歌川貞升
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歌川 貞升(うたがわ さだます、生没年不詳)とは、江戸時代の大坂の浮世絵師。
来歴
[編集]初代歌川国貞の門人。姓は三谷。五蝶亭[1][注釈 1]、五蝶斎、一樹園[注釈 2]と号す。大坂船場の素封家であった。はじめは貞升と称し、国貞が三代目歌川豊国を襲名した後、国升と改名した。天保から嘉永にかけて歌川派風の役者絵や風景画、肉筆画などを描き、殊に天保期に描かれた版画は少なくない[注釈 3]。花枝房(立川)圓馬作の落語の読み本『落噺千里藪』[4] に上方落語の噺家を集合した似顔を載せている[注釈 4]。
晩年は四条派の画風に転向した。貞升は肉筆画においても相当優れた手腕を発揮しており、歌川派風の役者絵、肉筆画を大坂に広めた功労者の一人にあげられる。門人も多く長谷川貞信、哲斎信勝、歌川貞芳、歌川貞丸、貞雪、貞勝らがいる。
主な作品
[編集]版画
- 「浪花天保山風景」大判錦絵4枚続、1833年(天保4年)ごろ
- 「源牛若丸・三代目中村芝翫 弁けい・四代目中村歌右衛門」大判錦絵2枚続、1837年(天保8年9月)、中の芝居『鬼一法眼三略巻』より
- 「由良之助・勘平・定九郎 四代目中村歌右衛門」大判錦絵3枚続、1838年(天保9年正月)、中の芝居『仮名手本忠臣蔵』より
- 「鉄ケ嶽陀左衛門 片岡市蔵」大判錦絵2枚続・竪、『関取千両幟』(せきとり せんりょうのぼり)より。五蝶亭貞升の落款、1842年12月。東京都立図書館データベース[1]。
- 「七世団十郎諸芸図巻」絹本着色、巻子本1巻。天保年間、ボストン美術館所蔵。20場面を描く。
版本
- 岡山鳥『的中新話』渓斎英泉、歌川貞升(画)、河内屋直助、1832年(天保3年)。全3巻(上中下)。別題『楊弓』。NCID BB07116944。
- 花枝房円馬『落噺千里藪』(おとしばなし せんりのやぶ)、月亭生瀬(校閲)、河内屋茂兵衞(出版)、河内屋藤兵衞(販売)ほか。 上方落語に取材した絵入りの読み物。全5巻[注釈 5]
参考文献
[編集]- 『役者似顔』西尾市岩瀬文庫、近世後期_幕末 。2020年7月14日閲覧。
- 日本浮世絵協会(編)『原色浮世絵大百科事典』 2巻、大修館書店、1982年、[要ページ番号]頁。
- 藤懸静也『増訂浮世絵』雄山閣、1946年、207-208頁。 国立国会図書館デジタルコレクションに本文あり。139–140コマ目。
- 吉田漱『浮世絵の見方事典』北辰堂、1987年、141頁。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 五蝶亭貞升名義はコレクターが貼り混ぜたスクラップブック『役者似顔』に本屋清七(通称は本清)版の役者絵が揃う。5:「大星由良之助/中村歌右衛門」、7:「斧定九郎/中村歌右衛門」、8:「早ノ勘平/中村歌右衛門」、11:「源牛若丸/中村芝翫」「弁慶/中村歌右衛門」(2枚続)、49:「実川延三郎」、51:「伊達競浪花男/見立片岡我童」、52:「女伊達お橋/嵐徳三郎」。同じ五蝶亭名義で丙喜版は12:「皆鶴姫/中村富十郎」「鬼一法眼/中村玉助」「奴智恵内/三枡源之助」「牛若丸/中村歌六」(4枚続)があり、その他、印のないものは3点(25:「中村富十郎」、47:『俳優当世鏡』「藤屋伊左衛門/片岡我童」、48:『俳優当世かゞ美』「扇屋夕きり/中村富十郎」)[2]。
- ^ 一樹園貞升名義は、2:「犬山道節」[2]。
- ^ 『役者似顔』、西尾市岩瀬文庫所蔵。全2帖のうち1帖目より2帖目の巻頭2図まで上方絵で、その14点は貞丈作である[3]。
- ^ 『落噺千里藪』[4] の口絵は彩色刷で、校閲した生瀬を含む当時の噺家の肖像を1枚に組み合わせて描いている。似顔絵を載せた内訳は、西尾市岩瀬文庫[4] によると桂文次(初代)とその門下の桂文吉、桂里壽(先里寿)、桂北桂舎、先代の吾竹、勢楽、馬伊助、桜川春好、花枝房円馬の実子の小円馬(もしくは三遊亭小圓馬)、吾竹(2代目)、月亭生瀬、花枝房円馬。また同書には落語の歴史をかいつまんで紹介した「噺のはなし」を載せた[4]。
- ^ 『絵本千里藪』ともいう。挿絵の構成は多色刷りの口絵のほか墨1色の見開の図3点と1ページ(半丁)1点を基本に、第2巻、第3巻、第4巻は1ページ挿絵を2点ずつ配した。花枝房円馬の名は立川円馬として出版社の文宝堂と並んで記載。板元は上方(大坂)の河内屋茂兵衞(心斎橋筋博労町角)、販売者は河内屋藤兵衞(心斎橋筋本町角)と河内屋藤四郎(京都・寺町通佛光寺)のほか、江戸では須原屋茂兵衞(日本橋通り一丁目)、山城屋佐兵衞(同二丁目)、須原屋新兵衞(同左)、山城屋政吉(南天満町一丁目)、英文藏(下家御成道)、丁子屋平兵衞(大伝馬町二丁目)、芝神明前の岡田屋嘉七と同じく和泉屋吉兵衞がある。序文を梅里亭其楽(浪華江南の隠居)が寄せる[4]。
出典
[編集]関連項目
[編集]関連文献
[編集]出版年順。
- 関根金四郎(編)『浮世画人伝』、修学堂、1899年。国立国会図書館デジタルコレクション。
- 関根黙庵『本朝浮世画人伝』下巻、修学堂、1899年。国立国会図書館デジタルコレクション。
- 関根金四郎『本朝浮世絵名家詳伝』、萩原新陽館、1900年。国立国会図書館デジタルコレクション。
- 『浮世絵百家伝』関根只誠(編)、六合館、1925年。国立国会図書館デジタルコレクション。
- 山口真有香「上方の浮世絵の発生と展開—役者絵を中心に」『美学論究』第20号、関西学院大学、2005年3月、p. 19-36。ISSN 0911-3304
NAID 110004473683。
- 千葉市美術館『浮世絵に描かれた子どもたち = Children depicted in ukiyo-e prints : 江戸へようこそ!』、千葉市美術館、2014年。
外部リンク
[編集]- 『浮世絵に描かれた子どもたち : 江戸へようこそ!』展、インターネットミュージアム(2014年)。