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アスタリスク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
*から転送)
*

アスタリスク またはアステリスク: asterisk)は、約物のひとつで、中心点から放射状に伸びる数本の線分で構成される記号である(右図参照)。

英語の asterisk後期ラテン語を介して古代ギリシア語の「小さな星」を意味する言葉に由来している。

日本語において、星号星印アスタとも呼ばれる。

形状

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5本線のアスタリスク

註釈などいくつかの用途では上に寄せた形で書かれるため、印刷活字やコンピュータのフォントでは最初から上に寄せてデザインされていることも多いが、中央に書かれることもある[1]Unicode では高い位置に書かない「⁎ U+204E LOW ASTERISK」が用意されている。

中心点から伸びる線分の本数はフォントによって異なる。多くの場合、中心点から伸びる5本[2]または6本の線分で表される。「×」(掛ける、クロス)に縦線を重ねた形がよく知られているが、「×」に横線を重ねた形[3](すなわちスターマークと同じ形)で書かれることもある。

名称

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ギリシャ語からラテン語に入った語で、「星 (aster、アステル)」の指小形(小さな星)に由来する。

日本国語大辞典広辞苑をはじめ、一般的な国語辞書では、英語風の「アスタリスク」ではなくラテン語風の「アステリスク」で立項されている。

日本産業規格 JIS X 0213 における名称は、「星印」または「アステリスク」となっている。

用途

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脚注記号

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アスタリスクは一般的に脚注を示す記号として用いられる。脚注記号としては短剣符(†)や二重短剣符(‡)を用いることも一般的である。

アスタリスクと短剣符を脚注記号として混在させる場合、第一の脚注にアスタリスク、第二の脚注に短剣符、第三の脚注に二重短剣符をそれぞれあてる慣習がある。4番目以降の脚注について明確に決まった記号は存在せず、著者や出版者の都合によりまちまちである。

アスタリスクのみを脚注記号として用いる場合、複数の脚注を指示するために以下のいずれかの方法がとられる:

  • アスタリスクを複数並べる(*, **, ***, ……)
  • 脚注番号を添える(*1, *2, *3, ……)

翻訳書の場合、原書に存在する注釈と翻訳者の注釈を区別するために一方をアスタリスクで示し、他方を別の記号で示すことがある。

コンピュータ

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コンピュータでの文字表現において、特にプログラミングの文脈で、アスタリスクは特別な意味を持つことがある。例えば、乗算冪乗を表す演算子を表したり、文字検索におけるワイルドカードとしての利用されることがある。

演算子

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演算子として、コンピュータプログラムソースコード上で、アスタリスクは乗算や類似の二項演算を表す記号として用いられることが多い(例えば の意味で a * b と書く)。アスタリスクが乗算記号に採用された経緯は、FORTRAN が設計された際に、IBM 721 系のカードパンチ機に乗算記号 × のキーが存在しなかったため、アスタリスク * で代用した名残といわれる。

また FORTRAN や JavaScript, Python などのプログラミング言語では冪乗を二重アスタリスク ** で表すことができる(例えば の意味で a ** b と書く)。

C言語C++などのポインタ演算を提供する言語では、ポインタ型の変数や関数の宣言および定義において、またポインタ型の値に対する間接参照のためにアスタリスクを使用する。

任意の要素を示す記号

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正規表現においてアスタリスクは、直前の表現の0回以上任意回の繰り返しを示す。例えば /[0-9]*/ は任意の長さの数字の列に一致する。アスタリスクで示された正規表現の繰り返しはクリーネ閉包と呼ばれる。

グロブにおいてアスタリスクは、文字数不定の任意の文字列に一致するワイルドカードとして用いられる。

SQLにおいてアスタリスクは、SELECT 句ですべての列を示すために用いられる(例えば SELECT * FROM FooTable はテーブル FooTable に定義されたすべての列を照会する)。

統一モデリング言語 (UML) のクラス図においてアスタリスクは、クラス間の関連の多重度が任意の数であることを示す記号として用いられる(例えば、1..* は多重度が 1 以上の任意の整数であることを表し、また *0..* と同義である)。

UMLの多重度「0..*」

マークアップ

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C言語などのプログラミング言語では、斜線とアスタリスクを組み合わせてソースコードにコメントを記述することができる。/* コメント */ のように /**/ で囲まれた部分はコメントを表す。 このコメント記法の起源は、B言語に遡る。

MediaWikiでは、箇条書き用のマークアップ記号としてアスタリスクを用いる(Help:箇条書きも参照)。

Markdownでは、太字斜体箇条書き水平線の記述のためにアスタリスクを用いることができる。

その他特定言語における機能

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Perlでは、型グロブを表すためにもアスタリスクを用いる。

Common Lispでは、スペシャル変数(グローバル変数)を *XXX* のようにアスタリスクで囲んで表す。

数学

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アスタリスクは数学において多くの使い方がある。以下に一般的な使用法をリストするが、完全なものではない。

単独で
  • ある集合の任意の一元。例えばリーマン和を計算するときとか単連結集合を単元集合 { ∗ } に収縮するときなどに使われる。
単項演算子前置記法
  • ベクトル空間上のホッジ双対作用素
単項演算子(下付き添え字英語版
単項演算子(上付き添え字英語版
二項演算子中置記法

アスタリスクは数学のすべての分野で同じ文字によって表される2つの量の間の対応を示すために用いられる。一方はアスタリスクをつけて、一方はつけずに。

A*のように、上記の記法をもとにアルゴリズムの命名に使用されるケースもある。

数学のタイポグラフィ

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上質な数学のタイポグラフィでは、Unicode文字 U+2217 asterisk operator (HTML では、∗) が利用可能である。この文字は Windows や Macintosh の OS や多くのプリンターに含まれている Symbol フォントの PostScript symbol 文字集合の regular asterisk の位置にも現れる。上質なタイポグラフィでは他の数学の演算子と並ぶ大きいアスタリスクを使わなければならない。

言語学

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  • 文法的に不適格な文(非文 ungrammatical sentence)の先頭に付ける。また括弧と組み合わせて、あると非文あるいは無いと非文になるものを表す。
    I'm not / *I amn't : 後者は死語表現。
    go (*to) home : to があると非文
    go *(to) the station : to が無いと非文
  • 比較言語学では、音声表現の先頭に添えて、史料などで実証されていない論理的な再構形であることを示す。
    *ainlif > endleofan > eleven
  • 同様に音韻論などでは、音素表現の先頭に添えて、発音不可能な仮構形などを表す場合がある。
  • IPA では固有名詞の語頭につけることが提案されたが、あまり用いられない。

その他

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  • 英文電子メールでは、強調したい語句を* *で囲むことが行われる。
  • 天文学では、点状源を意味することがあり、スターと読む。例: いて座A*は、広がりを持つ電波源いて座Aの中の点状電波源を意味する。
  • バイオグラフィーなどで、誕生や生を意味する。対応する記号はを意味する「」。
  • パスワード入力時などの伏字として使われる。「」が使われることも多い。
  • 事前にフォーマットとして印刷されている文字を抹消する際に用いる。例として、預金通帳の項目内の取引で事前に書かれている文字に該当しない取引があった際に印字されるなどのケースで見られる。
  • MLBの記録において、薬物使用疑惑など「注釈付き」「参考記録」と判断された選手の名前にはアスタリスクが印字される。
  • 表などの空欄を埋めるのに、連続した * が使われる。未記入等ではなくN/Aであることを明示したり、改竄防止の効果がある。
  • 国際天気図記号ではを表す。個数や配置でさまざまな降り方を表し、単なる「*」は「弱い断続性の雪」である。
  • △と▽を合わせた「✡」を、籠目ないし、ダビデの星六芒星と呼び、アスタリスクで表すことがある。
  • 馬産では馬名の前に付し、その馬が外国からの輸入馬であることを示す。

類似の記号

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  • 日本では、星印というと「☆」「★」が一般的である。また、「」(米印)を「星印」と呼ぶこともある。
  • アスタリスクを90度回転させると、プッシュ式電話機におけるボタンの一つである「」(スターマーク)となる。ATコマンドなどでは星印はアスタリスクで代用される。ダイヤル回線使用時に、トーン信号出力へ切り替えるという機能を割り当てているものがある。
  • 縦にアスタリスクを2つ並べた記号をダブルアステ (⁑) という。主に和文で用いられる。
  • アスタリスクを正三角形状に3つ並べた記号をアステリズム (⁂) という。節の区切りを示すために用いられる。

符号位置

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記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
* U+002A 1-1-86 *
*
*
星印/アステリスク (半角)
ASTERISK
͙ U+0359 - ͙
͙
COMBINING ASTERISK BELOW
U+2042 1-12-94 ⁂
⁂
アステリズム
ASTERISM
U+204E - ⁎
⁎
LOW ASTERISK
U+2051 1-12-93 ⁑
⁑
ダブルアステ
TWO ASTERISKS ALIGNED VERTICALLY
U+20F0 - ⃰
⃰
COMBINING ASTERISK ABOVE
U+2217 - ∗
∗
∗
ASTERISK OPERATOR
U+229B - ⊛
⊛
⊛
CIRCLED ASTERISK OPERATOR
U+2722 - ✢
✢
FOUR TEARDROP-SPOKED ASTERISK
U+2723 - ✣
✣
FOUR BALLOON-SPOKED ASTERISK
U+2724 - ✤
✤
HEAVY FOUR BALLOON-SPOKED ASTERISK
U+2725 - ✥
✥
FOUR CLUB-SPOKED ASTERISK
U+2731 - ✱
✱
HEAVY ASTERISK
U+2732 - ✲
✲
OPEN CENTRE ASTERISK
U+2733 - ✳
✳
EIGHT SPOKED ASTERISK
U+273A - ✺
✺
SIXTEEN POINTED ASTERISK
U+273B - ✻
✻
TEARDROP-SPOKED ASTERISK
U+273C - ✼
✼
OPEN CENTRE TEARDROP-SPOKED ASTERISK
U+273D - ✽
✽
HEAVY TEARDROP-SPOKED ASTERISK
U+2743 - ❃
❃
HEAVY TEARDROP-SPOKED PINWHEEL ASTERISK
U+2749 - ❉
❉
BALLOON-SPOKED ASTERISK
U+274A - ❊
❊
EIGHT TEARDROP-SPOKED PROPELLER ASTERISK
U+274B - ❋
❋
HEAVY EIGHT TEARDROP-SPOKED PROPELLER ASTERISK
U+29C6 - ⧆
⧆
SQUARED ASTERISK
U+2A6E - ⩮
⩮
⩮
EQUALS ASTERISK
U+A673 - ꙳
꙳
SLAVONIC ASTERISK
U+FE61 - ﹡
﹡
SMALL ASTERISK
U+FF0A 1-1-86 *
*
星印/アステリスク (全角)
FULLWIDTH ASTERISK
🞯 U+1F7AF - 🞯
🞯
LIGHT FIVE SPOKED ASTERISK
🞰 U+1F7B0 - 🞰
🞰
MEDIUM FIVE SPOKED ASTERISK
🞱 U+1F7B1 - 🞱
🞱
BOLD FIVE SPOKED ASTERISK
🞲 U+1F7B2 - 🞲
🞲
HEAVY FIVE SPOKED ASTERISK
🞳 U+1F7B3 - 🞳
🞳
VERY HEAVY FIVE SPOKED ASTERISK
🞴 U+1F7B4 - 🞴
🞴
EXTREMELY HEAVY FIVE SPOKED ASTERISK
🞵 U+1F7B5 - 🞵
🞵
LIGHT SIX SPOKED ASTERISK
🞶 U+1F7B6 - 🞶
🞶
MEDIUM SIX SPOKED ASTERISK
🞷 U+1F7B7 - 🞷
🞷
BOLD SIX SPOKED ASTERISK
🞸 U+1F7B8 - 🞸
🞸
HEAVY SIX SPOKED ASTERISK
🞹 U+1F7B9 - 🞹
🞹
VERY HEAVY SIX SPOKED ASTERISK
🞺 U+1F7BA - 🞺
🞺
EXTREMELY HEAVY SIX SPOKED ASTERISK
🞻 U+1F7BB - 🞻
🞻
LIGHT EIGHT SPOKED ASTERISK
🞼 U+1F7BC - 🞼
🞼
MEDIUM EIGHT SPOKED ASTERISK
🞽 U+1F7BD - 🞽
🞽
BOLD EIGHT SPOKED ASTERISK
🞾 U+1F7BE - 🞾
🞾
HEAVY EIGHT SPOKED ASTERISK
🞿 U+1F7BF - 🞿
🞿
VERY HEAVY EIGHT SPOKED ASTERISK

脚注

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  1. ^ MS 明朝MS ゴシックシリーズやHG明朝・HGゴシックシリーズなど、リコーが開発した日本語フォントでは中央配置になっている。
  2. ^ ArialCenturyHelvetica など。
  3. ^ TermiNet 300 のASCIIコードチャート (1972)
  4. ^ Complex Conjugate - from Wolfram MathWorld

関連項目

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