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赤外分光相関表

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

赤外分光相関表あるいは赤外吸収周波数の表(英語:infrared spectroscopy correlation tableまたはtable of infrared absorption frequencies)とは、吸収のピークと周波数を波数表記で表したものである。一般的には結合の種類官能基によって分類される[1][2]物理化学分析化学において、赤外分光法(IR)は赤外放射を観測して化合物を同定するために用いられる。

この表の吸収は有機化合物のみに適用されるものではない。IRは無機化合物金属錯体フッ化マンガンなど)の同定にも用いられる[3]

周波数の表

[編集]

安定な化合物[4]と遷移状態の化合物[5]の表も存在する。

化学結合 結合の種類 官能基 吸収ピーク (cm−1) ピークの形
C─H アルキル メチル基 1260
1380
2870 中~強
2960 中~強
メチレン基 1470
2850 中~強
2925 中~強
メチン基 2890
ビニル基 C═CH2 900
2975
3080
C═CH 3020
一置換アルケン 900
990
シス置換アルケン 670–700
トランス置換アルケン 965
三置換アルケン 800–840 強~中
芳香族化合物 ベンゼン/置換ベンゼン 3070
一置換ベンゼン 700–750
690–710
オルト置換ベンゼン 750
メタ置換ベンゼン 750–800
860–900
パラ置換ベンゼン 800–860
アルキン 全て 3300
アルデヒド 全て 2720
2820
C═C 鎖式C═C 一置換アルケン 1645
1,1-二置換アルケン 1655
cis-1,2-二置換アルケン 1660
trans-1,2-二置換アルケン 1675
三置換・四置換アルケン 1670
共役 C═C ジエン 1600
1650
ベンゼン環 1625
with C═O 1600
C═C (どちらもsp2) 全て 1640–1680
芳香族C═C 全て 1450 弱~強 (多くは3つまたは4つに分裂)
1500
1580
1600
C≡C 末端アルキン 2100–2140
二置換アルキン 2190–2260 非常に弱い (発見できない場合が多い)
C=O アルデヒド/ケトン 飽和脂肪族化合物/六員環 1720
α,β-不飽和 1685
芳香族ケトン 1685
五員環 1750
四員環 1775
アルデヒド 1725 ケトンと同様に、環の大きさと共役に依存
カルボン酸/誘導体 飽和カルボン酸 1710
不飽和/芳香族カルボン酸 1680–1690
エステルラクトン 1735 ケトンと同様に、環の大きさと共役に依存
酸無水物 1760
1820
塩化アシル 1800
アミド 1650 会合アミド
カルボン酸塩英語版 1550–1610
アミノ酸双性イオン 1550–1610
O─H アルコールフェノール 低濃度 3610–3670
高濃度 3200–3400 ブロード(幅が広い)
カルボン酸 低濃度 3500–3560
高濃度 3000 ブロード
N─H 一級アミン 全て 3400–3500
1560–1640
二級アミン 全て >3000 弱~中
アンモニウムイオン 全て 2400–3200 複数のブロードなピーク
C─O アルコール 一級 1040–1060 強、ブロード
二級 ~1100
三級 1150–1200
フェノール 全て 1200
エーテル 脂肪族 1120
芳香族 1220–1260
カルボン酸 全て 1250–1300
エステル 全て 1100–1300 2つのバンド(C─O結合を持たないケトン類とは区別できる)
C─N 脂肪族アミン 全て 1020–1220 重なることが多い
C═N 全て 1615–1700 C═Oの共役効果に類似
C≡N (ニトリル) 非共役 2250
共役 2230
R─N─C (イソシアニド) 全て 2165–2110
R─N═C═S 全て 2140–1990
C─X フルオロアルカンen 通常 1000–1100
トリフルオロメチル 1100–1200 2つの強くブロードなバンド
クロロアルカン 全て 540–760 弱~中
ブロモアルカン 全て 500–600 中~強
ヨードアルカン 全て 500 中~強
N─O ニトロ化合物 脂肪族 1540 比較的強い
1380 比較的弱い
芳香族 1520 共役すると低下
1350
P─C 有機リン化合物 芳香族 1440-1460
P─O リン酸化物 結合 1195-1250
非結合 1250-1300

脚注

[編集]
  1. ^ George Socrates (12 April 2004). Infrared and Raman Characteristic Group Frequencies: Tables and Charts. ジョン・ワイリー・アンド・サンズ. pp. 18–. ISBN 978-0-470-09307-8. https://books.google.com/books?id=LDoAAjMnwEIC&pg=PP18 5 December 2012閲覧。 
  2. ^ Peter Larkin (25 May 2011). Infrared and Raman Spectroscopy; Principles and Spectral Interpretation. エルゼビア. ISBN 978-0-12-386984-5. https://books.google.com/books?id=KPyV1DRMRbwC 5 December 2012閲覧。 
  3. ^ Kazuo Nakamoto (中本一男) (16 January 2009). Infrared and Raman Spectra of Inorganic and Coordination Compounds, Applications in Coordination, Organometallic, and Bioinorganic Chemistry. ジョン・ワイリー・アンド・サンズ. pp. 9–. ISBN 978-0-470-40587-1. https://books.google.com/books?id=IQZKdQ1rSKQC&pg=PR9 13 December 2012閲覧。 
  4. ^ NSRDS-NBS: National Standard Reference Data Series, National Bureau of Standards. U.S. Government Printing Office. (June 1972). https://www.nist.gov/data/nsrds/NSRDS-NBS-39.pdf 13 December 2012閲覧。 
  5. ^ Jacox, Marilyn E. (2003). “Vibrational and Electronic Energy Levels of Polyatomic Transient Molecules. Supplement B”. Journal of Physical and Chemical Reference Data 32 (1): 1. Bibcode2003JPCRD..32....1J. doi:10.1063/1.1497629. ISSN 0047-2689.