坂出3人殺害事件
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坂出3人殺害事件 | |
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場所 | 日本: 香川県坂出市林田町[1] |
標的 | 女性1人とその孫2人 |
日付 | 2007年(平成19年)11月16日 |
攻撃側人数 | 1人 |
死亡者 | 3人 |
犯人 | 女性の義弟(妹の夫)である男K |
動機 | 金銭トラブル |
謝罪 | 後述のメディア問題でTBSの幹部職員とみのもんたが謝罪(ただしみのもんたの出演番組『朝ズバッ!』内での謝罪は行われなかった)。 |
刑事訴訟 | 死刑(執行済み) |
影響 | 一部のマスメディアが被害者姉妹の父親を犯人視する報道を行ったことが問題視された。 |
管轄 | 香川県警察(捜査一課・坂出警察署など)[2][1] |
坂出3人殺害事件(さかいでさんにんさつがいじけん)は、2007年(平成19年)11月16日未明に日本の香川県坂出市林田町で発生した殺人・死体遺棄事件。女性とその孫である幼児姉妹2人の計3人が殺害され、死体が遺棄された。
事件の概要
[編集]幼児姉妹は11月15日の18時頃に隣の祖母の家に泊まりに行き、翌日の16日の朝に母親が迎えに行ったところ3人ともいなくなっていた。現場の住宅からは後述のように多量の血痕が発見されたため、香川県警察捜査一課は祖母と姉妹の計3人が事件に巻き込まれた可能性が高いと判断、同月18日には所轄署である坂出警察署に捜査本部を設置[2]、11月16日未明から早朝までに何らかのトラブルがあったと見方を強め、捜査を行った[3]。
父親によれば、寝室や玄関、浴室に血痕があり[3]、さらに寝室のカーペットはL字形に切り取られ、血はカーペットの下の畳まで染みこんでいた[4]。
捜査本部の任意取調べに対し、祖母の義弟(祖母の妹の夫。妹は事件当時既に故人)である義理の大叔父Kが、27日までに「3人を殺害し、山中に遺体を捨てた」と犯行を認める供述をし[5]、11月27日夜に死体遺棄容疑で逮捕された[6]。11月28日には、当初の供述通りに山中に向かったところ、Kが「本当は港に捨てた」と一変し、捜査員らがその港に向かったところ、祖母と幼児姉妹の遺体が発見された[7]。
11月30日、Kの供述通りに坂出港海底で携帯電話を発見[8]、12月6日、Kの供述通りに坂出港海底で、自転車を発見[9]。12月18日には殺人容疑で再逮捕し[10]、同日高松地方検察庁は死体遺棄容疑については処分保留とした[11]。祖母は借金の返済に追われており、その関係上Kの妻(自分の妹)から金を借りており、その怨恨と見られる。最終的に単独犯と断定される。
裁判
[編集]2008年(平成20年)7月17日、被告人Kの初公判が高松地方裁判所(裁判長:菊池則明)で開かれた。ここでKの精神鑑定実施が決定し、以後の公判は一時中断。Kは起訴事実を認めていることから、主な争点はKの刑事責任能力の有無に絞られた[12]。再開は翌2009年(平成21年)3月9日で、ここからは4日間の集中審理が行われ3月12日に結審。3月16日の判決公判において裁判所はKの完全責任能力を認め、「身勝手な動機に酌量の余地はない」として検察側の求刑通り死刑判決を言い渡した[13][14]。弁護側はこの量刑を不当として高松高等裁判所へ即日控訴した[15]。
この判決は高松地裁史上記録が残る1978年以降初の死刑判決となったほか、判決の2ヶ月後に始まる裁判員制度を見据えて第2回から結審までの公判を連日開廷方式による集中審理で行い、なおかつ結審からわずか4日後に死刑判決が出るという異例ずくめの裁判であった[15]。
高松高等裁判所における控訴審(柴田秀樹裁判長)は同年9月10日に初公判が開かれ、弁護人がKは犯行時妄想性障害だったとして精神鑑定の実施を求めたが、柴田は申請を却下し、公判は同日のみで結審した[16]。10月14日の判決公判で高松高裁はKの控訴を棄却する判決を言い渡した[17]。弁護側はこの量刑を不当として最高裁判所へ即日上告した。
上告審で弁護人は犯行には周到な計画性がなく、死刑は重すぎると訴えたが[18]、最高裁第一小法廷(白木勇裁判長)は2012年(平成24年)7月12日にKの上告を棄却する判決を言い渡したため、Kの死刑が確定した[19]。
かくしてKは死刑確定者(死刑囚)となり、2014年(平成26年)6月26日に収監先の大阪拘置所で死刑を執行された(68歳没)[20][21]。死刑確定から1年11か月での死刑執行は、当時10年間の死刑確定から執行までの平均期間である5年6か月より速かった[20]。当時の法務大臣は谷垣禎一で、谷垣が就任した2012年12月から2013年12月にかけては4回の死刑執行が行われており、過去4回の死刑執行の間隔は2 - 5か月だったが、この死刑執行は前回の2013年12月から約6か月の間が空いていた[22]。その要因としては、2014年3月に静岡地裁が、「袴田事件」で死刑が確定していた袴田巌(2024年10月に再審無罪が確定)に対し再審開始決定を出し[23]、それがきっかけで死刑制度や冤罪に対する世論の関心が高まっていたためではないかと指摘されている[22]。
報道と遺族の反応
[編集]当初は「行方不明事件」と報じられ、家族は積極的にテレビの取材に答え「とにかく早く帰ってきてほしい」と訴えた。しかし、安否がなかなか分からず家族もいらだち始め、虚偽の自宅間取り図や、行方不明の子供2人の顔写真に対しフリップの名前が逆に付されるなどの誤った報道内容にも不満を述べた。やがて、父親の名前がある著名人と似ていたことから「画伯」といった心無いあだ名を付けられ[24]たり、強面の風貌である上、疲れからマスコミに憤る被害女児姉妹の父親の様子などを中心に扱うなど、一部のテレビ・週刊誌報道などで父親に対し「犯人ではないか」とする報道姿勢などが目立った。このように過熱するメディアの取材攻勢を受けて、香川県警記者クラブは総会を開き「節度ある取材を確認」する事態となった[25]。前年の秋田児童連続殺害事件同様メディアスクラム状態になってしまった上、週刊誌ではこの事件との関連付けすら行われていた[26]。このような報道姿勢は、真犯人であるKが被疑者として逮捕されるまで続いた。
特にみのもんたは『みのもんたの朝ズバッ!』(TBS系)の11月19日の放送で(行方不明になってから、通報に至るまで1時間かかったことについて)「普通すぐに電話しない?(略)警察署に行って届け出てる。普通だったらそのまま電話しないかねぇ?」「不思議だねぇ」と被害者の家族を嫌疑し、あからさまに犯人扱いするかのような発言を執拗に繰り返した[27]。被害女児姉妹の父親は取材に対し「みのもんたさんに聞きたかった。オレが殺したんか、と」と怒りを表明した[28]。当初は問題発言をしたみのは沈黙していたが[29]、2008年1月になってみのがTBSの幹部職員と共に被害者家族と対面し謝罪したと報じられている[30]。
みのの発言を受け、女優の星野奈津子が犯人は被害者家族(父親)であるとの憶測や父親が犯人であってほしいとの会話を家族で交わしていると自身のブログに書き込み、この星野のブログの記事に批判が寄せられ、11月20日に星野は所属事務所から1年間の謹慎処分を受け、問題のブログ記事も削除された[31]。
出典
[編集]- 以下の出典において、記事名に死刑囚の実名が使われている場合、その箇所をイニシャル「K」で表記する。
- ^ a b 「近くの土手に血液反応-坂出3人不明」『四国新聞』四国新聞社、2007年11月19日。オリジナルの2008年4月5日時点におけるアーカイブ。
- ^ a b 『朝日新聞』2007年11月19日大阪朝刊第1社会面35頁「室内、複数の血液型 車を使った疑いも 香川3人不明【大阪】」(朝日新聞大阪本社)
- ^ a b “未明から早朝にトラブルか/香川・坂出の3人不明”. 四国新聞. (2007年11月17日). オリジナルの2008年4月5日時点におけるアーカイブ。 2011年1月14日閲覧。
- ^ “祖母の靴なくなる/香川・坂出の3人不明”. 四国新聞. (2007年11月17日). オリジナルの2008年4月5日時点におけるアーカイブ。 2011年1月14日閲覧。
- ^ “「3人殺して捨てた」と供述-坂出3人不明事件”. 四国新聞. (2007年11月27日). オリジナルの2008年4月5日時点におけるアーカイブ。 2011年1月14日閲覧。
- ^ “死体遺棄で義弟を逮捕/坂出市の3人不明事件”. 四国新聞. (2007年11月27日). オリジナルの2008年4月5日時点におけるアーカイブ。 2011年1月14日閲覧。
- ^ “遺棄現場、山から海へ-変わり果てた姿で”. 四国新聞. (2007年11月29日). オリジナルの2008年4月5日時点におけるアーカイブ。 2011年1月14日閲覧。
- ^ “祖母の携帯、海中で発見-坂出3人遺棄事件”. 四国新聞. (2007年12月1日). オリジナルの2008年4月5日時点におけるアーカイブ。 2011年1月14日閲覧。
- ^ “海中で祖母の自転車発見/香川・坂出の3人遺棄”. 四国新聞. (2007年12月5日). オリジナルの2008年4月5日時点におけるアーカイブ。 2011年1月14日閲覧。
- ^ “K容疑者を殺人容疑で再逮捕-坂出3人殺害”. 四国新聞. (2007年12月18日). オリジナルの2007年12月22日時点におけるアーカイブ。 2011年1月14日閲覧。
- ^ “祖母と孫殺害で再逮捕/「遺産取られる」と義弟”. 四国新聞. (2007年12月18日). オリジナルの2007年12月22日時点におけるアーカイブ。 2011年1月14日閲覧。
- ^ “被告の責任能力争点/坂出事件公判再開”. 四国新聞. (2009年3月9日) 2011年1月14日閲覧。[リンク切れ]
- ^ 『読売新聞』2009年3月17日大阪朝刊一面1頁「坂出3人殺害 被告に死刑判決 責任能力認める/高松地裁」(読売新聞大阪本社)
- ^ “坂出3人殺害で高松地裁判決”. 四国新聞. (2009年3月17日) 2011年1月14日閲覧。[リンク切れ]
- ^ a b “「量刑不当」と弁護側/坂出3人殺害判決”. 四国新聞. (2009年3月17日). オリジナルの2009年3月17日時点におけるアーカイブ。 2011年1月14日閲覧。
- ^ 『読売新聞』2009年9月10日大阪夕刊第二社会面10頁「坂出3人殺害、控訴審 精神鑑定却下し結審」(読売新聞大阪本社)
- ^ “K被告、二審も死刑/坂出3人殺害事件”. 四国新聞. (2009年10月15日). オリジナルの2009-1へ1-17時点におけるアーカイブ。 2011年1月14日閲覧。
- ^ 『読売新聞』2012年6月12日大阪朝刊第三社会面37頁「坂出3人殺害 上告審が結審」(読売新聞大阪本社)
- ^ 『読売新聞』2012年7月13日大阪朝刊社会面39頁「坂出3人殺害 死刑確定へ 上告棄却」(読売新聞大阪本社)
- ^ a b 『読売新聞』2014年6月26日大阪夕刊第二社会面14頁「坂出3人殺害 死刑執行」現安倍政権で9人目」(読売新聞大阪本社)
- ^ 1人の死刑を執行 平成19年の香川3人殺害のK死刑囚 産経新聞 2014年6月26日
- ^ a b 『朝日新聞』2014年6月26日東京夕刊第4版22頁「半年ぶり死刑執行 「袴田事件」影響か」(朝日新聞東京本社) - 縮刷版1404頁。
- ^ 『朝日新聞』2014年6月26日東京夕刊第4版一面1頁「坂出3人殺害 死刑執行」(朝日新聞東京本社 北沢拓也) - 縮刷版1383頁。
- ^ 「「みのさん、オレが殺したんか」〇△▯さん「犯人扱い」に抗議」『J-CASTニュース』2007-11-29※一部題名は伏せ字に置き換える。類似はあくまでも風貌である。
- ^ “県警記者クラブが「節度ある取材」確認-坂出不明”. 四国新聞. (2007年11月27日). オリジナルの2008年4月6日時点におけるアーカイブ。 2011年1月14日閲覧。
- ^ 週刊ポスト 2007年12月7日号など
- ^ “香川3人行方不明事件で、みのもんたがズバッと問題発言!?”. ライブドアニュース. (2007年11月24日)
- ^ 週刊朝日 2007年12月7日号
- ^ “みのもんた謝罪なし「朝ズバッ」でアノ人に疑惑の目”. ZAKZAK. (2007年11月28日)
- ^ “みの、坂出事件被害姉妹の父に謝罪”. 日刊スポーツ. (2008年1月24日)
- ^ “坂出市の行方不明事件 「犯人名指し」ネット書き込み横行”. J-CASTニュース. (2007年11月22日)