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2023年スーダンでの戦闘

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2023年スーダンでの戦闘
スーダンの民政移行

軍事状況

     スーダン国軍の掌握地域

     即応支援部隊の掌握地域
2023年4月15日 - 継続中
(1年8ヶ月2週1日間)
場所スーダンの旗 スーダン
首都ハルツームおよびその他の戦略上の都市[7]
現況

継続中

領土の
変化
  • 即応支援部隊が、ハルツーム国際空港ニャラカブカビヤダイーンジュナイナを含む首都ハルツームダルフール地域の一部を占領[8][9]
  • 主要な政府側の支配権の争い。
  • 衝突した勢力
    即応支援部隊
    支援:
    リビア国民軍[注釈 1]
    ワグネル・グループ[注釈 2]
    スーダン軍[注釈 3]
    指揮官
    スーダンの旗 モハメド・ハムダン・ダガロ スーダンの旗 アブドゥルファッターハ・アブドッラフマーン・ブルハーン
    戦力
    70,000–150,000人[10] 110,000–120,000人[10]
    被害者数
    200人のエジプト軍人が捕虜になる。
    少なくとも死者559人[11]・負傷者4,000人[12]

    2023年スーダンでの戦闘(2023ねんスーダンでのせんとう)は、2023年4月15日からスーダンで継続中のスーダン軍英語版準軍事組織である即応支援部隊(RSF)との間の戦闘。

    背景

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    スーダンでは2021年、クーデターで軍が統治の実権を握り民政移管に向けて協議が進められていたが、RSFと国軍との統合について両者が対立していた[7]

    RSFはダルフール紛争黒人を虐殺するなどしたアラブ系遊牧民民兵組織、ジャンジャウィードが2013年に改編されて成立したとされ、兵員は10万人規模と推定されている[7]

    推移

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    戦闘の勃発

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    4月15日、RSFの兵士らがスーダン各地で攻撃を行い、ハルツーム国際空港や大統領官邸を占拠したと発表した。またメロウェの空軍基地でエジプト空軍の兵士がRSFに降伏し、Mig-29戦闘機1機が鹵獲された。国軍司令部は声明で、空軍の戦闘機がRSFの徹底捜索作戦を実施すると予告した[13]。戦闘のきっかけについて、RSF側はハルツーム郊外にある部隊の基地が国軍に攻撃されたことへの反撃だと主張している。一方で国軍側も国際空港や大統領官邸を支配していると訴え、RSFがハルツーム南部で国軍に対して攻撃をしかけようとしたと主張した[14]

    4月18日、24時間の人道的停戦が午後6時から予定されていたがこの日の夜も戦闘が続き[15]、国軍とRSF双方は相手側が停戦を破ったと非難した[16]

    4月25日、スーダン軍とRSFは、現地時間午前0時(日本時間午前7時)から72時間の停戦で合意した。 また、WHOはハルツームにある国立研究所が占拠されたと発表した。

    停戦の試みと戦闘の継続

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    5月8日、スーダン軍とRSFの代表者はサウジアラビアジッダで協議を行い、人道支援の受け入れの際の安全の確保や、民間人の保護などについて意見を交わした[17]

    5月20日、アメリカ合衆国とサウジアラビアは、スーダン軍とRSFが現地時間の22日夜からの7日間の停戦に合意したと発表した。双方は、現地での人道支援活動にも合意した[18]。5月29日には5日間の停戦の延長についても合意したが、6月1日、スーダン軍はRSFとの停戦協議を一時停止すると発表した[19]

    6月8日、スーダンの外務省は国連でスーダンを担当するヴォルカー・ペルテス事務総長特別代表ペルソナ・ノン・グラータに指定したと発表した[20]

    海外の反応

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    • 国際連合の旗 国際連合アントニオ・グテーレス事務総長は4月15日に「戦闘を強く非難する」と声明し[7]、RSFと国軍の指導者に戦闘の即時終了を求めた。
    • アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国:アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は「スーダンの文民統治を回復するための交渉の中で、"脆弱な"状況が生まれている」と述べ、「これは最終的に民政移行を進めるための絶好の機会であり、我々や他の国々が強化しようとしているものだ」と付け加えた[21]。4月17日には「深い懸念」を表明した[7]。4月23日、アメリカは大使館関係者約100人を3機MH−47E・Gの含む航空機、特殊部隊によって退避させたと発表した。アメリカ軍による自国民救出は計画されていないが「自国民避難のためのサポートは行う予定である」とした[22]。4月24日、 国防総省のパット・ライダー報道官は記者会見で「アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の53番艦トラクスタンがスーダン沖で待機する」と述べた。「ポートスーダンに向かっている国連主導の退避車列にアメリカ人数十人が含まれており、アメリカ軍が無人機で状況を監視している」という[23]
    • イギリスの旗 イギリス:イギリスのジェームズ・クレバリー外相は4月17日、「深い懸念」を表明した[7]リシ・スナク首相は4月23日、「イギリス軍が外交官やその家族約30人をスーダンから国外退避させる複雑な作戦を完了させた」と発表し、同日にベン・ウォーレス国防相も「この作戦には第16空中強襲旅団戦闘団海兵隊空軍が参加した」と述べた。作戦にはC130A400Mも参加しているとした[24]
    • ロシアの旗 ロシア:ロシア大使館は「暴力の激化」を懸念し、即時停戦を求めた[22]
    • 大韓民国の旗 韓国韓国空軍は4月21日、C-130J一機に特殊部隊のほか陸軍特殊戦司令部に所属する軍人や、医療関係者など計約50人を載せてジブチ米軍基地へ派遣した[25]
    • 日本の旗 日本:4月20日、浜田靖一防衛大臣は約60人の在留邦人らの退避のため航空自衛隊の輸送機複数をジブチに派遣し、同国で待機させる命令を出した。また吉田圭秀統合幕僚長は「在スーダン共和国邦人等輸送統合任務部隊[26]を編成し、同日中にも先遣隊として連絡調整要員5人がジブチに向けて出発すると発表した。松野博一内閣官房長官は「在留邦人全員と連絡が取れている」と記者会見で説明した[27][28]。4月25日、ジブチ基地に派遣されていた航空自衛隊のC-2輸送機1機がポート・スーダン国際空港に着陸し、到着していた邦人45人を回収、ジブチ基地に帰投した。 現地にいる武井俊輔外務副大臣は記者団に対し「危険かつ大変困難な状況の中、成功裏に邦人退避を遂行することができた。退避した人たちは大変疲れた様子だが、健康状態には問題がないとのことだ。ほっとしている。引き続き、スーダンに残る邦人の早期退避、安全確保及び、必要な支援に全力をあげて対応していく」と述べた。記者からの「スーダン駐在大使がいるのか」という質問に対し「今回の輸送機には乗っていない」とし、「大使には別の対応がある」とした。 岸田文雄総理大臣は24日午後11時50分ごろ首相公邸で記者団の取材に対し「危険かつ困難な状況の中、成功裏に邦人退避を遂行した大使館や自衛隊をはじめとする関係者の努力に敬意と感謝を申し上げたい。また協力してもらった韓国UAEをはじめ、関係各国や国連などの関係機関に感謝を申し上げる」と述べた[29]。4月25日、岸田総理大臣は同日未明、スーダンの日本大使館関係者を含む在留邦人とその家族、計8名がフランスの協力を受けて出国し、首都ハルツーム市内で希望していた全ての日本人の退避が完了したとした。政府はスーダンの日本大使館を一時閉鎖し、ジブチに臨時事務所を開設。日本人への対応などに当たるとした。一方松野官房長官は、スーダン南部の国境エリアに退避を希望している日本人が1人残っていることを明らかにした[30]
    • アラブ首長国連邦の旗 アラブ首長国連邦トルコの旗 トルコ:アラブ首長国連邦とトルコは4月23日、共同でハルツームからポートスーダンに移動するための退避車列を設定。自国民のほかアメリカなど他国の避難者も自家用車を使用することを前提に車列に加わることを認めた[31]

    脚注

    [編集]

    注釈

    [編集]

    出典

    [編集]
    1. ^ Faucon, Benoit; Said, Summer; Malsin, Jared (19 April 2023). “Libyan Militia and Egypt's Military Back Opposite Sides in Sudan Conflict”. The Wall Street Journal. オリジナルの19 April 2023時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230419190701/https://www.wsj.com/articles/libyan-militia-and-egypts-military-back-opposite-sides-in-sudan-conflict-87206c3b 19 April 2023閲覧. "Khalifa Haftar, the commander of a faction that controls eastern Libya, dispatched at least one plane to fly military supplies to Sudan’s paramilitary Rapid Support Forces" 
    2. ^ “Sudan's army chief says Haftar denies supporting RSF; no confirmation on Wagner Group’s involvement”. アルアハラム. (22 April 2023). https://english.ahram.org.eg/News/496267.aspx 
    3. ^ a b “Wagner in Sudan: What have Russian mercenaries been up to?”. BBC News. (24 April 2023). https://www.bbc.com/news/world-africa-65328165. "Its founder, Yevgeny Prighozin - who has close links to President Vladimir Putin - has said that "not a single Wagner PMC [private military company] fighter has been present in Sudan" for over two years. We've found no evidence that Russian mercenaries are currently inside the country. But there is evidence of Wagner's previous activities in Sudan..." 
    4. ^ Elbagir, Nima; Mezzofiore, Gianluca; Qiblawi, Tamara (20 April 2023). “Exclusive: Evidence emerges of Russia's Wagner arming militia leader battling Sudan's army”. CNN. オリジナルの20 April 2023時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230420194129/https://amp.cnn.com/cnn/2023/04/20/africa/wagner-sudan-russia-libya-intl/index.html 20 April 2023閲覧. "The Russian mercenary group Wagner has been supplying Sudan's Rapid Support Forces (RSF) with missiles to aid their fight against the country's army, Sudanese and regional diplomatic sources have told CNN. The sources said the surface-to-air missiles have significantly buttressed RSF paramilitary fighters and their leader Mohamed Hamdan Dagalo" 
    5. ^ Schmitt, Eric; Wong, Edward (23 April 2023). “United States Says Wagner Has Quietly Picked Sides in Sudan”. The New York Times. https://www.nytimes.com/2023/04/23/world/africa/sudan-russia-wagner-group.html 25 April 2023閲覧. "Yevgeny Prigozhin, the founder of the notorious private military company Wagner, has offered weapons to the paramilitaries fighting for control of Sudan, according to American officials." 
    6. ^ Faucon, Benoit; Said, Summer; Malsin, Jared (19 April 2023). “Libyan Militia and Egypt’s Military Back Opposite Sides in Sudan Conflict”. The Wall Street Journal. https://www.wsj.com/articles/libyan-militia-and-egypts-military-back-opposite-sides-in-sudan-conflict-87206c3b 27 April 2023閲覧. "Egyptian military have sent military support to rival generals...Egypt, which has officially called for an end to the fighting, sent jet fighters just before the fighting started and additional pilots soon after to support Gen. Burhan" 
    7. ^ a b c d e f “スーダン 民間97人死亡 各地で戦闘、被害拡大も”. 朝日新聞. (2023年4月18日). https://www.asahi.com/articles/ASR4K74JRR4KUHBI021.html 2023年4月28日閲覧。 
    8. ^ Sudan: Deadly Sudan Army-RSF Clashes Spark Human Tragedy, Widespread Looting in Darfur Archived 19 April 2023 at the Wayback Machine., 17 April 2023
    9. ^ Salih, Zeinab (April 16, 2023). “Sudan fighting rages for second day despite UN-proposed ceasefire”. オリジナルのApril 16, 2023時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230416191956/https://www.theguardian.com/world/2023/apr/16/sudan-fighting-rages-for-second-day-despite-un-proposed-ceasefire 
    10. ^ a b “Sudan: Stalemates rule out one-man victory”. DW. (19 April 2023). オリジナルの19 April 2023時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230419193223/https://www.dw.com/en/sudan-stalemates-rule-out-one-man-victory/a-65373902#:~:text=%22The%20range%20of%20the%20RSF,duty%20personnel%2C%22%20she%20added. 19 April 2023閲覧。 
    11. ^ “Sudan ceasefire eases fighting as army denies rumors about deposed dictator Omar al-Bashir's whereabouts”. CBS News. (26 April 2023). https://www.cbsnews.com/news/sudan-ceasefire-omar-al-bashir-fighting-eases-dictator-said-to-be-in-hospital/ 
    12. ^ “No sign Sudan warring parties ready to ‘seriously negotiate’: UN”. Aljazeera. (26 April 2023). https://www.aljazeera.com/news/2023/4/26/no-sign-sudan-warring-parties-ready-to-seriously-negotiate-un 26 April 2023閲覧。 
    13. ^ “スーダン国軍と準軍事組織が衝突、死者25人”. CNN. https://www.cnn.co.jp/world/35202661.html 2023年4月16日閲覧。 
    14. ^ “スーダン首都で軍と準軍事組織が戦闘 大統領府や空港制圧の主張も”. 朝日新聞デジタル. (2023年4月15日). https://www.asahi.com/sp/articles/ASR4H6KP7R4HUHBI00Z.html 2023年5月12日閲覧。 
    15. ^ “スーダン、24時間の停戦守られず 死者200人近くに”. BBC. (2023年4月18日). https://www.bbc.com/japanese/65320107.amp 2023年4月19日閲覧。 
    16. ^ “スーダン停戦守られず 衝突継続、死者270人”. 共同通信. (2023年4月19日). https://web.archive.org/web/20230419091935/https://nordot.app/1021168156671606784 2023年4月19日閲覧。 
    17. ^ “スーダン 軍と準軍事組織がサウジで協議 現地では戦闘続く”. NHK NEWS WEB. https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230508/k10014060911000.html 2023年6月25日閲覧。 
    18. ^ ““スーダン軍と準軍事組織双方 7日間停戦で合意” 米政府発表”. NHK NEWS WEB. https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230521/k10014073851000.html 2023年6月25日閲覧。 
    19. ^ “スーダン軍 停戦協議の一時停止を発表 戦闘さらに激化の懸念”. NHK NEWS WEB. https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230601/k10014084861000.html 2023年6月25日閲覧。 
    20. ^ “スーダン 国連特別代表を“拒否” 現地での人道支援に影響懸念”. NHK NEWS WEB. https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230610/k10014095631000.html 2023年6月25日閲覧。 
    21. ^ “At least 25 killed, 183 injured in clashes across Sudan as paramilitary group claims control of presidential palace”. CNN. https://edition.cnn.com/2023/04/15/africa/sudan-presidential-palace-intl/index.html 2023年4月16日閲覧。 
    22. ^ a b US Military Evacuate Personnel From US Embassy Amid Fighting in Sudan” (英語). www.theepochtimes.com (2023年4月22日). 2023年4月25日閲覧。
    23. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2023年4月25日). “米軍艦、スーダン沖に展開 市民退避に備え”. 産経ニュース. 2023年4月25日閲覧。
    24. ^ Sudan: How elite team of British troops evacuated UK diplomats from warzone capital” (英語). Sky News. 2023年4月25日閲覧。
    25. ^ “韓国の軍輸送機が出発 スーダン在留国民退避に向け”. 聯合ニュース. (2023年4月21日). https://jp.yna.co.kr/view/AJP20230421004000882 
    26. ^ (PDF) 在スーダン共和国邦人等輸送準備のための国外待機について, 防衛省, (2023-04-20), https://www.mod.go.jp/j/press/news/2023/04/20a.pdf 2023年4月20日閲覧。 
    27. ^ “自衛隊機、週内にもジブチ派遣=スーダン邦人退避”. 時事通信. (2023年4月20日). https://www.jiji.com/jc/article?k=2023042000317 
    28. ^ “【速報】スーダン邦人退避の先遣隊5人きょうにもジブチ派遣 約370人部隊編成 防衛省”. テレビ朝日. (2023年4月20日). https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000296198.html 
    29. ^ 在留邦人ら45人 スーダンからジブチへ 残る数人の退避に全力”. NHKニュース (2023年4月25日). 2023年4月28日閲覧。
    30. ^ “希望する日本人の退避完了 スーダンで医療支援をしてきた男性 ジブチへ“脱出”の状況語る”. 日テレNEWS (日本テレビ). (2023年4月25日). https://news.ntv.co.jp/category/international/1cd4605431264398b70f0c48b235d427 2023年10月19日閲覧。 
    31. ^ スーダン退避 陸路30時間、苦難の脱出劇 邦人「車乗り捨て」覚悟”. みんなの静岡新聞 (2023年4月26日). 2023年5月4日閲覧。

    関連項目

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