清澄の大スギ
清澄の大スギ(きよすみのおおスギ)は、千葉県鴨川市の清澄寺境内に生育するスギの巨木である[1][2][3]。推定の樹齢は400年とも800年以上ともいわれ、1924年(大正13年)に国の天然記念物に指定された[1][2][4][5]。千葉県内では最大の巨木であり、関東地方においても神奈川県足柄上郡山北町に生育する「中川の箒スギ」(国の天然記念物)と並ぶスギの巨木である[6][7]。土地の人々の伝承では樹齢は1000年とされ、古くからこの木を「千年スギ」とも呼んで親しんでいる[7][8][9]。
由来
[編集]千光山清澄寺は、安房天津駅から約6キロメートル離れた清澄山(標高377メートル)[10]の頂上に近いところに位置する[3][11]。清澄寺の縁起によると、光仁天皇の時代、771年(宝亀2年)に「不思議法師」という僧侶が清澄山に登り、ビャクシンの古木を伐りだして虚空蔵菩薩像を刻み、堂を建ててその像を祀ったのが始まりとされる[1][11]。清澄寺は日蓮が1233年(天福元年)12歳で入山して後に出家得度した寺であり、1253年(建長5年)に立教開宗を宣言した寺でもある[1][3]。かつては天台宗に属していたが、1949年(昭和24年)、日蓮宗の寺院となった[3][11]。
日蓮宗四霊場の1つである清澄寺には全国各地から参拝客が訪れるが、この木を見るために訪れる人も少なくない[8]。境内にはスギやヒノキの高木が多いが、仁王門をくぐると本堂前広場の南隅にひときわ高くこの木がそびえたっている[4][8][11]。もともと自生していたものか、植栽されたものかは不明で樹齢には400年、600年、800年以上、1000年などと諸説があるが、土地の人々は古くからこの木を「千年スギ」とも呼んで親しんでいる[7][8][9]。
樹高は約45メートル、幹回りは約15メートルに及び、完全な単幹のスギとしては日本最大級のものとされる[9][12]。千葉県内ではすべての樹種を通して最大の巨木であり、関東地方においても「中川の箒スギ」と並ぶスギの巨木である[6][7][13][14]。幹の東側基部に空洞ができていて、その内部は祠になっているが樹勢自体は旺盛である[4][15]。
かつては清澄の大スギの西側約30メートルのところに、ほぼ同じ大きさのスギがもう1本あった[1][8]。しかし、1954年(昭和29年)の台風で倒れてしまい、その時にこの木も巻き添えになって南側半分の枝がそぎ落とされるような形で失われてしまった[1][3][8]。土地の人は当時のことを「地震だと近所が大騒ぎになったほどだった」とそのすさまじさを語っている[8]。 そのとき倒れた方のスギは年輪の数が380前後だったといい、そこから類推するとこの木の樹齢も500歳以下である可能性が指摘されている[9]。これは南房総の温暖で降雨にも恵まれた気候がスギの成長を促進したものと考えられている[9]。
清澄の大スギは、1924年(大正13年)12月9日に国の天然記念物に指定された[1][2][4][5]。1990年に開催された「国際花と緑の博覧会」に合わせて企画された「新日本名木100選」にも選定された[8][16][17]。その他に「ちば遺産100選」、「房総の魅力500選」にも選出されている[18][19]。
交通アクセス
[編集]- 所在地
- 千葉県鴨川市清澄322-1 清澄寺境内
- 交通
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g 牧野(1998)、59-62頁。
- ^ a b c 『自然紀行 日本の天然記念物』 118頁。
- ^ a b c d e 牧野(1989)、86-87頁。
- ^ a b c d 『天然記念物事典』、109頁。
- ^ a b 清澄の大スギ 文化遺産オンライン、2012年10月20日閲覧。
- ^ a b 高橋、64頁。
- ^ a b c d 渡辺、142頁。
- ^ a b c d e f g h 『新日本名木100選』、58頁。
- ^ a b c d e 高橋、22頁。
- ^ 標高は「千葉県統計年鑑」による。参照:千葉県統計年鑑>土地・気象>山岳
- ^ a b c d 牧野(1988)、232-234頁。
- ^ 長野県下伊那郡根羽村の「月瀬の大スギ」(国の天然記念物)や高知県長岡郡大豊町の「杉の大スギ」(国の特別天然記念物)は、いずれも複数の木が合着して成長したものである。
- ^ 千葉県内では、富津市にある「環の大クス」(千葉県指定天然記念物)が清澄の大スギに次ぐ巨木とされている。
- ^ 渡辺、143頁。
- ^ a b 清澄の大スギ 鴨川市ウェブサイト、2015年9月21日閲覧。
- ^ “新日本名木100選” (2012年10月20日). 2013年7月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年9月21日閲覧。
- ^ 新日本名木100選 目次 2012年10月20日閲覧。
- ^ 「ちば遺産」100選(7)黒潮と山の恵みのゾーン 千葉県教育委員会ウェブサイト、2012年10月20日閲覧。
- ^ 房総の魅力500選〔自然〕 千葉県ホームページ、2012年10月20日閲覧。
参考文献
[編集]- 牧野和春 『巨樹と日本人 異形の魅力を尋ねて』 中央公論新社〈中公新書〉、1998年。ISBN 4-12-101422-7
- 牧野和春 『巨樹の民俗紀行 百樹の旅』 恒文社、1988年。ISBN 4-7704-0689-4
- 読売新聞社編『新 日本名木100選』 1990年。ISBN 4-643-90044-X
- 高橋弘『神様の木に会いに行く 神秘の巨樹・巨木・ご神木の聖地巡礼』 東京地図出版、2009年。ISBN 978-4-8085-8559-4
- 牧野和春編著 『関東地区 巨樹・名木巡り』 牧野出版、1989年。ISBN 4-89500-005-2
- 渡辺典博 『巨樹・巨木 日本全国674本』 山と渓谷社、ヤマケイ情報箱、1999年。ISBN 4-635-06251-1
- 花井正光、桂雄三、本間暁原稿監修 『自然紀行 日本の天然記念物』 講談社、2003年。ISBN 4-06-211899-8
- 文化庁文化財保護部監修『天然記念物事典』 第一法規出版、1981年。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 清澄の大杉 東京の樹 番外編、2012年10月20日閲覧。
- 清澄の大スギ 奥多摩町日原森林館、2012年10月20日閲覧。
- 清澄の大スギ 日本の巨樹・巨木 高橋弘ウェブサイト、2012年10月20日閲覧。
座標: 北緯35度9分36.2秒 東経140度9分5.5秒 / 北緯35.160056度 東経140.151528度