航海士の希望
このページ名「航海士の希望」は暫定的なものです。(2011年11月) |
英語: The navigator's hope | |
作者 | ジョアン・ミロ |
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製作年 | 1968年-1973年 |
種類 | 連作 |
『航海士の希望』(こうかいしのきぼう、英: The navigator's hope)はジョアン・ミロが1968年から1973年にかけて制作した連作絵画。これらの半数は Pilar Juncosa の寄贈によってバルセロナのミロ美術館に所蔵され[1]、残りは各々個人蔵となっている[2]。
背景
[編集]この連作の主題は、ミロの実生活と直接関係が無いようである。一方、同時期の同種の作品には、当時の様々な事件との明確な関係が見られる。例えば『死刑囚の希望』はフランコ政権によって有罪とされ処刑された活動家サルバドール・プッチ・アンティックにまつわるものであり、『燃やされた画布』は1968年5月の五月革命に触発されたものかもしれない。
1968年から1973年にかけて、ミロはマヨルカにいた。そこで彼は自らの画風をかえりみて、また東洋文化への興味を新たにしていた。激しい色合いの上に描かれる書道的な筆使いから、ジャック・デュパンはミロが日本美術に影響を受けていたと指摘している。マドリード・コンプルテンセ大学の Pilar Cabañas が述べているように、この影響は遠く離れた日本と相補的な関係にあった。すなわち1937年に東京で開かれたシュルレアリスム展に際し、瀧口修造[3]は日本で初めてミロの評論を著した。ミロと瀧口は語り合い、何らかの共同制作を行ないたいと表明したものの、個人的事情と瀧口の健康上の理由により、それが実を結んだのは1967年になってのことであった。『航海士の希望』の連作が開始されたのは、その翌年である。その年、マーグ画廊で開かれたミロの展示会カタログには、いくつかの詩がミロ自身による挿絵つきで載せられたが、その中には瀧口の詩もあった。その後1970年代半ばまで、ミロと瀧口は何度か共同制作を行なっている[4]。
各作品
[編集]いずれもカンバスに油彩で描かれている。
作品 | 制作年 | サイズ (cm) | 美術館 | 都市 | 出典 |
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The navigator's hope I | 1968 | 24.5×41 | ミロ美術館 | バルセロナ | [5] |
The navigator's hope II | 1968 | 24×41 | 個人蔵 | [6] | |
The navigator's hope III | 1973 | 24.5×41 | ミロ美術館 | バルセロナ | [7] |
The navigator's hope IV | 1973 | 24.8×41 | ミロ美術館 | バルセロナ | [8] |
The navigator's hope V | 1973 | 24.5×41 | 個人蔵 | [9] | |
The navigator's hope VI | 1973 | 24.3×41 | ミロ美術館 | バルセロナ | [10] |
The navigator's hope VII | 1973 | 24.5×41 | 個人蔵 | [11] | |
The navigator's hope VIII | 1973 | 24×41 | 個人蔵 | [12] |
解釈
[編集]デュパンによるとこの連作には、ミロが1968年に繰り返し用いた手法が見られる。それは黒または暗色を背景とした、鮮やかな色使いに特徴づけられる[13]。1968年に制作された連作の最初の 2 枚は、『死刑囚の希望』と明らかな類似点が見られる。それは特に筆使い、および図と背景の関係に現われている。対照的に、1973年に制作された残りの絵は、ニューヨーク近代美術館に所蔵されている1966年の『母音の歌』[14]に似ている[15]。連作の最後の方は太い線の数が増えることにより、黒い背景はよく目立つ大きな色面によって埋められてゆき、筆使いは東洋の書道のそれに似たものとなっている。
いつであろうと、ミロが赤い点を描いたら、それは他のどこでもなくそこにあり、そこにあるべきなのだ。
出典
[編集]- ^ “Cards work at the Foundation's website”. ミロ美術館. 2011年11月13日閲覧。
- ^ Mayer, Enrique (1985), International auction records, 19, M Edition 2011年11月13日閲覧。
- ^ “「瀧口修造文庫」(Introduction)”. 多摩美術大学附属図書館. 2011年11月13日閲覧。
- ^ Cabins (1999)
- ^ “L'esperança del navegant I”. ミロ美術館. 2011年11月13日閲覧。
- ^ Mainaud-Lelong and Dupin, 2003
- ^ “L'esperança del navegant III”. ミロ美術館. 2011年11月13日閲覧。
- ^ “Fitxa de l'obra al web de la Fundació Miró”. ミロ美術館. 2011年11月13日閲覧。
- ^ “Picasso-Miró” (PDF). 2011年11月13日閲覧。
- ^ “L'esperança del navegant VI”. ミロ美術館. 2011年11月13日閲覧。
- ^ Joan Miró; Galeries nationales du Grand Palais (France); Réunion des musées nationaux (France) (1974), Joan Miró, Éditions des Musées nationaux 2011年11月13日閲覧。
- ^ Dupin i Lelong-Mainaud, 2003
- ^ Jacques Dupin; Joan Miró; Ariane Lelong-Mainaud (2002), Joan Miró: 1959-1968, Daniel Lelong, ISBN 978-2-86882-056-3 2011年11月13日閲覧。
- ^ “Joan Miró. The Song of the Vowels. Palma de Mallorca, April 24, 1966”. MoMA. 2011年11月13日閲覧。
- ^ Fundació Joan Miró (Barcelona, Spain); Francesc Vicens (1979), Obra de Joan Miró, Fundació Joan Miró, Centre d'Estudis d'Art Contemporani 2011年11月13日閲覧。
- ^ Louis Aragon, Henri Matisse.Roman, Paris, Gallimard, 1971, p. 87.
関連文献
[編集]- Clavero, Jordi.J (2010), Fundació Joan Miró. Foundation's Guide, Barcelona: Polígrafa, ISBN 978-84-343-1242-5
- Cabin, Pilar (1999), “Shuzo Takiguchi The poems of Joan Miró. The origin of an artistic collaboration” (Spanish), Japan, a Comparative Approach, Proceedings of the Third and Fourth Congress of the Association of Japanese Studies in Spain, Association of Japanese Studies in Spain, pp. 313-327
- Dupin, Jacques; Lelong-Mainaud (2003). Catalogue raisonée. Paintings. vol. V: 1969/1975. Paris: Daniel Lelong. pp. no. 1498 to 1505, pg: 126_1968, 127_1973, 128_1973, 129_1973