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石棒クラブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

石棒クラブ(せきぼうクラブ)は、岐阜県飛騨市にある飛騨みやがわ考古民俗館を応援する博物館ファン団体である。

成り立ち

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2019年3月、飛騨市の関係人口事業の一つとして立ち上げたプロジェクトチームである。ファンクラブ、おこめ部とともに石棒クラブが立ち上げられた。当初の目的は、飛騨みやがわ考古民俗館で収蔵する塩屋金清神社遺跡・島遺跡出土の石棒が1,000点を超える事実を発信し、「全国に誇る石棒を中心に、関わる市内外の人を増やす」ことであった。そのような活動を通じ、飛騨みやがわ考古民俗館、ひいては飛騨市が存続する姿を模索しようとした[1]。当初は、IT企業・金融機関・建築士と学芸員が中心のメンバーとなった。その後、仲間を増やしながら活動を進めている。

活動

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一日一石棒

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塩屋金清神社遺跡[2][3][4]で出土した石棒類1,074 本を撮影し、ほぼ毎日1点ずつInstagram[5]で公開している。公開終了に3年以上を要するため、年数回撮影会を計画し、撮影者を募集している。

石棒クラブでは、この撮影をヒダスケ!(飛騨市関係案内所)のプログラムとして実施している。プログラムは、「飛騨市の人がちょっとやってみたいことや困りごとの種、アイデアが集まり誰でも参加できる、飛騨市と関わるためのプログラム」を募集するものである。これは、人口減少や特定分野の専門性がネックになって行き詰まった市内の様々な困りごとと、自身の経験やスキルを活かしたいという動機の人たちをマッチングさせるサービスである。ヒダスケ!プログラムは、市内各所で求められている「お助け」とポジティヴな動機を持つ人たち「ワクワク」の場を作っている。なお、参加への返礼は、さるぼぼコインという飛騨地域で使用可能な電子地域通貨である[6]

2020年5月、オンラインツアー

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新型コロナウイルス感染症拡大の影響で閉館中の飛騨みやがわ考古民俗館において、大型連休中の2020年5月3日にオンラインツアーを実施した。

  • 日程:5月3日
  • 目的:全国的に博物館が休館となる中、オンラインで楽しんでもらおうというもの。
  • 内容:旧石器から縄文時代の通史、飛騨市に関わる考古学研究史、石棒の製作工程
  • 申込者:200名
  • 成果と課題:全国から申込があった。参加者層の意見交流が活発であった。映像が不鮮明なところがあった。
  • その他:問合せが多く、企画に必要な事項をすぐに公開された[7]

2020年、オンラインイベントの展開

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博物館オンラインクイズクエスト[8]
  • 日程:7月19日
  • 目的:縄文時代を楽しく学ぶための企画。
  • 内容:石棒を研究する大学院生らが作ったクイズに挑戦して縄文を楽しく学ぶ。回答時には飛騨みやがわ考古民俗館の展示を映像
  • 申込者:30名
  • 成果と課題:鮮明な映像を配信するために一眼レフカメラを用いた。参加者がクイズを楽しんだ。回答が知っているか知らないかに左右され、自発的に学びたいという思いを参加者に呼び起こさせることができなかった[9]
Go To タイムスリップ~文化財からサステナブルを考える~[10]
  • 日程:11月11日~28日
  • 目的:文化財とサステナブルをキーワードに、石棒をテーマとして7つのイベントを実施。
  • 内容:夜間にYouTubeにより講座と対談を配信し、日中にはバックヤードツアーを少人数で実施。講座の一つは「石棒を3D化することの未来」と題したもの。収蔵資料の3次元データの取得と公開について、飛騨市長と文化財3Dの第一人者らによる対談を配信した[11]
  • 成果と課題:飛騨市では3Dデータ化を市民参加で進め、公開したデータは商用・非商用に関わらず利用可能とする考えを示した。なお、埋蔵文化財は著作権保護の対象ではないスタンスでいること、より活用しやすい状況を整えることは文化財の本質的価値の共有につながるスタンスであることにも言及した。

2020年11月イベントでの他機関との連携

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  • 浅間縄文ミュージアム館長らとのオンライントークイベントを実施[12]
  • 唯一重要文化財指定の石棒を所有する東京都国立市のくにたち郷土文化館と、日本最大の北沢大石棒がある長野県佐久地域の佐久考古学会、石棒クラブの3者で、石棒総選挙を実施(#石棒総選挙)。「いいね!」やリツイートは延べ 686。
  • くにたち郷土文化館での石棒解説に、飛騨みやがわ考古民俗館所蔵の石棒製作工程を用いる[13]
  • 石棒研究者らとのオンライントークイベントを実施[14]

資料の3Dデータの公開と商用利用

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石棒などの3次元データをsketchfab にて公開している[15]

このデータを、FabCafé Hida[16]で2,200さるぼぼコインで出力することができる[17]。また、作家により石棒ろうそくが作られる企画もあった[18]

今後は、ヒダスケ!を活用して3Dデータの取得と公開を計画している。これは普段収蔵庫で保管している著作権フリーの考古資料を、地域比較するための資料[19]として公開していくという考え方に基づいている[20]

Mission、Vision、Value

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Mission(使命)[21]
石棒をはじめとした文化財の活用を通じて、未来の新しい姿のミュージアムを創り出す。また、飛騨市や日本全国、世界の人に幸せを届ける。
Vision(ありたい姿)
あらゆる人が文化財を楽しみ、人生を豊かにするためのプラットフォームになる。
Value(行動指針)
感謝と敬意。オープンと多様性。チャレンジと先進性。

継続した発信:石棒クラブでは、発信を仲間づくりと位置付ける。石棒クラブとしては、ウェブサイト、Facebook、Instagram、Twitter、YouTubeにて、また公式キャラの石棒くんがTwitterで日常の活動を発信する。

目指す姿

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飛騨みやがわ考古民俗館での活動を通じて、ファンを増やしミュージアムを存続させることができれば、飛騨市の人口減少先進地という社会的な課題の解決にもつながると考えている[22][23][24][25]

脚注

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  1. ^ 未来のコミュニティ研究室公開オンラインミーティング記録2 『石棒クラブ』 - 未来のコミュニティ研究室(2020年3月17日)2021年9月15日閲覧
  2. ^ 早川, 正一、林, 直樹、河野, 典夫、小島, 功、立田, 佳美『岐阜県吉城郡宮川村 塩屋金清神社遺跡(A地点)発掘調査報告書』岐阜県吉城郡宮川村大字塩屋100番地、2000年3月31日(原著2000年3月31日)。doi:10.24484/sitereports.13137NCID BA61797409https://sitereports.nabunken.go.jp/13137 
  3. ^ 河野, 典夫、小島, 功『塩屋金清神社遺跡B地点発掘調査報告書』岐阜県吉城郡宮川村大字塩屋100、1999年3月30日(原著1999年3月30日)。doi:10.24484/sitereports.13308NCID BA49565368https://sitereports.nabunken.go.jp/13308 
  4. ^ 三好, 清超、長田, 友也『島遺跡2・塩屋金清神社遺跡3』 4巻岐阜県飛騨市古川町本町2番22号〈飛騨市文化財調査報告書〉、2012年3月23日(原著2012年3月23日)。doi:10.24484/sitereports.1932NCID BB08818550https://sitereports.nabunken.go.jp/1932 
  5. ^ 石棒クラブ (@sekibo.club) - Instagram
  6. ^ 飛騨地域限定の電子地域通貨で暮らしも旅もキャッシュレスに さるぼぼコイン
  7. ^ 【前半】新型コロナの影響下に行った考古館オンラインツアーの全ノウハウを余すところなく公開します! - 石棒クラブ(2020年5月21日)2021年9月5日閲覧。
  8. ^ 夏休み前に差をつけろ!?博物館オンラインクイズクエスト 学んで楽しむ石棒アドベンチャー!そして伝説へ・・・ - 石棒クラブフェイスブックイベントページ2021年9月10日閲覧。
  9. ^ 令和2年度 第2回埋蔵文化財担当職員等講習会 発表要旨 (PDF) - 文化庁(2021年2月3日。三好清超「埋蔵文化財を楽しんでもらうための取組み ―人口減少が著しい飛騨市で文化財を活用する意義」の箇所 (pp.25 - 34)を参照)2021年9月8日閲覧。
  10. ^ Go To タイムスリップ特設ページ - 石棒クラブhomepage(2020年10月18日)2021年9月10日閲覧。
  11. ^ 石棒を3Dデータ化することの未来. 飛騨市.
  12. ^ 石棒総選挙オープニングトークイベント 11月11日はあの有名な「おかしの日」でなく「おかしな日」に。 - 石棒クラブYouTubeチャンネル(2020年11月12日)2021年9月10日閲覧。
  13. ^ 国指定重要文化財 緑川東遺跡出土 大形石棒 - くにたち郷土文化館(2019年9月9日)2021年9月5日閲覧。
  14. ^ Go To タイムスリップアフタートーク 〜お疲れ様、え?…でも石棒マジもっと知りたいし、石棒ファンから考古学者までごちゃまぜトーク - 石棒クラブYouTubeチャンネル(2020年11月29日)2021年9月10日閲覧。
  15. ^ 石棒3Dデータ - sketchfab
  16. ^ FabCafé Hida
  17. ^ 【さるぼぼコインタウン】 マイ石棒づくり
  18. ^ “岐阜県飛騨市、男根を模した「石棒」をオープンデータ化 創作・商用促し文化財保護に”. 岐阜新聞(tenki.jpへの転載). (2021年6月3日). https://tenki.jp/news/gnp/S75161.html 2021年9月5日閲覧。 
  19. ^ 【石棒クラブ・トークイベント】3Dデータ化が未来を創る?~地域のちょっとしたものが地域の宝に~. 飛騨市.
  20. ^ 三好清超「020 7.文化財三次元データの取り組みと効果[19]人口減少が著しい飛驒市で文化財データ公開を進める意義」『奈良文化財研究所研究報告 : デジタル技術による文化財情報の記録と利活用3』第27巻、独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所、2021年3月、116-119頁、doi:10.24484/sitereports.90271-15062 
  21. ^ 石棒で博物館をサステナブルに(飛騨市で生まれた地方創生プロジェクト) 石棒クラブ
  22. ^ “アクセス悪すぎる博物館 Zoomで気づいた新たな活路”. 朝日新聞. (2020年6月11日). https://www.asahi.com/articles/ASN696T14N62OHGB01M.html 2021年9月5日閲覧。 (全文を読むには会員登録が必要)
  23. ^ “コロナ禍の考古館、発信手法注目され執筆依頼続々 岐阜”. 朝日新聞. (2021年4月11日). https://www.asahi.com/articles/ASP4B6V30P3COHGB00N.html 2021年9月5日閲覧。 
  24. ^ “苦境の博物館 コロナに負けるな!”. 日本放送協会解説委員室. (2021年5月18日). https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/449471.html 2021年9月5日閲覧。 
  25. ^ 三好清超飛騨市における文化財の活用とその効果-飛騨みやがわ考古民俗館の事例- - 文化遺産の世界(2021年5月19日)2021年9月5日閲覧。

外部リンク

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