塩化白金(II)
塩化白金(II) | |
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識別情報 | |
CAS登録番号 | 10025-65-7 |
ChemSpider | 2668 |
特性 | |
化学式 | PtCl2 |
モル質量 | 265.99 g/mol |
密度 | 6.05 g/cm3, 固体 |
融点 |
581 ℃ |
沸点 |
分解 |
構造 | |
結晶構造 | 六方晶系 |
熱化学 | |
標準生成熱 ΔfH |
−123.4 kJ mol−1[1] |
危険性 | |
EU分類 | 有害 (Xn) |
EU Index | Not listed |
Rフレーズ | R42/43 |
Sフレーズ | S22, S24, S37, S45 |
引火点 | 不燃性 |
関連する物質 | |
関連物質 | テトラクロリド白金(II)酸 塩化白金(IV) ヘキサクロリド白金(IV)酸 ヘキサクロリド白金(IV)酸カリウム |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
塩化白金(II)(えんかはっきん に、platinum(II) chloride)は、化学式が PtCl2 で表される2価の白金の塩化物である。他の白金化合物の合成の出発物質として非常に重要な物質である。
合成
[編集]β-PtCl2 は、空気中でヘキサクロリド白金(IV)酸を 350 ℃ まで加熱することによって得られる。ヘキサクロリド白金(IV)酸水溶液はヒドラジンで還元できるが、他の方法より手間がかかる[2]。
ヘキサクロリド白金(IV)酸は白金を王水に溶かすことによって簡単に得られる。白金を高温の塩素と反応させる方法では、塩化白金(II)ではなく塩化白金(IV)が生じ、過度の塩素化を必要とするため困難である。Berzeliusや、後にWöhlerは塩化白金(IV)を 450 ℃ まで加熱することで塩化白金(II)と塩素に分解することを示している[3]。
これらは発熱反応であるため、反応が始まるとより促進される。さらに加熱すると、塩化白金(II)は白金と塩素に分解する。
性質
[編集]異なる結晶系が2種類あるが、主な特性はほぼ同じである。黒色あるいは暗緑色の無臭の固体で、水に不溶。塩酸には溶解してテトラクロリド白金(II)酸を生成するが、一部は白金およびヘキサクロリド白金(IV)酸に不均化する。
加熱により白金と塩素に分解する。
構造
[編集]塩化白金(II)と塩化パラジウム(II)の構造は類似していて、これらの構造はα六量体、またはβポリマー中に存在する。β相は 500 ℃ でα相に変化する。Pt-Pt 間距離は 34 nm 前後である。各白金中心には4個の塩素原子が配位している。各塩素中心は2個の白金原子に配位している[4]。
用途
[編集]塩化白金(II)の反応は、ほとんどが配位子 (L) との錯体生成反応であり、これらによって Pt-Cl-Pt 結合の間を通して解重合が行われる。
しかし、これに当てはまらない場合もある。アンモニアを作用させた場合ではまず PtCl2(NH3)2 が生じるが、最終的にはテトラアンミン白金(II)テトラクロリド白金(II) ([PtCl4][Pt(NH3)4]) が得られる。
以下は白金の錯体の一覧である[5]。
- K2PtCl4 広く使われている白金の化合物。桃色。
- cis-PtCl2(NH3)2 シスプラチンとしてよく知られている医薬品。無色。
- cis-PtCl2(PPh3) PtX(Cl)(Ph3P)2 (X = H, CH3 etc.) タイプの白金錯体の中で広く使われている。容易に結晶化する。無色。
- trans-PtCl2(PPh3)2 シス体の準安定類縁体。無色。
- PtCl2(cod) 置換活性な配位子を含む。有機溶媒に易容。無色。
これらの錯体の中には、有機合成の均一系触媒作用や、制がん作用を持つものもある。
脚注
[編集]- ^ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982).
- ^ Kerr, G. T.; Schweizer, A. E. (1980). “β-Platinum(II) Chloride”. Inorg. Synth. 20: 48–49. doi:10.1002/9780470132517.ch14.
- ^ Wöhler, L.; Streicher, S. (1913). “Über das Beständigkeitsgebiet von vier wasserfreien Platinchloriden, über die Flüchtigkeit des Metalls im Chlorgas und die Darstellung sauerstoff-freien Chlors”. Chem. Ber. 46: 1591-1597. doi:10.1002/cber.19130460252.
- ^ Holleman, A. F.; Wiberg, E. "Inorganic Chemistry" Academic Press: San Diego, 2001. ISBN 0-12-352651-5.
- ^ Cotton, S. A. "Chemistry of Precious Metals," Chapman and Hall (London): 1997. ISBN 0-7514-0413-6