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醒睡笑

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

『醒睡笑』(せいすいしょう)は庶民の間に広く流行した話を集めた笑話集。著者は茶人文人としても知られる京(京都)の僧侶安楽庵策伝。写本8巻8冊、1039話の話を収録している。「眠りを覚まして笑う」の意味で『醒睡笑』と命名された。1623年(元和9年)成立[1]板倉重宗へ献呈された後、転写されて流布した[1]。『醒酔笑』と記す資料もあるが正当ではない。

概説

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策伝の自序では、「策伝それがし小僧の時より、耳にふれておもしろくをかしかりつる事を、反故の端にとめ置きたり」[2]と話を収集した過程を述べている。収録されている話の中には、『無名抄』『宇治拾遺物語』に由来するものがあり、同時代に発行された『戯言養気集』と『昨日は今日の物語』と共通するものもある。それらは、策伝が直接引用したのか、巷間に伝わっていたものを採用したものか不明である[2]

元和元年(1615年)の頃、策伝が板倉重宗の前で話した話が面白く、著書として纏めるように薦められたことから『醒睡笑』が著されたという。策伝が完成した『醒睡笑』を重宗の元に届けた折り(1628年:寛永5年3月17日)、重宗と同席した子・重郷(板倉侍従)に献呈された(実際には重宗への献呈)。この経緯は、重宗による奥書に記されている。

影響

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『醒睡笑』は、後の咄本(はなしぼん)や落語に影響を与え、寄席落語の元ネタとして参照された[3]。例えば、初代露の五郎兵衛による『軽口露がはなし』(1691年、元禄4年)に記載された88話中、28話が『醒睡笑』に由来する噺である[2]関根黙庵の『江戸の落語』(1905年)以降、策伝は落語の祖と位置づけられている[4]。現代でも『醒睡笑』に由来する子ほめをはじめ複数の落とし噺が演じられる。また、小辺路大辺路の名前の歴史[5][6]瀬田の唐橋に関する格言『急がば回れ』の由来[7][8]などについて、現代では歴史的な資料としても利用されている。

原典の構成

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巻の一
  • 謂えば謂われる物の由来(よくも謂えたものだというこじつけばなし)
  • 落書風刺を含んだ匿名の投書)
  • ふわとのる(「ふわっ」と乗る:煽てに乗ること)
  • 鈍副子(どんふうす:鈍物の副司。つまり血の巡りの悪い禅寺の会計係)
  • 無知の僧(お経もろくに読めない坊主のはなし)
  • 祝い過ぎるも異なること(縁起の担ぎすぎの失敗談)
巻の二
  • 名付親方(変な名前をつける名付親)
  • 貴人の行跡(身分の高い人の笑いのエピソード)
  • 空(愚か者の笑い)
  • 吝太郎(けちんぼの笑い)
  • 賢だて(利巧ぶる人の間抜け話)
巻の三
  • 文字知り顔(知ったかぶりの間抜けさ)
  • 不文字(文盲なのにそれを気が付かないふりをする。おかしさ)
  • 文のしなじな(機知にとんだ手紙の数々)
  • 自堕落(ふしだら者の犯す失敗談)
  • 清僧(女性と交わる罪を犯さない坊主の話)
巻の四
  • 聞こえた批判(頓智裁判)
  • いやな批判(不合理な裁判)
  • そでない合点(見当はずれ・早合点)
  • 唯あり(味のある話)
巻の五
  • きしゃごころ(やさしい風流ごころ)
  • 上戸(酒飲みの珍談・奇談・失敗談)
  • 人はそだち(育ちの悪さから来る失敗談。「氏より育ち」の逆)
巻の六
  • 稚児のうわさ(稚児から聞いた内緒ばなし)
  • 若道知らず(男色のおかしさ)
  • 恋の道(夫婦間の笑い)
  • 吝気(やきもちばなし)
  • 詮無い秘密(くだらない秘密)
  • 推は違うた(推理がはずれてがっかりした話)
  • うそつき(ほら話)
巻の七
  • 思いの色をほかにいう(心に思っていることは態度に出てしまうという笑い話)
  • 言い損ないはなおらぬ(失言を何とか取り繕うとするおかしさ)
  • 似合うたのぞみ(たかのぞみは失敗するという話)
  • 廃忘(失敗するとあわてるという話、蒙昧すること)
  • うたい(謡曲の文句に題材をとった笑い話)
  • 舞(舞の台本を聞きかじった無知な人の話)
巻の八
  • 頓作(即席頓智話)
  • 平家(平家物語を詠う琵琶法師にまつわる滑稽談)
  • かすり(語呂合わせや駄洒落
  • 秀句(秀でた詩文をもとにした言葉遊び
  • 茶の湯(茶道の心得が無いために起こすしくじり話)
  • 祝い済まいた(めでたし、めでたしで終わる話)

主な校訂文献

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脚注

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  1. ^ a b 岡本勝雲英末雄編『新版 近世文学研究事典』おうふう、2006年2月、11頁。 
  2. ^ a b c 安楽庵策伝著、鈴木棠三訳『醒睡笑』(平凡社東洋文庫、1964年)
  3. ^ 中川桂『江戸時代落語家列伝』新典社、2014年6月、11頁。 
  4. ^ 中川桂『江戸時代落語家列伝』新典社、2014年6月、14頁。 
  5. ^ 小山靖憲『熊野古道』岩波書店、2000年。164-165ページ。 ISBN 4004306655
  6. ^ み熊野ねっと >熊野古道(熊野参詣道)の歩き方 > 熊野古道「大辺路」
  7. ^ 堀井令以知(編)『決まり文句語源辞典』東京堂出版、1997年。30ページ。ISBN 978-4490104707
  8. ^ 瀬田の唐橋

関連項目

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外部リンク

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