岸田おろし
岸田おろし(きしだおろし)は、2024年(令和6年)に自由民主党内で起こった、第100代・101代内閣総理大臣の岸田文雄への退陣要求である。
背景
[編集]岸田は2021年10月4日に内閣総理大臣に就任して以降、就任直後の衆議院議員総選挙で勝利し、その後も岸田内閣の内閣支持率は比較的高い水準を保っていた。
旧統一教会問題
[編集]しかし、2022年7月8日に発生した安倍晋三銃撃事件後に自民党と旧統一教会の繋がりが明らかになり、同年8月以降内閣支持率は急落した[1]。
同年秋の臨時国会では、スキャンダルなどによる閣僚の更迭が相次いだ[2]。岸田の更迭判断が後手に回ったことで、与野党から批判の声が出た[3]。
その後、2023年3月から5月のG7広島サミットにかけて内閣支持率が再び持ち直すものの、6月以降はマイナンバーカードを巡るトラブルや少子化対策への厳しい評価により再び内閣支持率は下落傾向となった[4]。
政治資金パーティの裏金問題
[編集]同年11月以降、政治資金パーティー収入の裏金問題が表面化し、12月には問題が浮上した安倍派に所属している閣僚など政務三役を交代させた。しかし、内閣支持率はさらに低下し、2012年の政権復帰以降最低水準となった[5]。
この問題を受けて2024年1月に岸田は自らが会長を務めた宏池会を解散する方針を表明した。4月には安倍派と二階派の議員39人の党内処分を行ったものの[6]、自民党内では岸田を公然と批判する異例の発言も出るなど、処分内容に対する不満の声が上がった[7]。
推移
[編集]2024年6月になると次期衆院選への危機感などから自民党内で岸田の退陣を求める声が上がり始めた[8]。
6月23日、菅義偉はインターネット番組で政治不信は責任を取っていない岸田に一因があるとの考えを示し、岸田に対し退陣を要求した[9]。
7月7日、笹川博義は組織のトップにけじめをつけてもらわなければ困る」と述べ、岸田に事実上の退陣を要求した[10]。
7月14日、古川直季は「普通の企業ならしっかり責任を取るのが普通」と述べ、岸田の交代を求めた。その上で後任には小泉進次郎がふさわしいとの認識を示した[11]。
党の地方組織からも岸田の退陣を求める声が相次いだ。これに対し、岸田は「厳粛にしっかりと受け止めなければならない。これからも地方の声、現場の声を丁寧に聞いていく」と述べた[12]。
総裁選挙不出馬・退陣
[編集]8月14日、岸田は首相官邸で記者会見を開き、9月の総裁選挙に出馬しないことを表明した[13]。
10月1日、第2次岸田第2次改造内閣が総辞職し、岸田は首相を退任した[14]。
脚注
[編集]- ^ “岸田内閣、支持率急落 不支持46.5%が初めて逆転 国葬反対6割超え 自民の旧統一教会対応「不十分」が8割”. 東京新聞. (2022年9月18日) 2024年11月4日閲覧。
- ^ “岸田首相、秋葉氏更迭で年内に火消し図るも…続く閣僚辞任ドミノ、野党追及免れず”. 日本経済新聞. (2022年12月26日) 2024年11月17日閲覧。
- ^ “歴代政権が恐れた辞任ドミノ 首相「今はちょっと孤独でつらい時も」”. 朝日新聞. (2022年11月22日) 2024年11月17日閲覧。
- ^ “内閣支持率が37%に下落 マイナ対応「評価せず」68% 朝日調査”. 朝日新聞. (2023年7月16日) 2024年11月4日閲覧。
- ^ “岸田内閣支持率「危険水域に」 裏金問題が直撃、4閣僚を交代も焼け石に水”. 東京新聞. (2023年12月19日) 2024年11月4日閲覧。
- ^ “【処分一覧】自民党 39人処分決定 塩谷氏 世耕氏 離党勧告”. NHK. (2024年4月4日) 2024年11月4日閲覧。
- ^ “【解説】基準は?“裏金”処分に自民党内からも「不満」”. 日テレNEWS. (2024年4月5日) 2024年11月4日閲覧。
- ^ “岸田首相への退陣要求噴出 菅氏言及、影響拡大も―自民”. 時事通信. (2024年6月25日) 2024年11月4日閲覧。
- ^ “菅義偉前首相が事実上の退陣要求 「このままでは政権交代」 政治不信は岸田首相に一因”. 産経新聞. (2024年6月23日) 2024年11月4日閲覧。
- ^ “自民・笹川氏が岸田首相に退陣要求 「トップがけじめを」”. 上毛新聞. (2024年7月8日) 2024年11月17日閲覧。
- ^ “自民・古川直季氏、首相交代を要求 後任に小泉氏挙げる”. 日本経済新聞. (2024年7月14日) 2024年11月17日閲覧。
- ^ “首相、地方からの退陣要求「厳粛に受け止め」 総裁選へ地方行脚開始”. 朝日新聞. (2024年6月29日) 2024年11月17日閲覧。
- ^ “【詳報】岸田首相会見 自民総裁選に不出馬を表明 首相退任へ”. NHK. (2024年8月14日) 2024年11月17日閲覧。
- ^ “岸田内閣が総辞職 在任1094日、防衛強化や賃上げに注力”. 日本経済新聞. (2024年10月1日) 2024年11月17日閲覧。