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川崎市都市モノレール計画

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

川崎市都市モノレール計画(かわさきしとしモノレールけいかく)は、川崎市が1970年代初めから1980年代初めに構想した、市北西部、現在の多摩区高津区麻生区宮前区にあたる地域の都市モノレール路線建設計画である。 仮称はタウンライナー[1]多摩連環線[2]川崎市高津区多摩区循環モノレール[3]など。

概要

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川崎市が、市北西部の鉄道空白地域を解消するために、川崎縦貫高速鉄道とセットで計画したモノレール路線である。 区間は溝の口駅 - 宮前平駅 - 登戸駅 - 新百合ヶ丘駅 - 溝の口駅を8の字に循環する約38km。 しかし導入空間(道路幅)と、経営主体の設立という2つの課題を解決することができず、建設に至らなかった。

路線データ

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  • 路線距離:38.2 km
  • 方式:跨座式(日本跨座式)
  • 電化方式:直流1,500 ボルト(V)、もしくは直流750ボルト(V)

経緯

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初期の構想

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出典:[1]

1973年、川崎市は「川崎市における交通輸送機関の最適ネットワーク形成のための調査報告書」を作成した。 この中で、新百合ヶ丘 - 川崎駅 - 臨海部を循環する川崎縦貫高速鉄道とともに、縦貫高速鉄道でカバーしきれない鉄道空白地域を埋めるために、高津区・多摩区(現在の麻生区・宮前区を含む)に2つの環状モノレール路線が計画されていた。 1976年に作成された「昭和50年度川崎市都市モノレール計画関連基礎調査報告書」では、具体的なルート案が検討され、溝の口 - 宮前平 - 溝の口を16駅で結ぶ環状線と、登戸 - 新百合ヶ丘 - 登戸を20駅で結ぶ環状線の「ダブルO - 1型」案など、複数のルート案が示された。

都市モノレール等調査

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1976年度、1977年度に川崎市が都市モノレール等調査を行った[2]。 これは都市モノレールの整備の促進に関する法律に基づくモノレール、いわゆる都市モノレールを検討する自治体が、建設省の補助を受けて基礎調査を行うものであった。 1976年度の調査で、ルートは溝の口 - 宮前平 - 登戸 - 新百合ヶ丘 - 溝の口を36駅で結ぶ、約38kmの「8の字」案に絞り込まれた。 また施設計画(駅の透視図)・運転計画も作成された。 1977年度の調査では、建設費・経営収支の算出が行われた[1]。 調査結果は「広幅員の道路がないというところが泣き所[2]」という厳しいものであったが、川崎市はあきらめずに次年度以降も単独調査(建設省の補助を受けない調査)を継続することにした。

単独調査とその後

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1978年には、沿線の多摩区高津区で2、3年間でアセスメントを実施すると報じられた[4]1980年度、1981年度には川崎市が都市モノレール計画関連基礎調査を実施した[5]。 1980年度の調査では車両デザイン案、駅の俯瞰図、「タウンライナー」という名称案が示された[1]。 1981年度の調査では、新百合ヶ丘 - 溝の口の区間を先行して部分開業する計画に変更された[1]。 1981年、川崎市が設置した交通に関する研究会が、川崎縦貫高速鉄道とともに本モノレール路線の必要性を訴えている[6]。 しかし1982年度以降は調査は行われなかった。 都市モノレール計画の中止により、川崎縦貫高速鉄道は鉄道空白地域を少しでも埋めるようにルート変更された。 その後、川崎縦貫高速鉄道の計画も中止となり、川崎市北西部には大きな鉄道空白地域が残ることになった。

駅一覧

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1976年度の調査による[1]。 溝の口を始点として、宮前平、登戸、新百合ヶ丘まで進んだ後、自線と交差して溝の口に戻ることになっていた。 車両基地を麻生区南部、電留基地を宮前区南部に設置する計画であった[5]

駅番号 備考 駅間キロ 営業キロ 接続路線 所在地
1 溝の口駅付近 - 0.0 東急電鉄:溝の口駅東日本旅客鉄道(JR東日本):武蔵溝ノ口駅 高津区
2 末永バス停付近 1.1 1.1 高津区
3 橘出張所前バス停付近 1.0 2.1 高津区
4 野川バス停付近 1.1 3.2 川崎縦貫高速鉄道 高津区
5 久末バス停付近 1.1 4.3 高津区
6 稲荷坂バス停付近、電留基地併設 1.2 5.5 宮前区
7 東有馬バス停付近 0.8 6.3 宮前区
8 中有馬バス停付近 0.9 7.2 宮前区
9 有馬交差点付近 0.7 7.9 宮前区
10 宮前平駅付近 0.9 8.8 東急電鉄、川崎縦貫高速鉄道:宮前平駅 宮前区
11 土橋バス停付近 0.9 9.7 川崎縦貫高速鉄道 宮前区
12 犬蔵小学校前バス停付近 1.2 10.9 宮前区
13 平バス停付近 1.1 12.0 (自線と交差) 宮前区
14 生田緑地入口バス停付近 1.6 13.6 多摩区
15 登戸駅付近 1.3 14.9 小田急電鉄、東日本旅客鉄道(JR東日本):登戸駅 多摩区
16 多摩区役所前バス停付近 1.0 15.9 多摩区
17 明王バス停付近 1.0 16.9 多摩区
18 生田浄水場付近 1.1 18.0 多摩区
19 馬場三丁目バス停付近 1.1 19.1 多摩区
20 多摩美緑地付近 1.0 20.1 麻生区
21 神明社前バス停付近 1.0 21.1 麻生区
22 千代ヶ丘小学校入口バス停付近 1.4 22.5 麻生区
23 新百合ヶ丘駅付近 1.9 24.4 小田急電鉄、川崎縦貫高速鉄道:新百合ヶ丘駅 麻生区
24 日光隧道バス停付近 1.1 25.5 麻生区
25 真福寺バス停付近 1.0 26.5 麻生区
26 王禅寺口バス停付近 0.9 27.4 麻生区
27 琴平下バス停付近 0.7 28.1 麻生区
28 王禅寺東三丁目バス停付近 0.8 28.9 麻生区
29 長沢入口バス停付近、車両基地併設 0.7 29.6 麻生区
30 餅井坂バス停付近 0.9 30.5 麻生区
31 生田高校前バス停付近 0.9 31.4 川崎縦貫高速鉄道 多摩区
32 聖マリアンナ医大病院バス停付近 0.9 32.3 宮前区
33 生田緑地南遊園付近 1.2 33.5 宮前区
13 平バス停付近 0.9 34.4 (自線と交差) 宮前区
34 平橋バス停付近 0.8 35.2 宮前区
35 (東高根)森林公園前バス停付近 0.9 36.1 高津区
36 宮ノ下バス停付近 0.9 37.0 高津区
1 溝の口駅付近 1.2 38.2 東急電鉄:溝の口駅、東日本旅客鉄道(JR東日本):武蔵溝ノ口駅 高津区

脚注

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  1. ^ a b c d e f 「あなたに伝えたい記録と記憶―公文書館所蔵資料から―」(企画展第10回「“交通空白地”をなくせ!~幻の川崎モノレール計画~」パンフレット)川崎市公文書館、2020年10月1日 (PDF)
  2. ^ a b c 「都市モノレール・新交通システム事業化推進方策」モノレール49号、28-50ページ、椎名彪(建設省都市局街路課特定都市交通施設整備室長)、1983年3月
  3. ^ 「神奈川の交通体系の将来構想」159ページ、神奈川県自治総合研究センター、1983年8月
  4. ^ 川崎市のモノレール計画、沿線でアセスメント実施へ、多摩・高津両区で2、3年間にルート決定 - 日本経済新聞、1978年7月7日
  5. ^ a b 川崎市公文書館だより第42号”. 川崎市. 2019年4月6日閲覧。
  6. ^ 地下鉄・モノレールなど、川崎市の交通未来像、研究会が答申 - 神奈川新聞、1981年4月21日