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'''アロマテラピー'''({{lang-fr-short|aromathérapie}}<ref group="※" name="fr">{{IPA-fr|aʁɔmateʁapi}} アロマテラピ</ref>)は、[[花]]や[[木]]など植物に由来する芳香成分([[精油]])を用いて、心身の健康や美容を増進する技術もしくは行為のこと。 |
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また、[[お香]]やフレグランス・キャンドルも含め、生活に自然の香りを取り入れて[[ストレス (生体)|ストレス]]を解消したり心身をリラックスさせることも含めて呼ぶ場合も多い。 |
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'''アロマセラピー'''({{lang-en-short|aromatherapy}}<ref group="※" name="en">{{IPA-en|əˌroʊməˈθerəpi}} アロウマ'''セ'''ラピ</ref>)とも称される。 |
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[[File:Aromatas.JPG|thumb|right|250px|精油の瓶とディフューザー]] |
[[File:Aromatas.JPG|thumb|right|250px|精油の瓶とディフューザー]] |
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'''アロマテラピー'''({{lang-fr-short|aromathérapie}}<ref group="※" name="fr">{{IPA-fr|aʁɔmateʁapi}} アロマテラピ</ref>)または'''アロマセラピー'''({{lang-en-short|aromatherapy}}<ref group="※" name="en">{{IPA-en|əˌroʊməˈθerəpi}} アロウマ'''セ'''ラピ</ref>)は、一般的には、[[精油]](エッセンシャルオイル)、または精油の[[におい|芳香]]や植物に由来する芳香を用いて、病気や外傷の治療、病気の予防、心身の健康や[[リラクゼーション (心理学)|リラクゼーション]]、[[ストレス (生体)|ストレス]]の解消などを目的とする療法である<ref name="今西"/><ref name="バルチン"/>。 |
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実際、人に[[医療行為]]や[[美容]]を施すには、[[医師免許]]や[[美容師]]免許が必要となる。 |
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== 名称 == |
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「アロマテラピー」({{lang-fr-short|aromathérapie}}<ref group="※" name="fr"/>)という言葉は、20世紀に入ってからフランスの科学者ルネ・モーリス・ガットフォセによって作られた造語で、「アロマ」は[[芳香]]、「テラピー」は[[療法]]を意味するフランス語である。これを英語で発音すると「アロマセラピー」({{lang-en-short|aromatherapy}}<ref group="※" name="en"/>)となる。 |
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'''芳香療法'''、香料治療とも{{sfn|ヴェルナー|2001|p=161}}。実際様々な方法で用いられている{{sfn|ヴェルナー|2001|p=162}}。ムード作りのインテリアの一種としても使われている{{sfn|ヴェルナー|2001|p=162}}。使用される精油は植物に由来する揮発性の油で、それぞれ特有の芳香を持ち、生物活性が科学的に認められるものもある。 |
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「アロマトテラピー」と「ト」が入る表記も、「芳香療法」を意味する単語として文法的語源的には正しい。 |
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精油を使った医療は、[[アラビア]]や[[ヨーロッパ]]で昔から行われている[[伝統医学]]・民間療法のひとつである<ref name="由留木"/>。1990年代以降世界的に普及した{{sfn|ヴェルナー|2001|p=162}}。ストレス<ref name="pmid25234160"/>、うつ病<ref name="pmid28133489"/>、不安<ref name="pmid21309711"/>、睡眠の質<ref name="pmid25584799"/>、[[月経困難症]]<ref name="pmid29729556"/>、女性の性欲の刺激<ref name="pmid29765928"/>、疼痛に<ref name="pmid28070420"/>に有効であると[[システマティック・レビュー]]により示され([[癌性疼痛|がんの疼痛]]は緩和しないようである<ref name="pmid26884799"/>)、殺菌作用を持つ精油は、石鹸などに配合されたり、歯科などでも模索されている。現代では、自己管理の健康法としても用いられている{{sfn|ヴェルナー|2001|p=162}}。 |
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== 歴史 == |
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芳香植物の利用は古代にさかのぼるが、アロマテラピーそのものが提唱されたのは20世紀に入ってからである。また日本への紹介は1980年代以降である。 |
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==概説 == |
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=== 芳香植物の利用 === |
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精油を用いるアロマテラピーは、植物療法あるいは[[ハーブ]]医学から派生したもので<ref name="鳥居"/>、[[錬金術]]と深く関係して発展した<ref name="ヒロ・ヒライ"/>。アロマテラピーという言葉は、1930年頃にフランスの[[調香師]]・香料研究者の[[ルネ=モーリス・ガットフォセ]]が、アロマ(芳香)とテラピー(療法)を組み合わせて作った造語である<ref name="誤り"/><ref name="由留木"/><ref name="burn"/>。ガットフォセのアロマテラピーは、香料を使った療法であったが、その治療効果に香りは関係なかった{{sfn|ヴェルナー|2001|p=163}}。また彼は、近代科学を疑う自然運動家ではなく、アロマテラピーを一つの新しい見込みのある療法として医者に推奨していた{{sfn|ヴェルナー|2001|p=171}}。日本には、[[江戸時代]]に[[西洋医学]]が伝わった際に、精油を用いた医療が伝わり、[[蘭方]]で精油が薬として利用された<ref name="香料植物"/>。「アロマテラピー」の呼称では、1980年代に「イギリスからの自然派美容マッサージ」という形で導入されたため<ref name="塩田"/>、現在の日本では医療という認識は薄い<ref name="塩田" />。 |
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人類は洋の東西を問わず、植物の芳香を祭祀・儀礼・[[治療]]・[[美容]]に用いてきた。エジプトで[[ミイラ]]作りに防腐効果のある[[乳香]](フランキンセンス)や[[没薬]](ミルラ)などの植物由来の[[香料]]が用いられていたのは有名な例である。芳香植物の利用は世界の各地域で独自に発展し、近代医学が発達する以前の人間の健康を担ってきた。今でもそれらは、[[伝統医学]]や[[民間療法]]として受け継がれている。 |
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日本語では'''芳香療法'''と訳されることが多いが、元々は精油を[[薬剤]]として用いる薬物療法を指しており<ref name="鳥居" /><ref name="塩田" />、フランスでは現在もこの意味で使われる。イギリスに伝わって精油を使った美容法などが「アロマセラピー」と呼ばれるようになり、のちに精油の香りを嗅いで体と心を癒す感覚療法(嗅覚療法)、[[リラクセーション法]]なども含まれるようになった。アロマテラピー(アロマセラピー)の定義はあいまいかつ多様である<ref name="鳥居" /><ref>[http://www.meetsnature.com/podcast/aromahistory/aromahistory03/ Aromatherapie:近代アロマテラピーの始まりとその系譜] 高山林太郎</ref>。 |
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中世ヨーロッパでは、芳香植物の栽培と利用はもっぱら[[修道院]]の仕事であり、植物成分を水や植物油・[[アルコール]]に浸出して用いた。一方、イスラム圏では[[イスラーム医学|アラビア医学]]が発達し、[[イブン・スィーナー]](980年頃-1037年頃)は[[蒸留]]による精油の製法を確立し医学に応用した。これはアロマテラピーの原型とも考えられている。このアラビア医学は[[十字軍の遠征]]などを契機に徐々に西欧にも伝わっていった。その利用については、[[病者の塗油]]、[[塗油]]などの記事を参照のこと。 |
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現在日本では、広くは{{仮リンク|アロマコロジー|en|Aromachology}}(芳香心理学)、美容を目的とする行為、ただ精油の香りを楽しむ行為なども含まれる<ref name="今西" />。日本では精油業者や美容業界の主導で広まり、趣味や美容法、リラクゼーション法の一種として、女性を中心に人気を得ている<ref name="和田山崎" />。医療の分野では補完・[[代替医療]]のひとつとして知られる。病気の予防、通常の治療の補助的療法として利用され、[[介護]]や[[看護]]の場面で行われたり、病室の環境改善に用いられることもある<ref name="和田山崎">和田昌士・山崎邦郎 編著『においと医学・行動遺伝 アロマサイエンスシリーズ21 (5)』フレグランスジャーナル社 2004年</ref>。発祥の地であるヨーロッパでも、治療の主な手段となることはほとんどない<ref name="和田山崎" />。精油の医学的利用の研究者は少ないが<ref name="和田山崎" />、2009年には[[臨床研究]]は徐々に増えてきているとも伝えられる{{sfn||鈴木&大久保|2009}}。 |
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[[ルネサンス]]時代には[[香水]]が大流行し、精油の生産量が増大した。19世紀にはいると合成[[香料]]が出現し、また植物から有効成分だけを抽出して薬剤として用いるようになった。大きな産地の一つが[[ドイツ]]の[[テューリンゲン州|テューリンゲン地方]]の[[オーベルヴァイスバッハ]]を中心とする地域にあり、精油を樽に詰めて日本の背負い籠のようなもので、背中に担ぎ、ヨーロッパ中を商いして回る精油販売([[:de:Olitäten]])が、19世紀には一大産業になった。 |
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[[ティーツリー]]<ref>{{cite journal |doi=10.1128/CMR.19.1.50-62.2006 |title=Melaleuca alternifolia (Tea Tree) Oil: A Review of Antimicrobial and Other Medicinal Properties |year=2006 |last1=Carson |first1=C. F. |last2=Hammer |first2=K. A. |last3=Riley |first3=T. V. |journal=Clinical Microbiology Reviews |volume=19 |pages=50?62 |pmid=16418522 |issue=1 |pmc=1360273}}</ref>などのいくつかの精油は抗[[微生物]]活性が認められているが、[[真菌]]、[[細菌]]、[[ウイルス]]に対する臨床研究は依然として十分ではない<ref>{{cite journal2|language=en |first1=Gillian |last1=van der Watt |first2=Aleksandar |last2=Janca |title=Aromatherapy in nursing and mental health care |journal=Contemporary Nurse |volume=30 |issue=1 |pages=69?75 |date=August 2008 |pmid=19072192 |doi=10.5172/conu.673.30.1.69 |url=http://pubs.e-contentmanagement.com/doi/abs/10.5172/conu.673.30.1.69}}</ref>。 |
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=== アロマテラピーの提唱 === |
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20世紀初頭、科学的な分析・検証の上で[[精油]]を心身の健康に応用しようという試みが始まった。1920年代初頭、南フランスのプロバンス地方において、[[香料]]の研究者であった[[:fr:René-Maurice Gattefossé| ルネ・モーリス・ガットフォセ]](1881年-1950年)は実験中に手に火傷を負い、とっさに手近にあった[[ラベンダー]]精油に手を浸したところ<ref> 佐々木薫 『最新版アロマテラピー図鑑』 主婦の友社、2009年、6頁。</ref>傷の治りが目ざましく良かったことから、精油の医療方面での利用を研究し始めた。彼は1928年に研究の成果を学会で発表し、また『芳香療法(原題''Aromatherapy'')』という本を出版した。 |
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一般書籍でいわれる精油の効能は、科学的に証明されていないものが多い<ref name="バルチン" />。 |
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フランスの医学博士[[ ジャン・バルネ]](1920年-1995年)は精油を使った医療を実践して功績をあげ、1964年に『ジャン・バルネ博士の植物=芳香療法』を著し(1984年改訂版発行)、アロマテラピーの認知度を上げた。他方、ガットフォセの弟子である[[マルグリット・モーリー]](オーストリア生まれ、?-1963年)は、アロマテラピーを主に美容方面に活用できる技術として研究し、イギリスに伝えた。 |
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また、[[精神]]に関わる[[形而上学]]的な領域にも取り入れられたため、精油を植物の精髄である神聖な医薬品とみなしたり、他の伝統医学の理論を援用し、心身だけでなく[[魂]]の健康を目指す[[スピリチュアル]]な施術者もいる<ref name="カティ">スーザン・カティ『ハイドロゾル―次世代のアロマセラピー』川口健夫、川口香世子 訳、フレグランスジャーナル社、2002年</ref><ref>ロバート ティスランド『アロマテラピー―〈芳香療法〉の理論と実際』高山林太郎 訳、フレグランスジャーナル社、1985年</ref>。 |
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このため、現在のアロマテラピーには大きく分けてフランス系とイギリス系の二つの流れがあり、フランス系のアロマテラピーは医師の指導のもと精油を内服するなど、医療分野で活用されている。イギリス系のアロマテラピーはアロマセラピストと呼ばれる専門家によって施されるなど、[[医療]]とは区別され、心身のリラックスやスキンケアに活用されている。 |
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== 名称・分類 == |
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=== 日本のアロマテラピー === |
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アラビアやヨーロッパでは、伝統的に精油が医療に用いられていた。1930年頃にフランスの調香師・香料研究者ルネ=モーリス・ガットフォセが、精油を使った療法を「'''アロマテラピー'''」と名付け、1937年に精油の医療面での利用に関する本''Aromathérapie – les huiles essentielles hormones végétales'' を刊行した。「アロマ」は「[[芳香]]」(ギリシャ語:ἄρωμα<ref group="※">「アロマ」の語源はギリシャ語の「アローマ」で、芳香植物を意味する。</ref><ref>大槻真一郎 「「医学の父」ヒポクラテスの実像を求めて 後編」クレアタ・薬と文化の会『薬との長い付き合い』収録、ブレーン出版、1999年</ref>, ラテン語:arôma)、「テラピー」は「療法」(ギリシャ語:θεραπεία, ラテン語:therapeia)で、「アロマテラピー」はこのふたつを組み合わせた造語である<ref>[https://rintarotakayama.blogspot.com/2013/07/blog-post_23.html アロマテラピー余話 R林太郎語録] 高山林太郎</ref><ref>[http://www3.ocn.ne.jp/~yuhara/kaori-aroma.html アロマテラピーについて] 湯原淳平</ref>。英語では「'''アロマセラピー'''」({{lang-en-short|aromatherapy}}<ref group="※" name="en"/>)となる<ref group="※" name="呼び分け">フランスの「アロマテラピー」とイギリス・アメリカの「アロマセラピー」は本来意味が異なる。日本では同じ意味のことばとして使われることが多く、日本アロマ環境協会や日本アロマセラピー学会などでは、意味の差があるとはしていないが、人によっては使い分ける例もあるようである。本ページでは便宜的に「アロマテラピー」で統一するが、「メディカル」などの英語と組み合わさる場合は「アロマセラピー」と表記している。</ref>。医学博士の鳥居鎮夫は、「精油という芳香物質を使った療法」を、「香りを嗅ぐことによって病気を治す療法」を意味するアロマテラピー(芳香療法)と呼ぶのはおかしいが、おそらく香料の専門家であったガットフォセは、薬用植物の中で特に芳香性植物から抽出した精油の効能を取り扱うことを強調したのであろう、と述べている<ref name="鳥居">鳥居鎮夫 編集『アロマテラピーの科学』朝倉書店、2002年</ref>。「アロマ」は感覚をあらわすと同時に、実体ある芳香物質([[芳香化合物]])を意味している<ref name="鳥居" /><ref group="※" name="aroma">「アロマ」は曖昧な表現であるため香料関係者の間では好まれず、「パーヒューム」(鼻で感じる香り)、「フレーバー」(舌で感じる香り)などの用語が使われる。</ref>。「アロマテラピー」は感覚療法であると同時に植物療法(薬物療法)でもあり、非常にあいまいな用語である<ref name="鳥居" />。そのため香りの心理効果や芳香物質の薬理効果の研究の際に、アロマテラピーという用語を避け、'''アロマコロジー(芳香心理学)'''、'''アロマトロジー(芳香物質学)'''という言葉が使われることもある<ref name="鳥居" />。フランスのアロマテラピーでは、精油の薬理効果に重きを置き、香りは注目されない。精油の香りによる療法は、フランスではアロマテラピーと区別され、'''オルファクトテラピー(嗅覚療法)'''と呼ばれ、精神疾患や神経系疾患を治療するために利用される<ref name="オルファクトテラピー1">[https://ameblo.jp/iledesfleursparis/entry-11747457041.html オルファクトテラピー] Île des fleurs Paris Tomomi</ref><ref name="オルファクトテラピー2">[https://ameblo.jp/iledesfleursparis/entry-11809848902.html オルファクトテラピー 復習の日々 Île des fleurs Paris Tomomi]</ref><ref>[http://webcatplus.nii.ac.jp/webcatplus/details/book/25181888.html Aromatopia : the journal of aromatherapy & natural medicine 8(6)(37)]</ref>。 |
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精油の蒸留法は江戸時代に伝わり蘭医学などで用いられていた。明治時代には[[ニホンハッカ]]などの精油を輸出していた時期もあったが、合成香料や海外の廉価品におされ、廃れてしまった。 |
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===時代による定義の変遷=== |
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1970年代に、小学生やその親たちの間で[[ポプリ]]が流行し、ドライハーブへの関心が高まった。アロマテラピーが紹介されたのは1980年代で、はじめ[[ジャン・バルネ]]や[[ロバート・ティスランド]]らによる英仏の専門書が高山林太郎により邦訳され、やがて海外で技術を学んだ者たちが国内で実践を始めた。1990年代に[[エステティック|エステ]]ブームなどに乗って広まったこともあり、日本に伝わったアロマテラピーの方法はイギリス系に近いものであるが、近年では国内でも精油への科学的アプローチが進み、[[代替医療]]としてアロマテラピーに関心を寄せる医療関係者も増えている。2006年頃からバラの香りをかつてない程に再現した、本物のバラの精油よりも大幅に安価な合成香料が開発され、それを添加したガムやドロップが製品が流行し汗がバラの香りと言われて男女間で話題になり、「香り・アロマ」への関心が大衆の間でさらに高まる。 |
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鳥居鎮夫は、アロマテラピー(アロマセラピー)の定義は時代によって変遷があると指摘している。また、国によっても意味は異なる。 |
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# 精油を使って病気を治す技術 |
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# 精油を体内に取り込む技術 |
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# 精油の香りを嗅いで体と心を癒す技術 |
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フランス語の「アロマテラピー」は、「精油を使って病気を治す技術」を意味した<ref name="鳥居" />。フランスでは医療として医師が行ったが、伝播したイギリスでは主に美容目的で行われ、アロマセラピスト(香料治療師{{sfn|ヴェルナー|2001|p=161}})は医者ではなかったため、「病気を治す」という表現を避け、「精油を体内に取り込む技術」とされた<ref name="鳥居" />。時代が下るとイギリスなどでは、これに「精油の香りを嗅いで体と心を癒す技術」といった意味が加わった。前の2つは精油の薬理作用を基礎とする定義であり、最後の1つは嗅覚刺激によるものである<ref name="鳥居" />。アロマテラピー(アロマセラピー)は、時代や国、業界によって、意味するところが異なる。日本では、自然の香りを楽しむ[[森林浴]]などもアロマテラピーに含むこともある。 |
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現在では、美容を目的としエスティックサロンなどで行われる「'''エステティック・アロマセラピー'''」と、病気の治療や予防、症状の緩和を目的とし、医療、看護、介護で行われる「'''メディカル・アロマセラピー'''」の2つの領域に大別される<ref name="和田山崎" />。日本では最初、「エステティック・アロマセラピー」はイギリス、「メディカル・アロマセラピー」はフランスの影響を受けたものが広まったといわれる。日本の医療では、民間の「アロマテラピー」との混同を避け、「アロマセラピー」と呼ぶことが多いが<ref>[http://aroma-jsa.jp/ 一般社団法人 日本アロマセラピー学会] 臨床医を中心に組織された医療従事者の全国的な研究団体</ref>、フランス系(大陸系、医療系<ref group="※" name="医療">精油の医療への利用は各国で研究が行われており、病院で行われるアロマテラピーは、必ずしもフランス系というわけではない。</ref>)が英語で、イギリス系(美容系)がフランス語でよばれていることになる。 |
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== アロマテラピーのしくみ == |
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アロマテラピーの主役である[[精油]]が心身に働きかける経路は二つある。ひとつは嗅覚刺激、もうひとつは皮膚や粘膜を通して血流に乗り体内に入る経路である。しかし精油は数十から数百の揮発性[[有機物]]の混合物であり経口毒性があるなど、ひとつひとつの成分がどのように身体へ影響するのかを追跡するのは容易ではない。 |
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===現在の欧米での分類=== |
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生化学者のマリア・リサ・バルチンは、近年欧米では、アロマセラピー(芳香療法)、アロマトロジー(芳香物質学<ref name="鳥居" />)、アロマコロジー(芳香心理学)の3種類に分類されていると述べている<ref name="バルチン">マリア・リス・バルチン『アロマセラピーサイエンス』田邉和子 松村康生 監訳、フレグランスジャーナル社、2011年</ref>。 |
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蒸散した精油の芳香成分は鼻で感知され、嗅覚刺激として[[大脳辺縁系]]に到達する(嗅覚の詳しいシステムについては[[嗅覚]]の項を参照)。ここで重要なのは、嗅覚をつかさどる部位が、[[脳]]の中でも本能的な部分である旧皮質に存在することである。脳は嗅覚刺激を受け取ると無意識のうちに[[情動]]を引き起こし、[[視床下部]]に影響を与える。視床下部は身体機能の調整を行う中枢であるため、匂いは本能的に身体諸器官の反応を引き起こす鍵となりうる。 |
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;アロマコロジー(芳香心理学) |
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:芳香物質に関する技術と人間の心理作用、芳香物質の脳への影響と作用の仕組みの究明を主な目的とする。人間の感情・情動だけでなく、行動によい影響を与える香りの立証も目指す。名称は、1982年に[[:en:The Fragrance Foundation#Sense of Smell Institute|Sense of Smell Institute]](SSI、嗅覚研究所)によって提案された<ref name="バルチン" />。 |
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;アロマセラピー(芳香療法) |
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:「アロマテラピー」ではなく「アロマセラピー」と呼ばれる。SSIの定義では、心身の不調に対する植物芳香療法である。精神的な障害(慢性抗うつ病など)の軽減も目指す<ref name="バルチン" />。 |
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;アロマトロジー(芳香物質学、芳香物質療法) |
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:精油(芳香物質)を体内に取り込むことを主眼とする療法で、イギリス以外のヨーロッパで従来一般的なアロマテラピーを指す<ref name="バルチン" />。日本でフランス系、医療系アロマテラピーと呼ばれるものに重複する部分が大きい。内服、坐薬、膣内への利用などもあり、医師や有資格のハーバリストが行う内科的方法だが、イギリスやオーストラリア、アメリカでは、ハーバリスト、民間資格者、無資格者による施術が安全面・法律面で問題となっている<ref name="バルチン" />。3〜4.5mlもの精油を原液で皮膚に塗布するような激しい療法もある<ref name="バルチン" />。 |
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このように、補完・代替医療としての「アロマセラピー」と、アロマトロジー的な意味合いを含めたヨーロッパ大陸型の従来の「アロマテラピー」は、かなり趣が異なる。補完・代替医療としての「アロマセラピー」では、「治療」より「癒し」に重きが置かれる<ref name="バルチン" />。 |
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精油の香りによって得られる安心感・快感・緊張感・覚醒感・瞑想感などにともなう情動が、心身のバランスを促すことが期待される。 |
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===スピリチュアルな癒し=== |
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=== 精油が血流に乗る経路 === |
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精油の医療への利用は、第一次世界大戦時にフランスのガットフォセなどにより再評価され、精油の薬効の科学的研究が行われた。それと同時に、精神に関わる[[形而上学]]的な領域にも取り入れられた。アロマテラピーを世界的に流行させるきっかけになったロバート・ティスランドは、中国思想や[[西洋占星術]]の影響を受けており、その著作には[[ニューエイジ]]的な神秘思想が見られる{{sfn|ヴェルナー|2001|pp=164-166}}。ヨーロッパの錬金術では、蒸留により植物から精髄([[クィンタ・エッセンチア]]<ref group="※" name="第五元素">クィンタ・エッセンチアは不老不死の秘薬エリクシルと同一視された。</ref>、第五元素、[[エーテル (哲学)|エーテル]])として精油の抽出を目指しており、現在でも精油を植物の力や[[波動 (オカルト)|波動]]を宿す神聖な医薬品と見なす考え方がある<ref name="カティ"/>。アロマセラピストには、花の「活気」(バイブレーション、振動という言葉も好まれる)は、化学的な方法では殺されてしまうが、錬金術師が[[第五元素]](エーテル)を抽出するために用いた水蒸気蒸留法で精油を抽出すれば保つことができると信じる人もある{{sfn|ヴェルナー|2001|p=178}}。 |
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芳香成分が血流にいたるまでには様々なルートが考えられる。吸収された成分は、最終的にはほとんどが肝臓や腎臓で代謝され、尿とともに排泄される。 |
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ヴェルナーは、中世ヨーロッパの錬金術への憧れは、近代医学に対する不満とニューエイジの神秘思想からきていると指摘している{{sfn|ヴェルナー|2001|p=178}}。ヨーロッパ伝統医学における[[占星術]]的な身体観(獣帯人間)や植物の解釈、[[アーユルヴェーダ]](インド伝統医学)の[[チャクラ]]や[[中国医学]]の[[五行]]といった理論、宝石療法や波動理論などを取り入れた、スピリチュアルな癒し([[心霊治療]]、波動療法、[[エネルギー療法]])としてのアロマテラピーもある<ref name="カティ"/><ref>パトリシア・デーヴィス『パトリシア・デーヴィスのサトル・アロマテラピー―エッセンシャルオイルを使ったスピリチュアルな癒し』バーグ文子 訳、 BABジャパン、2008年</ref>。精油を使って心身だけでなく[[魂]]、サトルボディ(微細身<ref group="※">[[インド哲学]]や[[アーユルヴェーダ]]の用語で、物体としての身体(粗大身)に対して、霊魂が宿る非物質的身体を指す。このふたつの身体の連結点が[[チャクラ]]であると考えられた。</ref>、エネルギー体、霊体)の健康を目指す[[スピリチュアリティ|スピリチュアル]]な施術者もいる<ref name="カティ"/>。ただし、スピリチュアルな解釈を重視し科学的研究を軽視または無視する施術者も存在するため、精油による中毒や副作用などの問題が起こる可能性もある<ref name="バルチン" />。 |
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吸収ルートは大別すると次の4つである。 |
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ドイツの神秘思想家[[ルドルフ・シュタイナー]]の世界観を背景とし、[[西洋医学]]に基礎を置いた代替・補完療法である人智医療(アントロポゾフィー医学、シュタイナー医学)・看護は、1900年代初頭にスイス・ドイツを中心に発展したが、このケア技術の一つに精油を用いた療法がある。{{仮リンク|リズミカルマッサージ|de|Rhythmische Massage}}を前身とする'''リズミカルアインライブング'''(独語:Rhythmishe Einreibung)と呼ばれる療法は、「アロマオイルや軟膏を定型フォルムに添ってリズミカルにケアリングタッチで皮膚に塗擦するケア」で、シュタイナーと協働していた医師{{仮リンク|イタ・ヴェーグマン|de|Ita Wegman}}が創始した。その源流は[[スウェーデン式マッサージ]]にあるとされているが、マッサージと異なり、筋肉を揉みほぐすのではなく主に軽擦法を用いてオイルや軟膏を皮膚に塗布しなじませることを主眼とする。加えてリズミカルな手技によって人間の自然治癒力の回復を促すケア技術であるといわれている。「四構成要素モデル」(人間を自然界の四つの基本存在の特質である物質(鉱物)・生命力(植物)・心(動物)に加えて精神を持つ[[ホリスティック]]な存在と考える)と、「三層構造モデル」(人間を「頭部:神経 - 感覚システム」「胸部:リズムシステム」「腹部:四肢 - 代謝システム」の三層の機能モデルで捉えて、健康とは「両極のバランス維持」であり、中間にあるリズムシステムが両極の調和を図ると考える)という人智医療の理論に基づいている。痛みの緩和や呼吸の改善、健康感上昇、信頼感・安心感の形成、集中力強化などの効果があるとされ、また「共に癒されるケア」「看護の質を耕すケア」「孤独を癒し愛を伝えるケア」としての可能性を持つケア技術でもあるという。<ref>[https://cir.nii.ac.jp/crid/1520290883708266624 伊藤良子「イタ・ヴェーグマン/ハウシュカによるリズミカルアインライブング : その歴史・理論・実践」] 京都市立看護短期大学紀要 37, 1-12, 2013-02-01</ref> |
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* ボディトリートメントなどによって、[[皮膚]]から[[真皮]]の[[毛細血管]]に至るルート。 |
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* [[呼吸]]により、鼻から喉・気管支・肺にとどく間に[[粘膜]]に吸着し、粘膜下の血管に入るルート。 |
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* 呼吸により[[肺胞]]でのガス交換時に酸素とともに血流に乗るルート。 |
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* 経口で口から小腸に至る[[消化管]]から吸収されるルート([[坐剤]]として肛門や膣の粘膜から吸収させる例もある)。 |
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== 精油 == |
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皮膚は多層構造になっており、皮膚に吸収された芳香物質の血管への到達は極めて緩慢である。呼吸器からの吸収はこれよりも早いが、空気中の芳香物質の濃度を考えれば吸収されるのは微量と思われる。皮膚や呼吸を通して吸収されるルートに比べ、消化管での吸収は非常に急激で多量である。消化管の粘膜に対する強い刺激が予想され、また異物である精油成分の血中濃度が急速に高まるため、代謝系に大きな負担がかかる恐れがある。強酸である胃酸による成分の変性の可能性も捨てきれない。このため、精油の経口もしくは坐剤による使用は、十分に知識のある医師の判断のもとで行われるべきである。 |
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{{main|精油}} |
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アロマテラピーで使われる精油は、花、茎、幹、根、樹脂、果皮などを[[水蒸気蒸留]]することで得られる[[揮発]]性の[[油]]である。[[油脂]]ではない。低温圧搾(柑橘類のみ)で抽出された[[エッセンス]]や溶剤で抽出されたアブソリュートは、揮発しない成分を含み、厳密には精油ではないが、おおざっぱに分類すれば精油と呼ばれる<ref name="バルチン" />。主に食品業界で[[香料]]として利用され、香水や化粧品にも用いられる。ほとんどの種類の精油は[[食品添加物]]として認証を得ているため、[[動物実験]]で[[毒性]]が確認されている<ref name="バルチン" />。[[疎水性]]であり、[[ビタミンC]]などの[[水溶性]]成分は含まれない。100-250種類程度の[[芳香化合物]](芳香分子)からなるものが多いが、[[ローズウッド (クスノキ科)]]や[[クラリセージ]]のように、数種類の芳香化合物で構成されるものもある<ref name="荘司">荘司菊雄『においのはなし―アロマテラピー・精油・健康を科学する』技報堂出版、2001年</ref><ref group="※">精油は[[有機化合物]]と言われることもあるが、これは昔の[[化学]]用語で、現在では有機化合物・[[無機化合物]]という分類に意味はない。学問の区分名として使われる。</ref>。 |
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抗菌、抗真菌、抗微生物作用などがみられる精油もある<ref name="バルチン" />。精油の薬理効果は、[[アルコール]]や[[エステル]]といった各成分の薬理効果が重複しており<ref name="荘司"/>、成分の相互作用について不明な点も多く<ref>[http://www.yamanishiclinic.jp/hayfever6.html 花粉症を知る! 治療 (アロマテラピー)] 山西クリニック 山西敏朗</ref>、その作用を特定することは容易ではない。原料植物の精油成分の含有量は、地域や生産年、抽出部位によって違いがあり、業者によって原料量・蒸留器具・蒸留時間も異なるため、同じ植物の精油でも、製品によって成分の含有量に違いが見られる。理学博士の荘司菊雄は、アロマテラピーに用いる精油には、「抽出植物名([[学名]])、抽出部位、産地、[[ロット管理|ロット]]ごとの分析表」が不可欠であると述べている<ref name="荘司"/>。しかし、農家から精油の買い付けをするアロマセラピストの中村あづさアネルズは、商品として販売される精油は、ラベルの名称と中身、成分分析表が違うことがあり、明らかに香りがラベルと異なる場合もあると指摘している。そのため薬剤師・翻訳家の林真一郎は、成分分析表は重要なものだが、この有無だけでアロマテラピーに適しているか判断することはできないと述べている。なお、医療に使われるほど高品質な精油であるとして、「医療グレード」「セラピーグレード」と呼ばれる商品があるが、このような規格はなく、ただの造語にすぎない<ref name="アニマル">[http://animalaromatherapy.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-bff6.html ペットに対するアロマセラピーの歴史] 動物のアロマセラピー最新事情 日本アニマルアロマセラピー協会</ref><ref name="フランス">[https://rintarotakayama.blogspot.com/2013/06/blog-post_27.html フランスのアロマテラピーの現状について]</ref>。 |
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=== 精油の体内での作用 === |
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ここでは、伝統的な[[植物療法]]から推測される精油の働きについて述べるにとどめる。 |
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=== 精油の作用・研究 === |
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; 生体組織への直接的な関与 |
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{{See also|嗅覚|精油#薬理効果・臨床研究}} |
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: 例:ローマン・[[カモミール]]の(筋肉などの)鎮痙作用、[[ローズマリー]]の血行促進作用、[[ラベンダー]]の止血作用、など |
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精油が心身に働きかける経路は、次の3つがあると言われる<ref name="由留木">[https://cir.nii.ac.jp/crid/1520290884843960960 ラベンダーの香りと神経機能に関する文献的研究 由留木裕子 鈴木俊明] 関西医療大学紀要6、2012年</ref>。 |
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; 防御システムを助ける働き |
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: 例:[[ティートリー]]の抗菌作用、[[乳香|フランキンセンス]]の免疫強化作用、[[ユーカリ]]の去痰作用、など |
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; 代謝を助ける働き |
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: 例:[[ジュニパー]]の利尿作用、[[グレープフルーツ]]のリンパ系刺激作用、など |
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; 心身のバランスへの関与 |
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: [[クラリセージ]]の[[エストロゲン]]様作用、[[ペパーミント]]の[[三半規管]]の調整作用、[[ネロリ]]の抗不安作用、など |
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* [[気化]]したものを吸入し、[[嗅覚]]刺激として[[中枢神経]]系に働きかける経路(吸入した場合、肺から血液にも溶けこむ) |
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なおこれらの作用はそれぞれの精油の働きの一端に過ぎない。精油はそれぞれに様々な性格をもち、組み合わせることによりさらに多様な作用を見せる場合もある。また、経口毒性があるため、用法を誤ればかえって心身に害をもたらすので注意が必要である。 |
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* 皮膚に精油を塗った場合に、皮膚を通過して血流に乗り体内に入る経路 |
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* 経粘膜投与(経直腸、経膣投与、うがい液としての使用)、経口投与で、胃や腸などの粘膜から吸収されて血液に溶け込み、全身へ行きわたる経路 |
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精油は数十から数百の揮発性[[化合物]]の混合物であり、ひとつひとつの成分がどのように人体へ影響するのかを追跡するのは容易ではなく、人体への影響の詳細は不明な部分が多い。同じ精油・同じ薬理成分でも、使用法の違い、精油が吸収される経路の違いによって薬理作用は異なり、人体に与える影響はかなり異なることが分かっている<ref name="塩田" />。例えばサンダルウッドの精油は、吸引すると刺激作用が、マッサージに用いると鎮静作用が見られた<ref name="バルチン" />。内服を除いて、どの方法でも人体に吸収される精油はごく微量である<ref name="塩田" />。 |
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=== 精油の皮膚への作用 === |
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; 収れん作用(アストリンゼント作用) |
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: 例:[[イランイラン]]、[[サイプレス]]、[[サンダルウッド]]([[白檀]])、[[ジュニパー]]、[[フランキンセンス]]([[乳香]])、[[ローズオットー]]、[[ローズマリー]]など |
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; 保湿作用(モイスチャー作用) |
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: 例: |
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; エリモント作用(皮膚をやわらかくする働き) |
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: 例:[[ベンゾイン]]([[安息香]])など |
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精油を吸入した場合、におい分子が嗅覚器で[[活動電位|神経インパルス]]に変換されて脳に伝わり、心身に影響を与える<ref name="塩田" />。嗅覚は感情に密接に結び付いた、基本的な感覚である。蒸散した精油の芳香成分は鼻で感知され、嗅覚刺激として視床下部から下垂体にかけた領域、いわゆる[[大脳辺縁系]]に到達する。大脳辺縁系は、[[脳]]の中でも原始的な部分であり、[[扁桃体]]と[[海馬 (脳)|海馬]]が[[神経]]インパルスにより活性化するが、この2つは記憶、性欲、感情、想像力の中枢であることがわかっている<ref name="バルチン" />。(匂い情報の脳への伝達、脳への影響の詳細は解明されておらず、煩雑になるため省略する。)香りの吸入で、体内に変化が起こり、血圧の変化など複数の生理反応が誘発される可能性がある<ref name="バルチン" />。心理面への芳香の影響の研究は、1983年から嗅覚研究所(SSI)と[[エール大学]]の共同研究が行われた<ref name="バルチン" />。 |
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<!--WP:NOTMANUAL |
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== 精油を使用するときの主な注意点 == |
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* 絶対に原液を直接飲んだり、直接肌につけたりしてはいけない。ただし、[[ラベンダー]]と[[ティートリー]]については例外的に少量を皮膚につけても大丈夫とされることもある(日本アロマ環境協会においては、推奨されていない)。 |
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* 目、目のまわり、唇、その他粘膜質の部分には希釈したものでも使用してはいけない。 |
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* 体質や精油の成分によっては肌に強い刺激を受けたり、[[アレルギー]]を起こす場合があるため、肌に使用する際は使用前に[[パッチテスト]]を行う。 |
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* 3歳以下の乳幼児へは、[[芳香浴]]以外の使用、例えば[[マッサージ]]、お[[風呂]]用([[沐浴]])などの使用法は避ける。 |
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* 日光、温度、湿度、酸素などの影響を受けやすいため、遮光性のあるガラス瓶に保存する。保管場所は直射日光が当たらない冷暗所にする。 |
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* 精油の瓶が倒れていると精油の成分が瓶のふたを腐食させるおそれがあるため、精油の瓶は立てて保管する。 |
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* プラスチックや家具の塗装、人工大理石を溶かす作用があるので注意する。 |
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* 小動物のいる部屋で精油を焚く場合は換気に注意する。 |
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* 引火性があるため火気に注意する。 |
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* 保存期間は柑橘系が約半年、それ以外が約1年となっており、この期間を目安に使い切るようにする。期間内であっても精油の色や香りに異変を感じたら使用を中止する。 |
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* 妊娠中の使用については医師に相談してから十分な注意を払い使用する。一部の精油には[[排卵]]・[[通経]]([[月経]]を促進させる)作用があるため。<br/>ローマン[[カモミール]](妊娠初期)、[[クラリセージ]]、[[サイプレス]]、[[シダー|シダーウッド]]アトラス、シダーウッド[[ヴァージニア]] 、[[ジャスミン]](妊娠中期~後期まで。出産時には有効なオイルとされる)、[[ジュニパーベリー]]、[[ゼラニウム]]、[[マジョラム]]、[[ペパーミント]]、[[ラベンダー]](妊娠初期)、[[レモングラス]]、[[ローズオットー]](妊娠初期)、[[ローズマリー]] |
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* 次の精油は刺激が強いため、[[敏感肌]]、[[アレルギー]]体質の人はごく少量から様子をみながら試して使う。<br/>[[エレミ]]、[[カボス]]、[[カユプテ]]、[[月桃]]、[[グレープフルーツ]]、[[クミン]]、[[クローブ]]、[[クロモジ]]、[[シストローズ]]、[[シダーウッド]]、[[シトロネラ]]、[[シナモン]]*、[[シナモンリーフ]]、[[ショウガ|ジンジャー]]、[[杉]]、[[スペアミント]]、[[ゼラニウム]]、[[ライム]]、[[ティートリー]]、[[ディルシード]]、[[ナツメグ]]、[[ニアウリ]]、[[パイン]]、[[バジル]]、[[バルサム]]*、[[リナロール]]、[[薄荷]]、[[ヒバ]]、[[ゲッケイジュ|ベイ]]、[[ペパーミント]]、[[ベルガモット]]、[[マヌカ]]、[[柚子]]、[[アルバローズ]]、[[ダマスクローズ]]、[[ローズマリー]]、[[ローマンカモミール]]、[[ロベージ]] など。*の精油はしばしばアレルギーを引き起こすといわれる。 |
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* 次の精油を使用し、マッサージ等を行った場合、使用後少なくとも12時間の間は太陽光([[紫外線]])を浴びることを避ける。精油に含まれる成分([[フロクマリン]]類:[[ベルガプテン]]、[[ベルガモテン]]、[[メキシクマリン]]など)と紫外線が反応し、かゆみ・発赤・水疱・しみなどの色素沈着などの原因となる光毒性(光感作)があるため。<br/>[[アンジェリカルート]]、[[カボス]]、[[グレープフルーツ]]、[[クミン]]、[[タジェット]]、[[バーベナ]]、[[ベルガモット]]、[[柚子]]、[[ライム]]、[[レモン]] など |
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アロマ・マッサージでは、精油はわずかに経皮吸収され、血液に溶け込むと言われる。ただし、生化学者のマリア・リサ・バルチンは、精油を植物油で希釈してマッサージを行った場合、ほとんどの精油成分は経皮吸収されずに、皮膚に残留する可能性が高いと述べている<ref name="バルチン" /><ref>[http://animalaromatherapy.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-95fe.html 精油成分は本当に健康な人の皮膚から吸収されるでしょうか。] 動物のアロマセラピー最新情報 日本アニマルアロマセラピー協会</ref>。 |
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== 事故例 == |
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アラビア・ヨーロッパでは、古くから精油が治療に用いられてきた。ヨーロッパで精油が効果を発揮するメカニズムの研究が進められているかというと、必ずしもそうではなく、かつての漢方薬同様、効果や適応は伝承や経験による部分が大きい<ref name="和田山崎" />。用法や安全性に関する検証も、十分には行われていない<ref name="和田山崎" />。 |
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[[聖路加看護大学]]の鈴木彩加・大久保暢子は、[[医学中央雑誌]]におけるアロマテラピーに関する150の論文(1983年 - 2008年6月)の内、精油の種類が記載されていない又は詳細不明のものが20件あり、実験研究は6論文と少なくアロマテラピーの有用性を示すには十分といえないと指摘している{{sfn||鈴木&大久保|2009}}。アロマテラピーは[[ランダム化比較試験]]の実施が極めて難しく(香りがすれば被験者にも分かってしまうため)、また主に医療の補助的手段として用いられるため、単体でははっきりした結果が得られないことも多い<ref name="今西" /><ref name="バルチン" />。精油の偽装が広く行われているため、臨床研究で使用された精油が100%天然でない、または材料植物が表示と異なる可能性も否定できないなど<ref name="今西" /><ref name="真正ラベンダー">[http://animalaromatherapy.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-6312.html 真正ラベンダー精油に鎮静効果があるとは限らない] 動物のアロマセラピー最新情報 日本アニマルアロマセラピー協会</ref>、評価が難しい面がある。不十分な研究や個人的な経験がエビデンスとして取り上げられることもあり<ref name="バルチン" /><ref>[http://animalaromatherapy.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-b646.html ベビーアロマ/妊産婦のアロマはなぜ危険なのでしょう?] 動物のアロマセラピー最新情報 日本アニマルアロマセラピー協会</ref>、質の高い臨床研究と、そのための研究デザインの作成、使用される精油の質・材料植物の品種の保証が必要とされている<ref name="今西">今西二郎 編集『医療従事者のための補完・代替医療 改訂2版』金芳堂、2009年</ref>{{sfn||鈴木&大久保|2009}}。 |
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医療では、看護師ががん患者や妊産婦に対して、睡眠促進、[[浮腫]]の軽減、筋肉の緊張の緩和などの目的で行っている。精油を用いた[[マッサージ]]や足浴などが、浮腫や不眠等の症状緩和に有効なことは経験的に認められており、活用されているが、エビデンス確立には至っていない{{sfn||鈴木&大久保|2009}}。 |
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アロマテラピーの書籍や民間資格でいわれる精油の効能は、ハーブや精油の民間療法の伝承がベースであるものも多く、広く知られた効能でも科学的根拠が存在しない「都市伝説」のようなものもある<ref name="林真一郎127">林真一郎 「しんいちろうの物申す!!(7) アロマテラピーの都市伝説を検証する!」、「アロマトピア 第127号」 2014年、フレグランスジャーナル社</ref>。古いイギリスの本草書などにあるハーブ療法で、チンキ(水溶性・油溶性成分を含む)やティー(水溶性成分を含む)の形で使われた情報を引用している場合もあるが、精油には水溶性成分が含まれないため、ハーブの効能をそのまま利用することはできない<ref name="相互作用">[http://animalaromatherapy.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-657b.html 聞いたことがない!習っていない!証拠がない!] 動物のアロマセラピー最新情報 日本アニマルアロマセラピー協会</ref>。また、生化学博士のマリア・リス・バルチンは、コモン・[[ラベンダー]]([[:en:Lavandula angustifolia|Lavandula angustifolia]])や[[テンジクアオイ属]]の通称ゼラニウム([[:en:Pelargonium graveolens|Pelargonium graveolens]])の精油<ref group="※" name="ゼラニウム">フウロソウ属の''[[:en:Geranium macrorrhizum|Geranium macrorrhizum]]'' の精油もあるが、日本でゼラニウム精油と呼ばれるものの多くは''Pelargonium graveolens'' の精油である。</ref>は、別の植物の効能などが間違えて引用され、情報が混乱していると指摘している<ref name="バルチン" /><ref>[http://animalaromatherapy.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-67d5.html ゼラニウム精油のこと] 動物のアロマセラピー</ref><ref>Maria Lis-Balchin 編集 ''Geranium and Pelargonium: History of Nomenclature, Usage and Cultivation (Medicinal and Aromatic Plants - Industrial Profiles)'' CRC Press、2002年</ref>。精油販売業者が無根拠な薬効を主張することもあり、世界中で精油の[[連鎖販売取引]]([[マルチ商法]])を行う[[ヤングリヴィング]]と[[ドテラ]]は、医薬品として認証されていない自社精油を、[[エボラ出血熱]]などに治療効果があると主張して販売したとして、2014年にアメリカ合衆国の政府機関・[[アメリカ食品医薬品局]](FDA)から警告を受けている<ref>[http://transact.seesaa.net/article/406255757.html 万能薬な効果(エボラを含む)を宣伝するエッセンシャルオイル業者Young LivingとdōTERRAにFDAが警告] Kumicit Transact</ref><ref>[http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2014/ucm416023.htm Young Living 9/22/14 WARNING LETTER] U.S. Food and Drug Administration(アメリカ食品医薬品局)</ref><ref>[http://www.inquisitr.com/1497917/fda-warning-letters-young-living-doterra-consultants-must-cease-marketing-claims-that-essential-oils-fight-disease/ FDA Warning Letters: Young Living,dōTERRA Consultants Must Cease Marketing Claims That Essential Oils Fight Disease] The Inquisitr News.</ref><ref>[http://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/2014/ucm415809.htm dōTERRA International, 9/22/14 WARNING LETTER]</ref>。 |
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=== 毒性・香害・中毒 === |
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精油は高濃度かつ複雑な化合物であり、使用には注意を要する。[[毒性]]については、自然由来であるためまったく副作用がないと言われており、または使用をやめればすぐに副作用の症状は治まると考えるアロマセラピストも存在するが誤りである<ref name="バルチン" />。 |
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しかも低年齢層、特に[[乳幼児]]への精油の使用は危険で[[呼吸器疾患]]などのリスクがある事がわかっており、近くで使用するだけでも問題と言われている<ref name="バルチン" />。気道感染を起こした幼児がミント精油などに含まれる[[メントール]](ハッカ脳)入り軟膏を治療に使用したところ、多くの症例で呼吸器に強い痛みが生じ、少数ではあるが[[チアノーゼ]]も認められた<ref name="バルチン" />。 |
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また精油[[香害]]<ref>{{Cite web|和書|title=香りを扱う仕事で考える、「香害」問題について|date=2022-04-14|url=https://aromaman.biz/%E9%A6%99%E3%82%8A%E3%82%92%E6%89%B1%E3%81%86%E4%BB%95%E4%BA%8B%E3%81%A7%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B%E3%80%81%E3%80%8C%E9%A6%99%E5%AE%B3%E3%80%8D%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/|accessdate=2022-04-14|publisher= 湘南鎌倉アロママン 真木真奈}}</ref>として感じる人も少なくなく、[[アレルギー]]等を引き起こす精油の[[感作]]<ref group="※" name="感作">ある[[抗原]]に対し、生体をアレルギー反応をおこしうる状態にすること。例えば、ある精油に感作すると、以降その精油や類似の精油、香料等に触れることで、アレルギー反応が起こる可能性が高くなる。</ref>作用が大きな問題となっており、以前は安全と考えられたティーツリー精油による[[接触性皮膚炎]]も報告され、日本ではラベンダー精油の陽性率が増加している<ref name="バルチン" />。[[アトピー性皮膚炎]]の患者では、精油を使用するマッサージで最初問題がなくても、時間を置いて再びマッサージを行うと、湿疹が悪化する例があったが、これは感作が起きたことが原因と考えられている<ref name="バルチン" />。アロマセラピストの皮膚炎も増加している<ref name="バルチン" />。低温圧搾法で得られた[[柑橘]]系精油に含まれるリモネンは、短期間で酸化し感作物質に変化し、また光毒性を持つ[[フラノクマリン]]が含まれるため、皮膚への塗布はふつう行われない<ref name="バルチン" />。 |
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精油の中毒例は、[[シネオール]]を含有するもので特に多い。ユーカリ精油で3.5mlという少量の内服で死亡例が複数報告されている<ref name="バルチン" />。 |
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現在ヨーロッパでは、2002年[[欧州指令]]により、精油は使用条件と警告をラベルに記載するよう義務付けられている<ref name="バルチン" />。また[[ナノテクノロジー]]の進化で精油のマイクロカプセル化の技術が確立し利用法が多様化し、様々なものに添加されるようになったことで、精油の毒性リスク、感作<ref group="※" name="感作"/>のリスクは増大している<ref>[http://www.ekouhou.net/マイクロカプセル化した精油の応用/disp-A,2009-526644.html マイクロカプセル化した精油の応用] ekouhou.net</ref><ref>[http://animalaromatherapy.cocolog-nifty.com/blog/2014/11/micro-encapsula.html Micro Encapsulation of EOs (精油のマイクロカプセル化;パウダー化)] 動物のアロマセラピー</ref>。[[欧州連合]](EU)では、欧州における新しい化学品規制[[REACH]](REACH規則:Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals)が、2008年から運用されており、精油を含む香料も対象となっている<ref name="経済産業省">[http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/reach.html REACH(欧州化学品規制)について] 経済産業省</ref><ref>[http://blog.livedoor.jp/hennoji/archives/52336033.html アグリのお豆でコーヒーちゅう & 第56回各務ヶ原カンファレンスの報告] へんおじの闘病記</ref><ref name="その2">[https://ameblo.jp/iledesfleursparis/entry-11915101740.html ラベンダー農家の苦悩 その2] Île des fleurs Paris Tomomi</ref>。ラベンダーなどの一部の精油が、アレルギーを引き起こす可能性があるなどの理由で規制対象となっており、将来的に「内服または吸入した場合、死亡する可能性がある。」という警告ラベルが義務付けられる可能性がある<ref name="EU">[http://www.dailymail.co.uk/wires/ap/article-2746615/Lavender-farmers-rebel-against-EU-chemical-rules.html Lavender farmers rebel against EU chemical rules] Associated Press</ref>。 |
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精油と医薬品との[[相互作用]]も指摘されている。例えば、降圧剤には[[グレープフルーツ]]ジュースを一緒に摂取することを禁止しているものがあるが、柑橘系精油にも含まれる[[フロクマリン]]の1種との相互作用のためである<ref name="相互作用2">[http://animalaromatherapy.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-369a.html メントール入りタバコを吸っていると禁煙しずらい!] 動物のアロマセラピー最新事情 日本アニマルアロマセラピー協会</ref><ref>[http://animalaromatherapy.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-04b0.html 精油の鎮静作用] 動物のアロマセラピー最新事情 日本アニマルアロマセラピー協会</ref>。医薬品との相互作用の研究と、その危険性の周知が必要とされている<ref name="相互作用2"/><ref name="相互作用">[http://animalaromatherapy.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-657b.html 聞いたことがない!習っていない!証拠がない!] 動物のアロマセラピー最新情報 日本アニマルアロマセラピー協会</ref>。 |
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=== ペットの中毒事例 === |
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近年「アニマル・アロマセラピー」「アニマル・アロマ」などの呼び名で、ペットの治療やノミ取りに精油を使うことが流行し、それに伴いペットの[[中毒]]事例が報告されている。アメリカ獣医師会雑誌に収録された論文では、犬猫におけるティーツリー精油による中毒事故が443件(2002 - 2012年)報告されている(データはthe ASPCA Animal Poison Control Center databaseによる)<ref> |
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[http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24344857 Concentrated tea tree oil toxicosis in dogs and cats: 443 cases (2002-2012). Khan SA1, McLean MK, Slater MR] [[アメリカ国立衛生研究所]]</ref>。中毒を起こした精油の量は0.1mL - 85mLであったが、最小量の0.1mLは、精油1滴を平均で0.05mLとしてもわずか2滴である。 |
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動物は食性の違いによって、化学物質の代謝や分解能力に違いがあり、一般的に、草食動物に比べて肉食動物は[[代謝]][[酵素]]が少なく、精油などの脂溶性物質の代謝能力は低いとされている。ペットとして飼われる動物では、肉食動物の[[猫]]や[[フェレット]]は、遺伝的に精油の代謝能力が特に低いことがわかっている<ref name="アニマル">[http://animalaromatherapy.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-bff6.html ペットに対するアロマセラピーの歴史] 動物のアロマセラピー最新事情 日本アニマルアロマセラピー協会</ref><ref>日本アニマルアロマセラピー協会 (著) [http://truthaboutpetfood.com/important-message-from-a-dear-friend 猫から飼い主への手紙] {{en icon}} ブログハウス、2007年</ref>。「アニマル・アロマセラピー」は、草食動物である馬に対する精油の使い方が基本にあり、人間用の処方がそのまま犬・猫に利用されている場合も見うけられる<ref name="アニマル"/>。 |
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== 方法 == |
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精油が人体に影響を及ぼす方法は、精油を吸入した場合に、嗅覚刺激として脳に伝わり心身に影響を与えるものと、外用・内服することで血管に入り、全身を巡るものがある<ref name="塩田" />。前者は精油の芳香による感覚療法、後者は精油の薬理作用を利用した薬物療法である。マッサージなどの手段に補助的に精油を用いるものもある<ref name="鳥居" /><ref name="今西" />。 |
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;薬物療法的なもの<ref group="※" name="嗅覚">精油がカプセルなどに密封されている場合を除き、香りがするため感覚療法的な側面もある。</ref> |
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*精油原液の塗布、内服 |
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;感覚療法的なもの<ref group="※" name="経肺">嗅覚刺激だけでなく、肺から微量の精油が吸収され血液にも溶けこむため、薬物療法的な側面もある。</ref> |
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*揮発した精油の吸入 |
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*精油のにおい分子を拡散させるディフューザーなどを用いた芳香浴 |
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;他の方法に補助的に精油を用いるもの |
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:全身浴・部分浴といった入浴、精油を植物油で低濃度に希釈して行うアロマ・マッサージ<ref group="※">精油を用いたオイル・マッサージは、医療行為としては「アロマトリートメント」と呼ばれ、民間のアロマ・マッサージと区別される。</ref><ref group="※" name="経肺"/>。マッサージなどの主となる手段に、精油の芳香による影響や皮膚への作用が加わり心身に影響する。 |
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精油の内服は日本ではほとんど見られず、世界的にも少ない。日本では、医療にアロマテラピーを取り入れるフランスで内服が一般的に行われると思われているが<ref name="フランス"/>、薬剤師でアロマテラピー専門書の翻訳を行う林真一郎は、フランスでも内服用に精油を処方する医師は10人もいないのではないか、と指摘している<ref name="林真一郎127"/>。またフランスなどの一部の病院で、精油を植物油で希釈したものを[[座薬]]、[[浣腸]]剤、[[膣]]に利用することもある<ref name="今西" />。これらの利用は危険が大きく、安全面・衛生面の懸念もあり、医師以外の施術が問題となっている<ref name="バルチン" />。<!--WP:NOTMANUAL違反となるため、アロマテラピーのくわしいやり方は記載しないでください。--> |
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==医療用途== |
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===システマティック・レビュー=== |
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[[システマティック・レビュー]]は、医学的根拠を報告する質の高い研究が存在するかどうか、結果はどうかということを包括的に評価することである。 |
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健康な大人のストレス緩和では、5つの[[ランダム化比較試験]] (RCT) があり、その[[メタアナリシス]](データ結合分析)では、アロマの吸入がストレス管理に影響を示しているが、研究規模が小さいため結論は強固ではない<ref name="pmid25234160">{{cite journal|author=Hur MH, Song JA, Lee J, Lee MS|title=Aromatherapy for stress reduction in healthy adults: a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials|journal=Maturitas|issue=4|pages=362–9|date=December 2014|pmid=25234160|doi=10.1016/j.maturitas.2014.08.006}}</ref>。不安症状がある人々に対して、16のRCTが見つかり、有効であるため治療として利用するのに推奨できる<ref name="pmid21309711">{{cite journal|author=Lee YL, Wu Y, Tsang HW, Leung AY, Cheung WM|title=A systematic review on the anxiolytic effects of aromatherapy in people with anxiety symptoms|journal=J Altern Complement Med|issue=2|pages=101–8|date=February 2011|pmid=21309711|doi=10.1089/acm.2009.0277}}</ref>。うつ病に対して、12のRCTがあり、手法は香りの吸入、あるいはアロママッサージであり、証拠の質が低いものも含まれるが、概して抑うつ症状の緩和に有効である可能性が示されており、吸入よりマッサージの方が効果が高そうである<ref name="pmid28133489">{{cite journal|author=Sánchez-Vidaña DI, Ngai SP, He W, Chow JK, Lau BW, Tsang HW|title=The Effectiveness of Aromatherapy for Depressive Symptoms: A Systematic Review|journal=Evid Based Complement Alternat Med|pages=5869315|date=2017|pmid=28133489|pmc=5241490|doi=10.1155/2017/5869315|url=https://doi.org/10.1155/2017/5869315}}</ref>。12のRCTがあり、睡眠の質を改善するようである<ref name="pmid25584799">{{cite journal|author=Hwang E, Shin S|title=The effects of aromatherapy on sleep improvement: a systematic literature review and meta-analysis|journal=J Altern Complement Med|issue=2|pages=61–8|date=February 2015|pmid=25584799|doi=10.1089/act.2015.21204}}</ref>。 |
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2018年のシステマティックレビューは、[[月経困難症]]に有効であった<ref name="pmid29729556">{{cite journal|author=Song JA, Lee MK, Min E, Kim ME, Fike G, Hur MH|title=Effects of aromatherapy on dysmenorrhea: A systematic review and meta-analysis|journal=Int J Nurs Stud|pages=1–11|date=August 2018|pmid=29729556|doi=10.1016/j.ijnurstu.2018.01.016}}</ref>。2018年のシステマティックレビュー、閉経後の女性の性的欲求の低下に対して、ラベンダー、ネロリほかがこれを高めていた<ref name="pmid29765928">{{cite journal|author=Khadivzadeh T, Najafi MN, Ghazanfarpour M, Irani M, Dizavandi FR, Shariati K|title=Aromatherapy for Sexual Problems in Menopausal Women: A Systematic Review and Meta-analysis|journal=J Menopausal Med|issue=1|pages=56–61|date=April 2018|pmid=29765928|pmc=5949309|doi=10.6118/jmm.2018.24.1.56|url=https://doi.org/10.6118/jmm.2018.24.1.56}}</ref>。同じく有効とする2017年のレビューがある<ref name="pmid28438280">{{cite journal|author=Sut N, Kahyaoglu-Sut H|title=Effect of aromatherapy massage on pain in primary dysmenorrhea: A meta-analysis|journal=Complement Ther Clin Pract|pages=5–10|date=May 2017|pmid=28438280|doi=10.1016/j.ctcp.2017.01.001}}</ref>。 |
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疼痛の管理に対するアロマテラピーのメタアナリシスは、アロマテラピーが、術後疼痛と産婦人科における疼痛に最も効果的であり、疼痛の軽減に利用できるとした<ref name="pmid28070420">{{cite journal|author=Lakhan SE, Sheafer H, Tepper D|title=The Effectiveness of Aromatherapy in Reducing Pain: A Systematic Review and Meta-Analysis|journal=Pain Res Treat|pages=8158693|date=2016|pmid=28070420|pmc=5192342|doi=10.1155/2016/8158693|url=https://doi.org/10.1155/2016/8158693}}</ref>。別のシステマティックレビューは、術後の疼痛に関して、9つのRCTがあり、5つが有効、残りは無効であり十分な証拠があるとは判断できないと結論した(これでは20人の試験と120人の試験が同等となってしまうため、メタアナリシスの方が合理的である)<ref name="pmid29157760">{{cite journal|author=Dimitriou V, Mavridou P, Manataki A, Damigos D|title=The Use of Aromatherapy for Postoperative Pain Management: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials|journal=J. Perianesth. Nurs.|issue=6|pages=530–541|date=December 2017|pmid=29157760|doi=10.1016/j.jopan.2016.12.003}}</ref>。がんの疼痛は緩和しないようである<ref name="pmid26884799">{{cite journal|author=Chen TH, Tung TH, Chen PS, et al.|title=The Clinical Effects of Aromatherapy Massage on Reducing Pain for the Cancer Patients: Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials|journal=Evid Based Complement Alternat Med|pages=9147974|date=2016|pmid=26884799|pmc=4738948|doi=10.1155/2016/9147974|url=https://doi.org/10.1155/2016/9147974}}</ref>。2017年のシステマティックレビューは、[[熱傷]](やけど)の付属症状に対するアロマテラピーの使用の4つのRCTがあり、痛みと不安を軽減する2つ、疼痛のみ軽減する1つなどだが、被験者が少なく結論には不十分とした<ref name="pmid29169701">{{cite journal|author=Choi J, Lee JA, Alimoradi Z, Lee MS|title=Aromatherapy for the relief of symptoms in burn patients: A systematic review of randomized controlled trials|journal=Burns|date=November 2017|pmid=29169701|doi=10.1016/j.burns.2017.10.009}}</ref>。術後の吐き気嘔吐に対して、全体的に偽薬と同じ程度であり、また証拠の質が限られておりこれは不確実な結論である(効果はなさそうで十分な証拠でもない)<ref name="pmid29523018">{{cite journal|author=Hines S, Steels E, Chang A, Gibbons K|title=Aromatherapy for treatment of postoperative nausea and vomiting|journal=Cochrane Database Syst Rev|pages=CD007598|date=March 2018|pmid=29523018|doi=10.1002/14651858.CD007598.pub3}}</ref>。 |
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2009年、高血圧に有効だという証拠はランダム化されていない研究であり、適切な設計を行った試験が求められる(つまり証拠不十分)<ref name="pmid20695948">{{cite journal|author=Hur MH, Lee MS, Kim C, Ernst E|title=Aromatherapy for treatment of hypertension: a systematic review|journal=J Eval Clin Pract|issue=1|pages=37–41|date=February 2012|pmid=20695948|doi=10.1111/j.1365-2753.2010.01521.x}}</ref>。 |
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== 問題 == |
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毒性以外の問題について述べる。 |
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=== 精油の偽装とその危険 === |
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{{See also|ヤングリヴィング#ドテラとの訴訟}} |
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多数のアロマテラピーの専門書を翻訳した高山林太郎は、精油の流通量は生産量を大きく上回っており、天然の精油に、別の安価な精油や合成物質を加える「偽和」という偽装行為が広く行われていると指摘している<ref name="高山ルーツ">高山林太郎『ルーツ of アロマテラピー』現代書林、2002年</ref><ref>[http://www.t-tree.net/seiyu/c_3_giwa.htm 消費量が生産量の2倍以上?(偽和について)] Tea-treeの森</ref><ref>[https://www.customs.go.jp/ccl_search/e_info_search/organics/r_31_09_e.pdf オークモスアブソリュートのキャラクタリゼーション] 古賀哲, 樫村英昭, 秋枝毅</ref>。精油の真偽の判定は、[[ガスクロマトグラフィー]]という手法で行われ、装置はガスクロマトグラフという。天然精油を正確に分析できるガスクロマトグラフを所有する会社や大学は、ごく少数である<ref name="高山ルーツ" />。 |
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アロマテラピーに偽和された精油が用いられた場合、純性の精油では見られない反応を引き起こしたり、感作<ref group="※" name="感作"/>性を高める恐れがあり、治療効果が期待できないだけでなく、100%天然の精油であっても、アレルギー反応等の症状は起こる可能性があり危険性が指摘されている<ref name="高山ルーツ" />。 |
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精油取引や精油の製造、成分分析に30年以上携わっていたTony Burfieldは、精油の粗悪品に関して生産者と販売者が一方的に悪者扱いされるが、高い品質を求めながら、市場価格を下回る精油を要求しているのは消費者自身である、と指摘している。現在の風潮では、誠実な製造業者・販売業者が生き残ることは不可能に近く、実際その多くが倒産している<ref name="Tony Burfield">[http://www.users.globalnet.co.uk/~nodice/new/magazine/october/october.htm The Adulteration of Essential Oils - and the Consequences to Aromatherapy & Natural Perfumery Practice.] Tony Burfield October 2003.</ref>。現在精油の業界は、巨大で強力な一握りの国際的企業に支配されている。こういった企業のバイヤーはしばしば、不可能なほど安く原料を手に入れようとし、生産者が存続できるだけの利益すら認めようとしないという<ref name="Tony Burfield"/>。 |
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2013年には、精油を商材として国際的に[[連鎖販売取引]](マルチ商法)を展開するアメリカの企業[[ヤングリヴィング]](英語: Young Living)と、同業他社の[[ドテラ]](英語: doTerra)との間で訴訟合戦が起こり、その過程でオーガニック・100%天然とされたヤングリヴィングの精油の検査結果が偽装されており、両社で精油に合成物質が添加され偽和されていたことが明らかになった<ref>{{cite news|last1=Keeson|first1=Arvid|title=Damning Evidence That Young Living and DoTERRA’s Essential Oils are Adulterated|url=http://www.utahstories.com/2014/08/damning-evidence-that-young-living-and-doterras-essential-oils-are-adulterated/|accessdate=18 September 2014|work=Utah Stories|date=15 August 2014}}</ref><ref>{{cite news|last1=Markosian|first1=Richard|title=Report Used in Young Living Farms Case Against DoTERRA Suspect|url=http://www.utahstories.com/2014/08/report-used-in-young-living-farms-case-against-doterra-suspect/|accessdate=18 September 2014|work=Utah Stories|date=21 August 2014}}</ref>。 |
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=== 現代医療との併用 === |
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近年、通常の療法と代替療法を併用すると逆の効果が現れるという報告が増加している<ref name="バルチン" />。医師が、患者がアロマテラピーを別に受けていることを知らない場合が多く、問題が起こる可能性がある<ref name="バルチン" />。 |
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=== アロマセラピスト === |
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アロマセラピストとはアロマテラピーを行う治療者と考えられるが、アロマテラピーを定義することと同じく、アロマセラピストを定義することは困難である<ref name="バルチン" />。英米や日本では公的な資格がないため、ごく短い教育しか受けていなかったり、十分な知識を持っていなくても自称することができる<ref name="バルチン" />。[[リラクゼーション (心理学)|リラクセーション]]目的でアロマテラピーを行う非医療従事者も多数存在するが、その知識、技能には大幅な差がみられる。また、アロマテラピーの学校や講座も数多くあるが、値段が高い講座の教育水準が、必ずしも高いとは限らない<ref name="バルチン" />。生化学博士のマリア・リス・バルチンは、科学的、学術的研究に興味を持つアロマセラピストは非常に少なく、完全に否定するセラピストもいると指摘している<ref name="バルチン" />。ヴェルナーは、アロマセラピストの精油の説明には単純な間違いも多く、「多くのアロマセラピストは事実上、科学を理解していない」と指摘している{{sfn|ヴェルナー|2001|p=177}}。[[ニューエイジ]]との関係からか、[[占星術]]や宝石療法、[[レイキ]]など、[[スピリチュアル]]な要素を組み合わせて行うセラピストも存在する<ref name="バルチン" />。アロマセラピストの中村あずさアネルズは、マッサージの上手なアロマセラピストは多いが、精油をよく知り顧客に合わせて選択・ブレンドできるアロマセラピストは数少ないと述べている{{sfn|中村あづさアネルズ|2013}}。なお、日本ではマッサージを行うにはあん摩マッサージ指圧師の免許が必要であるが、アロママッサージを行っているセラピストが必ずしもあん摩マッサージ指圧師の免許を保有しているわけではない。消費者庁によれば「リンパ・オイル・アロママッサージ」による健康被害が報告されている。<ref>[http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/consumer_safety_release_170526_0002.pdf お探しのページが見つかりません。消費者庁] 法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に {{404|date=2024-02}}</ref>[[無資格マッサージ士問題]]も参照。 |
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なお、フランスで「アロマテラピスト」を名乗ることができるのは医師のみであり、精油の知識を持つ医師を指す。そのため、日本や英米と異なり、医師免許を持たないアロマテラピストは存在しない。アロマテラピストの数は非常に少ない<ref name="フランス2">[https://ameblo.jp/iledesfleursparis/entry-11838995594.html フランスのアロマテラピー事情] Île des fleurs Paris Tomomi</ref>。 |
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===非論理的・非科学的・神秘的な主張=== |
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アメリカの心理学者L・マカチョンは、アロマセラピストの効果に関する主張は「原因を混同し、あいまいで、疑わしいもので、科学的に根拠付けられていない」と完全否定している{{sfn|ヴェルナー|2001|p=171}}。また、アロマセラピストの「お香は空気から消極的な精力を洗い流す」「安息香が悪霊を追い払う」などの主張を挙げ、その実体のなさを揶揄し、「心身のハーモニーやバランスの回復」に役立つといえば、どうとでも解釈できるので、無意味な発言であると述べている{{sfn|ヴェルナー|2001|p=171}}。また、アロマセラピストは「と思われている」「と言われている」と頻繁に口にするが、実際はどうなのかと問いかけてる{{sfn|ヴェルナー|2001|p=171}}。 |
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=== 精油原料の乱獲と自然破壊 === |
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歴史的にみて香料植物の多くは高額で取引され、王侯貴族などの富裕層に愛好されてきたが、そもそも香料植物の多くは稀少なものである<ref>C.J.S. トンプソン『香料文化誌―香りの謎と魅力』駒崎雄司 訳、八坂書房、2010年</ref>。その上、精油は植物を蒸留するなどして作られるため、原料として大量の香料植物を必要とする(バラの場合約5tの花から精油1kgが採取され、収率は0.02%。柑橘類は、果実に対して収率は0.2 - 0.5%程度である{{sfn|『香料の科学』}})。香料需要の拡大やアロマテラピーの普及で、大量の精油が求められることで、精油の原料となる香料植物の乱獲や、大規模栽培による自然破壊が問題となっている。特に[[ローズウッド (クスノキ科)]]、白檀([[サンダルウッド]])、乳香([[フランキンセンス]])<ref name="乳香">[http://www.foxnews.com/tech/2011/12/21/christmas-staple-frankincense-doomed-ecologists-warn.html Christmas Staple Frankincense 'Doomed,' Ecologists Warn] LiveScience、FOX News Network 2011/12/21</ref>など、樹木([[香木]])から採取する精油は、乱獲や森林伐採の影響を大きく受ける。樹木の成長には時間がかかり、植林などの対応がとられても結果が出るのはかなり先のことになるためである<ref>[http://stellalab.co.jp/bg01/%E7%AC%AC%E4%B8%89%E8%A9%B1%E3%80%80%E5%A4%A9%E7%84%B6%E9%A6%99%E6%96%99%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/ 天然香料について] ステラ・ラボラトリー株式会社</ref>。白檀のように成長が遅い品種では、精油を採取するまで最低30年かかり、採取対象としては60 - 80年を経たものが望ましいとされる<ref>[http://www.t-hasegawa.co.jp/cgi-bin/pla.pl5 香りのミニ知識 植物] 長谷川香料株式会社</ref>。インド政府によって白檀の伐採は管理されており、樹齢30年以下の木を伐採することは禁止されている{{sfn|中村あづさアネルズ|2013}}。ローズウッドは乱獲により絶滅に瀕しており、[[ワシントン条約]]の[[レッドリスト]]に登録されている<ref>[http://www.trafficj.org/aboutcites/appendix_plants.pdf ワシントン条約の対象種(附属書)一覧表 (2014/6/24 現在) 経済産業省作成] トラフィックイーストアジアジャパン</ref><ref>[http://www.iucnredlist.org/details/33958/0 Aniba rosaeodora] The IUCN Red List of Threatened Species</ref><ref>[http://www.a-t-c.org.uk/atc-conservation-policy-update-2007/ Conservation Policy Update 2007] Aromatherapy Trade Council</ref>。乳香を産出する樹は今後50年で90%減少すると予想されており、持続は不可能と考えられている<ref name="乳香"/>。 |
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また、精油原料が大規模栽培されることで、自然が破壊される問題もある、例えば、ティーツリーは抗菌力に定評があり、過去何度も流行して急速に生産が拡大し、ブームの度合いによって値段が乱高下した。オーストラリアに自生するティーツリーが乱獲されて森が奥地まで切り開かれた。そして、知識のあるなしにかかわらず、大勢の人間がティーツリーの栽培に乗り出してプランテーションが作られ、自然が大規模に破壊された<ref>[http://www.ypcyy.co.jp/contents/ae_colmun/AEAJ51_column12.pdf <ページが見つかりません>精油の由来とその行方 ティーツリーオイルの変遷と将来] 山本芳邦 山本香料株式会社{{404|date=2024-02}}</ref>。現在ではプランテーションの管理者も育ち、蒸留や収穫の技術も進化し、持続可能な栽培に取り組む農家もあるが、自然破壊の問題が解決されたわけではない。日本でもアロマテラピーは普及し、精油の消費量は急速に増えているが、環境面の問題はあまり認識されていない{{sfn|中村あづさアネルズ|2013}}。[[日本アロマ環境協会]]が表示基準適合精油認定制度を行っているが、成分分析表の提出や環境面への配慮は認定条件に含まれていない<ref>[http://www.aromakankyo.or.jp/aeaj/institution/oil/ <お探しのページは見つかりませんでした>AEAJ表示基準適合精油認定制度について] 日本アロマ環境協会{{404|date=2024-02}}</ref>。適正価格とは言えないような安価な精油も流通しており、偽和によって水増しされた精油が100パーセント天然と偽って販売されるケースも懸念されている<ref>[https://rintarotakayama.blogspot.com/2013/05/blog-post_31.html セラピストの健康について] R 林太郎語録</ref><ref>[https://ameblo.jp/mariko-kobayashi/entry-11924807205.html 日本のアロマはほとんどが偽和。あなたの精油はいかが?] 小林麻利子</ref><ref>[http://animalaromatherapy.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-e69f.html 精油やハイドロゾル、では一体どこで手に入れたらよいのでしょうか。] 動物のアロマセラピー</ref>。 |
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=== 火災の危険性 === |
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アロマテラピーを業務で行っていたエステティックサロン店で衣類やタオルが自然発火を起こす事故が続発し、問題となった<ref> |
アロマテラピーを業務で行っていたエステティックサロン店で衣類やタオルが自然発火を起こす事故が続発し、問題となった<ref> |
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[http://sankei.jp.msn.com/affairs/disaster/071108/dst0711081845004-n1.htm |
[https://web.archive.org/web/20071110171125/http://sankei.jp.msn.com/affairs/disaster/071108/dst0711081845004-n1.htm 産経ニュース エステ店でマッサージオイルが発火]</ref>。これは精油中に含まれる[[不飽和脂肪酸]]などが重合を起こしたり、酸化される際に生じる熱が繊維の断熱性によって蓄積したり、乾燥機にかけて反応が加速し発火点に至ることが原因である。 |
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{{main|乾性油}} |
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また京都市消防局は、アロマポット<ref group="※">陶器、磁器、ガラスなどの中空容器の中に小さなカップロウソクを灯し、上部に置いた皿に水と精油を入れて熱し、芳香を出す装置。</ref>というタイプを使うアロマテラピーで、条件によっては、安定燃焼していたロウソクの炎が異常燃焼を起こし、近くの可燃物に着火し、火災が起こる危険性があるとして注意を促している<ref>[http://www.city.kyoto.lg.jp/shobo/page/0000075840.html アロマテラピーの謎] 京都市消防局</ref><ref>[https://www.youtube.com/watch?v=cT2sz_4ycug YouTube京都市公式チャンネル アロマポットから出火のビデオ]</ref>。 |
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<!--WP:NOTMANUAL |
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== アロマテラピーの方法 == |
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=== 芳香浴 === |
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皮膚や身体異常時、医師や薬剤師に要相談 |
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=== アロママッサージ店の摘発 === |
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香りを鼻から吸入して、神経に働きかける方法。 |
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アロママッサージの看板を掲げる店舗で、違法な性的サービスを提供したことによる[[風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律]](風営法)違反で逮捕者が出ている<ref>[https://web.archive.org/web/20130804132937/http://www.sponichi.co.jp/society/news/2013/07/31/kiji/K20130731006326690.html 水漏れで発覚 違法マッサージ店の経営者ら逮捕] スポニチ 2013年7月31日</ref>。近年日本では、中国マッサージ、[[アーユルヴェーダ]]マッサージ、アロママッサージなどのマッサージに性的なイメージが広まっており、追加料金で違法な性的サービスを提供する店舗が増えている<ref name="摘発">[https://news.livedoor.com/article/detail/5729939/ 連続摘発&客の暴行事件も…荒れる中国エステ店最新裏情報] 週刊実話 2011年7月23日</ref><ref>[http://ayurvedasociety.com/sruare.html アーユルヴェーダの資格制度について] H24.9.15 日本アーユルヴェーダ学会認定小委員会 上馬場和夫]</ref>。リラクゼーション目的のアロママッサージ店で、男性客が性的サービスを要求することがあるなど、トラブルも起こっている<ref name="摘発"/>。 |
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== 歴史 == |
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* 直接吸入 - [[精油]]を1~2滴、ハンカチやティッシュペーパー、脱脂綿に含ませ、直接香りを嗅ぐ方法。 |
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[[画像:Alambik1.jpg|thumb|ヨーロッパの古文書に見られる蒸留装置アレンビック。アラビア語「al-anbiq」に由来する<ref name="ブロック">W.H.ブロック『化学の歴史Ⅰ』大野誠・梅田淳・菊池好行 訳、朝倉書店、2003年</ref>。]] |
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* 蒸気吸入 - 熱湯を入れたティーカップや洗面器に、[[精油]]を1~3滴ほど加え、立ち上る蒸気を吸入する方法。室内の加湿や空気の浄化も同時に行える。 |
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[[画像:alambique.png|thumb|日本に伝来したらんびきの断面模式図]] |
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* 器具などを使う方法 - [[アロマポット]]や、[[アロマキャンドル]]。アロマデフューザーなどを利用し、部屋に香りを満たす方法。広い場所で利用するのに効果的。 |
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人工香料が作られるまで、香りは全て植物または動物から採られた。古代では、樹脂などをそのままか、またはそれらを混ぜて使った。その後、芳香成分(精油)が動物性・植物性の油に溶けることに気づき、香りを映した香油や{{仮リンク|香膏|en|Solid perfume}}(軟膏)が作られ、水にも少し溶けることから、{{仮リンク|香り水|en|Scented water}}も利用された<ref name="諸江">諸江辰男『香りの来た道』光風社出版、1986年</ref>。「香水」と訳されるperfumeは、ラテン語のper‐fumum(煙を通して、煙によって)に由来する言葉で、昔は固体・液体を総称しperfumeと呼んだ。この節では、芳香成分をアルコールに溶かしたperfumeを「香水」とし、他は「香料」「香油」などとした<ref name="諸江"/>。 |
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* スプレーを使う方法 - 無水エタノール6ml→[[精油]]12滴→[[精製水]]24mlの順で加えて作った芳香スプレーで香り利用する方法。スプレーする度に良く振り乳化させる(良く混ぜる)こと。周囲の人に迷惑にならない限り、場所を選ばず、気軽に気分転換や目覚ましに利用でき、また防虫効果のある[[精油]]を使うことでアウトドアで虫除けとしても利用できる。 |
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=== 概要 === |
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香料植物の利用は古代にさかのぼり、焚香料([[焼香]]、インセンス)としての利用が最も古いと考えられている<ref name="諸江"/>。香りの心身への影響も知られ、精油を用いた治療も古くからおこなわれた。ギリシャ・ローマの医学が伝わったアラビア圏では医学・錬金術が発達し、精油や芳香蒸留水([[ハイドロゾル]])が治療に使われた。12世紀にアラビアからヨーロッパに医学・錬金術が伝わり、蒸留技術が普及すると、精油が広く医療に利用され、アルコールの蒸留技術が確立し蒸留酒が広まると香料植物・ハーブを使ったリキュール(薬用酒)が流行し、のちに香水として利用された。20世紀に入ってから、精油を用いた治療がアロマテラピーと名づけられた。また日本には、精油を蒸留する蒸留器「[[ランビキ|らんびき]]」が16世紀半ば江戸時代には伝来しており、[[蘭方医学]]で精油が治療に使われていた<ref>[http://www.eisai.co.jp/museum/information/topics/topics14_09.html らんびき -陶製の蒸留器-] 内藤記念くすり博物館</ref><ref name="草野">草野巧『図解 錬金術』新紀元社、2008年</ref>。アロマテラピーという言葉が日本へ紹介されたのは1980年代で、「イギリスからの自然派美容マッサージ」という形で導入された<ref name="塩田">塩田清二『<香り>はなぜ脳に効くのか―アロマセラピーと先端医療 NHK出版新書』 NHK出版、2012年</ref>。 |
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他人が医療行為として行う場合は医師免許が、マッサージとして行う場合は[[あん摩マッサージ指圧師]]資格が必要であるが、これら国家資格の範囲外(すなわち診断・治療行為に当たらないもの)として、一般にトリートメント等と呼ぶ。 |
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=== 古代 === |
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[[精油]]をほかのキャリアオイルで希釈して作ったマッサージオイル(トリートメントオイル)をつかい、身体をマッサージしながら皮膚を通して有効成分を身体に浸透させる方法。マッサージによる身体の接触による精神面の癒し効果も大きい。 |
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{{See also|古代エジプトの服飾|古代エジプト医学|薬物誌}} |
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香料植物の利用は古代にさかのぼり、香りの心身への影響も知られ、精油を用いた治療も古くからおこなわれた。人類は洋の東西を問わず、植物の芳香を祭祀・儀礼・[[治療]]・[[美容]]に用いてきた。香料が初めて記録に登場するのは紀元前3000年ごろの古代[[メソポタミア]]で、香料が神に捧げられていた。また、花やスパイスの香りを油に移すために使用したと考えられる土器も発見されている。 |
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エジプトで[[乳香]](フランキンセンス)などの香料植物が祭祀、美容、医療に大いに利用され、[[没薬]](ミルラ)は[[ミイラ]]作り用いられたことで知られる。上流階級の間では、身体に香をたいたり、香膏が利用され、[[ツタンカーメン]]王の墓からは、アラバスタ―製の香油壺が発見されている{{sfn|『香料の科学』}}。 |
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=== 内服 === |
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フランス系のメディカルアロマテラピーでは医師の指導に基づき内服をすることがあるが、日本では原則的に'''内服は危険が大きいので決してしないこと'''とされており、日本アロマ環境協会でもこの見解を採用している。日本では、内服を用途としているものは、医薬品の承認がない限り一切の人体の改善効果などをうたうことができない。 |
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エジプトの香料文化の影響を受けたギリシャでは、香料の調合・製造の技術が発達した。ローマでは香料文化はさらには繁栄し、香油、香膏([[練香]])、粉末や固形の香料が利用された{{sfn|『香料の科学』}}。このころの香料の製法や医療における利用法は[[大プリニウス]](22 / 23年 - 79年)『[[博物誌]]』や[[ディオスコリデス]](40年頃 - 90年)『薬物誌』に残された。『薬物誌』は、アラビア・ヨーロッパで1500年以上薬学の最も権威あるテキストとして利用された。 |
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=== 入浴(沐浴) === |
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皮膚異常時、医師や薬剤師に要相談 |
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古代インドでも、香料は宗教儀式で重要な役割を果たし、[[ジャスミン]]は[[バラモン教]]の経典に神聖な花として記されている{{sfn|『香料の科学』}}。古代中国では、香料植物は香薬・香辛料として利用され、『神農本草経』にも多くの芳香性生薬が記録されている。仏教が伝来してからは、[[麝香]]・[[沈香]]などが[[薫香]]・[[線香]]などの焚香料や[[塗香]]としても使われ、6世紀になると仏教とともに日本に香文化が伝えられた{{sfn|『香料の科学』}}。 |
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湯船にぬるめの湯を張り、[[精油]]を5~6滴落とす方法。精油は湯に溶けないため皮膜となって湯面に浮く。芳香浴と有効成分の皮膚からの吸収を同時に行える。半身浴の場合は使用する精油の量を半分にする。 |
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精油を用いた治療も古くからおこなわれ、紀元前3000年頃にメソポタミア地域で使われた考古学的な証拠があり、蒸留用の抽出瓶は、薬剤師や香料製造者が利用したと考えられている<ref name="ブロック"/>。[[メソポタミア]]の医書によると、テレピンノキからとった[[テレピン油]]が傷薬として使われていた<ref name="酒井">酒井シヅ 編集『薬と人間』スズケン、1982年</ref>。 |
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=== 手浴・足浴 === |
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皮膚異常時、医師や薬剤師に要相談 |
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このように、香料植物や精油は古代から利用され、世界の各地域で独自に発展し、近代医学が発達する以前の人間の健康を助けた。今でもそれらは、[[伝統医学]]や[[民間療法]]として受け継がれている。 |
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洗面器やバケツに全身浴よりは若干高めの温度の湯を張り、[[精油]]を2~3滴落とし手や足を漬け温める方法。手浴・足浴であっても全身を温める効果があり、加えて芳香により気分転換とリラックスにも良い。 |
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=== アラビア錬金術と水蒸気蒸留法 === |
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=== 湿布 === |
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{{See also|ユナニ医学|イスラーム黄金時代|錬金術|キミア}} |
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皮膚異常時、医師や薬剤師に要相談 |
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[[File:Ibn_al-Baytar.JPG|thumb|left|イブン・アルバイタールの彫像。スペイン・アンダルシア地方、[[マラガ]]]] |
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[[ヒポクラテス]]に代表される古代ギリシャの医学は、ローマ時代に[[ガレノス]]によってまとめられた。蒸留技術は、1世紀の[[アレキサンドリア]]の錬金術師たちによって改良され<ref name="ブロック"/>、古代ローマでは動物性油脂に精油成分を溶かし込んだ軟膏なども用いられた。 |
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イスラーム圏ではギリシャ・ローマの医学をベースに[[ユナニ医学]]が発達し、錬金術の発展で化学が進歩した。{{仮リンク|中世イスラーム世界の錬金術と化学|en|Alchemy and chemistry in medieval Islam}}では、抽出・蒸留・発酵などの手法が薬物製造に結び付けられ、[[薬学]]はひとつの科学としての基礎を持った<ref name="酒井"/>。[[陶器]]、[[ガラス]]の製造も高度な技術が発展し、蒸留など薬物製造に用いる器具が作られた。イスラーム圏の錬金術師・薬剤師たちによって、{{仮リンク|香気成分抽出法|en|Fragrance extraction}}のひとつである[[水蒸気蒸留]]法が確立されたといわれ、蒸留装置[[アランビック|アレンビック]]の考案・改良者として哲学者・錬金術師[[ジャービル・イブン=ハイヤーン]](721年? - 815年?)の名が知られるが<ref name="草野"/>、この装置は「[[ランビキ|らんびき]]」の名で日本まで伝わっている<ref>吉武利文『香料植物 (ものと人間の文化史』、法政大学出版局、2012年</ref>。(アロマテラピーや香水の書籍には、[[イブン・スィーナー]](980年頃-1037年頃、ラテン語名アヴィセンナ)が水蒸気蒸留法を確立したとするものもあるが、水蒸気蒸留によるバラ水(芳香蒸留水)の生産は彼が生きた時代以前から一大産業であった。蒸留の歴史において、水蒸気蒸留の発明者または装置の改良者としてイブン・スィーナーの名前が挙がることはない<ref name="イスラム錬金術">ヒロ・ヒライ『蒸留術とイスラム錬金術』 2014年(初出:「アロマトピア第48号 イスラム文化の香りとハーブ」 フレグランスジャーナル社、2001年)</ref><ref>平田光穂、頼実正弘『蒸留工学ハンドブック』朝倉書店、1966年</ref><ref>[http://atopy-adviser.hateblo.jp/entry/2014/02/09/224906 水蒸気蒸留法を確立したのはイブン・シーナーなのか?] How to be your own doctor</ref>。) |
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皮膚などに原液を塗ることはしないこと。薄めた場合でも粘膜には付けないこと。 |
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アラビア圏では、芳香蒸留水([[ハイドロゾル]])や精油が製造され<ref name="イスラム錬金術">ヒロ・ヒライ『蒸留術とイスラム錬金術』 2014年(初出:「アロマトピア第48号 イスラム文化の香りとハーブ」 フレグランスジャーナル社、2001年)</ref>、治療に用いられた。医学の大家であるイブン・スィーナーの『医学典範』(al-Qānūn fī al-Ṭibb)には、バラ精油を用いた治療法が記されており<ref>『アヴィセンナ『医学典範』日本語訳』檜學 新家博 檜晶 訳、第三書館、2010年</ref>、香油や香膏を使ったマッサージについても説明されている<ref name="メディカル">今西二郎『補完・代替医療 メディカル・アロマセラピー』金芳堂、2006年</ref>。 |
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洗面器に入れた、精油を入れたお湯(または水)にタオルを浸し、軽く絞ったタオルを皮膚に当て、有効成分を直接皮膚から吸収させる方法。マッサージが出来ない時などに有効。 |
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水蒸気蒸留法やその器具についての最も古い記述は、医師・薬剤師・植物学者・科学者であった[[イブン・アルバイタール]](1188年 - 1248年)の『薬と栄養全書』(Kitab al-Jami fi al-Adwiya al-Mufrada)である。製造された精油は香料・香油として用いられたり、高価な薬に混ぜて使われた。またこの本には、バラ水やオレンジ水といった芳香蒸留水について、詳細な化学情報が説明されている<ref name="Houtsma1993">{{cite book |first= M.Th. |last= Houtsma |title= E. J. Brill's First Encyclopaedia of Islam, 1913–1936 |volume= 4 |year= 1993 |publisher= [[Brill Publishers|Brill]] |isbn= 9004097902 |pages= [https://books.google.co.jp/books?id=7CP7fYghBFQC&pg=PA1011&redir_esc=y&hl=ja 1011–]}}</ref>。 |
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=== [[基礎化粧品]] === |
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皮膚異常時、医師や薬剤師に要相談 |
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=== ヨーロッパにおける精油療法の発展 === |
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精油の入った[[ハンドクリーム]]、[[ボディークリーム]]、[[リップクリーム]]など。 |
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{{See also|[[:en:Distillation#History]]|ハンガリー水|香水}} |
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[[画像:Brunschwig_title_page_Liber_de_arte_distillandi_simplicia_et_composita.jpg|thumb|left|ヒエロニムス・ブランシュヴァイク『蒸留術の書』。中央にあるのは[[蒸留塔]]。]] |
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中世ヨーロッパでは、香料植物の栽培と利用はもっぱら[[修道院]]で行われ、アラビアから錬金術が伝来するまで、植物成分を水や植物油や[[ワイン]]に浸出して用いた。当時の西洋文化圏の最先端であるユナニ医学やアラビア錬金術は、[[十字軍の遠征|十字軍]]によるアラビア侵略を契機に徐々にイタリア、スペインなどヨーロッパに伝わっていった。([[キリスト教]]における香油の利用については「[[病者の塗油]]」(終油の秘蹟)、儀式での香りの利用は「[[振り香炉]]」などの記事を参照のこと。) |
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アラビアの錬金術は、12世紀にはヨーロッパに伝わった。蒸留術はヨーロッパでさらに改良されたようであり、蒸留液が効果的に冷却できるようになった<ref name="ブロック"/>。13世紀になると、貴金属の製造を目的とするものと、[[パラケルスス]](1493年|1494年 - 1541年)に代表される医学的な錬金術に分かれた<ref name="ヒロ・ヒライ">ヒロ・ヒライ『エリクシルから第五精髄、そしてアルカナへ: 蒸留術とルネサンス錬金術』</ref>。医学的な錬金術では、蒸留などの化学操作によって、自然物に含まれる第五精髄(クインタ・エッセンティア(quinta essentia)<ref group="※" name="第五元素"/>、第五元素、[[エーテル (哲学)|エーテル]])の抽出が目指され<ref name="ヒロ・ヒライ" />、パラケルススは医化学の祖と呼ばれる<ref>吉村正和『図説 錬金術』河出書房新社、2012年</ref>。 |
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== アロマテラピーと法律との関係 == |
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=== [[薬事法]] === |
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日本では、精油による人体の治療・改善効果をうたう場合には当該精油商品が[[医薬品]]の承認を得ている必要があり、承認がないものについては一切治療・改善効果などをうたうことができない。仮にこうした効果を標榜し広告・販売すれば、未承認医薬品の広告・販売として[[薬事法]]違反になる。 |
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こうして蒸留技術は医療面で広く求められるようになり、[[ルネサンス]]時代には多くの蒸留書が書かれた。ドイツの外科医{{仮リンク|ヒエロニムス・ブランシュヴァイク|en|Hieronymus Brunschwig}}(1450年 - 1512年)<ref>[http://everyhistory.org/1500-3.html TIMELINE OF WORLD HISTORY 1500 - 1599]</ref>『蒸留術の書』(または『蒸留小書』<ref name="酒井"/>、''Liber de arte distillandi simplicia et composita''、1500年)がよく知られている。この本では、蒸留法や器具、蒸留物の保存法、原料となる植物や蒸留水の効能について説明された。第2版には、精油療法の理論的な背景として、[[マルシリオ・フィチーノ]](1433年 - 1499年)が健康と長命について語った『生について』(''De Vita''、1489年)ドイツ語訳が収録された<ref name="ヒロ・ヒライ" />。この本は、聖職者や一部の貴族だけが修得した[[ラテン語]]ではなく、一般の読み書きに使われたドイツ語で書かれており、[[外科医]]([[床屋外科医]])や薬剤師、薬種商(薬の材料を扱う商人)など知識層以外の人々にも広く読まれた。(外科医や薬剤師は徒弟に入って修行する一種の[[職人]]であり、商人である薬種商と共に知識階級ではなかった。)17世紀初頭まで50版以上出版された<ref name="ヒロ・ヒライ" />。 |
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また、入浴剤としての使用や皮膚への塗布による使用によって肌の保湿などをうたう場合や、基礎化粧品としての使用を意図している場合は、当該製品が化粧品として届出済みとなっている必要がある。 |
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精油は病気の予防や治療に広く使われ、14世紀に繰り返し流行した[[ペスト]]の治療にも用いられた。(ペストは当時のヨーロッパ人口の3分の1から3分の2を死亡させた。)ルネサンス期フランスの医師・占星術師であった[[ノストラダムス]](1503年 - 1566年)は、ペスト患者の舌下にバラ精油を含む丸薬を置いて治療を行ったと記録されている<ref name="メディカル">今西二郎『補完・代替医療 メディカル・アロマセラピー』金芳堂、2006年</ref>。 |
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[[File:Etikett_Olitaeten.jpg|thumb|250px|Olitatenのボトルのラベル]] |
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医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療用具の製造業の許可を受けたものでなければ、それぞれ業として医薬品、医薬部外品、化粧品または医療用具の製造(小分けを含む)をしてはならない。|薬事法第四章第二十二条(製造業の許可)}} |
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蒸留技術の一般化で精油の生産量が増大し、14世紀頃にはヨーロッパ全域でハーブ栽培が一般化した。これにより、中流家庭にも簡単な蒸留器が導入され、自家製の芳香蒸留水などが作られるようになった<ref>永岡治『クレオパトラも愛したハーブの物語 魅惑の香草と人間の5000年』 PHP研究所、1988年</ref>。15世紀にはいると、イタリアで様々な薬用リキュールがつくられるようになり、1480年には、医学の町として知られるイタリアの都市サレルノで、精油成分を含むリキュールが薬として生産された<ref> 福西英三『リキュールの世界』河出書房新社、2000年</ref>。ハーブ製品や精油、リキュールが生産され、各地に運ばれ販売された。 |
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幼年教育の祖[[フリードリヒ・フレーベル]]の故郷として知られる[[ドイツ]]・[[テューリンゲン州|テューリンゲン地方]]の森にある{{仮リンク|オーベルヴァイスバッハ|en|Oberweisbach}}はハーブ薬、精油・香膏などの香油(ドイツ語:[[:de:Olität|Olitaten]]、英語:perfumed oils)、チンキ剤、石けんなどのハーブ製品の産地として何世紀にもわたって知られていた<ref>[http://www.friedrichfroebel.com/herbal.html Herbal Oils Trade in the Froebel City, Oberweissbach] friedrichfroebel.com</ref>。原料となる植物を採取する森のエリアは各家庭に受け継がれ、ハーブ薬を販売するルートも父から息子に受け継がれた。彼らは精油などのハーブ製品をヨーロッパ中に売り歩き、''Buckelapotheker'' (英語:Rucksack Pharmacists、リュックサックの薬屋)と呼ばれた<ref>[http://www.ozpod.com/gallery/church.html Oberweissbach Church is the largest village church of Thuringia]</ref>。 |
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=== [[医師法]] === |
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[[File:Pomander 3.jpg|thumb|left|200px|ポマンダーを身につけたヴェネチアの貴婦人]] |
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医師以外の者が診断をし、治療をすることはできない。それに伴って上記薬事法にも関連するが精油をその効果をうたい薬のように使ってはならない。 |
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[[ペスト]]の薬としても重宝されたリキュールなど良い香りのするアルコール水は、のちに香水として利用されるようになった。ラベンダー水や[[ハンガリー水]](ローズマリー水<ref group="※">ローズマリーを酒精と主に蒸留した[[蒸留酒]]。ハンガリー王妃[[エルジュビェタ・ウォキェトクヴナ|エルジェーベト]]または[[聖エルジェーベト]]の病気を治すために発明されたという言い伝えにちなんで「ハンガリー王妃の水」と呼ばれたが、ハンガリーが起源である、またはハンガリー王族エルジェーベトのために作られたという歴史的根拠はない。</ref>)が香水の原型といわれる。{{仮リンク|中世西ヨーロッパの医学|en|Medieval medicine of Western Europe}}では、病気の原因は[[瘴気]](ミアスマ、悪い空気)であると考えられた。そのため、人々はペストなどの病気を防ぐために、ハーブや[[香辛料|スパイス]]の成分を溶かし込んだ香水を付け、スパイスを焚いて街を消毒し、[[ポマンダー]](香り玉)や香りの強い花束を持ち歩いた。強い匂いが瘴気を防ぐと考えられたため、これらを入手できない貧しい人々は、臭い靴下や[[タール]]を塗ったロープなどで代用した<ref>[http://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~konokatu/nakano(05-1-31) ヨーロッパの衛生的生活] 京都産業大学文化学部 国際文化学科 中野洋子</ref>。ルネサンス期(14世紀)の蒸留技術の発達で、イタリアでは香水の製造技術は急速に進歩し、地中海沿岸地域のイタリア・フランス南部では、王侯貴族や富裕層の間で[[香水]]が流行した<ref>[http://www.seinan-gu.ac.jp/gp/french_trip/2011/report08/ Parfum〜香水のメッカを訪れる〜] 西南学院大学</ref>。18世紀の終わりには、フランスの[[グラース]]が香水の生産地として栄えた。リキュールなど良い香りのするアルコール水(香水)は、外用、内服用として19世紀まで治療に使われていた<ref name="ジョーンズ">ジェフリー・ジョーンズ『ビューティビジネス―「美」のイメージが市場をつくる』江夏健一 訳、中央経済社 2011年</ref>。1810年に[[ナポレオン]]条例によってフランス国内で販売される香水の成分を明記することが義務付けられると、製造業者の大半が成分を明らかにすることを嫌ったため、医薬用を除いて国内市場から締め出され、香りを楽しむ香水と[[衛生]]の領域に分かれていった<ref name="ジョーンズ"/>。 |
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=== 医化学の発展と精油療法の衰退 === |
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{{See also|医学史#近代医学}} |
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医師でなければ、医業をしてはならない。|医師法第一七条}} |
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[[File:Coumarin_acsv.svg|thumb|right|200px|クマリンの化学構造]] |
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19世紀にはいると合成[[香料]]が誕生し、徐々に工業生産されるようになった。1876年に[[ウィリアム・パーキン]]が[[クマリン]]の合成に成功し、1882年にフランスの[[ウビガン]] (Houbigant) 社がクマリンを使って香水「フジェール・ロワイヤル 」(Fougere Royale)を発表した。この香水は高く評価され、人工香料による香水の製造が本格的に始まった<ref>[http://japanfragrance.org/pdf/fragrance-abc.pdf フレグランスのABC] 日本フレグランス協会</ref>。[[オットー・ヴァラッハ]](1847年 - 1931年。ノーベル化学賞受賞)、[[アウグスト・ケクレ]] (1829年 - 1896年)、[[レオポルト・ルジチカ]](1887年 - 1976年、ノーベル化学賞受賞)らの研究で、多くの人工香料を安価に製造できるようになり、高級品であった香水は一般に普及した。 |
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1804年には、ドイツの薬剤師[[フリードリヒ・ゼルチュルナー]](1783年 - 1841年)によって、初めて[[阿片]]から有効成分[[モルヒネ]]が分離、抽出された。これによって薬用植物の有効成分が化学物質であることがわかり、以降植物から薬効成分だけを抽出する研究が進み、薬剤として用いられるようになった。 |
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=== [[獣医師法]] === |
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飼育動物の診療行為にあたらない限りペットなどの動物へのアロマテラピーを行うことは違反行為にならない。 |
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こうした化学・近代医学の発展で、天然香料のみを使った自然香水や、精油を用いるヨーロッパの伝統医学(医療錬金術、錬金術的医学)は下火になっていった。 |
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獣医師でなければ、飼育動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずらその他獣医師が行う必要があるものとして政令で定めるものに限る)の診療を業務としてはならない。|獣医師法第十七条(昭和24年法律第186号) |
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=== 「アロマテラピー」と精油療法の再評価 === |
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=== その他 === |
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20世紀初頭、[[精油]]を医療に利用し、その薬理作用を科学的に解明しようという試みが始まった。1901年には、イギリスの病院で精油が治療に使われた<ref name="誤り">[http://animalaromatherapy.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-6dfb.html ルネ=モーリス・ガットフォセ情報の誤り] 動物のアロマセラピー最新情報 日本アニマルアロマセラピー協会</ref>。イタリアでも、GattiやCajola、Paolo Rovestiなどの医師が精油の抗菌力の研究を行い、フランスでも精油の効能が化学的に研究された<ref name="誤り"/>。 |
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; [[製造物責任法]](PL法) |
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[[File:René-Maurice_Gattefossé.jpg|thumb|200px|right|ルネ・モーリス・ガットフォセ]] |
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: 一般に個人が精油を使った石鹸などを業として(反復継続してもしくは亜反復継続する意図をもって)行う場合は、薬事法に抵触する。また、製造物について事故等が起こった場合、票として製造・譲渡等をした者の製造物責任が生じる。 |
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==== フランス ==== |
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; [[消防法]]など |
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南フランスの[[プロヴァンス]]地方の調香師・[[香料]]の研究者であった[[ルネ=モーリス・ガットフォセ]](1881年-1950年)は、精油を使った治療に興味を持ち、友人医師らと共に精油の薬理効果の研究を始めた<ref group="※">ガットフォセが精油の薬理効果に注目したきっかけとして、著作から不正確な引用がされ、次のようなエピソードが知られる。「実験中に手に火傷を負い、とっさに手近にあったラベンダー精油に手を浸したところ傷の治りが目ざましく良かったことから、精油の医療方面での利用を研究し始めた。」しかし、ロバート・ティスランドがガットフォセの著作『芳香療法』を編集して出版した『ガットフォセのアロマテラピー』では、1910年7月の火傷を負った事故が精油の治療効果に注目した契機だとは述べられておらず、アロマテラピー業界に流布し民間検定などで事実として教えられるエピソードと著作の内容には齟齬がある。著作では、火傷がガス[[壊疽]]に達したと述べられており、事故直後に精油を用いたとも書かれていない。高山林太郎は彼の孫娘による話として、火傷は上半身全体に及ぶ重篤なもので、正規の医療で治療していたが経過が悪く、事故後時間がたってから、民間で火傷に効果があるといわれたラベンダー油を使用したのだと述べている。つまり、ガットフォセは事故をきっかけに偶然ラベンダー精油の薬効を発見したわけではなく、事故前から民間の精油療法に興味を持っており、その知識を利用したのである。ただ、この件は精油の治療効果を研究する契機にはならなかったらしく、本格的に研究を始めたのは1920年代になってからだといわれる。</ref>。ガットフォセは精油を使った医療を「アロマテラピー」と命名し、自身の研究や友人医師の報告をまとめ、「アロマテラピー」という造語をタイトルとし、''Aromatherapie - les huiles essentielles hormones vegetales'' (アロマテラピー、芳香療法。1937年)を刊行した<ref name="burn">[http://roberttisserand.com/2011/04/gattefosses-burn/ Gattefosse’s burn] Robert Tisserand</ref><ref name="ガットフォセ">ルネ=モーリス・ガットフォセ、ロバート・ティスランド 編集『ガットフォセのアロマテラピー』、前田久仁子 訳、フレグランスジャーナル社、2006年</ref><ref name="高山">[http://podcastle.jp/podcasts/show/1004 髙山林太郎が語るアロマテラピー ヒストリー] 高山林太郎</ref><ref>[https://ameblo.jp/iledesfleursparis/entry-11897652081.html ルネ・モーリス・ガットフォセの一生 パート1] Ile des fleurs Paris Tomomi</ref><ref>[http://www.sensoli.com/aromatherapy/the-significance/historical-background/a-random-discovery-by-rene-maurice-gattefosse/ A random discovery byRene-Maurice Gattefosse?] SENSOLI Ltd.</ref><ref>[https://ameblo.jp/aromaticregards/entry-10881002272.html ガットフォセとラベンダー] 飯嶋慶子</ref><ref name="みなみ">[http://bio.pro.tok2.com/A6_Info/A604_Aroma/A604_AromaOther/AromaOtherInfo/News_Other.html アロマテラピーという言葉が作られた年代について] みなみの香草屋</ref>。ガットフォセが用いた精油は、調香師だったためテルペンレス加工がされた精油であり<ref name="ガットフォセ"/>、合成香料の使用にも肯定的だった<ref name="バルチン" />。フランスではモンシェール医学博士や薬剤師セブランジュが精油を活用し、アロマテラピーの発展に貢献した。アロマテラピーは数年の間医師たちに注目され、第一次世界大戦では戦場でティーツリー油やラベンダー油が利用されたが、[[抗生物質]]の一般化などで忘れられてしまった<ref name="高山ルーツ">高山林太郎『ルーツ of アロマテラピー』現代書林、2002年</ref>。 |
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: 精油は揮発性物質で引火性があるため、大量に保管する場合には「[[危険物の規制に関する政令]]」にかかることになる。 |
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; [[あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律]] |
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: 「[[医業類似行為]]を業とすることを禁止処罰するのも人の健康に害を及ぼす虞のある業務行為を限局する趣旨」という最高裁大法廷昭和35年1月27日判決の一部分を「人体に危害を与えず、保健衛生上何ら影響もあたえないような医業類似行為(アロママッサージなど)はサービス行為として認められる」と解釈する向きもあるが、同判決には「単に治療に使用する器具の物理的効果のみに着眼し、その'''有効無害であることを理由として、これを利用する医業類似の行為を業とすることを放置すべしとする見解には組し得ない'''」という解釈の記載があるので注意が必要である。そして最高裁判決は医業類似行為のみについて判断したものであり、無免許であん摩を業として行えば処罰対象になると厚生労働省は通知している(昭和三五年三月三〇日 医発第二四七号の一各都道府県知事あて厚生省医務局長通知)。また、厚生労働省ではあん摩マッサージ指圧の定義を「法第一条に規定するあん摩とは、人体についての病的状態の除去又は疲労の回復という生理的効果の実現を目的として行なわれ、かつ、その効果を生ずることが可能な、もむ、おす、たたく、摩擦するなどの行為の総称である。」(昭和三八年一月九日 医発第八号の二各都道府県知事あて厚生省医務局長通知)と回答しているため、今後も、[[あん摩マッサージ指圧師]]以外の者のアロママッサージなどの施術には、法的に慎重な判断が求められる。(→[[手技療法]]参照) |
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[[File:Docteur_Valnet_NB.jpg|thumb|150px|left|ジャン・バルネ]] |
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== アロマテラピーに使われる主な精油 == |
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フランスの医学博士{{仮リンク|ジャン・バルネ|fr|Jean Valnet}} (1920年-1995年)は、[[第二次世界大戦]]と[[インドシナ戦争]]に従軍した際に、負傷者に精油を使った医療を実践して功績をあげ、軍籍をはなれた後も民間の病院でアロマテラピーを行った<ref name="高山ルーツ" />。1964年に『ジャン・バルネ博士の植物=芳香療法』(原題''L'Aromatherapie ou Aromatherapie, Traitement des maladies par les essences des plantes''、多くの版が存在する)を著し、アロマテラピーを再び有名にした。 |
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{{main|精油}}(作用する効能については民間療法ベースに作られているため、科学的根拠がないものがほとんどである。中には毒性の強いものもあるため、直接皮膚などに使用する場合には注意が必要である。) |
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{| class="wikitable" |
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!精油名(五十音順)!!英名!!学名!!科!!抽出部位!!一般的な抽出方法!!主な作用 |
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|- |
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![[イランイラン]] |
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現在フランスでは、「アロマテラピスト」を名乗ることができるのは医師のみであり、患者が希望すれば精油を処方する医師も一部存在する<ref name="フランス1">[https://ameblo.jp/iledesfleursparis/entry-11878228924.html フランスのアロマテラピー事情] Île des fleurs Paris Tomomi</ref><ref name="フランス2">[https://ameblo.jp/iledesfleursparis/entry-11838995594.html フランスのアロマテラピー事情] Île des fleurs Paris Tomomi</ref>。精油は保険対象外であるため、アロマテラピーは病院ではほとんど行われていない。精油は薬局で処方箋なしで購入することができ、伝統的な家庭薬として利用されている<ref name="フランス1"/>。フランスのアロマテラピーでは、芳香物質の薬理効果が重視され、香りはほとんど度外視される<ref>[https://ameblo.jp/iledesfleursparis/entry-11974924994.html 香りとアロマテラピー] Île des fleurs Paris Tomomi</ref>。香水の本場であるためか、精油がリラックスや香りを楽しむ目的で使われることも少なく、精油を使ったアロママッサージもほとんど行われない<ref name="オルファクトテラピー1"/>。香りを利用した療法としては、精油の香り(芳香)によって精神疾患や神経系疾患を治療するための療法があり、オルファクトテラピー(嗅覚療法)と呼ばれている<ref name="オルファクトテラピー1"/><ref name="オルファクトテラピー2"/>。 |
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|ylang ylang||''Cananga odorata''||[[バンレイシ科]]||花||水蒸気蒸留法||鎮静作用、収れん作用、催淫作用など |
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![[オレンジ]]スイート |
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また、香りの記号学的な機能は、イギリスでは活用されているが、フランスのアロマテラピーには見られない{{sfn|ヴェルナー|2001|p=174}}。 |
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|orange||''Citrus sinensis''||[[ミカン科]]||果皮||圧搾法||食欲増進作用など |
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![[カモミール・ローマン]] |
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==== イギリス ==== |
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|roman chamomile||''Anthemis nobillis''||[[キク科]]||花||水蒸気蒸留法||鎮静作用、鎮痛作用、通経作用など |
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外科医助手で刺鍼術の専門医と結婚した[[マルグリット・モーリー]](本名マルガレーテ・ケーニヒ、オーストリア生まれ、1895年 - 1968年{{sfn|ヴェルナー|2001|p=162}})は、フランスのシャバーヌ博士の"''Les Grandes Possibilites par les Matieres Odoriferantes'' " (芳香物質の大きな可能性、1835年)やルネ=モーリス・ガットフォセの『芳香療法』(1937年)といった書籍に影響を受け<ref name="バレエ・リュス">[https://rintarotakayama.blogspot.com/2013/09/blog-post_24.html 「バレエ・リュス」とアロマテラピー R林太郎語録] 高山林太郎</ref>、アロマテラピーを主に美容方面に活用できる技術、若返り療法{{sfn|ヴェルナー|2001|p=164}}として研究した。アロマテラピーを、美容や食事療法を含む健康法として発展させ、インド伝統医学の[[アーユルヴェーダ]]、中国の最古の医学書の一つ『[[黄帝内経]]』、それらの影響を受けている[[チベット医学]](19世紀にはロシア経由で知られるようになっていた)も取り入れた{{sfn|ヴェルナー|2001|p=164}}。シャウマン・ヴェルナーは、「神秘的なアジアに対するアロマセラピストの憧れも、[[ヒッピー]]に代表される1960年代の脱社会主義の名残であろう。」と指摘している{{sfn|ヴェルナー|2001|p=164}}。モーリーのアロマテラピー・マッサージは、精油を植物油で希釈して行うオイル・マッサージで、[[バレエ・リュス]]などの芸術運動の影響を受け、感覚を通じた陶酔感・充足感を重視した<ref name="高山ルーツ" />。パリ・スイス・イギリスにクリニックを開いて美容法として顧客にアロマテラピーを施術し、生徒を育成した<ref>[http://www.oilsandplants.com/maury.htm Marguerite Maury] Oils and Plants</ref>。美容や健康、アロマテラピーについて『青春という資本{{sfn|ヴェルナー|2001|p=164}}』(原題''Le Capital "Jeunesse"''、1961年。邦題:生命と若さの秘密―マルグリット・モーリーのアロマテラピー)にまとめ、これは後に英訳された評判となった。モーリーの生徒たちは、イギリスなど各地で活躍した。 |
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![[クラリセージ]] |
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アロマテラピーは、1960年代に始まる欧米の[[ニューエイジ運動]]の中で、[[アーユルヴェーダ]]や[[東洋医学]]と共に注目された<ref>海野弘『世紀末シンドローム ニューエイジの光と闇』新曜社、1998年4月</ref>。[[ヒッピー]]だったロバート・ティスランドは、『アロマテラピー―〈芳香療法〉の理論と実際』(原題''The Art of Aromatherapy''、1977年)で、「芳香療法の基本原理」は、「神秘的な生命力、陰・陽、有機食」で、その概念を説明するモットー「自然の法則は健康の法則である。この法則に則して生きるものは病むことが決してない。この法則に従うものは、体のあらゆる部分の平衡を保ち、それにより真の調和を確保する。調和は健康であり、不調和は病気である。」は、アメリカ人のリバイ・ドーリングがイエス・キリストの人生の知られていない17年間を[[アカシック・レコード]]を霊視して手記として記したという『[[宝瓶宮福音書]]』(アクエリアン・ゴスペル)から取られている{{sfn|ヴェルナー|2001|p=165}}。ティスランドは精油の紹介の際、学名、科学的な医学・製薬学のデータと共に、陰・陽と支配星を挙げている{{sfn|ヴェルナー|2001|p=165}}。神秘思想を持ったヨーロッパの伝統的な本草学や製薬学からも、多く引用が行われている。この本は、英語ではモーリーの著作の英訳を除けば、初のアロマテラピーの著書で、世界的なアロマテラピーブームの嚆矢となった{{sfn|ヴェルナー|2001|pp=165-166}}。ティスランドは1987年にアロマセラピスト養成学校を設立している{{sfn|ヴェルナー|2001|pp=165-166}}。1990年代には多くの国でアロマセラピスが登場し、一般向けの入門書が出版されるようになった{{sfn|ヴェルナー|2001|pp=165-166}}。ヴェルナーは、アロマセラピストの多くは女性で、アロマテラピー関係の本は、リラクセーション、美容、インテリアが主で、セラピスト自身の宣伝も大きな目的のようであると述べている{{sfn|ヴェルナー|2001|pp=165-166}}。 |
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|clary sage||''Salvia sclarea''||[[シソ科]]||葉と花||水蒸気蒸留法||抗うつ作用、緩和作用、ホルモン調整作用など |
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![[グレープフルーツ]] |
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==== ドイツ ==== |
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|grapefruit||''Citrus paradisi''||[[ミカン科]]||果皮||圧搾法||食欲増進作用など |
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ドイツでは自然療法がさかんで、[[ハイルプラクティカー]](自然療法士)という国家資格が存在する<ref> [http://www.aromakankyo.or.jp/basics/howto/world/index.html 世界のアロマテラピー アロマテラピーワールドマガジン] 公益社団法人日本アロマ環境協会</ref>。アロマテラピーは自然療法の一環として行われ、方法は精油の吸入が中心である<ref name="高山ルーツ" />。 |
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==== 中近東・西アジア ==== |
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中近東・西アジアは、アロマテラピー発祥の地の一つであると言える。ユナニ医学が受け継がれる地域では、現在でも精油を使った治療が盛んに実践されている<ref name="メディカル">今西二郎『補完・代替医療 メディカル・アロマセラピー』金芳堂、2006年</ref>。 |
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==== 日本 ==== |
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{{See also|蘭方医学|医療行為|資格#民間資格}} |
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[[File:Sa-potpourri.jpg|thumb|right|ポプリ]] |
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; 江戸から昭和中期 |
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: ヨーロッパでは精油を使った治療が行われていたため、日本に西洋医学が伝わった際に、[[解剖学]]などと共に精油を使った治療法が伝来した。江戸幕府が[[オランダ東インド会社|東インド会社]]に、ガラス製蒸留装置の輸入や蒸留技術者の派遣を依頼した記録が残っており、蒸留小屋が設置され(場所はおそらく[[出島]]と推測されている)、日本人に高度な蒸留技術が伝承された<ref name="香料植物">吉武利文『香料植物 ものと人間の文化史 159』法政大学出版局、2012年</ref>。精油や芳香蒸留水が[[蘭方]](西洋医学)で盛んに用いられ、ハーブや香辛料の情報、精油の効能や利用法が翻訳されて伝えられた<ref name="蘭方">[http://www.tcmit.org/pressrelease/docs/100618_%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%B3%E3%83%AC%E5%B1%95_%E6%B1%9F%E6%88%B8%E3%81%AE%E5%8C%BB%E8%A1%93.pdf トヨタコレクション企画展 江戸の医術のことはじめ 〜 漢方と蘭方の出会い 〜]</ref>。明治時代には、北海道[[北見]]の[[ニホンハッカ]]や[[富良野]]のラベンダー、[[楠]]から採れる[[樟脳]]油など、香料植物を栽培し精油を輸出していたが、合成香料や輸入自由化による海外の廉価品の影響などで、日本の精油生産は廃れてしまった<ref name="香料植物"/>。 |
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; 1970年代から阪神大震災 |
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: [[村岡花子]]が翻訳した『[[赤毛のアン]]』などの児童文学を通して、欧米文化に魅了された[[熊井明子]]が、1970年代に日本に[[ポプリ]]を紹介し、徐々に雑誌などに取り上げられるようになった<ref name="生活の木">「ファーム富田×熊井明子×生活の木-ハーブ対談 当時は、誰もハーブを知らなかった」『生活の木 エイムック』エイ出版社、2005年</ref>。1980年代初頭、重永忠(現「[[生活の木]]」代表取締役)が、毎回[[ポプリ]]作りのシーンがある少女マンガを企画し、原作:佐和みずえ、作画:佐藤まり子『[[あこがれ♥二重唱]]』が「[[なかよし]]」に連載され(1980年10月号から1981年3月号)<ref>[http://www.happy-bears.com/contents/interview/14-01.html ワークライフバランスインタビュー14回 株式会社生活の木 代表取締役重永忠さん]</ref><ref>「ウワサを検証①ポプリ・ブームの火付け役!? '80年代に登場した少女マンガ」『生活の木 エイムック』エイ出版社、2005年</ref>、小学生やその親たちの間でポプリが流行した。また、[[日本国有鉄道|国鉄]]のカレンダーやドラマ『[[北の国から]]』で富良野のラベンダー畑が紹介され話題になり<ref name="生活の木"/>、これらをきっかけに、ハーブやポプリが日本で広く知られるようになった。アロマテラピーという言葉が紹介されたのは1980年代で、「イギリスからの自然派美容マッサージ」という形で導入された<ref name="塩田" />。これに伴い、イギリスのロバート・ティスランド(『アロマテラピー〈芳香療法の理論と実際〉』フレグランスジャーナル社、1985年)やフランスのジャン・バルネ(『ジャン・バルネ博士の植物‐芳香療法』フレグランスジャーナル社、1988年)などの専門書が、高山林太郎の翻訳で出版された<ref>[http://www.fragrance-j.co.jp/books/aroma.html 書籍|アロマテラピー] フレグランスジャーナル社</ref><ref>[https://rintarotakayama.blogspot.com/2014/05/blog-post_28.html 『ジャン・バルネ博士の植物=芳香療法』はどうして復刊されないできたのか R林太郎語録] 高山林太郎</ref>。1980年代にはリラクセーションビジネスが注目を集め、80年代半ばになると、海外でアロママッサージ(精油を植物油で希釈したマッサージ油を使用した全身マッサージ)などを学んだ者たちが国内で実践を始め<ref>[http://www.ars-inc.co.jp/aroma_gaiyou4.html アロマテラピーとは] ars inc. </ref><ref>マミ・レヴィ『マミ・レヴィのアロマテラピー』講談社、1996年</ref>、アロママッサージを施す女性向けサロンなどが登場した<ref>[http://www.scbri.jp/PDFsangyoukigyou/scb79h15F11.pdf リラクゼーションビジネスの広がり-小規模マッサージサロンの事業化のポイント-] 信金中央金庫 総合研究所産業企業情報 15-11 2004.1.21</ref>。また、日本にアロマテラピーが広く知られるようになったきっかけとして、1995年の[[阪神・淡路大震災]]後にボランティアとしてハンドマッサージなどを行ったアロマテラピー関係者がいたことや、震災後に「癒し」が注目され、アロマテラピーと癒しが結び付けられたことがあるとも言われている<ref>[http://midwife-yasuko.exblog.jp/15779106/ 阪神・淡路大震災とアロマテラピー ナースやすこの健康プラス] 鈴木泰子</ref><ref>[https://libranatut.exblog.jp/17873738/ アロマの履歴書 (8) 阪神淡路大震災がアロマに「癒し」というはっきりとした方向を与えた] ライブラナチュテラピー株式会社 林伸光</ref>。 |
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; 現在の潮流と「メディカル・アロマセラピー」 |
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: 現在の日本のアロマテラピーには、病院で補完・代替医療として行われるもの(医療系、フランス系<ref group="※" name="医療"/>)と、エステサロンやマッサージ店で行われるもの(美容系、イギリス系)がある。精油は雑品として販売され簡単に購入できることから、家庭や職場でも気軽に用いられており、専門家と一般市民の二極化の傾向にある{{sfn||鈴木&大久保|2009}}。日本には最初、イギリスで行われていた美容マッサージが導入され、アロマテラピーの医学的な発展は遅れた<ref>[http://aroma-jsa.jp/wp/%E7%AC%AC11%E5%9B%9E%E3%80%80%E5%AD%A6%E8%A1%93%E7%B7%8F%E4%BC%9A/ 第11回学術総会『新たな香り 更なるエビデンスを求めて』 -第一回国際シンポジウム-] 日本アロマセラピー学会</ref>。美容系のアロマテラピーは、アロマセラピストやエステティシャンによって施術され、アロママッサージが中心である。施術者のほとんどは医療資格を持たないため、その行為は[[医療]]とは区別され、心身のリラックスやスキンケアを目的とする。また、アロマテラピーが広く知られるようになり、精油の入手が容易になったため、個人での実践も増えている。近年では国内でも精油への科学的アプローチも以前より進み、[[代替医療|補完・代替医療]]としてアロマテラピーに関心を寄せる医療関係者も以前より増えている<ref name="今西" />。1997年には、臨床医を中心に組織された医療従事者の全国的な研究団体・[[日本アロマセラピー学会]](英:Japanese Society of Aromatherapy、略称:JSA)が設立された<ref>[http://aroma-jsa.jp/wp/aboutus/ 日本アロマセラピー学会について] 一般社団法人日本アロマセラピー学会</ref>。医学中央雑誌の看護分野の原著論文では、1996年までアロマテラピーに関するは論文はなかったが、1997年から論文数が増加し始めた{{sfn||鈴木&大久保|2009}}。しかし、[[漢方]]などのメジャーな補完・代替医療に比べ研究者や臨床研究は少ない。また日本では [[保険診療]]と保険外診療の併用([[混合診療]])は原則として禁止されているため、元々保険適用外である[[出産]]を含む[[産婦人科]]などを除き、医療の現場ではほとんど行われていない<ref name="和田山崎" />。病室の環境改善や[[作業療法]]として、また[[介護]]の現場や[[終末医療]]で利用されることがある<ref name="和田山崎" />。 |
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; 民間での人気と資格ブーム |
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: 日本では、精油の香りを楽しんだり、美容法、リラクセーション法としてのアロマテラピーは、民間で広く普及しており、女性を中心に高い人気がある。アロマテラピーの公的な資格は存在しないが、民間団体や個人等が自由に設定でき、独自の審査基準を設けて任意で与える民間[[資格]]<ref group="※" name="資格">これらの民間資格は、法令で規定されたものではない。</ref>が多数存在する。趣味やエステ、マッサージの仕事のために、民間の資格を取得する人が増えている。資格を与える最大手の団体・[[日本アロマ環境協会]](理事:宇田川僚一、精油販売業者・[[生活の木]]専務取締役)は、5万8千人の個人会員を持ち<ref name="事業">[http://www.aromakankyo.or.jp/aeaj/disclosure/pdf/out_report_25.pdf 平成25年度 事業報告書] 日本アロマ環境協会</ref>、資格試験の実施だけで年に4億円近い収益を上げている(平成25年度)<ref name="貸借">[http://www.aromakankyo.or.jp/aeaj/disclosure/pdf/out_account_25.pdf 貸借対照表平成26年3月31日現在] 日本アロマ環境協会</ref>。多くのアロマテラピーの民間資格が作られ、資格の授与やセミナーの開催などの[[資格商法]]が行われている。教室も増えており、内容は「アロママッサージ」、「アロマを使った手作りコスメ」、「アロマセラピスト育成」など細分化している<ref>[https://web.archive.org/web/20180618203824/https://news.mynavi.jp/article/20141124-a156/ マダムをターゲットにしたママ起業道 〜趣味を活かした○○教室〜] 吉見夏実 マイナビニュース マネー</ref>。科学的に証明されていない効能や、歴史的根拠のない言い伝えを事実として教えるなど、問題視される民間資格、講座もある<ref>[https://blog.goo.ne.jp/molecule1950/e/49745a7d12d8beadff31a82def830aaf アロマテラピー参考書の医学的効果は嘘ばかり] 植物性サプリメントの科学</ref><ref>[https://web.archive.org/web/20141226191744/http://blogs.yahoo.co.jp/ohtani_tky/61900812.html アロマテラピー(?)] 英国・米国医薬品情報研修紀行</ref><ref>[http://animalaromatherapy.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-f313.html アロマの歴史に誤りが‥!?] 動物のアロマテラピー</ref>。 |
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; 日本薬局方 |
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: 日本において精油は、薬効・効果が認められた[[ウイキョウ]]油、[[オレンジオイル|オレンジ油]]、[[ケイヒ]]油、[[チョウジ]]油、[[テレピン油]]、[[ハッカ]]油、[[ユーカリ]]油が[[日本薬局方]]に収載されており、[[医薬品]]として扱われる<ref>[http://www2.odn.ne.jp/had26900/constituents/about_essential_oil.htm 植物に含まれる芳香成分精油について] 帝京大学薬学部附属薬用植物園 木下武司</ref>。これらの精油を含むものは医薬品とみなされるが、含有する濃度が低い場合、[[化粧品]]への配合が許されるときがある<ref>[https://ameblo.jp/forestwalking/entry-11821700242.html 局方の精油] 理学博士 藤田忠男</ref>。日本薬局方に収載されたもの以外で、化粧品の範疇にも入らず医薬品的効能も謳わない精油は、高濃度の芳香成分・薬効成分を含むにもかかわらず雑品扱いであり、販売・輸入に規制は存在しない<ref>[http://www.yakujihou.com/2006/05/post_61.html 【医薬品・健康食品・化粧品・医療用具・健康器具編】Q6.医薬品・化粧品・健康食品・雑品の区別] 薬事法ドットコム</ref><ref name="輸入">[http://www.jetro.go.jp/world/japan/qa/importproduct_03/04M-091208 貿易・投資相談Q&A アロマ商品の輸入手続き] [[日本貿易振興機構]](JETRO)</ref>。ただ輸入に関しては、近年[[脱法ドラッグ|危険ドラッグ]]をアロマ商品に偽装した取引の摘発があり、監視が厳しくなっている<ref name="輸入" />。 |
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; 精油に対するアレルギー |
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: 日本ではアロマブームや精油のマイクロカプセル化技術の確立で、精油が様々な面で多用されており、その結果精油に対するアレルギーが増加している<ref>[http://animalaromatherapy.cocolog-nifty.com/blog/2014/11/micro-encapsula.html Micro Encapsulation of EOs (精油のマイクロカプセル化;パウダー化)] 動物のアロマセラピー最新情報〜日本アニマルアロマセラピー協会〜</ref>。[[名古屋大学]]医学部環境皮膚科学講座の杉浦真理子らは、12年間に1000人以上の患者を対象に、化粧品の[[接触性皮膚炎]]に関する調査を行った。このパッチテストの陽性率第1位はラベンダー油で、6.57%と突出して多かった<ref>[http://dermatology.blog97.fc2.com/blog-entry-83.html 化粧品によるかぶれ 原因物質ランキング] うはら皮膚科</ref><ref>杉浦真理子, 早川律子, 加藤佳美 ほか、「[https://doi.org/10.15036/arerugi.50.231_2 2-e アレルギー性接触皮膚炎 : ラベンダーオイルのヒトパッチテスト結果とモルモット皮膚感作試験結果]」 『アレルギー』 2001年 50巻 2-3号 p.231-, {{doi|10.15036/arerugi.50.231_2}}, {{naid|110002426619}} 一般社団法人日本アレルギー学会</ref>。 |
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== アロマテラピーに使われる精油 == |
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{{main|精油の一覧}} |
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{| class="wikitable" style="font-size:90%" |
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!精油名(五十音順)!!材料植物の通称!!学名!!科!!抽出部位!!一般的な抽出方法 |
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! rowspan="2" | ウイキョウ油 |
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![[ビャクダン]](白檀・サンダルウッド) |
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|スターアニス(和名・[[トウシキミ]]、ダイウイキョウ、八角)<ref name="名前なし-1">[http://mpgarden.pha.nihon-u.ac.jp/archives/story/8-%E8%8C%B4%E9%A6%99-%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%82%AD%E3%83%A7%E3%82%A6-2/ 茴香 (ウイキョウ)] 日本大学薬学部 薬用植物園</ref>||''Illicium verum''||シキミ科||果実<ref>[http://www.pharm.or.jp/herb/lfx-index-YM-200906.htm ダイウイキョウ] 公益社団法人日本薬学会</ref>|| rowspan="2" | 水蒸気蒸留法<ref>[http://www.genome.jp/dbget-bin/www_bget?dr_ja:D04154 KEGG DRUG: D04154 ウイキョウ油 (JP16)]</ref> |
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|sandalwood||''Santalum album''||[[ビャクダン科]]||心材||水蒸気蒸留法||鎮静作用、収れん作用、強壮作用、消毒作用、抗炎症作用など |
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|[[フェンネル]](和名・ウイキョウ、ショウウイキョウ)<ref name="名前なし-1"/>||''Foeniculum vulgare Mill.''||セリ科||種子 |
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![[オレンジ油]] |
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![[セイヨウネズ]](ジュニパー) |
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|[[オレンジ]](和名:アマダイダイ)、[[ウンシュウミカン]]などミカン属の植物<ref>[http://moldb.nihs.go.jp/jp/DetailList_ja.aspx?submit=%E8%A9%B3%E7%B4%B0%E6%A4%9C%E7%B4%A2(%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E5%90%8D)&keyword=%E3%82%AA%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8%E6%B2%B9 オレンジ油] 第十六改正日本薬局方(JP16)名称データベース</ref>||''Citrus sinensis''、''Citrus unshiu''||[[ミカン科]]||果皮||圧搾法 |
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|juniper||''Jumiperus communis''||[[ヒノキ科]]||果実||水蒸気蒸留法||浄化作用、収れん作用、利尿作用など |
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!クラリセージ油 |
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![[スイートマージョラム]] |
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|[[クラリセージ]](和名:オニサルビア)||''Salvia sclarea L.''<ref name="荘司"/>||[[シソ科]]||花付き全草||水蒸気蒸留法 |
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![[ゼラニウム]] |
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|geranium||''Pelargonium graveolens''||[[フウロソウ科]]||葉||水蒸気蒸留法||ホルモン調整作用、抗うつ作用など |
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! rowspan="2" | ケイヒ油 |
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![[ティートリー]] |
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| ケイ([[生薬]]の[[桂皮]]を採る木)||''Cinnamomum cassia Blume''<ref name="セイロンニッケイ">[http://www.nippon-shinyaku.co.jp/herb/db/plant/111_120/cinnamomum_verum.html セイロンニッケイ | 111〜120 | 植物こぼれ話 | 植物図鑑DB | ハーブの館] 日本新薬株式会社</ref>||rowspan="2" |クスノキ科 ||葉付き小枝|| rowspan="2" | 水蒸気蒸留法 |
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|tea tree||''Melaleuca aleternifolia''||[[フトモモ科]]||葉||水蒸気蒸留法||免疫賦活作用、殺菌作用、坑真菌作用、消毒作用など |
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| [[シナモン]](和名・セイロンニッケイ)||''Cinnamomum zeylanicum Nees(Lauraceae)''<ref name="セイロンニッケイ"/>||樹皮 |
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![[ネロリ]] |
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!タイム油 |
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|[[タイム (植物)|タイム]](和名・[[タチジャコウソウ]]<ref>[http://www.nippon-shinyaku.co.jp/herb/db/arekore/41_50/thymus_serpyllum_quinquecostatus.html イブキジャコウソウ | 41〜50 | 植物の話あれこれ | 植物図鑑DB | ハーブの館] 日本新薬株式会社</ref> )||''Thymus vulgaris L.''<ref group="※" name="ケモタイプ">同じ学名でも複数の[[化学種]](ケモタイプ)があり、成分・生物活性・禁忌が異なる</ref>||[[シソ科]]||花付き全草||水蒸気蒸留法 |
|||
|neroli||''Citrus aurantium var.amara''||[[ミカン科]]||花||水蒸気蒸留法||鎮静作用など |
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|- |
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!チョウジ油 |
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![[乳香]](フランキンセンス・オリバナム) |
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|frankincense, olibanum||''Boswellia carteri''||[[カンラン科]]||樹脂||水蒸気蒸留法||細胞成長促進作用、収れん作用、鎮静作用、抗菌作用など |
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|[[クローブ]](和名・チョウジ)||''Eugenia caryophyllata Thunb''<ref>[http://www.musashino-p.co.jp/plant/plant-oz/mdftyoji.htm 薬用植物ギャラリー・チョウジ] ムサシノ製薬</ref><ref name="荘司"/>||フトモモ科||花蕾||水蒸気蒸留法 |
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|- |
|- |
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!ティーツリー油 |
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![[ペパーミント]] |
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|[[ティーツリー]]、ティートリー||''Melaleuca alternifolia Cheel''<ref group="※" name="ケモタイプ">同じ学名でも複数の[[化学種]](ケモタイプ)があり、成分・生物活性・禁忌が異なる</ref><ref name="荘司"/>||[[フトモモ科]]||葉付き小枝||水蒸気蒸留法 |
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|peppermint||''Mentha piperita''||[[シソ科]]||葉||水蒸気蒸留法||殺菌・抗菌作用、健胃作用など |
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|- |
|- |
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!ペパーミント油 |
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![[ベルガモット]] |
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|[[ペパーミント]](和名・セイヨウハッカ)||''Mentha piperita L.''<ref name="荘司"/>||[[シソ科]]||花穂付き全草||水蒸気蒸留法 |
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|bergamot||''Citrus bergamia''||[[ミカン科]]||果皮||圧搾法||食欲増進作用、抗うつ作用など |
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!マジョラム油 |
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![[ユーカリ]] |
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|[[マジョラム]](和名・マヨラナ)||''Origanum majorana L.''<ref name="荘司"/>||[[シソ科]]||花穂付き全草||水蒸気蒸留法 |
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|eucalyptus||''Eucalyptus globulus''||[[フトモモ科]]||葉||水蒸気蒸留法||殺菌作用、消炎作用、鎮痛作用、去痰作用、抗ウイルス作用など |
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!ユーカリ油 |
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![[ラベンダー]] |
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|ユーカリプタス(和名・[[ユーカリ]])||''[[:en:Eucalyptus globulus|Eucalyptus globulus, Labill.]]、[[:en:Eucalyptus radiata|Eucalyptus radiata Sieber]]''<ref name="荘司"/>||[[フトモモ科]]||葉||水蒸気蒸留法 |
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|lavender||''Lavandula angustifolia''||[[シソ科]]||花と葉||水蒸気蒸留法||鎮静作用、免疫賦活作用、殺菌作用、消毒作用、鎮痛作用、細胞成長促進作用など |
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!ラベンダー油 |
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![[レモン]] |
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|コモン・ラベンダーなど[[ラベンダー|ラヴァンデュラ属]]の植物||''[[:en:Lavandula angustifolia|Lavandula angustifolia]]''<ref name="荘司"/>||[[シソ科]]||先端部分および花||水蒸気蒸留法 |
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|lemon||''Citrus limon''||[[ミカン科]]||果皮||圧搾法||消毒作用、殺菌作用など |
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!レモン油 |
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|[[レモン]]||''Citrus Limonum Risso''<ref name="荘司"/>||[[ミカン科]]||果皮||圧搾法 |
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|lemongrass||''Cymbopogon citratus''<br/> (西インド型)<br/>''Cymbopogon flexuosus''<br/> (東インド型)||[[イネ科]]||葉||水蒸気蒸留法||抗うつ作用、食欲増進作用、消炎作用など |
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![[バラ油]] |
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![[ローズオットー]](ダマスク・ローズ) |
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|ダマスク・ローズ、 ケンティフォリア・ローズなど[[バラ属]]の植物||''[[:en:Rosa × damascena|Rosa × damascena]]、[[:en:Rosa × centifolia|Rosa × centifolia]]''||[[バラ科]]||花||水蒸気蒸留法、溶剤抽出法 |
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!ローズマリー油 |
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|[[ローズマリー]](和名・マンネンロウ)||''Rosmarinus officinalis L.''<ref group="※" name="ケモタイプ">同じ学名でも複数の[[化学種]](ケモタイプ)があり、成分・生物活性・禁忌が異なる</ref><ref name="荘司"/>||[[シソ科]]||花付き全草||水蒸気蒸留法 |
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|rosemary||''Rosmarinus officinalis''||[[シソ科]]||葉||水蒸気蒸留法||収れん作用、利尿作用、刺激作用、頭脳明晰作用、発汗作用など |
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他様々な精油が用いられる。 |
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== 脚注 == |
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=== 出典 === |
=== 出典 === |
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== 参考文献 ==<!--執筆に際し実際に引用した文献を記載--> |
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* {{Cite journal|和書|author=鈴木彩加, 大久保暢子 |date=2009-03 |url=https://luke.repo.nii.ac.jp/records/840 |title=看護分野におけるアロマセラピー研究の現状と課題 |journal=聖路加看護大学紀要 |ISSN=02892863 |publisher=聖路加看護大学 |volume=35 |pages=17-27 |hdl=10285/2805 |CRID=1050287363407382272 |ref={{harvid|鈴木&大久保|2009}}}} |
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{{参照方法|date=2024年1月|section=1}} |
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* ロバート ティスランド『アロマテラピー―〈芳香療法〉の理論と実際』高山林太郎 訳、フレグランスジャーナル社、1985年 |
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* 酒井シヅ 編集『薬と人間』スズケン、1982年 |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
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* [[錬金術]]/[[キミア]]/[[クィンタ・エッセンチア]] |
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* [[ハーブ]] |
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* [[蒸留]]/[[精油]]/[[精油の一覧]]/[[フィトール]]/[[芳香化合物]]/[[香料]] |
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* [[お香]] |
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* [[ |
* [[ハーブ]]/[[香木]]/[[香辛料]] |
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* [[森林浴]]/[[緑の香り]] |
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* ホリスティック医学 |
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* [[セルフケア]]/[[ストレス管理]] |
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* [[代替医療]] |
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* [[伝統医学]]/[[代替医療]]/[[アーユルヴェーダ]]/[[ユナニ医学]] |
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* [[代替医療一覧]] |
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* [[マッサージ]]/[[キャリアオイル]] |
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* [[伝統医学]] |
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* [[ニューエイジ]]/[[波動 (オカルト)]] |
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* [[セラピー]] |
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* [[日本の資格に関する一覧の一覧]] |
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* [[癒し]] |
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* [[ |
* [[民間資格]] |
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* [[資格商法]] |
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* [[美容師]] |
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* [[美容所]] |
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* [[美容師法]] |
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== 外部リンク == |
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* [https://parfumerie.vn/#maroon.dti.ne.jp/bandaikw/archiv/chemicals_in_general/NCI%202012%20aromatherapy%20and%20essential%20oils.pdf アロマテラピーと精油類 (PDQ)] 米国国立衛生研究所内 米国国立癌研究所 2012年 渡部和男 訳 |
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* [http://jhes.umin.ac.jp/eamsj.html あんまマッサージ指圧エビデンスレポート (EAMS)] 平成22・23年度厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)研究代表者 [[津谷喜一郎]] |
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* [https://cir.nii.ac.jp/crid/1573950401613522432 緩和ケアにおけるアロマテラピーの可能性 高谷真由美、黒木淳子] 順天堂医療短期大学紀要8 |
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* [https://cir.nii.ac.jp/crid/1050564287488129408 看護基礎教育における代替療法の活用に関する一考察 : メディカルアロマセラピーを中心として 小濱優子 他] 川崎市立看護短期大学紀要11 |
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* [https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282679285106688 植物香気成分の示す多様な作用とその臨床応用(講座:香気成分の化学1) 田代眞一] 化学と教育51 社団法人日本化学会 |
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* [https://cir.nii.ac.jp/crid/1520853832243685504 看護の場に焦点をあてたアロマセラピー研究の方向性 : 2003年から2005年までの文献レビュー 山本多香子、徳永基与子] 京都市立看護短期大学紀要 33 |
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* [http://www.scbri.jp/PDFsangyoukigyou/scb79h15F11.pdf リラクゼーションビジネスの広がり-小規模マッサージサロンの事業化のポイント-] 信金中央金庫 総合研究所産業企業情報 15-11 2004.1.21 |
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* [http://aroma-jsa.jp/ 日本アロマセラピー学会] |
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2024年10月9日 (水) 23:46時点における最新版
アロマテラピー(仏: aromathérapie[※ 1])またはアロマセラピー(英: aromatherapy[※ 2])は、一般的には、精油(エッセンシャルオイル)、または精油の芳香や植物に由来する芳香を用いて、病気や外傷の治療、病気の予防、心身の健康やリラクゼーション、ストレスの解消などを目的とする療法である[1][2]。
実際、人に医療行為や美容を施すには、医師免許や美容師免許が必要となる。
芳香療法、香料治療とも[3]。実際様々な方法で用いられている[4]。ムード作りのインテリアの一種としても使われている[4]。使用される精油は植物に由来する揮発性の油で、それぞれ特有の芳香を持ち、生物活性が科学的に認められるものもある。
精油を使った医療は、アラビアやヨーロッパで昔から行われている伝統医学・民間療法のひとつである[5]。1990年代以降世界的に普及した[4]。ストレス[6]、うつ病[7]、不安[8]、睡眠の質[9]、月経困難症[10]、女性の性欲の刺激[11]、疼痛に[12]に有効であるとシステマティック・レビューにより示され(がんの疼痛は緩和しないようである[13])、殺菌作用を持つ精油は、石鹸などに配合されたり、歯科などでも模索されている。現代では、自己管理の健康法としても用いられている[4]。
概説
[編集]精油を用いるアロマテラピーは、植物療法あるいはハーブ医学から派生したもので[14]、錬金術と深く関係して発展した[15]。アロマテラピーという言葉は、1930年頃にフランスの調香師・香料研究者のルネ=モーリス・ガットフォセが、アロマ(芳香)とテラピー(療法)を組み合わせて作った造語である[16][5][17]。ガットフォセのアロマテラピーは、香料を使った療法であったが、その治療効果に香りは関係なかった[18]。また彼は、近代科学を疑う自然運動家ではなく、アロマテラピーを一つの新しい見込みのある療法として医者に推奨していた[19]。日本には、江戸時代に西洋医学が伝わった際に、精油を用いた医療が伝わり、蘭方で精油が薬として利用された[20]。「アロマテラピー」の呼称では、1980年代に「イギリスからの自然派美容マッサージ」という形で導入されたため[21]、現在の日本では医療という認識は薄い[21]。
日本語では芳香療法と訳されることが多いが、元々は精油を薬剤として用いる薬物療法を指しており[14][21]、フランスでは現在もこの意味で使われる。イギリスに伝わって精油を使った美容法などが「アロマセラピー」と呼ばれるようになり、のちに精油の香りを嗅いで体と心を癒す感覚療法(嗅覚療法)、リラクセーション法なども含まれるようになった。アロマテラピー(アロマセラピー)の定義はあいまいかつ多様である[14][22]。
現在日本では、広くはアロマコロジー(芳香心理学)、美容を目的とする行為、ただ精油の香りを楽しむ行為なども含まれる[1]。日本では精油業者や美容業界の主導で広まり、趣味や美容法、リラクゼーション法の一種として、女性を中心に人気を得ている[23]。医療の分野では補完・代替医療のひとつとして知られる。病気の予防、通常の治療の補助的療法として利用され、介護や看護の場面で行われたり、病室の環境改善に用いられることもある[23]。発祥の地であるヨーロッパでも、治療の主な手段となることはほとんどない[23]。精油の医学的利用の研究者は少ないが[23]、2009年には臨床研究は徐々に増えてきているとも伝えられる[24]。
ティーツリー[25]などのいくつかの精油は抗微生物活性が認められているが、真菌、細菌、ウイルスに対する臨床研究は依然として十分ではない[26]。
一般書籍でいわれる精油の効能は、科学的に証明されていないものが多い[2]。
また、精神に関わる形而上学的な領域にも取り入れられたため、精油を植物の精髄である神聖な医薬品とみなしたり、他の伝統医学の理論を援用し、心身だけでなく魂の健康を目指すスピリチュアルな施術者もいる[27][28]。
名称・分類
[編集]アラビアやヨーロッパでは、伝統的に精油が医療に用いられていた。1930年頃にフランスの調香師・香料研究者ルネ=モーリス・ガットフォセが、精油を使った療法を「アロマテラピー」と名付け、1937年に精油の医療面での利用に関する本Aromathérapie – les huiles essentielles hormones végétales を刊行した。「アロマ」は「芳香」(ギリシャ語:ἄρωμα[※ 3][29], ラテン語:arôma)、「テラピー」は「療法」(ギリシャ語:θεραπεία, ラテン語:therapeia)で、「アロマテラピー」はこのふたつを組み合わせた造語である[30][31]。英語では「アロマセラピー」(英: aromatherapy[※ 2])となる[※ 4]。医学博士の鳥居鎮夫は、「精油という芳香物質を使った療法」を、「香りを嗅ぐことによって病気を治す療法」を意味するアロマテラピー(芳香療法)と呼ぶのはおかしいが、おそらく香料の専門家であったガットフォセは、薬用植物の中で特に芳香性植物から抽出した精油の効能を取り扱うことを強調したのであろう、と述べている[14]。「アロマ」は感覚をあらわすと同時に、実体ある芳香物質(芳香化合物)を意味している[14][※ 5]。「アロマテラピー」は感覚療法であると同時に植物療法(薬物療法)でもあり、非常にあいまいな用語である[14]。そのため香りの心理効果や芳香物質の薬理効果の研究の際に、アロマテラピーという用語を避け、アロマコロジー(芳香心理学)、アロマトロジー(芳香物質学)という言葉が使われることもある[14]。フランスのアロマテラピーでは、精油の薬理効果に重きを置き、香りは注目されない。精油の香りによる療法は、フランスではアロマテラピーと区別され、オルファクトテラピー(嗅覚療法)と呼ばれ、精神疾患や神経系疾患を治療するために利用される[32][33][34]。
時代による定義の変遷
[編集]鳥居鎮夫は、アロマテラピー(アロマセラピー)の定義は時代によって変遷があると指摘している。また、国によっても意味は異なる。
- 精油を使って病気を治す技術
- 精油を体内に取り込む技術
- 精油の香りを嗅いで体と心を癒す技術
フランス語の「アロマテラピー」は、「精油を使って病気を治す技術」を意味した[14]。フランスでは医療として医師が行ったが、伝播したイギリスでは主に美容目的で行われ、アロマセラピスト(香料治療師[3])は医者ではなかったため、「病気を治す」という表現を避け、「精油を体内に取り込む技術」とされた[14]。時代が下るとイギリスなどでは、これに「精油の香りを嗅いで体と心を癒す技術」といった意味が加わった。前の2つは精油の薬理作用を基礎とする定義であり、最後の1つは嗅覚刺激によるものである[14]。アロマテラピー(アロマセラピー)は、時代や国、業界によって、意味するところが異なる。日本では、自然の香りを楽しむ森林浴などもアロマテラピーに含むこともある。
現在では、美容を目的としエスティックサロンなどで行われる「エステティック・アロマセラピー」と、病気の治療や予防、症状の緩和を目的とし、医療、看護、介護で行われる「メディカル・アロマセラピー」の2つの領域に大別される[23]。日本では最初、「エステティック・アロマセラピー」はイギリス、「メディカル・アロマセラピー」はフランスの影響を受けたものが広まったといわれる。日本の医療では、民間の「アロマテラピー」との混同を避け、「アロマセラピー」と呼ぶことが多いが[35]、フランス系(大陸系、医療系[※ 6])が英語で、イギリス系(美容系)がフランス語でよばれていることになる。
現在の欧米での分類
[編集]生化学者のマリア・リサ・バルチンは、近年欧米では、アロマセラピー(芳香療法)、アロマトロジー(芳香物質学[14])、アロマコロジー(芳香心理学)の3種類に分類されていると述べている[2]。
- アロマコロジー(芳香心理学)
- 芳香物質に関する技術と人間の心理作用、芳香物質の脳への影響と作用の仕組みの究明を主な目的とする。人間の感情・情動だけでなく、行動によい影響を与える香りの立証も目指す。名称は、1982年にSense of Smell Institute(SSI、嗅覚研究所)によって提案された[2]。
- アロマセラピー(芳香療法)
- 「アロマテラピー」ではなく「アロマセラピー」と呼ばれる。SSIの定義では、心身の不調に対する植物芳香療法である。精神的な障害(慢性抗うつ病など)の軽減も目指す[2]。
- アロマトロジー(芳香物質学、芳香物質療法)
- 精油(芳香物質)を体内に取り込むことを主眼とする療法で、イギリス以外のヨーロッパで従来一般的なアロマテラピーを指す[2]。日本でフランス系、医療系アロマテラピーと呼ばれるものに重複する部分が大きい。内服、坐薬、膣内への利用などもあり、医師や有資格のハーバリストが行う内科的方法だが、イギリスやオーストラリア、アメリカでは、ハーバリスト、民間資格者、無資格者による施術が安全面・法律面で問題となっている[2]。3〜4.5mlもの精油を原液で皮膚に塗布するような激しい療法もある[2]。
このように、補完・代替医療としての「アロマセラピー」と、アロマトロジー的な意味合いを含めたヨーロッパ大陸型の従来の「アロマテラピー」は、かなり趣が異なる。補完・代替医療としての「アロマセラピー」では、「治療」より「癒し」に重きが置かれる[2]。
スピリチュアルな癒し
[編集]精油の医療への利用は、第一次世界大戦時にフランスのガットフォセなどにより再評価され、精油の薬効の科学的研究が行われた。それと同時に、精神に関わる形而上学的な領域にも取り入れられた。アロマテラピーを世界的に流行させるきっかけになったロバート・ティスランドは、中国思想や西洋占星術の影響を受けており、その著作にはニューエイジ的な神秘思想が見られる[36]。ヨーロッパの錬金術では、蒸留により植物から精髄(クィンタ・エッセンチア[※ 7]、第五元素、エーテル)として精油の抽出を目指しており、現在でも精油を植物の力や波動を宿す神聖な医薬品と見なす考え方がある[27]。アロマセラピストには、花の「活気」(バイブレーション、振動という言葉も好まれる)は、化学的な方法では殺されてしまうが、錬金術師が第五元素(エーテル)を抽出するために用いた水蒸気蒸留法で精油を抽出すれば保つことができると信じる人もある[37]。
ヴェルナーは、中世ヨーロッパの錬金術への憧れは、近代医学に対する不満とニューエイジの神秘思想からきていると指摘している[37]。ヨーロッパ伝統医学における占星術的な身体観(獣帯人間)や植物の解釈、アーユルヴェーダ(インド伝統医学)のチャクラや中国医学の五行といった理論、宝石療法や波動理論などを取り入れた、スピリチュアルな癒し(心霊治療、波動療法、エネルギー療法)としてのアロマテラピーもある[27][38]。精油を使って心身だけでなく魂、サトルボディ(微細身[※ 8]、エネルギー体、霊体)の健康を目指すスピリチュアルな施術者もいる[27]。ただし、スピリチュアルな解釈を重視し科学的研究を軽視または無視する施術者も存在するため、精油による中毒や副作用などの問題が起こる可能性もある[2]。
ドイツの神秘思想家ルドルフ・シュタイナーの世界観を背景とし、西洋医学に基礎を置いた代替・補完療法である人智医療(アントロポゾフィー医学、シュタイナー医学)・看護は、1900年代初頭にスイス・ドイツを中心に発展したが、このケア技術の一つに精油を用いた療法がある。リズミカルマッサージを前身とするリズミカルアインライブング(独語:Rhythmishe Einreibung)と呼ばれる療法は、「アロマオイルや軟膏を定型フォルムに添ってリズミカルにケアリングタッチで皮膚に塗擦するケア」で、シュタイナーと協働していた医師イタ・ヴェーグマンが創始した。その源流はスウェーデン式マッサージにあるとされているが、マッサージと異なり、筋肉を揉みほぐすのではなく主に軽擦法を用いてオイルや軟膏を皮膚に塗布しなじませることを主眼とする。加えてリズミカルな手技によって人間の自然治癒力の回復を促すケア技術であるといわれている。「四構成要素モデル」(人間を自然界の四つの基本存在の特質である物質(鉱物)・生命力(植物)・心(動物)に加えて精神を持つホリスティックな存在と考える)と、「三層構造モデル」(人間を「頭部:神経 - 感覚システム」「胸部:リズムシステム」「腹部:四肢 - 代謝システム」の三層の機能モデルで捉えて、健康とは「両極のバランス維持」であり、中間にあるリズムシステムが両極の調和を図ると考える)という人智医療の理論に基づいている。痛みの緩和や呼吸の改善、健康感上昇、信頼感・安心感の形成、集中力強化などの効果があるとされ、また「共に癒されるケア」「看護の質を耕すケア」「孤独を癒し愛を伝えるケア」としての可能性を持つケア技術でもあるという。[39]
精油
[編集]アロマテラピーで使われる精油は、花、茎、幹、根、樹脂、果皮などを水蒸気蒸留することで得られる揮発性の油である。油脂ではない。低温圧搾(柑橘類のみ)で抽出されたエッセンスや溶剤で抽出されたアブソリュートは、揮発しない成分を含み、厳密には精油ではないが、おおざっぱに分類すれば精油と呼ばれる[2]。主に食品業界で香料として利用され、香水や化粧品にも用いられる。ほとんどの種類の精油は食品添加物として認証を得ているため、動物実験で毒性が確認されている[2]。疎水性であり、ビタミンCなどの水溶性成分は含まれない。100-250種類程度の芳香化合物(芳香分子)からなるものが多いが、ローズウッド (クスノキ科)やクラリセージのように、数種類の芳香化合物で構成されるものもある[40][※ 9]。
抗菌、抗真菌、抗微生物作用などがみられる精油もある[2]。精油の薬理効果は、アルコールやエステルといった各成分の薬理効果が重複しており[40]、成分の相互作用について不明な点も多く[41]、その作用を特定することは容易ではない。原料植物の精油成分の含有量は、地域や生産年、抽出部位によって違いがあり、業者によって原料量・蒸留器具・蒸留時間も異なるため、同じ植物の精油でも、製品によって成分の含有量に違いが見られる。理学博士の荘司菊雄は、アロマテラピーに用いる精油には、「抽出植物名(学名)、抽出部位、産地、ロットごとの分析表」が不可欠であると述べている[40]。しかし、農家から精油の買い付けをするアロマセラピストの中村あづさアネルズは、商品として販売される精油は、ラベルの名称と中身、成分分析表が違うことがあり、明らかに香りがラベルと異なる場合もあると指摘している。そのため薬剤師・翻訳家の林真一郎は、成分分析表は重要なものだが、この有無だけでアロマテラピーに適しているか判断することはできないと述べている。なお、医療に使われるほど高品質な精油であるとして、「医療グレード」「セラピーグレード」と呼ばれる商品があるが、このような規格はなく、ただの造語にすぎない[42][43]。
精油の作用・研究
[編集]精油が心身に働きかける経路は、次の3つがあると言われる[5]。
- 気化したものを吸入し、嗅覚刺激として中枢神経系に働きかける経路(吸入した場合、肺から血液にも溶けこむ)
- 皮膚に精油を塗った場合に、皮膚を通過して血流に乗り体内に入る経路
- 経粘膜投与(経直腸、経膣投与、うがい液としての使用)、経口投与で、胃や腸などの粘膜から吸収されて血液に溶け込み、全身へ行きわたる経路
精油は数十から数百の揮発性化合物の混合物であり、ひとつひとつの成分がどのように人体へ影響するのかを追跡するのは容易ではなく、人体への影響の詳細は不明な部分が多い。同じ精油・同じ薬理成分でも、使用法の違い、精油が吸収される経路の違いによって薬理作用は異なり、人体に与える影響はかなり異なることが分かっている[21]。例えばサンダルウッドの精油は、吸引すると刺激作用が、マッサージに用いると鎮静作用が見られた[2]。内服を除いて、どの方法でも人体に吸収される精油はごく微量である[21]。
精油を吸入した場合、におい分子が嗅覚器で神経インパルスに変換されて脳に伝わり、心身に影響を与える[21]。嗅覚は感情に密接に結び付いた、基本的な感覚である。蒸散した精油の芳香成分は鼻で感知され、嗅覚刺激として視床下部から下垂体にかけた領域、いわゆる大脳辺縁系に到達する。大脳辺縁系は、脳の中でも原始的な部分であり、扁桃体と海馬が神経インパルスにより活性化するが、この2つは記憶、性欲、感情、想像力の中枢であることがわかっている[2]。(匂い情報の脳への伝達、脳への影響の詳細は解明されておらず、煩雑になるため省略する。)香りの吸入で、体内に変化が起こり、血圧の変化など複数の生理反応が誘発される可能性がある[2]。心理面への芳香の影響の研究は、1983年から嗅覚研究所(SSI)とエール大学の共同研究が行われた[2]。
アロマ・マッサージでは、精油はわずかに経皮吸収され、血液に溶け込むと言われる。ただし、生化学者のマリア・リサ・バルチンは、精油を植物油で希釈してマッサージを行った場合、ほとんどの精油成分は経皮吸収されずに、皮膚に残留する可能性が高いと述べている[2][44]。
アラビア・ヨーロッパでは、古くから精油が治療に用いられてきた。ヨーロッパで精油が効果を発揮するメカニズムの研究が進められているかというと、必ずしもそうではなく、かつての漢方薬同様、効果や適応は伝承や経験による部分が大きい[23]。用法や安全性に関する検証も、十分には行われていない[23]。
聖路加看護大学の鈴木彩加・大久保暢子は、医学中央雑誌におけるアロマテラピーに関する150の論文(1983年 - 2008年6月)の内、精油の種類が記載されていない又は詳細不明のものが20件あり、実験研究は6論文と少なくアロマテラピーの有用性を示すには十分といえないと指摘している[24]。アロマテラピーはランダム化比較試験の実施が極めて難しく(香りがすれば被験者にも分かってしまうため)、また主に医療の補助的手段として用いられるため、単体でははっきりした結果が得られないことも多い[1][2]。精油の偽装が広く行われているため、臨床研究で使用された精油が100%天然でない、または材料植物が表示と異なる可能性も否定できないなど[1][45]、評価が難しい面がある。不十分な研究や個人的な経験がエビデンスとして取り上げられることもあり[2][46]、質の高い臨床研究と、そのための研究デザインの作成、使用される精油の質・材料植物の品種の保証が必要とされている[1][24]。
医療では、看護師ががん患者や妊産婦に対して、睡眠促進、浮腫の軽減、筋肉の緊張の緩和などの目的で行っている。精油を用いたマッサージや足浴などが、浮腫や不眠等の症状緩和に有効なことは経験的に認められており、活用されているが、エビデンス確立には至っていない[24]。
アロマテラピーの書籍や民間資格でいわれる精油の効能は、ハーブや精油の民間療法の伝承がベースであるものも多く、広く知られた効能でも科学的根拠が存在しない「都市伝説」のようなものもある[47]。古いイギリスの本草書などにあるハーブ療法で、チンキ(水溶性・油溶性成分を含む)やティー(水溶性成分を含む)の形で使われた情報を引用している場合もあるが、精油には水溶性成分が含まれないため、ハーブの効能をそのまま利用することはできない[48]。また、生化学博士のマリア・リス・バルチンは、コモン・ラベンダー(Lavandula angustifolia)やテンジクアオイ属の通称ゼラニウム(Pelargonium graveolens)の精油[※ 10]は、別の植物の効能などが間違えて引用され、情報が混乱していると指摘している[2][49][50]。精油販売業者が無根拠な薬効を主張することもあり、世界中で精油の連鎖販売取引(マルチ商法)を行うヤングリヴィングとドテラは、医薬品として認証されていない自社精油を、エボラ出血熱などに治療効果があると主張して販売したとして、2014年にアメリカ合衆国の政府機関・アメリカ食品医薬品局(FDA)から警告を受けている[51][52][53][54]。
毒性・香害・中毒
[編集]精油は高濃度かつ複雑な化合物であり、使用には注意を要する。毒性については、自然由来であるためまったく副作用がないと言われており、または使用をやめればすぐに副作用の症状は治まると考えるアロマセラピストも存在するが誤りである[2]。
しかも低年齢層、特に乳幼児への精油の使用は危険で呼吸器疾患などのリスクがある事がわかっており、近くで使用するだけでも問題と言われている[2]。気道感染を起こした幼児がミント精油などに含まれるメントール(ハッカ脳)入り軟膏を治療に使用したところ、多くの症例で呼吸器に強い痛みが生じ、少数ではあるがチアノーゼも認められた[2]。
また精油香害[55]として感じる人も少なくなく、アレルギー等を引き起こす精油の感作[※ 11]作用が大きな問題となっており、以前は安全と考えられたティーツリー精油による接触性皮膚炎も報告され、日本ではラベンダー精油の陽性率が増加している[2]。アトピー性皮膚炎の患者では、精油を使用するマッサージで最初問題がなくても、時間を置いて再びマッサージを行うと、湿疹が悪化する例があったが、これは感作が起きたことが原因と考えられている[2]。アロマセラピストの皮膚炎も増加している[2]。低温圧搾法で得られた柑橘系精油に含まれるリモネンは、短期間で酸化し感作物質に変化し、また光毒性を持つフラノクマリンが含まれるため、皮膚への塗布はふつう行われない[2]。
精油の中毒例は、シネオールを含有するもので特に多い。ユーカリ精油で3.5mlという少量の内服で死亡例が複数報告されている[2]。
現在ヨーロッパでは、2002年欧州指令により、精油は使用条件と警告をラベルに記載するよう義務付けられている[2]。またナノテクノロジーの進化で精油のマイクロカプセル化の技術が確立し利用法が多様化し、様々なものに添加されるようになったことで、精油の毒性リスク、感作[※ 11]のリスクは増大している[56][57]。欧州連合(EU)では、欧州における新しい化学品規制REACH(REACH規則:Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals)が、2008年から運用されており、精油を含む香料も対象となっている[58][59][60]。ラベンダーなどの一部の精油が、アレルギーを引き起こす可能性があるなどの理由で規制対象となっており、将来的に「内服または吸入した場合、死亡する可能性がある。」という警告ラベルが義務付けられる可能性がある[61]。
精油と医薬品との相互作用も指摘されている。例えば、降圧剤にはグレープフルーツジュースを一緒に摂取することを禁止しているものがあるが、柑橘系精油にも含まれるフロクマリンの1種との相互作用のためである[62][63]。医薬品との相互作用の研究と、その危険性の周知が必要とされている[62][48]。
ペットの中毒事例
[編集]近年「アニマル・アロマセラピー」「アニマル・アロマ」などの呼び名で、ペットの治療やノミ取りに精油を使うことが流行し、それに伴いペットの中毒事例が報告されている。アメリカ獣医師会雑誌に収録された論文では、犬猫におけるティーツリー精油による中毒事故が443件(2002 - 2012年)報告されている(データはthe ASPCA Animal Poison Control Center databaseによる)[64]。中毒を起こした精油の量は0.1mL - 85mLであったが、最小量の0.1mLは、精油1滴を平均で0.05mLとしてもわずか2滴である。
動物は食性の違いによって、化学物質の代謝や分解能力に違いがあり、一般的に、草食動物に比べて肉食動物は代謝酵素が少なく、精油などの脂溶性物質の代謝能力は低いとされている。ペットとして飼われる動物では、肉食動物の猫やフェレットは、遺伝的に精油の代謝能力が特に低いことがわかっている[42][65]。「アニマル・アロマセラピー」は、草食動物である馬に対する精油の使い方が基本にあり、人間用の処方がそのまま犬・猫に利用されている場合も見うけられる[42]。
方法
[編集]精油が人体に影響を及ぼす方法は、精油を吸入した場合に、嗅覚刺激として脳に伝わり心身に影響を与えるものと、外用・内服することで血管に入り、全身を巡るものがある[21]。前者は精油の芳香による感覚療法、後者は精油の薬理作用を利用した薬物療法である。マッサージなどの手段に補助的に精油を用いるものもある[14][1]。
- 薬物療法的なもの[※ 12]
- 精油原液の塗布、内服
- 感覚療法的なもの[※ 13]
- 揮発した精油の吸入
- 精油のにおい分子を拡散させるディフューザーなどを用いた芳香浴
- 他の方法に補助的に精油を用いるもの
- 全身浴・部分浴といった入浴、精油を植物油で低濃度に希釈して行うアロマ・マッサージ[※ 14][※ 13]。マッサージなどの主となる手段に、精油の芳香による影響や皮膚への作用が加わり心身に影響する。
精油の内服は日本ではほとんど見られず、世界的にも少ない。日本では、医療にアロマテラピーを取り入れるフランスで内服が一般的に行われると思われているが[43]、薬剤師でアロマテラピー専門書の翻訳を行う林真一郎は、フランスでも内服用に精油を処方する医師は10人もいないのではないか、と指摘している[47]。またフランスなどの一部の病院で、精油を植物油で希釈したものを座薬、浣腸剤、膣に利用することもある[1]。これらの利用は危険が大きく、安全面・衛生面の懸念もあり、医師以外の施術が問題となっている[2]。
医療用途
[編集]システマティック・レビュー
[編集]システマティック・レビューは、医学的根拠を報告する質の高い研究が存在するかどうか、結果はどうかということを包括的に評価することである。
健康な大人のストレス緩和では、5つのランダム化比較試験 (RCT) があり、そのメタアナリシス(データ結合分析)では、アロマの吸入がストレス管理に影響を示しているが、研究規模が小さいため結論は強固ではない[6]。不安症状がある人々に対して、16のRCTが見つかり、有効であるため治療として利用するのに推奨できる[8]。うつ病に対して、12のRCTがあり、手法は香りの吸入、あるいはアロママッサージであり、証拠の質が低いものも含まれるが、概して抑うつ症状の緩和に有効である可能性が示されており、吸入よりマッサージの方が効果が高そうである[7]。12のRCTがあり、睡眠の質を改善するようである[9]。
2018年のシステマティックレビューは、月経困難症に有効であった[10]。2018年のシステマティックレビュー、閉経後の女性の性的欲求の低下に対して、ラベンダー、ネロリほかがこれを高めていた[11]。同じく有効とする2017年のレビューがある[66]。
疼痛の管理に対するアロマテラピーのメタアナリシスは、アロマテラピーが、術後疼痛と産婦人科における疼痛に最も効果的であり、疼痛の軽減に利用できるとした[12]。別のシステマティックレビューは、術後の疼痛に関して、9つのRCTがあり、5つが有効、残りは無効であり十分な証拠があるとは判断できないと結論した(これでは20人の試験と120人の試験が同等となってしまうため、メタアナリシスの方が合理的である)[67]。がんの疼痛は緩和しないようである[13]。2017年のシステマティックレビューは、熱傷(やけど)の付属症状に対するアロマテラピーの使用の4つのRCTがあり、痛みと不安を軽減する2つ、疼痛のみ軽減する1つなどだが、被験者が少なく結論には不十分とした[68]。術後の吐き気嘔吐に対して、全体的に偽薬と同じ程度であり、また証拠の質が限られておりこれは不確実な結論である(効果はなさそうで十分な証拠でもない)[69]。
2009年、高血圧に有効だという証拠はランダム化されていない研究であり、適切な設計を行った試験が求められる(つまり証拠不十分)[70]。
問題
[編集]毒性以外の問題について述べる。
精油の偽装とその危険
[編集]多数のアロマテラピーの専門書を翻訳した高山林太郎は、精油の流通量は生産量を大きく上回っており、天然の精油に、別の安価な精油や合成物質を加える「偽和」という偽装行為が広く行われていると指摘している[71][72][73]。精油の真偽の判定は、ガスクロマトグラフィーという手法で行われ、装置はガスクロマトグラフという。天然精油を正確に分析できるガスクロマトグラフを所有する会社や大学は、ごく少数である[71]。
アロマテラピーに偽和された精油が用いられた場合、純性の精油では見られない反応を引き起こしたり、感作[※ 11]性を高める恐れがあり、治療効果が期待できないだけでなく、100%天然の精油であっても、アレルギー反応等の症状は起こる可能性があり危険性が指摘されている[71]。
精油取引や精油の製造、成分分析に30年以上携わっていたTony Burfieldは、精油の粗悪品に関して生産者と販売者が一方的に悪者扱いされるが、高い品質を求めながら、市場価格を下回る精油を要求しているのは消費者自身である、と指摘している。現在の風潮では、誠実な製造業者・販売業者が生き残ることは不可能に近く、実際その多くが倒産している[74]。現在精油の業界は、巨大で強力な一握りの国際的企業に支配されている。こういった企業のバイヤーはしばしば、不可能なほど安く原料を手に入れようとし、生産者が存続できるだけの利益すら認めようとしないという[74]。
2013年には、精油を商材として国際的に連鎖販売取引(マルチ商法)を展開するアメリカの企業ヤングリヴィング(英語: Young Living)と、同業他社のドテラ(英語: doTerra)との間で訴訟合戦が起こり、その過程でオーガニック・100%天然とされたヤングリヴィングの精油の検査結果が偽装されており、両社で精油に合成物質が添加され偽和されていたことが明らかになった[75][76]。
現代医療との併用
[編集]近年、通常の療法と代替療法を併用すると逆の効果が現れるという報告が増加している[2]。医師が、患者がアロマテラピーを別に受けていることを知らない場合が多く、問題が起こる可能性がある[2]。
アロマセラピスト
[編集]アロマセラピストとはアロマテラピーを行う治療者と考えられるが、アロマテラピーを定義することと同じく、アロマセラピストを定義することは困難である[2]。英米や日本では公的な資格がないため、ごく短い教育しか受けていなかったり、十分な知識を持っていなくても自称することができる[2]。リラクセーション目的でアロマテラピーを行う非医療従事者も多数存在するが、その知識、技能には大幅な差がみられる。また、アロマテラピーの学校や講座も数多くあるが、値段が高い講座の教育水準が、必ずしも高いとは限らない[2]。生化学博士のマリア・リス・バルチンは、科学的、学術的研究に興味を持つアロマセラピストは非常に少なく、完全に否定するセラピストもいると指摘している[2]。ヴェルナーは、アロマセラピストの精油の説明には単純な間違いも多く、「多くのアロマセラピストは事実上、科学を理解していない」と指摘している[77]。ニューエイジとの関係からか、占星術や宝石療法、レイキなど、スピリチュアルな要素を組み合わせて行うセラピストも存在する[2]。アロマセラピストの中村あずさアネルズは、マッサージの上手なアロマセラピストは多いが、精油をよく知り顧客に合わせて選択・ブレンドできるアロマセラピストは数少ないと述べている[78]。なお、日本ではマッサージを行うにはあん摩マッサージ指圧師の免許が必要であるが、アロママッサージを行っているセラピストが必ずしもあん摩マッサージ指圧師の免許を保有しているわけではない。消費者庁によれば「リンパ・オイル・アロママッサージ」による健康被害が報告されている。[79]無資格マッサージ士問題も参照。
なお、フランスで「アロマテラピスト」を名乗ることができるのは医師のみであり、精油の知識を持つ医師を指す。そのため、日本や英米と異なり、医師免許を持たないアロマテラピストは存在しない。アロマテラピストの数は非常に少ない[80]。
非論理的・非科学的・神秘的な主張
[編集]アメリカの心理学者L・マカチョンは、アロマセラピストの効果に関する主張は「原因を混同し、あいまいで、疑わしいもので、科学的に根拠付けられていない」と完全否定している[19]。また、アロマセラピストの「お香は空気から消極的な精力を洗い流す」「安息香が悪霊を追い払う」などの主張を挙げ、その実体のなさを揶揄し、「心身のハーモニーやバランスの回復」に役立つといえば、どうとでも解釈できるので、無意味な発言であると述べている[19]。また、アロマセラピストは「と思われている」「と言われている」と頻繁に口にするが、実際はどうなのかと問いかけてる[19]。
精油原料の乱獲と自然破壊
[編集]歴史的にみて香料植物の多くは高額で取引され、王侯貴族などの富裕層に愛好されてきたが、そもそも香料植物の多くは稀少なものである[81]。その上、精油は植物を蒸留するなどして作られるため、原料として大量の香料植物を必要とする(バラの場合約5tの花から精油1kgが採取され、収率は0.02%。柑橘類は、果実に対して収率は0.2 - 0.5%程度である[82])。香料需要の拡大やアロマテラピーの普及で、大量の精油が求められることで、精油の原料となる香料植物の乱獲や、大規模栽培による自然破壊が問題となっている。特にローズウッド (クスノキ科)、白檀(サンダルウッド)、乳香(フランキンセンス)[83]など、樹木(香木)から採取する精油は、乱獲や森林伐採の影響を大きく受ける。樹木の成長には時間がかかり、植林などの対応がとられても結果が出るのはかなり先のことになるためである[84]。白檀のように成長が遅い品種では、精油を採取するまで最低30年かかり、採取対象としては60 - 80年を経たものが望ましいとされる[85]。インド政府によって白檀の伐採は管理されており、樹齢30年以下の木を伐採することは禁止されている[78]。ローズウッドは乱獲により絶滅に瀕しており、ワシントン条約のレッドリストに登録されている[86][87][88]。乳香を産出する樹は今後50年で90%減少すると予想されており、持続は不可能と考えられている[83]。
また、精油原料が大規模栽培されることで、自然が破壊される問題もある、例えば、ティーツリーは抗菌力に定評があり、過去何度も流行して急速に生産が拡大し、ブームの度合いによって値段が乱高下した。オーストラリアに自生するティーツリーが乱獲されて森が奥地まで切り開かれた。そして、知識のあるなしにかかわらず、大勢の人間がティーツリーの栽培に乗り出してプランテーションが作られ、自然が大規模に破壊された[89]。現在ではプランテーションの管理者も育ち、蒸留や収穫の技術も進化し、持続可能な栽培に取り組む農家もあるが、自然破壊の問題が解決されたわけではない。日本でもアロマテラピーは普及し、精油の消費量は急速に増えているが、環境面の問題はあまり認識されていない[78]。日本アロマ環境協会が表示基準適合精油認定制度を行っているが、成分分析表の提出や環境面への配慮は認定条件に含まれていない[90]。適正価格とは言えないような安価な精油も流通しており、偽和によって水増しされた精油が100パーセント天然と偽って販売されるケースも懸念されている[91][92][93]。
火災の危険性
[編集]アロマテラピーを業務で行っていたエステティックサロン店で衣類やタオルが自然発火を起こす事故が続発し、問題となった[94]。これは精油中に含まれる不飽和脂肪酸などが重合を起こしたり、酸化される際に生じる熱が繊維の断熱性によって蓄積したり、乾燥機にかけて反応が加速し発火点に至ることが原因である。
また京都市消防局は、アロマポット[※ 15]というタイプを使うアロマテラピーで、条件によっては、安定燃焼していたロウソクの炎が異常燃焼を起こし、近くの可燃物に着火し、火災が起こる危険性があるとして注意を促している[95][96]。
アロママッサージ店の摘発
[編集]アロママッサージの看板を掲げる店舗で、違法な性的サービスを提供したことによる風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)違反で逮捕者が出ている[97]。近年日本では、中国マッサージ、アーユルヴェーダマッサージ、アロママッサージなどのマッサージに性的なイメージが広まっており、追加料金で違法な性的サービスを提供する店舗が増えている[98][99]。リラクゼーション目的のアロママッサージ店で、男性客が性的サービスを要求することがあるなど、トラブルも起こっている[98]。
歴史
[編集]人工香料が作られるまで、香りは全て植物または動物から採られた。古代では、樹脂などをそのままか、またはそれらを混ぜて使った。その後、芳香成分(精油)が動物性・植物性の油に溶けることに気づき、香りを映した香油や香膏(軟膏)が作られ、水にも少し溶けることから、香り水も利用された[101]。「香水」と訳されるperfumeは、ラテン語のper‐fumum(煙を通して、煙によって)に由来する言葉で、昔は固体・液体を総称しperfumeと呼んだ。この節では、芳香成分をアルコールに溶かしたperfumeを「香水」とし、他は「香料」「香油」などとした[101]。
概要
[編集]香料植物の利用は古代にさかのぼり、焚香料(焼香、インセンス)としての利用が最も古いと考えられている[101]。香りの心身への影響も知られ、精油を用いた治療も古くからおこなわれた。ギリシャ・ローマの医学が伝わったアラビア圏では医学・錬金術が発達し、精油や芳香蒸留水(ハイドロゾル)が治療に使われた。12世紀にアラビアからヨーロッパに医学・錬金術が伝わり、蒸留技術が普及すると、精油が広く医療に利用され、アルコールの蒸留技術が確立し蒸留酒が広まると香料植物・ハーブを使ったリキュール(薬用酒)が流行し、のちに香水として利用された。20世紀に入ってから、精油を用いた治療がアロマテラピーと名づけられた。また日本には、精油を蒸留する蒸留器「らんびき」が16世紀半ば江戸時代には伝来しており、蘭方医学で精油が治療に使われていた[102][103]。アロマテラピーという言葉が日本へ紹介されたのは1980年代で、「イギリスからの自然派美容マッサージ」という形で導入された[21]。
古代
[編集]香料植物の利用は古代にさかのぼり、香りの心身への影響も知られ、精油を用いた治療も古くからおこなわれた。人類は洋の東西を問わず、植物の芳香を祭祀・儀礼・治療・美容に用いてきた。香料が初めて記録に登場するのは紀元前3000年ごろの古代メソポタミアで、香料が神に捧げられていた。また、花やスパイスの香りを油に移すために使用したと考えられる土器も発見されている。
エジプトで乳香(フランキンセンス)などの香料植物が祭祀、美容、医療に大いに利用され、没薬(ミルラ)はミイラ作り用いられたことで知られる。上流階級の間では、身体に香をたいたり、香膏が利用され、ツタンカーメン王の墓からは、アラバスタ―製の香油壺が発見されている[82]。
エジプトの香料文化の影響を受けたギリシャでは、香料の調合・製造の技術が発達した。ローマでは香料文化はさらには繁栄し、香油、香膏(練香)、粉末や固形の香料が利用された[82]。このころの香料の製法や医療における利用法は大プリニウス(22 / 23年 - 79年)『博物誌』やディオスコリデス(40年頃 - 90年)『薬物誌』に残された。『薬物誌』は、アラビア・ヨーロッパで1500年以上薬学の最も権威あるテキストとして利用された。
古代インドでも、香料は宗教儀式で重要な役割を果たし、ジャスミンはバラモン教の経典に神聖な花として記されている[82]。古代中国では、香料植物は香薬・香辛料として利用され、『神農本草経』にも多くの芳香性生薬が記録されている。仏教が伝来してからは、麝香・沈香などが薫香・線香などの焚香料や塗香としても使われ、6世紀になると仏教とともに日本に香文化が伝えられた[82]。
精油を用いた治療も古くからおこなわれ、紀元前3000年頃にメソポタミア地域で使われた考古学的な証拠があり、蒸留用の抽出瓶は、薬剤師や香料製造者が利用したと考えられている[100]。メソポタミアの医書によると、テレピンノキからとったテレピン油が傷薬として使われていた[104]。
このように、香料植物や精油は古代から利用され、世界の各地域で独自に発展し、近代医学が発達する以前の人間の健康を助けた。今でもそれらは、伝統医学や民間療法として受け継がれている。
アラビア錬金術と水蒸気蒸留法
[編集]ヒポクラテスに代表される古代ギリシャの医学は、ローマ時代にガレノスによってまとめられた。蒸留技術は、1世紀のアレキサンドリアの錬金術師たちによって改良され[100]、古代ローマでは動物性油脂に精油成分を溶かし込んだ軟膏なども用いられた。
イスラーム圏ではギリシャ・ローマの医学をベースにユナニ医学が発達し、錬金術の発展で化学が進歩した。中世イスラーム世界の錬金術と化学では、抽出・蒸留・発酵などの手法が薬物製造に結び付けられ、薬学はひとつの科学としての基礎を持った[104]。陶器、ガラスの製造も高度な技術が発展し、蒸留など薬物製造に用いる器具が作られた。イスラーム圏の錬金術師・薬剤師たちによって、香気成分抽出法のひとつである水蒸気蒸留法が確立されたといわれ、蒸留装置アレンビックの考案・改良者として哲学者・錬金術師ジャービル・イブン=ハイヤーン(721年? - 815年?)の名が知られるが[103]、この装置は「らんびき」の名で日本まで伝わっている[105]。(アロマテラピーや香水の書籍には、イブン・スィーナー(980年頃-1037年頃、ラテン語名アヴィセンナ)が水蒸気蒸留法を確立したとするものもあるが、水蒸気蒸留によるバラ水(芳香蒸留水)の生産は彼が生きた時代以前から一大産業であった。蒸留の歴史において、水蒸気蒸留の発明者または装置の改良者としてイブン・スィーナーの名前が挙がることはない[106][107][108]。)
アラビア圏では、芳香蒸留水(ハイドロゾル)や精油が製造され[106]、治療に用いられた。医学の大家であるイブン・スィーナーの『医学典範』(al-Qānūn fī al-Ṭibb)には、バラ精油を用いた治療法が記されており[109]、香油や香膏を使ったマッサージについても説明されている[110]。
水蒸気蒸留法やその器具についての最も古い記述は、医師・薬剤師・植物学者・科学者であったイブン・アルバイタール(1188年 - 1248年)の『薬と栄養全書』(Kitab al-Jami fi al-Adwiya al-Mufrada)である。製造された精油は香料・香油として用いられたり、高価な薬に混ぜて使われた。またこの本には、バラ水やオレンジ水といった芳香蒸留水について、詳細な化学情報が説明されている[111]。
ヨーロッパにおける精油療法の発展
[編集]中世ヨーロッパでは、香料植物の栽培と利用はもっぱら修道院で行われ、アラビアから錬金術が伝来するまで、植物成分を水や植物油やワインに浸出して用いた。当時の西洋文化圏の最先端であるユナニ医学やアラビア錬金術は、十字軍によるアラビア侵略を契機に徐々にイタリア、スペインなどヨーロッパに伝わっていった。(キリスト教における香油の利用については「病者の塗油」(終油の秘蹟)、儀式での香りの利用は「振り香炉」などの記事を参照のこと。)
アラビアの錬金術は、12世紀にはヨーロッパに伝わった。蒸留術はヨーロッパでさらに改良されたようであり、蒸留液が効果的に冷却できるようになった[100]。13世紀になると、貴金属の製造を目的とするものと、パラケルスス(1493年|1494年 - 1541年)に代表される医学的な錬金術に分かれた[15]。医学的な錬金術では、蒸留などの化学操作によって、自然物に含まれる第五精髄(クインタ・エッセンティア(quinta essentia)[※ 7]、第五元素、エーテル)の抽出が目指され[15]、パラケルススは医化学の祖と呼ばれる[112]。
こうして蒸留技術は医療面で広く求められるようになり、ルネサンス時代には多くの蒸留書が書かれた。ドイツの外科医ヒエロニムス・ブランシュヴァイク(1450年 - 1512年)[113]『蒸留術の書』(または『蒸留小書』[104]、Liber de arte distillandi simplicia et composita、1500年)がよく知られている。この本では、蒸留法や器具、蒸留物の保存法、原料となる植物や蒸留水の効能について説明された。第2版には、精油療法の理論的な背景として、マルシリオ・フィチーノ(1433年 - 1499年)が健康と長命について語った『生について』(De Vita、1489年)ドイツ語訳が収録された[15]。この本は、聖職者や一部の貴族だけが修得したラテン語ではなく、一般の読み書きに使われたドイツ語で書かれており、外科医(床屋外科医)や薬剤師、薬種商(薬の材料を扱う商人)など知識層以外の人々にも広く読まれた。(外科医や薬剤師は徒弟に入って修行する一種の職人であり、商人である薬種商と共に知識階級ではなかった。)17世紀初頭まで50版以上出版された[15]。
精油は病気の予防や治療に広く使われ、14世紀に繰り返し流行したペストの治療にも用いられた。(ペストは当時のヨーロッパ人口の3分の1から3分の2を死亡させた。)ルネサンス期フランスの医師・占星術師であったノストラダムス(1503年 - 1566年)は、ペスト患者の舌下にバラ精油を含む丸薬を置いて治療を行ったと記録されている[110]。
蒸留技術の一般化で精油の生産量が増大し、14世紀頃にはヨーロッパ全域でハーブ栽培が一般化した。これにより、中流家庭にも簡単な蒸留器が導入され、自家製の芳香蒸留水などが作られるようになった[114]。15世紀にはいると、イタリアで様々な薬用リキュールがつくられるようになり、1480年には、医学の町として知られるイタリアの都市サレルノで、精油成分を含むリキュールが薬として生産された[115]。ハーブ製品や精油、リキュールが生産され、各地に運ばれ販売された。
幼年教育の祖フリードリヒ・フレーベルの故郷として知られるドイツ・テューリンゲン地方の森にあるオーベルヴァイスバッハはハーブ薬、精油・香膏などの香油(ドイツ語:Olitaten、英語:perfumed oils)、チンキ剤、石けんなどのハーブ製品の産地として何世紀にもわたって知られていた[116]。原料となる植物を採取する森のエリアは各家庭に受け継がれ、ハーブ薬を販売するルートも父から息子に受け継がれた。彼らは精油などのハーブ製品をヨーロッパ中に売り歩き、Buckelapotheker (英語:Rucksack Pharmacists、リュックサックの薬屋)と呼ばれた[117]。
ペストの薬としても重宝されたリキュールなど良い香りのするアルコール水は、のちに香水として利用されるようになった。ラベンダー水やハンガリー水(ローズマリー水[※ 16])が香水の原型といわれる。中世西ヨーロッパの医学では、病気の原因は瘴気(ミアスマ、悪い空気)であると考えられた。そのため、人々はペストなどの病気を防ぐために、ハーブやスパイスの成分を溶かし込んだ香水を付け、スパイスを焚いて街を消毒し、ポマンダー(香り玉)や香りの強い花束を持ち歩いた。強い匂いが瘴気を防ぐと考えられたため、これらを入手できない貧しい人々は、臭い靴下やタールを塗ったロープなどで代用した[118]。ルネサンス期(14世紀)の蒸留技術の発達で、イタリアでは香水の製造技術は急速に進歩し、地中海沿岸地域のイタリア・フランス南部では、王侯貴族や富裕層の間で香水が流行した[119]。18世紀の終わりには、フランスのグラースが香水の生産地として栄えた。リキュールなど良い香りのするアルコール水(香水)は、外用、内服用として19世紀まで治療に使われていた[120]。1810年にナポレオン条例によってフランス国内で販売される香水の成分を明記することが義務付けられると、製造業者の大半が成分を明らかにすることを嫌ったため、医薬用を除いて国内市場から締め出され、香りを楽しむ香水と衛生の領域に分かれていった[120]。
医化学の発展と精油療法の衰退
[編集]19世紀にはいると合成香料が誕生し、徐々に工業生産されるようになった。1876年にウィリアム・パーキンがクマリンの合成に成功し、1882年にフランスのウビガン (Houbigant) 社がクマリンを使って香水「フジェール・ロワイヤル 」(Fougere Royale)を発表した。この香水は高く評価され、人工香料による香水の製造が本格的に始まった[121]。オットー・ヴァラッハ(1847年 - 1931年。ノーベル化学賞受賞)、アウグスト・ケクレ (1829年 - 1896年)、レオポルト・ルジチカ(1887年 - 1976年、ノーベル化学賞受賞)らの研究で、多くの人工香料を安価に製造できるようになり、高級品であった香水は一般に普及した。
1804年には、ドイツの薬剤師フリードリヒ・ゼルチュルナー(1783年 - 1841年)によって、初めて阿片から有効成分モルヒネが分離、抽出された。これによって薬用植物の有効成分が化学物質であることがわかり、以降植物から薬効成分だけを抽出する研究が進み、薬剤として用いられるようになった。
こうした化学・近代医学の発展で、天然香料のみを使った自然香水や、精油を用いるヨーロッパの伝統医学(医療錬金術、錬金術的医学)は下火になっていった。
「アロマテラピー」と精油療法の再評価
[編集]20世紀初頭、精油を医療に利用し、その薬理作用を科学的に解明しようという試みが始まった。1901年には、イギリスの病院で精油が治療に使われた[16]。イタリアでも、GattiやCajola、Paolo Rovestiなどの医師が精油の抗菌力の研究を行い、フランスでも精油の効能が化学的に研究された[16]。
フランス
[編集]南フランスのプロヴァンス地方の調香師・香料の研究者であったルネ=モーリス・ガットフォセ(1881年-1950年)は、精油を使った治療に興味を持ち、友人医師らと共に精油の薬理効果の研究を始めた[※ 17]。ガットフォセは精油を使った医療を「アロマテラピー」と命名し、自身の研究や友人医師の報告をまとめ、「アロマテラピー」という造語をタイトルとし、Aromatherapie - les huiles essentielles hormones vegetales (アロマテラピー、芳香療法。1937年)を刊行した[17][122][123][124][125][126][127]。ガットフォセが用いた精油は、調香師だったためテルペンレス加工がされた精油であり[122]、合成香料の使用にも肯定的だった[2]。フランスではモンシェール医学博士や薬剤師セブランジュが精油を活用し、アロマテラピーの発展に貢献した。アロマテラピーは数年の間医師たちに注目され、第一次世界大戦では戦場でティーツリー油やラベンダー油が利用されたが、抗生物質の一般化などで忘れられてしまった[71]。
フランスの医学博士ジャン・バルネ (1920年-1995年)は、第二次世界大戦とインドシナ戦争に従軍した際に、負傷者に精油を使った医療を実践して功績をあげ、軍籍をはなれた後も民間の病院でアロマテラピーを行った[71]。1964年に『ジャン・バルネ博士の植物=芳香療法』(原題L'Aromatherapie ou Aromatherapie, Traitement des maladies par les essences des plantes、多くの版が存在する)を著し、アロマテラピーを再び有名にした。
現在フランスでは、「アロマテラピスト」を名乗ることができるのは医師のみであり、患者が希望すれば精油を処方する医師も一部存在する[128][80]。精油は保険対象外であるため、アロマテラピーは病院ではほとんど行われていない。精油は薬局で処方箋なしで購入することができ、伝統的な家庭薬として利用されている[128]。フランスのアロマテラピーでは、芳香物質の薬理効果が重視され、香りはほとんど度外視される[129]。香水の本場であるためか、精油がリラックスや香りを楽しむ目的で使われることも少なく、精油を使ったアロママッサージもほとんど行われない[32]。香りを利用した療法としては、精油の香り(芳香)によって精神疾患や神経系疾患を治療するための療法があり、オルファクトテラピー(嗅覚療法)と呼ばれている[32][33]。
また、香りの記号学的な機能は、イギリスでは活用されているが、フランスのアロマテラピーには見られない[130]。
イギリス
[編集]外科医助手で刺鍼術の専門医と結婚したマルグリット・モーリー(本名マルガレーテ・ケーニヒ、オーストリア生まれ、1895年 - 1968年[4])は、フランスのシャバーヌ博士の"Les Grandes Possibilites par les Matieres Odoriferantes " (芳香物質の大きな可能性、1835年)やルネ=モーリス・ガットフォセの『芳香療法』(1937年)といった書籍に影響を受け[131]、アロマテラピーを主に美容方面に活用できる技術、若返り療法[132]として研究した。アロマテラピーを、美容や食事療法を含む健康法として発展させ、インド伝統医学のアーユルヴェーダ、中国の最古の医学書の一つ『黄帝内経』、それらの影響を受けているチベット医学(19世紀にはロシア経由で知られるようになっていた)も取り入れた[132]。シャウマン・ヴェルナーは、「神秘的なアジアに対するアロマセラピストの憧れも、ヒッピーに代表される1960年代の脱社会主義の名残であろう。」と指摘している[132]。モーリーのアロマテラピー・マッサージは、精油を植物油で希釈して行うオイル・マッサージで、バレエ・リュスなどの芸術運動の影響を受け、感覚を通じた陶酔感・充足感を重視した[71]。パリ・スイス・イギリスにクリニックを開いて美容法として顧客にアロマテラピーを施術し、生徒を育成した[133]。美容や健康、アロマテラピーについて『青春という資本[132]』(原題Le Capital "Jeunesse"、1961年。邦題:生命と若さの秘密―マルグリット・モーリーのアロマテラピー)にまとめ、これは後に英訳された評判となった。モーリーの生徒たちは、イギリスなど各地で活躍した。
アロマテラピーは、1960年代に始まる欧米のニューエイジ運動の中で、アーユルヴェーダや東洋医学と共に注目された[134]。ヒッピーだったロバート・ティスランドは、『アロマテラピー―〈芳香療法〉の理論と実際』(原題The Art of Aromatherapy、1977年)で、「芳香療法の基本原理」は、「神秘的な生命力、陰・陽、有機食」で、その概念を説明するモットー「自然の法則は健康の法則である。この法則に則して生きるものは病むことが決してない。この法則に従うものは、体のあらゆる部分の平衡を保ち、それにより真の調和を確保する。調和は健康であり、不調和は病気である。」は、アメリカ人のリバイ・ドーリングがイエス・キリストの人生の知られていない17年間をアカシック・レコードを霊視して手記として記したという『宝瓶宮福音書』(アクエリアン・ゴスペル)から取られている[135]。ティスランドは精油の紹介の際、学名、科学的な医学・製薬学のデータと共に、陰・陽と支配星を挙げている[135]。神秘思想を持ったヨーロッパの伝統的な本草学や製薬学からも、多く引用が行われている。この本は、英語ではモーリーの著作の英訳を除けば、初のアロマテラピーの著書で、世界的なアロマテラピーブームの嚆矢となった[136]。ティスランドは1987年にアロマセラピスト養成学校を設立している[136]。1990年代には多くの国でアロマセラピスが登場し、一般向けの入門書が出版されるようになった[136]。ヴェルナーは、アロマセラピストの多くは女性で、アロマテラピー関係の本は、リラクセーション、美容、インテリアが主で、セラピスト自身の宣伝も大きな目的のようであると述べている[136]。
ドイツ
[編集]ドイツでは自然療法がさかんで、ハイルプラクティカー(自然療法士)という国家資格が存在する[137]。アロマテラピーは自然療法の一環として行われ、方法は精油の吸入が中心である[71]。
中近東・西アジア
[編集]中近東・西アジアは、アロマテラピー発祥の地の一つであると言える。ユナニ医学が受け継がれる地域では、現在でも精油を使った治療が盛んに実践されている[110]。
日本
[編集]- 江戸から昭和中期
- ヨーロッパでは精油を使った治療が行われていたため、日本に西洋医学が伝わった際に、解剖学などと共に精油を使った治療法が伝来した。江戸幕府が東インド会社に、ガラス製蒸留装置の輸入や蒸留技術者の派遣を依頼した記録が残っており、蒸留小屋が設置され(場所はおそらく出島と推測されている)、日本人に高度な蒸留技術が伝承された[20]。精油や芳香蒸留水が蘭方(西洋医学)で盛んに用いられ、ハーブや香辛料の情報、精油の効能や利用法が翻訳されて伝えられた[138]。明治時代には、北海道北見のニホンハッカや富良野のラベンダー、楠から採れる樟脳油など、香料植物を栽培し精油を輸出していたが、合成香料や輸入自由化による海外の廉価品の影響などで、日本の精油生産は廃れてしまった[20]。
- 1970年代から阪神大震災
- 村岡花子が翻訳した『赤毛のアン』などの児童文学を通して、欧米文化に魅了された熊井明子が、1970年代に日本にポプリを紹介し、徐々に雑誌などに取り上げられるようになった[139]。1980年代初頭、重永忠(現「生活の木」代表取締役)が、毎回ポプリ作りのシーンがある少女マンガを企画し、原作:佐和みずえ、作画:佐藤まり子『あこがれ♥二重唱』が「なかよし」に連載され(1980年10月号から1981年3月号)[140][141]、小学生やその親たちの間でポプリが流行した。また、国鉄のカレンダーやドラマ『北の国から』で富良野のラベンダー畑が紹介され話題になり[139]、これらをきっかけに、ハーブやポプリが日本で広く知られるようになった。アロマテラピーという言葉が紹介されたのは1980年代で、「イギリスからの自然派美容マッサージ」という形で導入された[21]。これに伴い、イギリスのロバート・ティスランド(『アロマテラピー〈芳香療法の理論と実際〉』フレグランスジャーナル社、1985年)やフランスのジャン・バルネ(『ジャン・バルネ博士の植物‐芳香療法』フレグランスジャーナル社、1988年)などの専門書が、高山林太郎の翻訳で出版された[142][143]。1980年代にはリラクセーションビジネスが注目を集め、80年代半ばになると、海外でアロママッサージ(精油を植物油で希釈したマッサージ油を使用した全身マッサージ)などを学んだ者たちが国内で実践を始め[144][145]、アロママッサージを施す女性向けサロンなどが登場した[146]。また、日本にアロマテラピーが広く知られるようになったきっかけとして、1995年の阪神・淡路大震災後にボランティアとしてハンドマッサージなどを行ったアロマテラピー関係者がいたことや、震災後に「癒し」が注目され、アロマテラピーと癒しが結び付けられたことがあるとも言われている[147][148]。
- 現在の潮流と「メディカル・アロマセラピー」
- 現在の日本のアロマテラピーには、病院で補完・代替医療として行われるもの(医療系、フランス系[※ 6])と、エステサロンやマッサージ店で行われるもの(美容系、イギリス系)がある。精油は雑品として販売され簡単に購入できることから、家庭や職場でも気軽に用いられており、専門家と一般市民の二極化の傾向にある[24]。日本には最初、イギリスで行われていた美容マッサージが導入され、アロマテラピーの医学的な発展は遅れた[149]。美容系のアロマテラピーは、アロマセラピストやエステティシャンによって施術され、アロママッサージが中心である。施術者のほとんどは医療資格を持たないため、その行為は医療とは区別され、心身のリラックスやスキンケアを目的とする。また、アロマテラピーが広く知られるようになり、精油の入手が容易になったため、個人での実践も増えている。近年では国内でも精油への科学的アプローチも以前より進み、補完・代替医療としてアロマテラピーに関心を寄せる医療関係者も以前より増えている[1]。1997年には、臨床医を中心に組織された医療従事者の全国的な研究団体・日本アロマセラピー学会(英:Japanese Society of Aromatherapy、略称:JSA)が設立された[150]。医学中央雑誌の看護分野の原著論文では、1996年までアロマテラピーに関するは論文はなかったが、1997年から論文数が増加し始めた[24]。しかし、漢方などのメジャーな補完・代替医療に比べ研究者や臨床研究は少ない。また日本では 保険診療と保険外診療の併用(混合診療)は原則として禁止されているため、元々保険適用外である出産を含む産婦人科などを除き、医療の現場ではほとんど行われていない[23]。病室の環境改善や作業療法として、また介護の現場や終末医療で利用されることがある[23]。
- 民間での人気と資格ブーム
- 日本では、精油の香りを楽しんだり、美容法、リラクセーション法としてのアロマテラピーは、民間で広く普及しており、女性を中心に高い人気がある。アロマテラピーの公的な資格は存在しないが、民間団体や個人等が自由に設定でき、独自の審査基準を設けて任意で与える民間資格[※ 18]が多数存在する。趣味やエステ、マッサージの仕事のために、民間の資格を取得する人が増えている。資格を与える最大手の団体・日本アロマ環境協会(理事:宇田川僚一、精油販売業者・生活の木専務取締役)は、5万8千人の個人会員を持ち[151]、資格試験の実施だけで年に4億円近い収益を上げている(平成25年度)[152]。多くのアロマテラピーの民間資格が作られ、資格の授与やセミナーの開催などの資格商法が行われている。教室も増えており、内容は「アロママッサージ」、「アロマを使った手作りコスメ」、「アロマセラピスト育成」など細分化している[153]。科学的に証明されていない効能や、歴史的根拠のない言い伝えを事実として教えるなど、問題視される民間資格、講座もある[154][155][156]。
- 日本薬局方
- 日本において精油は、薬効・効果が認められたウイキョウ油、オレンジ油、ケイヒ油、チョウジ油、テレピン油、ハッカ油、ユーカリ油が日本薬局方に収載されており、医薬品として扱われる[157]。これらの精油を含むものは医薬品とみなされるが、含有する濃度が低い場合、化粧品への配合が許されるときがある[158]。日本薬局方に収載されたもの以外で、化粧品の範疇にも入らず医薬品的効能も謳わない精油は、高濃度の芳香成分・薬効成分を含むにもかかわらず雑品扱いであり、販売・輸入に規制は存在しない[159][160]。ただ輸入に関しては、近年危険ドラッグをアロマ商品に偽装した取引の摘発があり、監視が厳しくなっている[160]。
- 精油に対するアレルギー
- 日本ではアロマブームや精油のマイクロカプセル化技術の確立で、精油が様々な面で多用されており、その結果精油に対するアレルギーが増加している[161]。名古屋大学医学部環境皮膚科学講座の杉浦真理子らは、12年間に1000人以上の患者を対象に、化粧品の接触性皮膚炎に関する調査を行った。このパッチテストの陽性率第1位はラベンダー油で、6.57%と突出して多かった[162][163]。
アロマテラピーに使われる精油
[編集]精油名(五十音順) | 材料植物の通称 | 学名 | 科 | 抽出部位 | 一般的な抽出方法 |
---|---|---|---|---|---|
ウイキョウ油 | スターアニス(和名・トウシキミ、ダイウイキョウ、八角)[164] | Illicium verum | シキミ科 | 果実[165] | 水蒸気蒸留法[166] |
フェンネル(和名・ウイキョウ、ショウウイキョウ)[164] | Foeniculum vulgare Mill. | セリ科 | 種子 | ||
オレンジ油 | オレンジ(和名:アマダイダイ)、ウンシュウミカンなどミカン属の植物[167] | Citrus sinensis、Citrus unshiu | ミカン科 | 果皮 | 圧搾法 |
クラリセージ油 | クラリセージ(和名:オニサルビア) | Salvia sclarea L.[40] | シソ科 | 花付き全草 | 水蒸気蒸留法 |
ケイヒ油 | ケイ(生薬の桂皮を採る木) | Cinnamomum cassia Blume[168] | クスノキ科 | 葉付き小枝 | 水蒸気蒸留法 |
シナモン(和名・セイロンニッケイ) | Cinnamomum zeylanicum Nees(Lauraceae)[168] | 樹皮 | |||
タイム油 | タイム(和名・タチジャコウソウ[169] ) | Thymus vulgaris L.[※ 19] | シソ科 | 花付き全草 | 水蒸気蒸留法 |
チョウジ油 | クローブ(和名・チョウジ) | Eugenia caryophyllata Thunb[170][40] | フトモモ科 | 花蕾 | 水蒸気蒸留法 |
ティーツリー油 | ティーツリー、ティートリー | Melaleuca alternifolia Cheel[※ 19][40] | フトモモ科 | 葉付き小枝 | 水蒸気蒸留法 |
ペパーミント油 | ペパーミント(和名・セイヨウハッカ) | Mentha piperita L.[40] | シソ科 | 花穂付き全草 | 水蒸気蒸留法 |
マジョラム油 | マジョラム(和名・マヨラナ) | Origanum majorana L.[40] | シソ科 | 花穂付き全草 | 水蒸気蒸留法 |
ユーカリ油 | ユーカリプタス(和名・ユーカリ) | Eucalyptus globulus, Labill.、Eucalyptus radiata Sieber[40] | フトモモ科 | 葉 | 水蒸気蒸留法 |
ラベンダー油 | コモン・ラベンダーなどラヴァンデュラ属の植物 | Lavandula angustifolia[40] | シソ科 | 先端部分および花 | 水蒸気蒸留法 |
レモン油 | レモン | Citrus Limonum Risso[40] | ミカン科 | 果皮 | 圧搾法 |
バラ油 | ダマスク・ローズ、 ケンティフォリア・ローズなどバラ属の植物 | Rosa × damascena、Rosa × centifolia | バラ科 | 花 | 水蒸気蒸留法、溶剤抽出法 |
ローズマリー油 | ローズマリー(和名・マンネンロウ) | Rosmarinus officinalis L.[※ 19][40] | シソ科 | 花付き全草 | 水蒸気蒸留法 |
他様々な精油が用いられる。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ フランス語発音: [aʁɔmateʁapi] アロマテラピ
- ^ a b 英語発音: [əˌroʊməˈθerəpi] アロウマセラピ
- ^ 「アロマ」の語源はギリシャ語の「アローマ」で、芳香植物を意味する。
- ^ フランスの「アロマテラピー」とイギリス・アメリカの「アロマセラピー」は本来意味が異なる。日本では同じ意味のことばとして使われることが多く、日本アロマ環境協会や日本アロマセラピー学会などでは、意味の差があるとはしていないが、人によっては使い分ける例もあるようである。本ページでは便宜的に「アロマテラピー」で統一するが、「メディカル」などの英語と組み合わさる場合は「アロマセラピー」と表記している。
- ^ 「アロマ」は曖昧な表現であるため香料関係者の間では好まれず、「パーヒューム」(鼻で感じる香り)、「フレーバー」(舌で感じる香り)などの用語が使われる。
- ^ a b 精油の医療への利用は各国で研究が行われており、病院で行われるアロマテラピーは、必ずしもフランス系というわけではない。
- ^ a b クィンタ・エッセンチアは不老不死の秘薬エリクシルと同一視された。
- ^ インド哲学やアーユルヴェーダの用語で、物体としての身体(粗大身)に対して、霊魂が宿る非物質的身体を指す。このふたつの身体の連結点がチャクラであると考えられた。
- ^ 精油は有機化合物と言われることもあるが、これは昔の化学用語で、現在では有機化合物・無機化合物という分類に意味はない。学問の区分名として使われる。
- ^ フウロソウ属のGeranium macrorrhizum の精油もあるが、日本でゼラニウム精油と呼ばれるものの多くはPelargonium graveolens の精油である。
- ^ a b c ある抗原に対し、生体をアレルギー反応をおこしうる状態にすること。例えば、ある精油に感作すると、以降その精油や類似の精油、香料等に触れることで、アレルギー反応が起こる可能性が高くなる。
- ^ 精油がカプセルなどに密封されている場合を除き、香りがするため感覚療法的な側面もある。
- ^ a b 嗅覚刺激だけでなく、肺から微量の精油が吸収され血液にも溶けこむため、薬物療法的な側面もある。
- ^ 精油を用いたオイル・マッサージは、医療行為としては「アロマトリートメント」と呼ばれ、民間のアロマ・マッサージと区別される。
- ^ 陶器、磁器、ガラスなどの中空容器の中に小さなカップロウソクを灯し、上部に置いた皿に水と精油を入れて熱し、芳香を出す装置。
- ^ ローズマリーを酒精と主に蒸留した蒸留酒。ハンガリー王妃エルジェーベトまたは聖エルジェーベトの病気を治すために発明されたという言い伝えにちなんで「ハンガリー王妃の水」と呼ばれたが、ハンガリーが起源である、またはハンガリー王族エルジェーベトのために作られたという歴史的根拠はない。
- ^ ガットフォセが精油の薬理効果に注目したきっかけとして、著作から不正確な引用がされ、次のようなエピソードが知られる。「実験中に手に火傷を負い、とっさに手近にあったラベンダー精油に手を浸したところ傷の治りが目ざましく良かったことから、精油の医療方面での利用を研究し始めた。」しかし、ロバート・ティスランドがガットフォセの著作『芳香療法』を編集して出版した『ガットフォセのアロマテラピー』では、1910年7月の火傷を負った事故が精油の治療効果に注目した契機だとは述べられておらず、アロマテラピー業界に流布し民間検定などで事実として教えられるエピソードと著作の内容には齟齬がある。著作では、火傷がガス壊疽に達したと述べられており、事故直後に精油を用いたとも書かれていない。高山林太郎は彼の孫娘による話として、火傷は上半身全体に及ぶ重篤なもので、正規の医療で治療していたが経過が悪く、事故後時間がたってから、民間で火傷に効果があるといわれたラベンダー油を使用したのだと述べている。つまり、ガットフォセは事故をきっかけに偶然ラベンダー精油の薬効を発見したわけではなく、事故前から民間の精油療法に興味を持っており、その知識を利用したのである。ただ、この件は精油の治療効果を研究する契機にはならなかったらしく、本格的に研究を始めたのは1920年代になってからだといわれる。
- ^ これらの民間資格は、法令で規定されたものではない。
- ^ a b c 同じ学名でも複数の化学種(ケモタイプ)があり、成分・生物活性・禁忌が異なる
出典
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- 今西二郎『補完・代替医療 メディカル・アロマセラピー』金芳堂、2006年
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- 「アロマトピア 第48号 イスラム文化の香りとハーブ」 フレグランスジャーナル社、2001年
- 荘司菊雄『においのはなし―アロマテラピー・精油・健康を科学する』技報堂出版、2001年
- ロジェ・ジァロア編『フランス・アロマテラピー大全』高山林太郎 訳、フレグランスジャーナル社、1997年
- ロバート・ティスランド、トニー・バラシュ『精油の安全性ガイド(上・下巻)』高山林太郎 訳、フレグランスジャーナル社、1996・1998年
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- ロバート ティスランド『アロマテラピー―〈芳香療法〉の理論と実際』高山林太郎 訳、フレグランスジャーナル社、1985年
- 酒井シヅ 編集『薬と人間』スズケン、1982年
関連項目
[編集]- 錬金術/キミア/クィンタ・エッセンチア
- 蒸留/精油/精油の一覧/フィトール/芳香化合物/香料
- ハーブ/香木/香辛料
- 森林浴/緑の香り
- セルフケア/ストレス管理
- 伝統医学/代替医療/アーユルヴェーダ/ユナニ医学
- マッサージ/キャリアオイル
- ニューエイジ/波動 (オカルト)
- 日本の資格に関する一覧の一覧
- 民間資格
- 資格商法
- 美容師
- 美容所
- 美容師法
外部リンク
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- Aromatherapy and Essential Oils (PDQR) National Library of Medicine - PubMed Health
- アロマテラピー学雑誌 Vol.16(2015) No.1
- あんまマッサージ指圧エビデンスレポート (EAMS) 平成22・23年度厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)研究代表者 津谷喜一郎
- 緩和ケアにおけるアロマテラピーの可能性 高谷真由美、黒木淳子 順天堂医療短期大学紀要8
- 看護基礎教育における代替療法の活用に関する一考察 : メディカルアロマセラピーを中心として 小濱優子 他 川崎市立看護短期大学紀要11
- 植物香気成分の示す多様な作用とその臨床応用(講座:香気成分の化学1) 田代眞一 化学と教育51 社団法人日本化学会
- 看護の場に焦点をあてたアロマセラピー研究の方向性 : 2003年から2005年までの文献レビュー 山本多香子、徳永基与子 京都市立看護短期大学紀要 33
- リラクゼーションビジネスの広がり-小規模マッサージサロンの事業化のポイント- 信金中央金庫 総合研究所産業企業情報 15-11 2004.1.21
- 日本アロマセラピー学会