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益子焼窯元共販センター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

益子焼窯元共販センター(ましこやきかまもときょうはんセンター)とは、栃木県芳賀郡益子町にある益子焼の陶器販売複合大型店である[1]。会社名は「益子焼窯元共販株式会社」[2]

益子焼窯元共販センター新館売り場(2014年(平成26年)時点)
益子焼窯元共販センターと、駐車場に設置されている「ぽんたくん」こと「益子大狸像」[3][4][5]

沿革

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成り立ち

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昭和30年代から40年代にかけて、益子に二つの大きな変化が起こった。一つは全国的に起こった「民芸ブーム」により観光客が益子へやってくるようになったこと[6]。そしてもう一つはそれに伴い仲介業を通さずに、生産した陶器製品を産地である益子で直接販売するようになったことである[7]。そしてこの益子の産地直販の動きの中心となったのが益子焼窯元共販センターであった[7][8]

そしてこの時期に同時に起こった塚本製陶所による「釜っこ」生産の窯元への下請け依頼の廃止が、益子の各窯元への経済的打撃となっていた[9][10]

この時期に益子の陶芸家であり実業家でもあった成井藤夫[10][11](本名・豊[12])が経済的打撃を打破すべく「共販センター」設立を思い立ち[9]、初めに約35軒の窯元に声を掛けた[13]。最終的に開設参加に応じたのは、小口製陶所(小口勝雄)、鍛治浦製陶所(鍛治浦順)[12]、井上製陶所(井上忠夫)[14]、三城窯:陶房なかむら(中村文昌)[15]、田中製陶所(田中耕善)[12]、大源製陶所(大塚啓栄)[16]などの11軒の窯元だった[7][13]。これらの窯元は昭和30年代から既に濱田庄司の影響により民芸製品を製作していた窯元や、塚本製陶所による「釜っこ」外注生産から民芸製品生産へと転換しつつあった窯元であった[7][9]

1966年(昭和41年)[17][9]3月24日、「益子焼窯元共販株式会社」を設立[18][7][9][10]。そして4月1日には「益子焼窯元共販センター」を開いた[13][19][5]。成井は代表取締役を務め[20][21]、後には社長に就任した[10][22]

そして宣伝費を捻出しながら「益子焼」の地道な宣伝活動を続けていき[7][23]、宣伝活動の一環として1966年昭和41年)5月、検査で除外されたアウトレット商品を格安で販売する「陶器市」を益子で初めて開催した[7][5]。そして想定以上の売上を上げ成功を収めたこのイベントはこの後も継続され、春のゴールデンウイークの益子の恒例行事となり、後に現在の「益子陶器市」に発展していった[24]

発展

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その後1966年(昭和41年)の本店建築から始まり、1969年(昭和44年)には倉庫を第2売店 [1]に転換させ、1970年(昭和45年)には第1売店[1]を増築するなど徐々に売店を増やしていき、それぞれの売り場にギャラリーを併設し若手作家たちの作品発表と販売の場とした。そして1974年(昭和49年)には陶芸教室[1]を開始し、喫茶店[1]や食堂[1]も営業され始め、東京出張所まで設けるなど[12][25]、その事業内容を拡大させていき[7]、一時期は益子のみならず「日本最大の陶器販売センター」とまで言われていた[1][17]

その一方で社長を務めていた成井は[26][27]1977年昭和52年)、益子焼窯元共販株式会社を退社し、一陶芸家に戻りながらもその翌年の1978年昭和53年11月1日には益子町内のバイパス通り沿いに別の益子焼販売施設となる「益子陶芸村」を設立した。[19][28][29][30]

そして1986年(昭和61年)、「益子のシンボル」として共販センター駐車場に高さ10mもあるグラスファイバー[31]のタヌキ像が建てられ[4]「ぽんたくん」と名付けられた[注釈 1]。この「ぽんたくん」は上記に掲載された写真の通り、益子の風景の写真やイラストに使われるようになり、共販センターのみならず、益子陶器販売街の象徴となっている[3][32][5][33]

益子焼窯元共販センターの「ぽんたくん」。

「益子陶器市」開催時にはメイン会場となり、駐車場には数多くの陶器販売テントが張られていた[17]。そして団体バスで直接乗り付け共販センターを訪れた観光客や観光ツアーも多くあり、かつては益子を訪れる観光客の年間数130万人のうち、95万人が共販センターに寄っていたと言われていた[17]

現在

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しかし趣味嗜好の多様化により、益子焼自体の需要が低下。共販センターの売上も落ち込んでいった[3]。そんな中、2019年令和元年)末から発生したコロナ禍の影響により売り上げが激減[3]。現在、陶芸体験や「ギャラリー花陶里」の営業などは継続されているが、新館売店以外の売り場は閉鎖され、食堂なども閉店されており、共販センターの営業内容は公式サイトの施設案内とは大幅に異なっており[34]、現在の共販センターは「益子の陶器販売通りの大型駐車場」扱いとなっている[35][注釈 2]

2020年(令和2年)10月より、共販センター駐車場の巨大タヌキ像「ぽんたくん」の「化粧直し」の資金集めのためのクラウドファンディングが行われた[3][37]

そしてコロナ禍で「益子陶器市」が中止となっていた2021年(令和3年)4月29日から5月9日まで共販センター駐車場で「共販ミニ陶器市」を行った[38]

そして2022年(令和4年)の春のゴールデンウイークから「益子陶器市」が復活し、「ようやく希望が見えてきた」と語った[39]

2023年(令和5年)春の益子陶器市「益子焼窯元共販センター」前の光景。

脚注

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注釈

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  1. ^ 「益子ぽん太」など色んな呼ばれ方をされており呼称は一定していない[17]
  2. ^ なお「益子陶器市」開催時は、駐車場の一部は陶器販売テント村となっている[36]

出典

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  1. ^ a b c d e f g 無尽蔵 1980, p. 100.
  2. ^ 益子焼窯元共販センター|陶器市・陶芸教室・栃木県益子町|会社概要
  3. ^ a b c d e ぽんたくん“化粧直し” CFで資金集め 協力を 益子焼共販センター”. 新型肺炎-COVID19-|下野新聞「SOON」 (2020年11月24日). 2023年4月11日閲覧。
  4. ^ a b 益子大狸像 - Google
  5. ^ a b c d 枻出版社,焼き物の里を訪ねて益子・笠間 2009, p. 24.
  6. ^ 『益子町史 第5巻 (窯業編)』「第五章 戦後再建と民芸産地への胎動」「第二節 陶芸産地への過程」「(二)民芸陶器への展開」P454 - 456 - 国立国会図書館デジタルコレクション、2023年4月14日、国会図書館デジタルコレクション デジタル化資料個人送信サービスにて閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h 『益子町史 第5巻 (窯業編)』「第六章 益子焼の現在」「第二節 産地直売方式の展開」「(一)産地直売の拠点」P485 - 487 - 国立国会図書館デジタルコレクション、2023年4月10日、国会図書館デジタルコレクション デジタル化資料個人送信サービスにて閲覧。
  8. ^ 『開けゆく郷土 栃木県工業地域の動向』「VI 民芸品か釜めしか―益子陶業の生きる道―(益子町)」「3 製陶業」P97 - 国立国会図書館デジタルコレクション、2023年4月11日、国会図書館デジタルコレクション デジタル化資料個人送信サービスにて閲覧。
  9. ^ a b c d e 矢野良明,他,株式会社ぎょうせい 1990, p. 114-115.
  10. ^ a b c d 「真岡新聞」2015年(平成27年)9月18日付 11面「時代が人を駆りたて 人が時代を創った」「瀬戸と民芸の益子焼」「そして陶器市が始まった」
  11. ^ 真尾栄 1997, p. 62.
  12. ^ a b c d 『事業所名鑑 栃木県版 1975』「製陶」「益子焼窯元共販(株)」P319 - 国立国会図書館デジタルコレクション 2024年2月20日、国会図書館デジタルコレクション デジタル化資料個人送信サービスにて閲覧。
  13. ^ a b c 倉本 1992, p. 169.
  14. ^ 碧い器の店「陶知庵」(井上製陶所)|益子町観光協会
  15. ^ 陶房なかむら| 作家・窯元・販売店紹介 | 益子WEB陶器市
  16. ^ 大塚啓栄 – 益子陶器市
  17. ^ a b c d e 真尾栄 1997, p. 56-58.
  18. ^ 『下野年鑑 1982年版』「企業総覧」「益子町」「ま」「益子焼窯元共販(株)」P398 - 399 - 国立国会図書館デジタルコレクション 2024年2月18日、国会図書館デジタルコレクション デジタル化資料個人送信サービスにて閲覧。
  19. ^ a b 『民藝』 (464)「成井 藤夫氏」P71 - 国立国会図書館デジタルコレクション、2023年4月10日、国会図書館デジタルコレクション デジタル化資料個人送信サービスにて閲覧。
  20. ^ 『栃木年鑑 昭和49年版』- 国立国会図書館デジタルコレクション、P525、2023年1月4日、国会図書館デジタルコレクション個人向けデジタル化資料送信サービスで閲覧。
  21. ^ 『月刊経済』 21(7)(277)「窯元探訪 益子焼の巻」P53 - 国立国会図書館デジタルコレクション 2024年2月20日、国会図書館デジタルコレクション デジタル化資料個人送信サービスにて閲覧。
  22. ^ 『栃木年鑑 昭和50年版』 - 国立国会図書館デジタルコレクション、P521、2023年1月4日、国会図書館デジタルコレクション個人向けデジタル化資料送信サービスで閲覧。
  23. ^ 倉本 1992, p. 170,171.
  24. ^ 益子陶器市とは?道路と駐車場の混雑状況|2022年の開催情報、観光スポットとおすすめ到着時間 | 四季の美
  25. ^ 『新婦人』27(5)(299)5月号 P75 - 国立国会図書館デジタルコレクション、2023年4月11日、 国会図書館デジタルコレクション デジタル化資料個人送信サービスにて閲覧。
  26. ^ 『栃木年鑑 昭和51年版』「主要会社要覧」「窯業・ガラス」P399 - 国立国会図書館デジタルコレクション 2023年5月16日、国会図書館デジタルコレクション デジタル化資料個人送信サービスにて閲覧。
  27. ^ 『栃木年鑑 昭和51年版』「人名録」「〔に〕」P499 - 国立国会図書館デジタルコレクション 2023年5月16日、国会図書館デジタルコレクション デジタル化資料個人送信サービスにて閲覧。
  28. ^ 倉本 1992, p. 165,176.
  29. ^ 「下野新聞」1978年(昭和53年)8月22日 6面「焼き物の里に新しい波」「今秋、益子陶芸村がオープン」
  30. ^ 「下野新聞」1978年(昭和53年)10月30日 6面【広告】「益子焼ショッピングタウン」「益子陶芸村 11/1 OPEN」「益子町 益子バイパス益子参考館 西沿い」「成井企画・代表者 成井藤夫」
  31. ^ 益子とタヌキ Mashiko and Raccoons”. Pottery Basket (2016年7月23日). 2023年5月25日閲覧。
  32. ^ 矢野良明,他,株式会社ぎょうせい 1990, p. 116.
  33. ^ 枻出版社,焼き物の里を訪ねて益子・笠間 2009, p. 94.
  34. ^ 益子焼窯元共販センター|陶器市・陶芸教室・栃木県益子町|施設案内、2023年4月11日閲覧。
  35. ^ 2023年 益子焼窯元共販センター - 行く前に!見どころをチェック - トリップアドバイザー、2023年4月11日閲覧。
  36. ^ 益子焼窯元共販センターテント | 益子WEB陶器市
  37. ^ 益子の観光拠点〝益子焼窯元共販センター〟 コロナウイルスの危機を乗り超えたい!!”. CAMPFIRE (キャンプファイヤー) (2020年10月15日). 2023年4月11日閲覧。
  38. ^ 益子WEB陶器市が開幕 220業者が7000アイテム出品 共販センターもミニ市”. 新型肺炎-COVID19-|下野新聞「SOON」 (2021年4月30日). 2023年4月11日閲覧。
  39. ^ 3年ぶり陶器市開催で「希望見えた」益子焼販売店、陶芸家の安堵”. 新型肺炎-COVID19-|下野新聞「SOON」 (2022年4月16日). 2023年4月11日閲覧。

参考文献

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  • 株式会社無尽蔵『益子の陶工 土に生きる人々の語らい』1980年12月20日、100頁。国立国会図書館サーチR100000002-I000001494363 
  • 芸術新潮編集部 著、芸術新潮編集部 編『日本やきもの紀行』株式会社新潮社〈とんぼの本〉、1985年7月25日、116-117,119頁。ISBN 9784106019241 :益子焼と笠間焼の情報が混在しているので注意。
  • 『日本のやきもの 伝統の窯元を訪ねて【東日本編】』日本放送出版協会、1987年6月25日、7,98-99,102頁。ISBN 9784140803165 
  • 矢野良明,他『やきもの大百科 第1巻 東日本編 縄文が息吹く山あいの窯』株式会社ぎょうせい、1990年7月30日、253頁。 
  • 倉本秀清『益子探訪 -益子の陶芸家に学ぶ-』株式会社 光芸出版、1992年7月5日、256頁。ISBN 4-7694-0097-7 
  • JTB『やきものの旅 東日本 訪ねてみたい20の窯里』JTB日本交通公社出版事業局〈JTBキャンブックス〉、1993年12月1日、98-99,101頁。ISBN 9784533019869 
  • 真尾栄『益子・笠間やきもの紀行』主婦と生活社、1997年9月16日、127頁。ISBN 4-391-12067-4 
  • (株)キークリエイション 編『東京周辺 小さな窯元めぐり』弘済出版社〈ニューガイド 私の日本 α 29〉、2000年11月1日、143頁。ISBN 9784330619002 
  • 中島誠之助 中島由美『週刊 やきものを楽しむ』株式会社小学館〈小学館ウィークリーブック〉、2003年6月17日、22,24-25頁。ISBN 9784763687234NCID BA8513835X国立国会図書館サーチR100000002-I000004166379 
  • 『焼物の里を訪ねて 益子・笠間 器の里、最新ガイド。』株式会社 枻出版社〈エイムック 1816〉、2009年10月20日、25頁。ISBN 9784777914579 

外部リンク

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