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2022年1月7日 (金) 10:46時点における版
電動アシスト自転車(でんどうアシストじてんしゃ)とは、電動機(モーター)により人力を補助する自転車。搭乗者がペダルをこがなければ走行しない。
人力での伝動補助のみならず、モーター単体のみで自走可能な自転車は電動自転車を参照。
概要
通常の自転車と原動機付自転車との中間的な車両で、ペダルを踏む力や回転数などをセンサーで検出し、搭載しているモーターによりペダルを踏む力を低減させる。1993年にヤマハ発動機が発売した電動ハイブリッド自転車・ヤマハ・PAS(Power Assist System、パス)が世界初とされる[1][2]。
欧米ではPedelecやEAPC(Electrically Assisted Pedal Cycle、「電気式ペダル補助自転車」の略)と呼ばれており、各国で独自の基準が定められている。最高速度が25km/h・最大出力が200-300Wの国が多いが、カナダでは20mph(32km/h)・500W。アメリカでは20mph(32km/h)・750Wとなっている(Electric bicycle laws)。
構造
電源としては初期の製品では鉛蓄電池やニッケル・カドミウム蓄電池 (Ni-Cd)、ニッケル水素電池 (Ni-MH) が用いられたが[3]、メモリー効果が発生せず、小型軽量で長寿命なリチウムイオン二次電池 (Li-ion) に取って代わられている[4]。機種によっては回生ブレーキを備え、減速時にはモーターを発電機にしてバッテリーの充電を行う。バッテリーはフレームの前後や後部の荷台に設置することが多い。取り外したバッテリーからAC100VやUSBなどの電源を取り出せるアダプタも市販されている[5]。
モーターはボトムブラケット付近に搭載してペダルと共にチェーンを駆動するものの他、前輪や後輪にハブモーターを組み込むものがある。
車体形状は軽快車やシティサイクルが一般的だが、折り畳み自転車やクロスバイク、リカンベントなど様々な車種に対応した機種も登場している。モーターなしと比較した場合、8kg程の重量増となっている。
特殊な用途ではケイリンにおいて先頭誘導(周回中の風除け)を行うトラックレーサー(ペーサー)も存在する。公道用ではないため法律上の制約はなく、時速60kmまで補助が行われる[6]。
各国の電動アシスト自転車
日本
普及状況
自転車産業振興協会の調査によれば、一般世帯が保有する自転車のうち電動アシスト車の割合は、2012年に4.4%、2018年調査では7.5%とされる[7] 。 経済産業省の調査によれば、2018年上半期に日本国内で製造された自転車(約45.6万台)のうち67%(約30.6万台)、金額ベースでは86%が電動アシスト自転車である(これらはほぼ国内向け出荷と想定される)。輸入車については、同時期の自転車輸入台数(電動機付きを含まない)は約348万台、対して電動機付き(関税区分上、いわゆる電動バイクを含む)は約14.7万台である[8]。
法制上の定義
道路交通法では「人の力を補うため原動機を用いる自転車」あるいは「駆動補助機付自転車」と呼称される[9]。
道路交通法で定められた基準を満たせば「自転車」として扱われ[10]、原動機付自転車では必須の運転免許やヘルメットの着用および自賠責保険への加入が不要となる。
普通自転車としての基準も満たすもの(側車または他の車両を牽引していないこと)であれば、車道や路側帯のほか、「歩道通行の要件」に従い、歩道を徐行または通行できる。いっぽう、電動アシスト自転車の基準は普通自転車の基準(特に車体の大きさ)とは無関係のため、普通自転車以外の電動アシスト自転車も法令上製作可能であり公道通行可である(ただし歩道通行の要件による歩道の通行はできない)。
電動アシスト自転車の出力基準は道路交通法施行規則第一条の三で次のように規定される。
第一条の三 法第二条第一項第十一号の二の内閣府令で定める基準は、次に掲げるとおりとする。
— “道路交通法施行規則”. e-Gov法令検索. 2019年4月19日閲覧。
- 一 人の力を補うために用いる原動機が次のいずれにも該当するものであること。
- イ 電動機であること。
- ロ 二十四キロメートル毎時未満の速度で自転車を走行させることとなる場合において、人の力に対する原動機を用いて人の力を補う力の比率が、(1)又は(2)に掲げる速度の区分に応じそれぞれ(1)又は(2)に定める数値以下であること。
- (1) 十キロメートル毎時未満の速度 二(三輪又は四輪の自転車であつて牽けん引されるための装置を有するリヤカーを牽けん引するものを走行させることとなる場合にあつては、三)
- (2) 十キロメートル毎時以上二十四キロメートル毎時未満の速度 走行速度をキロメートル毎時で表した数値から十を減じて得た数値を七で除したものを二から減じた数値(三輪又は四輪の自転車であつて牽けん引されるための装置を有するリヤカーを牽けん引するものを走行させることとなる場合にあつては、走行速度をキロメートル毎時で表した数値から十を減じて得た数値を三分の十四で除したものを三から減じた数値)
- ハ 二十四キロメートル毎時以上の速度で自転車を走行させることとなる場合において、原動機を用いて人の力を補う力が加わらないこと。
- ニ イからハまでのいずれにも該当する原動機についてイからハまでのいずれかに該当しないものに改造することが容易でない構造であること。
- 二 原動機を用いて人の力を補う機能が円滑に働き、かつ、当該機能が働くことにより安全な運転の確保に支障が生じるおそれがないこと。
よって、人力と電力補助の最大比率は、10km/h以下で1対2。10km/hから24km/hまでは1対2から0までの線形逓減、24km/h以上は1対0である。なお補助比率が規定されている一方で、最大出力制限は規定されていない。
当初この補助比率は最大1対1(15km/h以下)[11]だったが、2008年12月1日より1対2に引き上げられ[12]、低速度で坂道を登る際により楽になった。この法改正の背景には国民以外にも、自転車タクシーとして使う自治体の要望も寄せられていた[13]。
さらに、2017年10月31日より、(専用の)三輪電動アシスト自転車で牽引されるための構造を具備するリヤカーを牽引する場合に限り、補助比率が最大1対3[14]にまで引き上げられた。これは自動車等の駐車違反摘発対策と労働者不足、取扱量の増大に悩む宅配便業者(主にヤマト運輸)からの要望が背景となっている[15]。
2013年秋に、ヤマハ発動機から物流用途を対象としたリヤカー付電動アシスト自転車PAS GEAR CARGOの発売が発表されていたが、2014年2月26日に、産業競争力強化法の「企業実証特例制度」により物流用途のみリヤカー付電動アシスト自転車のアシスト力を、踏力の3倍まで可能とする法令上の特例措置を4月下旬頃を目途として創設する、というリリースが経産省から出された[16]。
なお電動アシスト自転車は「駆動補助付自転車」として普通自転車同様に型式認定の対象となっており、認定を受けた車両は日本における車両基準を満たしていることになる[17]。
アシスト機構の効率化や、搭載するバッテリーの容量増大によって、一回の充電当たりの走行距離は初期より遙かに増大し、2016年冬のモデルでは、一回の充電でロングモードでは距離約100km、パワーモードでも約59kmのアシスト走行が可能なモデルが発売されている[18]。
さらに、前述2017年以降2020年11月30日までは電動アシスト自転車は「二輪又は三輪の」自転車に限られていたが、2020年12月1日改正法令施行により四輪の自転車も含まれるようになった。四輪の電動アシスト自転車も出力補助の条件は三輪のものと同一である[19]。
基準不適合車両の問題
「フル」の電動自転車や、「電動アシスト自転車」の名称で販売されていても動力性能の制限基準を満たさない自転車[20]については、原動機付自転車または自動車扱いとなる。これらをそのまま公道で運転すると、法律上は原動機付自転車または自動車を運転した事になり、様々な法令により処罰される事になる。
日本の基準に適合しない輸入車では、原動機付自転車同様にハンドルにアクセルが付き、アクセルのみで走行できる機種(いわゆる「フル」の電動自転車)もあり、日本でもインターネット通販で販売されたこともある。フルの電動自転車は摘発され続けている。
国民生活センターも、日本の基準に適合しない電動アシスト自転車がネット通販で販売されているとして、注意を呼びかけている[21][22]。
中国
中国ではアシスト自転車に関する規定がない代わりに、最高時速20km以下などの条件を満たせば、アシスト方式ではない電動自転車でも自転車扱いを受けることができる。
韓国
2011年現在、電動アシスト自転車の認知度は低く、自転車市場の1%未満にとどまる。2006年以前は中国製製品が、それ以降はヤマハ(日本からPASを輸入)のほか国内メーカーのサムヒョンが参入。2010年には中小メーカーを含めて20社程度に増加している[23]。
欧州
欧州全体のEAPC需要の多くをドイツとオランダが占めている。EUの規定でモーター出力は250W以下、補助は25km/hまで行われる[24]。ドイツやオランダなど、ナンバープレートを付けヘルメットを被る事が必須など、アシスト無しの自転車よりも義務が増えている。自転車として同じく歩道走行できないが、6km/hまでの電動車椅子走行機能により、歩道走行に対応してる電動アシスト自転車もある。補助が45km/hまで行われる電動アシスト自転車は更に免許や保険も必須である。
ドイツ
2005年に2万台だった年間販売台数は2010年に20万台に達する見込みであり普及が進みつつある[25][出典無効]。
e-BIKE
近年、欧州でブームとなったスポーツタイプの電動アシスト自転車が、日本においても発売され、「e-BIKE」と呼称されている。当初からスポーツタイプの電動アシスト自転車が主力でe-BIKE=electric bicycle≒electric sport bicycleであった欧州に比べ、先にママチャリタイプの電動アシスト自転車が普及していた日本においては、スポーツタイプのフレーム等を使用したモデルをe-BIKEと区別して呼ぶか、あるいは電動アシスト自転車全体を指すのか、明確な定義は存在しないものの、サイクルモードや雑誌、メーカーサイト等においてはママチャリタイプと区別して使用している例が多い。
電動アシスト自転車と観光
電動アシスト自転車の普及に伴い、これを観光の分野に導入し、2次交通として活用する動きが広がっている。形態を大別すると
となる。特に外国人観光客が増大し、また国内でも個人旅行客が増加しつつある昨今、
- 既存の自転車よりもより観光のレンジを伸ばせる
- 免許が要らない
- 車や電車と違いインフラコストが低い
- 立寄る事ができ、自然や文化を体感できる
電動アシスト自転車は、観光客の足として、またそれ自体が体験(e-MTBなど)となる新たな観光ツールとして普及が進んでいる。
主に地域として取り組んでいるのは、
などがある。また全国的に展開するサイクルベースアサヒやジャイアントストアなどの販売店や、各種レンタサイクルショップにおいても個別に電動アシスト自転車やe-BIKEを観光客向けに貸し出している。
注意点
電動機によって加速が増すため、片足だけでペダルを蹴る「けんけん乗り」をすると意図せぬ急発進をしたり、滑りやすい路面でペダルを強くこぐと後輪が簡単にスリップする危険がある。
日本の主なメーカー
- サンスター技研 - インテリジェントバイク(現在はアシストユニットの供給のみ)
- スズキ(パナソニックサイクルテックからのOEMで販売) - ラブ(LOVE)
- タカラ(ヤマハとの共同開発。トミーと合併しタカラトミーへ。現在は販売はしておらず修理と補償のみ受け付けている。) - B PLUS
- ツバメ・イータイム - ビズモツーエス(BIZMOⅡ-S)バイクオブザイヤー 2021 電動部門4位受賞
- TOBU(東部) - エアロアシスタント(AERO ASSISTANT)
- パナソニック サイクルテック - ビビ(ViVi)、Panasonic EZ
- ブリヂストンサイクル - アシスタ
- ミヤタサイクル - グッドラック(goodLUCK)
- ヤマハ発動機 - パス(PAS)
- 丸石サイクル - ふらっか〜ずの一部車種
- かつてのメーカー
- トヨタ(現在は撤退) - ラクデス
- 本田技研工業(現在は撤退) - ラクーン(Raccoon)
- 三洋電機(協栄三洋工業)(現在はパナソニックサイクルテックと合併) - エナクル、eneloop bike(エネループバイク)
脚注
- ^ パスQ&A集 | ヤマハ発動機製品サイト[リンク切れ]
- ^ アシスト以外では1979年にナショナル自転車工業がペダル付き電気オートバイ・Electric Cycleを発売している。
電動自転車/舘内 端が乗る モビリティの未来 | イズム「ism」 | Panasonic、2009年6月12日取得。 - ^ “電動アシスト自転車の歴史はヤマハPASから”. ヤマハ発動機. 2021年3月13日閲覧。
- ^ “電動アシスト自転車のバッテリー寿命は? 容量別の交換目安と長持ちさせるコツ”. パナソニック. 2021年3月13日閲覧。
- ^ 海上忍 (2021年3月11日). “もしもの災害時、「電動アシスト自転車」を思い出して!”. PHILE WEB (音元出版) 2021年3月13日閲覧。
- ^ PASユニットを搭載した 世界初の自転車競技先頭誘導用の電動ハイブリッド自転車「ケイリンPAS」を開発 - 広報発表資料 | ヤマハ発動機株式会社
- ^ 平成30年度 自転車保有実態に関する調査 - 自転車産業振興協会
- ^ 国内自転車生産・輸出入状況(平成30年1~6月) - 自転車産業振興協会
- ^ “道路交通法施行規則 第39条の3”. e-Gov. 2019年12月29日閲覧。
- ^ “道路交通法 第2条11の2”. e-Gov. 2019年12月29日閲覧。
- ^ 0 - 15km/h で1対1、15 - 24km/h は1対1から0までの線形逓減、24km/h以上は1対0
- ^ 平成20年10月2日警察庁交通局「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案」について
- ^ 構造改革特区[1]第9次提案募集での、0120060「自転車タクシーにおける電動アシスト比率要件の緩和」岐阜市[2]
- ^ 10km/h以下で1対3。10km/hから24km/hまでは1対3から0までの線形逓減、24km/h以上は1対0
- ^ アシスト力3倍、電動補助三輪自転車が10月末解禁
- ^ 産業競争力強化法の「企業実証特例制度」の活用!~物流用途のリヤカー付電動アシスト自転車に関する規制の特例措置が創設されます~(METI/経済産業省)
- ^ 型式認定の概要 - 公益財団法人日本交通管理技術協会
- ^ パナソニック、最大約100kmの長距離走行ができる電動アシスト自転車
- ^ 2020年同年11月13日に公布された道路交通法施行規則等の一部を改正する内閣府令(令和2年内閣府令第70号)により道路交通法施行規則第1条の3ロ(1)および(2)が改正され「三輪又は四輪」と改正された、同年12月1日にこれらが施行された。
- ^ https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/pdf/281027motor_assisted_bicycle.pdf
- ^ 販売時の表示とは異なり、公道走行できないペダル付き電動2輪車-電動アシスト自転車と外観が類似しているので要注意-
- ^ 公道を走れない“電動アシスト自転車もどき”に要注意――国民生活センターが警告
- ^ “エコ交通手段として注目:韓国電動自転車市場”. NNA.ASIA (NNA). (2010年5月31日) 2012年3月13日閲覧。
- ^ 第6回フォーラム(終了) - 二次電池社会システム研究会 小林正典『世界のe-Bike その技術とその市場』(2010年7月6日)
- ^ 不況をよそに活況の自転車展示会−電動アシスト車が牽引−(ドイツ) 通商弘報 2010年3月5日 デュッセルドルフ発
関連項目