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痛みの基準はハナゲ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
鼻毛を抜いて痛がる男性

痛みの基準はハナゲ(いたみのきじゅんはハナゲ)とは、1998年から1999年頃にかけて、主にチェーンメールによって流布したジョーク。しかし、一部ではそれを真実と思い込む者がいたため、都市伝説とされることもある。

ジョークの内容

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国際標準化機構 (ISO) によって、人間の痛みの感じ方についての統一単位「ハナゲ」(hanage) が制定され、「長さ1センチの鼻毛鉛直方向に1ニュートンの力で引っ張り、抜いたときに感じる痛み」が「1ハナゲ」と定義された、とするものである。鼻毛を抜いた時の痛みには性差や個人差はないことが発見されたため、ハナゲが痛みの単位に選ばれたとされる。

スイスダヴォス・プラッツで開催された世界知覚認識学会で認定されたというものもある。

広まり

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このジョークには「元ネタ」がある[1]。「やゆよ記念財団」という、ネタとしてのニュースを執筆し公開していたwebサイト(2021年ごろ消失)において、1995年に発表された作品[2]がそれである。さらに、同サイトを運営しているやゆよがこのネタを初めて発表したのは、1990年代前半のパソコン通信ニフティサーブ」のコメディフォーラムの「嘘情報」会議室にまでさかのぼる。

1998年秋、このネタはインターネットでチェーンメール化し、拡散し始めた。千葉県内の大学研究室のホームページに架空の研究報告を載せたことが発端であったとされる[3]。ジョークが広まるに連れて「『日本経済新聞』の(1998年)11月16日付朝刊に掲載された」といった具体的な「ニュースソース」が付加された[3]。外国通信社のニュースページを騙る偽ニュースサイトに、同内容の記事が1998年11月4日のワシントン発の外電で配信されたかのように掲載されたこともあった[3]

「ハナゲ」の提唱者としては2パターンがあり、それぞれ北海道大学医学部教授と室蘭市立医科大学教授(もしくは助教授)とされる具体的な人名が挙げられていたが、北海道大学によると該当の教授は実在しないとのことである(1999年当時)[3]。なお「室蘭市立医科大学」という大学は実在しない[3][4]

ネタはその後、インターネット外でも広がり続けた。女優の室井滋は知人からこの話を聞き半信半疑であったが、実際に他の女優と鼻毛を抜き合ってみたところ明らかに痛みの感じ方に差があったため嘘だと気付いた、という体験談を発表している[5]。また、BSフジ2000年12月から放送していた番組「宝島の地図」ではこのチェーンメールをもとに、「悪さ」「はかなさ」などの単位を作る「新しい単位」というコーナーが設けられた[6]。後に出版された書籍版は「めざましテレビ」などで紹介されその後、書籍版の第2弾とDVD版も発売された。書籍版はシリーズ累計で40万部を超えるベストセラーとなった[6]

鼻毛に関する「研究報告」が報道された例はその後もあり、2013年4月1日には東京新聞が「日光薬科大のチームが花粉症対策として鼻毛の育毛剤を開発した」というエイプリルフール記事を掲載した[7]。この日光薬科大も室蘭市立医科大学と同様、実在しない大学である。

実態

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英語版ウィキペディアの「pain scale(痛さの等級)」の記事によると、痛覚の等級化には言葉によるもの (MPQ)・感覚的な目盛りによるもの(VAS、FRSなど)・特殊な器具によるもの (PainVision、Dolorimeter) など様々な手段が開発されている。しかし「ハナゲ」は学会で認められていない架空の単位である。

2007年になると、ニプロが電気刺激を利用して人間の痛みの最小限値を測定し、そこから痛みの感覚を数値で測定する機器「PainVision」を発売した[8]

脚注

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  1. ^ 糸井重里「おもしろサイト 伝説のハナゲ 山盛りのウソ」『朝日新聞』2000年(平成12年)4月7日付東京本社夕刊6面。
  2. ^ 痛みの基準は鼻毛”. やゆよ記念財団 (1995年11月22日). 2020年11月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。203-02-21閲覧。
  3. ^ a b c d e 「ウソや冗談、インターネットで化けた いたずらで転送重ね本当らしく」『読売新聞』1999年1月26日付東京朝刊、31頁。
  4. ^ 室蘭市にある大学は国立の室蘭工業大学である。
  5. ^ 室井滋「すっぴん魂 連載176 ご存知? 1ハナゲ」『週刊文春』第42巻第2号、2000年1月20日、124-125ページ。
  6. ^ a b 世界単位認定協会『新しい単位』ポプラ社ポプラ文庫)、2017年、3頁。ISBN 978-4-591-15409-0
  7. ^ 「「ハナゲン」誕生 花粉症 鼻毛が救う 育毛剤研究から画期的薬」『東京新聞』2013年4月1日付朝刊24面。
  8. ^ “知覚・痛覚定量分析装置「Pain Vision」 ニプロ”. (2007年4月11日). https://www.yakuji.co.jp/entry2781.html 2023年2月21日閲覧。 

参考文献

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  • 米澤敬、『はかりきれない世界の単位』、株式会社創元社、2017年6月20日、12頁、ISBN 978-4-422-70107-3

外部リンク

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