横山薫範
横山 薫範(一等兵曹時代) | |
生誕 |
1917年11月23日 日本 鳥取県東伯郡琴浦町上法万 |
死没 |
1941年12月8日(24歳没) アメリカ合衆国 ハワイ準州真珠湾 |
所属組織 | 大日本帝国海軍 |
軍歴 | 1934年 - 1941年 |
最終階級 | 海軍特務少尉 |
墓所 | 鳥取県東伯郡琴浦町上法万の共同墓地 |
横山 薫範(よこやま しげのり、1917年(大正6年)11月23日 - 1941年(昭和16年)12月8日)は、日本の海軍軍人。太平洋戦争劈頭の真珠湾攻撃において特殊潜航艇「甲標的」搭乗員として戦死した九軍神の一人。二階級特進により最終階級は海軍特務少尉。
人物・来歴
[編集]鳥取県出身。横山家は農業を営み、三男一女の末子である[1]。小学校高等科を卒業し、海軍を志願したが一度目は失敗し、二度目の挑戦で合格した[1]。1934年(昭和9年)6月呉海兵団に入団。同期生に同じく九軍神とされた稲垣清がいる。
海軍軍人
[編集]海軍水兵としての基礎訓練を受け、戦艦「扶桑」乗組となる。水雷学校及び潜水学校を卒業。横山は成績優秀で、水雷学校は優等卒業であり[2]、懐中時計を授与された[1]。進級は速く4年目に下士官、7年目に一等兵曹に昇進している。日中戦争では南シナ海の警備行動に従事した。
日本海軍は特殊潜航艇(以下「特潜」 )を艦隊決戦の秘密兵器として期待をかけており、その存在は秘匿され[3]、「特潜」搭乗員は厳選された人物たちであった[4]。横山はその選に入り訓練を受けていたが、洋上での艦隊決戦においても「特潜」の使用には困難な点があった[5]。1941年(昭和16年)10月13日、「特潜」の真珠湾攻撃参加が正式決定し[2]、さらに難しい条件が重なる特別攻撃隊員に選ばれる。
12月7日午前2時15分(以下、現地時間)、真珠湾の湾口150度、12.6海里の地点[2]から艇長・古野繁実中尉とともに伊一八潜水艦から出撃。午前6時30分、雑役艦「アンタレス」を追尾していた「特潜」が米海軍特設沿岸掃海艇「コンドル」 に発見され、「PBY カタリナ」飛行艇が発見位置に発炎筒を投下。15分後駆逐艦「ウォード」は砲撃を開始し、続けて爆雷攻撃により「特潜」を撃沈した。この時、撃沈された「特潜」が古野・横山艇と推測する説がある[6]。真珠湾特別攻撃隊の指揮官・佐々木半九は、資料不足などの制約があるとした上で、古野・横山艇は別の「特潜」である可能性も指摘している[7][2]。米側には、1960年に真珠湾近隣のケエヒラグーンで発見され引揚られた「特潜」が、若干の遺留品から艇を引渡した当時、日本で古野・横山艇とされたとする説[8][9]がある。理由は異なるようだが、日本の研究者にもケエヒラグーンで発見され引揚られた「特潜」を古野・横山艇とする説の支持者がいる[10]。
最後の帰省
[編集]最後に帰省したのは1941年(昭和16年)9月である。この時、大量の松茸を土産に持ち込んで恩師や親戚に配り、恩賜の懐中時計を兄の時計と交換した。生家や家族を何度も振り返り、帰隊していった[1]。
墓所は鳥取県東伯郡琴浦町上法万の共同墓地より10メートルほど離れた桜の木の横にある。 墓石には「故 海軍特務少尉 横山薫範」とある。
死後
[編集]横山は、遺書も遺言も何も残さなかった。最後までペン字の稽古をしていて、大学ノートには、一行の中に2行ずつ細かい文字がびっしりと書き込まれていたという[11]。
母親は、よく泣いていたが恨み言は言わなかったという[11]。
出典・脚注
[編集]- ^ a b c d 『九軍神は語らず』「軍神・横山薫範 - 黄ばんだノート」
- ^ a b c d 『決戦特殊潜航艇』「第二章 真珠湾攻撃」
- ^ 『日本の海軍』(下)「海と空 3 特殊潜航艇」
- ^ 『本当の特殊潜航艇の戦い』「第二章 甲標的の誕生」
- ^ 『本当の特殊潜航艇の戦い』「第一章 特殊潜航艇の実態」
- ^ 『本当の特殊潜航艇の戦い』「第三章 甲標的作戦の実態」
- ^ 『決戦特殊潜航艇』「まえがき」
- ^ James P. Delgado; Terry Kerby (2016-11-7). The Lost Submarines of Pearl Harbor. Texas A & M Univ Press
- ^ “KEEHI LAGOON MIDGET”. NOAA. 2021年12月30日閲覧。
- ^ 葭英夫 著、渡部義之 編『甲標的と蛟竜』(株)学習研究社、2002年4月1日、153頁。
- ^ a b 牛島秀彦『九軍神は語らず』(株)光人社、1999年6月14日、223,222頁。
参考文献
[編集]- 池田清『日本の海軍(下)』朝日ソノラマ、1987年。ISBN 4-257-17084-0。
- 牛島秀彦『九軍神は語らず』講談社文庫、1990年。ISBN 4-06-184709-0。
- 佐々木半九、今和泉喜次郎『決戦 特殊潜航艇』朝日ソノラマ、1984年。ISBN 4-257-17047-6。
- 鳥巣建之助『日本海軍潜水艦物語』光人社NF文庫、2011年。ISBN 978-4-7698-2674-3。
- 中村秀樹『本当の特殊潜航艇の戦い』光人社NF文庫、2007年。ISBN 978-4-7698-2533-3。
- 福田啓二ほか『軍艦開発物語(2)』光人社NF文庫、2002年。ISBN 4-7698-2353-3。