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{{ホール概要
{{ホール概要
|名称=福井シネマ<br />FUKUI CINEMA
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|旧名称=松竹館、日活館、大衆館
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|特記事項=
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}}
'''福井シネマ'''（ふくいシネマ）は、[[福井県]][[福井市]][[順化 (福井市)|順化]]にある[[映画館]]。
'''福井シネマ'''（ふくいシネマ）は、[[福井県]][[福井市]][[順化 (福井市)|順化]]にある[[映画館]]。


== 歴史 ==
==歴史==
===サイレント時代===
映画館経営のほか、不動産業も営む加賀産業が経営する映画館である。
福井で最初に映画が上映されたのはいつのことであったかはっきりしないが、[[日露戦争]]（1904年-1905年）後の時期には既に芝居上演用の劇場で映画の興行が行われた記録が見られる<ref>『福井新聞百年史』518-519ページ。</ref>。片町にあった劇場の加賀屋座でもこの時期から映画の興行が行われており、1910年（明治43年）には福井新聞に割引券を付ける試みも行われた<ref>『福井新聞百年史』519-520ページ。</ref>。大正に入ると常設の映画館に転じる劇場も出たが、いずれも短期間で廃業した<ref name="F1941-1004"/>{{efn|一連の流れで加賀屋座も映画の常設館となった、と述べる文献や、加賀屋座が映画常設館となった後、松竹館に転じた<ref>『新修 福井市史 Ⅰ』931ページ。</ref>、とする文献もある。}}。


本格的な常設館が開設されたのは大正も後半に入ってからのことで、まず1919年（大正8年）年末に福井劇場が開館した。続いて加賀屋座が[[松竹キネマ]]と契約し<ref>『大正昭和福井県史』下巻、福井県、1957年、431ページ。</ref>、1921年（大正10年）に加賀屋座の南隣に開館したのが、福井シネマの前身となった松竹館である。しかしこの映画館開設は、場所が[[福井市順化小学校|順化尋常小学校]]に近かったことから議論を呼んだ。
1922年、松竹館の名称で片町に開館<ref name="encyclopedia">前田佐久雄「映画館・劇場」『福井県大百科事典』福井新聞社百科事典刊行委員会編集、福井新聞社、1991年。</ref>、後に大衆館と名を変えた。1932年の時点では、福井市内の映画館は大衆館に加えて、松竹座、中央館、福井劇場の4館しかなかった<ref>{{Cite web|url=http://homepage1.nifty.com/y_nakahara/hukui7.htm|title=昭和7年の福井県の映画館|publisher=中原行夫の部屋（原資料「[[キネマ旬報]]」）|accessdate=2013-09-02}}</ref>。しかし、こうした映画館は[[福井空襲]]で全滅した<ref name="encyclopedia"/>。


当時、福井県は「劇場寄席取締規則」により、学校や病院の周囲に劇場や寄席を開設することを禁じていた。加賀屋座は映画館の新設ではなく、劇場改築に伴う映画館の附設であるとして規則の適用を免れていた。しかし1917年（大正6年）に積雪で崩壊した昇平座がこの規則により修復を認められなかった例もあり、昇平座の旧座主は加賀屋座の動きに反対した。一方、以前から順化小は歓楽街に囲まれた環境や校地の狭さが問題視されており、学校移転を求める意見も出された<ref>「順化校の移轉と反對理由」『大阪朝日新聞』大正10年7月28日付3面（北陸）。</ref>。加賀屋座が[[立憲政友会|政友会]]支持であったことから論争は政治的立場も絡み、事態は紛糾した。結局市は学校移転の費用が出せず、県が「劇場寄席取締規則」を改正することによりこの問題の解決を図った<ref>「劇塲寄席取締規則改正」『大阪朝日新聞』大正10年9月7日付3面（北陸）。</ref><ref>『福井市史 通史編3 近現代』432-433ページ。</ref>。昇平座とも妥協が成立したが、今度は警察が完成した建物に設計と異なる点があると指摘し、建物の使用許可を出さないと主張した<ref>「新築の加賀屋座不許可？ 何れにしても問題」『大阪朝日新聞』大正10年11月8日付3面（北陸）。</ref>。
戦後、1947年に再開館したが、翌年の[[福井地震]]で建物は全焼、多数の死傷者を出した<ref>『福井烈震誌』福井市、1978年、523ページ。</ref><ref>福井市史編さん委員会『新修 福井市史 Ⅰ』福井市、1970年、538ページ</ref>。この年、現在の位置に移転している<ref>「映画館の見える本町通り」『保存版 福井・坂井・あわらの今昔』松原信之監修、郷土出版社、2005年、42ページ。ISBN 4-87663-770-9。</ref>。


このように曲折はあったものの、松竹館は1921年末に竣工式を迎え、1922年（大正11年）の正月公演では[[渡辺霞亭]]原作の『女の力』を上映した<ref>「上景氣は興行界だけ 福井のお正月興行」『大阪朝日新聞』大正11年1月5日付3面（北陸）。</ref>{{efn|1921年末に行ったのは竣工式だけなのか、年内に何らかの上映を行ったのかははっきりしない。『福井新聞百年史』は1922年1月の開館とし<ref>『福井新聞百年史』520ページ。</ref>、『福井県大百科事典』も開館を1922年としている。『福井映画史』（19ページ）『福井県労働運動史』は1923年の開館としている。}}。1921年末には中央館も開館し{{efn|1921年9月の開館とする文献が多い。}}、福井の常設館は大きく数を増やすことになった<ref>「中央館の落成 活動常設館の活躍」『大阪朝日新聞』大正10年12月20日付3面（北陸）。</ref>。開館当初は[[サイレント映画|無声映画]]の時代であり、松竹館にも複数の[[活動弁士|弁士]]が所属し、中には[[人力車]]で通う者もいた<ref>『福井映画史』31ページ。</ref>。
一時「東映パラス」という名称だったこともあり、この時代に福井出身の俳優[[津田寛治]]がアルバイトをしていた<ref>『中日新聞』2009年（平成21年）1月1日付朝刊24面（福井）。</ref>。福井シネマとなってからも、館前のバス停は「東映前」を名乗る。


その後一年ほどで東亜館に改名{{efn|東亜館に改名した時期ははっきりしないが、『松竹九十年史』掲載の年表には、大正13年（1924年）の項に「福井松竹館 直営廃止」の記述がある<ref>『松竹九十年史』松竹株式会社、1985年、659ページ。</ref>。また館名についても揺れがあり、『新修 福井市史 Ⅱ』は松竹館改名後の館名は「東亜キネマ」だったとしている<ref name="F1976-725"/>。『福井新聞百年史』にも「東亜シネマ（元の松竹館）」の記述がある<ref>「諸口十九、無声映画の看板スターに」『福井新聞百年史』252ページ。</ref>。}}、この時期に上映した『[[江戸怪賊伝 影法師|影法師]]』（[[東亜キネマ]]、1925年）は[[阪東妻三郎]]出演作としては福井で初の上映となった<ref>『福井映画史』53ページ。</ref>。1925年（大正14年）11月松竹館に戻った<ref>近司生「福井通信」『キネマ旬報』第235号（八月上旬號）、1926年8月、62ページ。</ref><ref>『福井映画史』36ページ。</ref>。このころは日本映画の上映が主であったが、『少年ロビンソン』『忍術キートン』といった洋画も上映していた。
⚫
福井シネマとなって以降、1998年には従来の映画ビルの北隣に3階建てのニュー映画ビルを建設<ref>『中日新聞』1998年（平成10年）2月21日付朝刊26面（福井）。</ref>、3月に「福井シネマ3・4」を新ビル内に開館した<ref>『中日新聞』1998年（平成10年）3月15日付朝刊18面（福井）。</ref>。さらに2010年には「福井シネマ1」の2階席を座席配置を変え、パノラマ席を設けている<ref>「映画鑑賞ゆったり 福井シネマ1 2階にパノラマ席 足元2倍 福井ゆかり作品公開前に 銀幕登場 タンス、仏壇も展示」『福井新聞』平成22年（2010年）6月11日付4面。</ref>

===トーキー時代===
1931年（昭和6年）、前年まで福井劇場が担当していた[[日活]]の映画をこの年から上映することになり、館名も日活館と改めた。市内には前年の1930年（昭和5年）11月に新たに松竹座が開館し<ref>「モダーンな松竹座 竣成は來月十日 開館は翌十一日」『大阪朝日新聞』昭和5年10月26日付9面（福井）。</ref><ref name="F1941-1004"/><ref name="FS2000-523"/>{{efn|松竹座の後身にあたる[[テアトルサンク]]への取材記事では1928年（昭和3年）に「映画興行「福井松竹座」を開始」とある<ref>藤共生「老舗物語 映画館 テアトルサンク参事 伊藤雅秀さん デジタル映写機 衝撃」『日刊県民福井』2013年（平成25年）2月4日付4面。</ref>。}}、常設館の競争が激化していた<ref>「春の映畫陣 市內の四館が超特作物で 人氣吸収に大馬力」『大阪朝日新聞』昭和6年2月24日付9面（福井）。</ref>。新興の松竹座がインテリ階級を集めたのに対し、日活館には比較的低級な階級が集まった<ref name="FS1974a-91-92"/>。

この時期は[[トーキー]]が普及を始めた時期で、福井でも1929年（昭和4年）7月に加賀屋座でトーキー興行が行われた<ref>「トーキー初めて登場 人気を集めた活動写真」『生きているふくい昭和史』上巻、58-59ページ。</ref><ref>『福井新聞百年史』522ページ。</ref>。こうした状況を背景に、弁士削減を図る館主と従業員の衝突が福井の各館で見られるようになり、1931年（昭和6年）10月には日活館でも弁士の解雇をめぐる争議が起きた<ref>『福井県労働運動史』。</ref><ref name="FS1974a-91-92">「弁士解雇でスト騒ぎ 無声映画からトーキーへ」『生きているふくい昭和史』上巻、91-92ページ。</ref>。争議の中、11月には松竹座では国産初のトーキー作品『[[マダムと女房]]』が上映され<ref name="FS1974a-91-92"/><ref>『福井新聞百年史』522-523ページ。</ref>、徐々にトーキー転換が進んだ。

1931年（昭和6年）12月には、激化する競争に耐えかねた常設4館が福井映画業組合を組織して料金や演目の調整を図ることになった。この措置の一環で日活館は大衆館と改称、日活映画の上映をやめることになった<ref>「初春興行を控へ 映畫組合成る 福井市四映畫館手を握り 料金、映畫等を協定」『大阪朝日新聞』昭和6年12月26日付13面（福井）。</ref>{{efn|協定成立の記事では大衆館への改名は23日付としているが、24日付の新聞には日活館名義で『血煙荒神山』『日本橋』『道玄坂奇談』といった日活映画の上映予定が発表されている<ref>「劇と映画」『大阪朝日新聞』昭和6年12月24日付（福井）。</ref>。}}。日活館改め大衆館は、1936年（昭和11年）に[[阿部九洲男|阿部九州男]]、[[羅門光三郎]]、[[嵐寛寿郎]]、[[水島道太郎]]らの作品に[[ランドルフ・スコット]]や漫画なども加えた9本立てで興行を行った<ref>「人気の的は軍人さん 正月映画に九本立ても」『生きているふくい昭和史』上巻154-155ページ。</ref>。

===倒壊===
[[File:Fukui-Taishukan_1940.jpg|thumb|160px|1940年頃の大衆館{{efn|撮影年代は『写真集 明治大正昭和 福井』の記載による。ただし写真に見える『蛮勇タルザン』が日本で初公開されたのは1934年であり、前編にあたる『無敵タルザン』は1934年10月に大衆館で上映されている。またこの写真と同じ建物は、1936年頃に附近で撮影された写真でも映画街の南端に写っており<ref>『順化の町の昔といま』25ページ。</ref>、掲載の写真も大衆館が加賀屋座の南側にあった1939年以前の撮影である可能性がある。}}]]
1939年4月、加賀屋座は東宝と契約し<ref>『福井市商工人物史』福井經濟新聞社、1939年、243ページ。</ref>、加賀屋座の南隣に福井東宝を開館した<ref name="FS2000-523">『福井新聞百年史』523ページ。</ref><ref name="F1976-725">『新修 福井市史 Ⅱ』725ページ</ref>{{efn|『稿本福井市史』は東宝の創立年月は1939年3月であるとしている<ref name="F1941-1004"/>。}}。1940年（昭和15年）2月には大衆館が加賀屋座の北隣で再開館した{{efn|大衆館の館名はこの時点から使われ始めたものだとする文献もあり<ref>『写真集 明治大正昭和 福井』126ページ。</ref><ref>『順化の町の昔といま』27ページ。</ref>、大衆館の設立が1940年2月だとするものもある<ref name="F1941-1004">『稿本福井市史』下巻、1004ページ。</ref>。また東宝はもと大衆館があった場所に開館しており、1940年に再開館するまでの間、大衆館がどうなっていたのかは不明である。}}。加賀屋座も映画上映を行うことがあり{{efn|1939年4月15日には加賀屋座で[[クラーク・ゲーブル]]、[[マーナ・ロイ]]主演の映画『[[テスト・パイロット (映画)|テスト・パイロット]]』が上映されていたが<ref>「劇と映画」『大阪朝日新聞』昭和14年4月15日付5面（福井）。</ref>、映写室にあったフィルムに引火して騒ぎとなった<ref>「福井映劇の火事騒ぎ」『大阪朝日新聞』昭和14年4月15日付5面（福井）。</ref>。}}、この一角が映画街を形成した。しかし戦争の激化に伴い統制が強まり、[[決戦非常措置要綱]]の実施に伴い大衆館は1945年（昭和20年）2月に休館となった<ref name="FS2000-525">『福井新聞百年史』525ページ。</ref>。さらに1945年（昭和20年）7月の[[福井空襲]]で市内の映画館は全滅した<ref name="FS2000-525"/>。

戦後、1946年（昭和21年）2月に再開館し<ref>『福井新聞百年史』479ページ。</ref><ref>「アメリカ映画に人気 福井市内に八館が開場 記録的大入り続く」『生きているふくい昭和史』下巻、59-60ページ。</ref>{{efn|『福井県大百科事典』は1947年としている。}}、この年には運営会社として加賀産業が設立された<ref name="FS1947">『福井縣經濟要覽』福井新聞社出版部、1947年、171ページ。</ref>{{efn|『キネマ旬報』は加賀産業が株式組織となったのは1948年11月であるとしているが<ref name="kinejun101">『キネマ旬報』第101号（秋の特別号）、1954年10月、86ページ。</ref>、1947年発行の『福井縣經濟要覽』では既に株式会社として掲載されている<ref name="FS1947"/>。}}。福井東宝も再開館したが、加賀屋座は再開されず、跡地は国際劇場という別の映画館となった。1947年（昭和22年）には大衆館が本町通りに移転した<ref>『新修 福井市史 Ⅱ』730ページ</ref>{{efn|移転は福井地震と同年（1948年）であるとする文献もある<ref>「映画館の見える本町通り」『保存版 福井・坂井・あわらの今昔』[[松原信之]]監修、郷土出版社、2005年、42ページ。ISBN 4-87663-770-9。</ref>。なお『新修 福井市史 Ⅱ』は移転先を「順化一丁目二」としているが、順化は[[住居表示]]制度の実施に伴い1967年から用いられている地名であり<ref>『新修 福井市史 Ⅰ』680ページ。</ref>、移転当時はこの地名は用いられていなかった。当時の地名では佐佳枝中町にあたる。}}。1948年（昭和23年）6月の[[福井地震]]で建物は全焼、多数の死傷者を出した<ref>『福井烈震誌』523ページ。</ref><ref>『新修 福井市史 Ⅰ』538ページ。</ref>。当日大衆館にいた人物の回想によれば、地震発生とともに建物は南の方に向かって倒れ、落下してきた梁に打たれた客は死亡、他の客は破れ目から脱出したという<ref>『福井烈震誌』1119ページ。</ref>{{efn|地震による大衆館の被害についてはさまざまな記述があり、食い違いも多い。死者数について、『福井市史』は震災当時の福井新聞の報道を元に、大衆館の死者は13人としており<ref>『福井市史 通史編3 近現代』627ページ。</ref>、[[中央防災会議]]の報告書も「大衆映画館」の被害として13人死亡と同じ数字をあげている<ref>『[http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/rep/1948-fukuiJISHIN/pdf/07_chap04.pdf 1948 福井地震 報告書]』77ページ。</ref>。『読売新聞』は29日午前8時時点で発掘された死体の数を40人<ref>平松「押し潰された満員の観衆 映画館の惨狀」『読売新聞』昭和23年6月30日付朝刊2面。</ref>、『写真集 明治大正昭和 福井』は「数一〇〇人」としている<ref>『写真集 明治大正昭和 福井』146ページ。</ref>。}}。

===再建===
[[File:Fukui-Taishukan 1955.jpg|thumb|160px|1955年の大衆館]]
震災後、大衆館は1948年（昭和23年）11月に再開館し{{efn|1948年10月の『朝日新聞』福井版掲載広告に「おまたせ致しました！ 愈々！ 11月1日ヨリ 大衆舘 大映・東宝封切 復興開舘」の文言が見られる<ref>『朝日新聞』昭和23年10月30日付大阪本社朝刊（福井）。</ref>。なお『新修 福井市史 Ⅱ』はこの直前、1948年10月26日に福井東映大衆館に改名したとしている<ref>『新修 福井市史 Ⅱ』730ページ。</ref>。}}、片町に残っていた東宝も1949年（昭和24年）8月に大衆館の北側で再建された<ref name="F1976-731">『新修 福井市史 Ⅱ』731ページ</ref><ref>「福井東宝完成」『福井新聞』昭和24年8月4日付2面。</ref>。さらに1950年（昭和25年）2月には東宝の北側に日本劇場（[[メトロ劇場]]の前身）が開館し<ref name="F1976-731"/>、この地区に映画館が並ぶ形となった。この頃加賀産業は、福井市で大衆館・東宝の2館を経営するほか、鯖江・武生でも映画館を経営し、さらに1952年9月には富山市で買収した既存館を改装、富山大衆館の名で開館するなど<ref>「興行街 富山大衆館新築で發足」『キネマ旬報』第49号（十月下旬号）、1952年10月、79ページ。</ref>、規模を拡大していった。大衆館は福井東宝と合わせて大映・東映・東宝・新東宝の4社の作品を上映していたが<ref name="kinejun114">「新・盛り場風土記 福井」『キネマ旬報』第114号（三月下旬号）、1955年3月、93-96ページ。</ref>{{efn|大衆館が東映専門となるまでの間、どの会社の映画を上映していたのかははっきりしない。『新修 福井市史 Ⅱ』は1951年頃から半年間大映と東映を併映した後、東映専門館となったとし<ref>『新修 福井市史 Ⅱ』730-731ページ。</ref>、1954年の『キネマ旬報』は大衆館が大映・東映、福井東宝は東宝・新東宝の上映館であったとする<ref name="kinejun101"/>。一方、同誌の1955年の取材記事に掲載された大衆館の写真には「大映 新東宝 封切」とあるのが読み取れる<ref name="kinejun114"/>。また、東映専門に移行する直前に上映していた『怪猫五十三次』『魔の花嫁衣裳』<ref>『福井新聞』昭和32年5月26日付夕刊2面。※広告。</ref>は大映の、『[[明治天皇と日露大戦争]]』<ref>『福井新聞』昭和32年5月29日付朝刊5面。※広告。</ref>は新東宝の作品である。}}、大衆館はその後東映専門となり、「福井東映」の名称を併用するようになった{{efn|1957年6月の『福井新聞』掲載広告には「東映封切専門館 第一回披露番組」<ref>『福井新聞』昭和32年6月4日付夕刊2面。※広告。</ref>「愈々本5日より！ 皆様の大衆舘が東映専門舘となりました！」<ref>『福井新聞』昭和32年6月5日付朝刊5面。※広告。</ref>の文言が見られ、これ以降の広告は「福井東映」と「大衆館」の名が併記されている。また時事通信社編『映画年鑑』の1957年版では大衆館の名で、1958年版では1957年10月1日現在の情報として福井東映の名で掲載されている。}}。

1959年（昭和34年）には改装工事を行い、鉄筋コンクリート2階建て、冷暖房完備の新館が6月に開館した<ref>「映画館」『キネマ旬報』第238号（8月上旬号）、1959年8月、120ページ。</ref>。開館行事には当時東映の看板俳優であった[[片岡千恵蔵]]が来館、福井市長に続いて壇上に上がり、「単に館主と俳優の間柄ではなく、北陸路にも兄がいると思われるほどお世話になった」と祝辞を述べた<ref>「片岡千恵蔵迎えて 福井東映の完成式行う」『福井新聞』昭和34年6月24日付夕刊3面。</ref><ref>「片岡千恵蔵、永平寺へ 山本選手を激励 お坊さんに大人気」『福井新聞』昭和34年6月25日付朝刊7面。</ref>。これ以降は大衆館の名称は用いられなくなった{{efn|『福井新聞』の「本日の映画案内」は改装期間中も大衆館の欄は残り、休館している旨が注記されていたが、新装開館前の6月15日付朝刊を最後に大衆館の表記をやめ<ref>「本日の映画案内」『福井新聞』昭和34年6月15日付朝刊3面。</ref>、同日付の夕刊から福井東映としている<ref>「本日の映画案内」『福井新聞』昭和34年6月15日付夕刊2面。</ref>。}}。1960年7月には隣接する東宝も改装した<ref name="F1976-731"/>{{efn|『新修 福井市史 Ⅱ』は東宝が1960年7月12日に「装いも新たに再出発」したと述べているが、1960年7月の『福井新聞』には「福井東宝 堂々明13日開舘決定！」と題した広告があり<ref>『福井新聞』昭和35年7月13日付夕刊（12日発行）3面。※広告。</ref>、新装開館は13日であったと思われる。}}。

===映画ビル開館===
[[File:Fukui Cinema 3・4 ac.jpg|thumb|福井シネマ3・4]]

1977年には東映と東宝を交互に運営しながら改装工事を進め、8月13日、東宝、東映が入居する「映画ビル」が開館した<ref>「OPEN 本日13日㊏ 福井映画ビル」『福井新聞』昭和52年8月13日付朝刊5面。※広告。</ref>。この際本館には名商エンタープライズが運営する東映パラス、別館には[[六部興行|東宝中部興行]]が運営する東宝洋画系のみゆき座が開館した。既に映画は低迷し、改装期を迎えた映画館はテナントを入れて収益を確保するのが一般的であるところ、加賀産業は映画館のみで新ビルを構成し、座席数は一度に400以上も増加した<ref>「斜陽化に反発 〝映画城〟新設 福井の老興行主」『朝日新聞』1977年（昭和52年）8月2日付17面（福井）。</ref>。しかし東映パラスは1992年2月に閉館、みゆき座も改装費用が出せず、1992年9月に閉館した<ref>『中日新聞』1992年9月7日付16面（福井）。</ref>。

⚫
1992年9月、改装期間を経て福井東映が「シネマ1」、福井東宝が「シネマ2」として再開業した。1998年には従来の映画ビルの北隣に3階建てのニュー映画ビルを建設<ref>「映画熱再燃へ新たに2館 福井 ヒット作続き 客足が増勢 来月オープン目指す 市街地活性化にも期待」『中日新聞』1998年（平成10年）2月21日付朝刊26面（福井）。</ref>、3月に「福井シネマ3・4」を新ビル内に開館した<ref>「新映画館2館 福井に店開き 人気アニメに長い列」『中日新聞』1998年（平成10年）3月15日付朝刊18面（福井）。</ref><ref>「福井市中心部 2映画館オープン 県内初公開の人気アニメ上映 300人が列、立ち見も」『日刊県民福井』1998年（平成10年）3月15日付18面。</ref>。さらに2010年には「福井シネマ1」の2階席を座席配置を変え、パノラマ席を設けている<ref>「映画鑑賞ゆったり 福井シネマ1 2階にパノラマ席 足元2倍 福井ゆかり作品公開前に 銀幕登場 タンス、仏壇も展示」『福井新聞』平成22年（2010年）6月11日付4面。</ref>。


== 座席数 ==
== 座席数 ==
*シネマ1 ：333
*1 333
*シネマ2 ：220
*2 220
*シネマ3 ：100
*3 100
*シネマ4 ：100
*4 100

==注釈==
{{notelist}}
⚫
==出典==
{{reflist}}


==参考文献==
⚫
== 脚注・出典 ==
*順化の町の昔といま編集委員会（編集）『順化の町の昔といま』うらがまちづくり順化地区委員会、1997年。
<references />
*杉本伊佐美『福井映画史』福井映画サークル協議会・南越文化財研究協議会、1972年。
*『1948 福井地震 報告書』中央防災会議 災害教訓の継承に関する専門調査会、2011年。
*「福井日活館争議」『福井県労働運動史』福井県経済部労政課、1963年、217-218ページ。
*福井市編『福井烈震誌』福井市、1978年。
*福井市（編集）『福井市史 通史編3 近現代』福井市、2004年。
*福井市史編さん委員会（編さん）『新修 福井市史 Ⅰ』福井市、1970年。
*福井市史編さん委員会（編さん）「演劇と映画」『新修 福井市史 Ⅱ』福井市、1976年、716-734ページ。
*福井市役所編『稿本福井市史』歴史図書社、1973年。※1941年刊の複製。
*『福井を伝えて一世紀――福井新聞百年史』福井新聞社社史編纂委員会、福井新聞社、2000年。
**「特集 福井と映画」518-527ページ。
*福井新聞社編集局編『生きているふくい昭和史』品川書店、1974年。※題号は奥付では『生きている昭和史』となっている。
*舟沢茂樹・松原信之編『写真集 明治大正昭和 福井』国書刊行会〈ふるさとの想い出⑲〉、1979年。
*前田佐久雄「映画館・劇場」『福井県大百科事典』福井新聞社百科事典刊行委員会編集、福井新聞社、1991年。


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2016年12月25日 (日) 11:52時点における版

福井シネマ
FUKUI CINEMA
情報
正式名称 福井シネマ
旧名称 松竹館、日活館、大衆館
完成 1977年8月13日
開館 1992年9月
収容人員 （4スクリーン）753人
設備 ドルビーデジタル5.1ch、DLP
用途 映画上映
運営 加賀産業
所在地 〒910-0023
福井県福井市順化1-2-1
アクセス 京福バス「東映前」停留所下車
外部リンク http://www.fukui-cinema.co.jp/
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福井シネマ（ふくいシネマ）は、福井県福井市順化にある映画館。

歴史

サイレント時代

福井で最初に映画が上映されたのはいつのことであったかはっきりしないが、日露戦争（1904年-1905年）後の時期には既に芝居上演用の劇場で映画の興行が行われた記録が見られる[1]。片町にあった劇場の加賀屋座でもこの時期から映画の興行が行われており、1910年（明治43年）には福井新聞に割引券を付ける試みも行われた[2]。大正に入ると常設の映画館に転じる劇場も出たが、いずれも短期間で廃業した[3][注釈 1]。

本格的な常設館が開設されたのは大正も後半に入ってからのことで、まず1919年（大正8年）年末に福井劇場が開館した。続いて加賀屋座が松竹キネマと契約し[5]、1921年（大正10年）に加賀屋座の南隣に開館したのが、福井シネマの前身となった松竹館である。しかしこの映画館開設は、場所が順化尋常小学校に近かったことから議論を呼んだ。

当時、福井県は「劇場寄席取締規則」により、学校や病院の周囲に劇場や寄席を開設することを禁じていた。加賀屋座は映画館の新設ではなく、劇場改築に伴う映画館の附設であるとして規則の適用を免れていた。しかし1917年（大正6年）に積雪で崩壊した昇平座がこの規則により修復を認められなかった例もあり、昇平座の旧座主は加賀屋座の動きに反対した。一方、以前から順化小は歓楽街に囲まれた環境や校地の狭さが問題視されており、学校移転を求める意見も出された[6]。加賀屋座が政友会支持であったことから論争は政治的立場も絡み、事態は紛糾した。結局市は学校移転の費用が出せず、県が「劇場寄席取締規則」を改正することによりこの問題の解決を図った[7][8]。昇平座とも妥協が成立したが、今度は警察が完成した建物に設計と異なる点があると指摘し、建物の使用許可を出さないと主張した[9]。

このように曲折はあったものの、松竹館は1921年末に竣工式を迎え、1922年（大正11年）の正月公演では渡辺霞亭原作の『女の力』を上映した[10][注釈 2]。1921年末には中央館も開館し[注釈 3]、福井の常設館は大きく数を増やすことになった[12]。開館当初は無声映画の時代であり、松竹館にも複数の弁士が所属し、中には人力車で通う者もいた[13]。

その後一年ほどで東亜館に改名[注釈 4]、この時期に上映した『影法師』（東亜キネマ、1925年）は阪東妻三郎出演作としては福井で初の上映となった[17]。1925年（大正14年）11月松竹館に戻った[18][19]。このころは日本映画の上映が主であったが、『少年ロビンソン』『忍術キートン』といった洋画も上映していた。

トーキー時代

1931年（昭和6年）、前年まで福井劇場が担当していた日活の映画をこの年から上映することになり、館名も日活館と改めた。市内には前年の1930年（昭和5年）11月に新たに松竹座が開館し[20][3][21][注釈 5]、常設館の競争が激化していた[23]。新興の松竹座がインテリ階級を集めたのに対し、日活館には比較的低級な階級が集まった[24]。

この時期はトーキーが普及を始めた時期で、福井でも1929年（昭和4年）7月に加賀屋座でトーキー興行が行われた[25][26]。こうした状況を背景に、弁士削減を図る館主と従業員の衝突が福井の各館で見られるようになり、1931年（昭和6年）10月には日活館でも弁士の解雇をめぐる争議が起きた[27][24]。争議の中、11月には松竹座では国産初のトーキー作品『マダムと女房』が上映され[24][28]、徐々にトーキー転換が進んだ。

1931年（昭和6年）12月には、激化する競争に耐えかねた常設4館が福井映画業組合を組織して料金や演目の調整を図ることになった。この措置の一環で日活館は大衆館と改称、日活映画の上映をやめることになった[29][注釈 6]。日活館改め大衆館は、1936年（昭和11年）に阿部九州男、羅門光三郎、嵐寛寿郎、水島道太郎らの作品にランドルフ・スコットや漫画なども加えた9本立てで興行を行った[31]。

倒壊

1940年頃の大衆館[注釈 7]

1939年4月、加賀屋座は東宝と契約し[33]、加賀屋座の南隣に福井東宝を開館した[21][15][注釈 8]。1940年（昭和15年）2月には大衆館が加賀屋座の北隣で再開館した[注釈 9]。加賀屋座も映画上映を行うことがあり[注釈 10]、この一角が映画街を形成した。しかし戦争の激化に伴い統制が強まり、決戦非常措置要綱の実施に伴い大衆館は1945年（昭和20年）2月に休館となった[38]。さらに1945年（昭和20年）7月の福井空襲で市内の映画館は全滅した[38]。

戦後、1946年（昭和21年）2月に再開館し[39][40][注釈 11]、この年には運営会社として加賀産業が設立された[41][注釈 12]。福井東宝も再開館したが、加賀屋座は再開されず、跡地は国際劇場という別の映画館となった。1947年（昭和22年）には大衆館が本町通りに移転した[43][注釈 13]。1948年（昭和23年）6月の福井地震で建物は全焼、多数の死傷者を出した[46][47]。当日大衆館にいた人物の回想によれば、地震発生とともに建物は南の方に向かって倒れ、落下してきた梁に打たれた客は死亡、他の客は破れ目から脱出したという[48][注釈 14]。

再建

1955年の大衆館

震災後、大衆館は1948年（昭和23年）11月に再開館し[注釈 15]、片町に残っていた東宝も1949年（昭和24年）8月に大衆館の北側で再建された[55][56]。さらに1950年（昭和25年）2月には東宝の北側に日本劇場（メトロ劇場の前身）が開館し[55]、この地区に映画館が並ぶ形となった。この頃加賀産業は、福井市で大衆館・東宝の2館を経営するほか、鯖江・武生でも映画館を経営し、さらに1952年9月には富山市で買収した既存館を改装、富山大衆館の名で開館するなど[57]、規模を拡大していった。大衆館は福井東宝と合わせて大映・東映・東宝・新東宝の4社の作品を上映していたが[58][注釈 16]、大衆館はその後東映専門となり、「福井東映」の名称を併用するようになった[注釈 17]。

1959年（昭和34年）には改装工事を行い、鉄筋コンクリート2階建て、冷暖房完備の新館が6月に開館した[64]。開館行事には当時東映の看板俳優であった片岡千恵蔵が来館、福井市長に続いて壇上に上がり、「単に館主と俳優の間柄ではなく、北陸路にも兄がいると思われるほどお世話になった」と祝辞を述べた[65][66]。これ以降は大衆館の名称は用いられなくなった[注釈 18]。1960年7月には隣接する東宝も改装した[55][注釈 19]。

映画ビル開館

福井シネマ3・4

1977年には東映と東宝を交互に運営しながら改装工事を進め、8月13日、東宝、東映が入居する「映画ビル」が開館した[70]。この際本館には名商エンタープライズが運営する東映パラス、別館には東宝中部興行が運営する東宝洋画系のみゆき座が開館した。既に映画は低迷し、改装期を迎えた映画館はテナントを入れて収益を確保するのが一般的であるところ、加賀産業は映画館のみで新ビルを構成し、座席数は一度に400以上も増加した[71]。しかし東映パラスは1992年2月に閉館、みゆき座も改装費用が出せず、1992年9月に閉館した[72]。

1992年9月、改装期間を経て福井東映が「シネマ1」、福井東宝が「シネマ2」として再開業した。1998年には従来の映画ビルの北隣に3階建てのニュー映画ビルを建設[73]、3月に「福井シネマ3・4」を新ビル内に開館した[74][75]。さらに2010年には「福井シネマ1」の2階席を座席配置を変え、パノラマ席を設けている[76]。

座席数

  • シネマ1 ：333
  • シネマ2 ：220
  • シネマ3 ：100
  • シネマ4 ：100

注釈

  1. ^ 一連の流れで加賀屋座も映画の常設館となった、と述べる文献や、加賀屋座が映画常設館となった後、松竹館に転じた[4]、とする文献もある。
  2. ^ 1921年末に行ったのは竣工式だけなのか、年内に何らかの上映を行ったのかははっきりしない。『福井新聞百年史』は1922年1月の開館とし[11]、『福井県大百科事典』も開館を1922年としている。『福井映画史』（19ページ）『福井県労働運動史』は1923年の開館としている。
  3. ^ 1921年9月の開館とする文献が多い。
  4. ^ 東亜館に改名した時期ははっきりしないが、『松竹九十年史』掲載の年表には、大正13年（1924年）の項に「福井松竹館 直営廃止」の記述がある[14]。また館名についても揺れがあり、『新修 福井市史 Ⅱ』は松竹館改名後の館名は「東亜キネマ」だったとしている[15]。『福井新聞百年史』にも「東亜シネマ（元の松竹館）」の記述がある[16]。
  5. ^ 松竹座の後身にあたるテアトルサンクへの取材記事では1928年（昭和3年）に「映画興行「福井松竹座」を開始」とある[22]。
  6. ^ 協定成立の記事では大衆館への改名は23日付としているが、24日付の新聞には日活館名義で『血煙荒神山』『日本橋』『道玄坂奇談』といった日活映画の上映予定が発表されている[30]。
  7. ^ 撮影年代は『写真集 明治大正昭和 福井』の記載による。ただし写真に見える『蛮勇タルザン』が日本で初公開されたのは1934年であり、前編にあたる『無敵タルザン』は1934年10月に大衆館で上映されている。またこの写真と同じ建物は、1936年頃に附近で撮影された写真でも映画街の南端に写っており[32]、掲載の写真も大衆館が加賀屋座の南側にあった1939年以前の撮影である可能性がある。
  8. ^ 『稿本福井市史』は東宝の創立年月は1939年3月であるとしている[3]。
  9. ^ 大衆館の館名はこの時点から使われ始めたものだとする文献もあり[34][35]、大衆館の設立が1940年2月だとするものもある[3]。また東宝はもと大衆館があった場所に開館しており、1940年に再開館するまでの間、大衆館がどうなっていたのかは不明である。
  10. ^ 1939年4月15日には加賀屋座でクラーク・ゲーブル、マーナ・ロイ主演の映画『テスト・パイロット』が上映されていたが[36]、映写室にあったフィルムに引火して騒ぎとなった[37]。
  11. ^ 『福井県大百科事典』は1947年としている。
  12. ^ 『キネマ旬報』は加賀産業が株式組織となったのは1948年11月であるとしているが[42]、1947年発行の『福井縣經濟要覽』では既に株式会社として掲載されている[41]。
  13. ^ 移転は福井地震と同年（1948年）であるとする文献もある[44]。なお『新修 福井市史 Ⅱ』は移転先を「順化一丁目二」としているが、順化は住居表示制度の実施に伴い1967年から用いられている地名であり[45]、移転当時はこの地名は用いられていなかった。当時の地名では佐佳枝中町にあたる。
  14. ^ 地震による大衆館の被害についてはさまざまな記述があり、食い違いも多い。死者数について、『福井市史』は震災当時の福井新聞の報道を元に、大衆館の死者は13人としており[49]、中央防災会議の報告書も「大衆映画館」の被害として13人死亡と同じ数字をあげている[50]。『読売新聞』は29日午前8時時点で発掘された死体の数を40人[51]、『写真集 明治大正昭和 福井』は「数一〇〇人」としている[52]。
  15. ^ 1948年10月の『朝日新聞』福井版掲載広告に「おまたせ致しました！ 愈々！ 11月1日ヨリ 大衆舘 大映・東宝封切 復興開舘」の文言が見られる[53]。なお『新修 福井市史 Ⅱ』はこの直前、1948年10月26日に福井東映大衆館に改名したとしている[54]。
  16. ^ 大衆館が東映専門となるまでの間、どの会社の映画を上映していたのかははっきりしない。『新修 福井市史 Ⅱ』は1951年頃から半年間大映と東映を併映した後、東映専門館となったとし[59]、1954年の『キネマ旬報』は大衆館が大映・東映、福井東宝は東宝・新東宝の上映館であったとする[42]。一方、同誌の1955年の取材記事に掲載された大衆館の写真には「大映 新東宝 封切」とあるのが読み取れる[58]。また、東映専門に移行する直前に上映していた『怪猫五十三次』『魔の花嫁衣裳』[60]は大映の、『明治天皇と日露大戦争』[61]は新東宝の作品である。
  17. ^ 1957年6月の『福井新聞』掲載広告には「東映封切専門館 第一回披露番組」[62]「愈々本5日より！ 皆様の大衆舘が東映専門舘となりました！」[63]の文言が見られ、これ以降の広告は「福井東映」と「大衆館」の名が併記されている。また時事通信社編『映画年鑑』の1957年版では大衆館の名で、1958年版では1957年10月1日現在の情報として福井東映の名で掲載されている。
  18. ^ 『福井新聞』の「本日の映画案内」は改装期間中も大衆館の欄は残り、休館している旨が注記されていたが、新装開館前の6月15日付朝刊を最後に大衆館の表記をやめ[67]、同日付の夕刊から福井東映としている[68]。
  19. ^ 『新修 福井市史 Ⅱ』は東宝が1960年7月12日に「装いも新たに再出発」したと述べているが、1960年7月の『福井新聞』には「福井東宝 堂々明13日開舘決定！」と題した広告があり[69]、新装開館は13日であったと思われる。

出典

  1. ^ 『福井新聞百年史』518-519ページ。
  2. ^ 『福井新聞百年史』519-520ページ。
  3. ^ a b c d 『稿本福井市史』下巻、1004ページ。
  4. ^ 『新修 福井市史 Ⅰ』931ページ。
  5. ^ 『大正昭和福井県史』下巻、福井県、1957年、431ページ。
  6. ^ 「順化校の移轉と反對理由」『大阪朝日新聞』大正10年7月28日付3面（北陸）。
  7. ^ 「劇塲寄席取締規則改正」『大阪朝日新聞』大正10年9月7日付3面（北陸）。
  8. ^ 『福井市史 通史編3 近現代』432-433ページ。
  9. ^ 「新築の加賀屋座不許可？ 何れにしても問題」『大阪朝日新聞』大正10年11月8日付3面（北陸）。
  10. ^ 「上景氣は興行界だけ 福井のお正月興行」『大阪朝日新聞』大正11年1月5日付3面（北陸）。
  11. ^ 『福井新聞百年史』520ページ。
  12. ^ 「中央館の落成 活動常設館の活躍」『大阪朝日新聞』大正10年12月20日付3面（北陸）。
  13. ^ 『福井映画史』31ページ。
  14. ^ 『松竹九十年史』松竹株式会社、1985年、659ページ。
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  19. ^ 『福井映画史』36ページ。
  20. ^ 「モダーンな松竹座 竣成は來月十日 開館は翌十一日」『大阪朝日新聞』昭和5年10月26日付9面（福井）。
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  22. ^ 藤共生「老舗物語 映画館 テアトルサンク参事 伊藤雅秀さん デジタル映写機 衝撃」『日刊県民福井』2013年（平成25年）2月4日付4面。
  23. ^ 「春の映畫陣 市內の四館が超特作物で 人氣吸収に大馬力」『大阪朝日新聞』昭和6年2月24日付9面（福井）。
  24. ^ a b c 「弁士解雇でスト騒ぎ 無声映画からトーキーへ」『生きているふくい昭和史』上巻、91-92ページ。
  25. ^ 「トーキー初めて登場 人気を集めた活動写真」『生きているふくい昭和史』上巻、58-59ページ。
  26. ^ 『福井新聞百年史』522ページ。
  27. ^ 『福井県労働運動史』。
  28. ^ 『福井新聞百年史』522-523ページ。
  29. ^ 「初春興行を控へ 映畫組合成る 福井市四映畫館手を握り 料金、映畫等を協定」『大阪朝日新聞』昭和6年12月26日付13面（福井）。
  30. ^ 「劇と映画」『大阪朝日新聞』昭和6年12月24日付（福井）。
  31. ^ 「人気の的は軍人さん 正月映画に九本立ても」『生きているふくい昭和史』上巻154-155ページ。
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  36. ^ 「劇と映画」『大阪朝日新聞』昭和14年4月15日付5面（福井）。
  37. ^ 「福井映劇の火事騒ぎ」『大阪朝日新聞』昭和14年4月15日付5面（福井）。
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  40. ^ 「アメリカ映画に人気 福井市内に八館が開場 記録的大入り続く」『生きているふくい昭和史』下巻、59-60ページ。
  41. ^ a b 『福井縣經濟要覽』福井新聞社出版部、1947年、171ページ。
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  43. ^ 『新修 福井市史 Ⅱ』730ページ
  44. ^ 「映画館の見える本町通り」『保存版 福井・坂井・あわらの今昔』松原信之監修、郷土出版社、2005年、42ページ。ISBN 4-87663-770-9。
  45. ^ 『新修 福井市史 Ⅰ』680ページ。
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  50. ^ 『1948 福井地震 報告書』77ページ。
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  54. ^ 『新修 福井市史 Ⅱ』730ページ。
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  59. ^ 『新修 福井市史 Ⅱ』730-731ページ。
  60. ^ 『福井新聞』昭和32年5月26日付夕刊2面。※広告。
  61. ^ 『福井新聞』昭和32年5月29日付朝刊5面。※広告。
  62. ^ 『福井新聞』昭和32年6月4日付夕刊2面。※広告。
  63. ^ 『福井新聞』昭和32年6月5日付朝刊5面。※広告。
  64. ^ 「映画館」『キネマ旬報』第238号（8月上旬号）、1959年8月、120ページ。
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  67. ^ 「本日の映画案内」『福井新聞』昭和34年6月15日付朝刊3面。
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  71. ^ 「斜陽化に反発 〝映画城〟新設 福井の老興行主」『朝日新聞』1977年（昭和52年）8月2日付17面（福井）。
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  75. ^ 「福井市中心部 2映画館オープン 県内初公開の人気アニメ上映 300人が列、立ち見も」『日刊県民福井』1998年（平成10年）3月15日付18面。
  76. ^ 「映画鑑賞ゆったり 福井シネマ1 2階にパノラマ席 足元2倍 福井ゆかり作品公開前に 銀幕登場 タンス、仏壇も展示」『福井新聞』平成22年（2010年）6月11日付4面。

参考文献

  • 順化の町の昔といま編集委員会（編集）『順化の町の昔といま』うらがまちづくり順化地区委員会、1997年。
  • 杉本伊佐美『福井映画史』福井映画サークル協議会・南越文化財研究協議会、1972年。
  • 『1948 福井地震 報告書』中央防災会議 災害教訓の継承に関する専門調査会、2011年。
  • 「福井日活館争議」『福井県労働運動史』福井県経済部労政課、1963年、217-218ページ。
  • 福井市編『福井烈震誌』福井市、1978年。
  • 福井市（編集）『福井市史 通史編3 近現代』福井市、2004年。
  • 福井市史編さん委員会（編さん）『新修 福井市史 Ⅰ』福井市、1970年。
  • 福井市史編さん委員会（編さん）「演劇と映画」『新修 福井市史 Ⅱ』福井市、1976年、716-734ページ。
  • 福井市役所編『稿本福井市史』歴史図書社、1973年。※1941年刊の複製。
  • 『福井を伝えて一世紀――福井新聞百年史』福井新聞社社史編纂委員会、福井新聞社、2000年。
    • 「特集 福井と映画」518-527ページ。
  • 福井新聞社編集局編『生きているふくい昭和史』品川書店、1974年。※題号は奥付では『生きている昭和史』となっている。
  • 舟沢茂樹・松原信之編『写真集 明治大正昭和 福井』国書刊行会〈ふるさとの想い出⑲〉、1979年。
  • 前田佐久雄「映画館・劇場」『福井県大百科事典』福井新聞社百科事典刊行委員会編集、福井新聞社、1991年。

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