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{{Infobox sport
{{出典の明記|date=2015年3月}}
| name = ボディビルディング<br />''Bodybuilding''
[[ファイル:PalumboFacechest.jpg|250px|thumb|right|ボディビルダー]]
| image = Arnold_Schwarzenegger_1974.jpg
'''ボディビル'''('''ボディビルディング'''、英語: bodybuilding)は[[筋肉]]繊維を[[ウェイトトレーニング]]、[[栄養]]の摂取、[[ステロイド]]、[[成長ホルモン]]、そして休養を組み合わせることによって発達させる過程のことである。
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| caption = 1974年のボディビル大会に出場したときの[[アーノルド・シュワルツェネッガー]]
| union = [[国際ボディビル連盟]]
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| first = 19世紀末の[[イングランド]]
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| region = 世界各国
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| IWGA = 1981年 - 2009年
}}
'''ボディビル'''(''Bodybuilding'', '''ボディビルディング''')とは、筋肉組織の構築を制御ないし発達を目的とした漸進性抵抗運動 (''Progressive Resistance Exercise'')<ref name = "Men's Bodybuilding: A Short History" >{{Cite web |url = http://www.bodybuildingreviews.net/Bodybuilding.html |title = Men's Bodybuilding: A Short History |author = Mike Emery |publisher = Bodybuildingreviews.net |date = January 2003 |archive-url = https://web.archive.org/web/20030208022132/http://www.bodybuildingreviews.net/Bodybuilding.html |archive-date = 8 February 2003 |access-date = 1 April 2023 }}</ref>。肉体的強さではなく、あくまで外見が重要であり、[[重量挙げ]]とは別物である<ref>{{Cite web |url = https://www.healthline.com/nutrition/bodybuilding-meal-plan |title = Bodybuilding Meal Plan: What to Eat, What to Avoid |author = Gavin Van De Walle, MS, RD |website = Healthline |date = 19 November 2018 |archive-url = https://web.archive.org/web/20181121004713/https://www.healthline.com/nutrition/bodybuilding-meal-plan |archive-date = 21 November 2018 |access-date = 1 April 2023 }}</ref>。これに従事する者たちは「ボディビルダー」(''Bodybuilder'') と呼ばれる。競技に参加するボディビルダーたちは、体躯の調和・均整美、筋骨の強壮さ、筋肉の大きさ、体調を競い、舞台に立つにあたって格付け審査員に向けて構えをきめる。ボディビルダーたちは、脱水とカーボ・ローディング(''Carbo-Loading'', [[炭水化物]]の摂取を増やすことで、[[グリコーゲン]]〈''Glycogen''〉を体内に貯蓄する食事法)を組み合わせ、競技出場前の最終段階において不要な体脂肪を減らし、最大量の筋肉とその鮮明な輪郭および血管の分布の構築を完遂する。舞台上集中光線を浴びる彼らは明暗を強調する目的から、身体を日焼けさせ、[[髭|体毛]]を剃る<ref>{{Cite web |url = https://www.bodybuilding.com/fun/shaving-body-hair-for-men.htm |title = Shaving Body Hair For Men! |website = Bodybuilding.com |date = 30 August 2010 |archive-url = https://web.archive.org/web/20100903191508/https://www.bodybuilding.com/fun/shaving-body-hair-for-men.htm |archive-date = 3 September 2010 |access-date = 1 April 2023 }}</ref>。国際ボディビル連盟が主催する『[[ミスター・オリンピア]]』(''Mr. Olympia'')で優勝した者は、ボディビル界の頂点に立つ存在と見なされることが多い。[[1950年]]以来、全米ボディビル愛好協会 (''The National Amateur Body-Builders' Association'') が主催する世界選手権では、[[アーノルド・シュワルツェネッガー]] (''Arnold Schwarzenegger'') を始めとする名の知れた受賞者がおり、これに勝ち残った者は専門職としての運動競技選手になることが多い。


ボディビルにおいては、薬物の服用は禁止である。また、ボディビルにおいては実演よりも外見が重要視される。筋肉の発達や性能を高めるよりも、見た目を重視する目的から、薬物に手を出す者もいる<ref name = "Which Body Building Substances Are Legal (and Illegal) in the US?" >{{Cite web |url = http://bodypass.net/nutrition/body-building-substances-legal/ |title = Which Bodybuilding Substances Are Legal (and Illegal) in the US? (2020 list) |date = 7 June 2020 |website = bodypass.net |archive-url = https://web.archive.org/web/20200803203605/http://bodypass.net/nutrition/body-building-substances-legal/ |archive-date = 3 August 2020 |access-date = 4 April 2023 }}</ref>。表向きは「薬物の服用は禁止」であるが、実際には、筋肉増強作用を持つ[[アナボリック・ステロイド]] (''Anabolic Steroid'') を服用するボディビルダーは数多い<ref name = "Should The IFBB Ban Steroids For Real?" >{{Cite web |url = https://www.bodybuilding.com/fun/topicoftheweek18.htm |title = Should The IFBB Ban Steroids For Real? |website = Bodybuilding.com |date = 16 March 2005 |archive-url = https://web.archive.org/web/20050319060100/https://www.bodybuilding.com/fun/topicoftheweek18.htm |archive-date = 19 March 2005 |access-date = 1 April 2023 }}</ref>。
ボディビルを行う人を'''ボディビルダー'''と呼ぶ。ボディビルダーたちは「ボディビル競技会(コンテスト)」にて自らの肉体(physiques)を審査員に披露し、審査員は審美的造型に基づいて得点をつける。審美的というのは、胸回りが何センチメートルあるかといった尺度ではなく、全体的な形の美しさで審判するという意味である。[[バルク]](筋肉量)、[[ディフィニション]](definition、皮下脂肪の無い輪郭が見える筋肉)、[[バランス]](全身の均衡ある筋肉)を[[パンプ・アップ]](pump up、ウェイトトレーニングをしたことで血液が筋に送られて充血する筋肉)した状態を審査する。そのためボディビルダーは審美的造型に自身の肉体を近づけるために計画的に筋肉を発達させるのである。


ボディビルダーの独自性は比較ができないものであり、ボディビルは個性の構築を主体的に強化する可能性がある一方で、個性の葛藤、不快な経験、自我の危険性をもたらす可能性があることを示唆している<ref>{{Cite journal |last1 = Probert |first1 = Anne |last2 = Leberman |first2 = Sarah |last3 = Palmer |first3 = Farah |date = 2007-03-01 |title = New Zealand Bodybuilder Identities: Beyond Homogeneity |url = https://doi.org/10.1177/1012690207081921 |journal = International Review for the Sociology of Sport |volume = 42 |issue = 1|pages = 5–26 |doi = 10.1177/1012690207081921 |s2cid = 144186372 |issn = 1012-6902 }}</ref>。
有名なボディビルダーには俳優としても活躍した[[アーノルド・シュワルツェネッガー]]や、[[ルー・フェリグノ]]などがいる。

ボディビルダーたちは、自分たちのやっていることを「運動競技」と考えているが、主流のスポーツ界はそのようには見做しておらず、ボディビルは正当性の危機に直面している<ref name = "Men's Bodybuilding: A Short History" />。[[国際オリンピック委員会]]も同様の立場であり、ボディビルを「運動競技」とは見做していない。ボディビルダーたちによる薬物乱用の問題が基本的な焦点となっている<ref name = "Bodybuilding And The Olympics: An Ongoing Controversy" />。


== 歴史 ==
== 歴史 ==
古代エジプトやギリシアにおいては、大きな石を持ち上げる競争行為が行われていた<ref name = "A History Lesson In Bodybuilding" >{{Cite web |url = https://www.bodybuilding.com/fun/drobson61.htm |title = A History Lesson In Bodybuilding |author = David Robson |website = bodybuilding.com |archive-url = https://web.archive.org/web/20050322122739/https://www.bodybuilding.com/fun/drobson61.htm |archive-date = 22 March 2005 |access-date = 1 April 2023 }}</ref>。
アスレチックスポーツとしてのボディビルは11世紀の[[インド]]にまで遡ることができる。そこではアスリートたちが「ナル」と呼ばれる木の棒の外側に石をくくりつけた[[ダンベル]]を使用していた。


西洋においては、[[1880年]]から[[1953年]]にかけて[[重量挙げ]]が発展し、剛力自慢の者たちは一般大衆に向けて自身の力強さをこれみよがしに見せ付け、互いに競い合った。比重が置かれたのは参加者たちの体格ではなく、彼らの四肢と腹部は大抵は脂肪で太っていた<ref>{{Cite book |author = Arnold Schwarzenegger |title = The New Encyclopedia of Modern Bodybuilding |year = 1999 |location = Fireside, NY |isbn = 978-0684857213 |publisher = Simon & Schuster }}</ref>。
=== 草創期 ===
[[ファイル:Falk, Benjamin J. (1853-1925) - Eugen Sandow (1867-1925).jpg|thumb|ユージン・サンドウ]]
「筋肉を披露する技芸」としてのボディビルが誕生したのは19世紀末のことである。この時代にボディビル競技を推進したのが、「近代ボディビルの父」としばしば評される[[ドイツ]](当時[[プロシア]])出身の[[ユルゲン・サンドウ]]([[ユージン・サンドウ]]とも)である。サンドウ以前にも鍛え上げた肉体を見世物にする大道芸のような文化はあったが、これは重い岩を持ち上げる、鎖をちぎるといった力の強さを見せるものであった。サンドウは古代ギリシャ・ローマの彫刻を研究し自分の肉体を鍛錬によってそれに近づけることを目指した。これによって彫刻などで具現化された肉体の美が想像のものではなく実際の人間の肉体で表されることを証明したことがサンドウの功績であり、競技の概念の起源である。
サンドウは最初に運動器具([[マシンド・ダンベル]]、[[スプリング・プーリー]]、[[テンション・バンド]])を[[発明]]・[[販売]]した。


[[インド]]の[[タミル・ナードゥ州]]マドゥライでは、巨大な球形の石を持ち上げる競技が行われていた。古代において、これは結婚前の若い男性の勇気と力強さを試すために行われていた、と考えられている<ref name = "Locked horns and a flurry of feathers" >{{Cite web |url = http://www.thehindu.com/features/magazine/locked-horns-and-a-flurry-of-feathers/article4294435.ece |title = Locked horns and a flurry of feathers |author = D. KARTHIKEYAN |date = January 12, 2013 |publisher = The Hindu |archive-url = https://web.archive.org/web/20130511091147/http://www.thehindu.com/features/magazine/locked-horns-and-a-flurry-of-feathers/article4294435.ece |archive-date = 11 May 2013 |access-date = 1 April 2023 }}</ref>。
[[1901年]]9月14日にサンドウは初めて、ボディビルコンテストを開いた。そのコンテストは「グレートコンペティション」と呼ばれ、[[イギリス|英国]]、[[ロンドン]]の[[ロイヤル・アルバート・ホール]]で開催された。審査員は[[チャールズ・ロウズ]]卿と[[アーサー・コナン・ドイル]]卿が務めた。コンテストは大成功を収め、勝利者には彫刻家[[フレデリック・ポメロイ]]によるサンドウを模した[[トロフィー]]が与えられた。このトロフィーは[[1977年]]からミスターオリンピアの優勝者にも贈呈されている。20世紀初頭、[[ベルナール・マックファッデン]]と[[チャールズ・アトラス]]がサンドウに引き続いてボディビルの普及を推し進めた。


=== 黄金時代 ===
=== ユージン・サンドウ ===
[[File:Falk,_Benjamin_J._(1853-1925)_-_Eugen_Sandow_(1867-1925).jpg|thumb|[[ユージン・サンドウ]]]]
シンメトリーやディフィニションより、サイズの大きさが優先されて評価されるようになった現代では、1940年から1970年はボディビルの「黄金時代」と回顧されることがある。トレーニング技術が発達し、出版物やコンテストが増加したのもこの時代である。
19世紀末、[[ドイツ人]]の[[ユージン・サンドウ]] (''Eugen Sandow'') がボディビルの普及を推進した。鍛え上げられた肉体を観衆に披露して楽しんでもらおうと考えたサンドウは、「筋肉展示公演会」と題した催し物を開いた。だが、集まった男たちは自身の肉体の誇示が目的であったり、格闘試合の実演として登場しただけであった。サンドウは、[[フローレンツ・ジーグフェルド・ジュニア|フローレンツ・ズィークフェルト]] (''Florenz Ziegfeld'') とともに肉体披露の見世物を主催した。構えをきめる一連の動作が広く受け入れられたサンドウは、自身の名前を商標にした製品を売り出し始め、[[ダンベル]]<ref name = "A History Lesson In Bodybuilding" />、ばね、伸長帯といった運動器具を販売した。サンドウの肉体の写真が印刷された判も数千枚販売された。


[[1898年]]、サンドウは雑誌『''Physical Culture''』を創刊した<ref name = "Men's Bodybuilding: A Short History" />。
この時代のボディビルは、米国[[カリフォルニア州]]の[[サンタモニカ]]の{{仮リンク|マッスル・ビーチ|en|Muscle Beach}}[[ヴェニス (カリフォルニア州)|ヴェニス]]で、特に盛んであった。マッスルコンテストとしてヴェニスビーチの屋外トレーニングジムの近くで、5月の最終日曜日のメモリアルデー[[戦没将兵追悼記念日]]、7月4日の[[独立記念日 (アメリカ合衆国)|独立記念日]]、9月第一月曜日の[[レイバー・デー (アメリカ合衆国)|レイバー・デー]]の年3回開催され、男・女・マスターズ(35歳以上)の'''ボディビル'''部門、フィジック部門(男)、フィギュア部門(女)、[[ビキニ (水着)|ビキニ]]部門(女)に分かれてビーチに似合う身体を競うカリフォルニア最大級のアマチュアコンテストであり、米国内だけでなく海外参加も多い。


=== ボディビル競技会 ===
人気が高まるにつれ、[[アマチュア・アスレチック・ユニオン]](AAU)が1939年にボディビル競技会を既存のウェイトリフティング競技の1つに加え、翌年にはこの競技会をAAUミスター・アメリカと命名した。しかし、AAUはアマチュア競技者のみを許可し、ウェイトリフティングのオリンピック競技を重視したため、多くのボディビルダーの反発を招いた。
[[1901年]][[9月14日]]、サンドウは、[[ロンドン]]にある[[ロイヤル・アルバート・ホール]] (''The Royal Albert Hall'') にて、「大競技会」と題したボディビル大会を開催した<ref name = "Bodybuilders Through the Ages" >{{Cite web |url = http://www.smithsonianmag.com/history-archaeology/Bodybuilders-Through-the-Ages.html |title = Bodybuilders Through the Ages |last = Rhodes |first = Jesse |name-list-style = vanc |publisher = smithsonianmag.com |archive-url = https://web.archive.org/web/20090727224950/https://www.smithsonianmag.com/history-archaeology/Bodybuilders-Through-the-Ages.html/ |archive-date = 27 July 2009 |access-date = 1 April 2023 }}</ref><ref name = "A History Lesson In Bodybuilding" />。サンドウ、チャールズ・ラース (''Charles Lawes'')、[[アーサー・コナン・ドイル]] (''Arthur Conan Doyle'') が審査員を務めたこの競技会は大きな成功を収めた。優勝したのは[[ノッティンガム]]出身のウィリアム・L・マーリイ (''William L. Murray'') で<ref name = "A History Lesson In Bodybuilding" />、フレデリック・ポメロイ (''Frederick Pomeroy'') が彫刻したサンドウの黄金像が贈呈された。次点のD・クーパー (''D. Cooper'') には銀の像が、第三位のA・C・スマイツ (''A.C. Smythe'') には青銅の像が贈呈された。


審査の基準は厳格であり、サンドウは、筋肉や体格以外の要素も加点する趣旨を明言した。サンドウが要求したのは、筋肉だけでなく、左右対称の均整の取れた体型であった。サンドウの定めた審査の基準となったのは以下の要素であった<ref name = "A History Lesson In Bodybuilding" />。
これをきっかけに、[[ベン・ウィーダー|ベン]]と[[ジョン・ウィーダー|ジョン]]のウィーダー兄弟が{{仮リンク|国際ボディビルダーズ連盟|en|International Federation of BodyBuilding & Fitness}} (IFBB) を発足させるに至った。IFBBミスター・アメリカはプロも参加可能なコンテストであった。1950年には{{仮リンク|全米アマチュアボディビルディング協会|en|National Amateur Bodybuilders Association}} (NABBA) が「NABBAミスター・ユニバース・コンテスト」を英国で開始した。これと双璧をなす[[ミスター・オリンピア]]の第1回は1965年に開催された。現在、ミスター・オリンピアはボディビル界でもっとも栄誉あるタイトルになっている。 当初はそのコンテストは男性限定であったが、1965年にNABBAはミス・ユニバースをコンテストに加え、1980年にはミス・オリンピアが創設された。


* 総合的な発達
=== ソード&サンダル映画 ===
* 発達の均等および均一性
古代を舞台に[[ソード&サンダル]](剣とサンダル)を着た[[ヘラクレス]]や[[サムソン]]や[[剣闘士]]を題材にした[[スティーヴ・リーヴス]]主演の映画が1958年から1964年にかけて製作され、ボディビルダーの姿を見た欧米の観客が影響を受け、ボディビルのトレーニングをするようになった。[[アーノルド・シュワルツェネッガー]]もリーヴスの主演映画を見てボディビルダーを目指したという。
* 組織の状態や調子
* 総合的な健康状態
* 皮膚の状態


サンドウは、「賞は、大きな筋肉に対してではなく、均整の取れた発達を見せている者に授与される」と述べた<ref name = "The Fascinating Story of the First Bodybuilding Show" >{{Cite web |url = https://barbend.com/first-bodybuilding-show-eugen-sandow/ |title = The Fascinating Story of the First Bodybuilding Show |author = Conor Heffernan |website = BarBend |date = 16 May 2018 |archive-url =https://archive.md/CNTAg |archive-date = 2 April 2023 |access-date = 2 April 2023 }}</ref>。[[1950年]]に全米ボディビル愛好協会 (''The National Amateur Body-Builders' Association, NABBA'') が主催した競技会で優勝した[[スティーヴ・リーヴス]] (''Steve Reeves'') に、A・C・スマイツが受け取った青銅の像と同じものが贈られた。[[1977年]]に[[国際ボディビルディング・フィットネス連盟|国際ボディビル連盟]] (''The International Federation of BodyBuilders, IFBB'') が開催した『[[ミスター・オリンピア]]』(''Mr. Olympia'') にて優勝した[[フランク・ゼーン|フランク・ゼイン]] (''Frank Zane'') に青銅の像の複製品が贈呈されると、それ以降はこの複製品が贈られるのが慣習となった。
=== 1970年代以後 ===
[[File:Arnold Schwarzenegger 1974.jpg|thumb|[[アーノルド・シュワルツェネッガー]](1974年)]]


[[1903年]][[12月28日]]から[[1904年]][[1月2日]]にかけて、[[ニューヨーク]]にある[[マディソン・スクエア・ガーデン]] (''The Madison Square Garden'') にて、大規模なボディビル競技会が開催された<ref name = "Men's Bodybuilding: A Short History" />。この競技会を宣伝したのは[[ベルナール・マクファデン]] (''Bernarr Macfadden'') であった。マクファデンは、雑誌『''Physical Development''』の創刊者でもあった<ref name = "Men's Bodybuilding: A Short History" />。この大会で優勝したのはアル・トレロアー (''Al Treloar'') であった<ref name = "AL TRELOAR (Albert Toof Jenkins) 1873 -1960" >{{Cite web |url = http://www.sandowplus.co.uk/Competition/Treloar/treloar.htm |title = AL TRELOAR (Albert Toof Jenkins) 1873 -1960 |work = Sandowplus |date = December 28, 1903 |archive-url = https://archive.is/j4To |archive-date = 15 September 2012 |access-date = 1 april 2023 }}</ref>。トレロアーは賞金として1000ドルを受け取ったが、これは当時としてはかなりの高額であった。この2週間後、[[トーマス・エジソン|トマス・エディスン]] (''Thomas Edison'') は、トレロアーが見せた一連の構えを映像に収めた。エディスンはまた、サンドウの構えも映像に収めている<ref name = "Bodybuilders Through the Ages" />。ベルナール・マクファデンとチャールズ・アトラス (''Charles Atlas'') は[[イングランド]]に移住し、ボディビルの普及を推進した<ref name = "Men's Bodybuilding: A Short History" />。
1970年代までに、ボディビルは、アーノルド・シュワルツェネッガーと[[1977年]]の映画『パンピング・アイアン』により大きな市民権を獲得するようになった。このときにはIFBBがボディビル界を統括しており、AAUはその後塵を拝した。また、この時代には[[アナボリックステロイド]]が他のスポーツと同様にボディビルにも浸透していった。


[[1925年]][[10月14日]]、サンドウはロンドンにて、[[脳出血]]を起こして死亡した<ref name = "A History Lesson In Bodybuilding" />。58歳であった<ref>{{Cite web |url = http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,721389,00.html |title = Sport: Death of Sandow |date = 26 October 1925 |work = [[Time Magazine]] |archive-url = https://web.archive.org/web/20120219124407/http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,721389,00.html |archive-date = 19 February 2012 |access-date = 2 April 2023 }}</ref>。
1981年、第1回[[ワールドゲームズ]]([[アメリカ合衆国]]・[[サンタクララ]]、[[ワールドゲームズ1981]])から非オリンピック競技としてボディビルが競技種目として採用され、[[ワールドゲームズ1985]]、[[ワールドゲームズ1989]]、[[ワールドゲームズ1993]]、[[ワールドゲームズ1997]]、[[ワールドゲームズ2001]]、[[ワールドゲームズ2005]]、[[ワールドゲームズ2009]]で公式競技種目として開催される。このような状況に対し、[[国際オリンピック委員会]]のメンバーに認めてもらうため、IFBBは数種のステロイドホルモン剤と他の禁止薬物に対して厳格な[[ドーピング]]検査を導入した。2000年代初頭、IFBBはボディビルを[[近代オリンピック|オリンピック]]の競技にしようと試みた。


=== 1930年以前のボディビルダー ===
2000年にはIOCの会員となり、(オリンピックの正式種目として採用される可能性のある)[[オリンピック公開競技|公開競技]]としての開催が試みられたものの、結局は成功にいたらなかった。この背景には、実際のコンテストで運動競技のような「記録」が無いことから、ボディビルはスポーツではないという主張する者が存在していることや、ボディビルではオリンピックの競技で禁止されているアナボリックステロイドの使用が不可避であるとの根強い誤解がある。これに対して支持者は、[[ポージング・ルーチン]]には他のスポーツと同じように技能と準備が必要だと主張しており、依然として論争の的になっている{{要出典|date=2009年12月}}。
1930年以前のボディビルダーには、ライオネル・ストロングフォート (''Lionel Strongfort'')<ref>{{Cite web |url = http://www.sandowplus.co.uk/Competition/Strongfort/course/lesson1.htm |title = STRONGFORTISM - LESSON ONE |work = sandowplus |archive-url = https://web.archive.org/web/20021201121931/http://www.sandowplus.co.uk/Competition/Strongfort/course/lesson1.htm |archive-date = 1 December 2002 |access-date = 2 April 2023 }}</ref>や、[[第一次世界大戦]]に従軍して片足を失ったアラン・P・ミード (''Alan P. Mead'') がいる。俳優のフランセス・X・ブッシュマン (''Francis X. Bushman'') は、[[無声映画]]に出演する前は彫刻の題材にもなっていた<ref>{{Cite book |url = https://books.google.com/books?id=Xz2eGt6InJIC&q=Actor+Francis+X.+Bushman%2C+who+was+a+disciple+of+Sandow%2C+started+his+career+as+a+bodybuilder+and+sculptor%27s+model+before+beginning+his+famous+silent+movie+career&pg=PA1743 |title = CREATIVITY OF GOD IN THE HUMAN BODY "BODYBUILDING" |publisher = Abdullah F Shrit |isbn = 978-1-4840-1198-0 }}</ref>。


=== 1950年代{{ndash}}1960年代 ===
ワールドゲームズも、日本ボディビル・フィットネス連盟によると、ドーピング違反のために[[ワールドゲームズ2013]]ではボディビル競技は実施されず、[[ワールドゲームズ2017]]でもボディビル競技の実施予定も無い(2013年8月現在)。
[[1946年]]、[[カナダ人]]の兄弟である[[ジョー・ウイダー]] (''Joe Weider'') と[[ベン・ウイダー]] (''Ben Weider'') が、「国際ボディビル連盟」(''The International Federation of Bodybuilders, IFBB'') を設立した<ref name = "Men's Bodybuilding: A Short History" />。[[1950年代]]から[[1960年代]]にかけて、力強さと体操の熱烈な推進者が現われるようになり、時を同じくして、ボディビル雑誌、筋力鍛錬の基本原則、筋肉肥大と体脂肪減少に向けての栄養摂取、[[タンパク質]]や[[栄養補助食品]]、体格を競い合う大会の普及に伴い、ボディビルの人気も上がるようになった。「[[ゴールドジム|ゴールド・ジム]]」(''Gold's Gym'') のような「筋金入り」の筋力鍛錬施設が登場したのは[[1965年]]8月のことであった。


[[1965年]][[9月18日]]、ウイダー兄弟は『[[ミスター・オリンピア]]』(''Mr. Olympia'') と題したボディビル大会を初めて主催した<ref name = "Men's Bodybuilding: A Short History" />。この大会で優勝を果たしたのは[[ラリー・スコット (ボディビルダー)|ラリー・スコット]] (''Larry Scott'') であった。スコットは翌年に開催された大会にも出場し、優勝している<ref name = "A History Lesson In Bodybuilding" />。1965年以降、『ミスター・オリンピア』は17の都市で開催されている<ref>{{Cite web |url = http://www.ifbbpro.com/features/jim-manion-chairman-ifbb-professional-league/ |title = IFBB Professional League - Jim Manion, Chairman IFBB Professional League |author = Tony Blinn |publisher = Ifbbpro.com |date = September 26, 2007 |archive-url = https://web.archive.org/web/20080905153700/http://www.ifbbpro.com/features/jim-manion-chairman-ifbb-professional-league/ |archive-date = 5 September 2008 |access-date = 2 April 2023 }}</ref>。
=== アジア大会におけるボディビル競技 ===
[[アジア競技大会]]においては[[2002年アジア競技大会 |2002年釜山大会]]から正式種目に採用され、次の[[2006年アジア競技大会 |2006年ドーハ大会]]でも正式種目であったが、アジア大会の肥大化を受けて[[アジアビーチゲームズ]]に移行されることとなった。[[2008年アジアビーチゲームズ]]([[インドネシア]]・[[バリ島]])、[[2010年アジアビーチゲームズ]]([[オマーン]]・[[マスカット]])では正式競技として行われた。2009年にアジアボディビル連盟(ABBF)がIFBBから除名される事態が生じ<ref>[http://www.jbbf.jp/Message/2009_Message/AFBF_Funade.pdf 社団法人日本ボディビル連盟会長挨拶参照]</ref>、新たにアジアボディビルフィットネス連盟(AFBF)が設立された。[[日本ボディビル連盟]] (JBBF) はIFBBの一員としてAFBFに加盟することになったが、ビーチゲームを統括する[[アジアオリンピック評議会]] (OCA) はABBFを承認団体としているため、JBBFは[[2010年アジアビーチゲームズ]]には参加できなかった。一連の内紛の影響で、[[2012年アジアビーチゲームズ]]の実施競技からボディビルが除外されている。しかし、日本ボディビル・フィットネス連盟 (JBBF) によると、アジアボディビルフィットネス連盟 (AFBF) をアジアにおける正式の団体として、アジアビーチゲームズに2014年から復帰予定とのことである(2013年8月現在)。


[[1939年]][[7月4日]]に「全米体操愛好連盟」(''The Amateur Athletic Union'') が初めて主催した『''Mr. America''』のような、ボディビル団体が開催する競技会は多数あるが、主流のボディビル団体は国際ボディビル連盟である<ref name = "Men's Bodybuilding: A Short History" />。「全米ボディビル愛好協会」(''The National Amateur Body-Builders' Association, NABBA'') が毎年主催するボディビル大会『''The Universe Championships''』(『世界選手権』)があるが、これは元々『''Mr. Universe''』(「ミスター・ユニヴァース」)という題名の選手権であった。[[アーノルド・シュワルツェネッガー]] (''Arnold Schwarzenegger'') もこの大会に何度か出場し、『ミスター・ユニヴァース』の称号を獲得している<ref name = "A History Lesson In Bodybuilding" />。
=== 日本のボディビル ===

日本のボディビルは[[若木竹丸]]に始まる。若木は[[ユルゲン・サンドウ]]の著書に刺激され、[[1938年]]『怪力法並に肉体改造体力増進法』を出版した。
[[カリフォルニア州]][[サンタ・モニカ]]にあるマッスル・ビーチ (''Muscle Beach'') は、[[1934年]]以降、体操や重量挙げといった、身体を鍛える者たちの場所となっている。{{ill|ジャック・ララーヌ|en|Jack LaLanne}}やスティーヴ・リーヴスもここで鍛錬に励んだ<ref name = "Flex marks the spot : histories of Muscle Beach" >{{Cite thesis |author = Tolga Ozyurtcu |year = 2014 |title = Flex marks the spot: Histories of Muscle Beach |publisher = The University of Texas at Austin |type = Doctoral |url = https://hdl.handle.net/2152/26057 |hdl = 2152/26057 |access-date = 8 June 2023 }}</ref>。
[[1955年]]頃から当時人気の[[プロレス]]とあいまって第一次ボディビルブームが起こり、広くボディビルが普及した。同年10月には「日本ボディビル協会」(現在の[[日本ボディビル連盟]]JBBF)が発足し、第一回ミスター日本ボディビルコンテストが行われた。[[1967年]]にはIFBB世界大会に日本選手を派遣し、日本ボディビルが本格的に国際化する。その後もIFBBやNABBAの国際大会で日本選手が相次いで好成績を収めている。[[末光健一]]が[[1972年]]IFBBのMr.Universe ショートクラス優勝、[[須藤孝三]]が[[1975年]][[1976年]]NABBA Mr.Universe ミディアムクラス優勝、[[杉田茂]]が[[1976年]]NABBA Mr.Universe アマチュア部門ショートクラス優勝[[1981年]]IFBB Mr.International ミドル級優勝、[[飯島ゆりえ]]が[[1988年]]女子世界選手権52kg以下級優勝、[[廣田俊彦]]が[[1997年]][[ワールドゲームズ]]ボディビル部門ライト級優勝、[[水間詠子]]が[[1997年]][[ワールドゲームズ]]ボディビル部門52kg以下級優勝、[[小沼敏雄]]が[[2002年]]IFBB World Amateur Championships マスターズのライト級優勝している。(アジアを対象としたボディビル大会の優勝者は数が多いので記載を省略する。)

[[1983年]]には初の女性ボディビル全国大会である「ミス日本コンテスト」が開催された。
=== 1970年代{{ndash}}1990年代 ===
[[2012年]]6月19日現在のボディビル連盟登録選手の競技人口は男3160人、女323人で、国内最大の大会の日本ボディビル選手権でも賞金は無く副賞としてプロテイン1か月分が授与される。
=== アナボリック・ステロイドの服用 ===
[[2013年]]4月、[[社団法人]]日本ボディビル連盟は[[公益社団法人]][[日本ボディビル・フィットネス連盟]]に改称した。
[[File:Ed_Fury_and_Jackie_Coey,_1953.jpg|right|thumb|1953年撮影。筋肉を誇示するように構えるエド・フューリイ (''Ed Fury'')。隣に立っているのはジャッキー・コーイ (''Jackie Coey'')。]]
2013年IFBB男子世界アマチュアボディビル選手権大会70kg級で[[田代誠]]が第三位で日本に17年ぶりにメダル表彰された。
[[1970年代]]になると、媒体を通じて、[[フランコ・コロンボ]] (''Franco Columbu'')、ハロルド・プール (''Harold Poole'')、デイヴ・ドレイパー (''Dave Draper'')、フランク・ゼイン (''Frank Zane'')、ラリー・スコット (''Larry Scott'') といった複数のボディビルダーの名前が知れ渡るようになった。しかし、筋肉増強作用を持つ[[アナボリック・ステロイド]] (''Anabolic Steroid'') を服用するボディビルダーも現われるようになった。トム・プラッツ (''Tom Platz'') やポール・デメーヨ (''Paul Demayo'') のように、身体の一部だけが発達しているボディビルダーもいる。

アナボリック・ステロイドは、[[男性ホルモン]]の一種である[[テストステロン]] (''Testosterone'') の合成誘導体 (''Synthetic Derivatives'') であり<ref name = "The Safety and Efficacy of Anabolic Steroid Precursors: What is the Scientific Evidence?" >[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC164360/ The Safety and Efficacy of Anabolic Steroid Precursors: What is the Scientific Evidence?] Michael E. Powers {{PMID|16558675}} {{PMC|164360}}</ref>、筋肉の大きさや筋力の増幅に影響を及ぼす。[[1960年代]]、運動競技選手が薬物として服用した初のステロイドの一つであった。[[1974年]]、[[国際オリンピック委員会]] (''The International Olympic Committee'') は、ステロイドの服用を正式に禁止した<ref>[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK482418/ Anabolic Steroids] Kavitha Ganesan; Sajedur Rahman; Patrick M. Zito.</ref>。除脂肪体重、筋力、全体的な運動能力を向上させる目的で、運動競技に出場する選手たちが服用してきた<ref name = "The Safety and Efficacy of Anabolic Steroid Precursors: What is the Scientific Evidence?" />。

[[キューバ]]出身のボディビルダー、[[セルジオ・オリバ|セルフィオ・オリバ]] (''Sergio Oliva'') は、[[1967年]]、[[1968年]]、[[1969年]]に開催された『ミスター・オリンピア』で優勝を果たしている<ref name = "A History Lesson In Bodybuilding" /><ref name = "A BRIEF HISTORY OF THE CLASSIC PHYSIQUE" />が、[[1970年]]から[[1975年]]にかけて出場し、オリバを破った人物がいた。その人物こそが、[[アーノルド・シュワルツェネッガー]]であった<ref name = "Why The 1980 Mr. Olympia Bodybuilding Contest Was So Controversial" >{{Cite web |url = https://barbend.com/1980-mr-olympia-controversy/ |title = Why The 1980 Mr. Olympia Bodybuilding Contest Was So Controversial |author = Conor Heffernan |date = 10 April 2021 |work = barbend |archive-url = https://web.archive.org/web/20210411162955/https://barbend.com/1980-mr-olympia-controversy/ |archive-date = 11 April 2021 |access-date = 2 April 2023 }}</ref>。シュワルツェネッガーは、『ミスター・オリンピア』の称号を七回獲得している<ref name = "Arnold: No Regrets About Steroids" />。[[1980年]]の大会で七度目の『ミスター・オリンピア』の称号を獲得したのち<ref name = "Men's Bodybuilding: A Short History" />、シュワルツェネッガーは、ボディビルからの引退を表明した<ref name = "Why The 1980 Mr. Olympia Bodybuilding Contest Was So Controversial" />。

[[1977年]]の[[記録映画]]『''Pumping Iron''』に出演したシュワルツェネッガーは、その時点ではステロイドの服用を認めなかったが、のちに「競技で優位に立ちたければ、手段を選んではいけない」と語っている。

1977年に発売された小冊子『''Arnold: Developing a Mr Universe Physique''』の中で、シュワルツェネッガーはステロイドの服用について、「大会出場の準備に向けて、筋肉の質量を維持するためだ」という趣旨を強調し、以下のように語っている。「仲間のボディビルダーたちを擁護するわけではないが、筋肉組織を構築する薬物に関する私自身の経験について書いておきたい。そう、私はステロイドを服用した。だが、ステロイドだけでこの身体になったわけではない。アナボリック・ステロイドは、競技会に向けて厳しい食事制限に励みつつ、筋肉の質量を維持するのに役立ちました。ステロイドを服用したのは、筋肉の発達のためではなく、減量期に入ったあとの筋肉量の維持のために使ったのです」<ref name = "Arnold & Steroids: Truth Revealed" >{{Cite web |url = http://hjem.get2net.dk/JamesBond/www/artikler/steroidemisbrug/arnoldandsteroids.htm |title = Arnold & Steroids: Truth Revealed |last = Theunissen |first = Steve |name-list-style = vanc |archive-url = https://web.archive.org/web/20031008172601/http://hjem.get2net.dk/JamesBond/www/artikler/steroidemisbrug/arnoldandsteroids.htm |archive-date = October 8, 2003 |access-date = 2 April 2023 }}</ref>

[[2009年]]、彼は「ステロイドの服用については後悔していない」と述べた。シュワルツェネッガーはステロイドの服用を認めているが、当時は合法であった趣旨を強調した<ref name = "Should The IFBB Ban Steroids For Real?" />。「(ステロイドの服用については)後悔していない。当時、新しいものが世に出てきて、医師の監督のもとで服用したんだ」「実験していたのさ。新しい存在だったんだよ。時計の針を戻して、『今ならこのことについて考えを改めるだろう』とは言えないよ」と語った。彼はまた、「子供たちに間違った教訓を与えてしまうから、薬物の服用は奨励しない」が、「運動競技選手たちが、自身の能力を向上させる目的で栄養補助食品や合法物質を摂取することについては何の問題も無い」と述べた<ref name = "Arnold: No Regrets About Steroids" >{{Cite web |url = http://www.cbsnews.com/2100-250_162-676684.html |title = Arnold: No Regrets About Steroids |work = CBS News |date = February 11, 2009 |archive-url = https://web.archive.org/web/20120324172953/http://www.cbsnews.com/2100-250_162-676684.html |archive-date = 24 March 2012 |access-date = 2 April 2023 }}</ref>。

アナボリック・ステロイドについて、セルフィオ・オリバは[[ナンドロロン]] (''Deca-Durabolin'') とダイアナボル (''Metandienone'') を服用していた。ステロイドの服用について、オリバは以下のように語っている。

{{quote|「これは、人々が大いに関心を示す分野だ。誰がステロイドを使おうが、それ自体は個人の自由さ…その人の人生なんだから。さて、今や誰もがステロイドを入手できるようになった。昔、某有名雑誌で、アーノルドがステロイドの服用を否定している記事を目にしたことがあるが、彼はアメリカにステロイドを持ち込んだ最初の人物だ。昔は誰もが使っていたよ。フランク・ゼイン、フランコ・コロンボ、俺、アーノルド、ラリー・スコット、ハロルド・プール、デイヴ・ドレイパー、スティーヴ・リーヴスもね。これは否定のしようがない。大した問題ではなかったんだ。今のボディビルダーたちほどではないが、服用していたよ。でも、薬の開発は異質なものだ。俺はナンドロロンとダイアナボルを使っていたが、これらは本当に凄い代物でね、ナンドロロンはそれほど悪いものだとは認識されていなかったんだ。「骨を丈夫にするから」って、医者が処方していたくらいだからね。現時点で体重が約91 kgの人が、半年後には約113 - 136 kgにまで増える!この場合、その人は、普通ならありえないものを服用しているんだ。「何も摂取してないよ」と言った場合、その人は嘘を吐いてるってことになる」<ref>{{Cite web |url = https://www.uk-muscle.co.uk/threads/sergio-oliva-interview.87717/ |title = Sergio Oliva interview |author = |date = 18 April 2010 |work = uk-muscle |archive-url = |archive-date = |access-date = 2 April 2023 }}</ref>}}

ステロイドの服用の撲滅と、国際オリンピック委員会への加入を目論む形で、国際ボディビル連盟は、ステロイドや違法薬物に対する薬物試験を導入することにした。しかし、競技に出場するにあたり、薬物を服用するボディビルダーは後を絶たない。

[[1990年]]に制定された[[規制物質法]] (''The Controlled Substances Act'') にて、アメリカ連邦議会は「一覧表III」にアナボリック・ステロイドの名前を登録した<ref name = "How Anabolic Steroids Became Controlled Substances" >{{Cite web |url = https://steroidlaw.com/2019/02/anabolic-steroids-controlled-substances/ |title = How Anabolic Steroids Became Controlled Substances |date = 12 February 2019 |work = Steroidlaw |access-date = 8 April 2023 }}</ref>。「ステロイドで強化された競技選手は、ステロイドを服用していない選手よりも有利であり、不公平である」という懸念があった。[[1988年]]、短距離走者の[[ベン・ジョンソン (陸上選手)|ベン・ジョンソン]] (''Ben Johnson'') が、違法薬物を摂取したのを理由に金メダルを剥奪されたとき、精鋭競技は、努力や公正さよりも、「誰がより良い薬を持っているか」という様相を呈するようになった。時の上院議員、[[ジョー・バイデン]] (''Joe Biden'') は、議会が懸念していた事柄について、以下のように発言した。「…今後数年間で、オリンピックに出場する選手から、大学での運動競技、職業選手に至るまで、アメリカにおける運動競技に対する、一般市民からの強い反発が見られることでしょう。怒りの感情が高まりつつあり、それがどのような形で作用するのかは見当もつきません」<ref name = "How Anabolic Steroids Became Controlled Substances" />

医師からの処方箋が無い状態でアナボリック・ステロイドを所有した場合、法律違反となる<ref name = "The Safety and Efficacy of Anabolic Steroid Precursors: What is the Scientific Evidence?" /><ref name = "Men's Bodybuilding: A Short History" />。この法律が施行されるまでは、ステロイドの服用は違法ではなかったことを忘れてはならない<ref name = "Arnold & Steroids: Truth Revealed" />。[[1996年]]、[[カナダ議会]]は「規制薬物及び物質法」(''The Controlled Drugs and Substances Act'') を制定し、「一覧表IV」にアナボリック・ステロイドの名前を記載した<ref>{{Cite web |url = https://laws-lois.justice.gc.ca/eng/acts/C-38.8/ |title = Controlled Drugs and Substances Act (S.C. 1996, c. 19) |date = 5 May 2011 |work = Department of Justice Canada |archive-url = https://web.archive.org/web/20110521052751/http://laws-lois.justice.gc.ca/eng/acts/C-38.8/page-33.html#h-29 |archive-date = 21 May 2011 |access-date = 2 April 2023 }}</ref>。

アナボリック・ステロイドの副作用として、痤瘡([[にきび]])、[[脱毛]]、心臓病発症の危険性の増加、腎臓と肝臓の機能不全、[[高血圧]]、性的不能が報告されている<ref name = "The Safety and Efficacy of Anabolic Steroid Precursors: What is the Scientific Evidence?" />。

また、アナボリック・ステロイドの服用行為は、[[1960年代]]には既に始まっていた。[[1980年代]]になると、複数の種類のステロイドに加えて、筋肉を肥大させる目的から、[[インスリン]] (''Insulin'') の服用も増えるようになった<ref name = "A History Lesson In Bodybuilding" />。

デイヴィッド・ロブスン (''David Robson'') は、ボディビルダーの多くがステロイドを服用している点、ステロイドの服用の問題点を認めながらも、「薬物の服用を完全に禁止した場合、ボディビルの魅力が奪われてしまうだろう」「IFBBがボディビルからステロイドを排除するのは現実離れしており、事実上、不可能だ」と力説している<ref name = "Should The IFBB Ban Steroids For Real?" />。

アナボリック・ステロイドのような薬物の服用により、ボディビルダーは筋肉の大きさや力強さと引き換えに、長期的には健康を危険に晒す恐れがあり、それによって、ボディビルの正当性は消滅の危機に直面している<ref name = "Men's Bodybuilding: A Short History" />。

=== ヴィンス・マクマホン ===
[[1990年]]、[[プロレス]]の普及推進を目指す[[ヴィンス・マクマホン]] (''Vince McMahon'') は、「世界ボディビル連盟」(''The World Bodybuilding Federation, WBF'') の設立を考えていた。マクマホンは、この連盟の人材開発部長としてトム・プラッツを雇った。[[1990年]][[9月15日]]、第26回ミスター・オリンピア競技会が開催された。マクマホンはトム・プラッツと一緒に会場に姿を見せ、雑誌『''Bodybuilding Lifestyles''』を宣伝していた。優勝したリー・ヘイニー (''Lee Haney'') が、ミスター・オリンピアの称号を授与されようとしていたその矢先、トム・プラッツが舞台の上で即興の演説を行い、WBFの設立と、IFBBの打倒を宣言した。この翌日、マクマホンは記者会見を開き、ウイダー兄弟を公然と批判し、「自分のWBFこそ、ボディビルの本来のあるべき姿』だ」と主張した。マクマホンの言葉は、IFBBが薬物検査を行おうとしない現況をそれとなく伝えるものであった。1990年、IFBBは厳格な薬物検査を実施し、出場選手の二割が「不合格」と認定された。マクマホンは、「ボディビルの行事を今よりも劇的なものにし、ボディビルダーたちが受け取る賞金をさらに増やす」と宣言し、ボディビルダーたちと高額の資金契約を結んだ<ref name = "When Bodybuilding Met Wrestling: The Bizarre Tale of the World Bodybuilding Federation" >{{Cite web |url = https://barbend.com/world-bodybuilding-federation/ |title = When Bodybuilding Met Wrestling: The Bizarre Tale of the World Bodybuilding Federation |author = Conor Heffernan |date = 16 March 2020 |website = BarBend |archive-url = https://web.archive.org/web/20200318170411/https://barbend.com/world-bodybuilding-federation/ |archive-date = 18 March 2020 |access-date = 2 April 2023 }}</ref><ref name = "Vince McMahon's Attempt to Take Over Bodybuilding" >{{Cite web |url = https://www.muscleandfitness.com/athletes-celebrities/news/vince-mcmahons-failed-attempt-take-over-world-bodybuilding/ |title = Vince McMahon's Attempt to Take Over Bodybuilding - How the IFBB survived its greatest challenge: the WBF. |date = 7 March 2019 |author = PETER MCGOUGH |website = Muscle & Fitness |archive-url = https://web.archive.org/web/20190331085601/https://www.muscleandfitness.com/athletes-celebrities/news/vince-mcmahons-failed-attempt-take-over-world-bodybuilding/ |archive-date = 31 March 2019 |access-date = 2 April 2023 }}</ref><ref name = "Wrestling Babylon : piledriving tales of drugs, sex, death and scandal" >{{Cite book |last = Muchnick |first = Irvin |url = https://www.worldcat.org/oclc/244769018 |title = Wrestling Babylon : piledriving tales of drugs, sex, death and scandal |date = 2007 |publisher = ECW Press |isbn = 978-1-55490-761-8 |location = Toronto [Ont.]|oclc = 244769018 }}</ref>。

ウイダー兄弟は、IFBBに所属する選手に対し、「WBFに加盟した者は、IFBBが主催する競技会において即座に失格とする」「新たな団体に加盟した場合、IFBBに戻ることは決して許可しない」と述べた<ref name = "When Bodybuilding Met Wrestling: The Bizarre Tale of the World Bodybuilding Federation" /><ref name = "Vince McMahon's Attempt to Take Over Bodybuilding" />。ウイダー兄弟は、『ミスター・オリンピア』の優勝者に贈呈する賞金を10万ドルに増やし、さらに、マクマホンに対抗するため、有料放送番組の検討を始めた<ref name = "When Bodybuilding Met Wrestling: The Bizarre Tale of the World Bodybuilding Federation" />。しかし、医師のジョージ・ザホリアン (''George Zahorian'') が、能力向上薬をWBFの選手たちに配布した容疑で逮捕・起訴され<ref name = "When Bodybuilding Met Wrestling: The Bizarre Tale of the World Bodybuilding Federation" />、懲役三年の実刑判決を言い渡された<ref name = "Vince McMahon's Attempt to Take Over Bodybuilding" />。その後、マクマホンは、選手たちの薬物検査を実施する趣旨を発表した。[[1992年]][[7月15日]]、マクマホンはウイダー兄弟と電話会議を行い、ボディビル雑誌の生産を中止し、WBFを解団する趣旨を伝えた<ref name = "Vince McMahon's Attempt to Take Over Bodybuilding" />。ザホリアンに対する実刑判決は更なる調査につながり、WBFの選手たちに薬物を配布することを共謀した容疑でマクマホンが起訴されるまでに至った。[[1994年]][[7月23日]]、マクマホンはすべての容疑で無罪となった<ref name = "Vince McMahon's Attempt to Take Over Bodybuilding" />。この一連の過程で、マクマホンは1500万ドルを失った、と伝えられた<ref name = "Vince McMahon's Attempt to Take Over Bodybuilding" />。

=== 2000年代 ===
[[2003年]]、ジョー・ウイダーは、『''Weider Publications''』を『''American Media, Inc. AMI''』に売却した。[[2008年]]10月にベン・ウイダーが亡くなったのち、IFBBの会長はラファエル・サントンハ (''Rafael Santonja'') が務めていた。[[2004年]]、ウェイン・デミリア (''Wayne DeMilia'') がIFBBから去ったのち、AMIがミスター・オリンピア競技会の宣伝を引き継ぐことになった。[[2017年]]には、別の企業と共同で行事を執り行っている<ref>{{Cite web |url = https://www.prnewswire.com/news-releases/american-media-inc-acquires-full-ownership-of-mr-olympia-competition-300513901.html |title = American Media, Inc. Acquires Full Ownership Of Mr. Olympia Competition |work = PR Newswire Association |archive-url = https://web.archive.org/web/20170905180449/https://www.prnewswire.com/news-releases/american-media-inc-acquires-full-ownership-of-mr-olympia-competition-300513901.html |archive-date = 5 September 2017 |access-date = 2 april 2023 }}</ref>。

ソ連崩壊後の[[東ヨーロッパ]]において、消費や娯楽の様式が広まるにつれて、ボディビルが普及するようになった<ref>{{Cite book |url = https://books.google.com/books?id=Xz2eGt6InJIC&q=in+Europe+and+especially+in+Eastern+Europe+following+the+collapse+of+the+Soviet+Union.+This+resulted+in+the+emergence+of+whole+new+populations+of+bodybuilders+from+former+Eastern+Bloc+states&pg=PA1759 |title = CREATIVITY OF GOD IN THE HUMAN BODY "BODYBUILDING" |publisher = Abdullah F Shrit |isbn = 978-1-4840-1198-0 }}</ref>。

[[ソ連]]においては、スティーヴ・リーヴスが主演した映画『ヘラクレス』が公開され、リーヴスの肉体が映し出されると、多くの男性がそれに影響され、身体を鍛えるようになった。[[1973年]]の春、国家競技委員会(ソ連競技省)の会議にて、当局者の一人は「ボディビルだって?筋肉を鍛えて、鏡の前で構えをきめる?我がソ連国民は、そんなことをしてどうしようというのだ?鏡に映った自分の姿を見て褒め称えるつもりか?」と述べた。ソ連において、ボディビルは公式に禁止となった<ref>{{Cite web |url = https://www.rbth.com/history/329827-bodybuilding-outlawed-in-ussr |title = Why was bodybuilding outlawed in the USSR? (PHOTOS) |author = ЕКАТЕРИНА СИНЕЛЬЩИКОВА |date = 10 January 2019 |work = Russia Beyond |archive-url = https://web.archive.org/web/20190110140507/https://www.rbth.com/history/329827-bodybuilding-outlawed-in-ussr |archive-date = 10 January 2019 |access-date = 5 April 2023 }}</ref>。

=== オリンピック ===
国際オリンピック委員会は、ボディビルを「運動競技」とは見做していない。ボディビルダーたちによる薬物乱用の問題が基本的な焦点となっている<ref name = "Bodybuilding And The Olympics: An Ongoing Controversy" >{{Cite web |url = http://www.article99.com/recreation-and-sports/olympics/article.php?art=63758 |title = Bodybuilding And The Olympics: An Ongoing Controversy |author = Jean Littman |date = 14 November 2007 |website = article99.com |archive-url = https://web.archive.org/web/20071205174022/http://www.article99.com/recreation-and-sports/olympics/article.php?art=63758 |archive-date = 5 December 2007 |access-date = 2 April 2023 }}</ref>。主流のスポーツ界も、ボディビルを「運動競技」とは見做していない<ref name = "Men's Bodybuilding: A Short History" />。

== 部門 ==
[[File:Lukáš_Osladil.jpg|right|thumb|[[チェコ]]出身のボディビルダー、ルカーシュ・オスラギル (''Lukáš Osladil'')]]
[[File:Ronnie Coleman 8 x Mr Olympia - 2009 - 7.png|thumb|[[ロニー・コールマン]](2009年10月17日)]]
[[File:Nikki_Fuller.jpg|thumb|190px|構えをきめるニッキー・フラー (''Nikki Fuller'')]]
=== ''Professional'' ===
ボディビルの世界において、「''Professional''」という言葉は、ボディビル愛好家の立場で予選大会を勝ち抜き、ボディビル団体から「プロ・カード」(''Pro Card'') と呼ばれる厚紙を受け取ったボディビルダーを指す。これを獲得した者は、「''Professional''」(「本職、専門職」)という立場で、賞金が贈られる競技会に出場する権利を得られる。ただし、条件を満たせば自動的にこの地位が得られるわけではなく、自国内の連盟による推薦も必要となる<ref>{{Cite web |url = https://ifbb.com/ifbb-faq/ |title= IFBB FAQ |work = IFBB |archive-url = https://web.archive.org/web/20160518083712/https://ifbb.com/ifbb-faq/ |archive-date = 18 May 2016 |access-date = 2 April 2023 }}</ref>。出資者と契約を結べば、金銭面で援助も受けられる。

=== ''Natural'' ===
費用、健康問題、服用の違法性に対する懸念から、ボディビル団体の多くは、筋肉増強剤の服用を禁止とする「''Natural''」(「自然体」)と題した部門を設立している。アイヴァン・ブラスケス (''Ivan Blazquez'') は、「重要なのは、体調を整えることだ」と力説している<ref>{{Cite web |url = https://www.bodybuilding.com/fun/beginner_natural_bodybuilding_guide.htm |title = Beginner's Guide To Natural Bodybuilding Competition: Disseminating Misconception From Reality! |author = Ivan Blazquez |date = May 10, 2009 |website = bodybuilding.com |archive-url = https://web.archive.org/web/20090730204659/https://www.bodybuilding.com/fun/beginner_natural_bodybuilding_guide.htm |archive-date = 30 July 2009 |access-date = 2 April 2023 }}</ref>。

=== ''Men's Physique'' ===
[[2012年]]に初めて導入された<ref name = "The Four Types of Bodybuilding" >{{Cite web |url = https://www.tailoredtitans.com/blogs/tailored-titans/the-four-types-of-bodybuilding |title = The Four Types of Bodybuilding |website = tailoredtitans.com |archive-url = |archive-date = |access-date = 3 April 2023 }}</ref>。Physique(体格や身体付き)と言う単語の意味のとおり、体型、均整美(釣り合いの取れた美しさ)、筋肉質、身体の健康状態が審査の対象となる<ref name = "How Bodybuilding Is Judged, Different Divisions, And Scoring" />。出場選手たちは、舞台に上がったあとも、冷静さを維持しつつ、存在感を示し、自信に満ち溢れていなければならない。構えをきめ、様々な角度から筋肉を見せる<ref name = "How Bodybuilding Is Judged, Different Divisions, And Scoring" />。全体が均衡の取れた身体でなければならない<ref name = "The Four Types of Bodybuilding" /><ref name = "How Bodybuilding Is Judged, Different Divisions, And Scoring" />。

=== ''Classic Physique'' ===
[[2016年]]、全米体格委員会 (''The National Physique Committee, NPC'') と、国際ボディビル連盟は、新たな部門「''Classic Physique''」(「第一級体格」)を導入した。身長と体重に制限が課される。出場選手は、筋肉量や体格のみならず、「体調・健康状態、均整美・調和の取れた美しさ」も審査の対象となる<ref name = "How Bodybuilding Is Judged, Different Divisions, And Scoring" >{{Cite web |url = https://barbend.com/how-bodybuilding-is-judged/ |title = How Bodybuilding Is Judged, Different Divisions, And Scoring |author = Peter Marino |date = 26 November 2020 |publisher = Barbend |archive-url = https://web.archive.org/web/20201127180118/https://barbend.com/how-bodybuilding-is-judged/ |archive-date = 27 November 2020 |access-date = 3 April 2023 }}</ref>。

[[1990年代]]に現われた[[ドリアン・イエーツ|ドリアン・イェイツ]] (''Dorian Yates'') は、均整美を犠牲にして筋肉の大きさを追求した。このころから、細身と均整美よりも、体調と筋肉の質量が追求されやすくなった<ref name = "A BRIEF HISTORY OF THE CLASSIC PHYSIQUE" >{{Cite web |url = https://www.muscleandfitness.com/flexonline/training/brief-history-classic-physique/ |title = A BRIEF HISTORY OF THE CLASSIC PHYSIQUE - From Arnold to Zane, the world's greatest bodybuilders showcased the ultimate physique based on proportion, balance and symmetry. |author = M&F Editors |publisher = muscleandfitness.com |archive-url = |archive-date = |access-date = 3 April 2023 }}</ref>。アーノルド・シュワルツェネッガーは以下のように述べ、ボディビルの審査について苦言を呈している。

「審査の基準を変えないといけない。筋肉が多いだけで見た目が美しくない人間に報酬を与えるのは、もう止めるべきだ。スティーヴ・リーヴスが優勝したころの時代を見ればいい。彼の肉体を目にした者は、『こんな身体になりたい』『この男の美しさを見よ』と言ったが、現在の大会で優勝するような人たちは、そんなことは言わない。私が審査員に伝えたいのは、あらゆる要素を見る必要がある、ということなんだ。お腹が膨れている選手が多いんだよ…。昔はV字型の身体が美しい、とされていたが、今は違う。正当な人にこそ、報酬が与えられなければならない。然るべき人に報酬を与えれば、美しい肉体を手に入れるための鍛錬を、誰もが開始するだろう」<ref name = "A BRIEF HISTORY OF THE CLASSIC PHYSIQUE" />

全米体格委員会の会長、ジェイムス・B・マニオン (''James B. Manion'') は、「『第一級体格』は、選手たちが自分の体格を表現する新しい方法を見つけることによって常に進化を続けています。選手たちが競技目標を実現するための舞台をNPCが提供できることを嬉しく思っています」「『第一級体格』においては、身体の釣り合い、均整美、美しい輪郭、引き締まった腰のくびれが、重要な要素となります。すなわち、筋肉と健康状態の調和が取れた美的資質が重視されるのです」と述べている<ref name = "A BRIEF HISTORY OF THE CLASSIC PHYSIQUE" />。

=== 女性のボディビルダー ===
[[1960年代]]に起こった女性の社会運動は、健康革命や[[1972年]]に成立した法律『''Title IX''』(アメリカ合衆国の公的高等教育機関において、男女の機会均等を定めた連邦法)と相まって、筋肉質な体格を含めた、女性美の新たな選択肢につながった。女性のボディビルダーたちは、「筋肉は男性だけのものではない」という趣旨をその身体で示すことにより、伝統的な女性らしさの限界を変えることになった<ref>{{Cite book |url = https://doi.org/10.4324/9780203809457 |title = Critical Readings in Bodybuilding |last = Locks |first = Adam |date = 2013-03-01 |publisher = Routledge |doi = 10.4324/9780203809457 |isbn = 978-0-203-80945-7 }}</ref>。[[1978年]]、[[オハイオ州]][[カントン (オハイオ州)|カントン]]にて、アメリカ女子体格選手権 (''The U.S. Women's National Physique Championship'') が開催された。専門職の女性のボディビル向けとしては、これが史上初の大会と見做されている<ref>Todd, Jan, "Bodybuilding", St. James Encyclopedia of Pop Culture, Gale Group, 1999</ref>。[[1980年]]には、『{{仮リンク|ミズ・オリンピア|en|Ms. Olympia}}』(『''Ms. Olympia''』、当初は『''Miss Olympia''』)が開催された。

イーデス・コナー (''Edith Conner'') のように、75歳でボディビル大会に出場した女性もいる<ref>{{Cite book |url = https://archive.org/details/guinnessworldrec0000unse_r3e7/page/60 |title = Guinness World Records 2014 |last = Glenday |first = Craig |name-list-style = vanc |publisher = The Jim Pattison Group|year=2013|isbn = 978-1-908843-15-9 |page = [https://archive.org/details/guinnessworldrec0000unse_r3e7/page/60 60] }}</ref>。

[[スターリング大学]] (''The University of Stirling'') の研究者は、筋力鍛錬に従事する女性と面談し、その動機について調べている<ref>{{Cite thesis |author = Robyn Charlotte Spice |title = Strong is the new slim: a study of the body and gender amongst female free weights users |type = Masters |year = 2016 |publisher = University of Stirling |url = https://hdl.handle.net/1893/24355 |hdl = 1893/24355 |access-date = 8 June 2023 }}</ref>。

団体により女子カテゴリーの分類法や採用の仕方は大きく異なるが、概ね以下のようなカテゴリーに分かれる。
* ボディビル
* フィジーク
* ボディフィットネス/フィギュア
* ウェルネス
* ビキニ
* ビキニフィットネス
* フィットネス


== 競技会 ==
== 競技会 ==
=== ポージング ===
=== 構え ===
舞台に上がったボディビルダーたちは、「審美的に美しい」身体を提示しようとする<ref name = "Top 10 Most Impressive Bodybuilder Physiques of All Time" >{{Cite web |url = http://www.muscleprodigy.com/top-10-most-impressive-bodybuilder-physiques-of-all-time-arcl-1797.html |title = Top 10 Most Impressive Bodybuilder Physiques of All Time |publisher = Muscleprodigy |archive-url = https://web.archive.org/web/20130212011538/http://www.muscleprodigy.com/top-10-most-impressive-bodybuilder-physiques-of-all-time-arcl-1797.html |archive-date = 12 February 2013 |access-date = 3 April 2023 }}</ref><ref name = "Judging the 2008 Mr. Olympia" >{{Cite web |url = http://muscletime.com/news/judging-the-2008-mr-olympia-judges-provide-full-transparency-and-complete-explanation-of-results |title = Judging the 2008 Mr. Olympia: Judges Provide Full Transparency and Complete Explanation of Results |publisher = Muscletime |archive-url = https://web.archive.org/web/20100918131921/http://muscletime.com/news/judging-the-2008-mr-olympia-judges-provide-full-transparency-and-complete-explanation-of-results |archive-date = 18 September 2010 |access-date = 3 April 2023 }}</ref>。ボディビルダーたちは、舞台に立った際に、以下の構えをきめる<ref name = "Excellence In Execution: Perfecting The Pose" />。
* 競技会では、多くの参加者を選抜する為に、まず、規定ポーズで審査し、基本ポーズを通過した者だけが、自分で選曲した音楽で芸術性を込めたポージングするフリーポーズで下位入賞者から発表され、最後に優勝者が発表される。

* ''Quarter Turns''(四分の一回転)
* ''Front Double Biceps''(正面を向いて両腕の[[上腕二頭筋]]を見せる)
* ''Rear Double Biceps''(背中を見せて、上腕二頭筋を見せる)
* ''Front Lat Spread''(正面を向いた状態で、両手の拳を腰に当てて[[広背筋]]を広げながら呼吸し、胸部を膨らませる)
* ''Rear Lat Spread''(背中を見せた状態で、両手の拳を腰に当てて広背筋を広げながら呼吸し、胸部を膨らませる)
* ''Side Triceps''(片方の腕を下方向に向けて伸ばし、[[上腕三頭筋]]を曲げた状態で、審査員側に身体を向ける)
* ''Side Chest''(ゆっくり深呼吸しながら胸を張り、両脚を少し曲げ、見せたいほうの腕を反対の手で掴み、上腕二頭筋を曲げる)
* ''Front Abdominal & Thigh''([[大腿部]]と[[ふくらはぎ]]を少し曲げ、両手を首の後ろに回し、肩を下げる)

[[2012年]]に導入された部門『''Women’s Physique''』(『女性の体格』)は、筋肉の量よりも美的感受性や体型が重視される。必須の構えは以下の5つである<ref name = "How Bodybuilding Is Judged, Different Divisions, And Scoring" />。

* ''Front Double Biceps''(両手を開いた状態で、正面を向いて両腕の上腕二頭筋を見せる)
* ''Side Chest''(腕を伸ばした状態で、ゆっくり深呼吸しながら胸を張り、両脚を少し曲げ、見せたいほうの腕を反対の手で掴み、上腕二頭筋を曲げる)
* ''Back Double Biceps''(両手を開いた状態で、背中を見せて、上腕二頭筋を見せる)
* ''Side Triceps(''脚を伸ばした状態で、片方の腕を下方向に向けて伸ばし、上腕三頭筋を曲げた状態で、審査員側に身体を向ける)
* ''Abdominals & Thighs''(大腿部とふくらはぎを少し曲げ、両手を首の後ろに回し、肩を下げる)

デイヴィッド・ロブスンは、「ボディビルの競技会においては、構えが接戦の勝敗を左右する。構えの技術が拙劣であるゆえに、体格は優れていてもそれを十分に発揮できない人ほど、悪く見えてしまう」「敗れていったボディービルダーの多くは、筋肉を効果的に見せることができなかったのだ。審査員は、自分の目に映るものしか判断できないのだから」と書いた<ref name = "Excellence In Execution: Perfecting The Pose" >{{Cite web |url = https://www.bodybuilding.com/fun/drobson62.htm |title = Excellence In Execution: Perfecting The Pose |author = David Robson |date = 20 March 2005 |website = bodybuilding.com |archive-url = https://web.archive.org/web/20050330080655/https://www.bodybuilding.com/fun/drobson62.htm |archive-date = 30 March 2005 |access-date = 2 April 2023 }}</ref>。

国際ボディビル連盟が定めた指針に基づく形で、審査員は、筋肉の発達に関連する特定の基準、「均整美と自然な審美に関連する筋肉の大きさ、形状、密度、皮膚の表面の細長い窪み、鮮明度」に従い、決定を下すにあたって明確な根拠を示す必要がある。「体格の均衡、輪郭、全体的な『雰囲気』の質、上半身と下半身の発達の均衡、身体の左右の調和を重視する」場合、審査が主観的になることは無い。「膨満した腹部や歪んだ筋肉は、体格全体に悪影響を与える」、あるいは「調和と自然な美しさを犠牲にした大きさの筋肉は好ましくない」と定められていれば、主観の入る余地はほとんど無い<ref name = "Judging the 2008 Mr. Olympia" />。

=== 準備 ===
==== 筋肉肥大と体脂肪減少 ====
競技会が開催されない時期のボディビルダーは、筋肉量を増やす目的で、充分な量の[[タンパク質]]を摂取する。大会が開催される前の6 - 12週間前には、ボディビルダーは筋肉量を維持し、体脂肪を可能な限り減らそうとする<ref>{{Cite journal |vauthors = Lambert CP, Frank LL, Evans WJ |title = Macronutrient considerations for the sport of bodybuilding |journal = Sports Medicine |volume = 34 |issue = 5 |pages = 317–27 |date = March 2004 |s2cid = 17233384 |pmid = 15107010 |doi = 10.2165/00007256-200434050-00004 }}</ref>。

一方、ボディビルダーのように、減量と増量を何度も繰り返していると、体内で分泌される[[ホルモン]]や、長期的には、将来的な体重減少に負担をかけることになる<ref>{{Cite web |url = https://www.mensjournal.com/food-drink/reverse-dieting-how-go-cut-bulk-without-gaining-fat |title = Reverse Dieting: How to Go From Cut to Bulk Without Gaining Fat |author = Rachael Schultz |date = 31 August 2021 |work = Men's Journal |archive-url = https://web.archive.org/web/20200124222218/https://www.mensjournal.com/food-drink/reverse-dieting-how-go-cut-bulk-without-gaining-fat |archive-date = 24 January 2020 |access-date = 3 April 2023 }}</ref>。

==== ''Clean Bulking'' ====
『''Clean Bulking''』とは、「余分な脂肪を増やさないようにしつつ、筋肉と筋力を付けるために、管理された食事法」を指す<ref>{{Cite web |url = https://www.healthline.com/nutrition/clean-bulk |title = Clean Bulking: Overview, Guide, and Best Foods |author = Daniel Preiato, RD, CSCS |date = 8 October 2020 |website = Healthline |archive-url = https://web.archive.org/web/20201022011235/https://www.healthline.com/nutrition/clean-bulk |archive-date = 22 October 2020 |access-date = 3 April 2023 }}</ref>。カロリーだけでなく、「どんなものをいつ食べているか」も意識する必要がある<ref name = "The Clean Bulk: A New Approach To Adding Offseason Muscle" >{{Cite web |url = https://www.bodybuilding.com/content/the-clean-bulk-a-new-approach-to-adding-offseason-muscle.html |title = The Clean Bulk: A New Approach To Adding Offseason Muscle |date = Bill Geiger |website = bodybuilding.com |archive-url = https://web.archive.org/web/20181020053908/https://www.bodybuilding.com/content/the-clean-bulk-a-new-approach-to-adding-offseason-muscle.html |archive-date = 20 October 2018 |access-date = 3 April 2023 }}</ref>。これは、より長い時間をかけて、その人が求める体脂肪と筋肉量の割合を達成するための方法である。脂肪を減らし、筋肉量を多く保つため、摂取カロリーが多い日と少ない日をそれぞれ設け、増量と減量の均衡を維持する<ref>Giblin, Chris. "Clean Bulking: for Frustrated Hard-Gainers, Clean Bulking Is Attainable If You Focus Your Diet Accordingly with the Right Foods and Strategy." ''Joe Weider's Muscle & Fitness'', vol. 75, no. 8, 2014, p. 89.</ref>。

==== ''Dirty bulking'' ====
栄養摂取の指針を考慮せず、できるだけ沢山食べて摂取カロリーを増やす行為を指す<ref name = "Dirty Bulking: Why You Need To Know The Dirty Truth!" >{{Cite web |url = https://www.bodybuilding.com/content/dirty-bulking-why-you-need-to-know-the-dirty-truth.html |title = Dirty Bulking: Why You Need To Know The Dirty Truth! |date = 24 July 2018 |website = bodybuilding.com |archive-url = https://web.archive.org/web/20180815091029/https://www.bodybuilding.com/content/dirty-bulking-why-you-need-to-know-the-dirty-truth.html |archive-date = 15 August 2018 |access-date = 3 April 2023 }}</ref>。「禁止の食べ物は無い」が、この食事法では肥満になる<ref name = "The Clean Bulk: A New Approach To Adding Offseason Muscle" />。過剰なカロリーの摂取は体脂肪の急激な増加をまねき、[[高血圧]]、[[心血管疾患]]、[[糖尿病]]の原因となる<ref name = "The Clean Bulk: A New Approach To Adding Offseason Muscle" />。豊富なカロリーは成長に役立つが、それが精製された食物繊維を含まない炭水化物であれば[[血糖値]]と[[インスリン]]の濃度を急上昇させ、「インスリン感受性」(''Insulin Sensitivity'') 低下、ならびに「[[インスリン抵抗性]]」(''Insulin Resistance'') と呼ばれる状態を惹き起こす。「インスリン感受性」の低下は、糖尿病の原因となるだけでなく、栄養素を筋肉細胞に運ぶのが困難になり、これは筋力鍛錬の成果の低下の原因にもなる<ref name = "Dirty Bulking: Why You Need To Know The Dirty Truth!" />。クレッグ・スティーヴンスン (''Craig Stevenson'') は、「(体重が増えたあとに)余分な脂肪を減らす目的で取る食事は、深刻なカロリー不足に陥り、筋肉が減りやすい状態につながる。この食事法は、大きな代償が伴う」と述べた<ref name = "The Clean Bulk: A New Approach To Adding Offseason Muscle" />。

== 筋肉の発達 ==
筋肉の肥大を最大限にするにあたり、ボディビルダーは以下の事柄を心掛ける<ref>{{Cite web |url = https://www.mensjournal.com/health-fitness/9-things-every-athlete-needs-know-about-sleep-and-recovery/ |title = 9 things every athlete needs to know about sleep and recovery |author = Brittany Smith |date = 1 November 2021 |work = Men's Journal |archive-url = https://web.archive.org/web/20180710214129/https://www.mensjournal.com/health-fitness/9-things-every-athlete-needs-know-about-sleep-and-recovery/ |archive-date = 10 July 2018 |access-date = 3 April 2023 }}</ref>。


* 筋力鍛錬
* ステージに登場し、フロント・リラックス・ポーズFront relax pose(前向きの自然体と言う意味で力を入れているのでリラックスしていない)、ターン・ライト Turn right(右回り)で4分の1回転しサイド・リラックス・ポーズ(左)Side relax pose(left)、ターン・ライトで4分の1回転しリアー・リラックス・ポーズ Rear relax pose、ターン・ライトで4分の1回転しサイド・リラックス・ポーズ(右)Side relax pose(right)、で、ターン・ライト4分の1回転しでフロント・リラックス・ポーズに戻り、それぞれの選手の身体の状態を審査する。
* 鍛錬を終え、筋肉が損傷し、エネルギーの貯蔵が枯渇した際には、筋肉の再合成および再構築のために必要なものを摂取する
* 充分な休息と回復に専念する。これを怠ると、筋肉の成長と回復は低下し、疲れやすくなり、意欲も低下する
* 規定ポーズは、日本ボディビル連盟(JBBF)は以下の1〜7(女子と男女ペアは2と5のラット・スプレッドは含まれない)、日本ボディビルディング連盟(NBBF)は以下の1〜8。


=== 筋力鍛錬 ===
#フロント・ダブル・バイセップス(Front double biceps pose)直訳すると前面の2本の上腕二頭筋。両腕に力こぶをつくり前面から審査。
身体への負担が激しい筋力鍛錬を行うと、筋肉に微細な裂傷が生じる。これは「遅発性筋肉痛」(''Delayed Onset Muscle Soreness'') と呼ばれ、運動を終えたあとに生じる痛みの原因となる。この微細な裂傷を修復させることにより、筋肉の成長に繋がる。運動を終えて二日以内に発生するが、筋肉が鍛錬に馴致するにつれて、痛みは減少していく傾向にある<ref name = "pmid7371625" >{{Cite journal |vauthors = MacDougall JD, Elder GC, Sale DG, Moroz JR, Sutton JR |s2cid = 28377940 |title = Effects of strength training and immobilization on human muscle fibres |journal = European Journal of Applied Physiology and Occupational Physiology |volume = 43 |issue = 1 |pages = 25–34 |date = February 1980 |pmid = 7371625 |doi = 10.1007/BF00421352 }}</ref>。
#フロント・ラット・スプレッド(Front lat spread pose)直訳すると前面から後背筋の広がりで、身体前面から見て広がった後背筋を審査。
#サイド・チェスト(Side chest pose)直訳すると横の胸で、胸の厚みと共に腕の太さ、背、脚、身体の厚み、肩の大きさを審査。
#バック・ダブル・バイセップス(Back double biceps pose)直訳すると背面の2本の上腕二頭筋で、フロント・ダブル・バイセップスの後ろ向きだが、身体を背の方に反らし後背筋と脚を審査。
#バック・ラット・スプレッド(Back lat spread pose)直訳すると背面の広背筋を広げるで、広がった後背筋を背面から審査。
#サイド・トライセップス(Side triceps pose)直訳すると横の上腕三頭筋で、横から見た上腕三頭筋を含めた腕の太さと脚の厚みを審査。
#アブドミナル・アンド・サイ(Abdominals and thighs)直訳すると腹筋と脚で、脂肪がしぼられて割れている腹筋と脂肪のしぼられながら厚みのある脚を審査。
#モスト・マスキュラー(Most muscular pose)直訳すると最上の筋肉で、首の横の僧帽筋や肩の大きさ腕の太さを審査。


筋肉肥大は全てのボディビルダーの目標である。筋形質と筋原線維、この二種類の肥大を促進することにより、筋肉の成長と構築を完遂する。より大きな筋肉をもたらすのは筋形質の肥大である。筋形質の肥大は反復回数の増加で、筋原線維の肥大は重いものを持ち上げることでもたらされる。筋形質の肥大は筋肉を大きくするが、筋力は増えない。筋原線維の肥大は、筋力を向上させるために筋原線維が増加するが、筋肉量についてはわずかに増えるのみ。ボディビルダーが目的とするのは筋形質の肥大であるのに対し、筋原線維の肥大を目的とするのは運動競技選手や[[重量挙げ]]の選手である。筋形質が肥大すると、筋肉細胞が貯蔵[[グリコーゲン]] (''Glycogen'') を多く蓄えるようになる。ボディビルダーにとって、グリコーゲンの生産量を増やすことは重要であり、そのためにはより多くの[[炭水化物]]を食べる必要がある<ref name = "Weight Training Intensity or Volume for Bigger Muscles?" >{{Cite web |url = http://www.motleyhealth.com/strength/weight-training-intensity-or-volume-for-bigger-muscles |title = Weight Training Intensity or Volume for Bigger Muscles? |author = Jon Wade |date = 1 December 2009 |work = Motley Health |archive-url = https://archive.md/SykJ |archive-date = 6 September 2012 |access-date = 3 April 2023 }}</ref>。重量挙げの目標は最大重量の[[ベンチ・プレス]]を持ち上げられるようにすることであり、ボディビルの目標は筋肉を最大限に増やし、体脂肪を可能な限り減らすことを重視する<ref>{{Cite web |url = https://www.healthline.com/nutrition/powerlifting-vs-bodybuilding |title = Powerlifting vs. Bodybuilding: Differences, Pros, and Cons |author = Tyler Read |date = 11 February 2021 |website = Healthline |archive-url = https://web.archive.org/web/20210211232712/https://www.healthline.com/nutrition/powerlifting-vs-bodybuilding |archive-date = 11 February 2021 |access-date = 3 April 2023 }}</ref>。
* [[日焼け]]をするのは、白い肌より黒い肌の方が筋肉の陰影が出るためである。海外のコンテストで認められているカラー(肌に日焼け色を付けるもの)は、日本のコンテストでは公共施設の壁や床にカラーの色が付くので禁止されており、その代替策として日焼けが行われる<ref>2014年6月21日放送[[TBSテレビ|TBS]]「[[炎の体育会TV]]」</ref>。
* 筋肉の発達状態をコンテストするために、首から下の体毛は除毛・剃毛する。近年コンテスト用パンツ(ポージングトランクスと呼ばれる)が、[[ビキニ]]の形態で小さいので、ポージング中の動きでパンツから毛がはみ出すとかえって恥ずかしいので陰毛も剃毛する<ref>2015年7月20日23時58分テレビ東京放送「カメラ置いとくんで、一言どうぞ ~街中に、カメラ放置してみました~」マッチョの知られざる掟</ref>。


=== カテゴリー ===
=== 栄養摂取 ===
一般には、ボディビルダーは筋力鍛錬と筋肉量の増加に向けて、多くのカロリーを摂取する。炭水化物、タンパク質、脂肪の摂取比率は、ボディビルダーによって異なる<ref>{{Cite journal |vauthors = Manore MM, Thompson J, Russo M |title = Diet and exercise strategies of a world-class bodybuilder |journal = International Journal of Sport Nutrition |volume = 3 |issue = 1 |pages = 76–86 |date = March 1993 |s2cid = 38151979 |pmid = 8499940 |doi = 10.1123/ijsn.3.1.76 }}</ref>。
* 女性は、ボディビル、健康美、ボディフィットネス、フィットネスの4部門のカテゴリーが有る。
* 男性はボディビルのみのカテゴリーだが、都道府県別、関東、東日本、西日本、日本の地域範囲別大会、クラス別は体重の階級別、オーバーオールは無差別級、オープン大会は出場の制約が無い大会で東京オープンの場合は新人大会、年齢別ではマスターズ大会、21歳未満のジュニア大会、高校生大会、大学生大会が有る。


=== 応援の声の意味 ===
==== 炭水化物 ====
炭水化物を摂取すると消化・吸収された糖類が[[血糖値]]を上昇させ、その上昇した血糖値を下げるため[[膵臓]]から[[インスリン]] (''Insulin'') が分泌される。インスリンとは、膵臓の[[ランゲルハンス島]]にある[[β細胞]] (''Beta Cells'') から分泌される[[ペプチドホルモン|ペプチド・ホルモン]]である。細胞による[[ブドウ糖]]の取り込みを促進し、炭水化物、脂質、タンパク質の代謝を調節し、分裂を促進する効果を通じて細胞分裂と成長を促し、正常な血糖値を維持する<ref name = "Insulin and Insulin Resistance" >[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1204764/ Insulin and Insulin Resistance] Gisela Wilcox. Clin Biochem Rev. 2005 May; 26(2): 19–39. {{PMC|1204764}} {{PMID|16278749}}</ref>。
* 「キレテル」:筋肉の形がはっきり分かり、筋繊維のスジが見えている。
* 「デカイ」:筋肉が大きい事。
* 「バリバリ」:脂肪が無く皮一枚にまで鍛えている。


インスリンには、アナボリック・ステロイドと同じく、筋肉の成長と増幅を促進する[[同化作用]] (''Ababolism'') がある<ref>{{Cite journal |vauthors = Dimitriadis G, Mitrou P, Lambadiari V, Maratou E, Raptis SA |title = Insulin effects in muscle and adipose tissue |journal = Diabetes Research and Clinical Practice |volume = 93 Suppl 1 |issue = Suppl 1 |pages = S52-9 |date = August 2011 |pmid = 21864752 |doi = 10.1016/S0168-8227(11)70014-6 }}</ref><ref name="rich-piana-death-insulin-rumors-bodybuilding">{{Cite web |url = https://www.menshealth.com/fitness/a19537956/rich-piana-death-insulin-rumors-bodybuilding/ |title = Rich Piana's Mysterious Death Raises Questions About Insulin and Bodybuilding |author = REEGAN VON WILDENRADT |date = 11 October 2017 |website = Men's Health |archive-url = https://web.archive.org/web/20200803123921/https://www.menshealth.com/fitness/a19537956/rich-piana-death-insulin-rumors-bodybuilding/ |archive-date = 3 August 2020 |access-date = 5 April 2023 }}</ref>。インスリンは筋肉細胞におけるタンパク質の分解を抑制・妨害し、それによってタンパク質の同化作用を促進する<ref>[https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7560063/ Insulin and insulin-like growth factor-I enhance human skeletal muscle protein anabolism during hyperaminoacidemia by different mechanisms] D A Fryburg, L A Jahn, S A Hill, D M Oliveras, E J Barrett {{PMID|7560063}} {{PMC|185808}} {{doi|10.1172/JCI118217}}</ref>。インスリンの存在無くしてタンパク質の合成の促進は不可能であり、インスリンの分泌を刺激する炭水化物とタンパク質を摂取しない限り、筋肉量を増やすことは不可能である<ref>{{Cite journal |vauthors = Miranda L, Horman S, De Potter I, Hue L, Jensen J, Rider MH |title = Effects of contraction and insulin on protein synthesis, AMP-activated protein kinase and phosphorylation state of translation factors in rat skeletal muscle |journal = Pflügers Archiv |volume = 455 |issue = 6 |pages = 1129–40 |date = March 2008 |s2cid = 6649224 |pmid = 17957382 |doi = 10.1007/s00424-007-0368-2 }}</ref>。ボディビルダーがタンパク質と炭水化物を大量に摂取するのはこれが理由である。
=== 日本での国際大会開催 ===
* [[1982年]]10月東京でアジアボディビルディング選手権男子開催。
* [[1986年]]9月東京でミスター・ユニバース(世界アマチュア・ボディビル選手権[[:en:World Amateur Bodybuilding Championships|World Amateur Bodybuilding Championships]])開催。
* [[1987年]]5月東京で第1回国際女子アマチュア・ボディビル招待選手権開催。(以後東京で[[1988年]]、[[1989年]]、[[1990年]]開催。)
* [[1989年]]10月鳥取でアジアボディビルディング選手権男子、アジア・ミックスド・ペアボディビル選手権開催。
* [[1992年]]9月東京でアジア女子ボディビル選手権、アジア・プロ・アマクラシックボディビル選手権、アジア・ミックスド・ペアボディビル選手権開催。
* [[1997年]]9月東京でアジア女子ボディビル選手権、アジア・ミックスド・ペアボディビル選手権開催。
* [[2001年]][[秋田県]]で第六回[[ワールドゲームズ2001]]が開催され、公式競技としてボディビルが競技された。


[[GI値]] (''Glycemic Index'') が低い炭水化物や、消化に時間が掛かる炭水化物を食べる場合、[[デンプン]]を多く含むものよりも安定した形でエネルギー源にできる。しかし、運動前、運動中、運動を終えた直後に、消化の早い炭水化物(純粋なブドウ糖か、マルトデキストリン)を摂取するボディビルダーもいる。これは、筋肉内に貯蔵グリコーゲンを補充し、筋肉細胞においてタンパク質の合成を刺激する意図がある<ref>{{Cite web |url = http://web.indstate.edu/thcme/mwking/gluconeogenesis.html |title = Substrates for Gluconeogenesis |last = King |first = Michael W. |name-list-style = vanc |publisher = IU School of Medicine |archive-url = https://web.archive.org/web/20000621005841/http://web.indstate.edu/thcme/mwking/gluconeogenesis.html |archive-date = 21 June 2000 |access-date = 4 April 2023 }}</ref>。
== ボディビルと薬物 ==
{{See also|ナチュラル・ボディビル|ドーピング}}


グリコーゲン1 gにつき、脱水状態の筋肉内に最低でも3 - 4 gの水分が蓄えられる。炭水化物の摂取による負荷に水分補給が組み合わされると、最大で17 gとなる。競技会に向けて、ボディビルダーが炭水化物の摂取量を増やすと、競技会の当日に、上腕二頭筋の厚さが増加したことが確認された<ref>[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7052702/ Nutritional Recommendations for Physique Athletes] Brandon M Roberts, PhD, CSCS, Eric R Helms, Eric T Trexler, and Peter J Fitschen {{PMID|32148575}} {{PMC|7052702}} {{doi|10.2478/hukin-2019-0096}}</ref>。
ボディビルディングと[[薬物]]とのかかわりは他の[[スポーツ]]よりも深く、1960年代に薬物の洗礼を受けたと言われる。その結果として、「ボディビルダーは誰も彼もが薬物を使用([[ドーピング]])している」という誤ったイメージをもつ人も多い。


==== タンパク質 ====
現代では、ボディビルダーの「二極分化」が進んでいると言われる{{要出典|date=2009年12月}}。無制限に薬物を使用し、異常なまでに発達した筋肉で人々の注目を集めるタイプのボディビルダー(例:[[ミスターオリンピア|IFBBミスターオリンピア]])が存在する一方で、一切薬物を使用すること無く、自然な[[サプリメント]]摂取と地道なトレーニングを積み重ねるタイプのボディビルダーが存在する。後者は「[[ナチュラルビルダー]]」とも呼ばれる。
[[File:Protein_shake.jpg|thumb|粉末状の[[プロテイン]]を[[牛乳]]と混ぜて作ったもの(写真右)]]
ボディビルダーは、体組成の維持および改善のため、総摂取カロリーの25 - 30%をタンパク質から取ることが推奨されている<ref name = "LambertCP" >{{Cite journal |vauthors = Lambert CP, Frank LL, Evans WJ |title = Macronutrient considerations for the sport of bodybuilding |journal = Sports Medicine |volume = 34 |issue = 5 |pages = 317–27 |year = 2004 |s2cid = 17233384 |pmid = 15107010 |doi = 10.2165/00007256-200434050-00004 }}</ref>。肉・魚・卵・乳製品といった動物性食品や、ナッツ、種子、豆類はタンパク質を豊富に含む。タンパク質を摂取することにより、筋肉の成長と筋力鍛錬後の回復の際にアミノ酸が供給される<ref name = "Nutrition for Muscle Mass" >{{Cite web |url = https://www.americanfootballmonthly.com/Subaccess/articles.php?article_id=4068&output=article |title = Nutrition for Muscle Mass |author = Rob Skinner |work = American Football Monthly |access-date = 2023-11-04 }}</ref>。


[[カゼイン]]や[[ホエイ|ウェイ]]は牛乳に多く含まれ、市販の[[プロテイン]]に混ぜられることも多い。また、ウェイはインスリンの分泌を強力に刺激し、カゼインを摂取したときの2倍の量のインスリンが分泌される<ref>{{Cite journal |vauthors = Burd NA, Yang Y, Moore DR, Tang JE, Tarnopolsky MA, Phillips SM |title = Greater stimulation of myofibrillar protein synthesis with ingestion of whey protein isolate v. micellar casein at rest and after resistance exercise in elderly men |journal = The British Journal of Nutrition |volume = 108 |issue = 6 |pages = 958–62 |date = September 2012 |pmid = 22289570 |doi = 10.1017/S0007114511006271 |doi-access = free }}</ref>。
通常、この両者は同じ[[コンテスト]]に出場することは無く、各々に専用のコンテストが存在する。ナチュラルビルダーが出場するコンテストにおいては、一般的に厳重な[[ドーピング#ドーピング検査|薬物検査]]が実施され、違反者は即失格となる(ナチュラルである事を標榜していても、ローカルなコンテストでは、予算の関係で検査ができない事もある)。中には、薬物を使用していながら、使用していないと偽ったり検査で出にくくしてナチュラルビルダーのコンテスト(筋肉の大きさだけを問うのであれば、ナチュラルの方がレベルが低い)に出場する者もいるため、検査項目に[[ポリグラフ]](嘘発見器)を使用しているコンテストもある。


大豆には植物性のエストロゲン (''Phytoestrogen'') が含まれるが、これの濃度が高い場合、{{ill|ホルモン受容体|en|Hormone receptor}}の部位にて、男性の体内で分泌される[[エストロゲン]] (''Estrogen'') と競合し、エストロゲンの作用は阻害される。過剰な量のエストロゲンは排泄され、[[脳下垂体]]の機能は阻害される<ref name = "Estrogens, Testosterone & Phytoestrogen" >{{Cite web |url = http://www.maxmuscle.com/index.cfm?fa=article&doc_id=116&subcat=science |title = Estrogens, Testosterone & Phytoestrogens |last = Falcon |first = Mike |name-list-style = vanc |archive-url = https://web.archive.org/web/20061025023850/http://www.maxmuscle.com/index.cfm?fa=article&doc_id=116&subcat=science |archive-date = October 25, 2006 |website = maxmuscle.com |access-date = 3 april 2023 }}</ref><ref name = "TestosteroneSyndrome" >{{Cite book |first1 = Eugene |last1 = Shippen |first2 = William |last2 = Fryer |name-list-style = vanc |title = The testosterone syndrome: the critical factor for energy, health, and sexuality: reversing the male menopause|publisher=M. Evans |location = New York |year = 1998 |isbn = 978-0-87131-829-9 |url-access = registration |url = https://archive.org/details/testosteronesynd00euge }}</ref>。男性のエストロゲン受容体の数は、女性のそれに比べると少ない<ref name = "Estrogens, Testosterone & Phytoestrogen" />。
薬物使用ビルダーが、薬物大量摂取による後遺症で健康を損ねたり、あるいはそれが原因で死亡する事が問題となり、それで公然の秘密とされていたボディビルの薬物汚染に批判が集まり、検査が実施されるに至った。しかし、コンテストにおけるボディビルダーを「健康美」の対象としてではなく、「見世物」と考える観客も多く、そういった人々は怪物のような肉体を見ることのみを望み、ボディビルダーの健康には関心が無かった。入賞者に[[賞金]]の出る「プロボディビルダー」の大会では、[[興行]]のためにそういった観客の「需要」を無視する事ができず、薬物検査をせず、暗に薬物使用を認めることになった。一度は薬物検査を実施しておきながら、その結果コンテストが不人気になってしまい、慌てて薬物検査を取りやめたプロの大会も存在する{{要出典|date=2011年9月}}。


ボディビルダーは炭水化物とタンパク質を沢山摂取するが、前述のとおり、この二つはインスリンの分泌を刺激するためである。なお、タンパク質はインスリンだけでなく、[[グルカゴン]] (''Glucagon'') の分泌も刺激する<ref name = "The Carbohydrate-Insulin Model of Obesity">[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6082688/ The Carbohydrate-Insulin Model of Obesity: Beyond ‘Calories In, Calories Out’] David S Ludwig, MD, PhD and Cara B Ebbeling, PhD. JAMA Intern Med. Author manuscript; available in PMC 2019 Aug 1. Published in final edited form as: JAMA Intern Med. 2018 Aug 1; 178(8): 1098-1103, {{doi|10.1001/jamainternmed.2018.2933}}.</ref>。グルカゴンは、膵臓のランゲルハンス島にある[[α細胞]] (''Alpha Cells'') から分泌されるペプチド・ホルモンである<ref name = "Glucagon Physiology" >[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK279127/ Glucagon Physiology] Iben Rix, Christina Nexøe-Larsen, Natasha C Bergmann, Asger Lund, and Filip K Knop</ref>。グルカゴンの分泌を最も強力に刺激する要因は[[低血糖]]である。グルカゴンには、[[肝臓]]における[[ブドウ糖]]の産生を刺激し、それによって正常な[[血糖値]]を維持しようとする作用がある。グルカゴンは、肝臓における脂質とアミノ酸の代謝にも関係し、安静時のエネルギー消費量を増加させる作用がある<ref name = "Glucagon Physiology" />。グルカゴンは、肝臓のブドウ糖産生を刺激することにより、血糖値の恒常性を維持する機能があり、これは人体において重要な役割を果たす<ref name = "Glucagon Physiology" />。インスリンの作用の一つであるブドウ糖の蓄積とは対照的に、グルカゴンはブドウ糖を動員するホルモンとして作用する。これらの対極的な作用に従い、高血糖になり、膵臓の[[β細胞]]からインスリンが分泌されると、グルカゴンの分泌は阻害されるが、低血糖状態になると、グルカゴンの分泌が刺激される。正常な血糖値の維持機能は、インスリンとグルカゴンの分泌の均衡によって決まる<ref name = "Glucagon Physiology" />。
かつては、「薬物使用可=プロのコンテスト」「薬物使用不可=アマチュアのコンテスト」という図式があったが{{要出典|date=2009年12月}}、薬物検査を欺く技術が発達したため、現在ではアマチュアコンテスト出場者であってもナチュラルビルダーとは言えず、単に「プロライセンスを持たない者のコンテスト」という意味になりつつある{{要出典|date=2009年12月}}。また、最近の健康志向の風潮からナチュラルビルダーに対する評価が上がり、「プロのナチュラルビルダー」というカテゴリーも存在するようになった。


==== 食事の回数 ====
薬物使用(ドーピング)をどれほどまで許容すべきか、という論争は、ボディビルディングにおいては、多少は許容すべきという意見があれば、一切廃すべきという意見もある{{要出典|date=2009年12月}}。
「食事誘発性熱産生」(''Diet Induced Thermogenesis'', 食べ物の摂取に伴う身体のエネルギー消費量の変化について示したもの)については、一日に複数回の食事を取っても、身体のエネルギー消費に影響は見られなかった<ref name = "BellisleF" >{{Cite journal |vauthors = Bellisle F, McDevitt R, Prentice AM | title = Meal frequency and energy balance |journal = The British Journal of Nutrition |volume = 77 Suppl 1 |issue = Suppl 1 |pages = S57-70 |date = April 1997 |pmid = 9155494 |doi = 10.1079/BJN19970104 |doi-access = free }}</ref><ref name = "TaylorMA" >{{Cite journal |vauthors = Taylor MA, Garrow JS |title = Compared with nibbling, neither gorging nor a morning fast affect short-term energy balance in obese patients in a chamber calorimeter |journal = International Journal of Obesity and Related Metabolic Disorders |volume = 25 |issue = 4 |pages = 519–28 |date = April 2001 |s2cid = 19686244 |pmid = 11319656 |doi = 10.1038/sj.ijo.0801572 |doi-access = free }}</ref><ref name = "pmid18053311" >{{Cite journal |vauthors = Smeets AJ, Westerterp-Plantenga MS |title = Acute effects on metabolism and appetite profile of one meal difference in the lower range of meal frequency |journal = The British Journal of Nutrition |volume = 99 |issue = 6 |pages = 1316–21 |date = June 2008 |pmid = 18053311 |doi = 10.1017/S0007114507877646 |doi-access = free }}</ref>。「一日二食」と「一日七食」を比較しても、身体のエネルギー消費量や、食事誘発性熱産生には、有意な変化は観察されなかった<ref>{{Cite journal |vauthors = Verboeket-van de Venne WP, Westerterp KR, Kester AD |title = Effect of the pattern of food intake on human energy metabolism |journal = The British Journal of Nutrition |volume = 70 |issue = 1 |pages = 103–15 |date = July 1993 |pmid = 8399092 |doi = 10.1079/BJN19930108 |doi-access = free }}</ref>。


==== 栄養補助食品 ====
ドーピングは筋肉の発達を促すが、かつてオリンピアで"伝説"とまで称された[[セルジオ・オリバ]]は薬物により得られる効果に否定的だった。彼は生涯で一度ステロイドを使用し、確かに本人が考えていた以上の筋肉を得られたものの「筋肉が付きすぎる(美しくない)」という理由で使用をやめたと語っている。
筋肉の構築と体脂肪の減少において、栄養の摂取は重要な役割を果たす。ボディビルダーはさまざまな栄養補助食品を摂取することもある<ref>{{Cite journal |vauthors = Philen RM, Ortiz DI, Auerbach SB, Falk H |title = Survey of advertising for nutritional supplements in health and bodybuilding magazines |journal = JAMA |volume = 268 |issue = 8 |pages = 1008–11 |date = August 1992 |pmid = 1501305 |doi = 10.1001/jama.268.8.1008 }}</ref>。筋肉量を増やし、脂肪減少を促進し、関節の健康状態を改善し、[[男性ホルモン]]の一種である[[テストステロン]] (''Testosterone'') の産生量を増やし、鍛錬の質を強化し、栄養不足の防止を目的に、さまざまな製品が出ている。


=== 薬物使用者の告白 ===
=== 薬物 ===
アナボリック・ステロイドや、ホルモン前駆体を服用することで筋肉肥大を目指すボディビルダーもいるが、アナボリック・ステロイドの服用の副作用として、肝臓の障害([[肝毒性]])、乳房の肥大、痤瘡、男性型脱毛症の早期発症、テストステロンの産生量の低下、精巣(睾丸)の萎縮が惹き起こされる可能性が指摘されている<ref>{{Cite journal |vauthors = Schroeder ET, Vallejo AF, Zheng L, Stewart Y, Flores C, Nakao S, Martinez C, Sattler FR |display-authors = 6 |title = Six-week improvements in muscle mass and strength during androgen therapy in older men |journal = The Journals of Gerontology. Series A, Biological Sciences and Medical Sciences |volume = 60 |issue = 12 |pages = 1586–92 |date = December 2005 |pmid = 16424293 |doi = 10.1093/gerona/60.12.1586 |doi-access = free }}</ref><ref>{{Cite journal |vauthors = Grunfeld C, Kotler DP, Dobs A, Glesby M, Bhasin S |title = Oxandrolone in the treatment of HIV-associated weight loss in men: a randomized, double-blind, placebo-controlled study |journal = Journal of Acquired Immune Deficiency Syndromes |volume = 41 |issue = 3 |pages = 304–14 |date = March 2006 |s2cid = 25911263 |pmid = 16540931 |doi = 10.1097/01.qai.0000197546.56131.40 }}</ref><ref>{{Cite journal |vauthors = Giorgi A, Weatherby RP, Murphy PW |title = Muscular strength, body composition and health responses to the use of testosterone enanthate: a double blind study |journal = Journal of Science and Medicine in Sport |volume = 2 |issue = 4 |pages = 341–55 |date = December 1999 |pmid = 10710012 |doi = 10.1016/S1440-2440(99)80007-3 }}</ref>。ヒト成長ホルモン (''Human Growth Hormone, HGH'') は、「女性的な容姿を維持しつつ」、大きな筋肉を付ける目的で、女性のボディビルダーが服用する<ref>{{Cite book |url = https://books.google.com/books?id=9juCAgAAQBAJ|publisher=Routledge |title = Bodybuilding, Drugs and Risk |year = 2002 |author = Lee Monaghan |isbn = 9781134588527 |pages = 145 }}</ref>。高齢者においては、加齢に伴う生物学的な老化により、[[成長ホルモン]]やテストステロンの濃度が低下し、筋肉の発達に不利な代謝変化が多く生じるため、若者に比べて筋肉の成長が難しくなる。[[臨床研究]]によれば、ヒト成長ホルモン欠乏症が認められる成人に対する、少量のHGHを投与した治療は、筋肉量の増加、体脂肪の減少、[[骨密度]]と筋力の増加、心血管媒介変数の改善、重大な副作用を伴うことなく、生活の質に影響を与えることにより、身体組成が変化することが示された<ref>{{Cite journal |vauthors = Alexopoulou O, Abs R, Maiter D |title = Treatment of adult growth hormone deficiency: who, why and how? A review |journal = Acta Clinica Belgica |volume = 65 |issue = 1 |pages = 13–22 |year = 2010 |s2cid = 24874132 |pmid = 20373593 |doi = 10.1179/acb.2010.002 }}</ref><ref>{{Cite journal |vauthors = Ahmad AM, Hopkins MT, Thomas J, Ibrahim H, Fraser WD, Vora JP |title = Body composition and quality of life in adults with growth hormone deficiency; effects of low-dose growth hormone replacement |journal = Clinical Endocrinology |volume = 54 | issue = 6 |pages = 709–17 |date = June 2001 |s2cid = 12681649 |pmid = 11422104 |doi = 10.1046/j.1365-2265.2001.01275.x }}</ref><ref name = "pmid10971102" >{{Cite journal |vauthors = Savine R, Sönksen P |title = Growth hormone - hormone replacement for the somatopause? |journal = Hormone Research |volume = 53 Suppl 3 |issue = Suppl 3 |pages = 37–41 |year = 2000 |s2cid = 30263334 |pmid = 10971102 |doi = 10.1159/000023531 }}</ref>。[[齧歯類]]においては、金属結合性タンパク質遺伝子 (''Metallothionein Gene'') の発現を単離すると、「AKT信号伝達経路」が活性化し、筋管体積の増大、IIb型繊維 (''Type IIb Fiber'') の肥大、ひいては筋力の向上が観察された<ref>{{Cite journal |vauthors = Summermatter S, Bouzan A, Pierrel E, Melly S, Stauffer D, Gutzwiller S, Nolin E, Dornelas C, Fryer C, Leighton-Davies J, Glass DJ, Fournier B |display-authors = 6 |title = Blockade of Metallothioneins 1 and 2 Increases Skeletal Muscle Mass and Strength |journal = Molecular and Cellular Biology |volume = 37 |issue = 5 |date = March 2017 |pmid = 27956698 |pmc = 5311239 |doi = 10.1128/MCB.00305-16 }}</ref>。
{{出典の明記|section=1|date=2015年3月}}
IFBBに出場経験のあるビルダーが告白した内容は衝撃的であった。山盛りの成長ホルモンに山盛りのステロイド。信じられないほどたくさんの経口薬と注射薬を毎日使用しているとのことである。下記は{{誰範囲|date=2015年3月|あるアマチュアボディビルダー}}の使用例である。{{誰範囲|date=2015年3月|このボディビルダー}}はプロの世界では大成することはなく引退したのだが、'''『もしかすると、プロの世界ではこの程度の薬物ではどうにもならなかったのかもしれない。』'''と発言している。'''2006年のIFBBオリンピア出場選手は薬物に年間平均10万ドルの支出であるとのこと。'''


==== 筋肉細胞への油の注入 ====
; オフシーズン
ボディビルダーの中には、筋肉を膨張させる目的で、筋肉細胞に[[シンソール]]と呼ばれる合成油脂を注射して取り込む者もいる<ref name = "PMID19580174" >{{Cite journal |vauthors = Pupka A, Sikora J, Mauricz J, Cios D, Płonek T |title = Stosowanie Syntholu w kulturystyce |language = pl | journal = Polimery W Medycynie |volume = 39 |issue = 1 |pages = 63–5 |year = 2009 |pmid = 19580174 |url = http://www.polimery.umed.wroc.pl/en/article/2009/39/1/63/ |trans-title = The usage of the Synthol in the body building }}</ref>。シンソールを上腕二頭筋に注射した場合、一回の注射で約2.5 cm膨らませる作用がある<ref name = "Synthol: The New Vice of Bodybuilding" >{{Cite web |url = http://thesportdigest.com/archive/article/synthol-new-vice-bodybuilding.html |title = Synthol: The New Vice of Bodybuilding |work = United States Sports Academy America's Sports University® |website = thesportdigest.com |archive-url = https://web.archive.org/web/20190818164655/http://thesportdigest.com/archive/article/synthol-new-vice-bodybuilding.html |archive-date = 18 August 2019 |access-date = 4 April 2023 }}</ref>。[[1990年代]]、ドイツ人のクリス・クラーク (''Chris Clark'') が、この合成油脂 (''Synthol'') を開発した<ref name = "Synthol: The New Vice of Bodybuilding" /><ref name = "Like Implants for the Arms: Synthol Lures Bodybuilders: Risky Injections Mean Massive Muscles for Users" />。
:* デポテストステロン 600mg 1日おき
:* プロホルモン 300mg 1日おき
:* ダイアナボール 10 毎日
:* クレンブテロール 10~20 毎日
:* メリージェーン(マスキング物質:薬物使用の痕跡を体内から消す作用があるといわれる薬物) 30g 毎週


[[アメリカ合衆国]]においては、[[アクリル樹脂]]は『''Artefill''』というブランド名で[[アメリカ食品医薬品局|FDA]]から法的認可を受けているが、[[大臀筋]]を強化する目的での摂取は厳禁となっている<ref>{{Cite web |url = http://internationalsurgery.com/pmma-injections-and-bodybuilding/ |title = PMMA Injections & Bodybuilding |date = 19 January 2017 |website = internationalsurgery.com |archive-url = https://web.archive.org/web/20170521094728/http://internationalsurgery.com/pmma-injections-and-bodybuilding/ |archive-date = 21 May 2017 |access-date = 4 April 2023 }}</ref>。
; コンテスト6週間前
:* パラボラン+プリモデポ 1日おき
:* プロホルモン 3cc 1日おき
:* ハロテスティン 50mg
:* ファスティン 毎日
:* クレンブテロール 20~25 毎日
:* ペルコダン 必要に応じて
:* メリージェーン 30g 毎週


ボディビルにおいては外見が重要視される。筋肉の発達や性能を高めるよりも、見た目を重視する目的から、薬物に手を出す者もいる<ref name = "Which Body Building Substances Are Legal (and Illegal) in the US?" />。
=== 薬物の副作用 ===
* 内臓肥大 - 特にここ10年内は、薬物の影響で内臓肥大が進行し、腹部が極端に隆起肥大しているトップビルダーも珍しくなくなった。あまりにも酷いので[[国際ボディビル連盟|IFBB]]は内臓肥大による腹部の隆起を減点対象とする採点法に変更した。
* 頭髪の脱毛(個人差がある)
* 体毛が濃くなる
* 変声(低音化)
* [[女性化乳房]]
* [[睾丸]]の縮小、異化
* 動脈硬化
* [[高血圧]]
* ある種の[[癌]](アナボリックステロイドと白血病の因果関係は事例では相当数に上る)
* 心臓疾患(心不全)


競技会に出場するボディビルダーは、筋肉の大きさや不釣り合いな形状を均一なものにするため、筋肉にシンソールを注射していた。やがて、より筋骨隆々の肉体に見せる目的で、シンソールを腕に大量に注入するボディビルダーが現われるようになった。この行為は、「''fluffing''」(「膨張」)と呼ばれる<ref name = "PMID19580174" /><ref name = "Like Implants for the Arms: Synthol Lures Bodybuilders: Risky Injections Mean Massive Muscles for Users" >{{Cite web |url = https://abcnews.go.com/Health/Fitness/story?id=3179969&page=1 |title = Like Implants for the Arms: Synthol Lures Bodybuilders: Risky Injections Mean Massive Muscles for Users |last = Childs |first = Dan |name-list-style = vanc |date = May 16, 2007 |work = [[ABCニュース (アメリカ)|ABC News]] |archive-url = https://web.archive.org/web/20070529120413/https://abcnews.go.com/Health/Fitness/story?id=3179969&page=1 |archive-date = 29 May 2007 |access-date = 4 April 2023 }}</ref>。世界重量挙げ連盟会長、マウロ・ディ・パスクワレ (''Mauro Di Pasquale'') は、筋肉に油を注入する行為について、「筋肉を大きく見せる作用こそあるが、実際には筋肉の弱体化に繋がる」と述べた<ref name = "Synthol: The New Vice of Bodybuilding" />。ステロイドが実際の筋肉の大きさや質量を増やす作用があるのに対し、シンソールの注入は、筋肉を大きく見せる「だけ」である<ref name = "Synthol: The New Vice of Bodybuilding" /><ref name = "Like Implants for the Arms: Synthol Lures Bodybuilders: Risky Injections Mean Massive Muscles for Users" />。あくまで外見重視を目的とし、実際の筋肉の強さには貢献しない<ref name = "64 PICTURES OF THE GROSSEST SYNTHOL FREAKS OF ALL TIME" >{{Cite web |url = http://proteinfart.com/64-of-the-grossest-synthol-freaks-you-never-wanted-to-see/ |title = 64 PICTURES OF THE GROSSEST SYNTHOL FREAKS OF ALL TIME |website = ProteinFart.com |archive-url = https://web.archive.org/web/20150402191504/http://proteinfart.com/64-of-the-grossest-synthol-freaks-you-never-wanted-to-see/ |archive-date = 2 April 2015 |access-date = 4 April 2023 }}</ref><ref name = "Like Implants for the Arms: Synthol Lures Bodybuilders: Risky Injections Mean Massive Muscles for Users" />。
=== 女性ボディビルダーの身に起きた変化 ===
「[[New York Post]]」2013年10月23日配信のニュースではステロイド使用が女性の男性化をもたらした様子を物語る報道が為された。概して「女性ボディビルダーのキャンディス・アームストロングは仲間のすすめでトレンボロン(ステロイド剤)の服用を開始したがすぐに1日の投与量を超えて依存症となってしまい、以後2年間使用を続けた。その結果としてまずはニキビやヒゲに悩まされ、そして骨格が大きくなり男のような歩き方に変わり、最終的には彼女の陰核が長さ1インチの陰茎に成長してしまった。」という内容の事例が扱われた。<ref>[http://nypost.com/2013/10/23/female-bodybuilder-steroids-gave-me-a-penis/ Female bodybuilder: Steroids gave me a penis] NEW YORK POST October 23, 2013 | 4:37pm</ref>


シンソールの内訳は、85%が油で、7.5%が[[リドカイン]](''Lidocaine'', 局所麻酔薬として使われる)、残りの7.5%は[[アルコール]]である<ref name = "PMID19580174" />。規制された薬物ではなく、[[インターネット]]で購入も可能<ref name = "popeye" >{{Cite web |url = http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/health/article1782095.ece |title = Bodybuilders puff up with 'Popeye the Sailorman' oil jab |last = Foggo |first = Daniel |name-list-style = vanc |date = May 13, 2007 |work = [[The Times]] |archive-url = https://web.archive.org/web/20081201061804/http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/health/article1782095.ece |archive-date = 1 December 2008 |access-date = 4 April 2023 }}</ref>。
=== 著名ボディビルダーの薬物使用による死亡、重症例===
{{出典の明記|section=1|date=2015年3月}}
* ポール・デマヨ(IFBBプロボディビルダー、死亡、37歳)
* マイケル・フランソワ(IFBBプロボディビルダー、消化器疾患により大腸全摘出)
* ビンス・カマフォード(IFBBプロボディビルダー、心不全で死亡、52歳)
* ナッサー・エル・ソンバティ(IFBBプロボディビルダー、2位が最高位、死亡、48歳)
* リー・プリースト(IFBBプロボディビルダー、高血圧(230/150)で入院)
* ドン・ヤングブラッド(IFBBプロボディビルダー、心不全で死亡、51歳)
* [[グレッグ・コバックス]](IFBBプロボディビルダー、心不全で死亡、44歳)
* アンドレアス・ミュンツァー(IFBBプロボディビルダー、腹部大動脈破裂により死亡。30歳)
* モハメド・ベナジザ(IFBBプロボディビルダー、直接の原因は利尿剤、心不全でコンテスト直後死亡28歳)
* デニス・ニューマン(IFBBプロボディビルダー、白血病)
* [[マッスル北村]](腹部内臓肥大、過度の減量の影響と思われる心不全により死亡、41歳)
* [[フレックス・ウィラー]](IFBBプロボディビルダー、腎臓疾患による腎臓摘出移植手術。過去の薬物使用過多が原因でホルモンが体内生成されず、外部に頼らざるを得ない状況)
* [[マイク・メンツァー ]]/ レイ・メンツァー(兄弟)(IFBBプロボディビルダー、49歳、47歳でそれぞれ死亡)
* ドン・ロング(IFBBプロボディビルダー、内臓疾患により引退)
* [[マイク・マタラゾ]](IFBBプロボディビルダー、心不全により死亡。48歳)
* [[クレイグ・タイトス]](IFBBプロボディビルダー、腹部内臓肥大、ステロイド使用による攻撃性増大による殺人罪)
* アーノルド・シュワルツネッガー(IFBBプロボディビルダー、心臓弁の形成手術、将来における心臓発作の予防措置)
* [[ドリアン・イエーツ]](IFBBプロボディビルダー、元ミスターオリンピア6連覇、腹部内臓肥大)
* [[ロニー・コールマン]](IFBBプロボディビルダー、元ミスターオリンピア7連覇、腹部内臓肥大)
* [[山岸秀匡]](IFBBプロボディビルダー、日本人初のミスターオリンピア入賞者、腹部内臓肥大)


== 関連項目 ==
==== 禁忌 ====
筋肉の外観を良くする目的で油を注入する行為は、ボディビルダーの間では一般的なものとなっている。[[1899年]]には廃れていたが、ステロイドの代替手段としてボディビルダーが再び使うようになった<ref>{{Cite journal |vauthors = Henriksen TF, Løvenwald JB, Matzen SH |title = [Paraffin oil injection in bodybuilders calls for preventive action] | language = da |journal = Ugeskrift for Laeger |volume = 172 |issue = 3 |pages = 219–20 |date = January 2010 |pmid = 20089216 }}</ref><ref name = "adv" />。しかし、この行為は、[[肺塞栓症]]、神経の損傷、[[感染症]]、硬化性脂肪肉芽腫<ref>{{Cite journal |vauthors = Schaefer N |title = Muscle enhancement using intramuscular injections of oil in bodybuilding: review on epidemiology, complications, clinical evaluation and treatment |s2cid = 27634653 |doi = 10.1007/s10353-011-0033-z |volume = 44|issue = 2 |journal = European Surgery |pages = 109–115 |year = 2011 }}</ref>、[[脳卒中]]<ref name = "PMID19580174" />、筋肉内に油で満たされたことで生じる[[肉芽腫]]、[[嚢胞]]や[[潰瘍]]を形成する可能性が報告されている<ref name = "adv" >{{Cite journal |vauthors = Iversen L, Lemcke A, Bitsch M, Karlsmark T | title = Compression bandage as treatment for ulcers induced by intramuscular self-injection of paraffin oil |journal = Acta Dermato-Venereologica |volume = 89 |issue = 2 |pages = 196–7 |year = 2008 |pmid = 19326015 |doi = 10.2340/00015555-0583 |doi-access = free }}</ref><ref>{{Cite journal |vauthors = Darsow U, Bruckbauer H, Worret WI, Hofmann H, Ring J |title = Subcutaneous oleomas induced by self-injection of sesame seed oil for muscle augmentation |journal = Journal of the American Academy of Dermatology |volume = 42 |issue = 2 Pt 1 |pages = 292–4 |date = February 2000 |pmid = 10642691 |doi = 10.1016/S0190-9622(00)90144-0 }}</ref><ref>{{Cite journal |vauthors = Schäfer CN, Guldager H, Jørgensen HL |title = Multi-organ dysfunction in bodybuilding possibly caused by prolonged hypercalcemia due to multi-substance abuse: case report and review of literature |journal = International Journal of Sports Medicine |volume = 32 |issue = 1 |pages = 60–5 |date = January 2011 |pmid = 21072745 |doi = 10.1055/s-0030-1267200 }}</ref>。
=== 関連語 ===
*[[フィズィーク]]
* [[ナチュラル・ボディビル]]
* [[ボディフィットネス]]
* [[筋力トレーニング]]
* [[ウエイトトレーニング]]
* [[身体改造]]
* [[マッチョ]]


稀な事例ではあるが、筋肉のさらなる損傷を避けるため、死亡事故を防ぐため、外科治療が必要となる場合がある<ref>{{Cite web |url = https://www.huffingtonpost.com/2015/05/05/real-life-hulk-arms-amputated-synthol_n_7214190.html |last = Grenoble |first = Ryan |name-list-style = vanc |title = Guy Who Wanted To Be A Real-Life Hulk Almost Had To Have Arms Amputated |work = Huffington Post |date = 5 May 2015 |archive-url = https://web.archive.org/web/20150506234718/https://www.huffingtonpost.com/2015/05/05/real-life-hulk-arms-amputated-synthol_n_7214190.html |archive-date = 6 May 2015 |access-date = 4 April 2023 }}</ref>。筋肉に[[ごま油]]を注射し続け、重度の[[筋肉痛]]と[[紫斑]]で入院したボディビルダーの身体は、[[血管炎]]のような[[アレルギー反応]]が起こっていた<ref>{{Cite journal |vauthors = Koopman M, Richter C, Parren RJ, Janssen M |title = Bodybuilding, sesame oil and vasculitis | journal = Rheumatology |volume = 44 |issue = 9 |pages = 1135 |date = September 2005 |pmid = 16113147 |doi = 10.1093/rheumatology/keh712 | doi-access = free }}</ref>。油を注入して膨らませた筋肉は、実際には発達しておらず、[[重力]]に負けて筋肉が垂れ下がって変形してしまい、そのせいで組織が[[炎症]]を起こす場合もある<ref name = "popeye" />。血管に直接注射することで、神経が押し潰されて[[痙攣]]を起こし、血管が潰れて血流が遮断されたり、致命的な肺塞栓症を惹き起こす危険がある<ref name = "popeye" />。シンソールの購入は違法ではないうえに、筋肉を膨らませる目的で作られたものでもないため、法律では防げない<ref name = "popeye" />。
=== 選手関係の項目 ===
* [[日本のボディビルダー]]
* [[プロ男性ボディビルダーの一覧]]


=== 関連団体 ===
=== 休息 ===
鍛錬のあとは、一日から二日かけて休ませる。これにより、筋肉に修復と治癒が発生する。体重を減らしたい場合でも、定期的な休息日を確保する。筋肉の発達において、休息を取ることは、運動と同じぐらいに重要な要素である<ref>{{Cite web |url = https://www.healthline.com/health/exercise-fitness/rest-day |title = Are Rest Days Important for Exercise? |author = Kirsten Nunez |date = 7 August 2019 |website = Healthline |archive-url = https://web.archive.org/web/20191030193850/https://www.healthline.com/health/exercise-fitness/rest-day |archive-date = 30 October 2019 |access-date = 4 April 2023 }}</ref>。重いものを持ち上げると、筋肉組織が壊れて裂ける。筋繊維が成長し、再び重いものを持てるようになるためには、筋繊維が完全に治癒して回復した状態に戻る必要がある<ref>{{Cite web |url = https://www.livestrong.com/article/438125-how-long-does-it-take-to-be-a-bodybuilder/ |title = How Long Does it Take to Be a Bodybuilder? |website = livestrong.com |archive-url = https://web.archive.org/web/20111112183007/https://www.livestrong.com/article/438125-how-long-does-it-take-to-be-a-bodybuilder/ |archive-date = 12 November 2011 |access-date = 1 April 2023 }}</ref>。回復手段として、鍛錬を終えたのち、[[按摩]]を行うボディビルダーもいる<ref>{{Cite book |last1 = Shusterman |first1 = Richard |name-list-style = vanc |title = Thinking Through the Body: Essays in Somaesthetics |date = 2012|page = 43 |publisher = Cambridge University |isbn = 978-1107019065 }}</ref>。
* [[国際ボディビルダーズ連盟]]
* [[全米フィズィーク委員会]]
* [[全米アマチュア・ボディビル協会]]
* [[日本ボディビル・フィットネス連盟]]


=== 過剰鍛錬 ===
=== ボディビル経験のある著名人 ===
運動は身体に有益な効果をもたらす可能性があるが、精神衛生に悪影響をもたらす可能性も指摘されている<ref>[https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1807593222032173?via%3Dihub PHYSICAL ACTIVITY AND MENTAL HEALTH: THE ASSOCIATION BETWEEN EXERCISE AND MOOD] Marco Aurélio Monteiro Peluso, Laura Helena Silveira Guerra de Andrade {{doi|10.1590/s1807-59322005000100012}}</ref>。
* [[アーノルド・シュワルツェネッガー]] - [[俳優]]・[[政治家]](前・[[カリフォルニア州]]知事)
* [[ガイ・ピアース]] - [[俳優]]
* [[ストロング小林]] - [[プロレスラー]]
* [[アニマル浜口]] - プロレスラー
* [[マッスル北村]] - ボディビルダー
* [[ビリー・ヘリントン]] - [[ポルノ男優]]
* [[三島由紀夫]] - 作家
*[[小渕恵三]] - [[自民党]]所属の[[国会議員]]、第84代[[内閣総理大臣]]
* [[馬淵澄夫]] - [[民主党 (日本 1998-2016)|民主党]]所属の[[国会議員]]([[国土交通大臣]])
* [[石井直方]] - [[東京大学]]教授、理学博士。専門は身体運動科学、筋生理学
* [[草野仁]] - [[アナウンサー]]、[[司会者]]
* [[丸山忠久]] - 将棋棋士
* [[なかやまきんに君]] - お笑い芸人
* [[テンゲン (お笑いコンビ)|テンゲン ガリ中島]] - お笑い芸人
* [[ぶるうたす]] - お笑い芸人
* 漆原晃(予備校講師) - [[代々木ゼミナール]]で物理を担当
* [[はな寛太]] - 漫才師
* [[元祖ムキムキマン]] - タレント
* [[春日俊彰]]([[オードリー (お笑いコンビ)|オードリー]]) - お笑い芸人


「''Overtraining''」(「過剰鍛錬」)とは、好ましくない水準に至るまで鍛錬を段階的に増やす行為を指す<ref name = "Overtraining and Exercise Addiction" >[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7739227/ The “Journal of Functional Morphology and Kinesiology” Journal Club Series: Highlights on Recent Papers in Overtraining and Exercise Addiction] {{PMID|33467383}} {{PMC|7739227}} {{doi|10.3390/jfmk4040068}}</ref>。運動依存症 (''Exercise Addiction'') とは、身体、心理、精神に損壊をもたらす可能性のある、運動に対する過剰で不健康な依存状態を指す。運動に励む者たちは、自分の限界に挑戦し、向上を目指す傾向にあるが、このような欲求は、依存症に繋がることもある。これは、肉体的にも精神的にも多くの問題を惹き起こし、非常に深刻な結果をもたらす恐れがある。多くの場合、このような状態を生み出すのは、硬直した希薄な社会的美学である。過剰鍛錬は、運動療法による生理的な欲求が、身体の調整能力を上回っている状態でもある。過剰鍛錬の影響は全身に亘り、神経内分泌系、免疫系、心血管系、筋骨格系、生理学的な器官に悪影響を及ぼす<ref name = "Overtraining and Exercise Addiction" />。過剰鍛錬を避けるにあたっては、健康的な睡眠、栄養の摂取、精神衛生の管理が重要となる。これらは、運動や休息計画と同様に、鍛錬計画の一部に組み込む必要がある<ref name = "Overtraining: What It Is, Symptoms, and Recovery" >{{Cite web |url = https://www.hss.edu/article_overtraining.asp |title = Overtraining: What It Is, Symptoms, and Recovery |author = Marci A. Goolsby, MD |date = 16 August 2021 |website = Hospital for Special Surgery |access-date = 5 April 2023 }}</ref>。
=== ボディビルを題材にしたテレビドラマ ===
* [[ドラバラ鈴井の巣|マッスルボディは傷つかない]](2002年、[[北海道テレビ放送]])脚本:[[安田顕]]
**ドラバラ鈴井の巣第2回作品。劇中に脚本家と同姓同名の日本人ボディビルダーが出演し、演者もボディビル大会に出場した。


高強度の鍛錬が頻繁である場合、中枢神経系が刺激されることで[[アドレナリン]](''Adrenaline'', 緊張状態に晒されると、[[副腎]]から分泌されるホルモン。心拍数、血圧、血糖値を上昇させる)が亢進し、安定した睡眠が妨害される原因となる<ref name = "LonnieLowery_Overtraining ">{{Cite web |url = http://www.t-nation.com/readTopic.do?id=459318 |title = The Warrior Nerd - Overtraining or Under-eating? Part 1 |author = Lonnie Lowery, Ph.D. |archive-url = https://web.archive.org/web/20070927191307/http://www.t-nation.com/readTopic.do?id=459318 |archive-date = September 27, 2007 |access-date = 4 April 2023 }}</ref>。
=== テレビ講座 ===
* [[テレビスポーツ教室]]2014年7月6日14時30分[[NHK教育テレビジョン|NHK Eテレ]]で講師にボディビルダー[[合戸孝二]]、司会に[[真凜]]、ゲストに、なかやまきんに君で、初心者の中高生に自分の体重を負荷とした腕立て伏せ、チューブやバーベルを負荷とした筋トレも、正しい姿勢や呼吸法でないと働く筋肉に違いが出て効果が出にくい事が解説され、トレーニング中の筋肉の動きが動画で初心者にも分かり易く放送された。


筋肉異形症 (''Muscle Dysmorphia'') は、男性のボディービルダーが陥りやすい。「自分の筋肉量は不充分である」と感じており、鍛錬施設で何時間も過ごしたり、効果の無い補助食品に多額のお金を費やし、食事様式が異常になり、薬物の乱用に走ることがある<ref>{{Cite journal |vauthors = Mosley PE |title = Bigorexia: bodybuilding and muscle dysmorphia |journal = European Eating Disorders Review |volume = 17 |issue = 3 |pages = 191–8 |date = May 2009 |pmid = 18759381 |doi = 10.1002/erv.897 }}</ref>。
== 外部リンク ==
* [http://www.jbbf.jp/ 日本ボディビル・フィットネス連盟 JBBF]
* [http://www.ironman-japan.com/new/contest/2003olympia/15/15_main.html 歴代ボディビルコンテスト入賞者]
* [http://cyoshida.web.fc2.com/01taikaicontents/kihonpose/kihonpose.htm ボディビル大会における基本ポーズ]
* [http://www.mr-u.jp/ JPC]
*[http://www.ifbb.com/ IFBB official website]
*[http://www.afbf.asia/index.php AFBF official website]
*[http://www.abbf.asia/ ABBF official website]
*[http://www.nabba-international.com NABBA International]


雑誌『''Muscle & Fitness''』内の記事「''Overtrain for Big Gains''」では、「過剰鍛錬は短期間であれば有益である」と主張している。休息から再生する局面において、埋め合わせのために、意図的に過剰鍛錬に励むもので、「急性超微細循環」と呼ばれ、[[ソ連]]の競技選手たちがこの方法を採用していた<ref name = "pmid14719980" >{{Cite web |url = http://www.pgedf.ufpr.br/Smith%20SpMed%202003%20%20SG%20%20DEspor%201.pdf |author = Smith DJ |title = A framework for understanding the training process leading to elite performance |journal = Sports Medicine |volume = 33 |issue = 15 |pages = 1103–26 |date = February 2003 |s2cid = 2021999 |pmid = 14719980 |doi = 10.2165/00007256-200333150-00003 |archive-url = https://web.archive.org/web/20170809052905/http://www.pgedf.ufpr.br/Smith%20SpMed%202003%20%20SG%20%20DEspor%201.pdf |archive-date = August 9, 2017 |access-date = 5 April 2023 }}</ref>。
== 脚注 ==
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== 出典 ==
{{Reflist|2}}


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2024年11月24日 (日) 13:18時点における最新版

ボディビルディング
Bodybuilding
1974年のボディビル大会に出場したときのアーノルド・シュワルツェネッガー
統括団体 国際ボディビル連盟
通称 BB
起源 19世紀末のイングランド
特徴
カテゴリ 屋内
競技場 観客席
実施状況
競技地域 世界各国
ワールドゲームズ 1981年 - 2009年
テンプレートを表示

ボディビルBodybuilding, ボディビルディング)とは、筋肉組織の構築を制御ないし発達を目的とした漸進性抵抗運動 (Progressive Resistance Exercise)[1]。肉体的強さではなく、あくまで外見が重要であり、重量挙げとは別物である[2]。これに従事する者たちは「ボディビルダー」(Bodybuilder) と呼ばれる。競技に参加するボディビルダーたちは、体躯の調和・均整美、筋骨の強壮さ、筋肉の大きさ、体調を競い、舞台に立つにあたって格付け審査員に向けて構えをきめる。ボディビルダーたちは、脱水とカーボ・ローディング(Carbo-Loading, 炭水化物の摂取を増やすことで、グリコーゲンGlycogen〉を体内に貯蓄する食事法)を組み合わせ、競技出場前の最終段階において不要な体脂肪を減らし、最大量の筋肉とその鮮明な輪郭および血管の分布の構築を完遂する。舞台上集中光線を浴びる彼らは明暗を強調する目的から、身体を日焼けさせ、体毛を剃る[3]。国際ボディビル連盟が主催する『ミスター・オリンピア』(Mr. Olympia)で優勝した者は、ボディビル界の頂点に立つ存在と見なされることが多い。1950年以来、全米ボディビル愛好協会 (The National Amateur Body-Builders' Association) が主催する世界選手権では、アーノルド・シュワルツェネッガー (Arnold Schwarzenegger) を始めとする名の知れた受賞者がおり、これに勝ち残った者は専門職としての運動競技選手になることが多い。

ボディビルにおいては、薬物の服用は禁止である。また、ボディビルにおいては実演よりも外見が重要視される。筋肉の発達や性能を高めるよりも、見た目を重視する目的から、薬物に手を出す者もいる[4]。表向きは「薬物の服用は禁止」であるが、実際には、筋肉増強作用を持つアナボリック・ステロイド (Anabolic Steroid) を服用するボディビルダーは数多い[5]

ボディビルダーの独自性は比較ができないものであり、ボディビルは個性の構築を主体的に強化する可能性がある一方で、個性の葛藤、不快な経験、自我の危険性をもたらす可能性があることを示唆している[6]

ボディビルダーたちは、自分たちのやっていることを「運動競技」と考えているが、主流のスポーツ界はそのようには見做しておらず、ボディビルは正当性の危機に直面している[1]国際オリンピック委員会も同様の立場であり、ボディビルを「運動競技」とは見做していない。ボディビルダーたちによる薬物乱用の問題が基本的な焦点となっている[7]

歴史

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古代エジプトやギリシアにおいては、大きな石を持ち上げる競争行為が行われていた[8]

西洋においては、1880年から1953年にかけて重量挙げが発展し、剛力自慢の者たちは一般大衆に向けて自身の力強さをこれみよがしに見せ付け、互いに競い合った。比重が置かれたのは参加者たちの体格ではなく、彼らの四肢と腹部は大抵は脂肪で太っていた[9]

インドタミル・ナードゥ州マドゥライでは、巨大な球形の石を持ち上げる競技が行われていた。古代において、これは結婚前の若い男性の勇気と力強さを試すために行われていた、と考えられている[10]

ユージン・サンドウ

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ユージン・サンドウ

19世紀末、ドイツ人ユージン・サンドウ (Eugen Sandow) がボディビルの普及を推進した。鍛え上げられた肉体を観衆に披露して楽しんでもらおうと考えたサンドウは、「筋肉展示公演会」と題した催し物を開いた。だが、集まった男たちは自身の肉体の誇示が目的であったり、格闘試合の実演として登場しただけであった。サンドウは、フローレンツ・ズィークフェルト (Florenz Ziegfeld) とともに肉体披露の見世物を主催した。構えをきめる一連の動作が広く受け入れられたサンドウは、自身の名前を商標にした製品を売り出し始め、ダンベル[8]、ばね、伸長帯といった運動器具を販売した。サンドウの肉体の写真が印刷された判も数千枚販売された。

1898年、サンドウは雑誌『Physical Culture』を創刊した[1]

ボディビル競技会

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1901年9月14日、サンドウは、ロンドンにあるロイヤル・アルバート・ホール (The Royal Albert Hall) にて、「大競技会」と題したボディビル大会を開催した[11][8]。サンドウ、チャールズ・ラース (Charles Lawes)、アーサー・コナン・ドイル (Arthur Conan Doyle) が審査員を務めたこの競技会は大きな成功を収めた。優勝したのはノッティンガム出身のウィリアム・L・マーリイ (William L. Murray) で[8]、フレデリック・ポメロイ (Frederick Pomeroy) が彫刻したサンドウの黄金像が贈呈された。次点のD・クーパー (D. Cooper) には銀の像が、第三位のA・C・スマイツ (A.C. Smythe) には青銅の像が贈呈された。

審査の基準は厳格であり、サンドウは、筋肉や体格以外の要素も加点する趣旨を明言した。サンドウが要求したのは、筋肉だけでなく、左右対称の均整の取れた体型であった。サンドウの定めた審査の基準となったのは以下の要素であった[8]

  • 総合的な発達
  • 発達の均等および均一性
  • 組織の状態や調子
  • 総合的な健康状態
  • 皮膚の状態

サンドウは、「賞は、大きな筋肉に対してではなく、均整の取れた発達を見せている者に授与される」と述べた[12]1950年に全米ボディビル愛好協会 (The National Amateur Body-Builders' Association, NABBA) が主催した競技会で優勝したスティーヴ・リーヴス (Steve Reeves) に、A・C・スマイツが受け取った青銅の像と同じものが贈られた。1977年国際ボディビル連盟 (The International Federation of BodyBuilders, IFBB) が開催した『ミスター・オリンピア』(Mr. Olympia) にて優勝したフランク・ゼイン (Frank Zane) に青銅の像の複製品が贈呈されると、それ以降はこの複製品が贈られるのが慣習となった。

1903年12月28日から1904年1月2日にかけて、ニューヨークにあるマディソン・スクエア・ガーデン (The Madison Square Garden) にて、大規模なボディビル競技会が開催された[1]。この競技会を宣伝したのはベルナール・マクファデン (Bernarr Macfadden) であった。マクファデンは、雑誌『Physical Development』の創刊者でもあった[1]。この大会で優勝したのはアル・トレロアー (Al Treloar) であった[13]。トレロアーは賞金として1000ドルを受け取ったが、これは当時としてはかなりの高額であった。この2週間後、トマス・エディスン (Thomas Edison) は、トレロアーが見せた一連の構えを映像に収めた。エディスンはまた、サンドウの構えも映像に収めている[11]。ベルナール・マクファデンとチャールズ・アトラス (Charles Atlas) はイングランドに移住し、ボディビルの普及を推進した[1]

1925年10月14日、サンドウはロンドンにて、脳出血を起こして死亡した[8]。58歳であった[14]

1930年以前のボディビルダー

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1930年以前のボディビルダーには、ライオネル・ストロングフォート (Lionel Strongfort)[15]や、第一次世界大戦に従軍して片足を失ったアラン・P・ミード (Alan P. Mead) がいる。俳優のフランセス・X・ブッシュマン (Francis X. Bushman) は、無声映画に出演する前は彫刻の題材にもなっていた[16]

1950年代 – 1960年代

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1946年カナダ人の兄弟であるジョー・ウイダー (Joe Weider) とベン・ウイダー (Ben Weider) が、「国際ボディビル連盟」(The International Federation of Bodybuilders, IFBB) を設立した[1]1950年代から1960年代にかけて、力強さと体操の熱烈な推進者が現われるようになり、時を同じくして、ボディビル雑誌、筋力鍛錬の基本原則、筋肉肥大と体脂肪減少に向けての栄養摂取、タンパク質栄養補助食品、体格を競い合う大会の普及に伴い、ボディビルの人気も上がるようになった。「ゴールド・ジム」(Gold's Gym) のような「筋金入り」の筋力鍛錬施設が登場したのは1965年8月のことであった。

1965年9月18日、ウイダー兄弟は『ミスター・オリンピア』(Mr. Olympia) と題したボディビル大会を初めて主催した[1]。この大会で優勝を果たしたのはラリー・スコット (Larry Scott) であった。スコットは翌年に開催された大会にも出場し、優勝している[8]。1965年以降、『ミスター・オリンピア』は17の都市で開催されている[17]

1939年7月4日に「全米体操愛好連盟」(The Amateur Athletic Union) が初めて主催した『Mr. America』のような、ボディビル団体が開催する競技会は多数あるが、主流のボディビル団体は国際ボディビル連盟である[1]。「全米ボディビル愛好協会」(The National Amateur Body-Builders' Association, NABBA) が毎年主催するボディビル大会『The Universe Championships』(『世界選手権』)があるが、これは元々『Mr. Universe』(「ミスター・ユニヴァース」)という題名の選手権であった。アーノルド・シュワルツェネッガー (Arnold Schwarzenegger) もこの大会に何度か出場し、『ミスター・ユニヴァース』の称号を獲得している[8]

カリフォルニア州サンタ・モニカにあるマッスル・ビーチ (Muscle Beach) は、1934年以降、体操や重量挙げといった、身体を鍛える者たちの場所となっている。ジャック・ララーヌ英語版やスティーヴ・リーヴスもここで鍛錬に励んだ[18]

1970年代 – 1990年代

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アナボリック・ステロイドの服用

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1953年撮影。筋肉を誇示するように構えるエド・フューリイ (Ed Fury)。隣に立っているのはジャッキー・コーイ (Jackie Coey)。

1970年代になると、媒体を通じて、フランコ・コロンボ (Franco Columbu)、ハロルド・プール (Harold Poole)、デイヴ・ドレイパー (Dave Draper)、フランク・ゼイン (Frank Zane)、ラリー・スコット (Larry Scott) といった複数のボディビルダーの名前が知れ渡るようになった。しかし、筋肉増強作用を持つアナボリック・ステロイド (Anabolic Steroid) を服用するボディビルダーも現われるようになった。トム・プラッツ (Tom Platz) やポール・デメーヨ (Paul Demayo) のように、身体の一部だけが発達しているボディビルダーもいる。

アナボリック・ステロイドは、男性ホルモンの一種であるテストステロン (Testosterone) の合成誘導体 (Synthetic Derivatives) であり[19]、筋肉の大きさや筋力の増幅に影響を及ぼす。1960年代、運動競技選手が薬物として服用した初のステロイドの一つであった。1974年国際オリンピック委員会 (The International Olympic Committee) は、ステロイドの服用を正式に禁止した[20]。除脂肪体重、筋力、全体的な運動能力を向上させる目的で、運動競技に出場する選手たちが服用してきた[19]

キューバ出身のボディビルダー、セルフィオ・オリバ (Sergio Oliva) は、1967年1968年1969年に開催された『ミスター・オリンピア』で優勝を果たしている[8][21]が、1970年から1975年にかけて出場し、オリバを破った人物がいた。その人物こそが、アーノルド・シュワルツェネッガーであった[22]。シュワルツェネッガーは、『ミスター・オリンピア』の称号を七回獲得している[23]1980年の大会で七度目の『ミスター・オリンピア』の称号を獲得したのち[1]、シュワルツェネッガーは、ボディビルからの引退を表明した[22]

1977年記録映画Pumping Iron』に出演したシュワルツェネッガーは、その時点ではステロイドの服用を認めなかったが、のちに「競技で優位に立ちたければ、手段を選んではいけない」と語っている。

1977年に発売された小冊子『Arnold: Developing a Mr Universe Physique』の中で、シュワルツェネッガーはステロイドの服用について、「大会出場の準備に向けて、筋肉の質量を維持するためだ」という趣旨を強調し、以下のように語っている。「仲間のボディビルダーたちを擁護するわけではないが、筋肉組織を構築する薬物に関する私自身の経験について書いておきたい。そう、私はステロイドを服用した。だが、ステロイドだけでこの身体になったわけではない。アナボリック・ステロイドは、競技会に向けて厳しい食事制限に励みつつ、筋肉の質量を維持するのに役立ちました。ステロイドを服用したのは、筋肉の発達のためではなく、減量期に入ったあとの筋肉量の維持のために使ったのです」[24]

2009年、彼は「ステロイドの服用については後悔していない」と述べた。シュワルツェネッガーはステロイドの服用を認めているが、当時は合法であった趣旨を強調した[5]。「(ステロイドの服用については)後悔していない。当時、新しいものが世に出てきて、医師の監督のもとで服用したんだ」「実験していたのさ。新しい存在だったんだよ。時計の針を戻して、『今ならこのことについて考えを改めるだろう』とは言えないよ」と語った。彼はまた、「子供たちに間違った教訓を与えてしまうから、薬物の服用は奨励しない」が、「運動競技選手たちが、自身の能力を向上させる目的で栄養補助食品や合法物質を摂取することについては何の問題も無い」と述べた[23]

アナボリック・ステロイドについて、セルフィオ・オリバはナンドロロン (Deca-Durabolin) とダイアナボル (Metandienone) を服用していた。ステロイドの服用について、オリバは以下のように語っている。

「これは、人々が大いに関心を示す分野だ。誰がステロイドを使おうが、それ自体は個人の自由さ…その人の人生なんだから。さて、今や誰もがステロイドを入手できるようになった。昔、某有名雑誌で、アーノルドがステロイドの服用を否定している記事を目にしたことがあるが、彼はアメリカにステロイドを持ち込んだ最初の人物だ。昔は誰もが使っていたよ。フランク・ゼイン、フランコ・コロンボ、俺、アーノルド、ラリー・スコット、ハロルド・プール、デイヴ・ドレイパー、スティーヴ・リーヴスもね。これは否定のしようがない。大した問題ではなかったんだ。今のボディビルダーたちほどではないが、服用していたよ。でも、薬の開発は異質なものだ。俺はナンドロロンとダイアナボルを使っていたが、これらは本当に凄い代物でね、ナンドロロンはそれほど悪いものだとは認識されていなかったんだ。「骨を丈夫にするから」って、医者が処方していたくらいだからね。現時点で体重が約91 kgの人が、半年後には約113 - 136 kgにまで増える!この場合、その人は、普通ならありえないものを服用しているんだ。「何も摂取してないよ」と言った場合、その人は嘘を吐いてるってことになる」[25]

ステロイドの服用の撲滅と、国際オリンピック委員会への加入を目論む形で、国際ボディビル連盟は、ステロイドや違法薬物に対する薬物試験を導入することにした。しかし、競技に出場するにあたり、薬物を服用するボディビルダーは後を絶たない。

1990年に制定された規制物質法 (The Controlled Substances Act) にて、アメリカ連邦議会は「一覧表III」にアナボリック・ステロイドの名前を登録した[26]。「ステロイドで強化された競技選手は、ステロイドを服用していない選手よりも有利であり、不公平である」という懸念があった。1988年、短距離走者のベン・ジョンソン (Ben Johnson) が、違法薬物を摂取したのを理由に金メダルを剥奪されたとき、精鋭競技は、努力や公正さよりも、「誰がより良い薬を持っているか」という様相を呈するようになった。時の上院議員、ジョー・バイデン (Joe Biden) は、議会が懸念していた事柄について、以下のように発言した。「…今後数年間で、オリンピックに出場する選手から、大学での運動競技、職業選手に至るまで、アメリカにおける運動競技に対する、一般市民からの強い反発が見られることでしょう。怒りの感情が高まりつつあり、それがどのような形で作用するのかは見当もつきません」[26]

医師からの処方箋が無い状態でアナボリック・ステロイドを所有した場合、法律違反となる[19][1]。この法律が施行されるまでは、ステロイドの服用は違法ではなかったことを忘れてはならない[24]1996年カナダ議会は「規制薬物及び物質法」(The Controlled Drugs and Substances Act) を制定し、「一覧表IV」にアナボリック・ステロイドの名前を記載した[27]

アナボリック・ステロイドの副作用として、痤瘡(にきび)、脱毛、心臓病発症の危険性の増加、腎臓と肝臓の機能不全、高血圧、性的不能が報告されている[19]

また、アナボリック・ステロイドの服用行為は、1960年代には既に始まっていた。1980年代になると、複数の種類のステロイドに加えて、筋肉を肥大させる目的から、インスリン (Insulin) の服用も増えるようになった[8]

デイヴィッド・ロブスン (David Robson) は、ボディビルダーの多くがステロイドを服用している点、ステロイドの服用の問題点を認めながらも、「薬物の服用を完全に禁止した場合、ボディビルの魅力が奪われてしまうだろう」「IFBBがボディビルからステロイドを排除するのは現実離れしており、事実上、不可能だ」と力説している[5]

アナボリック・ステロイドのような薬物の服用により、ボディビルダーは筋肉の大きさや力強さと引き換えに、長期的には健康を危険に晒す恐れがあり、それによって、ボディビルの正当性は消滅の危機に直面している[1]

ヴィンス・マクマホン

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1990年プロレスの普及推進を目指すヴィンス・マクマホン (Vince McMahon) は、「世界ボディビル連盟」(The World Bodybuilding Federation, WBF) の設立を考えていた。マクマホンは、この連盟の人材開発部長としてトム・プラッツを雇った。1990年9月15日、第26回ミスター・オリンピア競技会が開催された。マクマホンはトム・プラッツと一緒に会場に姿を見せ、雑誌『Bodybuilding Lifestyles』を宣伝していた。優勝したリー・ヘイニー (Lee Haney) が、ミスター・オリンピアの称号を授与されようとしていたその矢先、トム・プラッツが舞台の上で即興の演説を行い、WBFの設立と、IFBBの打倒を宣言した。この翌日、マクマホンは記者会見を開き、ウイダー兄弟を公然と批判し、「自分のWBFこそ、ボディビルの本来のあるべき姿』だ」と主張した。マクマホンの言葉は、IFBBが薬物検査を行おうとしない現況をそれとなく伝えるものであった。1990年、IFBBは厳格な薬物検査を実施し、出場選手の二割が「不合格」と認定された。マクマホンは、「ボディビルの行事を今よりも劇的なものにし、ボディビルダーたちが受け取る賞金をさらに増やす」と宣言し、ボディビルダーたちと高額の資金契約を結んだ[28][29][30]

ウイダー兄弟は、IFBBに所属する選手に対し、「WBFに加盟した者は、IFBBが主催する競技会において即座に失格とする」「新たな団体に加盟した場合、IFBBに戻ることは決して許可しない」と述べた[28][29]。ウイダー兄弟は、『ミスター・オリンピア』の優勝者に贈呈する賞金を10万ドルに増やし、さらに、マクマホンに対抗するため、有料放送番組の検討を始めた[28]。しかし、医師のジョージ・ザホリアン (George Zahorian) が、能力向上薬をWBFの選手たちに配布した容疑で逮捕・起訴され[28]、懲役三年の実刑判決を言い渡された[29]。その後、マクマホンは、選手たちの薬物検査を実施する趣旨を発表した。1992年7月15日、マクマホンはウイダー兄弟と電話会議を行い、ボディビル雑誌の生産を中止し、WBFを解団する趣旨を伝えた[29]。ザホリアンに対する実刑判決は更なる調査につながり、WBFの選手たちに薬物を配布することを共謀した容疑でマクマホンが起訴されるまでに至った。1994年7月23日、マクマホンはすべての容疑で無罪となった[29]。この一連の過程で、マクマホンは1500万ドルを失った、と伝えられた[29]

2000年代

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2003年、ジョー・ウイダーは、『Weider Publications』を『American Media, Inc. AMI』に売却した。2008年10月にベン・ウイダーが亡くなったのち、IFBBの会長はラファエル・サントンハ (Rafael Santonja) が務めていた。2004年、ウェイン・デミリア (Wayne DeMilia) がIFBBから去ったのち、AMIがミスター・オリンピア競技会の宣伝を引き継ぐことになった。2017年には、別の企業と共同で行事を執り行っている[31]

ソ連崩壊後の東ヨーロッパにおいて、消費や娯楽の様式が広まるにつれて、ボディビルが普及するようになった[32]

ソ連においては、スティーヴ・リーヴスが主演した映画『ヘラクレス』が公開され、リーヴスの肉体が映し出されると、多くの男性がそれに影響され、身体を鍛えるようになった。1973年の春、国家競技委員会(ソ連競技省)の会議にて、当局者の一人は「ボディビルだって?筋肉を鍛えて、鏡の前で構えをきめる?我がソ連国民は、そんなことをしてどうしようというのだ?鏡に映った自分の姿を見て褒め称えるつもりか?」と述べた。ソ連において、ボディビルは公式に禁止となった[33]

オリンピック

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国際オリンピック委員会は、ボディビルを「運動競技」とは見做していない。ボディビルダーたちによる薬物乱用の問題が基本的な焦点となっている[7]。主流のスポーツ界も、ボディビルを「運動競技」とは見做していない[1]

部門

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チェコ出身のボディビルダー、ルカーシュ・オスラギル (Lukáš Osladil)
ロニー・コールマン(2009年10月17日)
構えをきめるニッキー・フラー (Nikki Fuller)

Professional

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ボディビルの世界において、「Professional」という言葉は、ボディビル愛好家の立場で予選大会を勝ち抜き、ボディビル団体から「プロ・カード」(Pro Card) と呼ばれる厚紙を受け取ったボディビルダーを指す。これを獲得した者は、「Professional」(「本職、専門職」)という立場で、賞金が贈られる競技会に出場する権利を得られる。ただし、条件を満たせば自動的にこの地位が得られるわけではなく、自国内の連盟による推薦も必要となる[34]。出資者と契約を結べば、金銭面で援助も受けられる。

Natural

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費用、健康問題、服用の違法性に対する懸念から、ボディビル団体の多くは、筋肉増強剤の服用を禁止とする「Natural」(「自然体」)と題した部門を設立している。アイヴァン・ブラスケス (Ivan Blazquez) は、「重要なのは、体調を整えることだ」と力説している[35]

Men's Physique

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2012年に初めて導入された[36]。Physique(体格や身体付き)と言う単語の意味のとおり、体型、均整美(釣り合いの取れた美しさ)、筋肉質、身体の健康状態が審査の対象となる[37]。出場選手たちは、舞台に上がったあとも、冷静さを維持しつつ、存在感を示し、自信に満ち溢れていなければならない。構えをきめ、様々な角度から筋肉を見せる[37]。全体が均衡の取れた身体でなければならない[36][37]

Classic Physique

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2016年、全米体格委員会 (The National Physique Committee, NPC) と、国際ボディビル連盟は、新たな部門「Classic Physique」(「第一級体格」)を導入した。身長と体重に制限が課される。出場選手は、筋肉量や体格のみならず、「体調・健康状態、均整美・調和の取れた美しさ」も審査の対象となる[37]

1990年代に現われたドリアン・イェイツ (Dorian Yates) は、均整美を犠牲にして筋肉の大きさを追求した。このころから、細身と均整美よりも、体調と筋肉の質量が追求されやすくなった[21]。アーノルド・シュワルツェネッガーは以下のように述べ、ボディビルの審査について苦言を呈している。

「審査の基準を変えないといけない。筋肉が多いだけで見た目が美しくない人間に報酬を与えるのは、もう止めるべきだ。スティーヴ・リーヴスが優勝したころの時代を見ればいい。彼の肉体を目にした者は、『こんな身体になりたい』『この男の美しさを見よ』と言ったが、現在の大会で優勝するような人たちは、そんなことは言わない。私が審査員に伝えたいのは、あらゆる要素を見る必要がある、ということなんだ。お腹が膨れている選手が多いんだよ…。昔はV字型の身体が美しい、とされていたが、今は違う。正当な人にこそ、報酬が与えられなければならない。然るべき人に報酬を与えれば、美しい肉体を手に入れるための鍛錬を、誰もが開始するだろう」[21]

全米体格委員会の会長、ジェイムス・B・マニオン (James B. Manion) は、「『第一級体格』は、選手たちが自分の体格を表現する新しい方法を見つけることによって常に進化を続けています。選手たちが競技目標を実現するための舞台をNPCが提供できることを嬉しく思っています」「『第一級体格』においては、身体の釣り合い、均整美、美しい輪郭、引き締まった腰のくびれが、重要な要素となります。すなわち、筋肉と健康状態の調和が取れた美的資質が重視されるのです」と述べている[21]

女性のボディビルダー

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1960年代に起こった女性の社会運動は、健康革命や1972年に成立した法律『Title IX』(アメリカ合衆国の公的高等教育機関において、男女の機会均等を定めた連邦法)と相まって、筋肉質な体格を含めた、女性美の新たな選択肢につながった。女性のボディビルダーたちは、「筋肉は男性だけのものではない」という趣旨をその身体で示すことにより、伝統的な女性らしさの限界を変えることになった[38]1978年オハイオ州カントンにて、アメリカ女子体格選手権 (The U.S. Women's National Physique Championship) が開催された。専門職の女性のボディビル向けとしては、これが史上初の大会と見做されている[39]1980年には、『ミズ・オリンピア英語版』(『Ms. Olympia』、当初は『Miss Olympia』)が開催された。

イーデス・コナー (Edith Conner) のように、75歳でボディビル大会に出場した女性もいる[40]

スターリング大学 (The University of Stirling) の研究者は、筋力鍛錬に従事する女性と面談し、その動機について調べている[41]

団体により女子カテゴリーの分類法や採用の仕方は大きく異なるが、概ね以下のようなカテゴリーに分かれる。

  • ボディビル
  • フィジーク
  • ボディフィットネス/フィギュア
  • ウェルネス
  • ビキニ
  • ビキニフィットネス
  • フィットネス

競技会

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構え

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舞台に上がったボディビルダーたちは、「審美的に美しい」身体を提示しようとする[42][43]。ボディビルダーたちは、舞台に立った際に、以下の構えをきめる[44]

  • Quarter Turns(四分の一回転)
  • Front Double Biceps(正面を向いて両腕の上腕二頭筋を見せる)
  • Rear Double Biceps(背中を見せて、上腕二頭筋を見せる)
  • Front Lat Spread(正面を向いた状態で、両手の拳を腰に当てて広背筋を広げながら呼吸し、胸部を膨らませる)
  • Rear Lat Spread(背中を見せた状態で、両手の拳を腰に当てて広背筋を広げながら呼吸し、胸部を膨らませる)
  • Side Triceps(片方の腕を下方向に向けて伸ばし、上腕三頭筋を曲げた状態で、審査員側に身体を向ける)
  • Side Chest(ゆっくり深呼吸しながら胸を張り、両脚を少し曲げ、見せたいほうの腕を反対の手で掴み、上腕二頭筋を曲げる)
  • Front Abdominal & Thigh大腿部ふくらはぎを少し曲げ、両手を首の後ろに回し、肩を下げる)

2012年に導入された部門『Women’s Physique』(『女性の体格』)は、筋肉の量よりも美的感受性や体型が重視される。必須の構えは以下の5つである[37]

  • Front Double Biceps(両手を開いた状態で、正面を向いて両腕の上腕二頭筋を見せる)
  • Side Chest(腕を伸ばした状態で、ゆっくり深呼吸しながら胸を張り、両脚を少し曲げ、見せたいほうの腕を反対の手で掴み、上腕二頭筋を曲げる)
  • Back Double Biceps(両手を開いた状態で、背中を見せて、上腕二頭筋を見せる)
  • Side Triceps(脚を伸ばした状態で、片方の腕を下方向に向けて伸ばし、上腕三頭筋を曲げた状態で、審査員側に身体を向ける)
  • Abdominals & Thighs(大腿部とふくらはぎを少し曲げ、両手を首の後ろに回し、肩を下げる)

デイヴィッド・ロブスンは、「ボディビルの競技会においては、構えが接戦の勝敗を左右する。構えの技術が拙劣であるゆえに、体格は優れていてもそれを十分に発揮できない人ほど、悪く見えてしまう」「敗れていったボディービルダーの多くは、筋肉を効果的に見せることができなかったのだ。審査員は、自分の目に映るものしか判断できないのだから」と書いた[44]

国際ボディビル連盟が定めた指針に基づく形で、審査員は、筋肉の発達に関連する特定の基準、「均整美と自然な審美に関連する筋肉の大きさ、形状、密度、皮膚の表面の細長い窪み、鮮明度」に従い、決定を下すにあたって明確な根拠を示す必要がある。「体格の均衡、輪郭、全体的な『雰囲気』の質、上半身と下半身の発達の均衡、身体の左右の調和を重視する」場合、審査が主観的になることは無い。「膨満した腹部や歪んだ筋肉は、体格全体に悪影響を与える」、あるいは「調和と自然な美しさを犠牲にした大きさの筋肉は好ましくない」と定められていれば、主観の入る余地はほとんど無い[43]

準備

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筋肉肥大と体脂肪減少

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競技会が開催されない時期のボディビルダーは、筋肉量を増やす目的で、充分な量のタンパク質を摂取する。大会が開催される前の6 - 12週間前には、ボディビルダーは筋肉量を維持し、体脂肪を可能な限り減らそうとする[45]

一方、ボディビルダーのように、減量と増量を何度も繰り返していると、体内で分泌されるホルモンや、長期的には、将来的な体重減少に負担をかけることになる[46]

Clean Bulking

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Clean Bulking』とは、「余分な脂肪を増やさないようにしつつ、筋肉と筋力を付けるために、管理された食事法」を指す[47]。カロリーだけでなく、「どんなものをいつ食べているか」も意識する必要がある[48]。これは、より長い時間をかけて、その人が求める体脂肪と筋肉量の割合を達成するための方法である。脂肪を減らし、筋肉量を多く保つため、摂取カロリーが多い日と少ない日をそれぞれ設け、増量と減量の均衡を維持する[49]

Dirty bulking

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栄養摂取の指針を考慮せず、できるだけ沢山食べて摂取カロリーを増やす行為を指す[50]。「禁止の食べ物は無い」が、この食事法では肥満になる[48]。過剰なカロリーの摂取は体脂肪の急激な増加をまねき、高血圧心血管疾患糖尿病の原因となる[48]。豊富なカロリーは成長に役立つが、それが精製された食物繊維を含まない炭水化物であれば血糖値インスリンの濃度を急上昇させ、「インスリン感受性」(Insulin Sensitivity) 低下、ならびに「インスリン抵抗性」(Insulin Resistance) と呼ばれる状態を惹き起こす。「インスリン感受性」の低下は、糖尿病の原因となるだけでなく、栄養素を筋肉細胞に運ぶのが困難になり、これは筋力鍛錬の成果の低下の原因にもなる[50]。クレッグ・スティーヴンスン (Craig Stevenson) は、「(体重が増えたあとに)余分な脂肪を減らす目的で取る食事は、深刻なカロリー不足に陥り、筋肉が減りやすい状態につながる。この食事法は、大きな代償が伴う」と述べた[48]

筋肉の発達

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筋肉の肥大を最大限にするにあたり、ボディビルダーは以下の事柄を心掛ける[51]

  • 筋力鍛錬
  • 鍛錬を終え、筋肉が損傷し、エネルギーの貯蔵が枯渇した際には、筋肉の再合成および再構築のために必要なものを摂取する
  • 充分な休息と回復に専念する。これを怠ると、筋肉の成長と回復は低下し、疲れやすくなり、意欲も低下する

筋力鍛錬

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身体への負担が激しい筋力鍛錬を行うと、筋肉に微細な裂傷が生じる。これは「遅発性筋肉痛」(Delayed Onset Muscle Soreness) と呼ばれ、運動を終えたあとに生じる痛みの原因となる。この微細な裂傷を修復させることにより、筋肉の成長に繋がる。運動を終えて二日以内に発生するが、筋肉が鍛錬に馴致するにつれて、痛みは減少していく傾向にある[52]

筋肉肥大は全てのボディビルダーの目標である。筋形質と筋原線維、この二種類の肥大を促進することにより、筋肉の成長と構築を完遂する。より大きな筋肉をもたらすのは筋形質の肥大である。筋形質の肥大は反復回数の増加で、筋原線維の肥大は重いものを持ち上げることでもたらされる。筋形質の肥大は筋肉を大きくするが、筋力は増えない。筋原線維の肥大は、筋力を向上させるために筋原線維が増加するが、筋肉量についてはわずかに増えるのみ。ボディビルダーが目的とするのは筋形質の肥大であるのに対し、筋原線維の肥大を目的とするのは運動競技選手や重量挙げの選手である。筋形質が肥大すると、筋肉細胞が貯蔵グリコーゲン (Glycogen) を多く蓄えるようになる。ボディビルダーにとって、グリコーゲンの生産量を増やすことは重要であり、そのためにはより多くの炭水化物を食べる必要がある[53]。重量挙げの目標は最大重量のベンチ・プレスを持ち上げられるようにすることであり、ボディビルの目標は筋肉を最大限に増やし、体脂肪を可能な限り減らすことを重視する[54]

栄養摂取

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一般には、ボディビルダーは筋力鍛錬と筋肉量の増加に向けて、多くのカロリーを摂取する。炭水化物、タンパク質、脂肪の摂取比率は、ボディビルダーによって異なる[55]

炭水化物

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炭水化物を摂取すると消化・吸収された糖類が血糖値を上昇させ、その上昇した血糖値を下げるため膵臓からインスリン (Insulin) が分泌される。インスリンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞 (Beta Cells) から分泌されるペプチド・ホルモンである。細胞によるブドウ糖の取り込みを促進し、炭水化物、脂質、タンパク質の代謝を調節し、分裂を促進する効果を通じて細胞分裂と成長を促し、正常な血糖値を維持する[56]

インスリンには、アナボリック・ステロイドと同じく、筋肉の成長と増幅を促進する同化作用 (Ababolism) がある[57][58]。インスリンは筋肉細胞におけるタンパク質の分解を抑制・妨害し、それによってタンパク質の同化作用を促進する[59]。インスリンの存在無くしてタンパク質の合成の促進は不可能であり、インスリンの分泌を刺激する炭水化物とタンパク質を摂取しない限り、筋肉量を増やすことは不可能である[60]。ボディビルダーがタンパク質と炭水化物を大量に摂取するのはこれが理由である。

GI値 (Glycemic Index) が低い炭水化物や、消化に時間が掛かる炭水化物を食べる場合、デンプンを多く含むものよりも安定した形でエネルギー源にできる。しかし、運動前、運動中、運動を終えた直後に、消化の早い炭水化物(純粋なブドウ糖か、マルトデキストリン)を摂取するボディビルダーもいる。これは、筋肉内に貯蔵グリコーゲンを補充し、筋肉細胞においてタンパク質の合成を刺激する意図がある[61]

グリコーゲン1 gにつき、脱水状態の筋肉内に最低でも3 - 4 gの水分が蓄えられる。炭水化物の摂取による負荷に水分補給が組み合わされると、最大で17 gとなる。競技会に向けて、ボディビルダーが炭水化物の摂取量を増やすと、競技会の当日に、上腕二頭筋の厚さが増加したことが確認された[62]

タンパク質

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粉末状のプロテイン牛乳と混ぜて作ったもの(写真右)

ボディビルダーは、体組成の維持および改善のため、総摂取カロリーの25 - 30%をタンパク質から取ることが推奨されている[63]。肉・魚・卵・乳製品といった動物性食品や、ナッツ、種子、豆類はタンパク質を豊富に含む。タンパク質を摂取することにより、筋肉の成長と筋力鍛錬後の回復の際にアミノ酸が供給される[64]

カゼインウェイは牛乳に多く含まれ、市販のプロテインに混ぜられることも多い。また、ウェイはインスリンの分泌を強力に刺激し、カゼインを摂取したときの2倍の量のインスリンが分泌される[65]

大豆には植物性のエストロゲン (Phytoestrogen) が含まれるが、これの濃度が高い場合、ホルモン受容体英語版の部位にて、男性の体内で分泌されるエストロゲン (Estrogen) と競合し、エストロゲンの作用は阻害される。過剰な量のエストロゲンは排泄され、脳下垂体の機能は阻害される[66][67]。男性のエストロゲン受容体の数は、女性のそれに比べると少ない[66]

ボディビルダーは炭水化物とタンパク質を沢山摂取するが、前述のとおり、この二つはインスリンの分泌を刺激するためである。なお、タンパク質はインスリンだけでなく、グルカゴン (Glucagon) の分泌も刺激する[68]。グルカゴンは、膵臓のランゲルハンス島にあるα細胞 (Alpha Cells) から分泌されるペプチド・ホルモンである[69]。グルカゴンの分泌を最も強力に刺激する要因は低血糖である。グルカゴンには、肝臓におけるブドウ糖の産生を刺激し、それによって正常な血糖値を維持しようとする作用がある。グルカゴンは、肝臓における脂質とアミノ酸の代謝にも関係し、安静時のエネルギー消費量を増加させる作用がある[69]。グルカゴンは、肝臓のブドウ糖産生を刺激することにより、血糖値の恒常性を維持する機能があり、これは人体において重要な役割を果たす[69]。インスリンの作用の一つであるブドウ糖の蓄積とは対照的に、グルカゴンはブドウ糖を動員するホルモンとして作用する。これらの対極的な作用に従い、高血糖になり、膵臓のβ細胞からインスリンが分泌されると、グルカゴンの分泌は阻害されるが、低血糖状態になると、グルカゴンの分泌が刺激される。正常な血糖値の維持機能は、インスリンとグルカゴンの分泌の均衡によって決まる[69]

食事の回数

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「食事誘発性熱産生」(Diet Induced Thermogenesis, 食べ物の摂取に伴う身体のエネルギー消費量の変化について示したもの)については、一日に複数回の食事を取っても、身体のエネルギー消費に影響は見られなかった[70][71][72]。「一日二食」と「一日七食」を比較しても、身体のエネルギー消費量や、食事誘発性熱産生には、有意な変化は観察されなかった[73]

栄養補助食品

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筋肉の構築と体脂肪の減少において、栄養の摂取は重要な役割を果たす。ボディビルダーはさまざまな栄養補助食品を摂取することもある[74]。筋肉量を増やし、脂肪減少を促進し、関節の健康状態を改善し、男性ホルモンの一種であるテストステロン (Testosterone) の産生量を増やし、鍛錬の質を強化し、栄養不足の防止を目的に、さまざまな製品が出ている。

薬物

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アナボリック・ステロイドや、ホルモン前駆体を服用することで筋肉肥大を目指すボディビルダーもいるが、アナボリック・ステロイドの服用の副作用として、肝臓の障害(肝毒性)、乳房の肥大、痤瘡、男性型脱毛症の早期発症、テストステロンの産生量の低下、精巣(睾丸)の萎縮が惹き起こされる可能性が指摘されている[75][76][77]。ヒト成長ホルモン (Human Growth Hormone, HGH) は、「女性的な容姿を維持しつつ」、大きな筋肉を付ける目的で、女性のボディビルダーが服用する[78]。高齢者においては、加齢に伴う生物学的な老化により、成長ホルモンやテストステロンの濃度が低下し、筋肉の発達に不利な代謝変化が多く生じるため、若者に比べて筋肉の成長が難しくなる。臨床研究によれば、ヒト成長ホルモン欠乏症が認められる成人に対する、少量のHGHを投与した治療は、筋肉量の増加、体脂肪の減少、骨密度と筋力の増加、心血管媒介変数の改善、重大な副作用を伴うことなく、生活の質に影響を与えることにより、身体組成が変化することが示された[79][80][81]齧歯類においては、金属結合性タンパク質遺伝子 (Metallothionein Gene) の発現を単離すると、「AKT信号伝達経路」が活性化し、筋管体積の増大、IIb型繊維 (Type IIb Fiber) の肥大、ひいては筋力の向上が観察された[82]

筋肉細胞への油の注入

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ボディビルダーの中には、筋肉を膨張させる目的で、筋肉細胞にシンソールと呼ばれる合成油脂を注射して取り込む者もいる[83]。シンソールを上腕二頭筋に注射した場合、一回の注射で約2.5 cm膨らませる作用がある[84]1990年代、ドイツ人のクリス・クラーク (Chris Clark) が、この合成油脂 (Synthol) を開発した[84][85]

アメリカ合衆国においては、アクリル樹脂は『Artefill』というブランド名でFDAから法的認可を受けているが、大臀筋を強化する目的での摂取は厳禁となっている[86]

ボディビルにおいては外見が重要視される。筋肉の発達や性能を高めるよりも、見た目を重視する目的から、薬物に手を出す者もいる[4]

競技会に出場するボディビルダーは、筋肉の大きさや不釣り合いな形状を均一なものにするため、筋肉にシンソールを注射していた。やがて、より筋骨隆々の肉体に見せる目的で、シンソールを腕に大量に注入するボディビルダーが現われるようになった。この行為は、「fluffing」(「膨張」)と呼ばれる[83][85]。世界重量挙げ連盟会長、マウロ・ディ・パスクワレ (Mauro Di Pasquale) は、筋肉に油を注入する行為について、「筋肉を大きく見せる作用こそあるが、実際には筋肉の弱体化に繋がる」と述べた[84]。ステロイドが実際の筋肉の大きさや質量を増やす作用があるのに対し、シンソールの注入は、筋肉を大きく見せる「だけ」である[84][85]。あくまで外見重視を目的とし、実際の筋肉の強さには貢献しない[87][85]

シンソールの内訳は、85%が油で、7.5%がリドカインLidocaine, 局所麻酔薬として使われる)、残りの7.5%はアルコールである[83]。規制された薬物ではなく、インターネットで購入も可能[88]

禁忌

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筋肉の外観を良くする目的で油を注入する行為は、ボディビルダーの間では一般的なものとなっている。1899年には廃れていたが、ステロイドの代替手段としてボディビルダーが再び使うようになった[89][90]。しかし、この行為は、肺塞栓症、神経の損傷、感染症、硬化性脂肪肉芽腫[91]脳卒中[83]、筋肉内に油で満たされたことで生じる肉芽腫嚢胞潰瘍を形成する可能性が報告されている[90][92][93]

稀な事例ではあるが、筋肉のさらなる損傷を避けるため、死亡事故を防ぐため、外科治療が必要となる場合がある[94]。筋肉にごま油を注射し続け、重度の筋肉痛紫斑で入院したボディビルダーの身体は、血管炎のようなアレルギー反応が起こっていた[95]。油を注入して膨らませた筋肉は、実際には発達しておらず、重力に負けて筋肉が垂れ下がって変形してしまい、そのせいで組織が炎症を起こす場合もある[88]。血管に直接注射することで、神経が押し潰されて痙攣を起こし、血管が潰れて血流が遮断されたり、致命的な肺塞栓症を惹き起こす危険がある[88]。シンソールの購入は違法ではないうえに、筋肉を膨らませる目的で作られたものでもないため、法律では防げない[88]

休息

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鍛錬のあとは、一日から二日かけて休ませる。これにより、筋肉に修復と治癒が発生する。体重を減らしたい場合でも、定期的な休息日を確保する。筋肉の発達において、休息を取ることは、運動と同じぐらいに重要な要素である[96]。重いものを持ち上げると、筋肉組織が壊れて裂ける。筋繊維が成長し、再び重いものを持てるようになるためには、筋繊維が完全に治癒して回復した状態に戻る必要がある[97]。回復手段として、鍛錬を終えたのち、按摩を行うボディビルダーもいる[98]

過剰鍛錬

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運動は身体に有益な効果をもたらす可能性があるが、精神衛生に悪影響をもたらす可能性も指摘されている[99]

Overtraining」(「過剰鍛錬」)とは、好ましくない水準に至るまで鍛錬を段階的に増やす行為を指す[100]。運動依存症 (Exercise Addiction) とは、身体、心理、精神に損壊をもたらす可能性のある、運動に対する過剰で不健康な依存状態を指す。運動に励む者たちは、自分の限界に挑戦し、向上を目指す傾向にあるが、このような欲求は、依存症に繋がることもある。これは、肉体的にも精神的にも多くの問題を惹き起こし、非常に深刻な結果をもたらす恐れがある。多くの場合、このような状態を生み出すのは、硬直した希薄な社会的美学である。過剰鍛錬は、運動療法による生理的な欲求が、身体の調整能力を上回っている状態でもある。過剰鍛錬の影響は全身に亘り、神経内分泌系、免疫系、心血管系、筋骨格系、生理学的な器官に悪影響を及ぼす[100]。過剰鍛錬を避けるにあたっては、健康的な睡眠、栄養の摂取、精神衛生の管理が重要となる。これらは、運動や休息計画と同様に、鍛錬計画の一部に組み込む必要がある[101]

高強度の鍛錬が頻繁である場合、中枢神経系が刺激されることでアドレナリンAdrenaline, 緊張状態に晒されると、副腎から分泌されるホルモン。心拍数、血圧、血糖値を上昇させる)が亢進し、安定した睡眠が妨害される原因となる[102]

筋肉異形症 (Muscle Dysmorphia) は、男性のボディービルダーが陥りやすい。「自分の筋肉量は不充分である」と感じており、鍛錬施設で何時間も過ごしたり、効果の無い補助食品に多額のお金を費やし、食事様式が異常になり、薬物の乱用に走ることがある[103]

雑誌『Muscle & Fitness』内の記事「Overtrain for Big Gains」では、「過剰鍛錬は短期間であれば有益である」と主張している。休息から再生する局面において、埋め合わせのために、意図的に過剰鍛錬に励むもので、「急性超微細循環」と呼ばれ、ソ連の競技選手たちがこの方法を採用していた[104]

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