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第1期棋聖戦 (囲碁)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

囲碁第1期棋聖戦(だいいっき きせいせん)は、1976年に開催された。

棋聖戦は、読売新聞が1975年まで主催していた名人戦が、日本棋院との間のいわゆる「名人戦騒動(名人 (囲碁)#移管))」により朝日新聞に移管されたために、当時最高額の契約金による「序列第一位の新棋戦、最高棋士決定戦・棋聖戦」として創設することになったタイトル戦である。

各段優勝戦、全段争覇戦を経て、最高棋士決定戦の決勝戦に進出した関西棋院橋本宇太郎九段と、日本棋院の藤沢秀行九段による七番勝負が1976年12月から1977年2月に行われ、4勝1敗で勝利した藤沢秀行が第1期棋聖位に就いた。

七番勝負の内容は、読売テレビとしては初めての囲碁番組「棋聖戦激突の譜」として放送された。また第4局の行われた北海道では、これを記念して北海道大学棋聖戦が開催され、第4局当日に決勝戦が行われた。

方式

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  • 参加棋士:日本棋院関西棋院棋士
  • 棋戦の仕組み
    • 各段優勝戦:初段から九段までの各段で、それぞれトーナメントで優勝を争う。従来の棋戦では日本棋院と関西棋院で別々に予選を行っていたが、各段戦では両棋院の棋士が混じってトーナメントを行う点も特色だった。
    • 全段争覇戦:初段から六段までの各段優勝者と七段戦優勝者がパラマス式トーナメントを行い、勝抜き者が、七段戦優勝者、八段戦上位2名、九段戦ベスト4とトーナメントを行う。
    • 最高棋士決定戦:名人本因坊十段天元のタイトル保持者と、全段争覇戦の上位者、及び棋聖審議会推薦棋士の計11名によるトーナメント。決勝は七番勝負。優勝者は第2期の最高棋士決定戦優勝者との挑戦手合七番勝負を行う。
  • コミは5目半。
  • 持時間は、各6時間、決勝七番勝負は各9時間。
  • 賞金 優勝者1700万円、七番勝負対局料計500万円

結果

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各段優勝戦・全段争覇戦

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各段戦優勝者によるパラマス戦では、三段戦優勝の王立誠が4連勝して勝ち上がり棋聖戦ボーイと呼ばれた。決勝には八段戦優勝の加藤正夫と、七段戦優勝の小林光一が進み、加藤が全段争覇戦の優勝となった。また日本棋院と関西棋院の交流対決は、日本棋院64-43関西棋院、という結果だった。

初段戦優勝 伊藤庸二 笠井 石井 大平 加藤 加藤
二段戦優勝 笠井浩二
三段戦優勝 王立誠
四段戦優勝 時本壱
五段戦優勝 宮沢吾朗
六段戦優勝 佐藤昌晴
七段戦準優勝 石井衛
九段戦準優勝 大平修三
八段戦優勝  加藤正夫 加藤
九段戦3位  坂田栄男
七段戦優勝  小林光一 小林 小林
九段戦3位  加田克司
八段戦準優勝 東野政治 白石
九段戦優勝  白石裕

最高棋士決定戦

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大竹英雄名人、武宮秀樹本因坊林海峰十段、藤沢秀行天元、全段争覇戦ベスト4の加藤正夫小林光一大平修三白石裕、審議会推薦の橋本宇太郎坂田栄男石田芳夫の、計11名が出場。

準決勝の大竹-橋本戦、藤沢-武宮戦は、同じ11月11日にそれぞれ日本棋院「清風の間」「寂光の間」で行われ、橋本は先番であちこちの大石を巧妙にシノギきって中押勝。藤沢は終始細かい形勢の碁を先番半目勝。決勝七番勝負には、第1期名人や前年の第1期天元戦優勝などで初物食いと呼ばれる藤沢秀行と、69歳の橋本宇太郎が進出し、七番勝負を戦うこととなった。七番勝負に関西棋院の棋士が登場するのは、1962年第17期本因坊戦の半田道玄以来であり、第1局の立会人も両棋院から1名ずつという異例のこととなり、長谷川章白石裕の両名が務めた。また藤沢は七番勝負の対局前には断酒して臨んだ。

1回戦 2回戦 3回戦 4回戦
-
 林海峰
-
 白石裕 ×
 林海峰 ×
 大竹英雄
 
11月11日
 
 大竹英雄 ×
 橋本宇太郎
 
-
 
 坂田栄男 ×
 橋本宇太郎
 
12月2−3日-2月7-8日
 
 橋本宇太郎 1
 藤沢秀行 4
 
-
 
 石田芳夫 ×
-
 藤沢秀行
 藤沢秀行
11月11日
 加藤正夫 ×
 藤沢秀行
 武宮正樹 ×
 
-
 
 武宮秀樹
-  
 大平修三 ×
 小林光一 ×     
 大平修三     

七番勝負第1局は、握って藤沢の先番となって下座に座る。序盤に高目定石で藤沢の新手が出て、その後黒が優勢に進め、白の大石を仕留めて153手目まで黒中押勝ち。この局は前夜祭で抽選に当ったファン9人が20分ずつ観戦できるという新企画も行われた。第2局は、読売新聞北陸支社15周年記念行事の一つとして富山県氷見市で開催。白番藤沢が序盤好調だったが、中盤のポカで先番橋本が133手中押勝ちし、1勝1敗のタイとした。第3局は先番藤沢が序盤好手で局面をリードし、その後橋本の粘りで逆転、再逆転、266手黒1目半勝ち。第4局は二間ばさみ定石の新手から白番藤沢が優勢に進めて、278手白5目半勝ち。第5局は先番藤沢が、得意の中国流布石から徐々にリードを拡げて、171手まで黒中押勝ち、4勝1敗で第1期棋聖位を獲得した。

決勝七番勝負

対局者
1(福田家)
12月2-3日
2(誉一山荘)
12月15-16日
3(東洋ホテル
1月12-13日
4(札幌グランドホテル
1月26-27日
5(博多全日空ホテル
2月7-8
6(ホテル仙台プラザ)
-
7(名古屋観光ホテル)
-
橋本宇太郎 × △○ × △× × - -
藤沢秀行 △○ × △○ △○ - -

(△は先番)

第1期棋聖戦決勝七番勝負第3局 1977年1月12-13日 橋本宇太郎九段-藤沢秀行九段(先番)

1勝1敗で迎えた第3局、13手目の黒1の手が好感覚と言われ、続く黒11、13の手も好手で、左辺白を圧迫しつつ黒は中央に進出して優勢を築いた。この後白が盛り返すが、黒が勝ちきって藤沢が2勝1敗と優位に立った。

参考文献

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  • 藤沢秀行『芸の詩 藤沢秀行囲碁放談』日本棋院 1978年
  • 『激闘譜第一期棋聖決定七番勝負』読売新聞社 1979年
  • 林裕『囲碁風雲録(下)』講談社 1984年
  • 中山典之『昭和囲碁風雲録(下)』岩波書店 2003年