国際言語学オリンピック
他言語での名称
英語: International Linguistics Olympiad オランダ語: Internationale Taalkunde-Olympiade ドイツ語: Internationale Olympiade in Sprachwissenschaft スウェーデン語: internationella olympiaden i lingvistik デンマーク語: internationale olympiade i lingvistik ノルウェー語: internasjonale olympiaden i lingvistikk フランス語: Olympiades internationales de linguistique スペイン語: Olimpiada Internacional de Lingüística ポルトガル語: Olimpíada Internacional de Linguística ルーマニア語: Olimpiadă internațională de lingvistică アイルランド語: Oilimpiad Idirnáisiúnta Teangeolaíochta マン島語: Olympiad Glare-oaylleeagh Eddyr-ashoonagh ラトビア語: Starptautiskā Lingvistikas Olimpiāde リトアニア語: Tarptautinė kalbotyros olympiada ロシア語: Международная олимпиада по лингвистике ウクライナ語: Міжнародна олімпіада з лінгвістики ポーランド語: Międzynarodowa Olimpiada Lingwistyczna チェコ語: Mezinárodní olympiáda v lingvistice スロベニア語: mednarodna olimpijada iz jezikoslovja セルビア語: međunarodna olimpijada lingvistike ブルガリア語: Международна олимпиада по лингвистика アルメニア語: Լեզվաբանության միջազգային օլիմպիադա ベンガル語: আন্তর্জাতিক ভাষা-বিজ্ঞান অলিম্পিয়াড エストニア語: rahvusvaheline lingvistikaolümpiaad フィンランド語: kansainvälinen kielitieteen olympiadi ハンガリー語: Nemzetközi Nyelvészeti Olimpia トルコ語: Uluslararası Dilbilim Olimpiyatı ヘブライ語: האוליפיאדה הבינלאומית לבלשנות ベトナム語: Olympic Ngôn ngữ học Quốc tế タイ語: ภาษาศาสตร์โอลิมปิกระหว่างประเทศ 中国語(繁体字): 國際語言學奧林匹亞 中国語(簡体字): 国际语言学奥林匹克竞赛 朝鮮語: 국제 언어학 올림피아드 | |
略称 | IOL |
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競技種別 | 科学オリンピック |
選抜段階 | 国際大会(本選) |
参加者数 | 216人 (2021) |
参加国数 | 34 (2021) |
開催形式 | 筆記試験(個人戦・団体戦) |
開催時期 | 毎年7-8月 |
公用語 | 英語 |
作業言語 | 各競技者の母語 |
初開催 | 2003年9月 (21年前) |
競技時間 | 6時間(個人戦)・3-4時間(団体戦) |
直近の大会 | |
大会名 | IOL2022 |
開催期間 | 2022年7月25日 - 29日 (2年前) |
開催地 | マン島・カッスルタウン |
組織 | |
運営 | International Board |
委員長 | Ivan Derzhanski, Stanislav Gurevich |
協賛 | なし |
公式サイト https://ioling.org/ 関連大会 日本言語学オリンピック(JOL) アジア太平洋言語学オリンピック(APLO) |
国際言語学オリンピック(こくさいげんごがくオリンピック、略称IOL)は、中等教育までの生徒を対象とする、言語学に基づいた問題を解く能力を競い合う競技大会である[1]。12ある国際科学オリンピックのひとつで、4番目に新しい。この大会は計算言語学、理論言語学、記述言語学の各分野の発展を図るものである。
概要
[編集]競技内容
[編集]与えられた未知の言語のデータとそれに対応する訳から法則を導出した上で[2][3]、その法則をもとに未知の言語における新たな語形を推測することを目的とした問題が出題される[4]。主に言語学の分野から出題される。他の多くの科学オリンピックとは異なり、個人戦と団体戦の両方がある。個人戦は制限時間6時間で5問を、団体戦は制限時間3-4時間で1問を4人1組のチームで協力して解く。団体戦の制限時間は、年によって異なる。各チームは4人以下の学生に加えて、競技資格のない成人のチームリーダー(引率者)で構成される[5]。主な出題ジャンルは理論言語学・計算言語学・応用言語学の主要な分野(音声学・形態論・意味論・統語論・社会言語学)など。
問題文は競技者の母語に翻訳され、競技者は母語で解答できる。また、問題の題材となる言語については、知名度の低い言語が増えている。特定の競技者にとってなじみのある言語が出題されると、その競技者が有利になる可能性があるためである。また、問題の題材として人工言語や架空の言語を使わない方針をとっている。しかし、過去には新体操の技を記録する表記体系[6]といった例外的な題材も取り上げている。
参加国は東欧や北欧が中心であり、日本は2012年から参加している。2008年にはアジアで初めて韓国が参加し、2009年からはインドも参加している。東南アジアやアフリカからはまだ参加国が少なく、競技ではこれらの地域の言語が多く出題される傾向にある。
参加資格
[編集]IOLの競技者は、20歳未満かつ大学未入学者である必要がある。IOLの各国代表として選ばれるには、国際委員会に承認された各国の国内予選を通過する必要がある[5]。日本から参加する場合は、日本言語学オリンピック(JOL, 一次予選)を通過したのちアジア太平洋言語学オリンピック(APLO, 二次予選)の上位8人になることで日本代表となる方法が一般的である[7]が、他国の国内予選を通過して他国の代表選手となることも場合によっては可能である[5]。
歴史
[編集]開催の背景と目的
[編集]1965年、ロシアのモスクワで、言語学者アルフレッド・ジュリンスキー(1938-1991)の提唱により、委員長を務めた数学者ウラジーミル・アンドレヴィッチ・ウスペンスキー、言語学者のアレクサンドル・キブリック、アンナ・ポリワノワ、アンドレイ・ザリズニャクらによる委員会が組織され[8]、中学生を対象とした初めての言語学オリンピックが開催された。1982年までモスクワ大学で定期開催され、1988年に現在のロシア国立人文大学で再開された[9]。1989年以降は両機関が共同で行った。なお1989年から1991年にはモスクワ国立言語大学も参加した[10]。1996年からサンクトペテルブルクのサンクトペテルブルク大学でも同様の大会が開催されている[9]。
1982年以来、ブルガリアでもブルガリア数学者連合や教育科学省により定期的に言語学オリンピックが開催されている[9]。アメリカのオレゴン州[11]やオランダでも同様のオリンピックが開催された。ブルガリア言語学オリンピックの設立後、モスクワ言語学オリンピックの優勝チームがブルガリアの大会に出場したり、その逆の形での出場も行われたりして、この分野での国際協力に大きな可能性を示した。
場所、年ごとの歴史
[編集]IOL2003
[編集]第1回大会は、ブルガリアの山岳リゾート地、ボロヴェツにおいて2003年9月6日から12日まで開催された。 ブルガリア、 チェコ、 エストニア、 ラトビア、 オランダ、 ロシアの6か国が参加した。モスクワ大学(MSU)のアレクサンドル・キブリックが委員長を務めた。最初の国際審査員は、イヴァン・デルジャンスキー(委員長)(ブルガリア科学アカデミー数学・情報研究所)、アレクサンドル・ベルディチェフスキー(モスクワ大)、ボリス・イオムディン(ロシア語学会)、エレナ・ムラヴェンコ(ロシア国立人文大学ロシア語学科)で構成されていた[9]。個人戦における5問の題材は、ヤーコプ・リンツバッハの「超越代数」筆記体系、エジプト・アラビア語(アフロ・アジア語族)、バスク語(孤立した言語)、アディゲ語(北西コーカサス語族)、フランス語(インド・ヨーロッパ語族)であった。団体戦における3問の題材は、トカラ語(インド・ヨーロッパ語族)、代名詞の照応を表す添え字、遂行動詞の三つの問題から構成された。
IOL2004
[編集]第2回大会は、2004年の8月2日から6日まで、ロシアのモスクワにあるロシア国立人文大学(RSUH)で開催された[12]。7カ国が出場し、 ポーランド、 セルビア・モンテネグロは初参加であった。個人戦における5問の題材は、カヤポ語、ラテン語、英語、ラコタ語、チュヴァシュ語だった。団体戦における問題の題材はアルメニア語だった。
IOL2005
[編集]第3回大会は2005年の8月8日から12日までオランダのライデンで開催され、初参加の フィンランドと ルーマニアを含む9カ国から13チームが参加した。個人戦における5問の題材は、ツォツィル語、ランゴ語、マンシ語、ヨルバ語、リトアニア語だった。団体戦における問題の題材はフィグイグ語だった。
IOL2006
[編集]第4回大会は、2006年の8月1日から6日まで、エストニアのタルトゥにあるタルトゥ大学で開催された[13]。初参加の リトアニアを含む9カ国から13チームが参加した。Renate Pajusaluが委員長を務めた。個人戦における5問の題材は、ラコタ語、カタルーニャ語、クメール語、ウデヘ語、ンゴニ語だった。団体戦における問題の題材はアメリカ手話だった。
IOL2007
[編集]第5回大会は、2007年7月31日から8月4日まで、ロシアのサンクトペテルブルクにあるHotel Geliosで開催された[14]。初参加の スペイン、 スウェーデン、 アメリカ合衆国を含む9カ国から15チームが参加した。Stanislav Gurevichが委員長を務めた。この年には、各国が1チームまたは2チーム (それぞれ4人ずつ) を派遣し、1チーム分の費用はホスト国が全額負担することが決まった。また、開催国は第3チームを派遣することもできる[14]。個人戦における5問の題材は、英語の点字、モビマ語(孤立した言語)、グルジア語(カルトヴェリ語族)、ンドム語(トランス・ニューギニア語族)、トルコ語とタタール語(チュルク語族)の対応であった。団体戦における問題の題材はハワイ語(オーストロネシア語族)であり、親族名称に焦点が当てられていた。
IOL2008
[編集]第6回大会は、2008年8月4日から9日まで、ブルガリアのサニー・ビーチ(スランチェフ・ブリャク)にあるサニー・ビーチ・リゾートで開催された[15]。初参加の ドイツ、 スロベニア、 韓国を含む11カ国から16チームが参加した。Iliana Raevaが委員長を務めた。問題委員会はイヴァン・デルジャンスキーが委員長を務めた。個人戦における5問の題材は、ミクマク語(アルゴンキン語派)、古ノルド語(北ゲルマン語群)の詩歌(特にdróttkvætt)、デフ語とチャムヒン語の対応(大洋州諸語)、コパイナラ・ソケ語(ミヘ・ソケ語族)、イヌクティトゥット語(エスキモー・アレウト語族)であった。団体戦における問題は、反切を用いた標準中国語と広東語(シナ語派)の対応に関するものであった。
IOL2009
[編集]第7回大会は、2009年7月26日から31日まで、ポーランド、ヴロツワフのヴロツワフ大学で開催された[16]。初参加の オーストラリア、 イギリス、 インド、 アイルランドを含む17カ国から23チームが参加した。ミハウ・スリヴィンスキが委員長を務めた。問題委員会はTodor Tchervenkov(フランスのリヨン大学)が委員長を務めた。個人戦における5問の題材は、スルカ語(孤立した言語)の命数法、ンコ文字及びラテン文字表記のマニンカ語及びバマナ語(マンデ語派)、伝統的なビルマ語(シナ・チベット語族)の名及びそれらの誕生日との関係、古インド語(インド語群)における強勢の位置、及び古典ナワトル語(ユト・アステカ語族)における文法と形態論の関係である。団体戦における問題の題材はベトナム語(オーストロアジア語族)だった。
IOL2010
[編集]第8回大会は、2010年の7月19日から24日まで、スウェーデンのストックホルムにあるÖstra Real Hostelにて開催された[17]。初参加の ノルウェーや シンガポールを含む18カ国から26チームが参加した。Hedvig Skigårdが委員長を務めた。問題委員会はアレクサンドル・ピペルスキーが委員長を務めた。個人戦における5問の題材は、ブドゥフ語(北東コーカサス語族)における種々の動詞の関係、デフ語(オセアニア)の命数法、ブリスシンボル、mRNAのコーディング、ロマンシュ語(西ロマンス語)におけるスルシルヴァ方言とエンガディン方言の関係であった。団体戦における問題は、モンゴル語(モンゴル語族)単一の辞書からの抜粋の翻訳であった。
IOL2011
[編集]第9回大会は、2011年7月25日から30日まで、米国ピッツバーグのカーネギーメロン大学で開催された[18]。初参加の ブラジル、 カナダ、 アラブ首長国連邦、 ベトナムを含む19カ国から27チームが参加した。Lori Levinが委員長を務めた。問題委員会はAdam Hesterbergが委員長を務めた。個人戦における5問の題材は、フェロー語(ゲルマン語派)の正書法、メノミニー語(アルギック語族)の形態学、ヴァイ語(マンデ語族)の構文、ナワトル語(ユト・アステカ語族)の意味論、バーコード言語EAN-13の構造についての推論を必要とした。団体戦における問題の題材は、サンスクリット語(インド・アーリア語派)の詩の規則と構造であった。
IOL2012
[編集]第10回大会はスロベニアのリュブリャナにあるリュブリャナ大学で2012年7月29日から8月4日まで開催された[19]。初参加の 中華人民共和国、 ギリシャ、 ハンガリー、 イスラエル、 日本を含む26カ国から34チームが参加した。Mirko Vaupoticが委員長を務めた。問題委員会はイヴァン・デルジャンスキーが委員長を務めた。個人戦における5問の題材は、ジルバル語(パマ・ニュンガ語族)の統語論、ウンブ=ウング語(トランス・ニューギニア)の数、バスク語(孤立した言語)の代名詞、テオプ語(オーストロネシア語族)の構文、ロツマ語(オーストロネシア語族)の意味論であった。団体戦における問題の題材は、ラーオ語(タイ・カダイ語族)における国名であった。
IOL2013
[編集]第11回大会は、2013年の7月22日から26日まで、イギリス・マンチェスターのマンチェスターグラマースクールにて開催された[20]。初参加の マン島、 台湾、 トルコを含む26の国と地域から35チームが参加した。ニール・シェルダンが委員長を務めた。問題委員会はStanislav Gurevichが委員長を務めた。個人戦における5問の題材は、英語に基づくイディン語(パマ・ニュンガ語族)の形態論、ツンドラ・ユカギール語(ユカギール語族)の意味論、ピダハン語(ムーラ語)の音韻論、ムナ語(オーストロネシア語族)の統語論、英語に基づくテレパシーに関するものであった。団体戦における問題は、9世紀のヌスフリ文字で書かれたグルジア語(カルトヴェリ語族)によるマーティン・セイモア=スミスの『世界を変えた100冊の本』のリストの翻訳であった。
IOL2014
[編集]第12回大会は、2014年の7月21日から25日まで、中国・北京の北京語言大学で開催された[21]。初参加の パキスタン、 ウクライナを含む28の国と地域から39チームが参加した。Jiang Yuqinが委員長を務めた。問題委員会はJae Kyu Leeが委員長を務めた。個人戦における5問の題材は、ベナベナ語(トランス・ニューギニア語族)の形態論、カイオワ語(カイオワ・タノア語族)の形態音韻論、タングート語(チベット・ビルマ語派)の親族、エンゲンニ語(ベヌエ・コンゴ語族)の構文、北西バヤ語(ウバンギ語族)であった。団体戦における問題は、世界人権宣言の記事をアルメニア語(インド・ヨーロッパ語族)に翻訳したものと一致させるものであった。
IOL2015
[編集]第13回大会は、2015年の7月20日から24日まで、ブルガリアのブラゴエヴグラトにあるブルガリア・アメリカン大学で開催された[22]。初参加の バングラデシュ、 フランス、 カザフスタンを含む29の国と地域から43チームが参加した。アレクサンドル・ベリノフが委員長を務めた。問題委員会はBozhidar Bozhinovが委員長を務めた。個人戦における5問の題材は、ナワトル語(ユト・アステカ語族)とアランバ語(中南パプア語族)の数、カバルド語(アブハズ・アディゲ語派)のベスレネイ方言の形態論、Soundex(サウンデックス)、ワンバヤ語(西バークリー語族)の文法、ソマリ語(アフロ・アジア語族)の詩の規則についてだった。団体戦における問題は、北ソト語(バントゥー語群)単一の辞書からの抜粋を用いて言語の文法と語彙を構築するものであった。
IOL2016
[編集]第14回大会は、2016年の7月25日から29日まで、インドのマイソールにあるインフォシス開発センターで開催された[23]。初参加の スリランカを含む31の国と地域から44チームが参加した。Monojit Choudhury博士とGirish Nath Jha博士が委員長を務めた。問題委員会はBoris Iomdinが委員長を務めた。個人戦における5問の題材は、アラッレ・タブラハン語(オーストロネシア語族)の空間の直示、ルウィ語(インド・ヨーロッパ語族)の象形文字、クヌーズ・ヌビア語(東スーダン語族)の形態統語論、イアトムル語(セピック語族)の意味論、ハカル語(アイマラ語族)の形態論における空間的特異性に関するものであった。団体戦における問題の題材は、タア語(ツウ語族)における100以上の発話とIPA転写とを対応づけるものであった。
IOL2017
[編集]第15回大会は、7月31日から2017年8月4日までアイルランドのダブリンにあるダブリンシティ大学で開催された[24]。初参加の カナダ(フランス語圏)を含む27の国と地域から43チームが参加した。カラ・グリーン博士が委員長を務めた。問題委員会はヒュー・ドブスが委員長を務めた。個人戦における5問の題材は、ビロム語(プラトー語群)の数、アブイ語(ティモール・アロール・パンタール語族)の所有と意味、キンブンド語(バントゥー語群)の形態統語論、コム文字で書かれたラベン語(オーストロアジア語族)、マダク語(中部メラネシア語群)の形態音韻論に関するものであった。団体戦における問題は、87個の絵文字とインドネシア語(オーストロネシア語族)の記述とを対応づけるものだった。
IOL2018
[編集]第16回大会は、チェコ共和国のプラハにあるチェコ生命科学大学で、2018年の7月26日から30日まで開催された[25]。初参加の マレーシア、 デンマークを含む29の国と地域から49チームが参加した[26]。Vojtěch Diatkaが委員長を務めた。問題委員会はマリア・ルビンスタインが委員長を務めた。個人戦における5問の題材は、クリーク語(マスコギ語族)の強勢、ハクン語(サル語派)の形態統語論、テレナ語(アラワク語族)の音韻論、山岳アラペシュ語(トリチェリ語族)での数の数え方、アカン語(大西洋・コンゴ語族)での血縁関係に関するものであった。団体戦における問題は、ジェ語派の3つの言語メンベンゴクレ語、シャバンチ語、クリンカチー語の音韻論的対応を調べるものであった。
IOL2019
[編集]第17回大会は、2019年7月29日から8月2日まで韓国の龍仁市にある韓国外国語大学校龍仁キャンパスで開催された[27]。初参加の ネパール、 香港、 ウズベキスタン、 コロンビアを含む36の国と地域から53チームが参加した[28]。キム・ミンギュとチェ・ユジョンが委員長を務めた。問題委員会はイ・テフンが委員長を務めた。個人戦における5問の題材は、ヨンゴム語(トランス・ニューギニア語族)の形態統語論、ユロック語(アルギック語族)の色彩語彙、書物のパフラヴィー文字で書かれた中期ペルシア語(イラン語派)、西タランガン語(オーストロネシア語族)の北部方言と海岸部方言における重複形、ノニ語(ベボイド語群)の形態統語論と曜日に関するものであった。団体戦における問題は、新体操の動きの表記体系と評価の法則を明らかにするものであった。
IOL2021
[編集]第18回大会は当初ラトビアのヴェンツピルスで2020年の7月20日から24日まで開催される予定であったが、新型コロナウイルス感染症の流行 (2019年-)によって2021年の7月19日から23日へ延期され、オンラインでの開催となった[29]。初参加の アゼルバイジャンを含む34の国と地域から54チームが参加した[30]。個人戦における5問の題材は、エカリ語(トランス・ニューギニア語族)の命数法、ズニ語(孤立した言語)の意味論、キリヴィラ語(オーストロネシア語族)の形態統語論、イクヴェレ語の形態音韻論、リクバクチァ語の動詞形態論に関するものであった。団体戦における問題は、ガリフナ語(アラワク語族)・ロコノ語(アラワク語族)・カリナ語(カリブ語族)の翻訳および語対応の問題であった。
IOL2022
[編集]第19回大会は、2022年7月25日から29日までマン島のキャッスルタウンにあるキング・ウィリアムズ・カレッジで開催された[31]。初参加の モルドバ、 スイス、 タイを含む37の国と地域から50チームが参加した[32]。ロバート・ティアが委員長を務めた。問題委員会はサミュエル・アフメドが委員長を務めた。個人戦における5問の題材は、ウビフ語(アブハズ・アディゲ語族)の形態音韻論、アラバマ語(マスコギ語族)の動詞の意味論および形態音韻論、ヌーキ語(ツウ語族)の統語論、アラバナ語(パマ・ニュンガン語族)の親族名称、チャム祖語の2つの娘言語であるファンランチャム語・回輝語(オーストロネシア語族)の音韻変化・声調発生に関するものであった。団体戦における問題は、古・中期満洲語(ツングース語族)の文と訳とを対応させ、満洲文字で表記させるものであった。
開催地
[編集]IOLの各大会の概要を次の表に示す。
回数 | 開催年 | 開催地 | 開催日 | 参加国 | 参加者数 | Webページ |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2003年 | ブルガリア・ボロヴェッツ | 9月6日 – 9月12日 | 6 | 33 | IOL2003 |
2 | 2004年 | ロシア・モスクワ | 7月31日 – 8月2日 | 7 | 43 | IOL2004 |
3 | 2005年 | オランダ・ライデン | 8月8日 – 8月12日 | 9 | 50 | IOL2005 |
4 | 2006年 | エストニア・タルトゥ | 8月1日 – 8月6日 | 9 | 51 | IOL2006 |
5 | 2007年 | ロシア・サンクトペテルブルク | 7月31日 – 8月4日 | 9 | 61 | IOL2007 |
6 | 2008年 | ブルガリア・サニービーチ | 8月4日 – 8月9日 | 11 | 63 | IOL2008 |
7 | 2009年 | ポーランド・ヴロツワフ | 7月26日 – 7月31日 | 17 | 86 | IOL2009 |
8 | 2010年 | スウェーデン・ストックホルム | 7月19日 – 7月24日 | 18 | 99 | IOL2010 |
9 | 2011年 | アメリカ・ピッツバーグ | 7月24日 – 7月30日 | 19 | 102 | IOL2011 |
10 | 2012年 | スロヴァキア・リュブリャナ | 7月29日 – 8月4日 | 26 | 131 | IOL2012 |
11 | 2013年 | イギリス・マンチェスター | 7月22日 – 7月26日 | 26 | 138 | IOL2013 |
12 | 2014年 | 中華人民共和国・北京 | 7月21日 – 25日 | 28 | 152 | IOL2014 |
13 | 2015年 | ブルガリア・ブラゴエヴグラト | 7月20日 – 24日 | 29 | 166 | IOL2015 |
14 | 2016年 | インド・マイソール | 7月25日 – 29日 | 30 | 167 | IOL2016 |
15 | 2017年 | アイルランド・ダブリン | 7月31日 – 8月4日 | 27 | 180 | IOL2017 |
16 | 2018年 | チェコ・プラハ | 7月26日 – 30日 | 29 | 192 | IOL2018 |
17 | 2019年 | 大韓民国・龍仁 | 7月26日 – 30日 | 37 | 209 | IOL2019 |
18 | 2021年 | ラトビア・ヴェンツピルス | 7月19日 – 23日 | 34 | 216 | IOL2021 |
19 | 2022年 | マン島・キャッスルタウン | 7月25日 – 29日 | 32 | 185 | IOL2022 |
20 | 2023年 | ブルガリア・バンスコ | 7月24日 – 28日 | 38 | 204 | IOL2023 |
21 | 2024年 | ブラジル・ブラジリア | 7月23日 – 31日 | 38 | 206 | IOL2024 |
22 | 2025年 | 中華民国・台北市 | 未定 | IOL2025 |
個人戦メダリスト
[編集]年度 | 開催地 | 金賞 | 銀賞 | 銅賞 |
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2003 | ブルガリア | Alexandra Petrova | Mirjam Plooij | Polina Oskolskaya |
2004 | ロシア | Ivan Dobrev | Maria Mamykina | Alexandra Zabelina |
2005 | オランダ | Ivan Dobrev |
Eleonora Glazova |
Nikita Medyankin |
2006 | エストニア | Maria Kholodilova | Yordan Mehandzhiyski | Yuliya Taran |
2007 | ロシア | Adam Hesterberg | Kira Kiranova | Anna Shlomina |
2008 | ブルガリア | Alexander Daskalov | Anand Natarajan | Guy Tabachnick |
2009 | ポーランド | Diana Sofronieva | Vitaly Pavlenko | Deyana Kamburova |
2010 | スウェーデン | Vadim Tukh | Martin Camacho | Mirjam Parve |
2011 | アメリカ | Morris Alper | Wesley Jones | Min Kyu Kim |
2012 | スロベニア | Anton Sokolov | Darryl Wu | Pedro Neves Lopes |
2013 | イギリス | Alexander Wade | Omri Faraggi | Nilai Sarda |
2014 | 中国 | Milo Andrea Mazurkiewicz | Ada Melentieva | Anindya Sharma |
2015 | ブルガリア | James Wedgwood | Kevin M Li | Bálint Ugrin |
2016 | インド
マイソール |
Jaeyeong Yang | Margarita Misirpashayeva | Tsuyoshi Kobayashi |
2017 | アイルランド | Samuel Ahmed | Andrew Tockman | Ekaterina Voloshinova |
2018 | チェコ | Przemysław Podleśny | Jakub Petr | David Avellan-Hultman |
2019 | 大韓民国 | Ken Jiang | Diego Król | Tatiana Romanova |
2021 | ラトビア | Roman Shabanov | Aleksandra Limonova | Lili Probojcsevity |
2022 | マン島 | Artem Borisov | Tam Lok Hang
Artem Boyko |
Anita Dalma Páhán
Viktoriia Zubkova Elvira Ageeva |
団体戦メダル
[編集]回数 | 年度 | 開催地 | 金賞 | 銀賞 | 銅賞 | 個人競技平均点ランキング1位 |
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1 | 2003 | ブルガリア | オランダ | ロシア・サンクトペテルブルク | ロシア・モスクワ | オランダ |
2 | 2004 | ロシア | ロシア・サンクトペテルブルク | ラトビア | ブルガリア1 | ブルガリア1 |
3 | 2005 | オランダ | オランダ | ロシア・モスクワ | ロシア・サンクトペテルブルク | ブルガリア1 |
4 | 2006 | エストニア | ブルガリア2 | オランダ | ポーランド1 | ブルガリア1 |
5 | 2007 | ロシア | アメリカ2 モスクワ |
ブルガリア1 ブルガリア2 |
受賞なし | エストニア |
6 | 2008 | ブルガリア | アメリカ2 ブルガリア・東 |
オランダ アメリカ1 |
受賞なし | アメリカ |
7 | 2009 | ポーランド | アメリカ・赤 | 韓国1 | ロシア・モスクワ | ロシア・モスクワ |
8 | 2010 | スウェーデン | ラトビア | ロシア・モスクワ | ポーランド2 | アメリカ・青 |
9 | 2011 | アメリカ | アメリカ・赤 | ロシア・サンクトペテルブルク | ロシア・モスクワ | アメリカ・赤 |
10 | 2012 | スロベニア | アメリカ・青 | オランダ | ポーランド2 | ロシア・サンクトペテルブルク |
11 | 2013 | イギリス | アメリカ・赤 | ロシア・サンクトペテルブルク | ブルガリア1 ルーマニア |
アメリカ・赤 |
12 | 2014 | 中国 | アメリカ・赤 | ロシア・サンクトペテルブルク | ロシア・モスクワ | アメリカ・赤 |
13 | 2015 | ブルガリア | イギリス・西 | アメリカ・赤 | ポーランド・白 オランダ |
アメリカ・赤 |
14 | 2016 | インド
マイソール |
スウェーデン | オーストラリア1 | イギリス | アメリカ・赤 |
15 | 2017 | アイルランド | 台湾・TaiTWO | ポーランドĄ | スロベニア | イギリス・K |
16 | 2018 | チェコ | アメリカ・青 | アメリカ・赤 ブルガリア1 |
Pões イギリス・U チェコ・Tým křivopřísežníků |
アメリカ・青 |
17 | 2019 | 大韓民国 | スロベニア | 中国・KUN ロシア・Strelka |
ポーランド・Bóbr ロシア・Belka マレーシアA |
アメリカ・赤 |
18 | 2021 | ラトビア | ウクライナ・i | アメリカ・赤 | インド・Saffron カナダ・Moose |
香港・EAT |
19 | 2022 | マン島 | 韓国・Mal | 台湾・Blue Magpie 日本・侍 |
日本・忍者 アメリカ・赤 イギリス・K |
アメリカ・赤 |
メダル・トロフィー総獲得数
[編集]2022年現在、金メダルを1つ以上獲得している国を以下に挙げる[33]。
順位 | 国名 | 出場回数 | 金 | 銀 | 銅 | メダル総計 | 努力賞 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | アメリカ合衆国 | 15 | 21 | 38 | 24 | 83 | 22 |
2 | ブルガリア | 19 | 21 | 23 | 35 | 79 | 23 |
3 | ロシア | 18 | 17 | 31 | 40 | 88 | 21 |
4 | イギリス | 13 | 14 | 12 | 14 | 40 | 17 |
5 | ポーランド | 18 | 10 | 25 | 20 | 55 | 33 |
6 | 日本 | 10 | 5 | 3 | 7 | 15 | 15 |
7 | インド | 13 | 4 | 7 | 16 | 27 | 12 |
8 | ルーマニア | 11 | 4 | 4 | 9 | 17 | 4 |
9 | 韓国 | 14 | 3 | 3 | 17 | 23 | 22 |
10 | オランダ | 19 | 3 | 3 | 4 | 10 | 20 |
11 | 台湾 | 9 | 2 | 9 | 6 | 17 | 13 |
12 | チェコ | 12 | 2 | 8 | 4 | 14 | 11 |
13 | ウクライナ | 8 | 2 | 5 | 7 | 14 | 11 |
14 | カナダ[34] | 11 | 2 | 4 | 9 | 15 | 12 |
15 | 中華人民共和国 | 9 | 1 | 9 | 12 | 22 | 18 |
16 | エストニア | 19 | 1 | 7 | 17 | 25 | 14 |
17 | ブラジル | 9 | 1 | 5 | 4 | 10 | 8 |
18 | ラトビア | 19 | 1 | 4 | 12 | 17 | 13 |
19 | 香港 | 3 | 1 | 3 | 2 | 6 | 0 |
20 | オーストラリア | 13 | 1 | 2 | 5 | 8 | 9 |
メディアでの掲載
[編集]関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ “Frequently Asked Questions” (英語). International Linguistics Olympiad. 2021年11月24日閲覧。
- ^ “言語学オリンピックとは?”. iolingjapan.org. 2022年10月18日閲覧。
- ^ “「謎の言葉」に挑む 国際言語学オリンピック出場へ 宇都宮女子高2年・小川さん|下野新聞 SOON”. 下野新聞 SOON. 2022年10月18日閲覧。
- ^ “日本人の外国語下手を打ち破る 国際言語学五輪のススメ:朝日新聞GLOBE+”. 朝日新聞GLOBE+. 2022年10月18日閲覧。
- ^ a b c “IOL Regulations 2019”. International Linguistics Olympiad. 2021年11月24日閲覧。
- ^ “iol-2019-team-prob.ja.pdf”. International Linguistics Olympiad. 2022年10月19日閲覧。
- ^ “言語学オリンピックとは?”. iolingjapan.org. 2021年12月10日閲覧。
- ^ “International history”. United Kingdom Linguistics Olympiad. 2013年8月9日閲覧。
- ^ a b c d “First International Olympiad in Linguistics (2003)”. Department of Theoretical and Applied Linguistics, Moskow State University. September 8, 2012閲覧。
- ^ “Традиционная олимпиада по лингвистике и математике. История”. web.archive.org (2015年4月25日). 2019年8月3日閲覧。
- ^ “History of Linguistic Challenges”. North American Computational Linguistics Olympiad. September 8, 2012閲覧。
- ^ “Second International Linguistic Olympiad (2004)”. Department of Theoretical and Applied Linguistics, Moskow State University. September 8, 2012閲覧。
- ^ “Fourth International Linguistics Olympiad for Secondary School Students”. September 8, 2012閲覧。
- ^ a b “The Fifth International Linguistics Olympiad”. September 8, 2012閲覧。
- ^ “6th International Linguistics Olympiad”. September 8, 2012閲覧。
- ^ “7th International Olympiad in Linguistics”. September 8, 2012閲覧。
- ^ “IOL10”. September 8, 2012閲覧。
- ^ “IOL 2011: Venue”. September 8, 2012閲覧。
- ^ “The 10th International Linguistics Olympiad”. August 7, 2013閲覧。
- ^ “The International Linguistics Olympiad 2013”. August 7, 2013閲覧。
- ^ “The International Linguistics Olympiad 2014”. July 27, 2014閲覧。
- ^ “The International Linguistics Olympiad 2015”. August 17, 2015閲覧。
- ^ “International Olympiad for Linguists 2016”. iol14.plo-in.org. 2016年1月6日閲覧。
- ^ “International Linguistics Olympiad”. www.ioling.org. 2016年9月11日閲覧。
- ^ “International Linguistics Olympiad 2018”. iol.ff.cuni.cz. August 5, 2018閲覧。
- ^ “IOL 2018 Participants”. IOL. IOL. 8 August 2018閲覧。
- ^ “IOL Yongin 2019”. IOL 2019. IOL 2019. 8 August 2018閲覧。
- ^ “Yongin 2019” (英語). International Linguistics Olympiad. 2020年8月11日閲覧。
- ^ “Ventspils 2021” (英語). International Linguistics Olympiad. 2020年8月11日閲覧。
- ^ “Ventspils 2021” (英語). International Linguistics Olympiad. 2021年11月24日閲覧。
- ^ “IOL 2022” (英語). IOL 2022. 2023年5月5日閲覧。
- ^ “Castletown 2022” (英語). International Linguistics Olympiad. 2023年5月6日閲覧。
- ^ “Results by Year” (英語). International Linguistics Olympiad. 2021年11月24日閲覧。
- ^ 2016年までのCanadaおよび2017年以降のCanada Anglophoneの総計。
- ^ “It may be semantics, but linguistics can be a team event”. The Age. 2012年8月7日閲覧。
外部リンク
[編集]- IOL日本非公式サイト - OBなどによる非公式サイト