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政府税制調査会は、[[内閣総理大臣]]の諮問に応じて、[[租税]]制度に関する基本的事項を調査審議する(内閣府本府組織令31条、33条。[[税制調査会令]])。[[日本国政府|政府]]にあるさまざまな[[審議会]]の中のひとつだが、その発足の歴史は古く、[[1950年代]]後半から現在まで続いている。何度か改廃があったが、おおむね正式名称は「[[税制調査会]]」とされてきた。ただ、政党(主に自由民主党)に党内機関として同名の調査会が置かれていることから、報道等では区別のため「政府」を冠したこの通称が用いられる。かつては[[自由民主党税制調査会|自民党税調]]のドンと呼ばれた[[山中貞則]]に「政府税調は軽視しない。無視する」とまでいわれるほど実権のない存在であったが、[[1990年代]]以降は、[[連立政権]]の常態化や山中個人の影響力の後退により、税制審議の主導権は次第に自民党税調から政府税調に移ったと指摘されるようになった。ただし自民党税調は、[[自公連立政権]]下においても、依然として税制改正の内容を裁断する実権を保持してきた。 |
政府税制調査会は、[[内閣総理大臣]]の諮問に応じて、[[租税]]制度に関する基本的事項を調査審議する(内閣府本府組織令31条、33条。[[税制調査会令]])。[[日本国政府|政府]]にあるさまざまな[[審議会]]の中のひとつだが、その発足の歴史は古く、[[1950年代]]後半から現在まで続いている。何度か改廃があったが、おおむね正式名称は「[[税制調査会]]」とされてきた。ただ、政党(主に自由民主党)に党内機関として同名の調査会が置かれていることから、報道等では区別のため「政府」を冠したこの通称が用いられる。かつては[[自由民主党税制調査会|自民党税調]]のドンと呼ばれた[[山中貞則]]に「政府税調は軽視しない。無視する」とまでいわれるほど実権のない存在であったが、[[1990年代]]以降は、[[連立政権]]の常態化や山中個人の影響力の後退により、税制審議の主導権は次第に自民党税調から政府税調に移ったと指摘されるようになった。ただし自民党税調は、[[自公連立政権]]下においても、依然として税制改正の内容を裁断する実権を保持してきた。 |
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[[加藤寛 (経済学者)|加藤寛]]([[慶應義塾大学]][[名誉教授]])や[[石弘光]]([[一橋大学]]名誉教授)が会長を務めた1990年から2006年までは大きな影響力を持ったが、2006年の[[第1次安倍内閣]]発足時に石会長の再任人事が覆され<ref>[https://www.yomiuri.co.jp/economy/20181015-OYT1T50084.html 「モノ言えぬ政府税調…インサイド財務省」]読売新聞2018年10月17日 10時00分</ref>、さらに、[[2009年]]に誕生した[[鳩山由紀夫内閣]]において、これまでの税制改正は[[与党]]の税制調査会と政府の税制調査会においてバラバラに議論され、また、その実質的な意思決定は税制改正について法的な権限や責任を有しない与党の税制調査会で行われてきた事実に対して、抜本的に体制を見直すべきという提言がなされた。これを受け、これまでの与党の税制調査会と政府の税制調査会の機能を一元化し、政府の責任の下で税制改正の議論を行うために、[[財務大臣]]を会長とし、[[政治家]]から構成される「税制調査会」が政府に新しく設置された<ref>{{Cite web |author=閣議決定 |date=2009-09-29 |url= |
[[加藤寛 (経済学者)|加藤寛]]([[慶應義塾大学]][[名誉教授]])や[[石弘光]]([[一橋大学]]名誉教授)が会長を務めた1990年から2006年までは大きな影響力を持ったが、2006年の[[第1次安倍内閣]]発足時に石会長の再任人事が覆され<ref>[https://www.yomiuri.co.jp/economy/20181015-OYT1T50084.html 「モノ言えぬ政府税調…インサイド財務省」]読売新聞2018年10月17日 10時00分</ref>、さらに、[[2009年]]に誕生した[[鳩山由紀夫内閣]]において、これまでの税制改正は[[与党]]の税制調査会と政府の税制調査会においてバラバラに議論され、また、その実質的な意思決定は税制改正について法的な権限や責任を有しない与党の税制調査会で行われてきた事実に対して、抜本的に体制を見直すべきという提言がなされた。これを受け、これまでの与党の税制調査会と政府の税制調査会の機能を一元化し、政府の責任の下で税制改正の議論を行うために、[[財務大臣]]を会長とし、[[政治家]]から構成される「税制調査会」が政府に新しく設置された<ref>{{Cite web |author=閣議決定 |date=2009-09-29 |url=https://www.cao.go.jp/zei-cho/history/2009-2012/gijiroku/zeicho/2009/__icsFiles/afieldfile/2010/11/22/0929zeicho.pdf |title=税制調査会の設置について |publisher=[https://www.cao.go.jp/zei-cho/history/2009-2012/gijiroku/zeicho/2009/21zen1kai.html 平成21年度第1回税制調査会(10月8日)資料一覧] |accessdate=2014-02-16 |format=PDF}}</ref><ref>平成22年度税制改正大綱2010年12月22日。</ref>。そのため、従前の税制調査会は廃止された<ref>内閣府本府組織令の一部を改正する政令(平成21年10月7日政令第243号)。</ref>。また、政府税調の下に、中長期的な税制の在り方について助言・報告させるため、[[専門家]]からなる専門家委員会が設置された。 |
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2020年2月27日 (木) 13:32時点における版
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税制調査会(ぜいせいちょうさかい)は、内閣府の審議会等の一つ。内閣総理大臣の諮問に応じて、租税制度に関する基本的事項を調査審議する(内閣府本府組織令31条、33条。税制調査会令)。税調(ぜいちょう)ともいう。なお、自由民主党内の審議機関の一つである税制調査会(自民党税制調査会、自民税調)や、民主党政策調査会におかれていた税制調査会などと区別するため、政府税制調査会(政府税調)と呼ばれることも多い。
概要
政府税制調査会は、内閣総理大臣の諮問に応じて、租税制度に関する基本的事項を調査審議する(内閣府本府組織令31条、33条。税制調査会令)。政府にあるさまざまな審議会の中のひとつだが、その発足の歴史は古く、1950年代後半から現在まで続いている。何度か改廃があったが、おおむね正式名称は「税制調査会」とされてきた。ただ、政党(主に自由民主党)に党内機関として同名の調査会が置かれていることから、報道等では区別のため「政府」を冠したこの通称が用いられる。かつては自民党税調のドンと呼ばれた山中貞則に「政府税調は軽視しない。無視する」とまでいわれるほど実権のない存在であったが、1990年代以降は、連立政権の常態化や山中個人の影響力の後退により、税制審議の主導権は次第に自民党税調から政府税調に移ったと指摘されるようになった。ただし自民党税調は、自公連立政権下においても、依然として税制改正の内容を裁断する実権を保持してきた。
加藤寛(慶應義塾大学名誉教授)や石弘光(一橋大学名誉教授)が会長を務めた1990年から2006年までは大きな影響力を持ったが、2006年の第1次安倍内閣発足時に石会長の再任人事が覆され[1]、さらに、2009年に誕生した鳩山由紀夫内閣において、これまでの税制改正は与党の税制調査会と政府の税制調査会においてバラバラに議論され、また、その実質的な意思決定は税制改正について法的な権限や責任を有しない与党の税制調査会で行われてきた事実に対して、抜本的に体制を見直すべきという提言がなされた。これを受け、これまでの与党の税制調査会と政府の税制調査会の機能を一元化し、政府の責任の下で税制改正の議論を行うために、財務大臣を会長とし、政治家から構成される「税制調査会」が政府に新しく設置された[2][3]。そのため、従前の税制調査会は廃止された[4]。また、政府税調の下に、中長期的な税制の在り方について助言・報告させるため、専門家からなる専門家委員会が設置された。
2010年2月5日に政府は、閣議決定に基づき運営されている税制調査会を法制化するため、政府の政策決定過程における政治主導の確立のための内閣法等の一部を改正する法律案を提出したが、2011年5月12日に撤回された[5]。
2012年の第46回衆議院議員総選挙の結果、民主党が下野し、自公連立政権である第2次安倍内閣が発足すると、政治家から構成される民主党政権下の政府税調を廃止した上で有識者による審議会としての政府税調を復活させることが閣議決定され[6]、2013年2月1日に内閣府本府組織令が改正されると同時に新たな税制調査会令が公布された[7]。
税制調査会設置の推移
- 税制調査会(税制調査会官制(昭和21年勅令第594号)による国の機関)※1949年6月1日廃止
- 税制調査会(閣議決定により内閣に設置)※1953年8月設置、同年11月調査終了
- 臨時税制調査会(閣議決定により内閣に設置)※1955年8月設置、1957年6月廃止
- 税制特別調査会(閣議決定により大蔵省に設置)※1957年6月設置、廃止時期不詳
- 税制調査会(総理府設置法(昭和24年法律第127号)等による総理府の附属機関)※約3年間の時限的機関として1959年5月4日設置、1962年3月31日限り廃止
- 税制調査会(総理府設置法等による総理府の附属機関)※1962年4月24日設置
- 税制調査会(総理府設置法等による総理府の審議会等)※設置法一部改正により1984年7月1日附属機関から審議会等へ
- 税制調査会(内閣府設置法(平成11年法律第89号)等による内閣府の審議会等)※中央省庁再編に伴い2001年1月6日総理府から内閣府へ
歴代会長
旧内閣府設置法等による税制調査会
代 | 氏名 | 在任時期 | 備考 |
---|---|---|---|
初代 | 中山伊知郎 | 1959年 - 1965年 | 一橋大学学長 |
第2代 | 東畑精一 | 1965年 - 1974年 | 東京大学教授 |
第3代 | 小倉武一 | 1974年 - 1990年 | 元農林省事務次官 |
第4代 | 加藤寛 | 1990年 - 2000年 | 慶應義塾大学教授 |
第5代 | 石弘光 | 2000年 - 2006年 | 一橋大学学長 |
第6代 | 本間正明 | 2006年 | 大阪大学大学院教授 |
第7代 | 香西泰 | 2006年 - 2009年 | 日本経済研究センター元会長 |
「税制調査会の設置について(閣議決定)」による税制調査会
会長は財務大臣。
代 | 氏名 | 在任時期 | 備考 |
---|---|---|---|
初代 | 藤井裕久 | 2009年9月 - 2010年1月 | 鳩山由紀夫内閣 |
第2代 | 菅直人 | 2010年1月 - 同年6月 | 鳩山由紀夫内閣 |
第3代 | 野田佳彦 | 2010年6月 - 2011年9月 | 菅内閣 |
第4代 | 安住淳 | 2011年9月 - 2012年10月 | 野田内閣 |
第5代 | 城島光力 | 2012年10月 - 同年12月 | 野田第3次改造内閣 |
内閣府設置法等による税制調査会
代 | 氏名 | 在任時期 | 備考 |
---|---|---|---|
初代 | 中里実 | 2013年 - | 東京大学教授 |
脚注
- ^ 「モノ言えぬ政府税調…インサイド財務省」読売新聞2018年10月17日 10時00分
- ^ 閣議決定 (2009年9月29日). “税制調査会の設置について” (PDF). 平成21年度第1回税制調査会(10月8日)資料一覧. 2014年2月16日閲覧。
- ^ 平成22年度税制改正大綱2010年12月22日。
- ^ 内閣府本府組織令の一部を改正する政令(平成21年10月7日政令第243号)。
- ^ “議案審議経過情報”. 衆議院. 2011年5月22日閲覧。
- ^ “政府、税制調査会を再設置 有識者会議で”. 日本経済新聞. (2013年1月29日) 2013年2月24日閲覧。
- ^ 官報5977号2面 (PDF) (国立印刷局、2013年2月1日発行、同年2月4日閲覧)
外部リンク
- 税制調査会 - 内閣府のサイト