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「廃棄物発電」の版間の差分

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廃棄物発電
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=== マレーシア ===
=== マレーシア ===
2011年12月に再生可能エネルギーに関する[[固定価格買い取り制度|FIT制度]]が開始され、これに廃棄物発電も含まれており、2015年までの累積発電量は200メガワットである{{Sfn|環境省|2011|page=57}}。マレーシア国内での廃棄物発電は未だ事例が少ないものの、[[セランゴール州]][[カジャン市]]近郊で700トン/日の都市ごみを受け入れてのRDF発電が行われており、また同時にごみを分別した上でのリサイクルも行われている{{Sfn|環境省|2011|page=59}}。このRDF発電での発電総量は8.9メガワットになっている{{Sfn|環境省|2011|page=59}}。
2011年12月に再生可能エネルギーに関する[[固定価格買い取り制度|FIT制度]]が開始され、これに廃棄物発電も含まれており、2015年までの累積発電量は200メガワットである{{Sfn|環境省|2011|page=57}}。マレーシア国内での廃棄物発電は未だ事例が少ないものの、[[セランゴール州]][[カジャン市]]近郊で700トン/日の都市ごみを受け入れてのRDF発電が行われており、また同時にごみを分別した上でのリサイクルも行われている{{Sfn|環境省|2011|page=59}}。このRDF発電での発電総量は8.9メガワットになっている{{Sfn|環境省|2011|page=59}}。


== 廃棄物発電 ==
廃棄物発電とは、ごみを焼却する際の熱を回収し、湯を沸かして蒸気を作り、その蒸気でタービンを回すことにより発電を行う方法である。熱源とするごみの種類・性質によって、いくつかの種類がある<ref>{{Cite web |title=廃棄物発電 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア |url=https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=72 |website=tenbou.nies.go.jp |access-date=2024-11-13}}</ref>。

ただし、火力発電所に比べると廃棄物の発熱量は低く又不安定で、さらに廃棄物から発生する燃焼ガスの腐食性も高く、ボイラの温度・圧力を一定以下にとどめる必要があり、一般廃棄物を直接燃焼する我が国の発電効率は高くない。また、これまでは、未利用熱の活用のため焼却炉周辺の温泉施設やプールなど低温の熱供給として活用されて来たが、これら低温域はヒートポンプが得意とするところであり、今後の廃棄物発電の有効活用方法について考えていきたい。

* 1. 背景:廃棄物発電施設の普及
* 2. 技術の概要
*  1)廃棄物発電のしくみ
*  2)廃棄物発電の事例
* 3.技術を取り巻く動向
*  1)廃棄物発電の経済性評価
*  2)循環型社会形成推進交付金(環境省)
*  3)高効率化と有効利用に向けた展望

※掲載内容は'''2021年2月'''時点の情報に基づいております。

※外部リンクは別ウィンドウで表示します。

== 1.背景:廃棄物発電施設の普及 ==
我が国で最初の廃棄物発電施設の導入事例は、1965年の大阪市西淀工場とされている。この事例では、発電量が少なかったため、同内の電力消費をまかなう目的で使用されていた。

その後、二度のオイルショックを契機とする石油代替資源を模索する動きの中で、廃棄物発電への期待が高まっていった。廃棄物発電は発電効率の低さが課題だったが、廃プラスチックの増加などに起因する廃棄物発熱量の上昇による焼却熱量の増加や、発電設備(タービン材料や燃焼制御システムなど)の技術革新等によって、発電効率は改善されてきた。また、廃棄物焼却施設の新設・更新時に余熱利用設備を導入する場合や、既存の施設に余熱利用設備を設置する場合に補助金が交付されるなど、各種施策によって導入が促進されている。

2003年に施行が開始された、電気事業者に対して新エネルギー等電気の利用を義務付ける「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」 に基づくRPS制度においては、バイオマス(再生可能な生物資源)性廃棄物の焼却による発電量分は、新エネルギーとして認定された。廃棄物は、そもそも最終処分時の減容化や衛生管理のために焼却が必要となるが、CO<sub>2</sub>排出量の削減が各業界に求められる中、廃棄物発電は地球温暖化対策の一つとしてみなされている(バイオマス発電については、「バイオマス発電」の解説を参考にされたい)。

2012年7月には再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)が施行され多数の廃棄物発電施設がRPS制度からFIT制度へ移行した。

これらRPS制度やFIT制度の制度的な後押しを受けるも、2018年度末時点において、全国の一般廃棄物焼却施設約1,100ヶ所のうち、発電を行っている、または行う予定のものは379ヶ所にとどまっている(表1)。大規模な施設ほど廃棄物発電を行っている割合が高いため、ごみ処理能力ベースでみると7割程度の廃棄物が廃棄物発電に使用されている。2018年度末時点での総発電量は約96億kWhであり、1世帯当たりの年間電力消費量を2,974kWhとして計算すると、この発電量は約321万世帯の消費電力に相当する。
{| class="wikitable"
|+表1 ごみ焼却施設の発電の状況
|
! colspan="4" |区分
|-
|年度
!発電施設数
!総発電能力
(MW)
!発電効率
(%)
!総発電電力量
(GWh)
|-
|2010
|306
|1,700
|11.61
|7,210
|-
|2011
|314
|1,740
|11.73
|7,487
|-
|2012
|318
|1,754
|11.92
|7,747
|-
|2013
|328
|1,770
|12.03
|7,966
|-
|2014
|338
|1,907
|12.42
|7,958
|-
|2015
|348
|1,934
|12.59
|8,175
|-
|2016
|358
|1,981
|12.81
|8,762
|-
|2017
|376
|2,089
|12.98
|9,207
|-
|2018
|379
|2,069
|13.58
|9,553
|-
|(民間)
|73
|444
|11.80
|2,170
|}
※(民間)以外は市町村・事務組合が設置した施設で、当該年度に着工した施設及び休止施設を含み、廃止施設を除く。

 ※発電効率は以下の式で示される。

調査では標準ごみ質における仕様値、公称値等を調査した。ただし、仕様値等がない場合は実績値等から算出した。

出典:環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課「日本の廃棄物処理平成30年度版」

== 2.技術の概要 ==
ここでは、一般廃棄物(可燃ごみなど)および産業廃棄物(紙、木くず、ゴム、廃プラスチックなど)を熱源とした発電について、発電のしくみと廃棄物発電施設の種類を紹介する。廃棄物を含むバイオマスの各種バイオマスエネルギーへの変換技術については、「バイオマス発電」を参照されたい。

=== 1)廃棄物発電のしくみ ===
廃棄物発電は、熱源とするごみの量や質によっていくつかの種類があるが、基本的な構造は廃棄物の焼却時に発生する熱を利用して蒸気を作り出してタービン(熱エネルギーを運動エネルギーに変換する装置)を回し、電力を得るというものである。

廃棄物発電に使用されるタービンには、背圧タービンと復水タービンの2種類がある。背圧タービンは排気圧を大気圧以上にして使用する方式であり、タービンの構造が比較的簡単で取り扱いも容易であるため、自家発電用設備に導入されることが多い。一方、復水タービンは、排気圧力を真空域まで下げるため熱落差を大きく取ることができ、発電出力の大きな設備に導入される。

廃棄物発電にはボイラ蒸気が必要である。ボイラ蒸気発生量は、ごみ発熱量や供給量の変動等により変化するが、この変動が大きいと発電効率が低下する。また、廃棄物焼却によって発生する燃焼ガスの中には、腐食性ガス(塩化水素など)やダストが含まれることが多く、ボイラ管の腐食の原因となっている。このような課題に対処するため、コンピュータを活用した自動燃焼制御システムを導入し、ボイラ蒸気の発生量を安定化させたり、温度や圧力を制御したりする取り組みも行なわれている。

図1は、廃棄物発電のフロー図である。廃熱ボイラにおいて、焼却炉で発生した高温の排ガスから熱を回収して蒸気を作り出している。蒸気はタービンへ供給されて発電に利用されるほか、蒸気式空気予熱器に送られて焼却炉へ供給する空気の加熱に用いられたりする。近年は、タービンを回した後の中~低温廃熱についても利用技術の開発が進んでおり、冷暖房用の熱源や温水の供給などが実現している。また、熱回収において、ボイラ出口の燃焼排ガスの余熱を利用してボイラ給水を加熱させる機能をもつエコノマイザの伝熱面積を大きくして、より低温まで排ガスを冷却する方法(低温エコノマイザ)などによりボイラ効率の向上が図られている。

'''図1 全量発電の場合のフローシート例'''

出典:「ごみ焼却施設整備の計画・設計要領(2006改訂版)」(公社)全国都市清掃会議 2006

=== 2)廃棄物発電の事例 ===
ここでは、代表的な廃棄物発電の事例を紹介する。廃棄物発電には、ごみ焼却施設の焼却炉で発生する廃熱を利用して発電するもののほか、廃棄物由来の燃料を使用する発電施設も稼働している。また、下水処理場で発生する汚泥を乾燥させた「乾燥汚泥」を用いた発電施設や、固形燃料化した廃棄物を用いた発電施設も、廃棄物発電に含まれる。

(1)一般的な廃棄物発電

ごみ焼却施設の焼却炉で発生する廃熱を利用して発電する型式である。焼却炉の種類や搬入される廃棄物の質と量が、発電効率に影響を与える。火力発電のしくみに似ているが、熱源となるごみの中の有害成分によって焼却炉ボイラが腐食(飛灰と塩化水素ガスの複合高温腐食)するのを防ぐため、蒸気温度を400℃と低めにして蒸気タービンを回す。廃棄物組成が異なる欧州において発電効率が30%程度に達する例もあるが、一般廃棄物を直接燃焼する国内の発電効率は20数%と、600℃の火力(蒸気)発電に比べて低い水準に留まる。

図2は、秋田県横手市のごみ処理およびごみ発電のフローである。廃熱ボイラにより焼却熱を有効に利用し、蒸気タービン発電機で発電(発電効率19.6%(計画値))することで、CO<sub>2</sub>を削減している。発電した電力(2016年度年間発電量:9,999,640kWh)は、処理施設のプラント動力に活用し、余剰電力は売電している。また、寒冷地特有の課題である路面凍結に対して、発生熱をロードヒーティングに利用し、エネルギーの有効利用を図っている。

'''図2 クリーンプラザよこてのごみ処理およびごみ発電フロー'''

出典:クリーンプラザよこて「施設紹介」

産業用においては、使用エネルギーコストと廃棄物処理費用削減のために、自社工場用の産業廃棄物発電の設置のみならず、廃棄物の焼却熱を利用した蒸気供給設備の導入が早い時期から行われた例もある。製造副産物、廃棄物であるパルプ黒液や端材、廃タイヤや廃プラスチック、化学反応時の廃ガスや有機汚泥などを燃料としている。

図3は、2003年に苫小牧市で竣工した、世界初の廃プラスチック専焼発電所(蒸気発生量180t/h×2、400℃・6.2MPa、74MW)のしくみである。同施設では、性質の異なるプラスチック廃材を適切に混合することで、常に一定の燃焼状態を作り出し、電力の安定供給に努めている。また、燃焼ガス温度を850℃以上に保つことで、ダイオキシン類の生成を抑えている。発電効率は最大で27.1%と、他の廃棄物発電と比較して高い水準にある。出力74MWは、24,000世帯の消費電力に相当する。

'''図3 廃プラスチック専焼サーマルリサイクル発電所'''

出典:(株)サニックス「廃プラスチックの燃料化・発電」

また、バイオマス発電では、鶏糞を燃料とした発電所が、2005年宮崎県で稼働している。海外ではバガス・木くず・パーム椰子廃材・コーン滓(おり)・もみ殻を燃料としたボイラ発電の実例が多く、排出権取引対象事業として期待される。2006年にはタイ南部に、ゴム木製品端材を燃料とした発電プラントが竣工した。このプラントでは、発電する23MWのうち20.2MWを売電している(バイオマスの燃料化技術は、「バイオマス発電」の項目を参照のこと)。

(2)ガス化溶融

ガス化溶融とは、ごみを熱分解し、生成した可燃性ガスとチャー(炭状の未燃物)をさらに高温で燃焼させ、その燃焼熱で灰分・不燃物等を溶融する技術であり、ダイオキシン類の発生を抑制し、廃棄物を減容化するとともに溶融固化物であるスラグも回収・リサイクルできる技術である。しかし、コークスを利用して不足する熱を補っているため、CO<sub>2</sub>排出の観点では課題がある(詳細は、「ガス化溶融」の項目を参照のこと)。

オリックス資源循環(株)のガス化改質施設(埼玉県大里郡寄居町)では、「ガス化改質方式」を採用し、日量450トンの廃棄物を溶融し、精製ガスによる発電を行っている。

(3)RDF・RPFによる発電

一般廃棄物由来の固形燃料であるRDF(Refuse Derived Fuel)および、産業系廃棄物の古紙及びプラスチックを原料とした固形燃料であるRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)を燃料とした発電施設も、廃棄物発電の一種である。この施設も、焼却施設における廃棄物発電同様、大きな規模で連続的に燃料を供給しつつ運転をすることで、高い発電効率を見込めるため、複数の自治体が共同で発電施設を建設し、発電施設に供給するRDF等を分散して生産する体制が取られる事例が多い(RDFおよびRPFの製造方法については、「廃棄物固形燃料化(RDF、RPF)」の項目を参照のこと)。

図4は、三重ごみ固形燃料発電所における発電のしくみである。同施設では、三重県内の7つのごみ固形燃料製造施設において可燃ごみから作られたRDFを燃料として、焼却・発電を行っている。RDFの製造にエネルギーを消費していることは加味されていないが、発電効率は28%以上で、従来の直接ごみを焼却する発電に比較して高効率である。また、発生する焼却灰はセメントの原材料として再利用を行うなど、施設全体で環境負荷の低減に努めている。

なお、同発電の仕組みにより運営を行っているRDF焼却発電事業については、事業開始以降、現在まで収支不足の状況が続いている。事業運営面では、一層のコスト削減に取り組む必要があるなど課題を抱えている。

'''図4 三重ごみ固形燃料発電所の発電のしくみ'''

出典:三重県企業庁「RDF焼却・発電事業」

(4)汚泥を利用した発電

毎年200万トン前後(乾燥重量ベース)発生している活性汚泥の有効利用の方法として、近年、汚泥燃料化が注目され、研究開発が進んでいる。その一つが、下水汚泥を乾燥・炭化させることで、火力発電における化石燃料の代替資源として活用するというものである。東京都は、2007年より東部スラッジプラント汚泥炭化施設を運転しており、年間約10万トン(脱水汚泥ベース)の汚泥資源化を見込んでいる(詳細は、「汚泥処理・資源化」の項目を参照のこと)。

(5)スーパーゴミ発電

火力発電を高効率化する方法として、蒸気タービンとガスタービンとを併用する複合化発電があるが、廃棄物発電でも同様の方法がある。この「ガスタービン複合廃棄物発電システム」は「スーパーゴミ発電」ともいわれ、ガスタービン発電機によって発電を行った後の高温排ガスの熱を利用して、ごみ焼却時の蒸気の温度を上げて蒸気タービン発電機の出力を上げるしくみである。

しかし、ガス単価が高価であることなどにより、採算性に課題があった。国内でのスーパーごみ発電実施施設数は4施設あったが、そのすべての施設が燃料の天然ガス価格の高騰などを背景に廃止した。

== 3.技術を取り巻く動向 ==

=== 1)廃棄物発電の経済性評価 ===
国立環境研究所では、過去に、廃棄物発電設備の設置・運用に伴い消費されるエネルギーと、廃棄物発電によって得られるエネルギーとの比較検討を試みている。その結果、図5に示すように、発電されるエネルギーの方が、ごみ焼却場に投入されるエネルギー(ごみ焼却場を建設し、ごみを収集し、発電するエネルギーの合計)よりも大きくなることが示された。なお、試算においては日本で稼働しているのと同規模のごみ焼却場を想定しており、この焼却場による発電量はおよそ1万世帯分である。

また、この検討では、廃棄物発電が普及しない最大の原因は、発電コストにあると指摘している。想定したごみ焼却場では、発電した電気がキロワット当たり約10円で売れてようやく発電施設の経費をまかなうことが可能だが、発電出力が安定しないとの理由から、実際の売電価格は5円程度(当時)にとどまっていた。このことから、技術改良により出力を安定することと発電効率を上げることが、廃棄物発電の課題であるとされた。

'''図5 発電されるエネルギーと、ごみ焼却場建設および運用に必要なエネルギーの比較'''

出典:国立環境研究所ニュース15巻1号(1996年4月発行)「研究ノート ごみ発電は得か損か」(森 保文)より作成

=== 2)循環型社会形成推進交付金(環境省) ===
環境省は2005年度より循環型社会形成推進交付金を創設している。この制度は、市町村が、廃棄物の3R(リデュース、リユース、リサイクル)を総合的に推進するため、広域的かつ総合的に廃棄物処理・リサイクル施設整備を計画(循環型社会形成推進地域計画)に位置付けられた施設整備に対し交付金交付を行う。マテリアルリサイクル推進施設やエネルギー回収型廃棄物処理施設(ごみ発電施設、熱回収施設、バイオガス化施設等)等が交付対象施設となり、交付対象経費の1/3が交付される。なかでも高効率ごみ発電施設等の一部の先進的な施設については1/2を交付し、廃棄物発電の普及を促している。

=== 3)高効率化と有効利用に向けた展望 ===
前述のとおり、国内において一般廃棄物を直接燃焼する発電効率が20数%に留まっており、廃棄物発電のエネルギー利用の高効率化を考えた時、熱利用を行うことが有効である。

焼却炉で製造できる蒸気は、おおよそ300~400℃の温度帯であるが、これまでの熱利用の多くは、温泉施設やプールへの温水供給など、最終的な需要温度が50℃未満の低温の熱供給が主であった。しかし、低温の熱供給はヒートポンプの高効率化により省エネルギー効果が限定的になりつつある。エネルギーの有効利用を考えると、より高温の熱需要を満たす方が有用である。例えば、化学、ゴム、建材、食品等の工場において100~300℃の温度帯の蒸気が使用されていることが多く、そういった工場への供給が有効な利用方法となると考えられる。ただし、電気と異なり、工場へ蒸気を供給するには、焼却炉と工場がある程度近接している必要があるため、大規模な事業による導入が必要となってくる。

韓国は、2005年より「国家エコ・インダストリアル・パーク(EIP)計画」を推進し、認定された年ごとに工場間の熱/副産物の交換プロジェクト(EIP事業)を戦略的に推し進めた結果、廃棄物から製造した蒸気を近隣の工場に供給する事業が社会実装されている。

我が国においては、エコシステム小坂(株)が回収した熱エネルギーを自社工場の熱源の他、隣接する小坂製錬(株)に供給し、製錬プロセス等に利用している取組がある。また、令和2年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業のうち、地域の多様な課題に応える脱炭素型地域づくりモデル形成事業)の採択を受け、“脱炭素化に向けた「川崎スマートヒートサプライプロジェクト」FS調査事業”が実施されており、川崎臨海部で幾つかの焼却施設から工場への蒸気供給の実現可能性調査が行われている。

== 引用・参考資料など ==
・資源エネルギー庁「RPS法ホームページ」

・環境省「小規模自治体における中間処理に関わる先進事例集」

・環境省「令和2年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」

・環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課「日本の廃棄物処理平成30年度版(令和2年3月)」

・環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課「高効率ごみ発電施設整備マニュアル(平成30年3月改訂)」

・環境省「廃棄物処理施設整備計画」

・藤井実(2019)「廃棄物のエネルギー利用の高効率化に向けた展望」廃棄物資源循環学会誌 vol.30 No.4 pp.233-238

・(一財)日本環境衛生センター・今後のごみ発電のあり方研究会「今後のごみ発電のあり方について(平成26年7月)」

・「ごみ焼却施設整備の計画・設計要領(2006改訂版)」(社)全国都市清掃会議 2006

・(株)サニックス「廃プラスチックの燃料化・発電」

・三重県企業庁「RDF焼却・発電事業」

・国立環境研究所ニュース15巻1号(1996年4月発行)「研究ノート ごみ発電は得か損か」(森 保文)

・埼玉県「彩の国資源循環工場 オリックス資源循環株式会社」

・エコシステム小坂(株)「施設案内」

・川崎国際環境技術展オンライン 展示会場>エネルギー関連

<コンテンツ改訂について>

2009年12月:初版を掲載 

2021年2月:改訂版に更新


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2024年11月13日 (水) 09:18時点における版

新江東清掃工場(東京都江東区)
日本最大規模のごみ焼却施設で1800t/日の処理能力を持ち、排熱を利用して最大50,000kWの発電を行う

廃棄物発電(はいきぶつはつでん)は、廃棄物をエネルギー源として行う発電[1]ごみ発電とも言われる。再生可能エネルギーであるバイオマス発電に分類される[1]地球温暖化問題に絡む化石燃料代替のための新エネルギーとして注目されるようになった経緯を持つ[2]。 ただし、燃焼させる燃料としての廃棄物にはプラスチックや化学繊維など化石燃料由来のものも混じる理由から、厳密には燃料全てが再生可能エネルギーとは言えない[1]。 廃棄物を効率よく燃料化するためのものとして廃棄物固形燃料(RDF)がある。

概要 

火力発電(汽力式)の模式図
廃棄物発電では可燃ごみを燃料として利用し発電を行う

一般的には、可燃ごみを焼却してその熱を回収し、湯を沸かして蒸気タービンを回すことによって発電を行う火力発電の一種である[1]

廃棄物焼却施設は都市近郊に設置されている理由から、(専用の火力発電施設などと比較して)小規模ではあるものの電力消費が大規模にならざるを得ない都市に直結した分散型電源施設という捉え方がある[1]

廃棄物を燃焼させた後に排出される排出ガスにはボイラーなどの金属部品の腐食を誘発する塩化水素などが多く含まれるため、一般的な火力発電所と比較すると蒸気温度を低温下させる必要があることが発電効率の低下に繋がっている[1]。発電効率は20数%と一般的な火力の半分以下でしかない。[3]

これらの既知の問題点についてはさまざまな新技術を用いて問題を解決する技術的発展を含む努力が行われている[4]

各国の廃棄物発電 

日本 

日本における初期の廃棄物発電は、1935年、東京市深川の市営塵芥焼却工場で、二基のボイラーによる発電(2000kw/h)が計画された記録がある[5]。その後、1990年代後半から発展しており[6]、得られた電力は施設の運用に使用し、残りを2002年に導入されたRPS法[2]の規定を利用して電力会社に売電される[6]。ただし、廃棄物発電施設からの発電に関しては施設そのものが小規模であることに絡み「発電ボイラーを設置しても安定電力供給ができないこと」「ボイラーの設置費用が回収不能であること」「電力会社から余剰電力の買い取りを拒否される事例が多いこと」などが報告されている[7]

2019年度の一般廃棄物総排出量は約4,274万トンであり、このうち直接焼却率が廃棄物総処理量の77.1%、直接最終処分率が同じく0.9%、リサイクル率が19.6%となっており[8]、焼却率の高さが大きな特徴となっている。また2018年度の日本の廃棄物発電による総発電量は約9553GWhで約321万世帯分の消費電力と環境省は計算している[9]

日本ではごみ処理施設を再生可能エネルギー回収施設として見る視点の意識は希薄であるとされ、また廃棄物発電そのものの発電効率も低く、廃棄物発電そのものがごみの減量・リサイクル化に逆行するもの、とする意見がある[6]

またごみの燃焼に伴う環境負荷の観点からみてもごみ処理施設は小規模である方が望ましいともされている[6]

京都市の東部クリーンセンター(醍醐石田団地に隣接する京都市のゴミ焼却処理場。隣接する「東余熱利用センター(温水プール・老人福祉施設・図書館)」へ焼却炉の余熱を供給)では、発電した電力と蒸気を隣接する下水処理場[10]へ供給していたが、合理化および施設の老朽化に伴い2013年3月をもって休止した[11]

2018年より、今治市クリーンセンターは特別養護老人ホームなどを含めた隣接公共施設へ電力を供給している。[12]余った電力は売却し、その売却益を施設の維持管理、市民利用料にあてている。

また東日本大震災において、電力がないために焼却炉が稼働できなかった事例を踏まえ、災害時にはその自家発電機能を利用した焼却炉の稼働と住民の災害避難所としての機能も整備されている。[13]

アメリカ合衆国 

アメリカでは1980年代のエネルギー政策などの影響により廃棄物発電の導入が進んだものの[6]、1990年代には成長が鈍化し、2014年現在では再生可能エネルギー促進策の一環としての導入促進策が進んでいる[6]

欧州連合 

欧州連合(EU)では産業廃棄物の埋め立て規制および再生可能エネルギー政策の影響により、2000年代以降に廃棄物発電の発展が進んでいる[6]

マレーシア 

2011年12月に再生可能エネルギーに関するFIT制度が開始され、これに廃棄物発電も含まれており、2015年までの累積発電量は200メガワットである[14]。マレーシア国内での廃棄物発電は未だ事例が少ないものの、セランゴール州カジャン市近郊で700トン/日の都市ごみを受け入れてのRDF発電が行われており、また同時にごみを分別した上でのリサイクルも行われている[15]。このRDF発電での発電総量は8.9メガワットになっている[15]


廃棄物発電

廃棄物発電とは、ごみを焼却する際の熱を回収し、湯を沸かして蒸気を作り、その蒸気でタービンを回すことにより発電を行う方法である。熱源とするごみの種類・性質によって、いくつかの種類がある[16]

ただし、火力発電所に比べると廃棄物の発熱量は低く又不安定で、さらに廃棄物から発生する燃焼ガスの腐食性も高く、ボイラの温度・圧力を一定以下にとどめる必要があり、一般廃棄物を直接燃焼する我が国の発電効率は高くない。また、これまでは、未利用熱の活用のため焼却炉周辺の温泉施設やプールなど低温の熱供給として活用されて来たが、これら低温域はヒートポンプが得意とするところであり、今後の廃棄物発電の有効活用方法について考えていきたい。

  • 1. 背景:廃棄物発電施設の普及
  • 2. 技術の概要
  •  1)廃棄物発電のしくみ
  •  2)廃棄物発電の事例
  • 3.技術を取り巻く動向
  •  1)廃棄物発電の経済性評価
  •  2)循環型社会形成推進交付金(環境省)
  •  3)高効率化と有効利用に向けた展望

※掲載内容は2021年2月時点の情報に基づいております。

※外部リンクは別ウィンドウで表示します。

1.背景:廃棄物発電施設の普及

我が国で最初の廃棄物発電施設の導入事例は、1965年の大阪市西淀工場とされている。この事例では、発電量が少なかったため、同内の電力消費をまかなう目的で使用されていた。

その後、二度のオイルショックを契機とする石油代替資源を模索する動きの中で、廃棄物発電への期待が高まっていった。廃棄物発電は発電効率の低さが課題だったが、廃プラスチックの増加などに起因する廃棄物発熱量の上昇による焼却熱量の増加や、発電設備(タービン材料や燃焼制御システムなど)の技術革新等によって、発電効率は改善されてきた。また、廃棄物焼却施設の新設・更新時に余熱利用設備を導入する場合や、既存の施設に余熱利用設備を設置する場合に補助金が交付されるなど、各種施策によって導入が促進されている。

2003年に施行が開始された、電気事業者に対して新エネルギー等電気の利用を義務付ける「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」 に基づくRPS制度においては、バイオマス(再生可能な生物資源)性廃棄物の焼却による発電量分は、新エネルギーとして認定された。廃棄物は、そもそも最終処分時の減容化や衛生管理のために焼却が必要となるが、CO2排出量の削減が各業界に求められる中、廃棄物発電は地球温暖化対策の一つとしてみなされている(バイオマス発電については、「バイオマス発電」の解説を参考にされたい)。

2012年7月には再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)が施行され多数の廃棄物発電施設がRPS制度からFIT制度へ移行した。

これらRPS制度やFIT制度の制度的な後押しを受けるも、2018年度末時点において、全国の一般廃棄物焼却施設約1,100ヶ所のうち、発電を行っている、または行う予定のものは379ヶ所にとどまっている(表1)。大規模な施設ほど廃棄物発電を行っている割合が高いため、ごみ処理能力ベースでみると7割程度の廃棄物が廃棄物発電に使用されている。2018年度末時点での総発電量は約96億kWhであり、1世帯当たりの年間電力消費量を2,974kWhとして計算すると、この発電量は約321万世帯の消費電力に相当する。

表1 ごみ焼却施設の発電の状況
区分
年度 発電施設数 総発電能力

(MW)

発電効率

(%)

総発電電力量

(GWh)

2010 306 1,700 11.61 7,210
2011 314 1,740 11.73 7,487
2012 318 1,754 11.92 7,747
2013 328 1,770 12.03 7,966
2014 338 1,907 12.42 7,958
2015 348 1,934 12.59 8,175
2016 358 1,981 12.81 8,762
2017 376 2,089 12.98 9,207
2018 379 2,069 13.58 9,553
(民間) 73 444 11.80 2,170

※(民間)以外は市町村・事務組合が設置した施設で、当該年度に着工した施設及び休止施設を含み、廃止施設を除く。

 ※発電効率は以下の式で示される。

調査では標準ごみ質における仕様値、公称値等を調査した。ただし、仕様値等がない場合は実績値等から算出した。

出典:環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課「日本の廃棄物処理平成30年度版」

2.技術の概要

ここでは、一般廃棄物(可燃ごみなど)および産業廃棄物(紙、木くず、ゴム、廃プラスチックなど)を熱源とした発電について、発電のしくみと廃棄物発電施設の種類を紹介する。廃棄物を含むバイオマスの各種バイオマスエネルギーへの変換技術については、「バイオマス発電」を参照されたい。

1)廃棄物発電のしくみ

廃棄物発電は、熱源とするごみの量や質によっていくつかの種類があるが、基本的な構造は廃棄物の焼却時に発生する熱を利用して蒸気を作り出してタービン(熱エネルギーを運動エネルギーに変換する装置)を回し、電力を得るというものである。

廃棄物発電に使用されるタービンには、背圧タービンと復水タービンの2種類がある。背圧タービンは排気圧を大気圧以上にして使用する方式であり、タービンの構造が比較的簡単で取り扱いも容易であるため、自家発電用設備に導入されることが多い。一方、復水タービンは、排気圧力を真空域まで下げるため熱落差を大きく取ることができ、発電出力の大きな設備に導入される。

廃棄物発電にはボイラ蒸気が必要である。ボイラ蒸気発生量は、ごみ発熱量や供給量の変動等により変化するが、この変動が大きいと発電効率が低下する。また、廃棄物焼却によって発生する燃焼ガスの中には、腐食性ガス(塩化水素など)やダストが含まれることが多く、ボイラ管の腐食の原因となっている。このような課題に対処するため、コンピュータを活用した自動燃焼制御システムを導入し、ボイラ蒸気の発生量を安定化させたり、温度や圧力を制御したりする取り組みも行なわれている。

図1は、廃棄物発電のフロー図である。廃熱ボイラにおいて、焼却炉で発生した高温の排ガスから熱を回収して蒸気を作り出している。蒸気はタービンへ供給されて発電に利用されるほか、蒸気式空気予熱器に送られて焼却炉へ供給する空気の加熱に用いられたりする。近年は、タービンを回した後の中~低温廃熱についても利用技術の開発が進んでおり、冷暖房用の熱源や温水の供給などが実現している。また、熱回収において、ボイラ出口の燃焼排ガスの余熱を利用してボイラ給水を加熱させる機能をもつエコノマイザの伝熱面積を大きくして、より低温まで排ガスを冷却する方法(低温エコノマイザ)などによりボイラ効率の向上が図られている。

図1 全量発電の場合のフローシート例

出典:「ごみ焼却施設整備の計画・設計要領(2006改訂版)」(公社)全国都市清掃会議 2006

2)廃棄物発電の事例

ここでは、代表的な廃棄物発電の事例を紹介する。廃棄物発電には、ごみ焼却施設の焼却炉で発生する廃熱を利用して発電するもののほか、廃棄物由来の燃料を使用する発電施設も稼働している。また、下水処理場で発生する汚泥を乾燥させた「乾燥汚泥」を用いた発電施設や、固形燃料化した廃棄物を用いた発電施設も、廃棄物発電に含まれる。

(1)一般的な廃棄物発電

ごみ焼却施設の焼却炉で発生する廃熱を利用して発電する型式である。焼却炉の種類や搬入される廃棄物の質と量が、発電効率に影響を与える。火力発電のしくみに似ているが、熱源となるごみの中の有害成分によって焼却炉ボイラが腐食(飛灰と塩化水素ガスの複合高温腐食)するのを防ぐため、蒸気温度を400℃と低めにして蒸気タービンを回す。廃棄物組成が異なる欧州において発電効率が30%程度に達する例もあるが、一般廃棄物を直接燃焼する国内の発電効率は20数%と、600℃の火力(蒸気)発電に比べて低い水準に留まる。

図2は、秋田県横手市のごみ処理およびごみ発電のフローである。廃熱ボイラにより焼却熱を有効に利用し、蒸気タービン発電機で発電(発電効率19.6%(計画値))することで、CO2を削減している。発電した電力(2016年度年間発電量:9,999,640kWh)は、処理施設のプラント動力に活用し、余剰電力は売電している。また、寒冷地特有の課題である路面凍結に対して、発生熱をロードヒーティングに利用し、エネルギーの有効利用を図っている。

図2 クリーンプラザよこてのごみ処理およびごみ発電フロー

出典:クリーンプラザよこて「施設紹介」

産業用においては、使用エネルギーコストと廃棄物処理費用削減のために、自社工場用の産業廃棄物発電の設置のみならず、廃棄物の焼却熱を利用した蒸気供給設備の導入が早い時期から行われた例もある。製造副産物、廃棄物であるパルプ黒液や端材、廃タイヤや廃プラスチック、化学反応時の廃ガスや有機汚泥などを燃料としている。

図3は、2003年に苫小牧市で竣工した、世界初の廃プラスチック専焼発電所(蒸気発生量180t/h×2、400℃・6.2MPa、74MW)のしくみである。同施設では、性質の異なるプラスチック廃材を適切に混合することで、常に一定の燃焼状態を作り出し、電力の安定供給に努めている。また、燃焼ガス温度を850℃以上に保つことで、ダイオキシン類の生成を抑えている。発電効率は最大で27.1%と、他の廃棄物発電と比較して高い水準にある。出力74MWは、24,000世帯の消費電力に相当する。

図3 廃プラスチック専焼サーマルリサイクル発電所

出典:(株)サニックス「廃プラスチックの燃料化・発電」

また、バイオマス発電では、鶏糞を燃料とした発電所が、2005年宮崎県で稼働している。海外ではバガス・木くず・パーム椰子廃材・コーン滓(おり)・もみ殻を燃料としたボイラ発電の実例が多く、排出権取引対象事業として期待される。2006年にはタイ南部に、ゴム木製品端材を燃料とした発電プラントが竣工した。このプラントでは、発電する23MWのうち20.2MWを売電している(バイオマスの燃料化技術は、「バイオマス発電」の項目を参照のこと)。

(2)ガス化溶融

ガス化溶融とは、ごみを熱分解し、生成した可燃性ガスとチャー(炭状の未燃物)をさらに高温で燃焼させ、その燃焼熱で灰分・不燃物等を溶融する技術であり、ダイオキシン類の発生を抑制し、廃棄物を減容化するとともに溶融固化物であるスラグも回収・リサイクルできる技術である。しかし、コークスを利用して不足する熱を補っているため、CO2排出の観点では課題がある(詳細は、「ガス化溶融」の項目を参照のこと)。

オリックス資源循環(株)のガス化改質施設(埼玉県大里郡寄居町)では、「ガス化改質方式」を採用し、日量450トンの廃棄物を溶融し、精製ガスによる発電を行っている。

(3)RDF・RPFによる発電

一般廃棄物由来の固形燃料であるRDF(Refuse Derived Fuel)および、産業系廃棄物の古紙及びプラスチックを原料とした固形燃料であるRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)を燃料とした発電施設も、廃棄物発電の一種である。この施設も、焼却施設における廃棄物発電同様、大きな規模で連続的に燃料を供給しつつ運転をすることで、高い発電効率を見込めるため、複数の自治体が共同で発電施設を建設し、発電施設に供給するRDF等を分散して生産する体制が取られる事例が多い(RDFおよびRPFの製造方法については、「廃棄物固形燃料化(RDF、RPF)」の項目を参照のこと)。

図4は、三重ごみ固形燃料発電所における発電のしくみである。同施設では、三重県内の7つのごみ固形燃料製造施設において可燃ごみから作られたRDFを燃料として、焼却・発電を行っている。RDFの製造にエネルギーを消費していることは加味されていないが、発電効率は28%以上で、従来の直接ごみを焼却する発電に比較して高効率である。また、発生する焼却灰はセメントの原材料として再利用を行うなど、施設全体で環境負荷の低減に努めている。

なお、同発電の仕組みにより運営を行っているRDF焼却発電事業については、事業開始以降、現在まで収支不足の状況が続いている。事業運営面では、一層のコスト削減に取り組む必要があるなど課題を抱えている。

図4 三重ごみ固形燃料発電所の発電のしくみ

出典:三重県企業庁「RDF焼却・発電事業」

(4)汚泥を利用した発電

毎年200万トン前後(乾燥重量ベース)発生している活性汚泥の有効利用の方法として、近年、汚泥燃料化が注目され、研究開発が進んでいる。その一つが、下水汚泥を乾燥・炭化させることで、火力発電における化石燃料の代替資源として活用するというものである。東京都は、2007年より東部スラッジプラント汚泥炭化施設を運転しており、年間約10万トン(脱水汚泥ベース)の汚泥資源化を見込んでいる(詳細は、「汚泥処理・資源化」の項目を参照のこと)。

(5)スーパーゴミ発電

火力発電を高効率化する方法として、蒸気タービンとガスタービンとを併用する複合化発電があるが、廃棄物発電でも同様の方法がある。この「ガスタービン複合廃棄物発電システム」は「スーパーゴミ発電」ともいわれ、ガスタービン発電機によって発電を行った後の高温排ガスの熱を利用して、ごみ焼却時の蒸気の温度を上げて蒸気タービン発電機の出力を上げるしくみである。

しかし、ガス単価が高価であることなどにより、採算性に課題があった。国内でのスーパーごみ発電実施施設数は4施設あったが、そのすべての施設が燃料の天然ガス価格の高騰などを背景に廃止した。

3.技術を取り巻く動向

1)廃棄物発電の経済性評価

国立環境研究所では、過去に、廃棄物発電設備の設置・運用に伴い消費されるエネルギーと、廃棄物発電によって得られるエネルギーとの比較検討を試みている。その結果、図5に示すように、発電されるエネルギーの方が、ごみ焼却場に投入されるエネルギー(ごみ焼却場を建設し、ごみを収集し、発電するエネルギーの合計)よりも大きくなることが示された。なお、試算においては日本で稼働しているのと同規模のごみ焼却場を想定しており、この焼却場による発電量はおよそ1万世帯分である。

また、この検討では、廃棄物発電が普及しない最大の原因は、発電コストにあると指摘している。想定したごみ焼却場では、発電した電気がキロワット当たり約10円で売れてようやく発電施設の経費をまかなうことが可能だが、発電出力が安定しないとの理由から、実際の売電価格は5円程度(当時)にとどまっていた。このことから、技術改良により出力を安定することと発電効率を上げることが、廃棄物発電の課題であるとされた。

図5 発電されるエネルギーと、ごみ焼却場建設および運用に必要なエネルギーの比較

出典:国立環境研究所ニュース15巻1号(1996年4月発行)「研究ノート ごみ発電は得か損か」(森 保文)より作成

2)循環型社会形成推進交付金(環境省)

環境省は2005年度より循環型社会形成推進交付金を創設している。この制度は、市町村が、廃棄物の3R(リデュース、リユース、リサイクル)を総合的に推進するため、広域的かつ総合的に廃棄物処理・リサイクル施設整備を計画(循環型社会形成推進地域計画)に位置付けられた施設整備に対し交付金交付を行う。マテリアルリサイクル推進施設やエネルギー回収型廃棄物処理施設(ごみ発電施設、熱回収施設、バイオガス化施設等)等が交付対象施設となり、交付対象経費の1/3が交付される。なかでも高効率ごみ発電施設等の一部の先進的な施設については1/2を交付し、廃棄物発電の普及を促している。

3)高効率化と有効利用に向けた展望

前述のとおり、国内において一般廃棄物を直接燃焼する発電効率が20数%に留まっており、廃棄物発電のエネルギー利用の高効率化を考えた時、熱利用を行うことが有効である。

焼却炉で製造できる蒸気は、おおよそ300~400℃の温度帯であるが、これまでの熱利用の多くは、温泉施設やプールへの温水供給など、最終的な需要温度が50℃未満の低温の熱供給が主であった。しかし、低温の熱供給はヒートポンプの高効率化により省エネルギー効果が限定的になりつつある。エネルギーの有効利用を考えると、より高温の熱需要を満たす方が有用である。例えば、化学、ゴム、建材、食品等の工場において100~300℃の温度帯の蒸気が使用されていることが多く、そういった工場への供給が有効な利用方法となると考えられる。ただし、電気と異なり、工場へ蒸気を供給するには、焼却炉と工場がある程度近接している必要があるため、大規模な事業による導入が必要となってくる。

韓国は、2005年より「国家エコ・インダストリアル・パーク(EIP)計画」を推進し、認定された年ごとに工場間の熱/副産物の交換プロジェクト(EIP事業)を戦略的に推し進めた結果、廃棄物から製造した蒸気を近隣の工場に供給する事業が社会実装されている。

我が国においては、エコシステム小坂(株)が回収した熱エネルギーを自社工場の熱源の他、隣接する小坂製錬(株)に供給し、製錬プロセス等に利用している取組がある。また、令和2年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業のうち、地域の多様な課題に応える脱炭素型地域づくりモデル形成事業)の採択を受け、“脱炭素化に向けた「川崎スマートヒートサプライプロジェクト」FS調査事業”が実施されており、川崎臨海部で幾つかの焼却施設から工場への蒸気供給の実現可能性調査が行われている。

引用・参考資料など

・資源エネルギー庁「RPS法ホームページ」

・環境省「小規模自治体における中間処理に関わる先進事例集」

・環境省「令和2年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」

・環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課「日本の廃棄物処理平成30年度版(令和2年3月)」

・環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課「高効率ごみ発電施設整備マニュアル(平成30年3月改訂)」

・環境省「廃棄物処理施設整備計画」

・藤井実(2019)「廃棄物のエネルギー利用の高効率化に向けた展望」廃棄物資源循環学会誌 vol.30 No.4 pp.233-238

・(一財)日本環境衛生センター・今後のごみ発電のあり方研究会「今後のごみ発電のあり方について(平成26年7月)」

・「ごみ焼却施設整備の計画・設計要領(2006改訂版)」(社)全国都市清掃会議 2006

・(株)サニックス「廃プラスチックの燃料化・発電」

・三重県企業庁「RDF焼却・発電事業」

・国立環境研究所ニュース15巻1号(1996年4月発行)「研究ノート ごみ発電は得か損か」(森 保文)

・埼玉県「彩の国資源循環工場 オリックス資源循環株式会社」

・エコシステム小坂(株)「施設案内」

・川崎国際環境技術展オンライン 展示会場>エネルギー関連

<コンテンツ改訂について>

2009年12月:初版を掲載 

2021年2月:改訂版に更新

脚注

  1. ^ a b c d e f 鈴木 2014, p. 42.
  2. ^ a b 鈴木 2014, p. 43.
  3. ^ 廃棄物発電 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア”. tenbou.nies.go.jp. 2021年8月21日閲覧。
  4. ^ 鈴木 2014, p. 42-43.
  5. ^ 「目鼻ついてきた塵芥の発電所 焼いた熱量で四萬戸点燈 年額十五萬円の純益」『東京朝日新聞』昭和10年1月22日
  6. ^ a b c d e f g 鈴木 2014, p. 3.
  7. ^ 鈴木 2014, p. 44.
  8. ^ 一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和元年度)について”. 環境省. 2021年4月1日閲覧。
  9. ^ (イ)ごみ発電”. 環境省. 2021年4月1日閲覧。
  10. ^ 石田水環境保全センター
  11. ^ 「東部クリーンセンター」の持込ごみの受付及び「東余熱利用センター」の営業の終了について” (PDF). 京都市環境政策局 (2012年12月4日). 2013年7月1日閲覧。
  12. ^ バリクリーン(今治市クリーンセンターの愛称) (PDF)
  13. ^ 都市計画に関する公聴会の見解書 - 今治市] これによると愛媛大学脇本忠明名誉教授の指導の下、クリーンセンターの設計が行われた。「東日本大震災以後は、ごみ発電が可能な施設の重要性というものは極めて重く認識すべきであり、今治市のごみ処理施設においても、集約化を行い高効率発電が可能な施設を目指すとともに、地域の防災拠点としての施設整備について最大限の配慮をすべきであるという見解。」
  14. ^ 環境省 2011, p. 57.
  15. ^ a b 環境省 2011, p. 59.
  16. ^ 廃棄物発電 - 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア”. tenbou.nies.go.jp. 2024年11月13日閲覧。

参考文献 

  • 鈴木, 良典「廃棄物発電の現状と課題」(PDF)『リファレンス』第64巻第5号、国立国会図書館調査及び立法考査局、2014年5月、2018年6月15日閲覧 
  • "廃棄物発電の現状" (PDF). 環境省. May 2011. 2018年6月15日閲覧

外部リンク

関連項目