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ハシリドコロ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
莨菪根から転送)
ハシリドコロ
ハシリドコロ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: ナス目 Solanales
: ナス科 Solanaceae
: ハシリドコロ属 Scopolia
: ハシリドコロ S. japonica
学名
Scopolia japonica Maxim. (1872)[1]
和名
ハシリドコロ

ハシリドコロ(走野老[2]・莨菪、学名: Scopolia japonica)は、ナス科ハシリドコロ属草本。別名、サワナス[3]オメキグサ[3]キチガイイモキチガイナスビオニヒルグサヤ。和名は、食べると錯乱して走り回ること、また、根茎トコロ(野老)に似ていることから命名された[3]

特徴

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日本本州から四国九州にかけて分布する多年草である[3]。沢沿いの水辺、山間の日陰などの湿った木陰に群生する[2][3]

多年生の草本[4]。早春にに包まれた新芽を出し[3]、全長は30 - 60センチメートル (cm) 程度に成長する[3]。全体に毛がなく、根茎が太いのが特徴である[4]。茎葉はやわらかい[2]

花期は春(4 - 5月)[3]。若葉が開くと同時に花芽が出て、釣鐘状の暗紫紅色の花を下向きに咲かせる[4][3]。花の中は黄色い[2]。果実は約1㎝で、薄緑色の歪んだ球形。熟すると上部が蓋状に外れて種子を放出する[5]。7月頃に地上部が枯れるため[3]、夏から冬までは見ることができない典型的な春植物である。

早春に生える新芽がフキノトウに似ており、誤食による食中毒の危険がある[3]

毒性と利用

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アルカロイド類のトロパンアルカロイドを主な毒成分とする有毒植物で、全草に毒があり、根茎とは特に毒性が強い[4]。誤食すると幻覚症状を起こして錯乱状態になり、嘔吐下痢血便瞳孔散大、めまい、異常興奮などで、それが数日間続いて走り回って苦しみ、多食すると呼吸困難から死に至る場合がある[2][4][3]。これは、同じナス科のベラドンナなどと同様の症状である。また、ハシリドコロに触った手で目をこすると瞳孔が開き、眩しく感じられる[6]

ハシリドコロのトロパンアルカロイドの成分は、l-ヒヨスチアミンやそのラセミ体であるアトロピンdl-ヒヨスチアミン)、他にノルヒヨスチアミンl-スコポラミンなどが含まれる[3]。これらの物質は副交感神経を麻痺させるため、先述のような症状がおこるのである。

利用

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ロートコン

日本では、江戸時代フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトが薬効に気付いたのが契機となり、以降ベラドンナの代用品として用いられている[3]

専門家が所定の用法・用量で使用すれば有用であり、成分の強い根茎と根を乾燥させたものは、ロートコン(莨菪根、Scopoliae Rhizoma)と呼ばれる[3]。ロートコンは消化液分泌抑制作用や鎮痛鎮痙作用などがあり[3]日本薬局方にも収められている。ロートコンに含まれるアトロピンは硫酸アトロピンの原料になり、ロートコンの成分を水またはエタノールに浸出させたものはロートエキスと呼ばれる。ロートエキスは、胃病の薬として利用される[3]

間違えやすい山菜

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春に山菜採りをする人は、特に注意を要する植物である[2]。早春に土から顔を出す新芽はハンゴンソウフキノトウオオバギボウシと間違えられやすく[3][7]、誤食による食中毒の危険がある[3]

出典

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  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Scopolia japonica Maxim. ハシリドコロ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年5月29日閲覧。
  2. ^ a b c d e f 永田芳男 2006, p. 63.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 白瀧義明「野山の花:身近な山野草の食効・薬効(ハシリドコロ)」『New Food Industry』第60巻第4号、エヌエフアイ合同会社、20018-10、36-38頁。 
  4. ^ a b c d e 金田初代 2010, p. 185.
  5. ^ ハシリドコロ、松江の花図鑑
  6. ^ 羽根田治『新装版・野外毒本:被害実例から知る日本の危険生物』山と渓谷社 2014年、ISBN 9784635500357 p.170.
  7. ^ 間違えやすい有毒植物 長野市食品衛生係

参考書籍

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  • 金田初代、金田洋一郎(写真)『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年9月24日、185頁。ISBN 978-4-569-79145-6 
  • 永田芳男『春の野草』山と渓谷社〈新装版山渓フィールドブックス9〉、2006年11月10日、63頁。ISBN 4-635-06066-7 
  • 和田浩志・寺林進・近藤健児編集(旧版監修:三橋博)『原色牧野和漢薬草大図鑑』北隆館、ISBN 483260810X
  • 木原浩『新装版山渓フィールドブックス (14) 山菜』山と渓谷社ISBN 4635060713

関連項目

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外部リンク

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