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[[File:Kyle-cassidy-steampunk.jpg|thumb|スチームパンク風の写真]]
{{独自研究|date=2011年4月}}
[[File:Aerial house3.jpg|thumb|upright|"Maison tournante aérienne" (旋回住宅)。[[アルベール・ロビダ]]が自著『20世紀』につけた挿絵。19世紀に20世紀の生活を想像した作品]]
{{文学}}
'''スチームパンク'''([[英語]]: steampunk)とは、[[サイエンス・フィクション]]、[[ファンタジー]]、[[歴史改変SF|歴史改変もの]]、[[スペキュレイティブ・フィクション]]のサブジャンルの1つで、1980年代から1990年代初めごろまで特に人気を博した<ref name="Clute-Grant">{{Cite book|editor1-first=John |editor1-last=Clute |editor2-first=John |editor2-last=Grant |others=Contributing editors: Mike Ashley, Roz Kaveney, David Langford, Ron Tiner |title=The Encyclopedia of Fantasy |edition=Rev. |year=1999 |month=February |origyear=First published 1997 |publisher=St. Martin's Griffin |location=New York |isbn=978-0-312-19869-8 |page= |pages=895–896 |chapter= Steampunk |quote=STEAMPUNK A term applied more to [[サイエンス・フィクション|science fiction]] than to fantasy, though some tales described as steampunk do cross genres. ... Steampunk, on the other hand, can be best described as technofantasy that is based, sometimes quite remotely, upon technological [[時代錯誤|anachronism]]. |ref=Clute-Grant}}</ref>。[[蒸気機関]]が広く使われている設定で、[[ヴィクトリア朝]]のイギリスや[[西部開拓時代]]のアメリカを舞台とすることが多く、そのような中にSFやファンタジーの要素を組み込んでいる。ヴィクトリア朝の人々が思い描いていたであろう[[レトロフューチャー]]な[[時代錯誤]]的[[テクノロジー]]または未来的技術革新を登場させ、同時にヴィクトリア朝の[[ファッション]]、[[文化]]、[[建築]]スタイル、[[芸術]]を描く。スチームパンク的テクノロジーとしては、[[ハーバート・ジョージ・ウェルズ|H・G・ウェルズ]]や[[ジュール・ヴェルヌ]]の作品にでてくるような架空の機械、最近の作家では[[フィリップ・プルマン]]、[[スコット・ウエスターフェルド]]、[[チャイナ・ミエヴィル]]の作品にでてくるような架空の機械がある。
'''スチームパンク'''([[英語]]:Steampunk)とは、[[サイバーパンク]]より派生したSFのサブジャンルのひとつ。


他のスチームパンクの例としては、[[飛行船]]、[[アナログコンピュータ]]、[[チャールズ・バベッジ]]と[[エイダ・ラブレス]]の[[解析機関]]のような[[機械式計算機]]といったテクノロジーを[[歴史改変SF|歴史改変]]的に扱うものもある。
== 概要 ==
スチームパンクは、一般的な意味あいとしては'''[[産業革命]]の原動力となった[[蒸気機関]]が、現実の歴史の絶頂期のありようを超越して発展した技術体系や社会を前提としたSF作品'''と概説することができる。


文学以外では、様々な現代の実用的オブジェクトが職人によって擬似ヴィクトリア朝風の「スチームパンク」スタイルに変換・装飾されており、スチームパンクと称される芸術家や音楽家もいる。
その世界観の基本として、一般的には動力源として([[内燃機関]]と比較した際に小型化がより困難な[[外燃機関]]である)蒸気機関の普及があり、よりコンパクトな内燃機関や大出力の[[電動機]]などが発展・普及した現実の技術史を参考にしながらも、これら制約の大きな動力をどのように発展させ、またそれらによって成立する社会を描くかというものがある。言ってしまえば、どのようにして'''有り得たかもしれない蒸気科学を描くか'''が、スチームパンク作品の面白さの一つと言える。


== 起源 ==
一方、これらの作品や舞台を単にそのスタイルのみ模倣した作品がスチームパンクを名乗ることもあり、現在では(とくに日本の漫画やアニメ、ゲーム作品などにおいては)スチームパンクを標榜していながら内燃機関や電力などが用いられるなど、単にレトロ風の技術やスタイル・デザインの記号として「スチームパンクという造語」が用いられる例も少なくない。
今ではスチームパンクとされる作品が1960年代から1970年代にも出版されていたが、「スチームパンク」という用語は1980年代後半に「[[サイバーパンク]]」をもじって派生した。SF作家[[K・W・ジーター]]が、[[ティム・パワーズ]](『アヌビスの門』、1983)、[[ジェイムズ・P・ブレイロック]](『ホムンクルス』、1986)、そして自身(''[[:en:Morlock Night|Morlock Night]]'', 1979 と『悪魔の機械』、1987)の作品群を集合的に表す用語を探していて「スチームパンク」を思いついたと言われている<ref>ジェイムズ・P・ブレイロック、『ホムンクルス』、早川書房、387p〜396p(SF翻訳家[[山岸真]]の解説)</ref>。これらの作品はいずれも19世紀を舞台としていて、実際のヴィクトリア朝の[[スペキュレイティブ・フィクション]](例えば[[ハーバート・ジョージ・ウェルズ|H・G・ウェルズ]]の『[[タイム・マシン (小説)|タイム・マシン]]』)の雰囲気を真似ている。SF雑誌[[ローカス (雑誌)|ローカス]]1987年4月号に掲載された手紙で、ジーターは次のように書いている。


{{Quote|ローカス様
これらの現状を内包する「広義としてのスチームパンク」においては、時系列としてはおおむね19世紀から20世紀初頭にかけて、[[産業革命]]から[[世界大戦]]頃までの社会を舞台とする作品が多い。主要な動力源として[[蒸気機関]]が用いられており、[[人体改造]](人体への歯車埋め込み、インプラント)、[[機械式卓上計算機|歯車式計算機]]([[階差機関]]・[[解析機関]])や機械式[[アナログコンピュータ]]、[[飛行船]]などの飛行機以前の飛行機械、マスコミュニケーションの存在([[新聞|ニュースペーパー]]、[[ラジオ]]放送)などが[[ガジェット]]として登場する例が多く、また作品によっては、当時の未発達な科学的知見にもとづく誤解や後に修正ないし撤回された学説(例えば[[エーテル (物理)|エーテル]]宇宙論など)をネタとして採用する作品のほか、オカルト的な[[魔術]]や[[霊魂]]、[[ホムンクルス]]などと呼ばれる[[人造人間]]を取り扱う作品も存在する。


同封したのは1979年の私の長編小説 ''Morlock Night'' のコピーです。それを Faren Miller に渡していただけると大変うれしいです。これは「パワーズ/ブレイロック/ジーターのファンタジー3人組」の中で誰が最初に「イカれた歴史」を書いたかという重要な議論の証拠となるものです。ローカス3月号で彼女のレビューを拝見し、とてもうれしく思いました。
このように、現実の[[歴史]]や技術史を超越したテクノロジー(技術体系)を前提とした世界や社会を描く作品は俗に[[テックパンク]](Tech Punks)とも呼ばれ、[[サイバーパンクからの派生|サイバーパンクから派生]]したサブジャンルがいくつも生まれている。例えば、鉄塔や電線、[[真空管]]などの[[電気工学]]的なガジェットに傾倒するエレクトリックパンクや、[[歯車]]と[[ぜんまいばね|ぜんまい]]仕掛けの前近代的な機械装置に傾倒したクロックパンク(日本の作品では『[[ぜんまいざむらい]]』や『[[がんばれゴエモン]]』などの作品がこれに当たる)といったマイナーなサブジャンルが存在する。


個人的にはヴィクトリア朝ファンタジーは、パワーズとブレイロックと私の作品群を表す用語を見つければ、すごいことになるのではないかと思っています。その時代にふさわしいテクノロジーに基づいた何か、例えば「スチームパンク」のような…<ref>{{Cite web| author = Sheidlower, Jesse | title = Science Fiction Citations | date = March 9, 2005 | url = http://www.jessesword.com/sf/view/327 | accessdate=2008-05-10}}</ref>}}
== スチームパンクの歴史と系譜 ==
[[マイケル・ムアコック]]はスチームパンクの先駆けと言われ、70年代に『The Dancer at the End of Time』『A Nomad of the Time Streems』を発表した。[[ブライアン・オールディス]]『Frankenstein Unbound』、[[ハワード・ウォルドロップ]]と[[スティーヴン・アトリー]]による『Custer's Last Jump』『Black as the Pit』も欧米圏ではプレ・スチームパンク作品とされている<ref>Nick Gevers『Extraordinary Engines』</ref>。


== 歴史上の先例 ==
本格的なサブジャンルとしてスチームパンクが注目されるのは80年代に入ってのことである。SF翻訳家[[山岸真]]の解説<ref>ジェイムズ・P・ブレイロック、『ホムンクルス』、早川書房、387p〜396p</ref>によれば、[[ジェイムズ・P・ブレイロック]]『ホムンクルス』、[[ティム・パワーズ]]『アヌビスの門』、 [[K・W・ジーター]]『悪魔の機械』の三作品がスチームパンクを成立させたという。この三作品はいずれも80年代後半に登場した。当時はサイバーパンクが流行していた時代であり、それに対してこの三人(三作品)がそれをもじってスチームパンクという語を造ったとのことである。ちなみにこの三作品については「マッド・ヴィクトリアン・ファンタジー」という呼称も存在した。
[[File:Early flight 02561u (2).jpg|thumb|upright|right|19世紀フランスのユートピア的飛行機械 (1890–1900)]]
スチームパンクは、[[ジュール・ヴェルヌ]]や[[ハーバート・ジョージ・ウェルズ|H・G・ウェルズ]]や[[メアリー・シェリー]]といった19世紀の{{仮リンク|科学ロマンス|en|scientific romance}}に影響を受け、そのスタイルを踏襲していることが多い<ref name="HSW steampunk">{{Cite web| last= Strickland | first= Jonathan |publisher = [[:en:HowStuffWorks|HowStuffWorks]] | url = http://electronics.howstuffworks.com/steampunk4.htm | title = Famous Steampunk Works | accessdate=May 18, 2008 }}</ref>。


このジャンルの発展を語る上で重要な作品がいくつか、ジャンル名が生まれる前に存在している。[[マーヴィン・ピーク]]の『タイタス・アローン』(1959) は、スチームパンクの要素の多くを先取りしていた<ref>{{Cite book|first=Lucy|last=Daniel|title=Defining Moments in Books: The Greatest Books, Writers, Characters, Passages and Events that Shook the Literary World|page=439|publisher=Cassell Illustrated|year=2007|location=US|isbn= 1844036057}}</ref>。[[レメディオス・バロ]]の絵画作品は、ヴィクトリア朝の服装や空想的イメージやテクノファンタジー的イメージを融合されている<ref>{{Cite book|last=Kaplan|first=Janet|title=Remedios Varo: Unexpected Journeys| isbn=0789206277|publisher=Abbeville Press|year=2010}}</ref>。スチームパンク的精神を広く示した最初期の作品として、[[CBS]]のテレビドラマ ''[[:en:The Wild Wild West|The Wild Wild West]]'' (1965–69) があり、後に設定を借りた映画『[[ワイルド・ワイルド・ウエスト]]』 (1999) も製作された<ref name="HSW steampunk" /><ref name="Grossman">{{Cite news| first=Lev|last=Grossman | title=Steampunk: Reclaiming Tech for the Masses | url= http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,1945343,00.html | quote=Steampunk has been around for at least 30 years, with roots going back further. An early example is K. W. Jeter's 1979 novel ''Morlock Night'', a sequel to H.G. Wells' ''The Time Machine'' in which the Morlocks travel back in time to invade 1890s London. Steampunk — Jeter coined the name — was already an established subgenre by 1990, when William Gibson and Bruce Sterling introduced a wider audience to it in ''The Difference Engine'', a novel set in a Victorian England running Babbage's hardware and ruled by Lord Byron, who had escaped death in Greece.&nbsp;... | publisher=''[[タイム (雑誌)|Time]]'' | date= December 14, 2009 | accessdate=2009-12-10}}</ref>。映画『[[未来世紀ブラジル]]』(1985) もこのジャンルに影響を与えている<ref name="La Ferla">{{Cite news| last= La Ferla|first=Ruth | publisher = ''[[ニューヨーク・タイムズ|New York Times]]'' | title = Steampunk Moves Between 2 Worlds | date = May 8, 2008 | url = http://www.nytimes.com/2008/05/08/fashion/08PUNK.html | accessdate=2010-11-21 }}</ref><ref name="Braiker">{{Cite news| author = Braiker, Brian | publisher = ''[[ニューズウィーク|Newsweek]]'' | title = Steampunking Technology: A subculture hand-tools today's gadgets with Victorian style | date = October 31, 2007 | url = http://www.newsweek.com/2007/10/30/steampunking-technology.html | accessdate=2010-11-21 }}</ref>。
90年代に入ると、サイバーパンクの主要な作家として知られる[[ウィリアム・ギブスン]]と[[ブルース・スターリング]]が『ディファレンス・エンジン』を共著する。邦訳書のアオリから引くならば「サイバーパンクの教祖と煽動者が紡ぐ記念碑的傑作」とされ、現代科学を参照した蒸気ガジェットや世界観に溢れる同作はスチームパンクの代表的作品と今日ではみなされている。著者の一方であるスターリングは同作について「きわめてサイバーパンク的でもある」と明言していた<ref>ウィリアム・ギブスン/ブルース・スターリング、『ディファレンス・エンジン』、角川書店からの出版時に収録された[[巽孝之]]による解説。現在では早川書房から再版された下巻421p〜429pにて再録</ref>が、現在ではスチームパンク作品の代表的作者の一人として扱われている<ref>ジェフ・ヴァンダミア編著『Steampunk Bible』にファーストエイジ・スチームパンクの旗手として寄稿している</ref>。SF評論家の[[巽孝之]]は同作に寄せた解説<ref>ウィリアム・ギブスン/ブルース・スターリング、『ディファレンス・エンジン』、早川書房版の下巻、433p〜446p</ref>で「サイバーパンク史上にもスチームパンク史上にも残る」としている。


K・W・ジーターがジャンル名を考案したことから、その小説 ''Morlock Night'' (1979) がスチームパンクの原点とされることがある。[[キース・ローマー]]の『多元宇宙の帝国』(1962) もこのジャンル形成に寄与している。{{仮リンク|ロナルド・W・クラーク|en|Ronald W. Clark}}の ''[[:en:Queen Victoria's Bomb|Queen Victoria's Bomb]]'' (1967)<ref name="Nevins">{{Cite book|last= Nevins |first= Jess |title= Heroes & Monsters: The Unofficial Companion to the League of Extraordinary Gentlemen |publisher= [[:en:MonkeyBrain Books|MonkeyBrain Books]] |year= 2003 |isbn= 193226504X }}</ref>と[[マイケル・ムアコック]]の ''[[:en:Warlord of the Air|Warlord of the Air]]'' (1971)<ref name="Bebergal">{{Cite news| author = Bebergal, Peter | publisher = ''[[ボストン・グローブ|The Boston Globe]]'' | title = The Age of Steampunk | date = August 26, 2007 | url = http://www.boston.com/news/globe/ideas/articles/2007/08/26/the_age_of_steampunk/ | accessdate= 2008-05-10}}</ref> も影響を与えた初期の例として引用されている。[[ハリイ・ハリスン]]の『大西洋横断トンネル、万歳!』(1973) は[[歴史改変SF|異なる歴史]]の1973年の大英帝国を描いており、原子力機関車、石炭を燃料とする飛行艇、派手な潜水艦、ヴィクトリア朝風の会話が散りばめられている。
[[ジュール・ヴェルヌ]]の『[[海底二万里]]』はスチームパンク成立以前に書かれた作品だが、現在ではスチームパンクのイメージ源のひとつと見なされている。


== 大衆的フィクションとしてのスチームパンク ==
また、[[1960年]]代に制作されたアメリカのテレビシリーズ『ワイルド・ワイルド・ウェスト』はスチームパンクとは見なされていないが、これを原作として作成された[[1999年]]の映画『[[ワイルド・ワイルド・ウェスト]]』はスチームパンク作品のイメージの一環と見なされている。これらのイメージをもとに「スチームパンクとは『ワイルド・ワイルド・ウェスト』のような世界を描いた作品である」と言われる事もある。
1982年のアメリカのテレビドラマ ''[[:en:Q.E.D. (U.S. TV series)|Q.E.D.]]'' は[[エドワード朝]]のイングランドを舞台とし、[[サム・ウォーターストン]]演じる教授が主人公である。この教授は発明家で、科学を用いた[[シャーロック・ホームズ]]のような探偵ものになっている。

1988年に初版が登場した[[歴史改変SF]][[ロールプレイングゲーム]] ''[[:en:Space: 1889|Space: 1889]]'' ではヴィクトリア朝時代の後に否定された科学理論が真実となっている世界を舞台とし、現実世界とは異なる科学技術が発展したという設定である<ref name="Heliograph">{{Cite web| title = Heliograph's Space 1889 Resource Site | publisher = Heliograph, Inc. | date = 2010-06-30 | url = http://www.heliograph.com/space1889 | accessdate = 2010-11-29 }}</ref>。

[[ウィリアム・ギブスン]]と[[ブルース・スターリング]]の1990年の小説『ディファレンス・エンジン』は、スチームパンクを広く知らしめた作品としてよく引き合いに出される<ref name="Grossman"/><ref name="Csicsery-Ronay">{{Cite journal| last = Csicsery-Ronay | first = Istvan | title = The Critic: John Clute. ''Look at the Evidence. Essays and Reviews.'' | journal = Science Fiction Studies | issue = #71; Volume 24, Part 1 | publisher = SF-TH Inc. | location = DePauw University, Greencastle Indiana | date = March 1997 | url = http://www.depauw.edu/sfs/reviews_pages/r71.htm | accessdate = 2010-11-29 }}</ref>。この小説はギブスンとスターリングの[[サイバーパンク]]の作法を[[歴史改変SF|歴史改変]]的ヴィクトリア朝に適用したもので、[[エイダ・ラブレス]]と[[チャールズ・バベッジ]]が考えた[[階差機関]](ディファレンス・エンジン)と呼ぶ[[蒸気機関]]駆動のコンピュータ<ref>[[階差機関]]は実際には蒸気機関駆動ではないし、コンピュータと呼べるほどの能力はない。より進化した設計の計算機械は[[解析機関]]である。</ref>が実際に作られ、現実よりも1世紀以上早く[[情報化時代]]が到来した世界を描いている。ただし多くのスチームパンク作品が楽天的でユートピア的なのに対して、この作品は暗く懐疑的である。邦訳書のアオリから引くならば「サイバーパンクの教祖と煽動者が紡ぐ記念碑的傑作」とされ、現代科学を参照した蒸気ガジェットや世界観に溢れる同作はスチームパンクの代表的作品と今日ではみなされている。著者の一方であるスターリングは同作について「きわめてサイバーパンク的でもある」と明言していた<ref>ウィリアム・ギブスン/ブルース・スターリング、『ディファレンス・エンジン』、角川書店からの出版時に収録された[[巽孝之]]による解説。現在では早川書房から再版された下巻421p〜429pにて再録</ref>が、現在ではスチームパンク作品の代表的作者の一人として扱われている<ref>ジェフ・ヴァンダミア編著『Steampunk Bible』にファーストエイジ・スチームパンクの旗手として寄稿している</ref>。SF評論家の[[巽孝之]]は同作に寄せた解説<ref>ウィリアム・ギブスン/ブルース・スターリング、『ディファレンス・エンジン』、早川書房版の下巻、433p〜446p</ref>で「サイバーパンク史上にもスチームパンク史上にも残る」としている。

[[フォックス放送|フォックス]]が1993年から1994年に放送したテレビドラマ ''[[:en:The Adventures of Brisco County, Jr|The Adventures of Brisco County, Jr]]'' は1890年代を舞台とし、登場人物であるウィックワイア教授が様々なものを発明する<ref name="Brisco">{{Cite web| url= http://www.slantmagazine.com/house/2010/06/a-fistful-of-geek-a-look-back-at-the-adventures-of-brisco-county-jr/ | title = A Fistful of Geek: A Look Back at The Adventures of Brisco County Jr. | first= Andrew| last= Orillion | publisher = [[:en:Slant Magazine|Slant Magazine]] | date = June 8, 2010|accessdate=2012-02-23}}</ref>。[[アラン・ムーア]]と[[ケヴィン・オニール]]の[[グラフィックノベル]]シリーズ『[[リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン]]』(1999) (および2003年製作の[[リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い|映画版]])もスチームパンクを広めることに大きく貢献した<ref name="Poeter" >{{Cite news| title = Steampunk's subculture revealed | author = Damon Poeter | url = http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/c/a/2008/07/06/LVL211GOO2.DTL | publisher = San Francisco Chronicle | date = July 6, 2008 | accessdate = 2008-09-08}}</ref>。

[[:en:Nick Gevers|Nick Gevers]] の2008年のアンソロジー ''Extraordinary Engines'' は、このジャンルの優秀な作家や他のSF作家、ファンタジー作家がネオ・ヴィクトリア朝を舞台として書いた新たなスチームパンク作品を集めている。その序文でスチームパンクの先駆けとして、[[マイケル・ムアコック]]の ''The Dancer at the End of Time'' と ''A Nomad of the Time Streems''、[[ブライアン・オールディス]]の ''Frankenstein Unbound''、[[ハワード・ウォルドロップ]]と[[スティーヴン・アトリー]]による ''Custer's Last Jump'' と ''Black as the Pit''が挙げられている<ref>Nick Gevers『Extraordinary Engines』</ref>。同年、{{仮リンク|ジェフ・ヴァンダーミア|en|Jeff VanderMeer}}らによるその名もずばり ''[[:en:Steampunk (anthology)|Steampunk]]'' と題したアンソロジーも出版された。この両方に作品が収録されている{{仮リンク|ジェイ・レイク|en|Jay Lake}}の代表作 ''[[:en:Mainspring (novel)|Mainspring]]'' は「[[サイバーパンクからの派生|クロックパンク]]」と呼ばれることもある<ref>{{Cite web| author = Doctorow, Cory | title = Jay Lake's "Mainspring:" Clockpunk adventure | date = July 8, 2007 | url = http://www.boingboing.net/2007/07/08/jay-lakes-mainspring.html | accessdate=May 10, 2008}}</ref>。後者のアンソロジーには他に、スチームパンク作家とされている[[ジェイムズ・P・ブレイロック]]の作品、先述した[[マイケル・ムアコック]]の作品、『[[リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン]]』への注釈で知られている{{仮リンク|ジェス・ネヴィンズ|en|Jess Nevins}}の作品なども収録されている。

初期のスチームパンクは歴史上の設定があることが多かったが、その後スチームパンクの要素をファンタジー世界に持ち込んだ、どの時代かも定かでない作品が見られるようになる。前者の歴史的スチームパンクは[[歴史改変SF]]的要素があり、歴史上の実在の場所や人物が登場しつつ、架空のテクノロジーが登場する。ファンタジー的スチームパンクとしては、[[チャイナ・ミエヴィル]]の『ペルディード・ストリート・ステーション』、{{仮リンク|アラン・キャンベル (作家)|en|Alan Campbell (writer)|label=アラン・キャンベル}}の ''Scar Night'' などがあり、さらに完全なファンタジー世界で伝説のモンスターなどと[[蒸気機関]]時代などの[[時代錯誤]]的テクノロジーが共存している作品もある。

自ら "far-fetched fiction"(ありそうもないフィクション)作家を名乗る{{仮リンク|ロバート・ランキン|en|Robert Rankin}}は、スチームパンク要素を作品に取り入れるようになっている。2009年にはヴィクトリアン・スチームパンク協会のフェローに選ばれた<ref>{{Cite web|title=Meet the Victorian Steampunk Society| url= http://www.sfx.co.uk/2011/11/27/meet-the-victorian-steampunk-society/|date=November 27,2011|publisher=SFX News|accessdate=2011-01-05}}</ref>。

=== 歴史的スチームパンク ===
一般に、歴史上のある時代を舞台とする最近のSFがこのカテゴリに含まれる。その時代とは、[[産業革命]]が既に始まっているが[[電力]]がまだ広く普及していない時代であり{{要出典|date=January 2012}}、そこに[[歴史改変SF|歴史改変]]要素が入る場合もある。[[蒸気機関]]や[[ぜんまいばね]]などを駆動力とするガジェットがよく出てくる。最もよくある時代設定は[[ヴィクトリア朝]]と[[エドワード朝]]だが、[[産業革命]]の始まったころまで「ヴィクトリアン・スチームパンク」に含むこともある。

例としては、小説『ディファレンス・エンジン』<ref>{{Cite web| last=Hudson| first=Patrick|title=(Review of) The Difference Engine|url= http://www.zone-sf.com/difengine.html| accessdate= 2009-02-13|publisher=Pigasus Press|work=The Zone}}</ref>、コミックの『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』、ディズニーアニメ『[[アトランティス 失われた帝国]]』、[[ロールプレイングゲーム]]の ''[[:en:Space: 1889|Space: 1889]]'' などがある<ref name="HSW steampunk"/>。漫画『[[鋼の錬金術師]]』やコミックシリーズの ''[[:en:Girl Genius|Girl Genius]]'' はヴィクトリア朝風の時代設定が感じられるが、独自の時代と場所を設定している<ref name="HSW steampunk"/>。

[[カレル・ゼマン]]の映画『悪魔の発明』(1958) は最初期のスチームパンク映画と言われている。[[ジュール・ヴェルヌ]]の小説に基づいており、小説に描かれた(真実ではない)過去の世界を描いている<ref>{{Cite web| last1= Waldrop | first1=Howard |last2=Person | first2=Lawrence | publisher = [[:en:Locus Online|Locus Online]] | title = The Fabulous World of Jules Verne | date = October 13, 2004 | url = http://locusmag.com/2004/Reviews/10_WaldropPerson_Verne.html | accessdate=2008-05-10}}</ref>。[[宮崎駿]]の[[アニメ]]映画、『[[天空の城ラピュタ]]』(1986)、『[[ハウルの動く城]]』(2004) や[[大友克洋]]の『[[スチームボーイ]]』(2004) などもスチームパンク映画とされることがある。どの作品もスチームパンクを構成する時代錯誤的ガジェットが登場する<ref name=matronline >{{Cite web| url= http://www.matrix-online.net/bsfa/website/matrixonline/Matrix_Features_3.aspx |title=the news and media magazine of the British Science Fiction Association |publisher=Matrix Online |date=June 30, 2008 |accessdate=2009-02-13}}</ref><ref>{{Cite web|title=Hayao Miyazaki: The Greatest Fantasy Director You Never Heard Of?| first=Cynthia |last=Ward|date=August 20, 2003|url= http://www.locusmag.com/2003/Reviews/Ward08_Miyazaki.html| accessdate=2009-06-13}}</ref>。

歴史的スチームパンクは一般にファンタジーよりもSF的傾向が強いが、魔法などの要素を取り入れたものもある。例えば[[K・W・ジーター]]の ''Morlock Night'' では、未来からやってきたモーロックの侵略から[[グレートブリテン及びアイルランド連合王国|イギリス]]を救うために魔法使い[[マーリン]]が[[アーサー王]]を蘇らせようとする<ref name="Grossman"/>。[[ティム・パワーズ]]の『アヌビスの門』には、19世紀初頭のロンドンの地下に住む乞食や盗人たちに混じっている[[魔法使い]]の一団が登場する。

Paul Guinan は19世紀末に作られたという架空の設定のロボット ''[[:en:Boilerplate (robot)|Boilerplate]]'' を作り、ウェブサイトで公開していたが、それを実在のものだと勘違いする人が続出し、世界的に報道されるに至った<ref>{{Cite news|last=Hayden|first=Tom |title= Gotcha!| url= http://www.usnews.com/usnews/culture/articles/020826/archive_022363_5.htm|page=39|work=U.S. News & World Report |date=September 3, 2002|accessdate= 2012-01-05}}</ref>。このサイトの内容をまとめたハードカバー ''Boilerplate: History’s Mechanical Marvel'' が2009年10月に出版された<ref>{{Cite web|url= http://www.abramsbooks.com/Books/Boilerplate-9780810989504.html |title=Boilerplate |publisher= Abramsbooks.com |date= |accessdate=2011-03-17}}</ref>。ストーリーには歴史改変要素はなく、ヴィクトリア朝についての情報は正確である<ref>{{Cite web|url= http://www.omnivoracious.com/2009/04/a-preview-of-boilerplate-historys-mechanical-marvel.html |title=A Preview of Boilerplate: History's Mechanical Marvel |publisher=Omnivoracious |date=2009-04-29 |accessdate=2011-03-17}}</ref>。

[[File:Steampunk Brass Spider.jpg|thumb|left|クモの立体芸術作品。Daniel Proulx 作]]
=== ファンタジー的スチームパンク ===
1990年以降、スチームパンクという用語はより幅広く使われるようになり、蒸気機関やぜんまいばねなどのテクノロジーが登場するファンタジーもスチームパンクと呼ばれるようになった<ref name="Grossman"/>。

ファンタジー的スチームパンクは特に[[ロールプレイングゲーム]]や[[コンピュータRPG]]によく見られる。例えば、「[[エターナルアルカディア]]」<ref>{{Cite web|url= http://www.rpg.net/reviews/archive/9/9134.phtml |title=Skies of Arcadia review on RPGnet |publisher=Rpg.net |date= |accessdate=2009-09-08}}</ref>、「[[ファイナルファンタジーVI]]」、「[[ファイナルファンタジーIX]]」、''[[:en:Rise of Nations: Rise of Legends|Rise of Nations: Rise of Legends]]''、''[[:en:Arcanum: Of Steamworks and Magick Obscura|Arcanum: Of Steamworks and Magick Obscura]]'' などがある<ref name="HSW steampunk"/>。

[[MMORPG]]の ''[[World of Warcraft]]'' に登場するノームやゴブリンもスチームパンク的な技術社会をもっていて<ref>{{Cite web|url= http://www.tentonhammer.com/wow/lore/steampunk-paradise |title=WoW: Loremaster's Corner #5: A Steampunk Paradise |publisher=Ten Ton Hammer |date= March 9, 2010 | author = Xerin | quote=World of Warcraft is almost a steampunk paradise if you look at the various technological advancements the gnomes have made. Most engines are powered by steam and there are giant airships floating around everywhere.| accessdate= 2010-05-30}}</ref>、人類よりも科学技術が発展しているが、[[エルフ]]のような[[魔術]]は使えない。

歴史的スチームパンクとファンタジー的スチームパンクの中間で、未来を舞台にしてスチームパンク的テクノロジーと[[美学]]が支配的な世界が描かれた作品もある。例えば、『[[スチームボーイ]]』(2004)、『[[∀ガンダム]]』(1999-2000)、『[[トライガン]]』、[[終末もの|終末後]]を描いた[[宮崎駿]]の『[[未来少年コナン]]』(1978)、ディズニー映画『[[トレジャー・プラネット]]』(2002) などがある<ref name="HSW steampunk"/>。

=== その他のスチームパンク ===
{{See also|サイバーパンクからの派生}}
[[:en:John Clute|John Clute]] と [[:en:John Grant (author)|John Grant]] は、"gaslight romance" または "[[:en:gaslamp fantasy|gaslamp fantasy]]" という分類を提案している。彼らによれば「Gaslight Romance と同様、スチームパンクは19世紀の霧の都ロンドンをロマンチックに描くことが多い。しかし、Gaslight Romance は19世紀末から20世紀初頭の様々なノスタルジックなもの(ドラキュラ、ジキルとハイド、切り裂きジャック、シャーロック・ホームズ、ターザン)に集中し、一般には超自然的フィクションとファンタジーについてのファンタジー (recursive fantasy) の融合と理解できるが、中には歴史ファンタジーとして読めるものもある」という<ref name="Clute-Grant"/>。

「西部劇」設定のスチームパンクもあり、[[:en:Weird West|Weird West]] や [[:en:Science fiction Western|Science fiction Western]] と呼ばれるサブジャンルがある。他にも、[[サイバーパンクからの派生|ディーゼルパンク]]や、[[歯車]]と[[ぜんまいばね|ぜんまい]]仕掛けの前近代的な機械装置に傾倒した[[サイバーパンクからの派生|クロックパンク]](日本の作品では『[[ぜんまいざむらい]]』や『[[がんばれゴエモン]]』などの作品がこれに当たる)といった分類もある。これらの用語の多くはロールプレイングゲームの[[ガープス]]で考案されたもので、他ではあまり使われていない<ref>Stoddard, William H., ''GURPS Steampunk'' (2000)</ref>。さらに日本では、鉄塔や電線、[[真空管]]などの[[電気工学]]的なガジェットに傾倒するエレクトリックパンクというマイナーなサブジャンルが存在する。

== アートとデザイン ==
[[File:Clockwork universe by Tim Wetherell.jpg‎|upright|thumb|right|Tim Wetherellの立体芸術作品 ''Clockwork Universe'' オーストラリア[[国立科学技術センター]](2009年9月24日)]]
スチームパンクの視覚化の起源としては、1954年のディズニー映画の『[[海底二万哩]]』(潜水艦[[ノーチラス号]]のデザイン、その内装、乗組員の潜水服など)、1960年の[[ジョージ・パル]]の映画『[[タイム・マシン 80万年後の世界へ]]』(タイムマシンのデザイン)などがある。また同様のデザインは[[東京ディズニーシー]]のミステリアスアイランドにも採用されている。

愛好家は、様々な現代の実用品を偽ヴィクトリア朝風のメカニカルな「スチームパンク」スタイルに改造している<ref name="Braiker"/><ref>{{Cite web| title = Steam dream: Steampunk bursts through its subculture roots to challenge our musical, fashion, design, and even political sensibilities | first= Sharon | last=Steel | url = http://thephoenix.com//Boston/Life/61571-Steam-dream/ | publisher = [[:en:The Boston Phoenix|The Boston Phoenix]] | date = May 19, 2008 | accessdate = 2008-09-27}}</ref>。例えば、[[キーボード (コンピュータ)|コンピュータ・キーボード]]や[[エレクトリック・ギター]]である<ref>{{Cite web| last=Hart|first=Hugh|date=December 1,2011 | title = Steampunk Contraptions Take Over Tattoo Studio | url = http://www.wired.com/underwire/2011/12/mobilis-in-mobili-steampunk/?pid=5507| work=Wired | accessdate=2011-12-05}}</ref>。そういった再デザインでは、ヴィクトリア朝時代に入手可能な材料(真鍮、鉄、木、皮革など)を使い、ヴィクトリア朝時代のデザイン要素と技能を使うことを目指す<ref name="Bebergal" /><ref>{{Cite web| last= Farivar | first=Cyrus | publisher = [[ナショナル・パブリック・ラジオ|National Public Radio]] | title = Steampunk Brings Victorian Flair to the 21st Century | date = February 6, 2008 | url = http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=18710895&sc=emaf | accessdate= 2008-05-10}}</ref>。''Kinetic Steam Works''というアーティスト・グループは、2006年と2007年の[[バーニングマン]]祭にて実動する蒸気機関を展示した<ref>{{Cite web|url= http://galleries.burningman.com/photos/tristan/tristan.30621 |title=Kinetic Steam Works' Case traction engine ''Hortense '' |year=2007 |first=Tristan "Loupiote"|last= Savatier |accessdate=2012-02-24}}</ref>。そのグループの創設メンバーの1人 Sean Orlando は後に ''Five Ton Crane Arts Group'' を結成したグループと共同で Steampunk Tree House<ref>{{Cite web|url= http://fivetoncrane.org/the-steampunk-tree-house.html |title=Five Ton Crane |year=2010 |accessdate=2012-02-24}}</ref> を作り、いくつかの祭で展示し<ref>{{Cite web |last= Orlando |first=Sean | title = Steampunk Tree House | date = 2007–2008 | url = http://www.steamtreehouse.com | accessdate= 2008-05-10}}</ref>、2010年7月以降は[[デラウェア州]]ミルトンにある [[:en:Dogfish Head Brewery|Dogfish Head Brewery]] に永久展示されている<ref>{{Cite journal|title=Steampunk Tree House debuts at Dogfish in Milton |url= http://www.capegazette.com/storiescurrent/20100701-15/02003-dogfish-steampunk.html |date=2 July 2010 |journal=Cape Gazette}}</ref><ref>{{Cite web|url= http://www.dogfish.com/community/news/press-releases/steampunk-treehouse-finds-home-at-dogfish.htm |title=Steampunk Treehouse Finds Home At Dogfish |date=21 June 2010 |publisher=Dogfish Head Craft Brewery|accessdate=2012-02-24}}</ref>。

2008年5月から6月、マルチメディア・アーティストで彫刻家の [[:en:Paul St George|Paul St George]] はロンドンとニューヨークのブルックリンをリンクした野外インタラクティブビデオの[[インスタレーション]] The [[:en:telectroscope|telectroscope]] を開催した<ref>{{Cite news|first=Melena | last= Ryzik |title=Telescope Takes a Long View, to London |date=May 21, 2008 |work=[[ニューヨーク・タイムズ|New York Times]] |url= http://www.nytimes.com/2008/05/21/arts/design/21tele.html |accessdate= 2008-08-05 }}</ref><ref name="sullivan" >{{Cite news| title = Tonight I'm gonna party like it's 1899 | first= Caroline |last=Sullivan | url = http://www.guardian.co.uk/music/2008/oct/17/popandrock2 | publisher = Guardian | date = October 17, 2008 | accessdate = 2008-10-17 | location=London}}</ref>。プロモーターの Evelyn Kriete は、両都市のスチームパンクファンに集まるよう呼びかけた<ref>{{Cite web| author = Brass Goggles | title = Telecroscope Meeting Today (And White Mischief) | date = June 7, 2007 | url = http://www.brassgoggles.co.uk/brassgoggles/?p=882 | accessdate= 2008-06-20}}</ref>。

[[File:Telectroscope aperture at London City Hall showing Tower Bridge and Canary Wharf.jpg|thumb|left|Paul St George の[[インスタレーション]]作品 ''Telectroscope''。[[シティ・ホール (ロンドン)|ロンドン・シティホール]](2008年5月24日)]]

2009年、アーティストの Tim Wetherell は Clockwork Universe(時計仕掛けの宇宙)というコンセプトの巨大な壁掛け型作品を作り、オーストラリア[[国立科学技術センター]]に設置した。この鉄製の芸術作品には、動く歯車や動く時計、月の明暗界線の映画などが含まれている。3Dの月の映画は Antony Williams が製作した。

[[英国放送協会|BBC]]のドラマ『[[ドクター・フー]]』に登場するタイムマシン「[[ターディス]]」も1996年版からスチームパンク的要素を備えている。

2009年10月から2010年2月まで、[[オックスフォード科学史博物館]]で世界初の大規模なスチームパンク・アート展が開催された<ref name="MHS, Steampunk 2009" >{{Cite web| title = Steampunk | quote=Imagine the technology of today with the aesthetic of Victorian science. | url = http://www.mhs.ox.ac.uk/steampunk/ |publisher=[[:en:Museum of the History of Science, Oxford|Museum of the History of Science, Oxford]]|accessdate=2012-02-24}}</ref>。実用品を再デザインしたものから空想的な仕掛けまで、18人の世界各地のアーティストの作品を展示した。同博物館の展覧会としては最大の成功を収め、8万人以上が訪れたという<ref>{{Cite news| title=Tech Know: Fast forward to the past | first=Mark |last=Ward | url= http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/8376028.stm | publisher=bbc.co.uk | date=November 30, 2009 | accessdate= 2009-11-30}}</ref>。

== 文化 ==
スチームパンクの人気の高まりと共に、それを文化やライフスタイルとして確立しようという運動が起きている<ref>{{Cite web| last= Kaye | first=Marco | title = Mom, Dad, I'm Into Steampunk | date = July 25, 2008 | url = http://www.mcsweeneys.net/links/monologues/25steampunk.html | accessdate=2008-08-04}}</ref>。中には、ファッションでスチームパンクの美学を実践するファン<ref>{{Cite web| author = Rauchfuss, Marcus | title = Steampunk Aesthetics | date = July 1, 2008 | url = http://www.dailysteampunk.com/Steampunk%20Aesthetics.html | accessdate=2010-02-09}}</ref>や、自宅の装飾に凝るファン、音楽や映画に凝る者もいる。これは、ヴィクトリア朝の美学と現代の感覚やテクノロジーを融合させた [[:en:neo-Victorian|neo-Victorian]]ism とも称される<ref name="La Ferla"/>。

スチームパンク哲学を提唱するファンもおり、[[パンク (サブカルチャー)|パンク]]に触発された反体制的意見を述べる場合もあるが、人間の可能性への楽観論に支えられた主張が典型的である<ref>{{Cite web| last= Swerlick | first=Andrew | title = Technology Gets Steampunk'd | date = May 11, 2007 | url = http://www.emorywheel.com/detail.php?n=24611 | accessdate= 2008-08-04}}</ref>。

[[File:Steampunk-falksen.jpg|upright|thumb|left|作家 [[:en:G. D. Falksen|G. D. Falksen]] が Thomas Willeford の作ったスチームパンク的な義腕風装飾を装着しているところ。スチームパンク・ファッションの一例]]

スチームパンク・ファッションには特に規定はないが、ヴィクトリア朝のそれと現代のそれを統合する傾向がある。ガウン、[[コルセット]]、[[ペティコート]]、[[バッスル]]などを身につけたり、スーツに[[ウェストコート|ベスト]]、コート、[[シルクハット]]<ref>Campbell, Jean (2009) ''Steampunk Style Jewelry: A Maker's Collection of Victorian, Fantasy, and Mechanical Designs''. Creative Publishing International ISBN 978-1589234758, pp. 48.</ref>、[[スパッツ (足首)|スパッツ]]などを合わせたり、軍人風の衣装を着たりする。そして、テクノロジーを表す小道具である、時計、パラソル、ゴーグル、光線銃などを身につけることでアクセントとする。スチームパンク風に改造された携帯電話や音楽プレーヤーをアクセサリーとすることもある。スチームパンク・ファッションは、[[ロリータ・ファッション]]、[[ゴシック・ファッション]]などの流れを汲んでいる<ref name="La Ferla"/><ref name="Poeter"/><ref name="Rowe">{{Cite web| title = What Is Steampunk? A Subculture Infiltrating Films, Music, Fashion, More | first= Andrew Ross| last= Rowe | url = http://www.mtv.com/news/articles/1595812/20080929/index.jhtml | publisher = MTV | date = September 29, 2008 | accessdate = 2008-10-14}}</ref>。

手作りの商品の売買サイト [[:en:Etsy|Etsy]] では、"steampunk" というタグが一時期流行していたが、多くの商品は上述したようなスチームパンク・ファッションとはあまり関係がない。声優の [[:en:April Winchell|April Winchell]] は ''Regretsy: Where DIY meets WTF'' という本を出版したこともあり、Etsy で見つけた「スチームパンク」とは言えない商品やユーモラスな商品を自身のウェブサイトで紹介している<ref>{{Cite web|url= http://www.regretsy.com/category/not-remotely-steampunk/|title=Not Remotely Steampunk|publisher=Regretsy|accessdate=2011-08-26}}</ref>。このブログはスチームパンク・ファンの間で大人気となり、それを題材としたミュージックビデオも作られた<ref>{{Cite web| title = Just Glue Some Gears On It (And Call It Steampunk) | author = Pikedevant | url = http://www.youtube.com/watch?v=TFCuE5rHbPA | publisher = Youtube | date = Nov 29, 2011 | quote = From the video's comments: 'This is Datamancer, the steampunk keyboard guy, and I approve of this video wholeheartedly. In fact, we make this joke at the workshop almost daily. "I can't figure out how to finish off this edge". "Just glue some gears to it and call it done" haha. Well-made song and video.' - Datamancer. 'Glad to see a new contender for the chap-hop crown, and such a relevant message. I love it!' - [[:en:Unwoman|Unwoman]]. | accessdate = 2011-12-04}}</ref>。

スチームパンク音楽も定義が不確かで、[[ガーディアン]]紙で Caroline Sullivan は「スチームパンク・サウンドを構成するのは何かについて、インターネット上で大激論になっている」と述べている<ref name="sullivan" />。スチームパンクの音楽スタイルの範囲は、様々なスチームパンクのアーティストの作品で判断するしかない。[[インダストリアル]]/[[ワールドミュージック]]の [[:en:Abney Park (band)|Abney Park]]<ref name="Rowe"/>、シンガーソングライターで楽器発明家の [[:en:Thomas Truax|Thomas Truax]]<ref name="sullivan" /><ref>{{Cite web| last= Killjoy | first=Magpie | publisher = Steampunk Magazine Issue 1 | title = Thomas Truax, an Interview | date = Jan 8, 2006 | url = http://www.thomastruax.com/steampunkMag_feature07.html | accessdate=2010-08-04}}</ref>、{{仮リンク|カルナティック音楽|en|Carnatic music|label=カルナティック}}の影響を受けている [[:en:Sunday Driver (UK)|Sunday Driver]]<ref name="Matrix Online article">{{Cite news| url= http://dmp.dreamwidth.org/9727.html | work=Tales of the Urban Adventurer | title=Beyond Victoriana: #10 An Interview with Sunday Driver | author=D.M.P. | date=2010-01-16 |accessdate=2012-02-25}}</ref>、「[[インダストリアル]]・[[ヒップホップ]]・オペラ」の [[:en:Doctor Steel|Doctor Steel]]<ref name="Rue Morgue">{{Cite news| url= http://www.rue-morgue.com/mag_42.php | title=Audio Drome Review: Dr. Steel | magazine=Rue Morgue Magazine, issue 42 | date= November/December 2004 | format=back issue |accessdate=2012-02-25}}</ref><ref name="Indy Mogul">{{Cite web| url= http://www.indymogul.com/post/11836/interview-dr-phineas-waldolf-steel-mad-scientist | title=Interview: Dr. Phineas Waldolf Steel, Mad Scientist | first=Wesley |last=Scoggins | publisher=[[:en:Indy Mogul|Indy Mogul]] | quote=Many have mentioned your work in regards to Steampunk influenced bands like Abney Park (and for that matter the Steampunk "style" in general). | accessdate=2009-08-29}}</ref>、{{仮リンク|ダークウェーブ|en|Dark Wave}}と[[プログレッシブ・ロック]]の [[:en:Vernian Process|Vernian Process]]<ref>{{Cite web| publisher = Sepia Chord | title = Interview: Vernian Process | date = December 19, 2006 | url= http://www.sepiachord.com/vp121906.htm | accessdate=2008-05-10}}</ref><ref>{{Cite web| publisher=Aether Emporium | title=Interview with Joshua A. Pfeiffer | date=October 2, 2006 | url= http://etheremporium.pbwiki.com/Vernian%20Process | accessdate=2008-05-10}}</ref>、[[:en:Unextraordinary Gentlemen|Unextraordinary Gentlemen]]<ref name="matrix" >{{Cite web|title=Pump Up The Volume:The Sound of Steampunk |first= Kim| last= Lakin-Smith |url= http://www.matrix-online.net/bsfa/website/matrixonline/Matrix_Features_4.aspx |publisher=matrix |date=June 20, 2008 |accessdate=2008-11-11}}</ref>、エレクトリック・サウンドの The Wet-Glass RO<ref name="Sepiachord" >{{Cite web|title=Airship Isabella Steampunk Compilation Interview |author=Sepiachord |url= http://www.sepiachord.com/airshipisabella.htm |publisher=Sepiachord |date=December 30, 2009 |accessdate=2010-11-04}}</ref><ref name="Overbury Ink" >{{Cite web|title=SteamTuesday presents Ben Steed - Producer, composer, songwriter |first=Ben |last=Steed |url= http://overburyink.com/?p=416 |publisher=Overbury Ink |date=March 15, 2010 |accessdate=2010-11-04}}</ref>、[[:en:Darcy James Argue|Darcy James Argue]] 率いる[[ビッグバンド]] [[:en:Darcy James Argue's Secret Society#Secret Society|Secret Society]]、ミュージカル・ストーリーテリングの Escape the Clouds<ref name="Dieselpunks" >{{Cite web|title=Interview with Mark Rossmore of Escape the Clouds |first=Tome| last= Wilson|url= http://www.dieselpunks.org/profiles/blogs/interview-with-mark-rossmore |publisher=Dieselpunks |date=October 1, 2010 |accessdate=2010-10-05}}</ref> などである。イギリス系アメリカ人の作曲家 [[:en:David Bruce (composer)|David Bruce]] は、[[カーネギー・ホール]]からの依頼で2010年に[[八重奏曲]] 'Steampunk' を制作した<ref>{{Cite web|title=Carnegie Hall Premieres to present new work by David Bruce |url= http://cms.skidmore.edu/news/news.cfm?passID=2587 |date=28 January 2011 |publisher=[[:en:Skidmore College|Skidmore College]]|accessdate=2012-02-25}}</ref><ref name="Bruce, Carnegie" >{{Cite web| title = David Bruce's Carnegie Hall commission, ''Steampunk'' | first= David | last= Bruce | url = http://www.davidbruce.net/works/steampunk.asp | publisher = David Bruce | date =November 2010 |accessdate = 2011-02-04 |format=Full 22 minute piece in five movements, streamable}}</ref>。

2006年、ネオ・ヴィクトリアン/スチームパンクのコンベンションである "SalonCon" が開催された。その後3年間開催され、アーティスト、ミュージシャン([[:en:Voltaire (musician)|Voltaire]] や Abney Park)、作家([[:en:Catherynne M. Valente|Catherynne M. Valente]]、[[:en:Ekaterina Sedia|Ekaterina Sedia]]、[[:en:G. D. Falksen|G. D. Falksen]])を主役とした[[サロン]]、スチームパンクのワークショップやパネル展示、会議、社交ダンス講習会、スチームパンク・ファッションのパレードなどが行われた。このイベントについてはMTV<ref name="MTV">{{Cite web| url= http://www.mtv.com/videos/news/280093/its-airships-pirates-and-goggles.jhtml#id=1595811 | title=Steampunk Infiltrates the Mainstream | accessdate=2010-02-25}}</ref>とニューヨークタイムズ<ref name="La Ferla"/>が伝えている。

[[コミコン・インターナショナル]]でもスチームパンクは普通に見られるようになっており、4日間の会期内の土曜日が「スチームパンク・デー」と呼ばれ、地方新聞のための撮影会が行われる<ref>{{Cite web|url= http://frocktalk.com/?p=1237|title=Comic Con: Day Three&nbsp;– Steampunks!|publisher=FrockTalk.com|date=July 28, 2009|accessdate=2012-02-25}}</ref><ref>{{Cite web| url= http://www.laweekly.com/slideshow/san-diego-comic-con-2010-day-3-30647156/24/|title=San Diego Comic-Con 2010 Day 3|quote=Comic-Con Steampunk Meetup|accessdate=2010-07-31}}</ref>。同日開催される「アフター・パーティ」もスチームパンクにとって重要なイベントとなっている。2010年のパーティでは [[:en:Veronique Chevalier|Veronique Chevalier]] が司会を務め、[[:en:Andrew Goldfarb|The Slow Poisoner]]、[[:en:Unextraordinary Gentlemen|Unextraordinary Gentlemen]]、[[:en:Voltaire (musician)|Voltaire]] といったミュージシャンが出演、[[:en:League of STEAM|League of STEAM]] が特別ゲストとして登場した<ref>{{Cite web|url= http://www.thesteampunkempire.com/events/league-of-temporal-adventurers|title=The League of Temporal Adventurers First Society Gala|accessdate=2010-07-29}}</ref><ref>{{Cite web|url= http://blogs.laweekly.com/stylecouncil/fandom/voltaire-comic-con-san-diego/|title=Comic-Con Interview: Musician/Artist Voltaire is a Convention Renaissance Man|publisher=LA Weekly Magazine|first=Liz | last= Ohanesian|date=July 28, 2010|accessdate=2010-07-31}}</ref>。2011年には [[:en:Unextraordinary Gentlemen|Unextraordinary Gentlemen]] が再び出演し、[[:en:Abney Park (band)|Abney Park]] も出演した<ref name="The Time Machine promotional poster">{{Cite web|url= http://img828.imageshack.us/img828/2092/26205610150364945442306.jpg|title=Promotional poster for Comic Con's steampunk after-party, "The Time Machine"|accessdate=2011-07-23}}</ref>。

スチームパンクはより主流のソースも惹きつけ始めている。例えば、2010年10月11日に放送されたテレビドラマ『[[キャッスル 〜ミステリー作家は事件がお好き]]』のエピソード "Punked" は、スチームパンクのサブカルチャーを特に取り上げており、ロサンゼルス地域のスチームパンクスがエキストラ出演している<ref>{{Cite web| url= http://www.tvovermind.com/abc/castle/sneak-peek-castle-304-punked/34046|title=Sneak Peeks – Castle 3.04 "Punked"|publisher=TVOvermind.com|author=Clarissa|date=October 11, 2010|accessdate=2012-02-25}}</ref>。ミュージックビデオでも、[[デヴィッド・ゲッタ]]の 'Turn Me On' や[[パニック・アット・ザ・ディスコ]]の「モナリザのバラード」はスチームパンクの影響を強く受けている。


== 代表的なスチームパンク作品 ==
== 代表的なスチームパンク作品 ==
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
{{Refbegin}}
# Nick Gevers、『Extraordinary Engines』、Solaris、[[2008年]]、ISBN 978-1844166008
# ジェフ・ヴァンダミア、『Steampunk bible』、Abrams Image、[[2011年]]、ISBN 978-0810989580
* Nick Gevers、『Extraordinary Engines』、Solaris、[[2008年]]、ISBN 978-1844166008
# ジェイムズP・ブレイロック、『ホムンクルス』、早川書房、[[1989年]]、ISBN 4-15-020123-4
* ジェヴァンダミア、『Steampunk bible』、Abrams Image、[[2011年]]、ISBN 978-0810989580
# ウィリアム・スン/ブルース・スターリング、『ディファレンス・エンジン(下)』、早川書房、[[2008年]]、ISBN 978-4-15-0116781
* ジェイズ・P・ブレイロック、『ホムクルス』、早川書房、[[1989年]]、ISBN 4-15-020123-4
* ウィリアム・ギブスン/ブルース・スターリング、『ディファレンス・エンジン(下)』、早川書房、[[2008年]]、ISBN 978-4-15-0116781
* {{Citation |title=Science fiction before 1900 |first=Paul K. |last=Alkon |publisher= |year=1994 |isbn=0-8057-0952-5}}
* {{Citation |title=Clockwork worlds |first1=Richard D. |last1=Erlich |first2=Thomas P. |last2=Dunn |publisher= |year=1983 |isbn=0-313-23026-9}}
* {{Citation |title=Louis la Lune |first=Alban |last=Guillemois |publisher= |year=2006 |isbn=2-226-16675-0}}
* {{Citation|title=Science fiction after 1900 |first=Brooks |last=Landon |publisher= |year=2002 |isbn=0-415-93888-0}}
* {{Citation |title=The Encyclopedia of Fantastic Victoriana |first=Jess |last=Nevins |publisher=[[:en:MonkeyBrain Books|MonkeyBrain Books]] |year=2005 |isbn=978-1-93226-515-6}}
* {{Citation |journal= [[:en:Nova Express (fanzine)|Nova Express]] |volume=2 |number=2 |date=Winter 1988}}
* {{Citation |title=Fiction 2000: cyberpunk and the future of narrative |first1=George |last1=Slusser |first2=Tom |last2=Shippey |publisher= |year=1992 |isbn=0-8203-1425-0}}
* {{Citation |title=Victorian science fiction in the UK |first=Darko |last=Suvin |publisher= |year=1983 |isbn=0-8161-8435-6}}
* {{Citation |title=Worlds enough and time |first1=Gary |last1=Westfahl |first2=George |last2=Slusser |first3David |last3=Leiby |publisher= |year=2002 |isbn=0-313-31706-2}}
{{Refend}}

== 関連文献 ==
*{{Citation|last=Donovan |first=Art |title=The Art of Steampunk: Extraordinary Devices and Ingenious Contraptions from the Leading Artists of the Steampunk Movement |publisher=Fox Chapel Publishers |year=2011 |isbn=978-1-56523-573-1}}
*{{Citation|last=Strongman |first=Jay |title=Steampunk: The Art of Victorian Futurism |publisher=Korero Books |year=2011 |isbn=978-1-90762-103-1}}
*{{Citation|last=Willeford |first=Thomas |title=Steampunk Gear, Gadgets, and Gizmos: A Maker's Guide to Creating Modern Artifacts |publisher=McGraw-Hill/TAB Electronics |year=2011 |isbn=978-0-07176-236-6}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
118行目: 210行目:
* [[レトロフューチャー]]
* [[レトロフューチャー]]
* [[冒険小説]]
* [[冒険小説]]
* [[歴史改変SF]]


== 外部リンク ==
{{DEFAULTSORT:すちいむはんく}}
*{{Commons category-inline|Steampunk}}
{{Lit-stub}}


{{サイエンス・フィクション}}
{{DEFAULTSORT:すちいむはんく}}
[[Category:SFのジャンル]]
[[Category:SFのジャンル]]
[[Category:スチームパンク|*すちいむはんく]]
[[Category:スチームパンク|*すちいむはんく]]
[[Category:ファンダム]]


[[br:Steampunk]]
[[br:Steampunk]]

2012年2月24日 (金) 19:24時点における版

スチームパンク風の写真
"Maison tournante aérienne" (旋回住宅)。アルベール・ロビダが自著『20世紀』につけた挿絵。19世紀に20世紀の生活を想像した作品

スチームパンク英語: steampunk)とは、サイエンス・フィクションファンタジー歴史改変ものスペキュレイティブ・フィクションのサブジャンルの1つで、1980年代から1990年代初めごろまで特に人気を博した[1]蒸気機関が広く使われている設定で、ヴィクトリア朝のイギリスや西部開拓時代のアメリカを舞台とすることが多く、そのような中にSFやファンタジーの要素を組み込んでいる。ヴィクトリア朝の人々が思い描いていたであろうレトロフューチャー時代錯誤テクノロジーまたは未来的技術革新を登場させ、同時にヴィクトリア朝のファッション文化建築スタイル、芸術を描く。スチームパンク的テクノロジーとしては、H・G・ウェルズジュール・ヴェルヌの作品にでてくるような架空の機械、最近の作家ではフィリップ・プルマンスコット・ウエスターフェルドチャイナ・ミエヴィルの作品にでてくるような架空の機械がある。

他のスチームパンクの例としては、飛行船アナログコンピュータチャールズ・バベッジエイダ・ラブレス解析機関のような機械式計算機といったテクノロジーを歴史改変的に扱うものもある。

文学以外では、様々な現代の実用的オブジェクトが職人によって擬似ヴィクトリア朝風の「スチームパンク」スタイルに変換・装飾されており、スチームパンクと称される芸術家や音楽家もいる。

起源

今ではスチームパンクとされる作品が1960年代から1970年代にも出版されていたが、「スチームパンク」という用語は1980年代後半に「サイバーパンク」をもじって派生した。SF作家K・W・ジーターが、ティム・パワーズ(『アヌビスの門』、1983)、ジェイムズ・P・ブレイロック(『ホムンクルス』、1986)、そして自身(Morlock Night, 1979 と『悪魔の機械』、1987)の作品群を集合的に表す用語を探していて「スチームパンク」を思いついたと言われている[2]。これらの作品はいずれも19世紀を舞台としていて、実際のヴィクトリア朝のスペキュレイティブ・フィクション(例えばH・G・ウェルズの『タイム・マシン』)の雰囲気を真似ている。SF雑誌ローカス1987年4月号に掲載された手紙で、ジーターは次のように書いている。

ローカス様

同封したのは1979年の私の長編小説 Morlock Night のコピーです。それを Faren Miller に渡していただけると大変うれしいです。これは「パワーズ/ブレイロック/ジーターのファンタジー3人組」の中で誰が最初に「イカれた歴史」を書いたかという重要な議論の証拠となるものです。ローカス3月号で彼女のレビューを拝見し、とてもうれしく思いました。

個人的にはヴィクトリア朝ファンタジーは、パワーズとブレイロックと私の作品群を表す用語を見つければ、すごいことになるのではないかと思っています。その時代にふさわしいテクノロジーに基づいた何か、例えば「スチームパンク」のような…[3]

歴史上の先例

19世紀フランスのユートピア的飛行機械 (1890–1900)

スチームパンクは、ジュール・ヴェルヌH・G・ウェルズメアリー・シェリーといった19世紀の科学ロマンスに影響を受け、そのスタイルを踏襲していることが多い[4]

このジャンルの発展を語る上で重要な作品がいくつか、ジャンル名が生まれる前に存在している。マーヴィン・ピークの『タイタス・アローン』(1959) は、スチームパンクの要素の多くを先取りしていた[5]レメディオス・バロの絵画作品は、ヴィクトリア朝の服装や空想的イメージやテクノファンタジー的イメージを融合されている[6]。スチームパンク的精神を広く示した最初期の作品として、CBSのテレビドラマ The Wild Wild West (1965–69) があり、後に設定を借りた映画『ワイルド・ワイルド・ウエスト』 (1999) も製作された[4][7]。映画『未来世紀ブラジル』(1985) もこのジャンルに影響を与えている[8][9]

K・W・ジーターがジャンル名を考案したことから、その小説 Morlock Night (1979) がスチームパンクの原点とされることがある。キース・ローマーの『多元宇宙の帝国』(1962) もこのジャンル形成に寄与している。ロナルド・W・クラーク英語版Queen Victoria's Bomb (1967)[10]マイケル・ムアコックWarlord of the Air (1971)[11] も影響を与えた初期の例として引用されている。ハリイ・ハリスンの『大西洋横断トンネル、万歳!』(1973) は異なる歴史の1973年の大英帝国を描いており、原子力機関車、石炭を燃料とする飛行艇、派手な潜水艦、ヴィクトリア朝風の会話が散りばめられている。

大衆的フィクションとしてのスチームパンク

1982年のアメリカのテレビドラマ Q.E.D.エドワード朝のイングランドを舞台とし、サム・ウォーターストン演じる教授が主人公である。この教授は発明家で、科学を用いたシャーロック・ホームズのような探偵ものになっている。

1988年に初版が登場した歴史改変SFロールプレイングゲーム Space: 1889 ではヴィクトリア朝時代の後に否定された科学理論が真実となっている世界を舞台とし、現実世界とは異なる科学技術が発展したという設定である[12]

ウィリアム・ギブスンブルース・スターリングの1990年の小説『ディファレンス・エンジン』は、スチームパンクを広く知らしめた作品としてよく引き合いに出される[7][13]。この小説はギブスンとスターリングのサイバーパンクの作法を歴史改変的ヴィクトリア朝に適用したもので、エイダ・ラブレスチャールズ・バベッジが考えた階差機関(ディファレンス・エンジン)と呼ぶ蒸気機関駆動のコンピュータ[14]が実際に作られ、現実よりも1世紀以上早く情報化時代が到来した世界を描いている。ただし多くのスチームパンク作品が楽天的でユートピア的なのに対して、この作品は暗く懐疑的である。邦訳書のアオリから引くならば「サイバーパンクの教祖と煽動者が紡ぐ記念碑的傑作」とされ、現代科学を参照した蒸気ガジェットや世界観に溢れる同作はスチームパンクの代表的作品と今日ではみなされている。著者の一方であるスターリングは同作について「きわめてサイバーパンク的でもある」と明言していた[15]が、現在ではスチームパンク作品の代表的作者の一人として扱われている[16]。SF評論家の巽孝之は同作に寄せた解説[17]で「サイバーパンク史上にもスチームパンク史上にも残る」としている。

フォックスが1993年から1994年に放送したテレビドラマ The Adventures of Brisco County, Jr は1890年代を舞台とし、登場人物であるウィックワイア教授が様々なものを発明する[18]アラン・ムーアケヴィン・オニールグラフィックノベルシリーズ『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』(1999) (および2003年製作の映画版)もスチームパンクを広めることに大きく貢献した[19]

Nick Gevers の2008年のアンソロジー Extraordinary Engines は、このジャンルの優秀な作家や他のSF作家、ファンタジー作家がネオ・ヴィクトリア朝を舞台として書いた新たなスチームパンク作品を集めている。その序文でスチームパンクの先駆けとして、マイケル・ムアコックThe Dancer at the End of TimeA Nomad of the Time Streemsブライアン・オールディスFrankenstein Unboundハワード・ウォルドロップスティーヴン・アトリーによる Custer's Last JumpBlack as the Pitが挙げられている[20]。同年、ジェフ・ヴァンダーミア英語版らによるその名もずばり Steampunk と題したアンソロジーも出版された。この両方に作品が収録されているジェイ・レイク英語版の代表作 Mainspring は「クロックパンク」と呼ばれることもある[21]。後者のアンソロジーには他に、スチームパンク作家とされているジェイムズ・P・ブレイロックの作品、先述したマイケル・ムアコックの作品、『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』への注釈で知られているジェス・ネヴィンズ英語版の作品なども収録されている。

初期のスチームパンクは歴史上の設定があることが多かったが、その後スチームパンクの要素をファンタジー世界に持ち込んだ、どの時代かも定かでない作品が見られるようになる。前者の歴史的スチームパンクは歴史改変SF的要素があり、歴史上の実在の場所や人物が登場しつつ、架空のテクノロジーが登場する。ファンタジー的スチームパンクとしては、チャイナ・ミエヴィルの『ペルディード・ストリート・ステーション』、アラン・キャンベル英語版Scar Night などがあり、さらに完全なファンタジー世界で伝説のモンスターなどと蒸気機関時代などの時代錯誤的テクノロジーが共存している作品もある。

自ら "far-fetched fiction"(ありそうもないフィクション)作家を名乗るロバート・ランキン英語版は、スチームパンク要素を作品に取り入れるようになっている。2009年にはヴィクトリアン・スチームパンク協会のフェローに選ばれた[22]

歴史的スチームパンク

一般に、歴史上のある時代を舞台とする最近のSFがこのカテゴリに含まれる。その時代とは、産業革命が既に始まっているが電力がまだ広く普及していない時代であり[要出典]、そこに歴史改変要素が入る場合もある。蒸気機関ぜんまいばねなどを駆動力とするガジェットがよく出てくる。最もよくある時代設定はヴィクトリア朝エドワード朝だが、産業革命の始まったころまで「ヴィクトリアン・スチームパンク」に含むこともある。

例としては、小説『ディファレンス・エンジン』[23]、コミックの『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』、ディズニーアニメ『アトランティス 失われた帝国』、ロールプレイングゲームSpace: 1889 などがある[4]。漫画『鋼の錬金術師』やコミックシリーズの Girl Genius はヴィクトリア朝風の時代設定が感じられるが、独自の時代と場所を設定している[4]

カレル・ゼマンの映画『悪魔の発明』(1958) は最初期のスチームパンク映画と言われている。ジュール・ヴェルヌの小説に基づいており、小説に描かれた(真実ではない)過去の世界を描いている[24]宮崎駿アニメ映画、『天空の城ラピュタ』(1986)、『ハウルの動く城』(2004) や大友克洋の『スチームボーイ』(2004) などもスチームパンク映画とされることがある。どの作品もスチームパンクを構成する時代錯誤的ガジェットが登場する[25][26]

歴史的スチームパンクは一般にファンタジーよりもSF的傾向が強いが、魔法などの要素を取り入れたものもある。例えばK・W・ジーターMorlock Night では、未来からやってきたモーロックの侵略からイギリスを救うために魔法使いマーリンアーサー王を蘇らせようとする[7]ティム・パワーズの『アヌビスの門』には、19世紀初頭のロンドンの地下に住む乞食や盗人たちに混じっている魔法使いの一団が登場する。

Paul Guinan は19世紀末に作られたという架空の設定のロボット Boilerplate を作り、ウェブサイトで公開していたが、それを実在のものだと勘違いする人が続出し、世界的に報道されるに至った[27]。このサイトの内容をまとめたハードカバー Boilerplate: History’s Mechanical Marvel が2009年10月に出版された[28]。ストーリーには歴史改変要素はなく、ヴィクトリア朝についての情報は正確である[29]

クモの立体芸術作品。Daniel Proulx 作

ファンタジー的スチームパンク

1990年以降、スチームパンクという用語はより幅広く使われるようになり、蒸気機関やぜんまいばねなどのテクノロジーが登場するファンタジーもスチームパンクと呼ばれるようになった[7]

ファンタジー的スチームパンクは特にロールプレイングゲームコンピュータRPGによく見られる。例えば、「エターナルアルカディア[30]、「ファイナルファンタジーVI」、「ファイナルファンタジーIX」、Rise of Nations: Rise of LegendsArcanum: Of Steamworks and Magick Obscura などがある[4]

MMORPGWorld of Warcraft に登場するノームやゴブリンもスチームパンク的な技術社会をもっていて[31]、人類よりも科学技術が発展しているが、エルフのような魔術は使えない。

歴史的スチームパンクとファンタジー的スチームパンクの中間で、未来を舞台にしてスチームパンク的テクノロジーと美学が支配的な世界が描かれた作品もある。例えば、『スチームボーイ』(2004)、『∀ガンダム』(1999-2000)、『トライガン』、終末後を描いた宮崎駿の『未来少年コナン』(1978)、ディズニー映画『トレジャー・プラネット』(2002) などがある[4]

その他のスチームパンク

John CluteJohn Grant は、"gaslight romance" または "gaslamp fantasy" という分類を提案している。彼らによれば「Gaslight Romance と同様、スチームパンクは19世紀の霧の都ロンドンをロマンチックに描くことが多い。しかし、Gaslight Romance は19世紀末から20世紀初頭の様々なノスタルジックなもの(ドラキュラ、ジキルとハイド、切り裂きジャック、シャーロック・ホームズ、ターザン)に集中し、一般には超自然的フィクションとファンタジーについてのファンタジー (recursive fantasy) の融合と理解できるが、中には歴史ファンタジーとして読めるものもある」という[1]

「西部劇」設定のスチームパンクもあり、Weird WestScience fiction Western と呼ばれるサブジャンルがある。他にも、ディーゼルパンクや、歯車ぜんまい仕掛けの前近代的な機械装置に傾倒したクロックパンク(日本の作品では『ぜんまいざむらい』や『がんばれゴエモン』などの作品がこれに当たる)といった分類もある。これらの用語の多くはロールプレイングゲームのガープスで考案されたもので、他ではあまり使われていない[32]。さらに日本では、鉄塔や電線、真空管などの電気工学的なガジェットに傾倒するエレクトリックパンクというマイナーなサブジャンルが存在する。

アートとデザイン

Tim Wetherellの立体芸術作品 Clockwork Universe オーストラリア国立科学技術センター(2009年9月24日)

スチームパンクの視覚化の起源としては、1954年のディズニー映画の『海底二万哩』(潜水艦ノーチラス号のデザイン、その内装、乗組員の潜水服など)、1960年のジョージ・パルの映画『タイム・マシン 80万年後の世界へ』(タイムマシンのデザイン)などがある。また同様のデザインは東京ディズニーシーのミステリアスアイランドにも採用されている。

愛好家は、様々な現代の実用品を偽ヴィクトリア朝風のメカニカルな「スチームパンク」スタイルに改造している[9][33]。例えば、コンピュータ・キーボードエレクトリック・ギターである[34]。そういった再デザインでは、ヴィクトリア朝時代に入手可能な材料(真鍮、鉄、木、皮革など)を使い、ヴィクトリア朝時代のデザイン要素と技能を使うことを目指す[11][35]Kinetic Steam Worksというアーティスト・グループは、2006年と2007年のバーニングマン祭にて実動する蒸気機関を展示した[36]。そのグループの創設メンバーの1人 Sean Orlando は後に Five Ton Crane Arts Group を結成したグループと共同で Steampunk Tree House[37] を作り、いくつかの祭で展示し[38]、2010年7月以降はデラウェア州ミルトンにある Dogfish Head Brewery に永久展示されている[39][40]

2008年5月から6月、マルチメディア・アーティストで彫刻家の Paul St George はロンドンとニューヨークのブルックリンをリンクした野外インタラクティブビデオのインスタレーション The telectroscope を開催した[41][42]。プロモーターの Evelyn Kriete は、両都市のスチームパンクファンに集まるよう呼びかけた[43]

Paul St George のインスタレーション作品 Telectroscopeロンドン・シティホール(2008年5月24日)

2009年、アーティストの Tim Wetherell は Clockwork Universe(時計仕掛けの宇宙)というコンセプトの巨大な壁掛け型作品を作り、オーストラリア国立科学技術センターに設置した。この鉄製の芸術作品には、動く歯車や動く時計、月の明暗界線の映画などが含まれている。3Dの月の映画は Antony Williams が製作した。

BBCのドラマ『ドクター・フー』に登場するタイムマシン「ターディス」も1996年版からスチームパンク的要素を備えている。

2009年10月から2010年2月まで、オックスフォード科学史博物館で世界初の大規模なスチームパンク・アート展が開催された[44]。実用品を再デザインしたものから空想的な仕掛けまで、18人の世界各地のアーティストの作品を展示した。同博物館の展覧会としては最大の成功を収め、8万人以上が訪れたという[45]

文化

スチームパンクの人気の高まりと共に、それを文化やライフスタイルとして確立しようという運動が起きている[46]。中には、ファッションでスチームパンクの美学を実践するファン[47]や、自宅の装飾に凝るファン、音楽や映画に凝る者もいる。これは、ヴィクトリア朝の美学と現代の感覚やテクノロジーを融合させた neo-Victorianism とも称される[8]

スチームパンク哲学を提唱するファンもおり、パンクに触発された反体制的意見を述べる場合もあるが、人間の可能性への楽観論に支えられた主張が典型的である[48]

作家 G. D. Falksen が Thomas Willeford の作ったスチームパンク的な義腕風装飾を装着しているところ。スチームパンク・ファッションの一例

スチームパンク・ファッションには特に規定はないが、ヴィクトリア朝のそれと現代のそれを統合する傾向がある。ガウン、コルセットペティコートバッスルなどを身につけたり、スーツにベスト、コート、シルクハット[49]スパッツなどを合わせたり、軍人風の衣装を着たりする。そして、テクノロジーを表す小道具である、時計、パラソル、ゴーグル、光線銃などを身につけることでアクセントとする。スチームパンク風に改造された携帯電話や音楽プレーヤーをアクセサリーとすることもある。スチームパンク・ファッションは、ロリータ・ファッションゴシック・ファッションなどの流れを汲んでいる[8][19][50]

手作りの商品の売買サイト Etsy では、"steampunk" というタグが一時期流行していたが、多くの商品は上述したようなスチームパンク・ファッションとはあまり関係がない。声優の April WinchellRegretsy: Where DIY meets WTF という本を出版したこともあり、Etsy で見つけた「スチームパンク」とは言えない商品やユーモラスな商品を自身のウェブサイトで紹介している[51]。このブログはスチームパンク・ファンの間で大人気となり、それを題材としたミュージックビデオも作られた[52]

スチームパンク音楽も定義が不確かで、ガーディアン紙で Caroline Sullivan は「スチームパンク・サウンドを構成するのは何かについて、インターネット上で大激論になっている」と述べている[42]。スチームパンクの音楽スタイルの範囲は、様々なスチームパンクのアーティストの作品で判断するしかない。インダストリアル/ワールドミュージックAbney Park[50]、シンガーソングライターで楽器発明家の Thomas Truax[42][53]カルナティック英語版の影響を受けている Sunday Driver[54]、「インダストリアルヒップホップ・オペラ」の Doctor Steel[55][56]ダークウェーブ英語版プログレッシブ・ロックVernian Process[57][58]Unextraordinary Gentlemen[59]、エレクトリック・サウンドの The Wet-Glass RO[60][61]Darcy James Argue 率いるビッグバンド Secret Society、ミュージカル・ストーリーテリングの Escape the Clouds[62] などである。イギリス系アメリカ人の作曲家 David Bruce は、カーネギー・ホールからの依頼で2010年に八重奏曲 'Steampunk' を制作した[63][64]

2006年、ネオ・ヴィクトリアン/スチームパンクのコンベンションである "SalonCon" が開催された。その後3年間開催され、アーティスト、ミュージシャン(Voltaire や Abney Park)、作家(Catherynne M. ValenteEkaterina SediaG. D. Falksen)を主役としたサロン、スチームパンクのワークショップやパネル展示、会議、社交ダンス講習会、スチームパンク・ファッションのパレードなどが行われた。このイベントについてはMTV[65]とニューヨークタイムズ[8]が伝えている。

コミコン・インターナショナルでもスチームパンクは普通に見られるようになっており、4日間の会期内の土曜日が「スチームパンク・デー」と呼ばれ、地方新聞のための撮影会が行われる[66][67]。同日開催される「アフター・パーティ」もスチームパンクにとって重要なイベントとなっている。2010年のパーティでは Veronique Chevalier が司会を務め、The Slow PoisonerUnextraordinary GentlemenVoltaire といったミュージシャンが出演、League of STEAM が特別ゲストとして登場した[68][69]。2011年には Unextraordinary Gentlemen が再び出演し、Abney Park も出演した[70]

スチームパンクはより主流のソースも惹きつけ始めている。例えば、2010年10月11日に放送されたテレビドラマ『キャッスル 〜ミステリー作家は事件がお好き』のエピソード "Punked" は、スチームパンクのサブカルチャーを特に取り上げており、ロサンゼルス地域のスチームパンクスがエキストラ出演している[71]。ミュージックビデオでも、デヴィッド・ゲッタの 'Turn Me On' やパニック・アット・ザ・ディスコの「モナリザのバラード」はスチームパンクの影響を強く受けている。

代表的なスチームパンク作品

海外小説

日本小説

漫画・アニメ・映画・ゲーム

脚注

  1. ^ a b Clute, John; Grant, John, eds (February 1999) [First published 1997]. “Steampunk”. The Encyclopedia of Fantasy. Contributing editors: Mike Ashley, Roz Kaveney, David Langford, Ron Tiner (Rev. ed.). New York: St. Martin's Griffin. pp. 895–896. ISBN 978-0-312-19869-8{{ISBN2}}のパラメータエラー: 無効なISBNです。. "STEAMPUNK A term applied more to science fiction than to fantasy, though some tales described as steampunk do cross genres. ... Steampunk, on the other hand, can be best described as technofantasy that is based, sometimes quite remotely, upon technological anachronism." 
  2. ^ ジェイムズ・P・ブレイロック、『ホムンクルス』、早川書房、387p〜396p(SF翻訳家山岸真の解説)
  3. ^ Sheidlower, Jesse (2005年3月9日). “Science Fiction Citations”. 2008年5月10日閲覧。
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  5. ^ Daniel, Lucy (2007). Defining Moments in Books: The Greatest Books, Writers, Characters, Passages and Events that Shook the Literary World. US: Cassell Illustrated. p. 439. ISBN 1844036057 
  6. ^ Kaplan, Janet (2010). Remedios Varo: Unexpected Journeys. Abbeville Press. ISBN 0789206277 
  7. ^ a b c d Grossman, Lev (2009年12月14日). “Steampunk: Reclaiming Tech for the Masses”. Time. http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,1945343,00.html 2009年12月10日閲覧. "Steampunk has been around for at least 30 years, with roots going back further. An early example is K. W. Jeter's 1979 novel Morlock Night, a sequel to H.G. Wells' The Time Machine in which the Morlocks travel back in time to invade 1890s London. Steampunk — Jeter coined the name — was already an established subgenre by 1990, when William Gibson and Bruce Sterling introduced a wider audience to it in The Difference Engine, a novel set in a Victorian England running Babbage's hardware and ruled by Lord Byron, who had escaped death in Greece. ..." 
  8. ^ a b c d La Ferla, Ruth (2008年5月8日). “Steampunk Moves Between 2 Worlds”. New York Times. http://www.nytimes.com/2008/05/08/fashion/08PUNK.html 2010年11月21日閲覧。 
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  14. ^ 階差機関は実際には蒸気機関駆動ではないし、コンピュータと呼べるほどの能力はない。より進化した設計の計算機械は解析機関である。
  15. ^ ウィリアム・ギブスン/ブルース・スターリング、『ディファレンス・エンジン』、角川書店からの出版時に収録された巽孝之による解説。現在では早川書房から再版された下巻421p〜429pにて再録
  16. ^ ジェフ・ヴァンダミア編著『Steampunk Bible』にファーストエイジ・スチームパンクの旗手として寄稿している
  17. ^ ウィリアム・ギブスン/ブルース・スターリング、『ディファレンス・エンジン』、早川書房版の下巻、433p〜446p
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参考文献

関連文献

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  • Strongman, Jay (2011), Steampunk: The Art of Victorian Futurism, Korero Books, ISBN 978-1-90762-103-1 
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関連項目

外部リンク

  • ウィキメディア・コモンズには、スチームパンクに関するカテゴリがあります。