部分がイエロー、後方にかけて水玉混じりで白一色になる[24][25]

公共芸術塗装版は東京を拠点とし、数々のインスタレーション作品で知られるフランス人建築家エマニュエル・ムホー英語版(Emmanuelle Moureaux)が環状線各駅および新店渓の鉄道橋とともに意匠を設計した[26][27]

映像外部リンク
環狀線變型金剛宣傳動畫 - YouTube 新北市政府捷運工程局公式チャンネル(2017年3月28日)

台北捷運では珍しくラインカラーに準拠したカラーリングでもあることから、ハリウッド映画トランスフォーマーシリーズのキャラクター「バンブル(現地表記は大黃蜂)」になぞらえられ[28]、2014年に実際にデザインが発表された際は車両の造型がミックスされたロボットが展示された[29][30]

内装

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内装は壁面や床がグレーの淡色系がメインで、吊革や手摺はラインカラーのイエローとなっている。非常ドアコックなどの安全上の備品は柱や壁の凹面内部に設置され、居住性を高めている。 客室内はオールロングシートで、座席は人間工学に基づいた設計となっている[31]。ドア直近のロングシート両端部は濃い藍色で博愛座(優先座席)とされ、イエローの他の席とは明確に区別されている[19]。 車内はカバーつきのLED照明が天井に設置され、最前部および側面の大型窓とあわせて採光性が高い[31] 通路幅は1.23メートルで[8](p18)、客室内天井高さは2.05メートル[8](p18)。 ドアは1両片側あたり外側両開きのスライドドアで幅1.6メートル、高さ1.95メートル[3]

左右ドアの中間にはスタンションポールがあり、その上方は煙感知器が設置されている[32]。また、新北産業園区駅桃園機場捷運にも連絡するため、空港利用客を考慮して、全車両の連結部付近に26インチのスーツケースが2個収容できる大型荷物置き場(中間車2か所、先頭車1か所の計6か所で、幅1.18メートル、奥行き0.56メートル、高さ1.11メートル[8](p20))が設置されている。

内装 ドアと連結面
内装
ドアと連結面
ポールと吊革 荷物置き場を備えた連結部
ポールと吊革
荷物置き場を備えた連結部

編成

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← 時計回り
反時計回り →
形式 A C D B
機器配置 VVVF VVVF VVVF VVVF
集電靴
車内設備[33](p6) バリアフリー・アクセス,, , , バリアフリー・アクセス,,
車体長(mm)[33](p6) 17,455 16,760 16,760 17,455
重量(t) 117
座席定員[8](p21) 25 24 24 25
車両定員[注釈 8] 650
車両番号
HRI A101
:
A102
C101
:
C102
D101
:
D102
B101
:
B102
台湾車輌 A103
:
A117
C103
:
C117
D103
:
D117
B103
:
B117

凡例:

  • A/B - 制御動力車
  • C/D - 動力車
  • バリアフリー・アクセス:バリアフリー
  • :手荷物置き場
  • Wi-Fi

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 1.2m/s/s。[4](p7)
  2. ^ 1.0m/s/s。[4](p7)
  3. ^ 1.3m/s/s。[4](p7)
  4. ^ 初期値。摩耗時は660mmまで[8](p34)
  5. ^ 175HP[8](p51)
  6. ^ 他の路線では台北市政府捷運工程局の入札番号(C3xx)をもとに形式名が制定されたが、それに従うとC610F標の当路線はC6xxとなる。
  7. ^ 台湾鉄路管理局や台湾高速鉄道では既に日立製列車採用実績がある
  8. ^ 立客を1平米あたり6人で算出。[3]

出典

[編集]
  1. ^ a b (繁体字中国語)全國第一條彩色捷運 環狀線列車黃白黑彩繪亮眼』(プレスリリース)新北市政府捷運工程局、2016年12月12日。オリジナルの2017年6月26日時点におけるアーカイブhttps://archive.is/20170626150251/http://www.dorts.ntpc.gov.tw/link_data/index.php?mode=detail&id=33729&type_id=2&parent_id=103142017年6月25日閲覧 
  2. ^ (繁体字中国語)台北市政府捷運工程局機電系統工程処 (2017年2月8日). “台北都會區大眾捷運系統路網中,各路線所採購之列車數為何?”. 台北市政府. 2017年6月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月25日閲覧。 “環狀線第一階段(CF610標)共採購17列四車列車(68輛)。” Archived 2017年6月26日, at archive.ph エラー: 不明なアーカイブURLです。
  3. ^ a b c d e f g h i 黃柏文 & 洪鈺傑 2017, p. 22.
  4. ^ a b c d e f (繁体字中国語)台北市政府捷運工程局 (2017年11月24日). “C105AW684_02.pdf 「環狀線CF610標電聯車系統海外組裝完成之車輛首件產品檢驗暨原型車測試」”. 台北市政府 公務出國報告專區. 2019年5月5日閲覧。
  5. ^ (繁体字中国語)陳昭延 (2010-08). “捷運環狀線電聯車概念設計架構簡介”. 捷運技術 (台北市政府捷運工程局) 第43期. ISSN 18122906. http://www.file.cloud.taipei.gov.tw/publication2015/87ACD4F4-4786-4F26-8FA8-C09A073A46EF/chapter/4302_004.pdf 2019年5月5日閲覧。.  アーカイブ 2018年4月30日 - ウェイバックマシン
  6. ^ (英語)Driverless metros - ウェイバックマシン(2012年6月21日アーカイブ分) 2010-11-04,アンサルド・ブレーダ
  7. ^ a b (繁体字中国語)源自義大利工藝 捷運環狀線首列車今正式登台』(プレスリリース)新北市政府捷運工程局、2016年11月24日。オリジナルの2017年6月25日時点におけるアーカイブhttps://archive.is/20170625122416/http://www.dorts.ntpc.gov.tw/link_data/index.php?mode=detail&id=33334&type_id=2&parent_id=103142017年6月25日閲覧 
  8. ^ a b c d e f g (繁体字中国語)臺北大眾捷運股份有限公司 (2019年3月6日). “C107AW0635_03.pdf 環狀線(第一階段)電聯車海外訓練報告”. 臺北市政府. 2019年6月1日閲覧。[リンク切れ] 臺北市政府公務出國報告專區
  9. ^ a b c (英語)Dario Romano, Salvatore Zazzaro, Luca Lenzi, Luca Niro, Vincenzo Improta, Angelo Surini (2017). “Driverless Systems: Cutting-edge Technology for Smart Transportation”. 日立評論 (日立製作所) (66th): p.123. https://www.hitachi.com/rev/archive/2017/r2017_02/03/index.html 2019年5月5日閲覧。.  アーカイブ 2019年10月27日 - ウェイバックマシン
  10. ^ 台北メトロ環状線、31日に正式開業へ/台湾”. フォーカス台湾 (2020年1月21日). 2020年1月21日閲覧。 アーカイブ 2020年1月29日 - ウェイバックマシン
  11. ^ (繁体字中国語)決標公告 YH971C610C611C617”. 行政院公共工程委員会 政府電子採購網 (2009年3月4日). 2019年6月30日閲覧。 アーカイブ 2023年4月4日 - ウェイバックマシン
  12. ^ a b 黃柏文 & 洪鈺傑 2017, p. 21.
  13. ^ a b (繁体字中国語)捷運環狀線總進度達90%!17列電聯車完成檢測今交車 アーカイブ 2018年8月2日 - ウェイバックマシン 2018-08-01 Newstalk新頭殻
  14. ^ a b (繁体字中国語)台北市政府捷運工程局 (2017年6月). “正興建中捷運工程--環狀線第一階段”. 捷運年刊 (台北市政府) (2016年). ISSN 18123287. https://books.taipei/publication/detail?id=e40859f5-36a6-41e2-827b-81e39ab4afd1 2017年6月26日閲覧。. 
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  16. ^ メトロ環状線、伊製車両が台湾に到着 お披露目は来月中旬”. 中央社フォーカス台湾 (2016年11月25日). 2019年5月5日閲覧。 アーカイブ 2019年3月24日 - ウェイバックマシン
  17. ^ <環状線>伊製車両お披露目 明るい車内でイメージ一新/台湾”. フォーカス台湾 (2016年12月13日). 2019年5月5日閲覧。 アーカイブ 2016年12月14日 - ウェイバックマシン
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  23. ^ a b 黃柏文 & 洪鈺傑 2017, p. 24.
  24. ^ 黃柏文 & 洪鈺傑 2017, pp. 24–25.
  25. ^ (繁体字中国語)陳昭延 (2019-09-25). “臺北捷運環狀線(第一階段)電聯車簡介”. 臺北捷運報導 (台北市政府捷運工程局) (第327期): 頁1. https://www-ws.gov.taipei/Download.ashx?u=LzAwMS9VcGxvYWQvMzg4L3JlbGZpbGUvMTk1MTkvODA4NDQxNi9jOTFiMmJiNS05ZDkxLTQ1MTQtODQ4OS02ZGRhNTBmMjE0YzIucGRm&n=cnAzMjctMDIucGRm&icon=..pdf.  アーカイブ 2020年8月9日 - ウェイバックマシン
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  28. ^ (繁体字中国語)環狀線車廂亮相 宛如"大黃蜂"”. 中華電視公司/Youtube (2016年12月12日). 2019年6月30日閲覧。 アーカイブ 2023年4月4日 - ウェイバックマシン
  29. ^ 台北メトロ・環状線車両デザイン公開/台湾”. フォーカス台湾 (2014年9月16日). 2019年5月5日閲覧。 アーカイブ 2015年3月19日 - ウェイバックマシン
  30. ^ (繁体字中国語)新北捷運環狀線 大黃蜂車廂亮相”. 聯合報/Youtube (2014年9月15日). 2019年6月30日閲覧。 アーカイブ 2023年4月4日 - ウェイバックマシン
  31. ^ a b 黃柏文 & 洪鈺傑 2017, p. 25.
  32. ^ 黃柏文 & 洪鈺傑 2017, p. 26.
  33. ^ a b (繁体字中国語)新北市政府捷運工程局 (2016年11月10日). “「環狀線CF610標電聯車系統海外組裝完成之車輛首件產品檢驗暨原型車測試行程」出國報告”. 新北市政府公務出國報告. 2018年10月7日閲覧。 アーカイブ 2018年10月9日 - ウェイバックマシン

参考文献

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関連項目

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