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「北海道電力ネットワーク」の版間の差分

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当社の送電系統図(特別高圧のみ)は、[https://www.hepco.co.jp/corporate/con_service/bid_info.html 当社公式サイト]の「系統空き容量マップ」で公開されている。
当社の送電系統図(特別高圧のみ)は、[https://www.hepco.co.jp/corporate/con_service/bid_info.html 当社公式サイト]の「系統空き容量マップ」で公開されている。
=== 本系統 ===
=== 本系統 ===
「本系統」の中心にあるのが、[[札幌都市圏]]を概ね取り囲む275 kVの'''道央ループ系統'''である。これは、西野変電所([[札幌市]][[西区 (札幌市)|西区]])-道央北幹線(亘長32.93 km)-西当別変電所([[石狩郡]][[当別町]])-道央東幹線(亘長91.96 km)-南早来変電所([[勇払郡]][[安平町]])-道央南幹線(亘長73.92 km)-西双葉開閉所([[虻田郡]][[喜茂別町]])-道央西幹線(亘長40.86 km)-西野変電所というルートの全長240 km弱の環状線である。1978年(昭和53年)に建設を始め、2005年(平成17年)に完成した<ref>{{Cite journal|last=和田|first=章弘|year=2005|title=275 kV道央ループ系統が間もなく完成|journal=電気学会誌|volume=125|issue=11|page=721|DOI=10.1541/ieejjournal.125.721}}</ref>。
「本系統」の中心にあるのが、[[札幌都市圏]]を概ね取り囲む275 kVの'''道央ループ系統'''である。これは、西野変電所([[札幌市]][[西区 (札幌市)|西区]])-道央北幹線(亘長32.93 km)-西当別変電所([[石狩郡]][[当別町]])-道央東幹線(亘長91.96 km)-南早来変電所([[勇払郡]][[安平町]])-道央南幹線(亘長73.92 km)-西双葉開閉所([[虻田郡]][[喜茂別町]])-道央西幹線(亘長40.86 km)-西野変電所というルートの全長240 km弱の環状線である。1978年(昭和53年)に建設を始め、2005年(平成17年)に完成した<ref>{{Cite journal|last=和田|first=章弘|year=2005|title=275 kV道央ループ系統が間もなく完成|journal=電気学会誌|volume=125|issue=11|page=721|doi=10.1541/ieejjournal.125.721}}</ref>。


道央ループ系統のように大都市を取り囲む送電線は、「大都市外輪系統」と称し、日本では、[[三大都市圏]]にそれぞれ存在する。しかしながら、日本の多くの大都市は海沿いにあるため、外輪系統は山側のみの半円形であるものが多く、道央ループのように完全な環状のものは珍しい。
道央ループ系統のように大都市を取り囲む送電線は、「大都市外輪系統」と称し、日本では、[[三大都市圏]]にそれぞれ存在する。しかしながら、日本の多くの大都市は海沿いにあるため、外輪系統は山側のみの半円形であるものが多く、道央ループのように完全な環状のものは珍しい。
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北海道と本州の50 Hz系統同士は、2ルートで連系する。両系統間の連系には、[[直流送電|直流連系]]が採用された。このため、北海道と本州の東半分([[東北電力]]・[[東京電力パワーグリッド]])とは、標準周波数こそ同じ50 Hzであるものの、同期していない(交流の波形がピークに達するタイミングにずれがある)。
北海道と本州の50 Hz系統同士は、2ルートで連系する。両系統間の連系には、[[直流送電|直流連系]]が採用された。このため、北海道と本州の東半分([[東北電力]]・[[東京電力パワーグリッド]])とは、標準周波数こそ同じ50 Hzであるものの、同期していない(交流の波形がピークに達するタイミングにずれがある)。


最初に建設されたのは、[[電源開発]](Jパワー)の[[北本連系設備]]であり、北海道電力の七飯発電所([[亀田郡]][[七飯町]])と東北電力の上北変電所([[青森県]][[上北郡]][[七戸町]])とを結ぶ<ref>{{Cite journal|last=竹之内|first=達也|year=1980|title=北海道・本州間電力連系設備の概要|journal=電気学会雑誌|volume=100|issue=8|pages=727-734|DOI=10.11526/ieejjournal1888.100.727}}</ref>。函館変換所(函館市)と上北変換所(上北郡[[東北町]])との間が直流±250 kV双極の「北本直流幹線」(亘長167.4 km)である。途中、[[函館市]]と青森県[[下北郡]][[大間町]]との間で、直流の海底ケーブルによって[[津軽海峡]]の下をくぐる。1979年(昭和54年)12月に125 kV単極、150 MWで運用を開始し、翌年6月に250 kV単極、300 MWに増強された。その後、ケーブルを1本追加し、1993年(平成5年)3月からは、±250 kV双極で600 MWが送電できるようになった。
最初に建設されたのは、[[電源開発]](Jパワー)の[[北本連系設備]]であり、北海道電力の七飯発電所([[亀田郡]][[七飯町]])と東北電力の上北変電所([[青森県]][[上北郡]][[七戸町]])とを結ぶ<ref>{{Cite journal|last=竹之内|first=達也|year=1980|title=北海道・本州間電力連系設備の概要|journal=電気学会雑誌|volume=100|issue=8|pages=727-734|doi=10.11526/ieejjournal1888.100.727}}</ref>。函館変換所(函館市)と上北変換所(上北郡[[東北町]])との間が直流±250 kV双極の「北本直流幹線」(亘長167.4 km)である。途中、[[函館市]]と青森県[[下北郡]][[大間町]]との間で、直流の海底ケーブルによって[[津軽海峡]]の下をくぐる。1979年(昭和54年)12月に125 kV単極、150 MWで運用を開始し、翌年6月に250 kV単極、300 MWに増強された。その後、ケーブルを1本追加し、1993年(平成5年)3月からは、±250 kV双極で600 MWが送電できるようになった。


北海道電力が2019年(平成31年)3月に運用を開始したのが、'''新北本連系設備'''(300 MW)である。[[北斗市]]と青森県[[東津軽郡]][[今別町]]に直流・交流の変換設備(変換所)を設け、両変換所間を直流250 kV単極の「北斗今別直流幹線」(亘長122 km)で結んだ。津軽海峡の下をくぐる区間は、[[青函トンネル]]内に直流ケーブルを敷設した。
北海道電力が2019年(平成31年)3月に運用を開始したのが、'''新北本連系設備'''(300 MW)である。[[北斗市]]と青森県[[東津軽郡]][[今別町]]に直流・交流の変換設備(変換所)を設け、両変換所間を直流250 kV単極の「北斗今別直流幹線」(亘長122 km)で結んだ。津軽海峡の下をくぐる区間は、[[青函トンネル]]内に直流ケーブルを敷設した。
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北海道の有人離島は、[[北方地域|北方領土]]を除くと、[[礼文島]]、[[利尻島]]、[[焼尻島]]、[[天売島]]、[[奥尻島]]、[[厚岸小島]]の6島である。このうち、厚岸小島は、本土から伸びる1.4 kmの海底ケーブルで電気の供給を受けており、本土の「本系統」と一体である。残りの5島は「本系統」から隔絶した4個の単独系統を形成する。
北海道の有人離島は、[[北方地域|北方領土]]を除くと、[[礼文島]]、[[利尻島]]、[[焼尻島]]、[[天売島]]、[[奥尻島]]、[[厚岸小島]]の6島である。このうち、厚岸小島は、本土から伸びる1.4 kmの海底ケーブルで電気の供給を受けており、本土の「本系統」と一体である。残りの5島は「本系統」から隔絶した4個の単独系統を形成する。


[[礼文島]]は、人口約2,500の離島である。主力電源は、礼文発電所(内燃力発電所)である<ref name=":2">{{Cite journal|last=戸巻|first=雄一|year=2004|title=日本最北端の島嶼へ電力供給|journal=電気学会誌|volume=124|issue=12|page=797|DOI=10.1541/ieejjournal.124.797}}</ref>。これとは別に、[[三菱電機]]が「電源調達入札制度」を使って運営する内燃力発電所がある(1,210 kW、契約期間は、2004年(平成16年)7月1日から15年間)<ref name=":2" />。
[[礼文島]]は、人口約2,500の離島である。主力電源は、礼文発電所(内燃力発電所)である<ref name=":2">{{Cite journal|last=戸巻|first=雄一|year=2004|title=日本最北端の島嶼へ電力供給|journal=電気学会誌|volume=124|issue=12|page=797|doi=10.1541/ieejjournal.124.797}}</ref>。これとは別に、[[三菱電機]]が「電源調達入札制度」を使って運営する内燃力発電所がある(1,210 kW、契約期間は、2004年(平成16年)7月1日から15年間)<ref name=":2" />。


[[利尻島]]は、人口約5,000の離島である。島内の総需要は、最大で数千kWであり、主力電源は、内燃力発電の[[沓形発電所]]である<ref name=":2" />。離島の小規模単独系統に風力発電所を連系した場合の影響・効果を調べるため、2001年(平成13年)に250 kWの風車1基が建設された(利尻カムイ発電所)<ref>{{Cite journal|last=松村|first=喜治|year=2001|title=風力発電、電力会社としての取組み|journal=風力エネルギー|volume=25|issue=1|pages=79-84|DOI=10.11333/jwea1977.25.79}}</ref>。
[[利尻島]]は、人口約5,000の離島である。島内の総需要は、最大で数千kWであり、主力電源は、内燃力発電の[[沓形発電所]]である<ref name=":2" />。離島の小規模単独系統に風力発電所を連系した場合の影響・効果を調べるため、2001年(平成13年)に250 kWの風車1基が建設された(利尻カムイ発電所)<ref>{{Cite journal|last=松村|first=喜治|year=2001|title=風力発電、電力会社としての取組み|journal=風力エネルギー|volume=25|issue=1|pages=79-84|doi=10.11333/jwea1977.25.79}}</ref>。


==== 離島の発電所 ====
==== 離島の発電所 ====

2020年1月25日 (土) 18:19時点における版

北海道電力送配電事業分割準備株式会社
当社の本社(北海道電力本店)
当社の本社(北海道電力本店)
種類 株式会社
略称 ほくでんネットワーク
本社所在地 日本の旗 日本
北海道札幌市中央区大通東1丁目2番地
設立 2019年(平成31年)4月1日
業種 電気・ガス業
法人番号 7430001078663 ウィキデータを編集
資本金 1,000万円
決算期 3月31日
主要株主 北海道電力(100%)
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北海道電力ネットワーク株式会社(ほっかいどうでんりょくネットワーク)は、2020年(令和2年)4月に北海道北海道エリア)を供給区域とする一般送配電事業者となる予定の会社[1]北海道電力の100%子会社。2019年(平成31年)4月の設立時点の商号は、北海道電力送配電事業分割準備株式会社。公式の略称は、ほくでんネットワーク[2]

概要

当社は、北海道電力が営む「一般送配電事業」を引き継ぎ、送電線変電所などの送配電網を維持・運用し、発電事業者、小売電気事業者のような事業者を相手に、発電量調整供給、接続供給などの送配電サービスを提供する予定の会社である[1]電気事業法の大改正(電力システム改革)によって、2020年(令和2年)4月には、一般送配電事業の中立性の確保のため、発電事業や小売電気事業を営む電気事業者が一般送配電事業を兼営することが原則、禁止される(法的分離)。このため、北海道電力は、自社の一般送配電事業の引き継ぎ先として、当社を設立した。

当社は、2019年(平成31年)4月1日に「北海道電力送配電事業分割準備株式会社」の商号で設立された[1]。2020年(令和2年)4月1日、北海道電力から分割された一般送配電事業などを当社が承継する予定である[1]

電気事業の概要

北海道電力送配電事業分割準備株式会社は、2019年(令和元年)8月時点で、事業を行っていない。以下は、当社が承継する予定の事業(現時点では北海道電力の事業)に関する記述である。

供給区域 

当社が経済産業省の許可を受けて一般送配電事業を営む供給区域(供給エリア)は、北海道である(北海道エリア)。北海道の面積は、北方領土を含めて83,424 km2であるが、供給区域の面積は、北方領土を除いた78,421 km2であり、東北エリア(79,531 km2)に次ぐ日本第2位である[3]

北海道エリアの面積は、国土の約2割を占めるのに対し、エリア内の人口は、5百数十万人であり、日本の総人口の5%に満たない。北海道エリアと東北エリアは、面積で見ると互角であるが、エリア内の人口で見ると、北海道が東北の半分程度である。

北海道エリアの電力系統の概要

北海道エリアの電気の標準周波数は、50 Hzである[4]

2018年度(平成30年4月~平成31年3月)1年間の北海道エリアの需要電力量は、30,583百万kWhであり、同じ1年間の日本全国の需要電力量(896,473百万kWh)の約3.4%であった[5]。エリア別の需要電力量は、10エリア中第7位であり、第1位の東京エリア(289,387百万kWh)の1割強の規模であった[5]。北海道エリアより年間の需要電力量の小さいエリアは、北陸エリア(29,953万kWh)、四国エリア(27,382万kWh)、沖縄エリア(7,924万kWh)であった[5]。面積で互角の東北エリアの需要電力量は、82,787百万kWhであり[5]、北海道エリアの約2.7倍であった。

2018年度の最大需要電力は、2月8日(金曜日)午前10時に記録した542万kWであった[6]。北海道エリアは、2018年度、年間の最大需要電力を冬季に記録した唯一のエリアであった(他エリアは、冷房需要の増大する夏季に年間の最大需要電力を記録)[6]

一方、2018年度の最小需要電力は、6月10日(日曜日)午前8時に記録した246万kWであった(北海道胆振東部地震後の停電期間・節電要請期間を除く)[6]。最大需要電力は、最小需要電力の約2.2倍であった。

2013年度~2017年度(平成25年4月~平成30年3月)の5年間の平均で、北海道エリアの低圧電灯需要家1軒当たりの停電回数は、年間0.15回であり、1軒当たりの停電時間は、1年当たり15分間であった[7]。日本全国では、同じ期間の平均で、低圧電灯需要家1軒当たりの停電回数は、年間0.20回、1軒当たりの停電時間は、1年当たり20分間であった[7]。なお、最も停電が少なかったのは、関西エリアであり(停電回数0.09回、停電時間7分間)、次に停電が少なかったのは、東京エリア(停電回数0.11回、停電時間8分間)であった[7]

事業内容

北海道電力ネットワークは、一般送配電事業者として、北海道エリアの送電設備・変電設備・配電設備(送配電網)を建設・所有・保守するとともに、北海道エリアの電力系統を運用し、エリア内で各種の送配電サービスを提供する予定である。

接続供給

接続供給は、発電所など(受電地点)から電気を当社の送配電網に受け入れるのと同時に、当社の供給エリア内の需要家の負荷設備(供給地点)に当社の送配電網から電気を供給するサービス(要するに、電気の宅配サービス)である。電気の需要家が直接、申し込むサービスではなく、発電所から調達した電気を需要家に販売する小売電気事業者が利用するサービスである。

北海道エリアでは、需要家に電気を供給する電気方式・電圧・周波数は、次のとおりとなっている。

  • 低圧電灯
  • 低圧動力
  • 高圧
    • 交流三相3線式・6,000 V・50 Hz
  • 特別高圧
    • 交流三相3線式・30,000 V・50 Hz
    • 交流三相3線式・60,000 V・50 Hz

振替供給

当社の送配電網は、他社の送配電網と会社間連系点でつながっている。振替供給は、発電所など(受電地点)から電気を当社の送配電網に受け入れるのと同時に、受け入れた地点とは異なる会社間連系点で当社の送配電網から電気を供給するサービスである。

発電量調整供給

発電量調整供給は、発電所(受電地点)から電気を当社の送配電網に受け入れる際に、計画値の電力量に対する不足分(不足インバランス)を補給し、余剰分(余剰インバランス)を引き取るサービスである。発電所を運営する発電事業者が契約するサービスである。

需要抑制量調整供給

需要抑制量調整供給は、当社のエリア内の需要家が需要抑制した分の電力量を、需要家の代わりにネガワット事業者が引き取る際に、計画値の電力量に対する不足分(不足インバランス)があれば補給し、余剰分(余剰インバランス)があれば引き取るサービスである。

最終保障供給

最終保障供給は、いずれの小売電気事業者からも電気の供給を受けていない高圧・特別高圧の需要家に対し、1年未満の契約期間中、電気を供給するサービスである。

離島供給

離島供給は、礼文島礼文郡礼文町)、利尻島利尻郡利尻町利尻富士町)、焼尻島天売島苫前郡羽幌町の一部)、奥尻島奥尻郡奥尻町)の需要家に電気を供給するサービスである。

再生可能エネルギー電気の固定価格買取

当社の送配電網に連系する再生可能エネルギー発電設備のうち、固定価格買取制度の認定を受けたものから、一定期間、電気を固定価格で買い取る。買い取った電気は、自社で使用する分以外は、小売電気事業者に卸供給する。買取価格と卸供給価格との間に生ずる逆ザヤは、費用負担調整機関(低炭素投資促進機構)から受け取る交付金で穴埋めする。この交付金の原資は、小売電気事業者が需要家から電気料金と合わせて徴収する再生可能エネルギー発電促進賦課金である。

設備

函館市に現存する日本最古のコンクリート電柱の写真
函館市に現存する日本最古のコンクリート電柱。函館水電が1923年(大正12年)に設置した[8]

2019年(平成31年)3月時点で、送電設備として、架空電線路の亘長が8,063 km、地中電線路の亘長が388 km、支持物(鉄塔など)が45,674基ある[9]。また、変電設備として、変電所372箇所、変換所2箇所がある[9]。さらに、配電設備として、架空電線路の亘長が66,681 km、地中配電線路の亘長が1,601 km、支持物(電柱など)が1,482,778基、変圧器(柱上変圧器など)が553,670台ある[9]

当社の設備で採用する電圧階級は、275 kV、187 kV、66 kV、33 kV、22 kVである[4]。一部の系統には、110 kV、100 kVを採用する[4]。本州・四国・九州の主要な送電線は500 kV(50万ボルト)であるが、北海道に500 kVの送電線はない。

当社の送配電網は、北海道本島に広がる本系統と、本系統から孤立した四つの離島系統に分けられる。離島系統は、北から順に、礼文系統礼文島)、利尻系統利尻島)、焼尻系統焼尻島天売島)、奥尻系統奥尻島)である。焼尻島と天売島との間には、5.5 kmの海底ケーブルが敷設されており[10]、両島の系統は一体である。

当社の送電系統図(特別高圧のみ)は、当社公式サイトの「系統空き容量マップ」で公開されている。

本系統

「本系統」の中心にあるのが、札幌都市圏を概ね取り囲む275 kVの道央ループ系統である。これは、西野変電所(札幌市西区)-道央北幹線(亘長32.93 km)-西当別変電所(石狩郡当別町)-道央東幹線(亘長91.96 km)-南早来変電所(勇払郡安平町)-道央南幹線(亘長73.92 km)-西双葉開閉所(虻田郡喜茂別町)-道央西幹線(亘長40.86 km)-西野変電所というルートの全長240 km弱の環状線である。1978年(昭和53年)に建設を始め、2005年(平成17年)に完成した[11]

道央ループ系統のように大都市を取り囲む送電線は、「大都市外輪系統」と称し、日本では、三大都市圏にそれぞれ存在する。しかしながら、日本の多くの大都市は海沿いにあるため、外輪系統は山側のみの半円形であるものが多く、道央ループのように完全な環状のものは珍しい。

道央ループには、放射状をなす重要な送電線が接続する。北新得変電所(上川郡)からの275 kV狩勝幹線(亘長114.25 km)は、南早来変電所でループに接続する。北斗変換所(北斗市)からの275 kV道南幹線(亘長172.70 km)は、西双葉開閉所でループに接続する。

道内唯一の原子力発電所である泊発電所は、2ルートの275 kV送電線で道央ループに連系する。西野変電所に達する泊幹線(亘長66.95 km)と、西双葉開閉所に達する後志幹線(亘長66.36 km)である。後志幹線の途中からは京極幹線(亘長2.38 km)が分岐し、その先には純揚水式の京極発電所がある。

苫東厚真発電所(石炭火力発電所、勇払郡厚真町)と石狩湾新港発電所(LNG火力発電所、小樽市)も、275 kV送電線で道央ループに連系する。

次に、187 kV送電線の主なものは、函館幹線(北七飯変電所-双葉開閉所、亘長164.01 km)、道北幹線(旭川嵐山開閉所-西当別変電所、亘長123.39 km)、道東幹線(宇円別変電所-北新得変電所、亘長109.96 km)、室蘭西幹線(室蘭変電所-西札幌変電所、亘長104.46 km)である。また、北海道電力の設備ではないが、電源開発(Jパワー)の187 kV十勝幹線(亘長214.4 km)が同社の足寄変電所(足寄郡足寄町)から北海道電力の南札幌変電所(札幌市豊平区)に達する。

北本連系設備

北海道と本州の50 Hz系統同士は、2ルートで連系する。両系統間の連系には、直流連系が採用された。このため、北海道と本州の東半分(東北電力東京電力パワーグリッド)とは、標準周波数こそ同じ50 Hzであるものの、同期していない(交流の波形がピークに達するタイミングにずれがある)。

最初に建設されたのは、電源開発(Jパワー)の北本連系設備であり、北海道電力の七飯発電所(亀田郡七飯町)と東北電力の上北変電所(青森県上北郡七戸町)とを結ぶ[12]。函館変換所(函館市)と上北変換所(上北郡東北町)との間が直流±250 kV双極の「北本直流幹線」(亘長167.4 km)である。途中、函館市と青森県下北郡大間町との間で、直流の海底ケーブルによって津軽海峡の下をくぐる。1979年(昭和54年)12月に125 kV単極、150 MWで運用を開始し、翌年6月に250 kV単極、300 MWに増強された。その後、ケーブルを1本追加し、1993年(平成5年)3月からは、±250 kV双極で600 MWが送電できるようになった。

北海道電力が2019年(平成31年)3月に運用を開始したのが、新北本連系設備(300 MW)である。北斗市と青森県東津軽郡今別町に直流・交流の変換設備(変換所)を設け、両変換所間を直流250 kV単極の「北斗今別直流幹線」(亘長122 km)で結んだ。津軽海峡の下をくぐる区間は、青函トンネル内に直流ケーブルを敷設した。

以上の2ルートにより、北海道と東北地方の間で900 MW(90万kW)の電力を融通することができる(泊発電所3号機の電気出力912 MWに匹敵する)。

今後の計画

日本全国の電気事業者が参加して全国レベルの計画を策定する電力広域的運営推進機関は、北本連系設備をさらに300 MW増強する計画を検討している。2019年(平成31年)4月時点では、新北本連系と同じ北斗-今別ルートで、概算工事費430億円、工期5年を見込む(第6回 電力レジリエンス等に関する小委員会)。

道北には風力発電に適した場所が多いが、送電線の容量不足が障害となっていんる。そこで、資源エネルギー庁の補助金を受けて、北海道北部風力送電株式会社が稚内市天塩郡豊富町から中川郡中川町まで送電線を建設中である(同社には北海道電力も出資している)。

離島系統

北海道の有人離島は、北方領土を除くと、礼文島利尻島焼尻島天売島奥尻島厚岸小島の6島である。このうち、厚岸小島は、本土から伸びる1.4 kmの海底ケーブルで電気の供給を受けており、本土の「本系統」と一体である。残りの5島は「本系統」から隔絶した4個の単独系統を形成する。

礼文島は、人口約2,500の離島である。主力電源は、礼文発電所(内燃力発電所)である[13]。これとは別に、三菱電機が「電源調達入札制度」を使って運営する内燃力発電所がある(1,210 kW、契約期間は、2004年(平成16年)7月1日から15年間)[13]

利尻島は、人口約5,000の離島である。島内の総需要は、最大で数千kWであり、主力電源は、内燃力発電の沓形発電所である[13]。離島の小規模単独系統に風力発電所を連系した場合の影響・効果を調べるため、2001年(平成13年)に250 kWの風車1基が建設された(利尻カムイ発電所)[14]

離島の発電所 

以下の発電所は、2020年(令和2年)4月に北海道電力から北海道電力ネットワークが承継する。2020年(令和2年)4月の「法的分離」により、一般送配電事業者が発電事業を兼営することは原則、禁じられるが、一般送配電事業者による離島の需要に応ずる電気の供給(離島供給)のための発電事業の兼営は、禁止対象外である。

北海道の離島の発電所
名称 種類 出力(kW) 所在地 座標
礼文発電所 内燃力(重油) 4,450 礼文郡礼文町礼文島 北緯45度22分19秒 東経141度03分33秒 / 北緯45.371985度 東経141.059195度 / 45.371985; 141.059195 (礼文発電所)
鴛泊発電所 水力(水路式) 170 利尻郡利尻富士町利尻島 北緯45度13分49秒 東経141度15分45秒 / 北緯45.230363度 東経141.262540度 / 45.230363; 141.262540 (鴛泊発電所)
沓形発電所 内燃力(重油) 7,650 利尻郡利尻町(利尻島) 北緯45度11分59秒 東経141度08分36秒 / 北緯45.199704度 東経141.143410度 / 45.199704; 141.143410 (沓形発電所)
利尻カムイ発電所 風力 250 利尻郡利尻町(利尻島) 北緯45度10分06秒 東経141度08分49秒 / 北緯45.168382度 東経141.147072度 / 45.168382; 141.147072 (利尻カムイ発電所)
清川発電所 水力(水路式) 75 利尻郡利尻富士町(利尻島) 北緯45度08分38秒 東経141度19分10秒 / 北緯45.144011度 東経141.319463度 / 45.144011; 141.319463 (清川発電所)
焼尻発電所 内燃力(重油) 1,110 苫前郡羽幌町焼尻島 北緯44度26分42秒 東経141度25分04秒 / 北緯44.444909度 東経141.417648度 / 44.444909; 141.417648 (焼尻発電所)
奥尻発電所 内燃力(重油) 4,000 奥尻郡奥尻町奥尻島 北緯42度10分27秒 東経139度30分25秒 / 北緯42.174052度 東経139.507023度 / 42.174052; 139.507023 (奥尻発電所)
ホヤ石川発電所 水力(水路式) 170 奥尻郡奥尻町(奥尻島) 北緯42度07分05秒 東経139度25分11秒 / 北緯42.118164度 東経139.419680度 / 42.118164; 139.419680 (ホヤ石川発電所)

沿革

2013年(平成25年)4月、第2次安倍内閣は、「電力システムに関する改革方針」を閣議決定した。この方針に沿って、内閣は、2013年(平成25年)から2015年(平成28年)にかけて、電気事業法の大幅な改正案を3回に分けて国会に提出し、改正案は全て成立した。電力システム改革である。

第2弾の改正により、2016年(平成28年)4月、電気の小売が全面的に自由化されるとともに、一般電気事業者という類型が廃止された。従来、一般電気事業者として道内で発電・送配電・小売の全てを手掛けてきた北海道電力は、改正電気事業法では、発電事業者 兼 一般送配電事業者小売電気事業者と位置付けられた。一般送配電事業は許可制として、北海道電力が道内の送配電網をほぼ独占することになった。

改正電気事業法のもと、発電と小売の分野で様々な事業者が公平な条件で健全な競争を行うためには、実質的に地域独占の一般送配電事業者が全ての発電事業者・小売電気事業者に対して中立の立場で、これらの事業者に公平に送配電サービスを提供することが必要である。一般送配電事業者による発電事業や小売電気事業の兼営は、一般送配電事業の中立性の確保を難しくするため、第3弾の改正で、これを禁止することになった。

このため、旧一般電気事業者各社は、一般送配電事業を子会社に移管するなど、第3弾改正の施行に対応する必要に迫られた。北海道電力でも、一般送配電事業を子会社に移管する準備として、2018年(平成30年)4月、社内に送配電カンパニーを設置した[15]。その後、送配電カンパニーの事業を2020年4月に子会社に移管する方針を正式に決定し、発表した[16]。この方針に従い、2019年(平成31年)4月1日、北海道電力の100%子会社として、北海道電力送配電事業分割準備株式会社(準備会社)が設立された[17]。同社の初代社長には、当時、送配電カンパニー社長であった藤井裕(現・北海道電力社長)が就任した。

同月、北海道電力と準備会社との間で、吸収分割契約が結ばれた[1]。同年6月、北海道電力の株主総会で、この契約が承認された[18]。したがって、この契約が発効する2020年(令和2年)4月、北海道電力から準備会社に送配電カンパニーの事業が移管される。同時に、準備会社は、北海道電力ネットワーク株式会社に商号を変更する予定である。

出典

  1. ^ a b c d e 送配電部門の法的分離に伴う分社化(会社分割)について”. 北海道電力株式会社 (2019年4月25日). 2019年6月9日閲覧。
  2. ^ 北海道電力株式会社 (2019年6月27日). “送配電部門の法的分離に伴う吸収分割契約の承認可決および北海道電力ネットワーク株式会社のロゴマークの決定について”. 北海道電力株式会社. 2019年8月24日閲覧。
  3. ^ 経済産業省資源エネルギー庁, ed (2018). 2017年版電気事業便覧. 一般財団法人経済産業調査会. p. 27 
  4. ^ a b c 北海道電力株式会社 (2015). 系統計画策定マニュアル. 北海道電力株式会社. p. 4 
  5. ^ a b c d 電力広域的運営推進機関 (2019). 電力需給及び電力系統に関する概況: 2018年度の実績. 電力広域的運営推進機関. p. 7 
  6. ^ a b c 電力広域的運営推進機関 (2019). 電力需給及び電力系統に関する概況: 2018年度の実績. 電力広域的運営推進機関. pp. 11-13 
  7. ^ a b c 電力広域的運営推進機関 (2018). 電気の質に関する報告書: 2017年度実績. 電力広域的運営推進機関. pp. 14-17 
  8. ^ 函館市. “日本最古のコンクリート電柱”. 函館市公式観光情報. 函館市. 2019年8月24日閲覧。
  9. ^ a b c 北海道電力株式会社 (2019). 第95期有価証券報告書. 北海道電力株式会社. p. 16 
  10. ^ 離島への電力供給”. 北海道電力株式会社. 2019年6月9日閲覧。
  11. ^ 和田, 章弘 (2005). “275 kV道央ループ系統が間もなく完成”. 電気学会誌 125 (11): 721. doi:10.1541/ieejjournal.125.721. 
  12. ^ 竹之内, 達也 (1980). “北海道・本州間電力連系設備の概要”. 電気学会雑誌 100 (8): 727-734. doi:10.11526/ieejjournal1888.100.727. 
  13. ^ a b c 戸巻, 雄一 (2004). “日本最北端の島嶼へ電力供給”. 電気学会誌 124 (12): 797. doi:10.1541/ieejjournal.124.797. 
  14. ^ 松村, 喜治 (2001). “風力発電、電力会社としての取組み”. 風力エネルギー 25 (1): 79-84. doi:10.11333/jwea1977.25.79. 
  15. ^ 組織の見直しについて: 法的分離への円滑な移行とさらなる成長を目指して”. 北海道電力株式会社 (2017年12月22日). 2019年6月30日閲覧。
  16. ^ 送配電部門の法的分離に伴う分社化の方向性について”. 北海道電力株式会社 (2018年9月20日). 2019年6月30日閲覧。
  17. ^ 一般送配電事業の分社化に向けた分割準備会社の設立について”. 北海道電力株式会社 (2019年2月27日). 2019年6月30日閲覧。
  18. ^ 送配電部門の法的分離に伴う吸収分割契約の承認可決および北海道電力ネットワーク株式会社のロゴマークの決定について”. 北海道電力株式会社 (2019年6月27日). 2019年6月30日閲覧。

関連項目

外部リンク