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{{複数の問題 |正確性=2011-6 |独自研究=2011-6}}
'''自然放射線'''(しぜんほうしゃせん)とは[[自然]]界に存在する[[放射線]]のことである。
'''自然放射線'''(しぜんほうしゃせん)とは、人間の活動とは無関係に自然界にもともと存在している[[放射線]]の総称である<ref name="atomika_natural">[https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_09-01-01-01.html 原子力百科事典ATOMICA【自然放射線(能)】]</ref>。自然放射線による[[被曝]]の内、人間の活動により増幅された放射線による被曝は人工被曝に分類される場合もある。
{{See also|環境放射線|[[原子放射線の影響に関する国連科学委員会#被曝の分類|UNSCAREによる被曝の分類]]}}


== 概説 ==
放射線といえば[[原子力発電]]や[[核兵器]]、[[X線]]検査が放射源とされることが多いが、自然界にも[[ラジウム]]温泉や宇宙から地上に降り注いでくる[[宇宙線]]のようにあらゆる場所で常に微弱な放射線が照射され、人を含む全ての生物は常に微弱な被爆に曝されている。
自然放射線の分類方法は幾通りもある。例えば、その起源に着目して分類するならば、(1)[[宇宙線]]、(2)天然放射性核種(主に原始放射性核種)からの放射線の二つに分類することができる<ref name="atomika_natural" />。


人間は[[宇宙線]]から年間ほぼ390 μSv(マイクロ[[シーベルト]]、= 0.39 mSv)、地殻・建材などに含まれている自然放射性核種から年間480 μSv(= 0.48 mSv)の外部被曝を受けている<ref name="ichikawa1999">{{Cite book |和書 |author=市川定夫 |year=1999 |title=環境学-遺伝子破壊から地球規模の環境破壊まで |publisher=藤原書店 |page=232-235 |id= |isbn=4-89434-130-1 |quote= }}</ref><ref>{{wayback|url=http://www.asahikawa-med.ac.jp/hospital/hoshasenbu/qa.html|date=20160304100208}}</ref>。そして体内に存在している自然放射性核種(カリウム40、炭素14)から年間ほぼ290 μSv(= 0.29 mSv)の内部被曝を受けている。これらに加え、空気中に含まれている[[ラドン]]から年間約1260μSv(= 1.26 mSv)の被曝を受けている。これらを合わせた自然界からの年間被曝線量は世界平均で2400μSv(= 2.4 mSv)前後<ref name="中電">[http://hamaoka.chuden.jp/radioactivity/life.html 中部電力|日常生活と放射線 - 放射線のはなし]</ref><ref name="UNSCEAR">国連科学委員会(UNSCEAR)2000年報告(「原子力・エネルギー」図面集2009)</ref>、日本においては2100μSv(= 2.1 mSv)とされている(2011年推定値)<ref name="KEK">{{PDFlink|[http://rcwww.kek.jp/kurasi/page-41.pdf 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構>放射線科学センター >暮らしの中の放射線>自然放射線の量]}}</ref>。
人工的に核種変化を起こさせた[[放射性物質]]を除けば、全ての放射性物質は自然界に存在しているものであるが、天然ウラン鉱石のような比較的強い放射能を持つ物質は人間が生活する空間ではまれであり、自然放射線の多くはこれらの強い放射性物質以外の放射源から放たれている。


自然放射線のうち、自然放射性核種(天然放射性核種)からのものに着目すると、《体内被曝》および《地殻からの体外被曝》がそれに相当し<ref name="ichikawa1999" />、その大部分は[[カリウム40]]によるものである。カリウムという元素は環境中に多量に存在していて生物にとって重要な元素であり、カリウム40は天然に存在するカリウムのうちの0.01%強を占めているため、生物がカリウムを取り込む時に必ずカリウム40が体内に摂取される<ref name="ichikawa1999" />。カリウム40に次ぐ被曝をもたらしている自然放射性核種は、ラドンの核種<ref group="注">ここで言うラドンの核種には、ウラン238の崩壊系列で生じる[[ラドン222]]と、[[トリウム232]]の崩壊系列で生じる[[ラドン220]]が存在する</ref>である<ref name="ichikawa1999" />。
== 生活環境の放射線 ==
宇宙からの放射線は年間2.5ミリ[[シーベルト]]<ref>ジョゼフ・ヴァイス著・本多力訳 『核融合エネルギー入門』 白水社、2004年5月30日。ISBN 4-560-05875-X</ref>や0.39ミリシーベルト<ref name = "放射線利用の基礎知識">東嶋和子著 『放射線利用の基礎知識』 講談社、2006年12月20日。ISBN 4-06-257518-3</ref>といったレベルであり、高度が高くなると宇宙からの放射線は空気という遮蔽物が減るために、1,500mごとに約2倍になる。国際線のジェット機では国内線より長時間高高度を飛行するために比較的強く放射を受ける。


== 宇宙線によるもの ==
地下からは大地に含まれる放射性物質からの放射線によって、年間0.48ミリシーベルト程度<ref name = "放射線利用の基礎知識"/>放射されている。これ地下になると強まるために、例えばトンネル内では平地比べて格段に(絶対量ではごく微弱ながら)被爆数値が高くなる。
宇宙から飛来する放射線の量とされる数値は資料によって異なっており、市川の文献では年間ほぼ300 μSv(= 0.3 mSv)、ジョゼフ・ヴァイスの文献では年間2.5 mSv(= 2,500 μSv)<ref>ジョゼフ・ヴァイス著・本多力訳 『核融合エネルギー入門』 白水社、2004年5月30日。ISBN 4-560-05875-X</ref>、『放射線利用の基礎知識』では0.39 mSv(= 390 μSv)<ref name="放射線利用の基礎知識">[[東嶋和子]]著 『放射線利用の基礎知識』 講談社、2006年12月20日。ISBN 4-06-257518-3</ref>などとされる。


高度が高くなると宇宙からの放射線は空気という遮蔽物が減るために、1,500mごとに約2倍になる。国際線のジェット機では国内線より長時間高高度を飛行するために比較的強く放射を受ける。通常の飛行高度は1万m程度なので<ref>飯田博美編『放射線概論』 通商産業研究社、2005年7月20日。ISBN 4-86045-101-5</ref>、これらの値から計算してみれば
空気中からも年間1.26ミリシーベルト<ref name = "放射線利用の基礎知識"/>の被爆がある。地球内部から漏れ出て自然に存在する[[ラドン]]などの気体がその微弱な放射源である。


<math>2^{10000/1500}\approx102</math>
人間が日ごろ口にする安全な水や食物にも極ごく微弱な放射性物質がわずかながら含まれているために、常に体内被爆しているといえる。この被爆量は年間0.29ミリシーベルト程度<ref name = "放射線利用の基礎知識"/>とされている。この場合の放射性物質は1つは宇宙線によって生成された空中の[[三重水素]](トリチウム)や[[炭素]]14などであり、地殻由来の[[カリウム]]40、[[ルビジウム]]87、[[ポロニウム]]210、[[鉛]]210が、[[ウラン]]や[[トリウム]]、ラジウムと共に安全な食物を経由して体内に取り込まれてごく微弱な体内被爆の元となっている。


と地上の約100倍もの放射線量に被曝することになる。
== 積極的な環境放射線利用 ==
「放射能泉」では、ラドン222の濃度が74[[ベクレル]]/リットル以上が「ラドン温泉」であり、ラジウムが1億分の1グラム/リットル以上含まれるのが「ラジウム温泉」である。


東京-ニューヨーク間の往復の飛行では、0.11~0.16 mSv(= 110~160 μSv)の放射線を受けるといわれている<ref name="電事連">{{Cite web|和書|url=http://www.fepc.or.jp/nuclear/houshasen/seikatsu/shizenhoushasen/index.html |title=自然放射線 |publisher=電気事業連合会 |accessdate=2017-06-30}}</ref>。また、成田-ニューヨーク間を搭乗する航空機乗務員に実際に被ばく線量計を装着させて実測したところ、年に800-900時間搭乗すると被ばく線量は年間約3 mSv(= 3,000 μSv)になるという報告がある<ref>http://tech.eng.niigata-u.ac.jp/pdf4/014.pdf{{リンク切れ|date=2017年6月}}</ref>。
[[オーストリア]]のバドガシュタインのラドン温泉ではラドン222の濃度が110[[ベクレル]]/リットル以上で放射能療養泉と呼ばれる。世界中に、療養のために活用されるラドン温泉やラドン洞窟が存在する。


[[地球磁気圏]]内である高度400km前後の上空で周回する[[国際宇宙ステーション]]滞在中の[[宇宙飛行士]]の被曝線量は、1日当たり1 mSv(= 1,000 μSv)程度となる<ref>[https://iss.jaxa.jp/med/research/radiation/ 放射線被ばく管理 - JAXA]</ref>。地球磁気圏外の宇宙空間でも同様に被曝線量は1日当たり1 mSv(= 1,000 μSv)程度と言われている<ref>[https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_09-01-06-04.html 宇宙放射線による年間被ばく - ATOMICA]</ref>。惑星間宇宙空間での被ばく量は年間400-900 mSv (1日当たり1-3 mSv) と言われている<ref name="icrc2005.tifr.res.in">{{cite journal|title=The Cosmic Ray Radiation Dose in Interplanetary Space – Present Day and Worst-Case Evaluations |journal=International Cosmic Ray Conference |volume=2 |date=3 August 2005<!--date of Pune conference start--> |access-date=8 March 2008 |author=R.A. Mewaldt |url=http://www.srl.caltech.edu/ACE/ASC/DATA/bibliography/ICRC2005/usa-mewaldt-RA-abs1-sh35-oral.pdf |pages=103 |location=29th [[International Cosmic Ray Conference]] Pune (2005) 00, 101-104|display-authors=etal|bibcode=2005ICRC....2..433M }}</ref>。
こういった放射線による健康への良い効果は「[[ホルミシス効果|放射線ホルミシス]]」と呼ばれ、[[ミズーリ大学]]のトーマス・D・ラッキーがアメリカ保健物理学会誌1982年12月号上で発表した論文で最初に使用された言葉である。この仮説では少しの放射線は体のさまざまな活動を活性化するとされていて、他の複数の研究者がこの効果を支持している<ref name = "放射線利用の基礎知識"/>。


宇宙飛行士の[[ワレリー・ポリャコフ]]は、1994年1月8日に[[ソユーズTM-18]]で打ち上げられ、[[ミール|ミールLD-4]]に437.7日間滞在し、単一ミッションでの最長宇宙滞在時間の記録を有する<ref>[http://www.astronautix.com/p/polyakov.html Encyclopedia Astronautica]</ref>([[宇宙飛行の記録一覧]]も参照)。この宇宙飛行での被曝線量は400mSvを超えていると推定される。
== 原子力発電所由来の放射線 ==
原子力発電所の近くに住む人は、世間を騒がせるような核事故がなくても微量な核物質が常に漏れ出して放射線による被爆が進んでいるのではないかと言う不安を持っても当然かもしれない。


[[太陽フレア]]が発生すると、多くの[[X線]]、[[ガンマ線]]、[[高エネルギー荷電粒子]]が発生する。またフレアに伴い、太陽コロナ中の物質が惑星間空間に放出される([[コロナ質量放出]])ことが多い。また[[地球磁気圏]]外(例えば月面滞在や火星有人飛行時)では、[[太陽フレア]]時のX線およびガンマ線による被曝が、人の[[致死量]]を超えることもある。
原子力発電所の敷地境界での許容値は年間0.05ミリシーベルトの上昇である。この値は許容限界であって、実際は0.001ミリシーベルト以下であり安全は今の所、確保されているといえる<ref name = "放射線利用の基礎知識"/>。


地球磁気圏外に滞在したことのあるアポロ月面宇宙飛行士は、地球[[低軌道]]を超えない宇宙飛行士と比較して心血管疾患による死亡率が4,5倍高かったことが報告されている。この原因として血管内皮に対する深宇宙放射線の影響の可能性が指摘されている<ref>Michael D. Delp, et al., '[https://www.nature.com/articles/srep29901 Apollo Lunar Astronauts Show Higher Cardiovascular Disease Mortality: Possible Deep Space Radiation Effects on the Vascular Endothelium]', ''scientific reports'' 6, Article number: 29901 (2016), 2022/12/12閲覧</ref>。
== 医療被曝 ==
普通に生活している人が自然放射線以外で放射線被曝するものに医療被曝がある。少しデータが古いが国連科学委員会1992年の報告では日本人は医療検査に伴う被曝に世界平均の3.7倍もの被曝を受けており、自然放射線の1.48ミリシーベルトに対して2.25ミリシーベルトの医療被曝があるとされた。現在がどうなっているかデータは無いが、CTを1回受けるだけで6.9ミリシーベルト、胃のX線検査では0.6–2.7ミリシーベルトの医療被曝があるので、先進国では自然放射線より医療検査での被曝が進んでいる恐れがある<ref name = "放射線利用の基礎知識"/>。


== 天然放射性核種(自然放射性核種)からのもの ==
== 出典 ==
=== 地殻中の自然放射性核種からの放射線 ===
<references/>
地下からは大地に含まれる放射性物質から、年間0.48 mSv(= 480 μSv)程度<ref name = "放射線利用の基礎知識"/>放射線が発生している。これ地下になると強まるために、例えばトンネル内では放射線が僅かくなる。

地中の放射線物質は[[花崗岩]]に多く含まれており、この岩石の多い地域では自然放射線が強くなる。大地からの放射線は、地域により放射線の強弱が出る主要な要因である。

=== 飲食物 ===
人が日ごろ口にする水や食物にも極微量の放射性核種が含まれているために、常に体内被曝しているといえる。この被曝量は市川の文献では、年間ほぼ250 μSv(= 0.25 mSv)である<ref name="ichikawa1999" />、『放射線利用の基礎知識』では年間0.29 mSv(= 290 μSv)程度<ref name = "放射線利用の基礎知識"/>とされている。

主な内部被曝源としては[[カリウムの同位体|カリウム40]]や[[炭素14]]のような天然に存在する放射性同位体がある。体重60kgの人体にも、カリウム40で4,000[[ベクレル]]、炭素14で2,500ベクレルの天然の放射線物質があると言われている<ref>[http://www.nifs.ac.jp/j_plan/j_004_004.html よくあるご質問、自然科学研究機構-核融合科学研究所]</ref>。

食品の種類によって放射性物質の量は異なり[[バナナ]]、[[ジャガイモ]]、[[インゲン豆]]、[[種実類|ナッツ]]、[[ヒマワリ]]の種は自然放射能をやや多く持っている<ref>{{PDFlink|[https://web.archive.org/web/20080924130012/http://www.ocrwm.doe.gov/curriculum/unit2/pdf/lesson3activity3.pdf Internal Exposure from Radioactivity in Food and Beverages]}}(2008年9月24日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。最も自然放射能が多いのはブラジルナッツで、1kgあたり244.2ベクレルもあるが<ref>[http://www.orau.org/PTP/collection/consumer%20products/brazilnuts.htm Brazil Nuts - ORAU]</ref>毎日食べても人体に影響の無いレベルにすぎない。

=== 大気中の放射線 ===
空気からも年間1.26 mSv(= 1,260 μSv)<ref name = "放射線利用の基礎知識"/>の被曝がある。地球内部から漏れ出て自然に存在する[[ラドン]]などの気体がその微弱な放射源である。空気中からのラドンなどの放射性物質の摂取は、呼吸器系に影響を及ぼし、肺癌などのリスク要因になりうるとして、[[世界保健機関]]では屋内ラドン濃度が100ベクレル/m<sup>3</sup>未満に低減するよう注意を呼びかけている<ref>{{cite web |url=http://whqlibdoc.who.int/publications/2009/9789241547673_eng.pdf |title=WHO HANDBOOK ON INDOOR RADON |author= |date=2009 |work=World Health Organization |accessdate=2011/5/28 }} [[国立保健医療科学院]]による邦訳:[http://www.niph.go.jp/soshiki/seikatsu/radon/WHO_radon_handbook.pdf WHO 屋内ラドンハンドブック]</ref>。

== 自然放射線の高さによって知られる地域==
{{main|環境放射線|放射能泉}}
このような土地は、high level natural radiation areas (HLNRAs)と呼ばれる<ref name=ra/>。

[[モナズ石]](モナザイト)や[[バストネサイト]]などには、放射性ウラン・トリウムが含まれ、温泉などに含まれるラジウムからは高い放射線が確認される<ref>[https://doi.org/10.2473/journalofmmij.128.554 希土類鉱石に含まれる放射性核種の取り扱いについて]</ref><ref>[https://www.unscear.org/docs/reports/2008/09-86753_Report_2008_Annex_B.pdf SOURCES AND EFFECTS OF IONIZING RADIATION: UNSCEAR 2008: Report to the General Assembly with Scientific Annexes: VOLUME I] [[原子放射線の影響に関する国連科学委員会]]</ref><ref name=kan>[https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h28kisoshiryo/h28kiso-02-05-05.html 大地の放射線(世界)] 大地の放射線(世界)</ref>。
*[[ケーララ州]] - インド南部。モナズ石(モナザイト)が海岸に自然に堆積していることから。
*[[ラームサル]] - イラン。ラジウムを含む温泉が湧くため、高い放射線が確認される<ref name=ra>[https://doi.org/10.1016/S0265-931X(02)00108-X Exposure to 226Ra from consumption of vegetables in the high level natural radiation area of Ramsar-Iran]</ref>。
*[[オルヴィエート]] - イタリア共和国中部。
*[[陽江市]] - 中国。
*[[グァラパリ]] - ブラジル。モナズ石(モナザイト)の堆積エリアがある<ref>[https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7345962/ Measurements of environmental radiation exposure dose rates at selected sites in Brazil]</ref>。

これらの地域で、がんの死亡率や発症率の顕著な増加は確認されていない<ref name=kan/><ref name=ra/>。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{Reflist|group="注"}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
*[[シーベルト]]
*[[自然放射能]]
*[[ベクレル]]
*[[環境放射線]]
*[[被曝]]
*[[放射線障害]]
*[[放射線療法]]
*[[放射線療法]]
*[[放射能泉]]
*[[放射性同位元素等の規制に関する法律]]
*[[バナナ等価線量]] バナナがカリウム40による自然放射線を出すことを利用した指標


== 外部リンク ==
{{DEFAULTSORT:しせんほうしやせん}}
* [https://atomica.jaea.go.jp/ 原子力百科事典 ATOMICA トップページ]
**[https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_09-01-01-01.html 自然放射線(能)]
**[https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_18-04-02-01.html 放射能と放射線の単位]
**[https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_09-01-05-04.html 自然放射線による被ばく]
**[https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_09-01-05-05.html 世界における自然放射線による放射線被ばく]
*{{科学映像館|genre=yoneproduction|id=4735}}


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[[Category:放射線]]

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[[sv:Bakgrundsstrålning]]
[[zh:背景輻射]]

2024年6月3日 (月) 00:47時点における最新版

自然放射線(しぜんほうしゃせん)とは、人間の活動とは無関係に自然界にもともと存在している放射線の総称である[1]。自然放射線による被曝の内、人間の活動により増幅された放射線による被曝は人工被曝に分類される場合もある。

概説

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自然放射線の分類方法は幾通りもある。例えば、その起源に着目して分類するならば、(1)宇宙線、(2)天然放射性核種(主に原始放射性核種)からの放射線の二つに分類することができる[1]

人間は宇宙線から年間ほぼ390 μSv(マイクロシーベルト、= 0.39 mSv)、地殻・建材などに含まれている自然放射性核種から年間480 μSv(= 0.48 mSv)の外部被曝を受けている[2][3]。そして体内に存在している自然放射性核種(カリウム40、炭素14)から年間ほぼ290 μSv(= 0.29 mSv)の内部被曝を受けている。これらに加え、空気中に含まれているラドンから年間約1260μSv(= 1.26 mSv)の被曝を受けている。これらを合わせた自然界からの年間被曝線量は世界平均で2400μSv(= 2.4 mSv)前後[4][5]、日本においては2100μSv(= 2.1 mSv)とされている(2011年推定値)[6]

自然放射線のうち、自然放射性核種(天然放射性核種)からのものに着目すると、《体内被曝》および《地殻からの体外被曝》がそれに相当し[2]、その大部分はカリウム40によるものである。カリウムという元素は環境中に多量に存在していて生物にとって重要な元素であり、カリウム40は天然に存在するカリウムのうちの0.01%強を占めているため、生物がカリウムを取り込む時に必ずカリウム40が体内に摂取される[2]。カリウム40に次ぐ被曝をもたらしている自然放射性核種は、ラドンの核種[注 1]である[2]

宇宙線によるもの

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宇宙から飛来する放射線の量とされる数値は資料によって異なっており、市川の文献では年間ほぼ300 μSv(= 0.3 mSv)、ジョゼフ・ヴァイスの文献では年間2.5 mSv(= 2,500 μSv)[7]、『放射線利用の基礎知識』では0.39 mSv(= 390 μSv)[8]などとされる。

高度が高くなると宇宙からの放射線は空気という遮蔽物が減るために、1,500mごとに約2倍になる。国際線のジェット機では国内線より長時間高高度を飛行するために比較的強く放射を受ける。通常の飛行高度は1万m程度なので[9]、これらの値から計算してみれば

と地上の約100倍もの放射線量に被曝することになる。

東京-ニューヨーク間の往復の飛行では、0.11~0.16 mSv(= 110~160 μSv)の放射線を受けるといわれている[10]。また、成田-ニューヨーク間を搭乗する航空機乗務員に実際に被ばく線量計を装着させて実測したところ、年に800-900時間搭乗すると被ばく線量は年間約3 mSv(= 3,000 μSv)になるという報告がある[11]

地球磁気圏内である高度400km前後の上空で周回する国際宇宙ステーション滞在中の宇宙飛行士の被曝線量は、1日当たり1 mSv(= 1,000 μSv)程度となる[12]。地球磁気圏外の宇宙空間でも同様に被曝線量は1日当たり1 mSv(= 1,000 μSv)程度と言われている[13]。惑星間宇宙空間での被ばく量は年間400-900 mSv (1日当たり1-3 mSv) と言われている[14]

宇宙飛行士のワレリー・ポリャコフは、1994年1月8日にソユーズTM-18で打ち上げられ、ミールLD-4に437.7日間滞在し、単一ミッションでの最長宇宙滞在時間の記録を有する[15]宇宙飛行の記録一覧も参照)。この宇宙飛行での被曝線量は400mSvを超えていると推定される。

太陽フレアが発生すると、多くのX線ガンマ線高エネルギー荷電粒子が発生する。またフレアに伴い、太陽コロナ中の物質が惑星間空間に放出される(コロナ質量放出)ことが多い。また地球磁気圏外(例えば月面滞在や火星有人飛行時)では、太陽フレア時のX線およびガンマ線による被曝が、人の致死量を超えることもある。

地球磁気圏外に滞在したことのあるアポロ月面宇宙飛行士は、地球低軌道を超えない宇宙飛行士と比較して心血管疾患による死亡率が4,5倍高かったことが報告されている。この原因として血管内皮に対する深宇宙放射線の影響の可能性が指摘されている[16]

天然放射性核種(自然放射性核種)からのもの

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地殻中の自然放射性核種からの放射線

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地下からは大地に含まれる放射性物質から、年間0.48 mSv(= 480 μSv)程度[8]の放射線が発生している。これは地下になると強まるために、例えばトンネル内では放射線が僅かに強くなる。

地中の放射線物質は花崗岩に多く含まれており、この岩石の多い地域では自然放射線が強くなる。大地からの放射線は、地域により放射線の強弱が出る主要な要因である。

飲食物

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人が日ごろ口にする水や食物にも極微量の放射性核種が含まれているために、常に体内被曝しているといえる。この被曝量は市川の文献では、年間ほぼ250 μSv(= 0.25 mSv)である[2]、『放射線利用の基礎知識』では年間0.29 mSv(= 290 μSv)程度[8]とされている。

主な内部被曝源としてはカリウム40炭素14のような天然に存在する放射性同位体がある。体重60kgの人体にも、カリウム40で4,000ベクレル、炭素14で2,500ベクレルの天然の放射線物質があると言われている[17]

食品の種類によって放射性物質の量は異なりバナナジャガイモインゲン豆ナッツヒマワリの種は自然放射能をやや多く持っている[18]。最も自然放射能が多いのはブラジルナッツで、1kgあたり244.2ベクレルもあるが[19]毎日食べても人体に影響の無いレベルにすぎない。

大気中の放射線源

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空気からも年間1.26 mSv(= 1,260 μSv)[8]の被曝がある。地球内部から漏れ出て自然に存在するラドンなどの気体がその微弱な放射源である。空気中からのラドンなどの放射性物質の摂取は、呼吸器系に影響を及ぼし、肺癌などのリスク要因になりうるとして、世界保健機関では屋内ラドン濃度が100ベクレル/m3未満に低減するよう注意を呼びかけている[20]

自然放射線の高さによって知られる地域

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このような土地は、high level natural radiation areas (HLNRAs)と呼ばれる[21]

モナズ石(モナザイト)やバストネサイトなどには、放射性ウラン・トリウムが含まれ、温泉などに含まれるラジウムからは高い放射線が確認される[22][23][24]

  • ケーララ州 - インド南部。モナズ石(モナザイト)が海岸に自然に堆積していることから。
  • ラームサル - イラン。ラジウムを含む温泉が湧くため、高い放射線が確認される[21]
  • オルヴィエート - イタリア共和国中部。
  • 陽江市 - 中国。
  • グァラパリ - ブラジル。モナズ石(モナザイト)の堆積エリアがある[25]

これらの地域で、がんの死亡率や発症率の顕著な増加は確認されていない[24][21]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ ここで言うラドンの核種には、ウラン238の崩壊系列で生じるラドン222と、トリウム232の崩壊系列で生じるラドン220が存在する

出典

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  1. ^ a b 原子力百科事典ATOMICA【自然放射線(能)】
  2. ^ a b c d e 市川定夫『環境学-遺伝子破壊から地球規模の環境破壊まで』藤原書店、1999年、232-235頁。ISBN 4-89434-130-1 
  3. ^ アーカイブ 2016年3月4日 - ウェイバックマシン
  4. ^ 中部電力|日常生活と放射線 - 放射線のはなし
  5. ^ 国連科学委員会(UNSCEAR)2000年報告(「原子力・エネルギー」図面集2009)
  6. ^ 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構>放射線科学センター >暮らしの中の放射線>自然放射線の量 (PDF)
  7. ^ ジョゼフ・ヴァイス著・本多力訳 『核融合エネルギー入門』 白水社、2004年5月30日。ISBN 4-560-05875-X
  8. ^ a b c d 東嶋和子著 『放射線利用の基礎知識』 講談社、2006年12月20日。ISBN 4-06-257518-3
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関連項目

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外部リンク

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