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「孤立した言語」の版間の差分

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2021年3月3日 (水) 21:53時点における版

孤立した言語(こりつしたげんご、language isolate、isolated language)とは、現存する他の言語と系統関係が立証されておらず、他の言語と共通する祖語を再建できない系統不明の言語である。孤立言語とも。

なお、古典的な言語類型論における形態論的な分類の一つである孤立語(こりつご、isolating language)とはまったく異なる概念である。

概要

孤立した言語の事例として、アイヌ語朝鮮語バスク語ブルシャスキー語ギリヤーク語、その他「古シベリア語」と呼ばれてきた諸語[1]などが挙げられる。ある言語が他の言語と系統関係があるかどうかは言語学者により見解が異なり、ここに挙げた言語も何らかの語族と系統関係が見いだされる(すなわち、孤立していない)と主張されることもある。

系統関係の不明な孤立した言語の分布地域は世界的にみると比較的限定されており、それは新石器時代以降の文明の中心都市からすると周辺地域ないし孤立地域に属している[2]。人類の発祥地とされるアフリカや、ユーラシアの中心部やヨーロッパなどの地域における諸言語の分布は相対的に等質的であり、また系統関係もかなり詳細まで判明している。地理的な孤立地域における孤立した言語の例としては、ヨーロッパではピレネー山脈のバスク語のみであり、またインド亜大陸ではパキスタン北部山岳地帯のブルシャスキー語インド中央部のニハリ語ネパールクスンダ語がある程度である。

孤立した言語は下位言語が1つだけの語族と捉えることもできる。従ってその言語の下位方言を個別の言語とみることによって、孤立した言語でなくなる場合がある。日本語も系統関係は不明で孤立した言語とも考えられるが、言語学的には琉球諸語を別言語と認定する見解があり、その場合は琉球諸語や八丈語とともに日琉語族とされる。同じような例が朝鮮語済州語グルジア語カルトヴェリ語族にもある。

孤立した言語の一覧

(英語でのアルファベット順)

アフリカ

言語 地域 母語者数 備考
バンギメ語 マリ 3,500 (2017)
ビラレ語英語版 (オンゴタ語) エチオピア・南部諸民族州南オモ地域 12 (2012) アフロ・アジア語族とされることもある。
ハヅァ語 タンザニア 1,000人 (2012) かつては「コイサン語族」に含まれていた。
ジャラー語 ナイジェリアバウチ州 0 (2010) 危機に瀕する言語
ラール語 チャド 750 (2000) ニジェール・コルドファン語族に挙げられる場合がある。
サンダウェ語 タンザニア・ドドマ州 6万±3万 (2013) クワディ・コエ語族とともに「コエ・サンダウェ語族」を成すとする説がある。

ユーラシア

言語 地域 母語者数 備考
日本語 日本 1億2500万 (2010) 八丈語琉球諸語(または琉球方言)を独立した言語とみなす場合は日琉語族となる。
アイヌ語 日本北海道 2 危機に瀕する言語
バスク語 スペインフランスバスク地方 75万 (2016) 紀元前1世紀頃使われていたアクイタニア語が直接的な先祖に当ると考えられている(バスク語族)。またイベリア語との関係を主張する言語学者もいる。西ヨーロッパの基層言語と推定する説もある(バスコン語基層説)。ある言語学者はコーカサス諸語との関係を指摘するが反論がある。
ブルシャスキー語 パキスタン北部 11.2万 (2016) 一部の言語学者はケット語との関係性を見出そうとしている。その場合、仮説上のデネ・エニセイ語族に含まれる可能性もあるが、2013年現在、研究は初歩段階。
エラム語 古代:エラム帝国ペルシア帝国 0 死語ドラヴィダ語族と関連すると推測されることがある。
エトルリア語 古代:エトルリア 0 死語。おそらくティルセニア語族を成す。
フルソ語英語版 インドアルナーチャル・プラデーシュ州 3,000 (2007) シナ・チベット語族とされてきたが、孤立した言語の可能性がある。(アルナーチャルの孤立した言語および独立語族を参照)
朝鮮語 韓国朝鮮民主主義人民共和国中国吉林省 7700万 (2010) 高句麗語(死語)との関連についてさまざまな議論があり、アルタイ諸語に含むとされる事がある。また日本語との関係を示唆する説もある。済州語を独立した言語とみなす場合は朝鮮語族となる。
クスンダ語 ネパール 87 (2014) 危機に瀕する言語
ミジュ語英語版 (カマン語) インドアルナーチャル・プラデーシュ州 1.8万 (2006) シナ・チベット語族とされてきたが、孤立した言語の可能性がある。(アルナーチャルの孤立した言語および独立語族を参照)
ニハリ語 インドマディヤ・プラデーシュ州ラージャスターン州 2,000 (2007) 危機に瀕する言語
ニヴフ語 ロシアアムール河流域、樺太 198 (2010) ギリヤーク語とも呼ばれる。文法的に日本語、朝鮮語との類似がみられるが系統は不明。
プロイク語英語版 インドアルナーチャル・プラデーシュ州 2万 (2011) シナ・チベット語族オーストロアジア語族の可能性もあるが、孤立した言語の可能性がある。(アルナーチャルの孤立した言語および独立語族を参照)
シュメール語 古代:シュメール 0 死語

オセアニア

言語 地域 母語者数 備考
アビノムン語英語版 インドネシアパプア州 300 (2002)  
アネム語 PNG西ニューブリテン州 800 (2011)  
ブサ語 (パプア) PNG・サンダウン州 240 (2000)  
アニンディリャクワ語英語版 オーストラリア北部準州 1,486 (2016) 先住民言語の一つ
イスィラワ語 インドネシア・パプア州 1,800 (2000)  
ガーグジュ語英語版 オーストラリア・北部準州 0 (2002) カカドゥ国立公園付近。死語。
コル語 (パプア)英語版 PNG・東ニューブリテン州 4,000 (1991)  
クオト語英語版 PNG・ニューアイルランド州 1,500 (2002)  
ララギヤ語英語版 オーストラリア・北部準州 14 (2016)  
ングルンブル語英語版 オーストラリア・北部準州 0 死語
アタ語英語版 PNG・ニューブリテン島 2,000 (2007)  
ピュー語 (パプア)英語版 PNG・サンダウン州 100 (2000)  
スルカ語英語版 PNG・東ニューブリテン州 2,500 (1991)  
タヤプ語英語版 PNG・東セピック州 50 (2020)  
ティウィ語英語版 オーストラリア・北部準州 2,040 (2016)  
ウンブガルラ語英語版 オーストラリア・北部準州 0 (1981) 死語
ヤレ語英語版 PNG・サンダウン州 600 (1991)  
ヤワ語英語版 PNG・ヤペン島 6,000 (1987)  
イェレ語英語版 ロッセル島英語版 3,750 (1998)  

北アメリカ

言語 地域 備考
Atakapa 米国テキサス州ルイジアナ州  
Chimariko 米国カリフォルニア州  
Chitimacha 米国ルイジアナ州  
Coahuilteco 米国テキサス州メキシコ北東部  
Cotoname? 米国テキサス州メキシコ北東部  
Cuitlatec メキシコゲレーロ州  
エセレン語 米国カリフォルニア州  
ハイダ語 米国アラスカ州カナダブリティッシュコロンビア州 ナ・デネ語族に含める場合がある。
ワベ語 メキシコオアハカ州  
Karuk 米国カリフォルニア州  
クテナイ語 米国アイダホ州モンタナ州カナダブリティッシュコロンビア州  
Natchez 米国ルイジアナ州ミシシッピ州  
Quinigua メキシコ北東部  
サリナ語 米国カリフォルニア州  
セリ語 メキシコソノラ州  
Siuslaw 米国オレゴン州  
Takelma 米国オレゴン州  
タラスコ語 メキシコミチョアカン州  
Timucua 米国フロリダ州ジョージア州  
Tonkawa 米国テキサス州  
Tunica 米国ミシシッピ州ルイジアナ州アーカンソー州  
ワショ語 米国カリフォルニア州ネバダ州  
Yana 米国カリフォルニア州  
Yuchi 米国ジョージア州オクラホマ州 スー語族に含まれるとされる場合がある。
ズニ語 米国ニューメキシコ州 ペヌティ語に含まれるとされる場合がある。

南アメリカ

言語 地域 備考
Aikaná ブラジルロンドニア州  
Andoque? コロンビアペルー  
Betoi コロンビア  
Camsá コロンビア  
Canichana ボリビア  
Cayubaba ボリビア  
Cofán コロンビアエクアドル  
Irantxe? ブラジルマトグロッソ州  
Itonama ボリビア  
マプチェ語 チリアルゼンチン  
モビマ語 ボリビア  
Munichi ペルー  
ムーラ語 ブラジル ムーラ語の一つであるピダハン語を表す語がない、文法再帰用法がない、音素数が世界最小の言語であるなど特徴ある言語として知られている。
Otí ブラジルサンパウロ州  
Sabela エクアドルペルー  
Ticuna コロンビアペルーブラジル  
Warao ガイアナスリナムベネズエラ  
ヤーガン語 ティエラ・デル・フエゴ ヤーガン族の言語。
Yámana チリ  
Yuracare ボリビア  
Yurumanguí コロンビア  

未分類の言語

未分類言語は現状では他の言語との関係が証明されていないため、孤立した言語として扱われる場合があるが、厳密には別の概念である。

孤立した手話

風土病ろう学校の失敗例などの理由で聴覚障害者が常時一定以上の割合を占めるコミュニティでは、音声言語でなくリアルタイムで使用可能な視覚言語、すなわち手話が自然言語として発生する例がある。こうして生まれた手話は、現地の健聴者が並行して使う音声言語とも類縁関係がない。これもろう教育の輸出と無関係である点から、孤立した言語と見なしうる。このような手話には、マーサズ・ヴィンヤード手話ニカラグア手話アダモロベ手話アル=サイード・ベドウィン手話宮窪手話などがある。

脚注

  1. ^ 松本克己『世界言語のなかの日本語』三省堂2007.p.5
  2. ^ 松本克己前掲書

関連項目