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ヒヨスチアミン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヒヨスチアミン
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
販売名 Anaspaz, Levbid, Levsin
Drugs.com monograph
MedlinePlus a684010
胎児危険度分類
法的規制
薬物動態データ
生物学的利用能50%タンパク質結合
代謝肝臓
半減期3–5時間
排泄尿素
データベースID
CAS番号
101-31-5 チェック
ATCコード A03BA03 (WHO)
PubChem CID: 154417
DrugBank DB00424 チェック
ChemSpider 10246417 チェック
UNII PX44XO846X チェック
KEGG D00147
ChEBI CHEBI:17486 チェック
ChEMBL CHEMBL1697729 ×
化学的データ
化学式C17H23NO3
分子量289.375 g/mol
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ヒヨスチアミン(Hyoscyamine)は、トロパンアルカロイドである。ヒヨスマンドレイクシロバナヨウシュチョウセンアサガオトマトベラドンナ等のナス科の特定の植物に二次代謝産物として含まれる。アトロピン左旋性異性体であり、そのためlevo-アトロピンと呼ばれることもある。同じようにナス科に含まれる抗コリン性物質で前駆体であるスコポラミンの旧別名ヒヨスチンと紛らわしいが、別ものである。ヒヨスチアミンの商標としては、Symax、HyoMax、Anaspaz、Egazil、Buwecon、Cystospaz、Levsin、Levbid、Levsinex、Donnamar、NuLev、Spacol T/SやNeoquess等がある。

薬理学

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ヒヨスチアミンは、ムスカリン性アセチルコリン受容体アンタゴニストムスカリン拮抗剤)である。汗腺唾液腺、胃分泌部、心筋洞房結節消化管平滑筋中枢神経系副交感神経系アセチルコリンの作用を阻害する。胃腸運動低下させ、胃酸分泌は減少し、上気道の分泌物も減少する[1]セロトニンと拮抗していると考えられている[2]。同程度の投与量では、ヒヨスチアミンはアトロピンの98%の抗コリン活性を持つ。一方、ベラドンナに由来する他成分であるスコポラミンは、アトロピンの92%の抗コリン活性を持つ[2]

硫酸ヒヨスチアミンの半減期は2-3.5時間である[1]

利用

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消化性潰瘍過敏性腸症候群大腸憩室症膵炎疝痛尿路感染症等を含む、下腹部や膀胱の様々な疾患による痙攣症状を緩和するために用いられる。また、心臓疾患の緩和、パーキンソン病の症状の制御、肺疾患患者で見られる異常な呼吸器症状や粘液の過剰分泌の制御にも用いられる。

また、神経因性疼痛や慢性疼痛の疼痛管理、治療抵抗性、治療不能、治癒不能な疾患による難治性疼痛の緩和ケアにも有用である。またオピオイドと併用することで、得られる鎮痛効果が増大する。この効果には、いくつかのメカニズムが提案されている。類似薬のアトロピンやスコポラミン、またシクロベンザプリントリヘキシフェニジルオルフェナドリン等の抗コリン薬もこの目的のために利用される。オピオイドやその他の蠕動抑制剤と一緒に用いる場合、麻痺性イレウスの危険性を考慮すると、便秘を予防する手段が特に重要となる。

副作用

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副作用としては、口や喉の渇き、目の痛み、視覚障害、不安感、めまい、不整脈、潮紅、気分の悪さなどがある。過剰摂取は、頭痛、吐き気、嘔吐、及び見当識障害、幻覚、陶酔感、性的興奮、短期記憶喪失、また極端な場合には昏睡を含む中枢神経系の症状を引き起こす。陶酔効果や性的効果はアトロピンの効果よりも強いが、スコポラミンやジシクロベリン、オルフェナドリン、シクロベンザプリン、トリヘキシフェニジル、フェニルトロキサミン等のエタノールアミン抗ヒスタミン剤よりも弱い。また、利尿剤としても作用する。

植物中での生合成

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ヒヨスチアミンは、シロバナヨウシュチョウセンアサガオ等のナス科の植物から抽出できる。ヒヨスチアミンは、植物中でのスコポラミン生合成の直接の前駆体であるため、同じ代謝経路で生成される[3]

スコポラミンの生合成は、L-オルニチンオルニチン脱炭酸酵素により脱炭酸され、プトレシンが生成するところから始まる。プトレシンはプトレシン-N-メチルトランスフェラーゼによりメチル化され、N-メチルプトレシンとなる[3]

メチルプトレシンを特異的に認識するプトレシンオキシダーゼによる脱アミノ化によって4-メチルアミノブタナールが生成され、さらに自発的環化によりN-メチルピロリウムカチオンとなる。次の段階でピロリウムカチオンはアセト酢酸とともに縮合し、ヒグリンを生成する。この反応を触媒する酵素はまだ知られていない。ヒグリンは転位し、トロピノンになる[3]

その後、トロピノンレダクターゼIによりトロピンに変換され、フェニルアラニン由来のフェニル酢酸と縮合し、リットリンとなる。Cyp80F1に分類されるシトクロムP450[4]がリットリンを酸化、転位し、ヒヨスチアミンアルデヒドとなる。

出典

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  1. ^ a b DailyMed - ED-SPAZ- hyoscyamine sulfate tablet, orally disintegrating”. dailymed.nlm.nih.gov. 2020年4月3日閲覧。
  2. ^ a b Kapoor, A. K. (Professor of pharmacology). Illustrated medical pharmacology. Raju, S. M., (First edition ed.). New Delhi. p. 131. ISBN 978-93-5090-655-2. OCLC 870530462. https://www.worldcat.org/oclc/870530462 
  3. ^ a b c Ziegler, Jörg; Facchini, Peter J. (2008). “Alkaloid biosynthesis: metabolism and trafficking”. Annual Review of Plant Biology 59: 735–769. doi:10.1146/annurev.arplant.59.032607.092730. ISSN 1543-5008. PMID 18251710. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18251710. 
  4. ^ Li, Rong; Reed, Darwin W.; Liu, Enwu; Nowak, Jacek; Pelcher, Lawrence E.; Page, Jonathan E.; Covello, Patrick S. (2006-05). “Functional genomic analysis of alkaloid biosynthesis in Hyoscyamus niger reveals a cytochrome P450 involved in littorine rearrangement”. Chemistry & Biology 13 (5): 513–520. doi:10.1016/j.chembiol.2006.03.005. ISSN 1074-5521. PMID 16720272. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16720272.