「T-80」の版間の差分
編集の要約なし |
・文章が曖昧な部分を明確にしました。・t-84-120 ヤタハーンの説明が間違っていたので正確なものに直しました。・「測遠器」という単語がありましたが、より分かりやすい「レンジファインダー」に変更しました。(そもそも測遠器というのは他の筆者の造語だと思われます)・リンクを増やしました。 |
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==概要== |
==概要== |
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本車は[[T-64]]をベースに開発され、[[T-72]]とほぼ同時期の[[1975年]]より生産が開始された。ソビエト連邦において実戦配備された[[戦車]]としては技術的に最も高度な車両であり、高出力なガスタービンエンジンによる機動力、125mm滑腔砲と高性能な[[射撃統制システム|射撃管制装置]]、砲発射型[[ミサイル]]による攻撃力、複合[[装甲]]と[[爆発反応装甲]]、低い車高による防御力を兼ね備える。 |
本車は[[T-64]]をベースに開発され、[[T-72]]とほぼ同時期の[[1975年]]より生産が開始された。[[ソビエト連邦]]において実戦配備された[[戦車]]としては技術的に最も高度な車両であり、高出力な[[ガスタービンエンジン]]による機動力、125mm[[滑腔砲]]と高性能な[[射撃統制システム|射撃管制装置]]、砲発射型[[ミサイル]]による攻撃力、複合[[装甲]]と[[爆発反応装甲]]、低い車高による防御力を兼ね備える。 |
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本車の配備は[[ドイツ民主共和国|東ドイツ]]に駐留していた[[ドイツ駐留ソ連軍]]など、[[北大西洋条約機構|NATO軍]]と対峙する精鋭部隊に対して集中的に行われた。専用の輸出型が開発され、同盟国や友好国に対して積極的に輸出・供与された[[T-72]]と異なり、[[ソビエト連邦の崩壊|ソ連崩壊]]以前の配備先は[[ソビエト連邦軍|ソ連軍]]に限定されていた。総生産台数は5,000両程度とされ、[[ノックダウン生産]]も含めて30,000両程度が生産されたとされるT-72と比べ少ない。ソ連崩壊後は[[ロシア]]や[[ウクライナ]]からいくつかの国に |
本車の配備は[[ドイツ民主共和国|東ドイツ]]に駐留していた[[ドイツ駐留ソ連軍]]など、[[北大西洋条約機構|NATO軍]]と対峙する精鋭部隊に対して集中的に行われた。専用の輸出型が開発され、同盟国や友好国に対して積極的に輸出・供与された[[T-72]]と異なり、[[ソビエト連邦の崩壊|ソ連崩壊]]以前の配備先は[[ソビエト連邦軍|ソ連軍]]に限定されていた。総生産台数は5,000両程度とされ、[[ノックダウン生産]]も含めて30,000両程度が生産されたとされる[[T-72]]と比べ少ない。[[ソ連崩壊]]後は[[ロシア]]や[[ウクライナ]]からいくつかの国に輸出されている。 |
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本車において開発された技術は後にT-72の改修型に転用され、 |
本車において開発された技術は後に[[T-72]]の改修型に転用され、それをベースとした第3世代主力戦車である[[T-90]]の開発にもつながった。 |
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== 開発 == |
== 開発 == |
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ソビエト連邦では[[1960年代]]半ばより、いくつかの設計局において戦車にガスタービンエンジンを搭載する研究開発がなされていたが、[[T-64]]をベースとした車両に |
[[ソビエト連邦]]では[[1960年代]]半ばより、いくつかの設計局において戦車に[[ガスタービンエンジン]]を搭載する研究開発がなされていたが、[[T-64]]をベースとした車両に搭載することで、実用的な車両として完成させたものが本車である。開発はレニングラード・キーロフ工場(ЛКЗ、LKZ)内のSKB-2設計局で行われた。搭載する[[ガスタービンエンジン|エンジン]]は[[航空機]]の[[ジェットエンジン]]などを開発していた[[クリーモフ (企業)|クリーモフ設計局]]が開発した。最初の試作車両である「オブイェークト219 SP1(Объект 219 сп 1 )」はT-64AにGTD-1000T[[ガスタービンエンジン]]を搭載した改造車両であった。改修を経て1975年より'''T-80'''として量産され、[[1976年]]に[[ソビエト連邦軍]]に採用された。 |
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初期型のT-80は光学式ステレオ |
初期型のT-80は光学式ステレオ[[レンジファインダー]]を搭載するなど車両の大部分がT-64Aの流用であり、[[ガスタービンエンジン]]以外には際立った点がなかった。そのため[[1978年]]からは装備全般にわたって大幅な改良がなされたT-80B(Т-80Б)に生産が切り替えられた。T-80Bは[[レーザーレンジファインダー]]と[[デジタルコンピュータ]]による高性能な[[射撃管制装置]]、主砲から[[ミサイル]]を発射できる9К112-1 「コブラ」ミサイル発射システムを備える。 |
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エンジンも出力が1,100馬力に強化され信頼性が改善されたGTD-1000TF(ГТД-1000ТФ)に変更された。 |
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その後エンジンはさらに高出力なGTD-1250(ГТД-1250)に変更された。 |
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=== ウクライナでの改良作業 === |
=== ウクライナでの改良作業 === |
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T-64の開発元である[[ウクライナ・ソビエト社会主義共和国|ウクライナ]]東部・[[ハルキウ]]の[[O・O・モローゾウ記念ハルキウ機械製造設計局]](ХЗТМ、KhZTM)では、[[ディーゼルエンジン]]を搭載する |
[[T-64]]の開発元である[[ウクライナ・ソビエト社会主義共和国|ウクライナ]]東部・[[ハルキウ]]の[[O・O・モローゾウ記念ハルキウ機械製造設計局]](ХЗТМ、KhZTM)では、[[ディーゼルエンジン]]を搭載するT-80UD(Т-80УД)が開発された。これは[[ガスタービンエンジン]]の失敗に備える保険として開発された6TD[[対向ピストン機関|対向ピストン型]][[ディーゼルエンジン]]搭載したもので、[[燃費]]の良さから崩壊直前の[[ソビエト連邦の経済|ソ連の経済的苦境]]に対応する形で[[1987年]]から採用配備された。また指揮戦車のT-80UDKも開発され、[[ウクライナ]]などで使用されている。 |
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独立後のウクライナではハルキウ機械製造設計局を中心に、T-80UDの改良作業を積極的に推進した。その一過程として、[[パキスタン]]へ輸出された車輌の一部には |
独立後の[[ウクライナ]]ではハルキウ機械製造設計局を中心に、T-80UDの改良作業を積極的に推進した。その一過程として、[[パキスタン]]へ輸出された車輌の一部には[[ウクライナ]]製の新しい溶接[[砲塔]]が採用された。自国向けの新型戦車としては、溶接[[砲塔]]に加えて新型[[エンジン]]と[[爆発反応装甲]]を搭載した[[T-84]]を開発・配備した。[[2001年]]にはさらなる改良型である[[T-84U オプロート]]や、その輸出型である[[T-84-120 ヤタハーン]]が登場した。[[T-84-120 ヤタハーン|ヤタハーン]]は[[北大西洋条約機構|NATO]]標準の120mm[[滑腔砲]]を搭載しており、[[トルコ]]、[[ギリシャ]]、[[マレーシア]]での[[トライアル]]に参加したが、採用には至らなかった。[[2009年]]には[[T-84U オプロート]]の改良版である[[BM オプロート]]が登場し、[[タイ陸軍]]への輸出に成功している。 |
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=== ロシアでの改良作業 === |
=== ロシアでの改良作業 === |
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現在に至るまで積極的な改良を続けているウクライナに対して、ロシアでの改良作業はT-72・T-90系列と比べ低調である。ソ連末期にはT-80に向けて開発された技術をT-72に導入する試みがなされ、1992年に[[T-90]]として採用された。その後ロシアではガスタービンエンジン搭載のT-80Uをベースとした改修型がいくつか開発されたが、いずれも採用には至らなかった。90年代末にロシア軍次世代戦車の本命と目されていたオムスク輸送機械工場(ГУП «Омсктрансмаш»)によるT-80-UM2「[[チョールヌイ・オリョール]]」も財政難によって開発が中止されている。2015年にようやく登場した次世代戦車[[T-14 (戦車)|T-14]]は新規に開発された「アルマータ」プラットフォームを採用しており、T-80の改良型ではない。2010年代に入ってロシア軍が[[北極圏]]を戦略的に重視し始めたことに関連し、2017年にはT-72B3の「ソスナ-U」射撃管制装置やT-90MSなどの「レリークト」爆発反応装甲を導入するなどしたT-80BVMが登場した。これはガスタービンエンジンが北極の厳寒の中でも容易に始動できることに着目したものである。T-72B3と比べ導入数は少なく、2020年現在の生産契約は50両にとどまっている。 |
現在に至るまで積極的な改良を続けている[[ウクライナ]]に対して、[[ロシア]]での改良作業は[[T-72]]・[[T-90]]系列と比べ低調である。[[ソ連]]末期には'''T-80'''に向けて開発された技術を[[T-72]]に導入する試みがなされ、[[1992年]]に[[T-90]]として採用された。その後[[ロシア]]では[[ガスタービンエンジン]]搭載の[[T-80U]]をベースとした改修型がいくつか開発されたが、いずれも採用には至らなかった。90年代末に[[ロシア軍]]次世代戦車の本命と目されていたオムスク輸送機械工場(ГУП «Омсктрансмаш»)によるT-80-UM2「[[チョールヌイ・オリョール]]」も財政難によって開発が中止されている。[[2015年]]にようやく登場した次世代戦車[[T-14 (戦車)|T-14]]は新規に開発された「アルマータ」プラットフォームを採用しており、'''T-80'''の改良型ではない。[[2010年代]]に入って[[ロシア軍]]が[[北極圏]]を戦略的に重視し始めたことに関連し、[[2017年]]にはT-72B3の「ソスナ-U」[[射撃管制装置]]やT-90MSなどの「レリークト」[[爆発反応装甲]]を導入するなどしたT-80BVMが登場した。これは[[ガスタービンエンジン]]が北極の厳寒の中でも容易に始動できることに着目したものである。T-72B3と比べ導入数は少なく、[[2020年]]現在の生産契約は50両にとどまっている。 |
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== 設計 == |
== 設計 == |
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[[File:T-80U tank interior -01.jpg|thumb|250px|T-80Uの砲手席 <br>主砲閉鎖器(黄色いブロック)の左側に隣接する。自動装填装置により腰下のスペースが狭い]] |
[[File:T-80U tank interior -01.jpg|thumb|250px|T-80Uの砲手席 <br>主砲閉鎖器(黄色いブロック)の左側に隣接する。自動装填装置により腰下のスペースが狭い]] |
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[[File:T-80U tank interior -04.jpg|thumb|250px|T-80Uの車長席]] |
[[File:T-80U tank interior -04.jpg|thumb|250px|T-80Uの車長席]] |
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主砲は [[2A46 125mm滑腔砲|D-81TM 125 mm]][[滑腔砲]](GRAUコード:2A46M-1)で、西側の[[ラインメタル 120 mm L44|120mm/L44]]滑腔砲と比較しても遜色ない威力とされる。T-72の主砲と同系列であり、威力は同等である。 |
主砲は [[2A46 125mm滑腔砲|D-81TM 125 mm]][[滑腔砲]](GRAUコード:2A46M-1)で、西側の[[ラインメタル 120 mm L44|120mm/L44]][[滑腔砲]]と比較しても遜色ない威力とされる。[[T-72]]の主砲と同系列であり、威力は同等である。 |
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最初期に生産された車両はT-64Aと同じ光学式ステレオ |
最初期に生産された車両はT-64Aと同じ光学式ステレオ[[レンジファインダー]]を備えていたが、T-80B以降の改修型は[[レーザーレンジファインダー]]と[[デジタルコンピュータ]]を組み合わせた[[射撃管制装置]]を搭載する。この[[射撃管制装置]]は測遠器からの距離情報に加えて、測距地点からの自車の移動距離、目標の移動速度、風力計で測定した横風の強さ、気温などの情報から必要な見越し角を計算し、レティクルに自動的に反映するものである。開発された当時としては非常に高度な装置であり、[[T-72]]に搭載されたものより格段に高性能である。 |
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T-80Uからは車長用全周視察装置から主砲の照準、発射が行えるようになった。この装置によりハンターキラー能力が大幅に向上した。 |
[[T-80U]]からは車長用全周視察装置から[[主砲]]の照準、発射が行えるようになった。この装置によりハンターキラー能力が大幅に向上した。 |
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暗視装置はアクティブ・パッシブ兼用の赤外線暗視装置で、星明りでの有効視認距離は850mとされる。T-72が装備するものの約2倍の有効視認距離をもつが、同時代最新の西側戦車と比較するとやや劣る性能である。T-72と同様に、暗視装置の性能を補う目的で主砲脇に「ルナ」赤外線投光器を備えている。ソ連においても熱線映像装置の開発が行われていたが技術やコストに課題があり、「Agava2」熱線映像装置が一部のT-80UK(指揮戦車型)に搭載されたにとどまる。 |
[[暗視装置]]はアクティブ・パッシブ兼用の[[赤外線暗視装置]]で、星明りでの有効視認距離は850mとされる。[[T-72]]が装備するものの約2倍の有効視認距離をもつが、同時代最新の西側戦車と比較するとやや劣る性能である。[[T-72]]と同様に、[[暗視装置]]の性能を補う目的で主砲脇に「ルナ」赤外線投光器を備えている。[[ソ連]]においても熱線映像装置の開発が行われていたが技術やコストに課題があり、「Agava2」熱線映像装置が一部のT-80UK(指揮戦車型)に搭載されたにとどまる。 |
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T-80Bからは9K112-1「コブラ」ミサイル発射装置を備え、主砲からミサイルを発射できる。本装置は無線誘導方式であったが、T-80Uからはレーザー・ビームライディング方式の[[9M119 (ミサイル)|9K119「レフレークス」]]に変更された。9K119から発射される9M119M「インバル」対戦車ミサイルは有効射程5000mで、主砲の射程を超える距離で敵と交戦できる。 |
T-80Bからは9K112-1「コブラ」[[ミサイル]][[ガンランチャー|発射装置]]を備え、[[主砲]]から[[ミサイル]]を発射できる。本装置は無線誘導方式であったが、[[T-80U]]からはレーザー・ビームライディング方式の[[9M119 (ミサイル)|9K119「レフレークス」]]に変更された。9K119から発射される9M119M「インバル」[[対戦車ミサイル]]は有効射程5000mで、[[主砲]]の射程を超える距離で敵と交戦できる。 |
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砲塔直下に回転式自動装填装置を備える。本装置は水平にした弾頭を円形に並べ、その周囲に垂直に立てた装薬筒を配置する形式である。T-64と同じタイプで、装薬筒も弾頭の上に水平に配置するT-72やT-90とは形式が異なる。弾頭と装薬筒が90度折れ曲がる1枚のトレーに載っているため1回の動作で装填が完了し、それぞれ分けて押し込むT-72と比べ動作が高速である。一方で立てた装薬筒が砲塔バスケットを取り囲んでいるため、砲塔の乗員は腰下のスペースが狭い。 |
砲塔直下に回転式[[自動装填装置]]を備える。本装置は水平にした[[弾頭]]を円形に並べ、その周囲に垂直に立てた装薬筒を配置する形式である。[[T-64]]と同じタイプで、装薬筒も[[弾頭]]の上に水平に配置する[[T-72]]や[[T-90]]とは形式が異なる。[[弾頭]]と装薬筒が90度折れ曲がる1枚のトレーに載っているため1回の動作で装填が完了し、それぞれ分けて押し込む[[T-72]]と比べ動作が高速である。一方で立てた装薬筒が[[砲塔]]バスケットを取り囲んでいるため、[[砲塔]]の乗員は腰下のスペースが狭い。 |
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===装甲=== |
===装甲=== |
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[[File:T-80U_(4).jpg|right|thumb|250px|T-80Uのコンタークト5 <br>スカートが取り付けられているのがわかる]] |
[[File:T-80U_(4).jpg|right|thumb|250px|T-80Uのコンタークト5 <br>スカートが取り付けられているのがわかる]] |
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⚫ | 複合[[装甲]]を採用しており、防御力は同じく複合[[装甲]]を採用した本国仕様の[[T-72]]と同等とされる。T-80Bの改修型であるT-80BVからは[[成形炸薬弾|HEAT弾]]に有効な「{{仮リンク|コンタークト1|ru|Контакт-1|uk|Контакт-1 (динамічний захист)}}」、[[T-80U]]からは[[爆発反応装甲]]に「[[コンタークト5]]」を装備する。[[爆発反応装甲]]は一般的に[[成形炸薬弾|HEAT弾]]や[[HESH|HESH弾]]などの化学弾に対して有効であるが、この[[コンタークト5]]は、[[APFSDS]]に対しても有効である。'''T-80'''の装備する[[コンタークト5]]は[[砲塔]]側の下半分にスカートが取り付けられているため、[[砲塔]]が特徴的な「ホタテ貝型」になっていない。 |
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複合装甲を採用しており、防御力は同じく複合装甲を採用した本国仕様のT-72と同等とされる。 |
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=== 機関 === |
=== 機関 === |
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高出力なガスタービンエンジンを搭載しており、初期型のGTD-1000Tで1,000馬力、T-80BのGTD-1100TFで1,100馬力、T-80UのGTD-1250は1,250馬力を発揮する。出力だけでなく、改修されるごとに信頼性や燃費も向上している。アメリカの[[M1エイブラムス]]が装備する[[ハネウェル AGT1500]]エンジン(1,500馬力)より |
高出力な[[ガスタービンエンジン]]を搭載しており、初期型のGTD-1000Tで1,000馬力、T-80BのGTD-1100TFで1,100馬力、[[T-80U]]のGTD-1250は1,250馬力を発揮する。出力だけでなく、改修されるごとに信頼性や[[燃費]]も向上している。[[アメリカ]]の[[M1エイブラムス]]が装備する[[ハネウェル AGT1500]][[エンジン]](1,500馬力)より出力で劣るが、本車は初期型で42t、[[T-80U]]で46tと軽量であるため、同等以上の[[パワーウェイトレシオ]]をもつ。この[[ガスタービンエンジン]]により走行時には[[ジェット機]]に似た甲高いエンジン音を発する。 |
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本車のトランスミッションは遊星歯車機構によるマニュアルトランスミッションであり、操縦も左右の履帯を2本のレバーで操作するもので、先進的なエンジンと比べ古典的である。 |
本車の[[トランスミッション]]は[[遊星歯車機構]]による[[マニュアルトランスミッション]]であり、操縦も左右の[[履帯]]を2本のレバーで操作するもので、先進的な[[エンジン]]と比べ古典的である。 |
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== 比較 == |
== 比較 == |
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== 運用と戦歴 == |
== 運用と戦歴 == |
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[[File:93rd Mechanized Brigade Kholodnyi Yar trophy tanks May 2022 1.jpg|thumb|250px|[[ウクライナ陸軍]]のT-80BVM<br/>([[第93独立機械化旅団 (ウクライナ陸軍)|第93独立機械化旅団]]所属車両 [[2022年]][[5月1日]])]] |
[[File:93rd Mechanized Brigade Kholodnyi Yar trophy tanks May 2022 1.jpg|thumb|250px|[[ウクライナ陸軍]]のT-80BVM<br/>([[第93独立機械化旅団 (ウクライナ陸軍)|第93独立機械化旅団]]所属車両 [[2022年]][[5月1日]])]] |
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高度な機構を搭載したT-80はソ連製戦車としては極めて高価であり、ソ連時代の生産数は4000両程度であった。これは同時期の |
高度な機構を搭載した'''T-80'''は[[ソ連]]製戦車としては極めて高価であり、[[ソ連]]時代の生産数は4000両程度であった。これは同時期の国内だけでも約22000両が生産された[[T-72]]と比べ大幅に少ない。したがって本車の配備先は[[ワルシャワ条約機構加盟国]]に駐留する部隊や西部の軍管区の部隊など、[[北大西洋条約機構|NATO]]と対峙する精鋭部隊に限定された。中でも最前線の一つである[[東ドイツ]]に駐留していた[[ドイツ駐留ソ連軍]]に集中的に配備されており、生産数のおよそ半数が割り当てられていた。 |
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配備開始直後の[[1979]] |
配備開始直後の[[1979年]]からは[[アフガニスタン紛争]]が始まったが、'''T-80'''は投入されず実戦機会はなかった。同じく投入されなかった[[T-72]]は輸出型が中東などで盛んに実戦投入されたが、[[T-80]]は輸出も供与もなされなかったため、[[ソ連崩壊]]まで全く実戦を経験しなかった。[[1991年]]の[[ソ連8月クーデター]]の際に出動したのが、唯一の活動であった。 |
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ソ連崩壊後、ソ連軍の装備は独立した構成共和国の軍に引き継がれたが、T-80は西部の軍にのみ配備されていたため、まとまった台数を引き継いだ軍もロシア連邦軍、ウクライナ軍、ベラルーシ軍に限定された。 |
[[ソ連崩壊]]後、[[ソ連軍]]の装備は独立した構成共和国の軍に引き継がれたが、'''T-80'''は西部の軍にのみ配備されていたため、まとまった台数を引き継いだ軍も[[ロシア連邦軍]]、[[ウクライナ軍]]、[[ベラルーシ軍]]に限定された。 |
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最初の「実戦」はロシアで[[1993年]]10月に発生した[[10月政変|モスクワ騒乱事件]]での出動である。反[[ボリス・エリツィン|エリツィン]]派(議会派)が立てこもる[[ベールイ・ドーム|ロシア最高会議ビル]]に対して6両のT-80UDが砲撃を加え、反エリツィン派を殺害、制圧した。 |
最初の「実戦」はロシアで[[1993年]]10月に発生した[[10月政変|モスクワ騒乱事件]]での出動である。反[[ボリス・エリツィン|エリツィン]]派(議会派)が立てこもる[[ベールイ・ドーム|ロシア最高会議ビル]]に対して6両のT-80UDが砲撃を加え、反[[エリツィン]]派を殺害、制圧した。 |
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実際の戦闘という意味での実戦投入は[[1994年]]の[[第一次チェチェン紛争]]が最初である。約150両が投入されたが、主砲の俯仰角が小さい |
実際の戦闘という意味での実戦投入は[[1994年]]の[[第一次チェチェン紛争]]が最初である。約150両が投入されたが、[[主砲]]の俯仰角が小さい本車には不向きな[[市街戦]]・[[ゲリラ戦]]が多く、特に激しい[[市街戦]]となった[[グロズヌイの戦い (1994年 - 1995年)|グロズヌイの戦い]]において多数が撃破された。この紛争以降、[[ロシア連邦軍]]は本車を実戦投入しなくなり、その後発生した[[第二次チェチェン紛争]]、[[南オセチア紛争]]などにも投入されていない。 |
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ソ連崩壊以降は外貨獲得のためにT-80も輸出されるようになり、ロシアやウクライナからいくつかの国に対して輸出されている。T-80Uは経済協力[[借款]]の償還として[[大韓民国]]に約30輌(当初[[朝鮮人民軍]]を模した[[仮想敵部隊]]として使用されていたが、現在は一部実戦部隊の第3機甲[[旅団]]に移管)、[[中華人民共和国]]<ref>Kolekcja Czołgi Świata, Issue 8, p 13</ref><ref>{{cite web|url=http://www.globalsecurity.org/military/world/russia/t-80.htm|title=Global Security T-80|author=John Pike|publisher=|accessdate=2018-06-19}}</ref><ref>{{cite web|url=http://www.jedsite.info/tanks-tango/tango-numbers-su/t-80_series/t80-series.html|title=JED The Military Equipment Directory|accessdate=|archiveurl=https://web.archive.org/web/20071214173847/http://www.jedsite.info/tanks-tango/tango-numbers-su/t-80_series/t80-series.html|archivedate=December 14, 2007|deadlinkdate=2018-6-18}}</ref> には約50輌が送られた他、[[キプロス]]と[[アラブ首長国連邦]]にも輸出された。 |
[[ソ連崩壊]]以降は外貨獲得のために'''T-80'''も輸出されるようになり、[[ロシア]]や[[ウクライナ]]からいくつかの国に対して輸出されている。[[T-80U]]は経済協力[[借款]]の償還として[[大韓民国]]に約30輌(当初[[朝鮮人民軍]]を模した[[仮想敵部隊]]として使用されていたが、現在は一部実戦部隊の第3機甲[[旅団]]に移管)、[[中華人民共和国]]<ref>Kolekcja Czołgi Świata, Issue 8, p 13</ref><ref>{{cite web|url=http://www.globalsecurity.org/military/world/russia/t-80.htm|title=Global Security T-80|author=John Pike|publisher=|accessdate=2018-06-19}}</ref><ref>{{cite web|url=http://www.jedsite.info/tanks-tango/tango-numbers-su/t-80_series/t80-series.html|title=JED The Military Equipment Directory|accessdate=|archiveurl=https://web.archive.org/web/20071214173847/http://www.jedsite.info/tanks-tango/tango-numbers-su/t-80_series/t80-series.html|archivedate=December 14, 2007|deadlinkdate=2018-6-18}}</ref> には約50輌が送られた他、[[キプロス]]と[[アラブ首長国連邦]]にも輸出された。 |
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T-80UDは、現在[[ウクライナ陸軍]]の[[主力戦車]]となっている。T-80UDは320輌が[[パキスタン]]に輸出され、[[カシミール]]紛争で使用された。これらのうち一部の車輌は改良型の[[T-84]]と同様の砲塔を搭載していたため、一部資料ではT-84と紹介されることもある。ただし、正式にはこれらはすべてT-80UDとされている。その他、指揮戦車の'''T-80UDK'''も開発され、ウクライナなどで使用されている。また、主砲にNATO標準の120mm滑腔砲を搭載した輸出型の[[ヤタハーン]]を開発し、[[トルコ]]、[[ギリシャ]]、[[マレーシア]]での[[トライアル]]に参加したが、いずれも採用には至らなかった。 |
T-80UDは、現在[[ウクライナ陸軍]]の[[主力戦車]]となっている。T-80UDは320輌が[[パキスタン]]に輸出され、[[カシミール]]紛争で使用された。これらのうち一部の車輌は改良型の[[T-84]]と同様の[[砲塔]]を搭載していたため、一部資料では[[T-84]]と紹介されることもある。ただし、正式にはこれらはすべてT-80UDとされている。その他、指揮戦車の'''T-80UDK'''も開発され、[[ウクライナ]]などで使用されている。また、[[主砲]]に[[NATO]]標準の120mm[[滑腔砲]]を搭載した輸出型の[[T-84-120 ヤタハーン|ヤタハーン]]を開発し、[[トルコ]]、[[ギリシャ]]、[[マレーシア]]での[[トライアル]]に参加したが、いずれも採用には至らなかった。 |
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[[2021年]]、[[北方領土]]や[[千島列島]]に配置されているT-72の後継として、T-80BVが配置されることが報道された<ref>{{Cite web |url= https://www.47news.jp/news/6149646.html|title= |
[[2021年]]、[[北方領土]]や[[千島列島]]に配置されている[[T-72]]の後継として、T-80BVが配置されることが報道された<ref>{{Cite web |url= https://www.47news.jp/news/6149646.html|title= |
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北方領土に新型戦車配備へ ロシア軍、寒冷地対応 |publisher=共同通信 |date=2021-04-22 |accessdate=2021-04-22}}</ref>。 |
北方領土に新型戦車配備へ ロシア軍、寒冷地対応 |publisher=共同通信 |date=2021-04-22 |accessdate=2021-04-22}}</ref>。 |
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なお、後継となるべき[[チョールヌィイ・オリョール]] |
なお、後継となるべき[[チョールヌィイ・オリョール]]戦車も攻撃力・防御力を増した[[T-80U]]の発展型ではあるが、[[1999年]]に試作車が完成したものの、開発に当たっていた企業が倒産したため計画は頓挫している。結局、その高価さゆえに'''T-80'''の配備は進まず、[[T-72]]を大幅に改良して'''T-80'''の性能に近づけた[[T-90]]が主力を担うこととなった。 |
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2022年、[[2022年ロシアのウクライナ侵攻|ロシアのウクライナ侵攻]]に際して、ロシア陸軍はT-80BV、T-80U、T-80UK、T-80BVM、T-80UE1、T-80UM2などを多数投入し、対抗する[[ウクライナ陸軍]]もT-80BVを投入しており、ロシア・ウクライナ軍双方ともに撃破または鹵獲されている<ref>{{Cite web |title=Oryx Blog - ジャパン 【独占】欧州への攻撃:ウクライナ侵攻でロシア側が喪失した兵器類(一覧) |url=https://spioenkopjp.blogspot.com/2022/02/blog-post_25.html|website=spioenkopjp.blogspot.com |accessdate=2022-08-15 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web |title=Oryx Blog - ジャパン 【独占】欧州への攻撃:ロシアによる侵略でウクライナ側が喪失した兵器類(一覧) |url=https://spioenkopjp.blogspot.com/2022/07/blog-post_23.html|website=spioenkopjp.blogspot.com |accessdate=2022-08-15 |language=ja}}</ref>。またウクライナ軍では鹵獲した |
[[2022年]]、[[2022年ロシアのウクライナ侵攻|ロシアのウクライナ侵攻]]に際して、[[ロシア陸軍]]はT-80BV、[[T-80U]]、T-80UK、T-80BVM、T-80UE1、T-80UM2などを多数投入し、対抗する[[ウクライナ陸軍]]もT-80BVを投入しており、[[ロシア軍|ロシア]]・[[ウクライナ軍]]双方ともに撃破または鹵獲されている<ref>{{Cite web |title=Oryx Blog - ジャパン 【独占】欧州への攻撃:ウクライナ侵攻でロシア側が喪失した兵器類(一覧) |url=https://spioenkopjp.blogspot.com/2022/02/blog-post_25.html|website=spioenkopjp.blogspot.com |accessdate=2022-08-15 |language=ja}}</ref><ref>{{Cite web |title=Oryx Blog - ジャパン 【独占】欧州への攻撃:ロシアによる侵略でウクライナ側が喪失した兵器類(一覧) |url=https://spioenkopjp.blogspot.com/2022/07/blog-post_23.html|website=spioenkopjp.blogspot.com |accessdate=2022-08-15 |language=ja}}</ref>。また[[ウクライナ軍]]では鹵獲した'''本車'''に再整備を行ったうえで、自軍装備に組み込んでいる<ref>{{Cite web|title=やっぱり使ってた!ウクライナ軍「元ロシア軍戦車」大量投入か 改修お手のものなワケ|url=https://trafficnews.jp/post/118489|website=乗りものニュース|accessdate=2022-08-15}} </ref>。 |
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== バリエーション == |
== バリエーション == |
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:レニングラード・キーロフ工場で開発された、T-64Aを改修した車両。 |
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:オブイェークト219 SP2(Объект 219 сп 2)と呼ばれた最初の量産型。[[T-64]]に1,100馬力のGTD-1000タービンエンジンを搭載した。 |
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:219R型。T-80を大幅に改修した車両で、新型の[[射撃管制装置]]を搭載し、[[9M112 (ミサイル)|9M112 コブラ]][[対戦車ミサイル]]を運用できた。[[装甲]]も、新しい複合[[装甲]]となった。 |
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:219AS型。T-80U[[1985年]]型。9M119 レフレークス[[対戦車ミサイル]]を運用でき、[[砲塔]]を刷新した。[[装甲]]は、新型の[[コンタークト5]][[爆発反応装甲]]となった。[[エンジン]]は1,250馬力のGTD-1250が搭載され、新しいナビゲーションシステムが搭載された。 |
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::[[ロシア]]連邦で開発されたT-80Uの指揮戦車型。[[シュトーラ (兵器)|TShU-1-7 シュトーラ1]][[アクティブ防護システム]]、TNA-4-3ナビゲーションシステム、KV無線装置など新しいシステムを装備した。 |
::[[ロシア]]連邦で開発された[[T-80U]]の指揮戦車型。[[シュトーラ (兵器)|TShU-1-7 シュトーラ1]][[アクティブ防護システム]]、TNA-4-3ナビゲーションシステム、KV[[無線]]装置など新しいシステムを装備した。 |
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:::[[1999年]]にロシア連邦で開発されたT-80UKの輸出型。TShU-1-7 シュトーラアクティブ防護システムが装備品から外された。ロシア連邦の輸出向け[[戦車]]の主力商品となった。 |
:::[[1999年]]に[[ロシア]]連邦で開発されたT-80UKの輸出型。TShU-1-7 シュトーラ[[アクティブ防護システム]]が装備品から外された。[[ロシア]]連邦の輸出向け[[戦車]]の主力商品となった。 |
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:;T-80UD ベリョーザ |
:;T-80UD ベリョーザ |
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::{{lang|ru|Т-80УД «Берёза»}} |
::{{lang|ru|Т-80УД «Берёза»}} |
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::478B型。愛称の「ベリョーザ」({{lang|ru|«Берёза»}} <small>ビリョーザ</small>)はロシア語で「[[シラカンバ|白樺]]」の意味。[[ウクライナ語]]では「ベレーザ」({{lang|uk|«Береза»}} <small>ベレーザ</small>)白樺は[[女性]]の象徴でもある。整備維持コストと調達コストの低減を図るユーザー向けのモデルで、もともとは[[ソビエト連邦|ソ連]]向けに[[1985年]]に開発したT-80Uの派生型で、T-64 |
::478B型。愛称の「ベリョーザ」({{lang|ru|«Берёза»}} <small>ビリョーザ</small>)はロシア語で「[[シラカンバ|白樺]]」の意味。[[ウクライナ語]]では「ベレーザ」({{lang|uk|«Береза»}} <small>ベレーザ</small>)白樺は[[女性]]の象徴でもある。整備維持コストと調達コストの低減を図るユーザー向けのモデルで、もともとは[[ソビエト連邦|ソ連]]向けに[[1985年]]に開発した[[T-80U]]の派生型で、[[T-64]]中戦車用の[[水平対向エンジン|水平対向]]型[[ディーゼルエンジン]]6TD(1,000馬力)を搭載<ref name = "軍事研究2007/8">[[軍事研究 (雑誌)|軍事研究]]2007年8月号「ロシアと中国の最新AFV開発事情」p36-p37</ref>。[[ウクライナ]]独立後は同国の[[主力戦車]]となる一方、輸出も試みられ320輌が[[パキスタン]]に輸出された。これらは、[[ウクライナ軍]]向けに製造された車両の新車転売、もしくは[[ウクライナ軍]]で運用されていた車両の中古転売であると考えられているが、装備する[[爆発反応装甲]]は従来の「コンタークト1」ではなく「[[コンタークト5]]」が装備された。一部は[[T-84]]の[[砲塔]]を搭載したため、[[パキスタン]]に輸出された車両を[[T-84]]とする資料もあるが、製造元の設計局では[[パキスタン]]に輸出した車両をすべてT-80UDとしている。 |
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::;T-80UDK |
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:::{{lang|ru|Т-80УДК}} |
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:;T-80UM-1 バールス |
:;T-80UM-1 バールス |
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::{{lang|ru|Т-80УМ-1 «Барс»}} |
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::ロシア連邦で開発されたT-80Uの発展型。[[アリーナ (兵器)|アリーナ]]アクティブ防護システムを装備する原型車輌。[[オムスク]]での兵器ショーでは常連だが、まだ販売には至っていない模様<ref name = "軍事研究2007/8"/>。愛称はロシア語で「[[ユキヒョウ|雪豹]]」のこと。 |
::[[ロシア連邦]]で開発された[[T-80U]]の発展型。[[アリーナ (兵器)|アリーナ]][[アクティブ防護システム]]を装備する原型車輌。[[オムスク]]での兵器ショーでは常連だが、まだ販売には至っていない模様<ref name = "軍事研究2007/8"/>。愛称はロシア語で「[[ユキヒョウ|雪豹]]」のこと。 |
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::;T-80UM-2 チョールヌィイ・オリョール |
::;T-80UM-2 チョールヌィイ・オリョール |
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:::ロシア連邦で開発されたT-80UMの発展型。アリーナアクティブ防護システムを装備する。車体を延長して転輪を片側7個に増加。[[自動装填装置]]付でブローオフパネル付の[[火薬庫|弾薬庫]]を持つ後部の大きな新型砲塔に140mm(135mmという説もある)[[滑腔砲]]。カクトゥス爆発反応装甲と新型照準システムなどを搭載した多くの新装備を含む車両である。デモンストレーション時の試作車両ではGTD-1250ガスタービン |
:::ロシア連邦で開発されたT-80UMの発展型。[[アリーナ (兵器)|アリーナ]][[アクティブ防護システム]]を装備する。車体を延長して[[転輪]]を片側7個に増加。[[自動装填装置]]付でブローオフパネル付の[[火薬庫|弾薬庫]]を持つ後部の大きな新型[[砲塔]]に140mm(135mmという説もある)[[滑腔砲]]。カクトゥス[[爆発反応装甲]]と新型照準システムなどを搭載した多くの新装備を含む車両である。デモンストレーション時の試作車両ではGTD-1250[[ガスタービンエンジン]]を搭載していた。[[2010年]]に主に予算上の問題で開発の中止が決定した。 |
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;T-80BVM |
;T-80BVM |
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:2017年にロシアで発表されたT-80シリーズの最新改修型。主砲を「スヴィネッツ-1/2」APFSDS弾に対応した2A46M-4に換装し、 |
:[[2017年]]に[[ロシア]]で発表されたT-80シリーズの最新改修型。主砲を「スヴィネッツ-1/2」[[APFSDS|APFSDS弾]]に対応した2A46M-4に換装し、レリークト[[爆発反応装甲]]を装備しするなど[[T-14 (戦車)|T-14]]や[[T-90|T-90MS]]で導入された技術をキックバックさせている。寒冷地における[[ガスタービンエンジン]]の即応性が再注目され、北極圏での運用を主としている。 |
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;T-84 |
;T-84 |
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:{{lang|uk|Т-84}} |
:{{lang|uk|Т-84}} |
2023年3月22日 (水) 07:43時点における版
T-80BV | |
性能諸元 | |
---|---|
全長 | 9.66m |
車体長 | 7m |
全幅 | 3.6m |
全高 | 2.2m |
重量 | 42.5t |
懸架方式 | トーションバー方式 |
速度 |
65km/h(整地) 45km/h(不整地) |
行動距離 |
335km 600km(外部タンク搭載時) |
主砲 | 125mm滑腔砲 2A46M-1 |
副武装 |
NSVT 12.7mm重機関銃 PKT 7.62mm機関銃 |
エンジン |
GTD-1250 ガスタービン 1,250馬力 |
乗員 | 3名 |
概要
本車はT-64をベースに開発され、T-72とほぼ同時期の1975年より生産が開始された。ソビエト連邦において実戦配備された戦車としては技術的に最も高度な車両であり、高出力なガスタービンエンジンによる機動力、125mm滑腔砲と高性能な射撃管制装置、砲発射型ミサイルによる攻撃力、複合装甲と爆発反応装甲、低い車高による防御力を兼ね備える。
本車の配備は東ドイツに駐留していたドイツ駐留ソ連軍など、NATO軍と対峙する精鋭部隊に対して集中的に行われた。専用の輸出型が開発され、同盟国や友好国に対して積極的に輸出・供与されたT-72と異なり、ソ連崩壊以前の配備先はソ連軍に限定されていた。総生産台数は5,000両程度とされ、ノックダウン生産も含めて30,000両程度が生産されたとされるT-72と比べ少ない。ソ連崩壊後はロシアやウクライナからいくつかの国に輸出されている。
本車において開発された技術は後にT-72の改修型に転用され、それをベースとした第3世代主力戦車であるT-90の開発にもつながった。
開発
ソビエト連邦では1960年代半ばより、いくつかの設計局において戦車にガスタービンエンジンを搭載する研究開発がなされていたが、T-64をベースとした車両に搭載することで、実用的な車両として完成させたものが本車である。開発はレニングラード・キーロフ工場(ЛКЗ、LKZ)内のSKB-2設計局で行われた。搭載するエンジンは航空機のジェットエンジンなどを開発していたクリーモフ設計局が開発した。最初の試作車両である「オブイェークト219 SP1(Объект 219 сп 1 )」はT-64AにGTD-1000Tガスタービンエンジンを搭載した改造車両であった。改修を経て1975年よりT-80として量産され、1976年にソビエト連邦軍に採用された。
初期型のT-80は光学式ステレオレンジファインダーを搭載するなど車両の大部分がT-64Aの流用であり、ガスタービンエンジン以外には際立った点がなかった。そのため1978年からは装備全般にわたって大幅な改良がなされたT-80B(Т-80Б)に生産が切り替えられた。T-80Bはレーザーレンジファインダーとデジタルコンピュータによる高性能な射撃管制装置、主砲からミサイルを発射できる9К112-1 「コブラ」ミサイル発射システムを備える。
エンジンも出力が1,100馬力に強化され信頼性が改善されたGTD-1000TF(ГТД-1000ТФ)に変更された。
1985年にはさらなる改良型であるT-80U(Т-80У)の生産が開始された。改良された射撃管制装置、新型の9К119「レフレークス」ミサイル発射システムに加え、車長用全周視察装置から主砲を照準・発射できるようになり、攻撃力が向上している。
その後エンジンはさらに高出力なGTD-1250(ГТД-1250)に変更された。
ウクライナでの改良作業
T-64の開発元であるウクライナ東部・ハルキウのO・O・モローゾウ記念ハルキウ機械製造設計局(ХЗТМ、KhZTM)では、ディーゼルエンジンを搭載するT-80UD(Т-80УД)が開発された。これはガスタービンエンジンの失敗に備える保険として開発された6TD対向ピストン型ディーゼルエンジン搭載したもので、燃費の良さから崩壊直前のソ連の経済的苦境に対応する形で1987年から採用配備された。また指揮戦車のT-80UDKも開発され、ウクライナなどで使用されている。
独立後のウクライナではハルキウ機械製造設計局を中心に、T-80UDの改良作業を積極的に推進した。その一過程として、パキスタンへ輸出された車輌の一部にはウクライナ製の新しい溶接砲塔が採用された。自国向けの新型戦車としては、溶接砲塔に加えて新型エンジンと爆発反応装甲を搭載したT-84を開発・配備した。2001年にはさらなる改良型であるT-84U オプロートや、その輸出型であるT-84-120 ヤタハーンが登場した。ヤタハーンはNATO標準の120mm滑腔砲を搭載しており、トルコ、ギリシャ、マレーシアでのトライアルに参加したが、採用には至らなかった。2009年にはT-84U オプロートの改良版であるBM オプロートが登場し、タイ陸軍への輸出に成功している。
ロシアでの改良作業
現在に至るまで積極的な改良を続けているウクライナに対して、ロシアでの改良作業はT-72・T-90系列と比べ低調である。ソ連末期にはT-80に向けて開発された技術をT-72に導入する試みがなされ、1992年にT-90として採用された。その後ロシアではガスタービンエンジン搭載のT-80Uをベースとした改修型がいくつか開発されたが、いずれも採用には至らなかった。90年代末にロシア軍次世代戦車の本命と目されていたオムスク輸送機械工場(ГУП «Омсктрансмаш»)によるT-80-UM2「チョールヌイ・オリョール」も財政難によって開発が中止されている。2015年にようやく登場した次世代戦車T-14は新規に開発された「アルマータ」プラットフォームを採用しており、T-80の改良型ではない。2010年代に入ってロシア軍が北極圏を戦略的に重視し始めたことに関連し、2017年にはT-72B3の「ソスナ-U」射撃管制装置やT-90MSなどの「レリークト」爆発反応装甲を導入するなどしたT-80BVMが登場した。これはガスタービンエンジンが北極の厳寒の中でも容易に始動できることに着目したものである。T-72B3と比べ導入数は少なく、2020年現在の生産契約は50両にとどまっている。
設計
火力
主砲は D-81TM 125 mm滑腔砲(GRAUコード:2A46M-1)で、西側の120mm/L44滑腔砲と比較しても遜色ない威力とされる。T-72の主砲と同系列であり、威力は同等である。
最初期に生産された車両はT-64Aと同じ光学式ステレオレンジファインダーを備えていたが、T-80B以降の改修型はレーザーレンジファインダーとデジタルコンピュータを組み合わせた射撃管制装置を搭載する。この射撃管制装置は測遠器からの距離情報に加えて、測距地点からの自車の移動距離、目標の移動速度、風力計で測定した横風の強さ、気温などの情報から必要な見越し角を計算し、レティクルに自動的に反映するものである。開発された当時としては非常に高度な装置であり、T-72に搭載されたものより格段に高性能である。
T-80Uからは車長用全周視察装置から主砲の照準、発射が行えるようになった。この装置によりハンターキラー能力が大幅に向上した。
暗視装置はアクティブ・パッシブ兼用の赤外線暗視装置で、星明りでの有効視認距離は850mとされる。T-72が装備するものの約2倍の有効視認距離をもつが、同時代最新の西側戦車と比較するとやや劣る性能である。T-72と同様に、暗視装置の性能を補う目的で主砲脇に「ルナ」赤外線投光器を備えている。ソ連においても熱線映像装置の開発が行われていたが技術やコストに課題があり、「Agava2」熱線映像装置が一部のT-80UK(指揮戦車型)に搭載されたにとどまる。
T-80Bからは9K112-1「コブラ」ミサイル発射装置を備え、主砲からミサイルを発射できる。本装置は無線誘導方式であったが、T-80Uからはレーザー・ビームライディング方式の9K119「レフレークス」に変更された。9K119から発射される9M119M「インバル」対戦車ミサイルは有効射程5000mで、主砲の射程を超える距離で敵と交戦できる。
砲塔直下に回転式自動装填装置を備える。本装置は水平にした弾頭を円形に並べ、その周囲に垂直に立てた装薬筒を配置する形式である。T-64と同じタイプで、装薬筒も弾頭の上に水平に配置するT-72やT-90とは形式が異なる。弾頭と装薬筒が90度折れ曲がる1枚のトレーに載っているため1回の動作で装填が完了し、それぞれ分けて押し込むT-72と比べ動作が高速である。一方で立てた装薬筒が砲塔バスケットを取り囲んでいるため、砲塔の乗員は腰下のスペースが狭い。
装甲
複合装甲を採用しており、防御力は同じく複合装甲を採用した本国仕様のT-72と同等とされる。T-80Bの改修型であるT-80BVからはHEAT弾に有効な「コンタークト1」、T-80Uからは爆発反応装甲に「コンタークト5」を装備する。爆発反応装甲は一般的にHEAT弾やHESH弾などの化学弾に対して有効であるが、このコンタークト5は、APFSDSに対しても有効である。T-80の装備するコンタークト5は砲塔側の下半分にスカートが取り付けられているため、砲塔が特徴的な「ホタテ貝型」になっていない。
機関
高出力なガスタービンエンジンを搭載しており、初期型のGTD-1000Tで1,000馬力、T-80BのGTD-1100TFで1,100馬力、T-80UのGTD-1250は1,250馬力を発揮する。出力だけでなく、改修されるごとに信頼性や燃費も向上している。アメリカのM1エイブラムスが装備するハネウェル AGT1500エンジン(1,500馬力)より出力で劣るが、本車は初期型で42t、T-80Uで46tと軽量であるため、同等以上のパワーウェイトレシオをもつ。このガスタービンエンジンにより走行時にはジェット機に似た甲高いエンジン音を発する。
本車のトランスミッションは遊星歯車機構によるマニュアルトランスミッションであり、操縦も左右の履帯を2本のレバーで操作するもので、先進的なエンジンと比べ古典的である。
比較
T-14 | T-90 | T-80U | T-80 | |
---|---|---|---|---|
画像 | ||||
世代 | 第3.5世代 | 第3世代 | ||
全長 | 10.8 m | 9.53 m | 9.55 m | |
全幅 | 3.5 m | 3.78 m | 3.6 m | |
全高 | 3.3 m | 2.23 m | 2.2 m | |
重量 | 55 t | 46.5 t | 46 t | 42.5 t |
主砲 | 2A82-1M 125mm滑腔砲 |
2A46M/2A46M-5 51口径125mm滑腔砲 |
2A46M-1/2A46M-4 51口径125mm滑腔砲 | |
装甲 | 複合+爆発反応+ケージ (外装式モジュール) |
複合+爆発反応 (外装式モジュール) | ||
エンジン | 液冷4ストローク X型12気筒ディーゼル |
液冷4ストローク V型12気筒ディーゼル |
ガスタービン or 液冷2ストローク 対向ピストン6気筒ディーゼル |
ガスタービン |
最大出力 | 1,350 - 2,000 hp | 840 - 1,130 hp | 1,000 - 1,250 hp | 1,000 - 1,250 hp |
最高速度 | 80 – 90 km/h | 65 km/h | 70 km/h | 70 km/h |
懸架方式 | 不明 | トーションバー | ||
乗員数 | 3名 | |||
装填方式 | 自動 |
T-72 | T-64 | T-62 | T-55 | T-54 | |
---|---|---|---|---|---|
画像 | |||||
世代 | 第2.5世代 (B型以降第3世代) |
第2.5世代 | 第2世代 | 第1世代 | |
全長 | 9.53 m | 9.2 m | 9.3 m | 9.2 m | 9 m |
全幅 | 3.59 m | 3.4 m | 3.52 m | 3.27 m | |
全高 | 2.19 m | 2.2 m | 2.4 m | 2.35 m | 2.4 m |
重量 | 41.5 t | 36~42 t | 41.5 t | 36 t | 35.5 t |
主砲 | 2A46M/2A46M-5 51口径125mm滑腔砲 |
2A21 55口径115mm滑腔砲 2A46M 51口径125mm滑腔砲 (A型以降) |
U-5TS(2A20) 55口径115mm滑腔砲 |
D-10T 56口径100mmライフル砲 | |
装甲 | 複合 (B型以降爆発反応装甲追加) |
通常 | |||
エンジン | 液冷4ストローク V型12気筒ディーゼル |
液冷2ストローク 対向ピストン5気筒ディーゼル |
液冷4ストローク V型12気筒ディーゼル | ||
最大出力 | 780 - 1,130 hp/2,000 rpm | 700 hp/2,000 rpm | 580 hp/2,000 rpm | 520 hp/2,000 rpm | |
最高速度 | 60 km/h | 65 km/h | 50 km/h | ||
懸架方式 | トーションバー | ||||
乗員数 | 3名 | 4名 | |||
装填方式 | 自動 | 手動 |
運用と戦歴
高度な機構を搭載したT-80はソ連製戦車としては極めて高価であり、ソ連時代の生産数は4000両程度であった。これは同時期の国内だけでも約22000両が生産されたT-72と比べ大幅に少ない。したがって本車の配備先はワルシャワ条約機構加盟国に駐留する部隊や西部の軍管区の部隊など、NATOと対峙する精鋭部隊に限定された。中でも最前線の一つである東ドイツに駐留していたドイツ駐留ソ連軍に集中的に配備されており、生産数のおよそ半数が割り当てられていた。
配備開始直後の1979年からはアフガニスタン紛争が始まったが、T-80は投入されず実戦機会はなかった。同じく投入されなかったT-72は輸出型が中東などで盛んに実戦投入されたが、T-80は輸出も供与もなされなかったため、ソ連崩壊まで全く実戦を経験しなかった。1991年のソ連8月クーデターの際に出動したのが、唯一の活動であった。
ソ連崩壊後、ソ連軍の装備は独立した構成共和国の軍に引き継がれたが、T-80は西部の軍にのみ配備されていたため、まとまった台数を引き継いだ軍もロシア連邦軍、ウクライナ軍、ベラルーシ軍に限定された。
最初の「実戦」はロシアで1993年10月に発生したモスクワ騒乱事件での出動である。反エリツィン派(議会派)が立てこもるロシア最高会議ビルに対して6両のT-80UDが砲撃を加え、反エリツィン派を殺害、制圧した。
実際の戦闘という意味での実戦投入は1994年の第一次チェチェン紛争が最初である。約150両が投入されたが、主砲の俯仰角が小さい本車には不向きな市街戦・ゲリラ戦が多く、特に激しい市街戦となったグロズヌイの戦いにおいて多数が撃破された。この紛争以降、ロシア連邦軍は本車を実戦投入しなくなり、その後発生した第二次チェチェン紛争、南オセチア紛争などにも投入されていない。
ソ連崩壊以降は外貨獲得のためにT-80も輸出されるようになり、ロシアやウクライナからいくつかの国に対して輸出されている。T-80Uは経済協力借款の償還として大韓民国に約30輌(当初朝鮮人民軍を模した仮想敵部隊として使用されていたが、現在は一部実戦部隊の第3機甲旅団に移管)、中華人民共和国[1][2][3] には約50輌が送られた他、キプロスとアラブ首長国連邦にも輸出された。
T-80UDは、現在ウクライナ陸軍の主力戦車となっている。T-80UDは320輌がパキスタンに輸出され、カシミール紛争で使用された。これらのうち一部の車輌は改良型のT-84と同様の砲塔を搭載していたため、一部資料ではT-84と紹介されることもある。ただし、正式にはこれらはすべてT-80UDとされている。その他、指揮戦車のT-80UDKも開発され、ウクライナなどで使用されている。また、主砲にNATO標準の120mm滑腔砲を搭載した輸出型のヤタハーンを開発し、トルコ、ギリシャ、マレーシアでのトライアルに参加したが、いずれも採用には至らなかった。
2021年、北方領土や千島列島に配置されているT-72の後継として、T-80BVが配置されることが報道された[4]。
なお、後継となるべきチョールヌィイ・オリョール戦車も攻撃力・防御力を増したT-80Uの発展型ではあるが、1999年に試作車が完成したものの、開発に当たっていた企業が倒産したため計画は頓挫している。結局、その高価さゆえにT-80の配備は進まず、T-72を大幅に改良してT-80の性能に近づけたT-90が主力を担うこととなった。
2022年、ロシアのウクライナ侵攻に際して、ロシア陸軍はT-80BV、T-80U、T-80UK、T-80BVM、T-80UE1、T-80UM2などを多数投入し、対抗するウクライナ陸軍もT-80BVを投入しており、ロシア・ウクライナ軍双方ともに撃破または鹵獲されている[5][6]。またウクライナ軍では鹵獲した本車に再整備を行ったうえで、自軍装備に組み込んでいる[7]。
バリエーション
- オブイェークト219 SP1
- Объект 219 сп 1
- レニングラード・キーロフ工場で開発された、T-64Aを改修した車両。
- T-80
- Т-80
- オブイェークト219 SP2(Объект 219 сп 2)と呼ばれた最初の量産型。T-64に1,100馬力のGTD-1000タービンエンジンを搭載した。
- T-80A
- Т-80А
- 219A型。T-80の改修型で、量産されなかった。
- T-80BV
- Т-80БВ
- 219RV型。T-80Bの派生型で、コンタークト1爆発反応装甲を装備した。
- T-80U
- Т-80У
- →詳細は「T-80U」を参照
- 219AS型。T-80U1985年型。9M119 レフレークス対戦車ミサイルを運用でき、砲塔を刷新した。装甲は、新型のコンタークト5爆発反応装甲となった。エンジンは1,250馬力のGTD-1250が搭載され、新しいナビゲーションシステムが搭載された。
- T-80U(M)
- Т-80У(М)
- 219AS型。T-80Uの派生型で、火器管制装置が刷新された。
- T-80UK
- Т-80УК
- ロシア連邦で開発されたT-80Uの指揮戦車型。TShU-1-7 シュトーラ1アクティブ防護システム、TNA-4-3ナビゲーションシステム、KV無線装置など新しいシステムを装備した。
- T-80UE
- Т-80УЭ
- 1999年にロシア連邦で開発されたT-80UKの輸出型。TShU-1-7 シュトーラアクティブ防護システムが装備品から外された。ロシア連邦の輸出向け戦車の主力商品となった。
- T-80UD ベリョーザ
- Т-80УД «Берёза»
- 478B型。愛称の「ベリョーザ」(«Берёза» ビリョーザ)はロシア語で「白樺」の意味。ウクライナ語では「ベレーザ」(«Береза» ベレーザ)白樺は女性の象徴でもある。整備維持コストと調達コストの低減を図るユーザー向けのモデルで、もともとはソ連向けに1985年に開発したT-80Uの派生型で、T-64中戦車用の水平対向型ディーゼルエンジン6TD(1,000馬力)を搭載[8]。ウクライナ独立後は同国の主力戦車となる一方、輸出も試みられ320輌がパキスタンに輸出された。これらは、ウクライナ軍向けに製造された車両の新車転売、もしくはウクライナ軍で運用されていた車両の中古転売であると考えられているが、装備する爆発反応装甲は従来の「コンタークト1」ではなく「コンタークト5」が装備された。一部はT-84の砲塔を搭載したため、パキスタンに輸出された車両をT-84とする資料もあるが、製造元の設計局ではパキスタンに輸出した車両をすべてT-80UDとしている。
- T-80UDK
- Т-80УДК
- T-80UDの指揮戦車型。
- T-80UM-1 バールス
- Т-80УМ-1 «Барс»
- ロシア連邦で開発されたT-80Uの発展型。アリーナアクティブ防護システムを装備する原型車輌。オムスクでの兵器ショーでは常連だが、まだ販売には至っていない模様[8]。愛称はロシア語で「雪豹」のこと。
- T-80UM-2 チョールヌィイ・オリョール
- Т-80УМ-2 «Чёрный орёл»
- →詳細は「チョールヌィイ・オリョール」を参照
- ロシア連邦で開発されたT-80UMの発展型。アリーナアクティブ防護システムを装備する。車体を延長して転輪を片側7個に増加。自動装填装置付でブローオフパネル付の弾薬庫を持つ後部の大きな新型砲塔に140mm(135mmという説もある)滑腔砲。カクトゥス爆発反応装甲と新型照準システムなどを搭載した多くの新装備を含む車両である。デモンストレーション時の試作車両ではGTD-1250ガスタービンエンジンを搭載していた。2010年に主に予算上の問題で開発の中止が決定した。
- T-80BVM
- 2017年にロシアで発表されたT-80シリーズの最新改修型。主砲を「スヴィネッツ-1/2」APFSDS弾に対応した2A46M-4に換装し、レリークト爆発反応装甲を装備しするなどT-14やT-90MSで導入された技術をキックバックさせている。寒冷地におけるガスタービンエンジンの即応性が再注目され、北極圏での運用を主としている。
- T-84
- Т-84
- →詳細は「T-84」を参照
- ウクライナが開発したT-80UDの発展型。
派生型
- BREM-80U
- БРЭМ-80У
- T-80Uの車体を流用して開発された装甲回収車。18トンクレーンと35トンウインチを搭載している。
- BREM-84
- БРЕМ-84
- →詳細は「BREM-84」を参照
- ウクライナで開発された装甲回収車。T-84の派生型とされているが、実質的にはT-80UDから開発されている。
- 2S19 ムスターS
- 2С19 МСТА-С
- →詳細は「2S19ムスタ-S 152mm自走榴弾砲」を参照
- ロシア連邦で開発された自走榴弾砲。T-80の走行システムにT-72のV-84Aディーゼルエンジンを組み合わせている。
- T-90
- Т-90
- →詳細は「T-90」を参照
- T-72にT-80の技術を組み合わせた車両。
運用国
現用国
退役済み
登場作品
映画
アニメ映画
- 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』
- 架空の派生型「T-80UN」が登場。NERV ベタニアベースにて封印を解かれた第3の使徒を迎撃する。
漫画
ゲーム
- 『Operation Flashpoint: Cold War Crisis』
- ソ連軍陣営で使用可能な戦車として登場する。レジスタンス陣営でも鹵獲した車両を使用可能。
- 『エースコンバット5』
- ユークトバニア陸軍が使用。
- 『凱歌の号砲 エアランドフォース』
- 日本を占拠したロシア軍の車両として登場。プレイヤーも購入して使用できる。
- 『大戦略シリーズ』
- 主にロシアもしくはR国の装備として登場する。ミサイルも撃てる。
- 『マーセナリーズ』
- 中国人民解放軍が使用。
- 『WarThunder』
- ソ連陸軍ツリーのランクVIにT-80B、ランクVIIにT-80UとT-80BVMが登場する。
小説
- 『征途』
- 日本民主主義人民共和国(北日本)人民赤軍の主力戦車としてT-80をベースにレーザー測距システムの搭載や対戦車ミサイルの未装備などの改良を施した「82式中戦車改二型(T82J2)」が登場。
モデルキット
- 1/35スケール
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- T-80BV
- T-80UD
- スキフ
- T-80UD(しかし、中身はオブイェークト219A)
- XACT
- T-80U
- 1/72スケール
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- T-80(パッケージには単に「T-80」とあるが、組立説明書の表記とキット内容はT-80Bである)
- T-80BV
脚注
- ^ Kolekcja Czołgi Świata, Issue 8, p 13
- ^ John Pike. “Global Security T-80”. 2018年6月19日閲覧。
- ^ “JED The Military Equipment Directory”. December 14, 2007時点のオリジナルよりアーカイブ。 Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
- ^ “北方領土に新型戦車配備へ ロシア軍、寒冷地対応”. 共同通信 (2021年4月22日). 2021年4月22日閲覧。
- ^ “Oryx Blog - ジャパン 【独占】欧州への攻撃:ウクライナ侵攻でロシア側が喪失した兵器類(一覧)”. spioenkopjp.blogspot.com. 2022年8月15日閲覧。
- ^ “Oryx Blog - ジャパン 【独占】欧州への攻撃:ロシアによる侵略でウクライナ側が喪失した兵器類(一覧)”. spioenkopjp.blogspot.com. 2022年8月15日閲覧。
- ^ “やっぱり使ってた!ウクライナ軍「元ロシア軍戦車」大量投入か 改修お手のものなワケ”. 乗りものニュース. 2022年8月15日閲覧。
- ^ a b 軍事研究2007年8月号「ロシアと中国の最新AFV開発事情」p36-p37