グーグルマップ改ざん事件
グーグルマップ改ざん事件[要校閲](グーグルマップかいざんじけん)は、Googleが提供するオンライン地図サービス「Google マップ」において、2015年(平成27年)4月頃に発生した騒動である。ユーザーが情報を追加・修正できるGoogle マップの機能を悪用して、地図上の施設名などを改竄(かいざん)する犯罪行為が多数行われた。
騒動の概要
[編集]2015年4月、Google マップ上で、アメリカ・ホワイトハウスの敷地内に元CIAスタッフのエドワード・スノーデンの名前が表示されていることが確認された[1]ほか、パキスタンでは、Googleが提供するOS「Android」のキャラクターが、競合他社であるApple社のロゴマークに小便をかける画像が公園として表示された[2]。それと前後して、日本国内でも同じような悪戯が行われるようになり[3]、実在しない施設が多数追加される悪戯が確認された[3]。4月20日頃には、皇居や警視庁本部等東京都内の主要施設の他、島根県の出雲大社や広島県の原爆ドーム、さらにはアメリカのケネディ宇宙センターや2015年1月にイスラム過激派に襲撃されたフランスの新聞社シャルリー・エブド本社に対し、2ちゃんねる発祥の架空の宗教団体の名前を模した「恒心教」、「恒心教 核実験場」等という名称がつけられる改竄が行われていたことが確認された[3][4][5][6][7]。このほか、秋田空港の滑走路上にびっくりドンキーの店舗が書き加えられる[8]、霞が関の警視庁や皇居内の建物にオウム真理教関連の名称が付けられるなど[8]、複数の改竄が確認された。
Googleは、これらの改竄について、利用者が提供した情報に誤りや違反行為があった場合は削除するとし、ホワイトハウスに関する改竄が翌日4月15日には修正されたのを始め、日本国内の施設を標的にした改竄についても、4月24日頃までに削除・修正された[1][8]。また、Googleは、改竄が行われた経緯を調査すると共に、再発を防ぐためのシステムを導入すると説明した[5][9]。
その後の警察の捜査によって[10]、犯人の身元が特定され、岩手県盛岡市の21歳の男子大学生、愛知県田原市の30歳の男性会社員、大阪府大阪市の30歳の無職男性の3人が、軽犯罪法違反(いたずらによる業務妨害)の容疑で書類送検された[11]。実行犯はいずれも「恒心教」の関係者であり、「(攻撃の対象としている)弁護士の評判を知ってもらいたかった」などと供述した[12]。
意見
[編集]ITジャーナリストの三上洋は、一連の改竄は、Google マップ上の施設名が誰でも書き換えが可能なことを悪用した悪戯であって、高度な知識を必要とするハッキング行為ではないと指摘し[9]、情報を掲載する段階でGoogleがチェックを怠ったことが原因ではないかと言及した[6]。
ウェブサイト構築企業アイ・エム・ジェイの執行役員を務める江端浩人は、この件について、著作性や公共性の高い施設は書き換えを制限する仕組みを設ける等の対策が必要ではないかと言及した[7]。
騒動後の改竄
[編集]騒動の収束後も、しばしばGoogle マップにおける情報の改竄が確認され、メディアにより報道される場合がある。
- 2015年4月頃、新潟県佐渡市には存在しない日本マクドナルドの店舗名が大量に記載される改竄が起きた[13]。
- 2017年6月頃、阪急電鉄千里線の柴島駅が「部落柴島駅」と改竄された。差別用語を含む悪質な改竄として大きく問題視された[14]。
- 2018年5月頃、日本大学フェニックス反則タックル問題の影響を受けてか、日本大学が「日本タックル大学」と改竄された[15]。
- 2024年1月頃、 アフリカ大陸のビクトリア湖にある「ミギンゴ島」において日本語が用いられた改竄行為が発生し、実際に現地には存在しない「ビッグモーター」「ダイハツ」「宝塚歌劇団」など昨年2023年に物議を醸した店舗及び団体等が多数登録された[16]。
- 2024年5月頃、いなば食品の東京本社が「ブラックシーチキン株式会社第一サティアン」と改竄された。前月に一部週刊誌で報じられた新入社員に関するトラブルと紐づける声もある[17]。
- 2024年10月頃、クルド人の一部と地域住民との間で軋轢が表面化していた、埼玉県川口市の市役所に無関係である「寺院・礼拝所」のカテゴリで「クルド市役所」と登録し、対立を助長するような改竄行為が行われた[18]。
関連項目
[編集]- トラップストリート - 複製防止のためわざと誤った情報を地図に混ぜ込む手法。
出典
[編集]- ^ a b “エドワード・スノーデン、今度はホワイトハウスを占拠(Google Mapの中で)”. businessnewsline. (2015年4月14日). オリジナルの2015年4月15日時点におけるアーカイブ。 2022年4月30日閲覧。
- ^ “アンドロイドがアップルにおしっこ? グーグルマップに表示”. CNN.co.jp. (2015年4月25日) 2022年4月30日閲覧。
- ^ a b c “グーグルマップ騒動で方向音痴困惑”. NEWSポストセブン. (2015年4月23日). オリジナルの2015年4月25日時点におけるアーカイブ。 2022年4月30日閲覧。
- ^ “グーグルマップ、一時改ざん、警視庁がサティアンに……”. 朝日新聞. (2015年4月21日). オリジナルの2015年4月20日時点におけるアーカイブ。 2022年4月30日閲覧。
- ^ a b “グーグルマップで悪質な改ざん 警視庁に「サティアン」 原爆ドーム、皇居内施設も”. ZAKZAK. (2015年4月21日) 2022年4月30日閲覧。
- ^ a b “皇居内にオウム?グーグルマップにナゾ表記”. 日テレNEWS24. (2015年4月20日) 2022年4月30日閲覧。
- ^ a b “グーグルマップ改ざん、被害は海外にも広がる”. TBS News i. (2015年4月21日). オリジナルの2015年4月25日時点におけるアーカイブ。 2022年4月30日閲覧。
- ^ a b c “グーグルマップ改竄 滑走路近くに「飲食店」、秋田空港で表示”. 産経新聞. (2015年4月24日)
- ^ a b “グーグルマップ書き換えで登場した「恒心教」とは 過去に何度も同様手口でハッキング繰り返してきた?”. J-CASTニュース. (2015年4月21日)
- ^ “グーグルマップ「改ざん愉快犯」は特定できるか”. 東京スポーツ. (2015年4月24日)
- ^ “グーグルマップ改ざん、3人書類送検 業務妨害容疑”. 朝日新聞 (2015年12月1日). 2015年12月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月30日閲覧。
- ^ “グーグルマップの施設名を勝手に書き換え 大学生ら3人書類送検”. FNNニュース (2015年12月1日). 2015年12月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年12月4日閲覧。
- ^ “母にしかられた店・おじさん本舗店...佐渡島のGoogleマップに「珍名マクドナルド」が多数出現”. Jタウンネット (2015年4月6日). 2015年8月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年8月13日閲覧。
- ^ “Googleマップで大阪『柴島駅』が『部落柴島』に改ざん!犯人の名前は!?改ざん方法は!?ハッキングなしでできる!?”. Pixls (2017年6月3日). 2024年5月10日閲覧。
- ^ “日大が「日本タックル大学」グーグルマップで改ざん”. 日刊スポーツ. 2020年11月21日閲覧。
- ^ “Google マップ、日本語の荒らし行為相次ぐ 「これはダメでしょ」「想像以上にひどい」と波紋”. ねとらぼ (2024年1月6日). 2024年1月7日閲覧。
- ^ “いなば食品Googleマップで勝手に社名変更される「え?」「これは良くない」「闇深さは伝わる」”. まいどなニュース (2024年5月16日). 2024年5月24日閲覧。
- ^ “グーグルマップ、川口市役所を「クルド市役所」と表示 「寺院・礼拝所」と説明も 「移民」と日本人”. 産経新聞. 2024年10月5日閲覧。