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陶磁器

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
強化磁器から転送)

陶磁器(とうじき、英語: pottery and porcelain)は、粘土長石ケイ石などを主原料にした焼き物(やきもの)の総称[1]セラミックスの一種。

概要

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土器、陶器、炻器、磁器などを広くまとめて指すための用語・概念である。→#定義と分類

ろくろを用いて粘土を成型する
で加熱する

陶磁器に使われる粘土には、加熱することでアルミニウムカルシウムなど他の物質と化合ガラス化する珪酸を主成分とする石英などが含まれている。粘土を成形した後に、加熱する(を加える)ことで溶けて流体となったガラスが土粒子の間に入り込み、その後、冷めるとそのガラスが固体化し土粒子同士をくっつける。『古陶磁の科学』の著者・内藤匡は、この過程をおこしに喩えている。おおまかに言えば、陶器と磁器の違いはこのガラスになる成分と量の違いである[2]

陶磁器は質感に優れており衛生的で一定の耐久性もあることから、食器、花器、植木鉢、装飾品[注釈 1]衛生陶器タイルなどに利用されている[3][4]

もう少し詳しく説明すると、陶磁器は陶器など多孔質の素地(微細な穴が多く空いている性質)で吸水性のあるものと、炻器(せっき)や磁器などの素地で吸水性が低いものに分けられる[4]

多孔質の素地の製品の用途としては食器、タイル、植木鉢などがある[3][4]。また、緻密質の素地の製品には食器、タイル、装飾品、衛生陶器、工業用及び電気用磁器、歯科用磁器などがある[3][4]

定義と分類

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「陶磁器」は日本で使われている用語である。 陶磁器を含めたセラミックスの分類については研究者によって議論があり、窯業用語も国によって異なっている[3]。→#英語圏の用語・概念との比較

代表的な分類

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陶磁器は釉薬の有無および焼成温度で以下のように大別される。

やきもの(窯器)の種類:土器・陶器・炻器・磁器[5]
種別 焼成 釉薬 特徴
土器 低火度(1000°C以下) 無釉 軟質、土色、吸水性大
陶器 低中火度(1200°C以上) 施釉 軟硬質、灰白色、吸水性あり
炻器 高火度(1100 - 1250°C 無釉 硬質、灰色、吸水性小
磁器 高火度(1350°C以上) 施釉 硬質、白色、吸水性無

英語圏の用語・概念との比較

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ドイツや日本では磁器の概念など比較的明確であるが、アメリカやイギリスでは素地の特性だけでなく用途を含めた分類と呼称になっているため概念が不明瞭といわれている[3]

Whiteware
アメリカで施釉または無釉素地の緻密な組織をもつ焼成品をいう(陶器、炻器、ファイアンスを含む)[3]
ChinaまたはChinaware
狭義にはアメリカにおいてディナーウエア(dinnerware)のことをいう[3]。広義には熔化に至るまで白色に焼成した食器や美術品などの製品をいう[3]
Earthenware
語源では土器や陶器を意味するが、アメリカでは施釉または無釉で吸水率10%以上のwhitewareをいう[3]

土器

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素焼きのやきもの。を使わず、粘土野焼きの状態で700 - 900°Cの温度で焼いたもの。釉薬うわぐすり、またはゆうやく)はかけないが、彩色されているものを「土器」と呼ぶことがあり、その場合は、その彩色具を釉薬としないことを前提としている。歴史的には陶磁器の前身にあたる。

陶器

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カオリナイト(カオリン)やモンモリロナイトを多く含んだ粘土を原料とし、窯で1100 - 1300°Cの温度で焼いたもの。釉薬を用いる。透光性はないが、吸水性がある。厚手で重く、叩いたときの音も鈍い。粗陶器精陶器に分けられる。

炻器

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せっきと読む。「炻」は国字(日本で考案された漢字)。英語の"Stoneware"の訳語である。を使い、焼成温度は1200 - 1300°C。土器と陶器の中間的性質を示すもので、釉薬の有無にかかわらず、透光性・吸水性ともにないものを指す。

炻器の原語である"Stoneware"は西洋陶磁の用語であり、中国、日本などの東洋陶磁の分類概念とは必ずしも一致しない。たとえば、"Celadon"と呼ばれる青色の焼き物は、日本・中国では青磁(青瓷)と言い、磁器に分類されるが、欧米では"Stoneware"の一種とみなされる。日本の陶磁研究者や陶芸作家には「炻器」という概念を立てる者と立てない者がいる[注釈 2]

磁器

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磁器は半透光性で、吸水性が殆どない。また、陶磁器の中では最も硬く、軽く弾くと金属音がする。粘土質物や石英長石→陶土を原料として1300°C程度で焼成するが、焼成温度や原料によって軟質磁器硬質磁器に分けられる。

世界の主な陶磁器産地とブランド

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日本と陶磁器

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畿内より東では瀬戸物(せともの)と呼ばれ、中国四国以西では唐津物(からつもの)とも呼ばれる。焼き方や用途や生産地などからさまざまに分類される。

生産量日本一は岐阜県土岐市である。

日本の陶磁器

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野々村仁清『色絵藤花茶壺』(国宝

日本の土器、陶器、炻器、磁器には次のようなものがある。

日本の主な陶磁器産地

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益子焼
益子焼
備前焼(古備前花生)
備前焼(古備前花生)
唐津焼
唐津焼
有田焼
有田焼

日本の主な陶磁器企業若しくはブランド

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日本国内の陶磁器の公募展

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日本国内の関連組織

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陶磁器をめぐる問題

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1970年、日本ではが溶け出す陶磁器の存在が問題となり、厚生省は食品衛生法違反を理由に3社の一部製品の販売停止、回収命令を出した。光沢を出すためやコストダウンを図るため低温(700度以下)で焼いたことが原因の一つと見られている[7]

高知県立消費生活センターが2002年(平成14年)に、(100均などで)88円 - 100円で売られている安価な陶磁器100点(中国製も含む)について鉛やカドミウムの溶出の有無を調べた調査では、問題なしと判定されたのは97点で、問題ありと判定されたのは3点という状況だった[8]

ギャラリー

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脚注

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注釈

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  1. ^ 装身具や室内装飾品など。
  2. ^ 矢部良明編『角川日本陶磁大辞典』(角川書店、2002)の「炻器」の項による。

出典

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  1. ^ 「陶磁器」『世界史事典』(三訂版)旺文社、200-10。ISBN 4-01-035314-7 
  2. ^ 『やきもの見方・見分け方百科 伝統技法の色・文様・形・逸品の選び方、楽しみ方』竹内順一 監修、主婦と生活社〈主婦と生活・生活シリーズ〉、1996年8月、170頁。ISBN 4-391-60597-X 
  3. ^ a b c d e f g h i 素木洋一「セラミック外論(1)」『窯業協會誌』第68巻第773号、日本セラミックス協会、C160-C165、doi:10.2109/jcersj1950.68.773_C160 
  4. ^ a b c d 古賀直樹「陶磁器素地の高強度化と衛生陶器への応用」『Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan』第7巻第285号、無機マテリアル学会、143-148頁、doi:10.11451/mukimate2000.7.143 
  5. ^ 佐々木 1991, p. 15.
  6. ^ 陶磁ネットワーク発足 全国の6館連携-佐賀新聞ニュース/The Saga Shimbun 佐賀のニュース”. www.saga-s.co.jp (2008年5月25日). 2016年3月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年5月11日閲覧。
  7. ^ 「鉛のとける陶磁器 三社に回収命令」『朝日新聞』1970年11月17日、朝刊、12版、22面。
  8. ^ 商品テスト報告 No.37 陶磁器食器』高知県立消費生活センター、2002年6月https://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/141602/files/2009032600347/2009032600347_www_pref_kochi_lg_jp_uploaded_attachment_4900.pdf2023年7月8日閲覧 

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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