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哺乳類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
哺乳動物から転送)
哺乳類
Mammalia
生息年代: 後期三畳紀 – 現世、220–0 Ma
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
階級なし : 四足類 Tetrapoda
階級なし : 有羊膜類 Amniota
階級なし : 単弓類 Synapsida
: 哺乳綱 Mammalia
学名
Mammalia
Linnaeus1758
和名
哺乳類
亜綱

哺乳類(ほにゅうるい、英語: mammal, [ˈmæm(ə)l]、 学名:Mammalia)は、哺乳形類に属する脊椎動物の一群である。分類階級は普通に置かれ、哺乳綱(ほにゅうこう)とされる。

ほ乳類と表記されることもある[1][2]

基本的に有性生殖を行い、現存する多くの胎生で、で子を育てるのが特徴である。ヒト Homo sapiens を含む分類群で、ヒトは哺乳綱の中の霊長目ヒト科ヒト属に分類される。

哺乳類に属する動物のの数は、研究者によって変動するが、現生種は5,416種[3]~6,495種(最近絶滅した96種を含む)[4]とされ、脊索動物門の約10%、広義の動物界の約0.4%にあたる[要出典]

日本およびその近海には、外来種も含め、約170種が生息する(日本の哺乳類一覧[5][6]を参照)。

語源

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Mammalia(哺乳類)という言葉は、1758年カール・フォン・リンネによる『自然の体系』第10版[注釈 1]においてはじめて用いられた[8]。リンネは1735年の『自然の体系』初版では哺乳類を「四足綱 Quadrupedia」としていたが、ヒトを四足動物に入れたことで自然主義者たちから批判を受けた[8]。リンネはこれを受けて「ヒトがもともと四つん這いで歩いていなかったとしても、女性から生まれるヒトは母乳で成長することは認めざるを得ないだろう」と、第10版では雌の乳房 (female mammae) をその象徴として、ラテン語の「乳房の mammae」に由来する「哺乳類 Mammalia」とした[8]。今日では、哺乳類の定義を乳腺mammary gland)を持つこととし、これは乳汁を分泌しない雄や乳頭を持たない単孔類にもうまく当てはまる[8]

「哺乳類」は、ドイツ語の Säugetiere の訳である。saugen(母乳を飲む)と Tier(動物)に由来している。「哺」は、口にふくむ、食らうことを表すが、食物を与える意味も持つ。よって、「哺乳」とは乳を飲ませて育てることを意味する。

進化

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カモノハシの属する単孔目は三畳紀に他の哺乳類から分岐したとされ、現生哺乳類の中で最も原始的な形質を保持している。

哺乳類の起源は古く、既に三畳紀後期の2億2500万年前には、最初の哺乳類といわれるアデロバシレウスが生息していた。そのルーツは、古生代に繁栄した単弓類のうち、キノドン類である。単弓類は両生類から派生した有羊膜類の子孫の一つである。有羊膜類は単弓類と竜弓類(後に爬虫類が出現した系統を包括する)とに石炭紀後期に分岐し、以降、単弓類は独自の進化をしていた。単弓類は、ペルム紀末の大量絶滅において壊滅的なダメージを受け、キノドン類などごくわずかな系統のみが三畳紀まで生き延びている。一時期再び勢力を挽回するものの、既に主竜類などの勢力も伸長し単弓類は地上の覇者ではなくなっていた。そして、三畳紀後期初頭の大絶滅を哺乳類とともに生き延びたのは、トリティロドン科のみであった。しかし彼らも白亜紀前期には姿を消している。また、同じく三畳紀には、すでに哺乳類の他のものから分岐する形で単孔目が出現している。単孔目は現存するが、これは卵生であることや総排出腔をもつことなどほかの哺乳類とは大きく異なる構造を持ち、もっとも原始的な哺乳類の形をとどめているとされる。

酸素濃度35%のペルム紀以降は、リグニンの分解能を獲得した菌類による木材の分解により酸素濃度が徐々に低下し、ジュラ紀後期の2億年前には酸素濃度は12%まで低下した。気嚢は、横隔膜方式よりも効率的に酸素を摂取できる機能がある。低酸素下でもその機能を維持できる気嚢を有した一部の双弓類(爬虫類)は繁栄することができた。一方で哺乳類の祖先である単弓類は低酸素環境下でその種の大部分が絶滅することとなった[9]。哺乳類の肺機能は、酸素分圧0.1気圧以下で呼吸困難になり、酸素分圧0.8気圧以上で肺の組織が酸化される[10]

恐竜の全盛時代であるジュラ紀、白亜紀の哺乳類はネズミほどの大きさのものが多かった。しかし進化が停滞していたわけではない。白亜紀前期には、それまでの有袋類から分岐してすでに有胎盤類が登場している。また、中国から発見された大型の哺乳類の化石から未消化の恐竜の子供が見つかっている。これは、レペノマムスデルタデリジウムのように哺乳類が恐竜を捕食していた例もあったことを意味している。

恐竜を含む主竜類が繁栄を極めた時代には、哺乳類は、夜の世界など主竜類の活動が及ばない時間・場所などのニッチに生活していた。魚類両生類爬虫類鳥類には4タイプの錐体細胞を持つものが多い。現在、鳥類などに比して哺乳類の視覚が全般的に劣っているのも、この長い夜行生活を経て大部分の哺乳類の視覚が2色型色覚に退化したためと考えられている[11]。約6400万年前、鳥類とワニ類を除く主竜類が絶滅し、次の新生代では、その空白を埋めるように哺乳類は爆発的に放散進化し、多種多様な種が現れて地上でもっとも繁栄した種となった。

現在では地中や水中などを含め、地球上のほとんどの環境に、哺乳類が生息している。

分類体系

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────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────

※単弓類の系統は哺乳類以外は全て絶滅した。

※哺乳類は、従来は後述する顎関節の特徴で定義されてきた。しかし近年、中間的な化石が出現するなどこの定義が適用できない場合が増えたため、現生種を含む最も小さい単系統となるよう、系統学的に厳密に再定義することが多くなった。これにより、梁歯目モルガヌコドン目などの原始的なものが哺乳類から外れることになる。それらを含めた従来の広い意味での哺乳類を、哺乳形類という。

形態的・生態的な特徴

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子供に乳を与えるウシ。授乳は哺乳類の特徴の一つであり、名前の由来である。

軟組織の特徴

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これらは化石では確認しにくいが、近年では少しずつ研究が進められている[12]

乳房
保育行動(授乳)に用いる器官。汗腺が分化した乳腺が集合し発達したもの。乳房乳頭内部にある乳腺乳管で成り立つ。イノシシやネズミなど多産種では多対を、ヒトゾウのような少産種では1対のみを発達させる。単孔類は持たない。通常出産するとの分泌が開始されるが、他の個体が産んだ子を相手に母性本能が刺激されて乳を分泌する場合もある[13]単孔類では乳房・乳頭はなく乳腺からにじみ出た乳を子が舐め取る。
口唇(口輪筋)(頬筋)
上記の乳頭に吸い付くため口の周りにある柔らかい器官。単孔類は持たない。類では二次的に退化したと思われている。
体毛
体表を覆う体毛を持つ動物のうち、皮膚角質層に由来するものを持つのは哺乳類のみである[14]。さらにこれが発達して厚くなると、、またはヤマアラシセンザンコウのトゲやウロコとなる[14]。体毛は体温の発散を防ぐ他に、保護色や触覚の役割を持ったり、ディスプレイにも使われたりする[14]クジラ類では、ハクジラ類が、胎児期にのみ、頭部の一部にわずかな毛をもつ。参考までに、爬虫類は体毛をもたず、鳥類では羽毛が体表を覆う。
横隔膜
肋骨と共同して肺呼吸を可能にする横隔膜をもち、これが胸腔腹腔とを分けている(他の動物群にない特徴)。
心臓
心臓に2心房2心室をもつ。また、血液の体循環左大動脈弓のみによる。
血液
赤血球は循環系では無核で、その形は円盤状である(ラクダ類では楕円状)。
共通の特徴であるかのように誤解されていること

次の特徴は「哺乳類の特徴」と言われることがあるが、正しくは、あくまで一部の系統の特徴である。

「胎生」
獣亜綱は、胎生であるが、原獣亜綱など(現生種はカモノハシ目の3属5種のみ)は例外的に卵生である。
「胎盤」
有胎盤類は体内の胎盤で子を育てて出産するが、(哺乳類の3つの系統のひとつの後獣目は)有袋類で体外部の育児嚢で子を育てる。
哺乳類の平均体温[15]
動物名 平均体温
()
ブタ 39.0
ヤギ 39.0
ヒツジ 39.0
ウサギ 39.5
ウシ 38.5
イヌ 38.5
ネコ 38.5
ウマ 37.5
ヒト 36.0
(参考)ニワトリ 42.0
体温
鳥類と同じく、体温をほぼ一定に保つ恒温動物であるものがほとんどを占める。ただし、ナマケモノハダカデバネズミのように例外的に変温動物とされるもある。
肛門泌尿生殖門(尿と胎児が出てくる孔)の分離
例外としてカモノハシ類は、共通の総排出口をもつ(爬虫類や鳥類も1穴)。

歯の特徴

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哺乳類の歯は一般的に、それぞれ別の機能を持つ形状を取っており、切歯(門歯)・犬歯・前臼歯(小臼歯)・臼歯(大臼歯)の4種類に分化している[16]。真獣類の基本数はイノシシに見られる片顎あたり切歯3・犬歯1・前臼歯4・臼歯3だが、これが揃っている種は少なく[16]食性により歯の退化したものや、ハクジラ類のように同形歯をもつものもある。両生類や爬虫類は同形歯であり、鳥類は歯をもたない。

頬歯(前臼歯と臼歯)は、歯冠咬頭と呼ばれるふくらみを複数もち、複雑な形をしている。また、頬歯歯根は2本以上に分岐している。

骨格の特徴

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成長点
長骨は中心部分ではなく両端の骨端軟骨部分で成長し、成長中の若い個体では、それらが軟骨でつながっている(爬虫類では、骨は中心部分からしか成長しない)。
下顎
1つの歯骨だけでできている(爬虫類は下顎が複数の骨からなる)。
鱗状骨
頭骨と下顎は、側頭鱗鱗状骨)と歯骨によって関節している(爬虫類の顎関節は、方形骨関節骨からなる)。
耳小骨
鐙骨砧骨槌骨という3個の連続した耳小骨が、鼓膜の振動を内耳に伝える(爬虫類や鳥類の耳小骨は、鐙骨のみ。哺乳類のみがもつ砧骨と槌骨は、爬虫類の方形骨関節骨がそれぞれ変化したものである)。こうした変化は獣弓類(とりわけキノドン類)において段階的に進化が進んでいた[17]
二次口蓋
口蓋と鼻道の間に二次口蓋と呼ばれる板状の骨があり、口と鼻道の間が完全に仕切られている(爬虫類ではこの分離が不完全)。
頭骨の鼻穴
1つ(爬虫類では1対)。
後頭顆
頭蓋後頭部にある大後頭孔の左右に、頭骨と第一頸椎を関節させる後頭顆を1対もつ(爬虫類や鳥類は、大後頭孔の下に1個の後頭顆をもつ)。
頚椎
7個。ただし、クジラ目では癒合・分離によって数が変異し、ジュゴン目では6個、アリクイ目では6・9・10個となる。
肋骨
首の部分の肋骨は、すべて頚椎に癒合している。胸椎にはゆるく関節し、体を前後左右に曲げるだけでなく、ねじることもできる。また、の部分には肋骨がない(体をねじれることと、腹部の肋骨を欠くことにより、メスは寝そべって子どもに授乳することができる)。
肩甲骨
脊柱とは関節しておらず(このために前肢の自由な動作が可能となる)、外側の面に肩甲棘とよばれるはっきりした隆起線が前後に走る(爬虫類の肩甲骨には肩甲棘がない)。
骨の数は親指が2個、その他の指は3個が基本(爬虫類はこれより多い)。
寛骨
腸骨坐骨恥骨の3つが癒合し、1つの寛骨になっている。ただしクジラ類は寛骨が消失(爬虫類は3つの骨が分離している)。

色覚の特徴

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脊椎動物色覚は、網膜の中にどのタイプの錐体細胞を持つかによって決まる。魚類両生類爬虫類鳥類には4タイプの錐体細胞(4色型色覚)を持つものが多い。よってこれらの生物は、長波長域から短波長域である近紫外線までを認識できるものと考えられている。一方ほとんどの哺乳類は錐体細胞を2タイプ(2色型色覚)しか持たない。哺乳類の祖先である爬虫類は4タイプ全ての錐体細胞を持っていたが、2億2500万年前には、最初の哺乳類と言われるアデロバシレウスが生息し始め、初期の哺乳類は主に夜行性であったため、色覚は生存に必須ではなかった。結果、4タイプのうち2タイプの錐体細胞を失い、青を中心に感知するS錐体と赤を中心に感知するL錐体の2錐体のみを保有するに至った。これは赤と緑を十分に区別できないいわゆる「赤緑色盲」の状態である。この色覚が哺乳類の子孫に遺伝的に受け継がれることとなった。

霊長類直鼻猿亜目は、メガネザル下目真猿下目に分岐する。この分岐の際に真猿下目のX染色体に位置する錐体視物質に関連した色覚多型が顕著になり、ヘテロ接合体の2本のX染色体を持つメスに限定した3色型色覚の再獲得につながり、さらに狭鼻下目のオスを含めた種全体の3色型色覚の再獲得へとつながることとなる[18]真猿下目狭鼻下目旧世界ザル)と広鼻下目新世界ザル)とが分岐したのは3000-4000万年前と言われている[19][20][信頼性要検証]ヒトを含む旧世界霊長類狭鼻下目の祖先は、約3000万年前、性染色体であるX染色体に位置している赤を中心に感知するL錐体から変異した緑を中心に感知する新たなタイプの錐体(M錐体)視物質の遺伝子が出現し、ヘテロ接合体の2本のX染色体を持つメスのみが3色型色覚を有するようになり、さらにヘテロ接合体のメスにおいて相同組換えによる遺伝子重複の変異を起こして同一のX染色体上に2タイプの錐体視物質の遺伝子が保持されることとなりX染色体を1本しか持たないオスも3色型色覚を有するようになった。これによって、第3の錐体細胞が「再生」された。3色型色覚はビタミンCを多く含む色鮮やかな果実等の発見と生存の維持に有利だったと考えられる[21][19]

なお、時代を下ってヒトの色覚に鑑みるに、ヒトが属する狭鼻下目のマカクザル色覚異常がヒトよりも非常に少ないことを考慮すると、ヒトの祖先が狩猟生活をするようになり3色型色覚の優位性が低くなり、2色型色覚の淘汰圧が下がったと考えられる[21]。広鼻下目のヨザルは1色型色覚でありホエザルは狭鼻下目と同様に3色型色覚を再獲得している[18][信頼性要検証]が、これらを除き残りの新世界ザル(広鼻下目)はヘテロ接合体のX染色体を2本持つメスのみが3色型色覚を有し、オスは全て色覚異常である。これは狭鼻下目のようなX染色体上での相同組換えによる遺伝子重複の変異を起こさなかったためである[19]。ヒトは上記のような霊長目狭鼻下目の祖先のX染色体の遺伝子変異を受け継いでいるため、M錐体を欠損したX染色体に関連する赤緑色盲が伴性劣性遺伝をする。男性ではX染色体の赤緑色盲の遺伝子を受け継いでいると色覚異常が発現し、女性では2本のX染色体とも赤緑色盲の遺伝子を受け継いでいる場合に色覚異常が発現する[22]。なお、日本人では男性の4.50%、女性の0.165%が先天赤緑色覚異常で、白人男性では約8%が先天赤緑色覚異常であるとされる。

その他の哺乳類の2色型色覚の例外として、最近の研究では、有袋類には3色型色覚が広がっている可能性がある[23]。有袋類のうちフクロネコポッサムで3色覚が認められている[24]鰭脚類クジラ類は1色型色覚である[25]

分類

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従来の分類体系では現生哺乳類を原獣亜綱Ptorotheria)と獣亜綱Theria)の2亜綱とする分類が用いられており[26]、以下の解説も伝統的な体系に基づいている。一方で現生群を南楔歯亜綱(アウストラロトリボスフェニック亜綱 Australosphenida)と北楔歯亜綱(ボレオトリボスフェニック亜綱 Boreosphenida)の2亜綱に分ける説も提唱されている[26][27]。南楔歯類には単孔類と、絶滅したアウスクトリボスフェノス目Ausktribosphenidaが含まれる[26]。北楔歯類は摩楔歯類(トリボスフェニダ類 Tribosphenida)と同義とされることがあり、獣類(有胎盤類と有袋類)は北楔歯類または摩楔歯類に含められる[26][28][29]。摩楔歯類を絶滅群である異獣類などとともに獣型亜綱(Theriiformes)としてまとめる分類が提唱されたこともある[29]

現生分類群の系統

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現生の哺乳類は以下のように分岐したと考えられている。なお、獣亜綱と単孔類が分岐したのは約1億8000万年前、有袋類と有胎盤類が分岐したのは約1億4000万年前である[30]。赤で表記した近蹄類の分岐のみ白亜紀と古第三紀の境界にあたる6600万年前より後である[31]

哺乳類[43]

単孔類 Monotremata Ornithorhynchus anatinus

獣亜綱[42]
有袋類

オポッサム形目 Didelphimorphia

少丘歯目 Paucituberculata

オーストラリア有袋類

ミクロビオテリウム目 Microbiotheria

Euaustralidelphia

フクロモグラ形目 Notoryctemorphia

バンディクート形目 Peramelemorphia

フクロネコ形目 Dasyuromorphia

双前歯目 Diprotodontia Macropodidæ

Australidelphia
Marsupialia[39][40]
有胎盤類[41][38]
アフリカ獣類
アフリカ食虫類

管歯目 Tubulidentata

[31]

長脚目 Macroscelidea

[31]

アフリカトガリネズミ目 Afrosoricida

[31]
Afroinsectiphilia[31]
近蹄類

長鼻目 Proboscidea

[31]

海牛目 Sirenia Trichechus

[31]

イワダヌキ目 Hyracoidea

[31]
Paenungulata[31]
Afrotheria[36]
異節類

有毛目 Pilosa [32]Myrmecophaga tridactyla

被甲目 Cingulata Dasypus novemcinctus

Xenarthra[32]
北方真獣類
真主齧類
グリレス類

齧歯目 Rodents

兎形目 Lagomorphs

Glires
真主獣類

霊長目 Primates

皮翼目 Dermoptera

登木目 Scandentians

Euarchonta
Euarchontoglires[35]
ローラシア獣類

真無盲腸目 Eulipotyphla(かつての食虫目の一部。詳細は同項参照)Talpidae

翼手目 Chiroptera Desmodontinae

奇蹄目 Perissodactyla Equus quagga Diceros bicornis

鯨偶蹄目 Cetartiodactyla Capra walieEubalaena glacialis

広獣類[33][34][31]

食肉目 Carnivora Zalophus californianus

鱗甲目 Pholidota Manidae

Ferae
Laurasiatheria[33][34]
Boreoeutheria[37][38]
Placentalia
Theria
Mammalia

上記の系統樹の凡例:

  • 系統樹は2012年から2017年までの複数の引用文献(系統樹内を参照)、および2020年のサーベイ論文[44]を用いて作成した。
  • 系統樹中に登場する引用は、その分岐を明示してある参考文献を記したものである。例えば「獣亜綱」のところについている引用(キャンベル11版 pp.852-853)は「獣亜綱」が「有袋類」と「有胎盤類」に分岐する事を記してある文献である
  • 論文から引用した場合は、論文本体ではなく「Abstract」や「Introduction」の節からのみ引用した。これは論文本体の記述は(論文発表時点では)定説になっていない新説であるのに対し、これらの節は既存研究を客観的かつ網羅的に記載するためのものだからである。ただしサーベイ論文[44]や書籍[45]に関してはその限りではない。

上記の系統樹に対して生物学者の間でどの程度合意が取れているかは、系統樹の分岐箇所により異なるが、最初の

哺乳類

単孔類

獣亜綱

有袋類

有胎盤類

の部分に関しては、多くの化石の証拠と分子系統解析の結果から合意が取れている[30]

有胎盤類

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哺乳類 - 獣亜綱の下にあたる有胎盤類内の系統が

有胎盤類

アフリカ獣類

異節類

北方真獣類

という3つに分かれる事は概ね合意されている[46][47]

なお、この3つの系統はパンゲア大陸の分裂と密接に関係している事が強く示唆されており[48][49]、実際パンゲア大陸の分裂により誕生したアフリカ大陸南アメリカ大陸ローラシア大陸に対応する地域にアフリカ獣類、異節類、北方獣類がそれぞれ分布する[48]

しかしこれらの大陸の分裂の順番と年代は、分子系統解析が明らかにするアフリカ獣類、異節類、北方獣類の分岐の順番と年代とは異なっている[48]。まず順番に関して言えば分子系統解析はこれら3つの系統がほぼ同時期に分岐した事を示唆する[48]

また時期に関しても、アフリカ大陸と南アメリカ大陸の分岐の時期がおよそ1億500万年前だとされているのに対し[48]、これら3系統の分岐はおよそ8800〜9000万年前と推定されており[31]、両者の年代は大きく異なっている。もちろん分子系統解析は(分岐が何世代前に起こったかはある程度推測できるものの)分岐が起こった年代を直接推定できるわけではなく、年代の推定には仮定をいくつも重ねなければならないという事情はあるが、2010年以降の研究は大陸の分裂よりも3系統の分岐のほうがはっきりと後に起こったとする傾向がある[48]

こうした差がある原因は、大陸は分裂後も距離的に近くにあった為、しばらくは動物相の交流が可能であった為と考えられる[48]。実際、陸地が分裂状態にあっても海を渡った漂流が居住地域を拡大したと考えられる例は(パンゲア大陸の分裂以外で)いくつか存在し[48]、このような推定を傍証する[48]

なお上記3系統はほぼ同時期に分岐したので[31]、これらのうちどれが最初に分岐したのかに関する合意は2017年現在存在しない[50][47]。すなわち、下記の3つのいずれの分類が正しいのか決着がついていない[50][47]

  1. 北方真獣類 + アトラントゲナータ(「大西洋で生じた分化」[51]あるいは「大西洋類」の意[52]:異節類+アフリカ獣類)
  2. アフリカ獣類 + エクサフロプラセンタリア英語版(「アフリカ獣類以外の有胎盤類」の意[53]:異節類+北方真獣類)
  3. 異節類 + エピテリア(「上獣類」の意[54]:アフリカ獣類+北方真獣類)

形態学的な研究はかなりの部分3.を支持するものの[47]、ほとんどの分子系統解析は1.か2.を支持する[47]

決着がつかない原因は、(おそらくはパンゲア大陸ゴンドワナ大陸の分裂に伴う連続的で急速な発散によって)上記3系統の遺伝子があまりに大きくかけ離れているため分子系統解析で3系統の関係を探るのが容易ではないからである[50]

アフリカ獣類

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アフリカ獣類に属する系統群は、海へ進出した海獣類を除き、2000万年前まで遡るとアフリカ大陸、マダガスカル、アラビア半島といったアフリカ周辺に限られるため[31]、その名がつけられた[31]。アフリカ獣類は大きく2つの系統に分かれており[31]、それぞれアフリカ食虫類、近蹄類と呼ばれる。

北方真獣類

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北方真獣類は

北方真獣類

真主齧類

ローラシア獣類

のように分岐するが[55][47]、真主齧類内部の分岐、およびローラシア獣類内部の分岐は2017年現在未確定な部分が多い[55][47]

真主齧類

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真主齧類はグリレス類Glires、ネズミ目、ウサギ目)と真主獣類Euarchonta、霊長目、齧歯目、ヒヨケザル目、ツパイ目)に系統分類できるとされるものの、真主齧類内の目の系統関係は2013年現在曖昧なままである[56]。特にツパイ目の位置づけの決定は2017年現在でも難しい[47]。ツパイ目が霊長目やヒヨケザル目の姉妹群となる研究成果がある一方[57][58]、グリレス類の姉妹群とする成果[59][60]や、真主齧類で最も祖先的だとする成果[58][59]もあり、後者2つのいずれかが正しいとすれば、真主獣類という系統は否定されることになる。

なお歴史的には真主齧類に翼手目を加えたものを「主齧類」と呼んでいたが[31]、分子系統解析により翼手目は別系統であることが分かったので、主齧類から翼手目を除いたものを「真主齧類」と名付けた[31]

ローラシア獣類

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ローラシア獣類内の目の系統関係の確立は難しく[55]、2017年現在確立されているのは、真無盲腸目が最も早期に分岐したことと、食肉目と鱗甲目が姉妹群であることだけである[55][47]。ローラシア獣類内における奇蹄目の位置づけの決定は特に難しい[47]

なお、翼手目、奇蹄目、鱗甲目、食肉目の4つを総称してペガサス野獣類と呼ぶ事がレトロトランスポゾンの解析から提案されたが、その後の分子系統解析の研究[61][62][63][64][65]で否定されている。

有袋類

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有袋類は系統樹に挙げた7つの目からなっており[66]、20世紀にはこれら7つを

の2つに分類していたが[66]、21世紀における分子系統解析の研究はこの2つの分類を否定している[66]

  • なお上では南米に住むはずのミクロビオテリウム目を形態学的特徴の類似性によりオーストラリア有袋類に分類しているが[66][67]、この事自身は分子系統解析においても支持されており[67]ミクロビオテリウム目はオーストラリア有袋類の他の4つの目の姉妹群である[67]
  • 一方、ミクロビオテリウム目以外の4つのオーストラリア有袋類の関係性は2015年現在未確定である[67]
  • 化石の形態学的な解析によるとオポッサム目は他の有袋類全ての姉妹群であるが[68]、一方で分子系統解析によればケノレステス目が他の有袋類全ての姉妹群であるという研究成果が複数ある[68]。これら2つの成果は明らかに矛盾しているが、どちらが正しいのかは2015年現在定まっていない[68]

日本における目名の表記法に関する議論

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日本では明治維新以来、名には「齧歯目」「霊長目」等、原名のラテン語をおおむね忠実に漢訳した漢名が用いられてきた(一般にはしばしば、「齧歯類」「霊長類」のように「類」が慣用されてきた)。だが、1988年文部省の『学術用語集 動物学編』において、目以下の名称をすべてカナ書きにし、目名は「ネズミ目」「サル目」のように、それぞれの動物群を代表する動物名(カナ書き)に変えるという改定がなされた。

しかし、たとえば「ネコ目」(食肉目)のネコ亜目とアシカ亜目、イヌ上科とネコ上科のように、亜目、上科のような比較的高い階層の分類階級による動物群は、それぞれ他のグループとは明らかに異なる特有の性質をもつものであり、1つの下位分類群の名前(「ネコ」)によって、目という大きなグループの全体(ネコ・イヌ・イタチ・クマ・アライグマ・パンダ・アシカ・アザラシ・セイウチなどからなる食肉目)を代表させることは、必ずしも直観的な分かりやすさには繋がらない。

さらに、近年の研究により、偶蹄目とクジラ目の詳細な系統が明らかにされ、「鯨偶蹄目」が創設された。これをカナ書きの原則に当てはめると「クジラウシ目」となる。また、「サル目ヒト科」は教科書にも全く採用されていない。

また、以前からの慣用として、どの分類階級であるかにかかわらず、「○○の仲間」を「○○類」と書くことがあるが、かつての漢名ならば、例えば「齧歯類」と言えば、それが「目」の階層の「齧歯目」を指すことは明らかであり、他の階層との混同のおそれは無かった。それが、「齧歯目」が「ネズミ目」となることによって、「ネズミ類」という言葉が示す可能性のある階層の範囲が目のレベルにまで広がり、混乱が拡大されたという側面もある。つまり、旧来の用例ならば、例えば「齧歯類」にネズミの類とリスの類、ヤマアラシの類が含まれることは容易に認識できるが、新しい用例で「ネズミ類」とした場合、これが狭義のネズミ類なのか、リスやヤマアラシの類をも含んだ概念なのかが把握しにくくなってしまっている。

この分類名の改定は、分類学の根本理念に対して充分に配慮した上でのものではなく、また平易化にむしろ逆行する部分もあることから、学界内でも現在なお議論が多い。現状では、旧来の漢名をそのまま用いたり、新しいカナ名と併記したりする例も多い。

日本哺乳類学会・目名問題検討作業部会では、基本的に従来の漢字名で統一すべきという論文を発表している[29]

脚注

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注釈

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  1. ^ これはのちに『国際動物命名規約』において、1758年1月1日に出版されたとみなし、動物命名法の起点の日付として用いる[7]

出典

[編集]
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  43. ^ キャンベル11版 pp.852-853
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  46. ^ TRM et al.(2016)の「Abstract」の節。なおカッコ内に例示した動物の例は同文献のFig.2から。
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参考文献

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外部リンク

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